日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(企画)週刊三題「シグナル」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:青、殺戮、宇宙】


 それは、平穏でどうしようもない日常を、突如として一変させた。
 殺しである。ある時を境に、人々が暮らすこの惑星(ほし)で、知らぬ間に一人また一人
と息絶えた姿が発見されるようになったのだ。
 最初は何の落ち度もない子供だったか。いや、それとは知らず森の小動物だったかもしれ
ないし、或いは運悪く迷い込んだ大人だったかもしれない。
 被害は当初ぽつぽつと、皆が気付かない間に散発的に起きた。最初に事件として報告され
た町から次の町へ、更に周囲の街と、犠牲者は増える一方だった。始めは「嫌だねえ……」
と他人事のように囁き合っていた人々も、地元の各当局が広域の捜査本部を立ち上げ、記者
会見を開いた後には、酷く怯えるようになった。誰とも知らぬ犯人の正体と、その目的が長
らく不明なまま、様々な情報と憶測だけが行き交った。
 ──それらには諸説、細かい部分にこそ差はあったが、概ね目撃された共通点については
次の通りである。

 一つ、犯人は単独ではないらしいこと。しばしば彼らは複数人で行動し、山奥や人気の少
ない地方の集落を中心に出没していた。まるで獲物を追い詰めるように、じわりじわりと音
もなく遠くより迫って来るのだという。
 二つ、犯人達は共通して奇妙な装備に身を包んでいたこと。それはあたかもSF小説に出
てくるようなパワードスーツ姿だったという。見た事もない滑らかな材質の金属製で、ブラ
インド状に走った顔面や四肢、胴体に等間隔で青白く光る幾つものライン。何かの排気口か
装飾と思われたが、実際に遭遇した人々にとっては恐怖の象徴でしかなかっただろう。
 三つ、犯人達は見たこともない武器で人々を狙ってくるということ。ある者は、短銃のよ
うな小さな筒から放たれたレーザーで仲間が撃ち貫かれたと言い、またある者はその小さな
筒から迫り出した青白い鋸のような刃が、軽々と真っ二つにしたと言う。少なくとも、彼ら
に躊躇と呼べるような素振りはなかった。ただ淡々と、何処からともなく現れて、気付いた
時には一緒にいた者が倒れている。或いは直後、そう目撃した当人も絶命する……。

 ただの都市伝説のように語れていたそれは、時を経るにつれ理不尽な現実となって人々を
襲い始めた。山奥や地方だけに留まらない。このパワードスーツの殺戮者達は徐々に、多く
の人々が暮らす都市部にまで進出し始めたのだった。
 夜闇に乗じて、一人ないし人気のない路地に入り込んだ人々を音もなく撃ち殺す。被害者
達はしばしば自身が狙われたことにも気付かず、後頭部を真っ直ぐにレーザーらしき一発で
撃ち抜かれて、或いは物陰からのすれ違いざまに斬り捨てられ、音もなく首を浮かす。
 “青い殺人機(キラー・ブルー)”──誰が呼んだかそう名付けられたこの者達にまつわ
る話題は、程なくしてほぼ毎日、ニュースで取り上げられぬ日がないほどになった。日付が
変わる度に一人また一人と何処かで犠牲が出て、人々は震え上がった。大人達は自らは勿論
子供達にも、夜の外出は止めるようにときつく言って回ったし、少なからぬ店舗も夜間の営
業を自粛するようになった。
『一体、彼らは何者なのでしょうか?』
『そうですね……。これまでの目撃情報から、かなり強力な武装集団だと推測されます』
『ですが、これほどまでに多くの犯行を重ねておきながら、犯行声明のようなものは一切出
てきていませんよね?』
『はい。そこが私どもも解らないのです。一体何が目的なのか? そもそも人間なのか?
文字通りベールに包まれたままで、不気味としか言いようがありません』
 メディアの扇情的な報道も食傷気味になってゆく中、それでも尚、巷やインターネット上
では様々な言説が流布されるようになった。
 曰く、某国による秘密兵器の訓練だとか、地球外生命体──宇宙人による侵略説だとか。
或いは何ら好転しない状況と犠牲者達をこじつけて、現政権による粛清だとの陰謀論まで出
てくる始末。
 故に、そこでようやく、政府は自ら本格的な対処に乗り出した。
「……こちらA-3。例の青白い人影を確認。これより、攻撃態勢に入る」
『了解(ラジャ)。こちらB-1、至急周辺のチームと合流し、援護に向かう』
 かねてから多くの目撃情報があった山奥の一つ。そこへ政府は完全武装の国軍部隊を投入
してこれを掃討しようとした。青白く光るラインを多数携えた奴らは、暗殺者にしては目立
ち過ぎる。捜索の最中、この敵の一団を見つけた部隊の一つがゆっくりと距離を詰めようと
した。軍用の大型銃をがっしりと構え、なるべく足音を出さないように進んでゆく。
『──』
 気付かれた。数個の青白いブラインド状の眼がこちらを見る。バッと隊長格が片腕を振っ
て合図し、反撃をさせぬ内にと一斉掃射を始めた。けたたましい銃声と破裂の光が、山腹の
隙間を縫って駆け抜けてゆく。
「なっ……!?」
 しかし、パワードスーツの犯人達にその弾丸の雨霰が届く事はなかった。着弾する寸前、
そっと手を前にかざすと、彼らは目に見えない壁のようなものを作ったのだ。
「バリ、ア?」
「嘘だろ。漫画じゃあるまいし……」
 どうやら同じ装備の内、防御膜のようなものを展開したらしい。かざした手の前で弾かれ
た銃弾は、一瞬一瞬青白く光る障壁に阻まれ、ばらばらと地面に落ちてゆく。更に彼らは存
外にも機敏な動きで、一斉に左右に分かれて地面を蹴り、迫って来たのだった。
「ガッ──?!」
 そう認識した時には、もう遅かった。あっという間に肉薄したパワードスーツの彼らに隊
員達は次々と真っ二つにされ、どうっと薄暗い山中に倒れる。青白い鋸のような刃が握られ
ている。以前から報告にあった凶器の一つだ。更に「ひいっ……!」と逃げ出した他の隊員
達を、彼らは淡々とその青白いレーザー銃で一人一人、的確に撃ち抜いてゆく。
『A-3、どうした? 何があった!?』
『おい、応答しろ!』
 仲間達からの無線が虚しく響く。その後暫く、犯人達による一方的な虐殺が続いた。そし
て夜明けになった頃には、この部隊を含めた討伐隊全員が、変わり果てた姿で発見されたの
である。

「──えー、皆さん。見えますでしょうか? UFOです。巨大なUFOが森の中に鎮座し
ております……!」
 誰も敵わなかった。ただ理不尽に殺されるしかなかった。
 だがそう“青い殺人機(キラー・ブルー)”らによる事件が普遍的になり始めた頃、とあ
る取材クルーが郊外の山中を訪れていた。木の陰に隠れながらカメラを向け、リポーターと
思しき女性がマイクを片手に小声を出している。周りにはずらっと、数名のクルー。彼女ら
は幾つかの目撃情報から、彼らの隠れ家(アジト)らしき場所に来ていたのだった。
 木の陰から遠巻きに、そこにあったのは、確かにUFOとしか呼びようのない巨大な円盤
状の乗り物だった。そこの出入口らしき近くの地面に、数名の人型の異形が、やはり青白い
火を焚いて暖を取っている。
『……○◆×』
『■▽▲◎○?』
 どうやら、例のパワードスーツを纏う者達で間違いないらしい。彼らは焚き火を囲みなが
ら座り、その面貌を取って寛いでいた。滑ったような深い青色の肌に、溝を掘っただけのよ
うな黒い二つの目と、両端に薄く線の入った口がちょこんと付いている。何やら互いに話し
ているようだが、言葉は全く分からない。明らかに一行の常識からはかけ離れた存在達がそ
こにいる。
「やはり彼らは、外宇宙よりの来訪者のようですね」
 取材クルーについて来ていた、小奇麗な黒スーツの男性が言った。湛えているのは線目の
微笑で、さながら聖職者のようだ。そっと祈るように両手を胸元に当て、リポーター以下こ
ちらを見てくる面々を、静かに安心させるように言う。
「でも大丈夫。あれだけの技術を持っているならば、知性のある者達の筈です。話し合えば
きっと理解できるでしょう。これまでは、互いに不幸な接触ばかりでした。今こそ私達が、
この哀しい連鎖を終わらせるのです」
 コクコク。リポーター達が頷き、再びカメラを、遠巻きの青い異星人達の下へと向けた。
 今回彼女らがここまでやって来たのは、その為である。一方的な殺戮が繰り返されるこの
現状を打破すべく、真相を突き止めるべく、平和的解決を訴えるこの活動家と共に突撃取材
を試みようとしていたのだ。
「では行きましょう。危なくなったらいつでも逃げられるように。……もしここで映像を持
ち帰れれば、世紀の大スクープですよ」
 リポーターの発言は、最初の一言を残して切り取られた。一行はそろりそろりと、カメラ
を向ける以外は皆揃って両手を挙げ、彼らに敵意がない事を示しつつ、近付いてゆく。
「◎●◇××◎」
「×□●◆◇」
 相手も、程なくしてこちらに気付いた。だが余裕なのかファーストコンタクトにおける態
度が功を奏したのか、即座に撃ち殺してくるような素振りはない。
 リポーターと活動家は一行の先頭の立ち、長身な彼らを見上げた。マイクを向け、先ずは
仰々しく胸元に手を当てて挨拶をし、会話を始めようと試みる。
「すみません。私達はBKSテレビ──この星の人間の者です。皆さんがここ数年世間を騒
がせている“青い殺人機(キラー・ブルー)”さんでよろしいでしょうか?」
「私達に敵意はありません。話し合いに来たのです。何故貴方達はこの惑星(ほし)に来た
のですか? 何が望みでしょう? 同じ知性ある隣人として、共に生きる道を私達は模索し
たい」
 怪訝に思ったのだろうか、異性人達は一度、互いの顔を見合わせていた。溝を掘っただけ
な小振りな目や口が妙に愛嬌がある。
 だが次の瞬間、彼らは首元──パワードスーツ腕部の装置を何度か操作すると、その首周
りに展開している青白いライン、模様の羅列を変化させた。『あ、あ……』聞こえる。どう
やらこちらに合わせ、言語を変えたらしい。翻訳機能まで付いているのだろうか。
『いきなり何かと思えば……。この惑星(ほし)の動物か』
『話し合い? 何を勘違いしている? 多少知能があるだけの未開種の分際で』
「えっ?」
『我々はただ、狩猟(かり)に来ているだけだ。何故“獣”などと話す必要がある?』
『ここを突き止めた事は褒めてやろう。ちょうど骨のある獲物を探していた所だ』
『三十秒だけ待ってやる。精々逃げるがいい。そうしたらこの光線銃(ヴィエッタ)でまた
得点(セクア)稼ぎだ』
                                      (了)

スポンサーサイト



  1. 2018/02/04(日) 00:00:00|
  2. 週刊三題
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅶ〔92〕 | ホーム | (企画)週刊三題「露悪ノ覚エ」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://higurasisouann.blog27.fc2.com/tb.php/957-f35b9aec
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

訪問者累計

最新記事

最新発言

検索窓

月別履歴

07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

分類/索引

【案内板】 (2)
【小説:短編】 (20)
本の蟲 (1)
硝子野不動産店 (1)
夏の日の幻影 (1)
四番線の彼女 (1)
夢視の宿 (1)
線を曳く町 (1)
炬燵の神様 (1)
三者三盗噺 (1)
色眼鏡 (1)
奴らは攻城戦師 (1)
詰め替える (1)
同じ籠の狢 (1)
二十年後の遺言 (1)
轍の先 (1)
水に流せば (1)
真夜中の御二柱 (1)
いつか見た夢 (1)
神様達の初詣 (1)
白い花束 (1)
丸の代償 (1)
【小説:長編】 (205)
Amethyst League (6)
アンティーク・ノート (3)
ユウキのヒカリ (5)
NIGHT GUNNERS (5)
レディ・ルーン-Bonds of RU'MEL- (6)
ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle- (116)
死に損いのデッドレス (5)
Dear SORCERY (4)
サハラ・セレクタブル (55)
【企画処】 (510)
週刊三題 (500)
その他参加物 (10)
【資料庫】 (2)
【落書帳】 (2)
【詩歌帳】 (9)
【雑記帳】 (419)
【読書棚】 (32)
【遊戯倉】 (25)
path. (4)
decide: (3)
ユー録FW(凍結中) (17)

記事録

交友関係

このブログをリンクに追加する

(RSSリンク)

(QRコード)

QR

Tweets by long_month