日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅶ〔95〕

『まさか、これは……』
 ワーテル島の消失。映像越しにその一部始終を見ていたのは、何も一連の戦いを対岸の火
事と決め込んでいた人々だけではない。ようやく万魔連合(グリモワール)と合流──追討
作戦を再開しようとしていた王や議員達も、まるで頭を殴られたかのように大きく目を見開
いている。
『い、一体何が起きたんだ?』
『急いで現地に連絡を! サーディス達は無事なのか!?』
『そ、それだけじゃない。また万魔連合(グリモワール)を巻き込んでしまったら……』
 ざわざわと、ホログラム画面の向こうでこちら側で、面々が状況確認に動き始めた。
 よりにもよって……。その表情が総じて必要以上に険しいのは、既視感──二年前の大都
消失事件の記憶を重ねているからなのだろう。
『……してやられたな。あの時の結界か。それだけ結社(やつら)も、ヘイトの横暴を看過
できなくなったということなのかもしれんが』
『ああ。だが、策としては上出来だ。力の供給元を断てば、奴もいずれはジリ貧になる』
 尤も、それまで待つつもりはねえし、奴も待ちやしないだろうが……。
 そんな中でも、ハウゼン以下四盟主は比較的落ち着いているように見えた。フッとそう嗤
うファルケンに、ロゼとウォルターは横目を遣りながらも、画面の向こうに映る現地の様子
に注意を向け続けている。
『だ、駄目です! 応答がありません!』
『モニター中の映像も途絶えました! おそらくは、機材ごと結界の内側に巻き込まれたも
のと思われますが……』
 通信の端々で、各配下の技師や官吏達が振り向いて言う。案の定、ヒュウガやウル達も結
界の中へと閉じ込められてしまったらしい。
『ど、どうしましょう?』
『くっ……拙いな。突入の最中だったからな』
『ああ。だが彼らは魔人(メア)だし、実力も“七星”クラスだ。そう簡単にくたばるとは
思えん』
『し、しかし……。二年前と違って、今回はレノヴィンがいないんだぞ? 突入口だってあ
の時のように在るとは限らない。こちらと分断されてしまった事実には変わりないんだ』
 実際に二年前、大都消失を生き抜いた本人達ではある。そう易々とやられはしないだろう
と信じたい。
 だが議員の一人がそう口にするように、状況は間違いなく悪い──不透明だ。少なくとも
こちらの兵力も一緒に分断されてしまった以上、ヘイト追討を続けるにしても脱出を優先す
るにしても、リスクが高い。二年前のあの時はジーク達が正面の守りを破ったことで突破口
が開けたが、その当人達は今天上と地底に分かれて聖浄器回収の任に就いている。
『……結社(やつら)の介入があった時点で、想定すべきだったな。緊急事態だ。現地に兵
を増派する。残された万魔連合(グリモワール)の関係者と交渉を行ってくれ。結界で分断
されたとはいえ、まだ外側には大量の瘴気が残っている。先ずはその後始末をしつつ、結界
内部への進入も模索する』
 了解! 暫し思案顔をしていたハウゼンの一言に、配下の者達が動き出した。他の王や議
員達も、特段これに反対はしない。増派については先方と改めて擦り合わせる必要があるだ
ろうが、今自分達にできる事と言えばそんなものだ。またレノヴィン達──部外者ばかりに
頼る訳にもいくまい。何より今回は、こちらが始めた戦争なのだ。
「……」
 どっかりと、自身の玉座に深く腰掛け直し、ハウゼンは人知れず深く息をついた。眼下に
は官吏や将校らに指示を飛ばす臣下達の姿があるし、通信画面の向こうでも各国の王や議員
達が、それぞれに随時部下を動かしたり報告を受けたりしている。
 ファルケンやロゼ、ウォルターがじっとこちらを窺っている事には気付いていた。彼らも
彼らで思う所──戦術の立て直しや自身への心配、或いはこの戦いの後の商機について思い
を巡らせているのであろうが、正直ハウゼンが今胸中に抱く感慨は、ある意味でそれらとは
一線を画すものである。さも目の前の、現実とは違ったベクトルを向いてしまっている。
 ……ここまで戦いが長引くとは、複雑になるとは思っていなかった。
 いや、保守同盟(かれら)と戦うと決心した時点でその内情は入り組んではいたのだが、
兵力差を考えれば、決着は比較的早期だろうとやや楽観的に目算をつけていたのだ。
 それだけに飽き足らず、戦いは地底層──器界(マルクトゥム)の人々まで巻き込んで。
 直接の元凶はヘイトの側であるにせよ、当初想定していなかった広がりを許してしまった
事はれっきとした自分の落ち度である。
 これは、報いなのだろうか? 息子の弔い戦という大義が招いた罪であるならば、やはり
自分は多くの人々にとって悪人なのだろう。或いは身内が関わったことで、冷静な判断力を
欠いていたのかもしれない。
 何より“結社”の介入がここまでとは……。奴らの意図、目的は未だ判然としない部分が
多いが、少なくともこちらに任せていれば、漁夫の利を獲れた筈だ。
(……“共通の敵”とは、こういう事を云うのだな)
 ハウゼンは内心、自嘲っぽく苦笑(わら)う。その皮肉を痛感する。
 多くの兵達が、自分の指示一つで死地に向かう。“結社”は普段から、そんな価値判断を
繰り返しているというのだろうか? 一体何故そこまで、何を目指して……?


 Tale-95.ヒトは闘争を求める

 数日、いや十二日(いっしゅうかん)が経ち。
 霊海での戦いと黒瘴気の雨霰のダメージを受けていたルフグラン号が、ようやくその修理
を終えた。ダン達南回りチームの面々は、早速次の目的地・硬色の町(ボナロ)に向かう。
ただでさえ待たされていたのだ。悠長にしていて、また瘴気の触手に襲われてしまっては元
も子もない。
 住民達に悟られぬよう──巻き込んでしまわないよう、船自体は町よりも少し郊外にある
丘陵地帯の中に隠すことにした。レジーナらに留守を任せ、ダン達は町の中へと向かう。
 硬色の町(ボナロ)は、器界(マルクトゥム)東方にある小さな鉱山町だった。先日の黒
瘴気の爪痕もあってか、何処か物寂しい雰囲気を醸し出していたが、どうも聞き込みをした
住人達の話では、理由はそれだけではないらしい。
『──まあ、寂れてるのは昔っからだよ。この辺りは開拓が始まった頃こそ繁盛してたそう
だが、今は見ての通りさ。掘り尽くされちまったからな』
『──ん? そんな事言われてもなあ。いくら資源が豊富だって言っても、限りがあるには
変わらねぇだろ?』
『──実は、これは俺の爺さんの爺さんから聞いた話なんだけどな……。実は昔、坑道内で
でっかい爆発事故があったらしいんだ。表向きは掘り尽くされたってことになってるけど、
本当はその影響であちこちが閉鎖されたからとか何とかで──』
 確証はない。だが事実、この町が何らかの理由で、開拓黎明期とそれ以降を境に寂れてし
まったというのは間違いなさそうだった。自分達余所者にも話をしてくれた彼らの眼は、在
りし日々を語るというよりも、一抹の恨み節を込めている感が強い。
 ダン達はそんな話を頭の片隅に記憶しておきつつ、例の老人が話してくれた開拓史記念館
を探す。場所自体は比較的あっさりと見つかった。尤も当の住民達にとっては、記憶にこそ
あれ、あまり馴染みのある場所ではなかったようだが。

「邪魔するぜ。誰かいるか?」
 立て付けの宜しくない木の扉を開けると、ギイィィ……と嫌に軋む音がする。
 ダンを先頭に、一行は記念館の門を叩いた。住民達の話ではこの場所に間違いない筈なの
だが、どうも様子がおかしい。中は昼間だというのにまるで人気がなく、薄暗かった。ミア
は無言のまま目を瞬き、ステラとマルタが互いに顔を見合わせる。目を凝らせば確かに室内
には展示物らしきショーケースなどが置かれていたが、お世辞にも長らく客が訪ねて来てい
るようには見えない。
「あ、あれ? 私達、来る場所を間違えたかな?」
「……閑古鳥」
「だなあ。一応入口は空いてたし、表の感じは営業中だったんだが……」
 ダン達は思わず、不安になる。ようやく辿り着いた取っ掛かりが、もしかしたら盛大に空
振りしていたのではないかと思い始めた。
「おや? お客さんとは珍しい」
 だが、ちょうどそんな時である。
 カツカツンと、部屋の奥からそう一歩一歩床を蹴るような足音と共に、一人の青年が姿を
現したのだ。
 パッと照明が点いて明るくなり、記念館と称する内部がそれらしいさまを取り戻す。洋服
姿の人族(ヒューネス)男性だった。ふいと向けた視線が彼の、左脇に抱えた杖を捉える。
こちらに進んでくるその歩も、引き摺るように鈍い。足が悪いのだろうとダンやリュカ達は
すぐに悟った。
「ようこそ、ボナロ開拓史記念館へ。……すみませんね。普段お客さんなんて滅多に来ない
もので……」
「いや、構わねえよ。ここの連中の口振りからして、予想はしてた」
「貴方はここの、関係者さんですか?」
「ええ。館長を務めています、ルークという者です」
 そう言ってこの青年・ルークは、程よい微笑を崩さないままペコリと頭を下げた。思わず
ステラやマルタ、サフレがこれに応じて会釈していた。
 と言っても、私一人しかいないんですけどね……。何処か儚い、陰のような人物だった。
杖で半身を支えながら踵を返し、一行に「どうぞ中へ」と促す。ダン達も促されるがままに
この記念館の中へと進んでゆく。
「俺達は、ヨーキっていう爺さんから話を聞いてここに来たんだが。ここには十二聖のテュ
バルについての史料も置いてあるんだよな?」
「ええ、ありますよ。……そうですか。祖父が言っていたのは貴方達なんですね。連絡は受
けています。案内がてら話しましょうか」
 曰く、ルークはヨーキの孫なのだそうだ。元々は一介の鉱夫として働いていたが、事故で
左足を悪くして働けなくなってしまったため、彼の隠居と共に入れ替わるようにしてここの
管理人に収まったのだという。
 祖父がダン達をこの町に誘導したのも、一行が件の地上の特務軍──ブルートバードだと
気付いたからこそなのだろう、とも。道理で詳しい筈だ。元々此処の館長だったのだから。
 館内の展示物は、鉱山開発のジオラマや当時の道具などを中心として、小規模ながらも手
作り感が満載の仕上がりとなっていた。各項目に添えられた説明文には、地上から持ち込ま
れた各種機巧技術が、開拓黎明期の爆発的な発展を支えたとある。
 良くも悪くも人と物、技術のやり取りは、社会を変える力を持ってきた。一方でそうした
急激な発展が、元々各門閥(ファミリー)が割拠する地底(こちら)側の人々の反発を生む
結果となり、今も続く両者のわだかりの原因となった武力衝突──世に言う“ロックドラム
事件”を招いた。
「ここが、かの“巨侠”テュバルに関するコーナーです」
 ルークが最奥の展示スペースに立ち、言った。他と同様、ショーケースが古びてこじんま
りとしているが、収められたゆかりの品々──当時彼が使っていたとされる日用品や手紙、
仲間達と撮ったとみられる白黒の写真などが所狭しと詰め込まれている。
「ほあ~、やっぱり大きな方だったんですね……。仲間の方も皆強そう……」
「ええ。デュバルは巨人族(トロル)の出身だもの。元々は各地を旅する侠客で、解放戦争
にも“世直し”として参加したと言われているわ」
「その通りです。お詳しいですね。豪快且つ面倒見の良い人柄で、多くの荒くれ者達を部下
として率いていたそうですよ?」
 マルタに教えてあげているリュカの言葉に、ルークも微笑を深めて嬉しそうだった。久し
ぶりの仕事ということもあったのだろうが、彼もまた祖父を通じて、英雄としてのデュバル
に強く惹かれた人物の一人であるらしい。
「史料によれば、彼はこの町を拠点に、各地の用心棒として転戦していたようです。当時は
ここも開拓の前線でしたからねえ。今の若い人達にはあまり実感が湧かないみたいですが」
「まあ、仕方ねえだろうなあ。俺達もここに来るまで、ざっと町を見て回ったが……その、
お世辞にも繁盛してるとは言えなかったし」
「はは、耳が痛いです。最寄の鉱山区域が軒並み閉鎖されてしまって久しいですからねえ。
今は旅人のちょっとした中継地点とか、そのくらいの産業しか残っていませんから」
 グノーシュのやや遠慮がちな言葉に、ルークはそう小さくポリポリと頬を掻いていた。暫
く目の前の展示を囲んで見ていたダンやクロムが、その話の流れに乗っ掛かって、肝心の本
題へと切り込んでゆく。
「……どうして閉鎖されたのか、理由は分かるか?」
「? さあ。何分、随分と昔の話ですし……」
「爺さんから聞いてるかもしれんがよ。俺達は十二聖ゆかりの──テュバルの聖浄器っての
を探して回ってるんだ。今までの経験上、何処かに封印されてる筈なんだが……それらしい
場所に心当たりはねぇか?」
「封印、ですか」
「ええ。聖浄器は国の王器となることもある、悪用されれば非常に危険で強力な武具です。
そんな物を封じるのなら、普段人目につかない場所を選ぶ可能性が高い。閉鎖された鉱山と
いうのも、考えようによっては絶好の隠し場所になるとは思いませんか?」
 自分達が既に、それを四つも持っているという事実は敢えて伝えはしないで。
 クロムやダン、リュカはそうそれぞれにルークに訊ねた。テュバルゆかりの地であるのな
ら、此処ではなくとも場所を絞り込む手掛かりくらいはある筈だ。その為に、この町へと足
を運んだのだから。
「うーん……」
 不意に突きつけられた話に、ルークは眉間に皺を寄せて唸っていた。或いは何か手掛かり
になるような情報はないか、記憶を引っ張り出して回っているようにも見える。
「ここに来る途中、他の連中からも話を聞いたんだが、どうもその理由ってのがはっきりと
しねぇんだよなあ。掘り尽くしたからって話もありゃあ、一方で事故が起きたせいだってい
う話もある。だが町の命運に関わる話だろう? 時間が経ち過ぎてるにしても、俺達の目的
と併せて、妙に気になってな……」
「……」
 一行が当たりをつけた候補地。
 軽く握った拳で口元を押さえ、ルークは考え込んでいた。何処か遠くを見ているかのよう
な視線の先には、今し方までダン達と囲んでいたテュバルゆかりの展示品が並んでいる。
「そう、ですね。確かに鉱山区域の閉鎖については、結局はっきりとした発表は出ていない
筈です。とにかく事情により閉鎖すると、当時の採掘関係者達に通達があっただけで……」
 ただ……。彼は少し逡巡するように、一度唇を結んでから続けた。記憶の端に残っていた
自身の記憶を、ダン達に託すように。
「祖父の話では、閉鎖の本当の理由は別にあったんだとか。その時はまだ祖父も元気で、私
も館主を引き継いではいなかったから、聞き流していたんですけど……」
 長い時の中で、廃れてゆく故郷への嘆き節が溢れて、皆は段々と忘れてしまったけれど。
「この町は、テュバルゆかりの地です。その、彼の聖浄器を探しているというのなら、此処
以外にあるとは思えない」
『……』
 ダン達が、その確かに言い切ったルークの姿に、暫しじっと目を見開いていた。互いの顔
を見合わせて嗤い、頷き合うと、皆を代表してダンが彼に向かって問い掛ける。
「ありがとよ。それで、その鉱山ってのは、一体何処にある?」

 紆余曲折の末に深緑弓(エバーグリス)を手に入れたものの、アルヴとニブルの間の溝は
決して埋まったとは言えない。
 殺害された長老達の葬儀と、隠れ里の“守人”達の弔いから数日後。イセルナ以下北回り
チームの面々は、霧の妖精國(ニブルヘイム)の入口で、ハルトらの見送りを受けていた。
背中にはしっかりと旅荷。次の目的地までの地図も用意して貰い、準備は万端だ。
「色々と、ご迷惑をお掛けしました」
 イセルナを中心に、ジーク達はそう深々と頭を下げる。だが当のハルト以下里の者達は、
静かに穏やかな苦笑いを零すだけで、決して彼らを責めようとはしない。
「頭を上げてくれ。もう終わったことさ。……いずれ、こんな時が来るとは思っていたんだ
から」
「まったくだ。寧ろ、お前らが居てくれたからこそ、被害をこの程度で抑える事が出来たん
だと思う。礼を言うのは俺達の方さ。お前らは、よく戦ったよ」
「……。でも……」
 言いかけて、ジークはぎゅっと口を噤む。
 そもそも俺達が来なければ、この里と関わり合いにならなければ……。口に衝いて出よう
としたが、その言葉が実際には、もうあれから幾度ともなく繰り返した押し問答になるだけ
だと知っている。全く傷付かなかった訳ではないのに。それでも彼らの厚意を、向けてくれ
る信頼をぐっと呑み込んで、只々ジークはゆっくりと頷くしかない。
 里の防衛に手を貸してくれた、コーダス達は一足先にそれぞれの国に帰って行った。微笑
みを浮かべたまま、しかしハルトやサラが少なからず寂しそうに言う。
「僕達としては、もっとゆっくりしていってくれても良かったんだが……。そういう訳にも
いかないんだろう?」
「ええ。私達にはまだ、やるべき事が残っていますから」
「ヨーハン様の聖浄器、よね?」
「はい。もう一度、お屋敷を訪ねて説得しようと思っています」
 心なしか、そう答える仲間達の表情は硬い。ちらっとジークもイセルナを、きゅっと胸元
に拳を遣るレナを見て、静かに思い出すように目を細めていた。
 当初の予定通り、ジーク達は聖浄器回収の旅を続ける心算だった。妖精族(エルフ)の、
アゼルの弓を回収した今、次に目指すのは北方・竜王峰。一旦古都(ケルン・アーク)に宿
を取ってから要請を送り、再びヨーハンに会いに行く手筈だ。出来れば、山に本格的な冬が
来る前に済ませておきたい。
 ダン達からも、翠風の町(セレナス)の大書庫からリュノーの手記が見つかったと聞いて
久しい。そこから聖浄器の真実も知った。加えて先日、その膨大な数の文献の中から、アル
スが何かを掴んだらしい。
 ……力ある先人の魂を核として造られた武具。即ちそれは生贄であり、魔導開放によって
生じるであろう魔獣の増加に対抗する、抑止力であり交換条件でもあった。
 ヨーハンは、そんな事実を知らせ、自分達を思い留まらせたかったのだろうか?
 だがそれでも……と、ジークは思う。今更歩みは止められない。仮に自分達が放っておい
たとしても、間違いなく“結社”は各地の聖浄器を狙ってくる。その度にその土地を滅茶苦
茶にする。もう厭だ、沢山なんだ。今度こそ……守りたい。
「決心は固い、か。そもそも、僕達に君達をどうこうしようっていう権利はないけどね」
 そんな事情を分かっているからなのか、目の前のハルトも何処か複雑な表情で。
 ふぅと一度嘆息をつき、彼は言った。里の長として、今回の騒動の当事者として、ジーク
達の背中を押してやるように話題を変える。
「隠れ里(アゼルハイデン)──ミシェル達には、一応こちらで暮らさないか? と声を掛
けてはあるんだけどねえ。まだ返事はないよ。あんな事になっても、住み慣れた故郷を離れ
たくないのか、或いは他のエルフを信用したくはないのか……」
『……』
 曰く彼女らのケアは、今後も自分達が責任を持つという。
 それは元を糺せば、此度の悲劇の片棒を担いでしまったという負い目と償いであったろう
し、何よりも苦しむ同胞へ手を差し伸べない理由などないからだった。
 後のことは任せておいてくれ──。これからまた遠くに行ってしまう自分達にとって、他
に選択肢はなかった。チリチリと、ジーク達の胸奥におそらく同種の罪悪感が燻る。だがこ
の感覚を、自分達は絶対忘れてはならないのだろう。
「元気でね。これからも娘(クレア)をよろしく」
「俺達は兄貴と義姉さんを支えて此処にいる。いつでも帰って来い」
「だから……無茶だけは、しないでね?」
 サラとクレア、タニアとシフォンがそれぞれ両親からのハグを受けて。
 ジーク達もハルトや里の皆、すっかり顔見知りになった“仲間”達との別れを惜しんだ。
繋がりも親世代からのものという間接的なものだった筈だが、改めて彼らはもう他人とは思
えない。
「コーダス達とも、今度会う時はしんみりとした風じゃなくて、もっと陽気な酒でありたい
ものだね」
 言ってハルトが微笑(わら)う。ジーク達も思わず、苦笑いを零さざるを得なかった。
 里の皆から手厚く見送りを受け、一行は一路、中継地点・古都(ケルン・アーク)へと向
けて出発する。


 時を前後して、ワーテル島結界内中枢。
 黒瘴気の迷路をリュウゼンの空間結界で大幅に削いだ“武帝”及び使徒達は、その中心で
あるヘイトの下へと一足先に辿り着いていた。オオォォォ……ッ!! と、無数の軋むよう
な叫びと禍々しい熱気の中、大量の瘴気の黒皮に包まれた彼が、剥き出しの憎悪でもってこ
ちらを睨み付けている。
「……随分と、変わった格好になったな」
 目の前のヘイトは、最初の頃とは明らかに変貌を遂げてしまっていた。大量の瘴気は半固
体のゴムのようにずぶずぶと彼の首から下を埋め尽くし、無数の刃のような脚を生やした、
巨大な蜘蛛のような異形と化している。
 だが空間結界により、その力の供給元は分断された。後は手筈通り、外の者達が後始末に
動いてくれることだろう。ギチギチと歯を噛み締め、目を血走らせ、ヘイトが現れた一行に
向かって咆える。
「何故だ、何故邪魔をする!? 僕が、このクソッタレな世界をリセットしてやろうという
のに! お前達だって、同じ目的で動いていたじゃないか!」
「同じ物差しで語ってくれるな。大体、お前は勘違いをしている。俺達はあくまで“世界を
救う”為に戦っているんだ」
 ルギスやリュウゼン、ヘルゼル、バトナスとエクリレーヌに、セシル、フェニリア・フェ
イアン姉弟ら使徒達を引き連れて。
 “武帝”こと重鎧の男は、そう仰々しく嘆息をついてみせながら言った。ポリポリと後ろ
髪を掻いた体勢でガチャリと装甲が鳴り、すぐ手元に大剣がある。
「別にそれは、ヒトを救うこととイコールじゃねえだろ? 副作用として奴らが死に、文明
レベルが落ちようとも、それはそれで仕方のない事だってだけの話さ」
 いつの間にかその眼差しは、相手を宥めるようなものではなく、ギロリと睨みつけ指弾す
る類のものに変わって。
 ザラリと、重鎧の男は背中の大剣を抜いた。後ろに控えるルギス達も、それぞれに攻撃態
勢を取る。
「……だから子供なんだよ。憎しみを、憎しみのまま誰かにぶつけても、お前の思い通りに
はならねえぞ」
「五月蝿いッ!!」
 弾かれたように怒り、ヘイトはその巨体から鋭い黒瘴気の脚を振り下ろした。
 油断ならない速さと重さを伴った一撃だ。だがこの重鎧の男は、これをさも簡単に最低限
の身のこなしだけでかわすと、すれ違いざまに大剣を一閃する。
 脚が一本、真っ二つに斬り飛ばされた。断面から大量の瘴気が血のように溢れ、再び繋が
ろうと蠢くも、直後彼の《覇》がこれを吹き飛ばして粉微塵にする。
「ぐっ……!?」
 少なからず体勢をグラつかせて、ヘイトが表情を歪めた。互いの殺気を込めた視線が寸分
の狂いもなくぶつかり、再び第二撃・三撃と黒瘴気の脚が襲い掛かる。
 しかしそれらも、この重鎧の男の前にはただの図体の大きな強打に過ぎなかった。彼から
の猛攻を、落ち着き払ってゆっくりと前進しながら捌き、次々と描かれる大剣の一閃がこの
黒瘴気の化けの皮を一つ一つ確実に剥ぎ取ってゆく。即ち、ヘイトの残存する力が弱まる。
「畜……生ォォォッ!!」
 ヘイトは瞬く間に──とうにヒステリックになっていた。本来なら目の前に立つだけで、
その禍々しい力の塊に中てられてしまう所を、彼らはけろりとしている。闇雲に戦ってもこ
ちらがジリ貧になるだけだ。ぐんっと持ち上げられた鋭い脚が、天地創造を着け、この空間
結界を維持しているリュウゼンへと向かう。
「ふっ──」
「させ」「ないよ!」
 だがその一撃を、セシルの《蝕》のオーラとフェニリアの炎、フェイアンの冷気が三方か
ら渦を巻いて阻んでくる。同じ瘴気であるセシル及び持ち霊ヒルダのそれは勿論、焼き払い
凍て固める妨害に、ヘイトは思わず表情を歪めた。
「く、そぉぉ……」
 正直を言えば、内心では何処かで解っていた。自分がここまで尽きない怒りに支配されて
いるのは、核心を突かれたからだ。それを子供だと言われることは、癪で癪で仕方ないが、
それでも尚憎しみは募る。
 結局“結社(そしき)”は、自分達使徒を体よく使い潰していただけだ。事実都合が悪く
なればこうやって直接潰しにかかってくる。……やっぱりクソだ。この世界はクソだ。お前
達もまた、そうやって勝手な「正しさ」で僕を縛り付けようとする……。
「憎い……憎い……。憎イ、憎イ、ニクイィィィーッ!!」
 そんな時である。直後、重鎧の男らに削られる一方だった瘴気の黒皮が、突然ボコボコと
勢力を盛り返し始めた。結界で閉ざされた外側の触手からではなく、自らの全身からどす黒
い半固体のオーラを練り出しながら、瞬く間に最初の頃──いや、それ以上の巨大な異形へ
と戻ってゆく。
「ほう? 自らの憎悪で、力を補充し始めたガネ」
「……皮肉なものだな。ここまで追い詰められて、ようやく“自力”を発揮し始めたか」
 だが、異変はまだ終わらない。
 今度は一行の少し遠巻きの横壁が、ジュウジュウと光熱を浴びて溶けるように穴を開けら
れたのである。反魔導(アンチスペル)だ。風穴の向こうからは、増幅用の器械杖を装備し
た魔導師達が隊列を組んで押し寄せる。この突破口を皮切りに、ぞろぞろと軍服姿とそうで
ない荒くれ達の集団が、彼らを先頭にこの場へなだれ込んで来た。
「な、に……?」
「ほう?」
「チッ。追いついて来やがったか……」
 異形姿のヘイトが、重鎧の男が、或いはバトナス達が渋い表情(かお)をした。どうやら
先の結界による分断で、彼らまで一緒に内側に連れて来てしまったらしい。
「……随分と醜悪な。魔人(メア)に飽き足らず、今度は人間までも辞めたか」
「悪いけど、“内輪揉め”のままでは終わらせないよ?」
 ヒュウガとウルだった。
 現れたのは、正義の剣(カリバー)と現地に集結していた万魔連合(グリモワール)──
討伐軍連合を率いる、二人の雄の姿だった。

「退路を塞いで! 囲んで攻撃するのよ!」
「班単位(じんけい)を崩すな! 先ずは持ち場のブヨブヨを潰す事だけを考えろ!」
 ワーテル島外周から、器界(マルクトゥム)全域にかけて。
 統務院と万魔連合(グリモワール)共闘を受けて、ミザリーやセキエイ、リリザベートと
いったウル以外の四魔長らは、それぞれに部下達を率いて結界の外側に残る黒瘴気の破壊に
全力を注いでいた。
 ワーテル島から北方向を、ミザリー以下妖魔族(ディモート)の軍が。
 西方向を、セキエイ以下鬼族(オーグ)の軍が。
 南方向を、リリザベート以下幻夢族(キュヴァス)の軍が。
 及び東方向を、残る宿現族(イマジン)の有志軍が。
 彼女らは空間結界に巻き込まれなかった兵力を分担して、各地に取り残された末端の触手
達を何とか処理しようと奮闘していた。期せずして──十中八九“結社”の仕業だろうが、
本体は結界内に切り離された。今の内に、これらを人々から遠ざけておかなければ。
「っ!? しまっ──」
「逃げたぞ! 捕まえろ!」
 分断された事で、ヘイトの下へと集まってゆく動きは止まったが、その一方で主を失った
黒瘴気の触手達の少なからずが暴走を始めている。
 激しくうねり、追討の軍勢の一角を弾き飛ばして動き出す。それを、反撃を食らった仲間
達をフォローしながら、他の面々がさせじと食らいつく。
「物理的に叩いても、すぐに再生しちまうぞ! 切り離されてるから、それでもジリ貧には
なっていくんだろうが……」
「皆、魔導だよ! 先ず反魔導(アンチスペル)で弱らせて、細かくなった所を叩くの!」
 対策は、先の正義の剣(カリバー)との会談で明らかになった。どんなに大量で、まるで
意思を持つように蠢くデロデロでも、所詮は魔力(マナ)の塊。頭数を揃えて打ち消すなり
浄化するなりすれば、確実に無効化できる。
「班(グループ)に必ず何人か、魔導師を入れなさい! 塊ごと倒そうとしても難しいかも
しれないけど、部分部分で潰していけば、いずれ全体に響くわ!」
 故に各地の有志軍は、立ち向かう黒瘴気の触手を幾つかのブロックに分け、それらを一つ
一つ確実に消却してゆくという作戦を採った。ワーテル島内部に侵入したウル率いる本軍は
まだしも、こちらは反魔導(アンチスペル)要員の魔導師が圧倒的に足りない。部分的にこ
れを潰してゆき、すぐ次の隣接するブロックへ──時間や消耗との戦いだった。
「なるべく市街地から離せ! 住民の避難は進んでいるか!?」
『はい! こちらはほぼ全員、地下壕(シェルター)に避難しました!』
『こちらは現在、全住民の七割ほどです!』
「急げよ! いつ反撃してくるか、俺達でも分からん!」
 戦況は、大よそ残された有志軍側が押しているように見えた。何よりも“結社”が空間結
界で本体と分断し、触手達の統率力を奪ったことが大きい。
 だが一方で、そうして住民達の安全を考え、引き離そうとした──急いたことが、戦況を
却って混ぜっ返す結果になっていた。市街地から追い立て、一ヶ所に集めてしまった分、触
手達が互いに引き寄せられるように合体し、巨大化し始めたのである。
「っ!? やべっ……!」
「させるな! 反魔導(アンチスペル)隊、撃てーッ!」
 これを取り囲むように、四方八方から放たれる魔導。互いに合体して必死の抵抗をみせる
黒瘴気の塊が、苦しそうに激しくうねっている。
「移動させるのは拙かったかな……」
「言ってる場合か。やるべき事は変わんねぇよ」
「もう一度バラすか?」
「そうだな……。兵力さえあれば何とかなるが……」
「首領(ドン)達、大丈夫かなあ? 正義の剣(カリバー)の連中も一緒だし、そう簡単に
くたばるような人じゃないけど……」
 雷剣や炎鞭の魔導で、一旦塊になっていた黒瘴気を幾つかに斬り分ける。ある程度の大き
さになった所で、抵抗する隙を与えぬ内にまたグループ単位の小隊達がこれらを一つ一つ着
実に消却してゆく。
 現場で指揮に当たる者達が、少しずつ不安に駆られていた。がむしゃらに戦っていれば忘
れそうでも、その後はどうなる? と、例の空間結界に巻き込まれてしまったウル達の身を
案じている。
「──うん?」
 ちょうど、そんな時だった。ふと頭上から大きな影が差したかと思うと、次の瞬間幾つも
の攻撃魔導が黒瘴気の触手達に向かって降り注いだのである。
「おわっ!? な、何だあ?」
「びっ、びっくりしたあ……」
「う、上です! 空から攻撃が!」
 セキエイが、ミザリーが、リリザベートや各門閥(ファミリー)の戦士達が、思わず空を
仰いで目を見開く。
『……』
 “結社”だった。
 飛行系の魔獣達やそれに乗った黒衣のオートマタ兵、狂化霊装(ヴェルセーク)。それら
を率いてこちらを見下ろしている白衣を引っ掛けた女性──シゼル・ライルフェルド。
 各地に現れたのは、そんな分断された黒瘴気を狙う“結社”の援軍達で……。

「なあ、あんたら……。本当に行くのかい?」
 時を前後して、閉鎖されたボナロ坑道入口。鉄柵で守られた扉の鍵を開けながら、管理人
の男性はちらちらっと、肩越しにそうダン達の方を向いて訊ねてきた。
「さっきも話した通り、ここは長いこと放置されてたせいで魔獣達の巣になっちまってる。
ぶっちゃけ忌避地(ダンジョン)さ。ルークさんの紹介だから通してやるがよ……こんな所
に一体何の用があるってんだ?」
 彼曰く、時々命知らずの冒険者が入ってゆく事があるが、今まで誰一人として無事に帰っ
て来た者はいないという。
 あからさまに気が進まないといった様子で。それはこちらの身を案じてくれているという
よりは、只々トラブルが起きれば自分に面倒が回ってくるという保身が故なのだろう。
「大丈夫ですよ。ダンさん達は、あのブルートバートのメンバーなんですから」
 なのにニコニコと、左脇に杖をついたままのルークは言って。
 管理人の男は、そんな彼の笑顔に苦虫を噛み潰したような表情(かお)をしていた。ダン
達自身も、その心中は察するに余りある。保身云々に加え、自分達を“災いの種”として見
ているのだろう。事件が起こる度に、結果的にそう捉えられてしまっていても仕方ないこと
だとは思う。今に始まったことではないし、こと地底層の住民らが自分達地上の者を歓迎し
ていないことは知っている。……なるべく迷惑は、掛けないつもりだ。
「ちと買い被り過ぎだがなあ。だが、ここに入るのは俺達の意思だ。あんたに責任を擦り付
けるような真似はしねえよ」
「……約束ですよ? 一つ、自己責任でお願いしますからね?」
 ああ。ダンが言い、扉の南京錠がガチリと開いた。
 この管理人とルークに見送られながら、一行はカンテラを片手に、この暗い廃坑道の中へ
と踏み込んで行く。

「──どっ、せいっ!!」
 襲い掛かってくる魔獣の群れを、ダンの戦斧が纏めて薙ぎ払った。グノーシュの《雷》を
纏わせた剣や、サフレの伸縮自在の槍、クロムの《鋼》の拳がこの四方八方から飛び込んで
くる群れをめいめいに粉砕する。
 坑道内に入ると、程なくして一行の存在を嗅ぎ付けた魔獣達が現れた。蝙蝠系──ブラッ
ドサッカーやナイトフライヤー、地蛇(アースワーム)にキリングドール。事前の話通り、
内部はすっかり魔獣の巣窟になっているようだ。
 カンテラを掲げるリュカやマルタを守るように円陣を組み、ダン達はこの暗闇から次々と
湧いて出てくる魔獣達を一先ず片付けることにした。元々自分達は冒険者。この手の戦いは
ある意味、人対人よりも馴染んでいるし、精神的にも楽でさえある。
「ふう、ふう……。随分と多いな。こりゃあ、長居してるとキリがねぇぞ」
「そう……だね。早くテュバルの聖浄器、見つけないと」
「だがよう。そもそも本当に此処にあるのか? どう見ても忌避地(ダンジョン)以外の何
物でもねぇと思うんだが……」
 ミアの《盾》の正拳突きが、キリングドールの身体を粉微塵に吹き飛ばした。言いながら
少し不安になってきたグノーシュの周りで、持ち霊(ジヴォルフ)達がキィキィと五月蝿い
蝙蝠達を電撃で丸焦げに叩き落してゆく。
 坑道内は、長い間放置されてきたせいで、すっかり荒れ果ててしまっていた。地形や地面
に埋まって朽ちた道具類が、辛うじて採掘当時の姿を想像させるが、基本明かりも何もかも
無くなってしまって久しい内部はまさに暗闇の迷路だ。
「でも、ヨーキさんが私達をこの町まで誘導したということは、彼は何かしらの情報を知っ
ていたんじゃないかしら?」
「何かしらって……何だよ?」
「ルークさんの話も合わせれば、ここが閉鎖された本当の理由、ですかねえ?」
 リュカがマルタが、それぞれにカンテラを通路になっているらしき各方向にかざしながら
うんうんと唸っていた。これだけ暗ければ魔導の灯りでも点せばよさそうなものだが、そう
すると却って坑道内に潜む魔獣達に、こちらの位置を知らせてしまう危険性がある。
「……少なくとも、何かあるよ」
「ああ。これだけ魔獣が湧いているということは、それだけ濃い魔力(マナ)が漂っている
ということだ。魔力(マナ)の濃さは、力の強さに比例する。それだけの力を担保するだけ
の何かが、此処には眠っていると考えていい」
「! それって……」
「聖浄器の可能性は、ある」
 だが、他ならぬ魔人(メア)であるステラとクロムが、この坑道内に漂う異変に勘付いて
いたのだ。ダン以下仲間達は、その言葉に思わず緊張して眉根を寄せる。足元には倒した魔
獣達の骸が大量に転がっている。中にはジュウジュウと、微量の瘴気を発しながら蒸発して
ゆくものもある。
「うん。さっきからずっと、嫌な気配を感じてるんだもん」
 嫌な……? ダン達は、眉間に皺を寄せたまま互いの顔を見合わせた。
 彼女達が嫌なということは、退魔の力──聖浄器なのだろうか? それとももっと別な、
禍々しい力なのだろうか?
「……調べてみる価値は、大いにあり、か」
 それからダン達は、二人の感覚を頼りに、更に坑道の奥へ奥へと進んだ。その度に掘り尽
くされて出来た複雑な地形と暗闇、そして魔獣達の襲撃に遭ったが、一行はこれを片っ端か
ら返り討ちにする。
 寧ろこれだけ厳重な“守り”の先には、何かがある。そんなある種の予感と期待が、面々
の力を奮い立たせていた。斧や剣閃が舞い、拳や槍先が敵を弾き飛ばす。狭くて逃げ場に乏
しいのは魔獣達にとっても同じだ。リュカの天魔導やマルタの《音》は、空間を制圧しなが
らこれらの障害を駆逐する。
「──うん? ここは……」
 そして、一体どれだけ潜った頃だっただろう。それまでゴツゴツとした岩肌ばかりが続い
ていた風景に、不意に規則正しい石造りの壁が交ざり始めた。
 ダン達は思わず足を止め、辺りを見渡した。岩肌の途中から、明らかに人工の物と思しき
建造物に変わっている。めいめいにそっと壁を触ったり、行く先を見つめてみたりする。ど
うやらこの辺りで、全く別の施設になっているようだ。
「……」
 口元に手を遣りながら、リュカがじっとこの石造りのエリアを検めていた。坑道ほどでは
ないが、こちらも長い歳月を経ているからか、妙に痛みが激しい。
「この材質、翠風の町(セレナス)や常夜殿の封印扉と似ているわね。もしかしなくても、
私達は当たりを引いたんじゃないかしら?」
「封印の? そりゃあ願ったり叶ったりだが……ぶっ壊れてねえか? そもそも」
 彼女の発言に、ダン以下残りの仲間達が集まる。確かに言われてみれば辺りの石壁は見覚
えのあるものだったが、如何せん閉じ込めるべき奥の部屋が、まるで何かに吹き飛ばされた
ように風穴が空いて半壊していたのだ。
「……お前ら」
『っ!?』
 ちょうど、そんな時である。ふと打ち壊された部屋、暗がりの向こうから何者かの声が聞
こえてきた。ダン達は思わず身構え、カンテラをかざしてその方向を照らしてみる。
『……』
 ガウル達だった。
 以前、常夜殿の地下礼拝堂前に現れ、ダン達と秘葬典(ムスペル)を巡って争った、地底
の“結社”──ガウルとイブキ、フォウの使徒三人組だったのである。


「てめぇら……!」
 暗がりの向こう、半壊した封印扉の前に立つガウル達の姿を認めて、ダンはくわっと犬歯
を剥き出しにしながら声を詰まらせた。グノーシュら仲間達も、一斉に得物を構え直して臨
戦態勢を取る。
「よくも封印を……。てめぇらが壊したのか!?」
「あ? 違ぇよ。勘違いすんな。俺達が来る前から、此処はこうなってんだよ」
「……何だって?」
「嘘をつく意味がありますか? そもそも僕達使徒の──魔人(メア)の攻撃で破壊できる
のなら、わざわざ貴方達に鍵を開けさせようなんて遠回しなことはしないでしょう? とっ
くの昔に、十二聖(かれら)の聖浄器は、こちらが回収し終わっている筈です」
 だが当のガウル達は、そんな敵意にやや冷めた様子だ。ピタッと踏み出す足が止まってし
まった一行に、そうフォウが小さく肩を竦めて説き伏せる。
 た、確かに……。ダンやグノーシュ、或いはクロムがそれぞれに深く眉根を寄せ、身構え
た格好のまま押し黙る。
「まあ、回収に来たってのは変わらんがな」
「っ! だったら──!」
「お、やるか? 常夜殿の(あの)時みたくはいかねえぞ?」
「ガウル」
「止めなさい。封印は既に吹き飛んでいるのだから、回収だけすればいいのよ。目的を──
あの方の命を忘れたの?」
「……お前達の都合なんて知らない。聖浄器は、渡さない」
「そ、そうです! 貴方達の好き勝手には、させませんよ!」
 されど、そんな沈黙はほんの束の間。次の瞬間には、両者は互いに激しく火花を散らして
いた。こちらは石壁エリアのまだ入口付近。一方で相手は既に半壊した、封印扉の前に立っ
ている。距離を詰めなければならなかった。ずいっと、ダン達は改めて大きく一歩を踏み出
そうとして──。
「ちょっと待って!」
「気を付けろ。部屋の中から……例の気配がする」
 ステラとクロムだった。ダン達が、ガウルらが思わずその言葉に振り返り、目を丸くし、
一斉にこの半壊した封印部屋の内部へと目を凝らす。基本的に辺りは暗がりで、遠くの物は
よく見えなかったが、感覚を澄ませてみれば確かに何者かがそこに居た。
『……騒がしいな。そこにいるのは、誰だ……?』
 重苦しい、直接頭に語り掛けてくるような声が響いた。ダン達がガウルらが、ゆっくりと
近付きながら覗き込むと、そこには無数の白骨死体と、それらの山の上に主の如く鎮座する
干乾びたヒトの姿があった。
「ひっ──?!」
「ぞ、ゾンビぃ!?」
「……チッ。やっぱりまだ居たか」
「そりゃあそうでしょう。倒されたなんて報告、受けてませんし」
 思わず詰まらせるような悲鳴を上げるマルタやステラ、女性陣。
 しかしその一方で、ガウル達の反応は落ち着いていた。ガシガシと頭を掻き、実に面倒そ
うな様子でこの生ける屍を見ている。リュカやクロムが横目を遣ってこれを見ていた。もし
かして彼らは、こいつの正体を知っている……?
「お、お前こそ誰だよ? 不死(アンデット)系の魔獣か?」
「っ──!? ダンさん、あれ!」
 そしてサフレが、程なくして仲間達に慌てて指を差す。
 そこには、この座した物言う屍の手には、杖代わりに立て掛けられた見た事のない大鎚が
握られていたのだった。当の本人が明らかに長い歳月を経た──ボロボロの姿をしているに
も拘らず、この大鎚だけは朽ちる事なく、力強く神秘的に、濃黄の光を纏い続けている。
「……まさか。あれは」
「? 何だ、知らないで来たのか? あれが『轟雷鎚ミョーニル』。十二聖テュバルが使っ
てた聖浄器だよ」
 何だって──!? ガウルのそんな何でもないという風な言葉に、ダン達は思わず彼の方
を振り向いた。振り向き、再びこの輝く大鎚を手にする屍を見る。「馬鹿、何で教えちゃう
んですか!?」そして馬鹿正直に答えたガウルもガウルで、イブキとフォウに滅多打ちにさ
れ、叱られている。
『……然様。我が名はミョーニル。かつて彼奴(きゃつ)と契約を交わし、数多の戦場を駆
け巡りし者……。汝らは、我を求める者か?』
「契約?」
 故にこの生ける屍──ミョーニルの表現に、ダン達は一抹の違和感を抱いた。
 自分達の知っている聖浄器とは、力ある魂を核として作られた武器──即ち生贄だ。順当
に考えるなら、その犠牲となった彼ら聖浄器の本体は、武器として使役されることを嫌って
いる筈なのだが……。
『……我が望みは、戦い。強き者との死合。我はかつて、腕に覚えのある戦士だった。故に
この器の贄となる時も“戦い続けられる”ならと受け入れたのだ。彼奴とも大戦の最中、我
に強き者との死合を与えることを条件に力を貸した……』
 なのに。ギリッと、この屍──ミョーニルの化身は、その時の記憶を思い出すように怒り
に震えているように見えた。どっかりと座った股の間に置いた大鎚を強く握り締め、口元か
ら大きな吐息が漏れる。
『彼奴は、約束を破った。対価を払わず平穏を選んだのだ。我は彼奴のゆかりあるこの地の
奥深くへと封じられ、地脈の安定剤などというつまらん役割を押し付けられた!』
 ビリビリと辺りの空気が震えるかのような、力の余波。
 ミョーニル曰く、その後彼は長らく封印されていたが、今からおよそ百年ほど前、偶然に
も上層を坑道として掘り進めていた当時の作業員らによって解放されたのだという。
『経緯は分からぬ。だが少なくとも、我を封じた“鍵”を持つ者が鉱夫達の中にいたのだ。
本人も自身がそれとは知らなかったのだろう。そうして我は封印から解放され、その者達に
取り憑いてようやく自由を得たのだ』
 ダン達は、語られるその事実に、思わず顔を引き攣らせていた。その一方でガウルらは、
ある程度下調べなりして情報を持っていたのか、さして興味がないといった様子で手持ち無
沙汰に聞き流している。
 ……あり得ない話ではない。イセルナ達が回収した深緑弓(エバーグリス)然り、聖浄器
の封印を当人の血族が守り続けているという保証は何処にもないのだ。歳月が流れれば流れ
るほど、当初の記憶は忘れ去られ、たとえかつて封印の守護を任された者達であっても、そ
の役割が風化していてもおかしくはない。
 ミョーニルが話すように、偶然にも封印された場所と、それを解く鍵と血が一ヶ所に揃っ
てしまったのだろう。何かお宝があるのではないかと、興味本位でこじ開けようとし、そこ
に守護者の末裔が加わってしまっていたなら……。
『だが地上の者達は、我を恐れて上層の坑道自体を閉鎖した。或いは我らの戦った当時を知
る何者かが、密かに手を回したのやもしれぬ。……下手に脱出しても、討伐される可能性が
あった。だからこそ我は、こうして待っているのだ。我の望みを叶え、力を預けるに値する
猛者が現れるその日までな……』
『……』
 ダン達は思わず息を呑む。という事は、部屋の中に転がっている無数の骨は、彼に挑んで
散っていった冒険者のものか。或いはその身体に取り憑き直して、肉体を維持してきたのか
もしれない。
『さあ、我と戦え。何やらお互い問答をしていたようだが、どちらが正しいかどうかなど我
には興味はない。我を欲するのなら、その力で証明してみせろ!』
「くっ……」
 そういうパターンか。ダンは舌打ちし、内心焦る。これまでも一筋縄ではいかなかったと
はいえ、まさか聖浄器本人と戦う羽目になるとは思わなかった。
 どうしたものか……。仲間達と互いに顔を見合わせる。本人がこう言っている以上、素直
に収まってくれるとは思えない。望み通り、無理やりにでも、力で従わせるしかない。
「……仕方ねえな。要は勝ちゃあいいんだろ?」
 すると、先に動いたのはガウルだった。盛大に嘆息をつきつつも、そうコキコキと拳を鳴
らしながら、ミョーニルの鎮座する元封印部屋へと入っていく。イブキとフォウが何やらぶ
すっと不服があるように見えたが、結局彼を止めるまでには至らなかった。彼らとてミョー
ニルら聖浄器の力を必要としているのだ。
「ど、どうします?」
「このままじゃあ、あいつらに轟雷鎚(ミョーニル)が──」
「なぁに、心配すんな。俺が……出る」
 戸惑うダン達。だがそんな中で続いて手を挙げたのは、グノーシュだった。ガウルと同じ
ように元封印部屋へと歩いてゆく相棒に、ダンが険しい表情(かお)で訊ねる。
「グ、グノ。いいのか?」
「だって、お前はもう持ってるだろ? それに……名前からして雷の武器となりゃあ、俺の
方が後々好都合だしな?」
 ニッとグノーシュは嗤う。言い分も尤もだったが、それでもダン以下仲間達は不安を隠せ
なかった。ガウルと共に、白骨と朽ちた石畳だらけの部屋の中に入る。妙な展開になってし
まったが、少なくとも力を示せば、ミョーニルを合意の下に手に入れられる可能性は高い。
『ふふふふふ……。さあ──死合だ!』
 それぞれの仲間達が見守る中、かくして試練の火蓋は切って落とされた。
 鎮座していた骨の山から立ち上がり、生ける屍ことミョーニルがその大鎚から膨大な雷の
エネルギーを供給する。膨張と咆哮。迸る電流が、そのみすぼらしかった身体を、見上げる
ほどに巨大な筋骨隆々のそれへと変貌させる。

 秋も終わりが見え、冬の足音が近付いて来ている。近い内に今年も、美しい白雪が竜王峰
の山々を彩ってくれることだろう。
「……」
 白咆の街(グラーダ=マハル)、ディノグラード邸。
 ヨーハンはこの日も、屋敷の自室にて静かな時を過ごしていた。パチパチと小気味よく鳴
り続けている暖炉の火と、緩やかなリズムを刻むロッキングチェア。
 老いた余生を過ごすには、申し分のない環境の筈だった。だが一人静かに薄らと目を瞑っ
ている彼の居住まいからは、ある種の寂寥感ばかりが漂っているようにも見える。
『大爺様』
 そんな時だった。ふと扉をノックする音がし、聞き慣れた家族の声が聞こえてきた。
 セイオンだ。ヨーハンは椅子をキィ……と軽く動かし、振り返ると入るように命じる。
「……失礼します。書簡をお持ちしました。アルス皇子からの、件の解読結果についての報
告との事です」
 その一言に、ヨーハンの目がそっと静かに見開かれた。彼からこの封筒を受け取り、裏面
に記されたアルスの署名を確認する。
 セイオン曰く、アルスから七星連合(レギオン)、七星連合(レギオン)から自分を経由
して届けられたものだという。ヨーハンは暫くじっと裏面に、表面に目を落としていたが、
ややあって彼と一緒にやって来ていた屋敷の者達に、一部の側近を残して退出を──人払い
を命じた。彼に封筒を一旦返し、深く静かな嘆息を漏らす。
「……来てしまったか。どうやら彼らは、足を止めてはくれなかったようじゃの」
 それは内心残念がっていたようで、一方で安堵も含んでいた複雑な感情だった。
 個人的な本音としては、もう聖浄器(かれら)を苦しめたくはないが、反面かつての自分
達の採った停滞を破ってくれたことに、一抹の嬉しさも感じている。
「手紙を……読んでくれぬか? 儂には、リュノーの残した言葉を聞く義務がある」
 数拍セイオンは目を瞬いていたが、すぐに小さくコクリと頷いた。周りの数名の側近達に
目配せをして了解を貰い、その場で封を切って中の便箋を取り出す。
 手紙は、便箋幾枚にも及ぶ長いものだった。最初は筆を執ったアルスからの挨拶と侘びが
綴られ、その後に彼らが解読したというリュノーのメッセージが延々と書き写されている。

 ──ジーク達北回りチームは、古都ケルン・アークに到着していた。一旦宿を取り、ヨー
ハンと再び面会する為に、ディノグラード家へと連絡を取っている。
 ──瘴気の異形と化したヘイトを、重鎧の男と使徒達、及びヒュウガとウル率いる追討軍
が追い詰めていた。本来ならあり得なかった共闘が、迷宮の中枢で繰り広げられている。
 ──ガウルとグノーシュ、それぞれの代表が廃坑地下に封じられた轟雷鎚(ミョーニル)
の化身と戦っていた。迸る雷撃を纏う一撃をかわし、二人は顔を顰めながら大きく中空へと
飛び退いている。

『私の名は、リュノー・マルセイユ。この一節が見つかったということは、世界は既に未曾
有の危機に瀕しているだろう』
 ヨーハンがそっと見上げてくる前で、セイオンは手紙を読み上げていた。自身もその文面
に怪訝を抱き、嫌な予感に半ば無意識の内に眉を顰めながら、それでも命じられるままに、
この長文を読み進める。
『友よ、許せ。人の子らの末裔よ。災いを先送りにしたことを許して欲しい』
『これから私は、ここに全ての真実を書き残そうと思う』

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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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