日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(企画)週刊三題「魔法少女モノ」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:赤、魅惑的、燃える】


 いつからか、この世の中は“怪人”で溢れるようになった。
 姿形も、その能力さえも多種多彩な異形の存在達。奴らは突如として人々の暮らす街中に
現れ、暴れ回る。それはさながら悪意を剥き出しにした災害のようで、並みの人間では到底
太刀打ちできない。
 ……にも拘らず、人々は案外呑気だ。怪人が現れても「お? 今日も出たかー」などと遠
巻きに見物し始めるといった光景は、今や日常茶飯事である。確かに怪人達のもたらす被害
はしばしば大きな爪痕を残すが、それ以上に事を最小限に抑えてくれる者達もまた、この世
の中には存在するからだ。
 “魔法少女”。
 奇抜なコスチュームを身に纏い、怪人達に負けず劣らぬ力を振るう、戦う乙女。
 正式には「エルダの騎士」と呼ぶそうだが、一般的には魔法少女というネーミングが定着
している。彼女らは怪人達が出没し始めた頃に突如として現れ、颯爽とこれを退治しては去
ってゆくという行動を取り続けた。最初こそその非日常に困惑する人々も多かったが、時の
政府が公に彼女らの存在を認め、且つ協力関係を結んでいると表明したことで、そんな一時
の混乱は収まりをみせた。今では対怪人専門の特殊部隊といった位置付けで、政府から給料
も出ているらしい。
 そんな訳で、いつしか世の中は怪人と魔法少女、二つの勢力が半ば日常的に入り乱れて戦
うエンターテイメントと化した。怪人らによる被害を彼女達が逸早く駆けつけ、最小限に留
めてくれることに加え、毎度その不思議な力でもって、壊された街をあっという間に元通り
にしてしまう点も大きい。何だかんだ言って、人とは現金なのである。
「──」
 そんな、奇妙な日常が当たり前になった街の一角で、和人はその日も観ていた。街に怪人
が現れたとのニュースを聞き、人ごみの中に紛れつつ彼女達の勇姿を目に焼き付けていた。
「私とイエローで奴を引きつけるわ。その隙に本体部分を!」
 魔法少女達は、基本複数人単位のチームで行動することが多い。
 この日駆けつけて来たチームもまた、その例に漏れなかった。赤・青・黄色、それぞれの
カラーで統一された部分鎧のコスチュームを身に纏い、三人の魔法少女が岩巨人のような姿
の怪人と戦っている。最初、その巨体から繰り出される攻撃に彼女達は回避の一手を取って
いたようだったが、メンバーの内の一人・サムライブルーの掛け声に反撃を開始する。
「オッケー!」
 そう応えてこの怪人の正面に陣取ったのは、リーダー・ブレイブレッドだった。鋭い太刀
を振るうサムライブルーや、大型の洋弓を構えるスナイパーイエローとは違い、彼女は両手
足を覆う拳具・具足だけが武器の格闘タイプだ。飛ばしてくる岩の雨霰をブルーが次々に切
り裂き、電光石火の如く瞬間移動するイエローが魔力の矢を放ってこの岩巨人の怪人に狙い
を定めさせない。
 そんな仲間のアシストを受け、彼女は真っ直ぐに地面を蹴った。握った右拳にメラメラと
熱い炎が点る。全身のバネを使って繰り出されるその渾身の一発に気付いて怪人が振り返る
も──既に遅かった。彼女の拳はこの怪人の巨体ど真ん中を打ち貫き、その身を浄化の炎と
共に爆発四散させたのである。
 おおおおおッ!! 戦いの一部始終を観ていた人々が、弾かれたように彼女達に拍手喝采
を送った。レッドがブルーが、イエローが着地し、そのエールに笑顔で応える。怪人は跡形
もなく消え去っていた。
 遠くから通報を受けた警察──数台のパトカーがサイレンを鳴らしやって来る音がする。
やがて彼女達は、到着した警官らに事後処理を任せると颯爽と踵を返して去って行った。そ
れでも尚、暫くの間、人々からの歓声は鳴り止まない。
(……やっぱカッコイイなあ。強くて可愛いし)
 和人も、そんな皆と同様に、彼女らの去り際の姿を見つめていた。
 熱心に──その視線はブルーでもイエローでもなく、リーダー格のレッドに。彼はかねて
から彼女の熱心なファンだったのだ。誰よりも強くて勇敢、それでいて元気溌剌としたその
姿に以前から彼は強く惹かれていた。自分にはないものを持っている、憧れの対象として彼
女を見ていたのだった。
「……」
 何より──彼は知っている。
 彼女の名前は佐渡朱音。明るくてスポーツ万能なクラスメートの少女だ。他の二人も、面
識こそないが、普段彼女とよく一緒にいる同級生の女子達であると記憶している。
 格好や髪色は変身してるから違っているけど……間違いない。そう判った時には内心どれ
だけ嬉しかったことか。
 だが、かといって本人に何か直接アプローチをしている訳ではない。ただその活躍を遠く
から眺めて応援しているだけで満足だった。自分にはない底抜けの明るさと、何より弱きを
助け強きを挫くその正義を貫ける力は、彼の憧れだった。
 ……話しかけたって、困らせちゃうだけだろうしなあ。
 よくは知らないが、正体を明るみにさせてしまうことは宜しくない。活動にも支障が出る
だろうし、何より何処から悪い虫が沸いてくるか分かったものじゃない。
 だからそっと見守る。その笑顔に、元気を貰える。
 それだけで、それだけで充分だった筈なのに……。

「──こんにちは。貴方が平(たいら)和人君ですね?」
 数日後の、ある日のことだった。一人学校から帰る途中の和人を、ふと見知らぬ人影が呼
び掛けてきたのだ。
 全身をローブで覆った、素顔の知れぬ人物。
 まるで闇をそのまま纏ったような姿と、その奥で赤く光る眼に、一瞬和人は怖気づいて後
退った。まさか、怪人か? でも怪人が人と会話するなんて聞いたことがないし……。
「おやおや、怖がらせてしましたか。申し訳ない。初めまして、私はしがない商人。今回は
是非貴方に、試して欲しいものがありまして……」
 だがそんな戸惑いも織り込み済みといったように、この人物・ローブの売人が差し出して
きたのは、一個の宝石だった。
 それは見る角度によって、キラキラと七色に煌く結晶のようなもの。
 少なくとも見たことのないこの輝きに、和人は思わず目を瞬いて見つめていた。吸い寄せ
られるように売人との距離が詰められ、ポンとその結晶が自らの掌の上に収まる。
「これは輝鉱石と言いましてね。エルダの騎士──いわゆる魔法少女達がその力を使う為に
持っているものなんです。今回はもし宜しければこれを、貴方にも一つプレゼントしたいな
あと思いましてね」
「えっ!?」
 だからこそ、和人は大いに驚いた。ローブの売人自体こそ怪しかったものの、そんな大事
な代物がホイホイと目の前に差し出されるなんてことが……。
「う、受け取れません! そんな貴重なもの。だ、大体何で僕が? 僕、男ですし……」
「別に使うのに性別なんて関係ないですよ? ただ総じて適合者に女性が多いというだけの
話です。きちんと男性の使い手だっているんですよ? 私だってそうした方達を何十何百と
見てきましたからね」
「……」
 和人は一旦視線を手元に落とし、この宝石を見た。
 魔法少女と同じ力の源。曰く彼はそれを何人も見てきた。
 その間もキラキラと七色に反射を続けている結晶。そんな代物を、わざわざ自分に渡しに
来たということは……。
「まさか、スカウト? 魔法少女って、こんな感じで増やしてるんですか!?」
「……ええ。最近はどんどん増えているでしょう? こっちも頭数を確保しなきゃ間に合わ
なくって。そこで私達のような者が、こうして反応の強い方達を訪ねて回っているという訳
なんです」
 信じられなかった。和人は思わずぎゅっとこの結晶を握り締め、静かに興奮していた。
 なれる。自分も魔法少女あらため少年に──佐渡さんと同じようになれる。
 そんな彼の姿を見て、ローブの売人はニッと笑った。傾き始めた彼の心に、最後の一押し
をすべく、勧誘の言葉を投げ掛ける。
「どうやらお受けしていただけそうで。使い方は簡単です。鉱石を握って、強く念じてくだ
さい。その願いを元に、貴方だけの力が得られる」
「僕だけの……力」
「はい。何も躊躇うことはありません。その力が、我々(セカイ)を救うのですから」

 だから……願った。彼女への憧れと、押し込めていた欲望へ近付く為に。
 言われた通りに結晶を握り締め、直後に彼の身体は眩い光に包まれる。しかしそこから起
きた変化は、彼の思っていたものとは全く違っていた。
 ……熱い。全身が、溶ける。
 心と体が内側からぐちゃぐちゃに掻き回されるような激痛だった。一方で自分の中に潜ん
でいた欲望が何なのかを自覚し、フッと“安堵”する気持もまたそこには在った。
「──反応は、確かこの辺りに……」
「いたっ! ヘドロ型の“業魔(ごうま)”!」
 そうして路地裏で蹲っていた所に現れたのは、魔法少女達だった。
 佐渡朱音と、その仲間の少女達。和人が憧れて遠巻きから眺めていた、正義の味方達。
『ア……アア……ッ!?』
 和人は、怪人と化していた。人間という姿を棄て去り、ヘドロの塊のような流動する灰色
の身体を持つ異形へとその姿を変えていた。
「急に出てきましたね」
「いえ、寧ろ好都合よ。人々に被害が出る前に終わらせられる」
「いくよ! 透子、麻弓!」
 制服姿の彼女達は、一斉に左の袖先を捲って、揃いのブレスレットを取り出した。陶器と
も金属ともつかない素材で出来たそれは、彼女らの手首にぴったりと巻き付いている。その
中を空洞にした挿入口(スロット)へと、三人は懐から取り出した整形された結晶──輝鉱
石をセットする。
『GEM SET』
『騎士換装(ナイトチェンジ)!』
 三人の姿が、赤・青・黄色、それぞれのカラーで統一されたコスチュームに瞬く間に包ま
れていった。髪色も本来のそれから変わり、サークレット状の装備が付随する。拳具・具足
と太刀、洋弓といったそれぞれの装備が握り締め、彼女達ははたして魔法少女としての姿に
変身したのだった。
『ア……ガガッ、ガッ、アガガッ?!』
 そ、そんな。僕が、僕が狙われてる?!
『ガガッ、ガッ、アアァァァ……!』
 僕が、怪人に? こんな筈じゃあ……!
「人々の平穏を脅かす業魔よ」
「我らがエルダの名の下、浄滅せよ!」
 名指しからの口上。そして放たれた炎の拳圧と氷の斬撃、雷の魔力を纏う矢。
 た、助け──!
 しかしそんな彼の叫びは最早人語にさえならず、その身体は彼女達の攻撃を受けながら塵
となって……。
                                      (了)

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  1. 2018/03/01(木) 00:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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