日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブルⅢ〔30〕

「ぐがッ!!」
 数度目の殴打を食らい、由良は大きく吹き飛ばされた。肺の中の空気が根こそぎ乱暴に押
し出され、口から大量の血を吐く。
 夜闇が伝う路地裏の一角。由良はコンクリの壁に背を預け、荒く肩で呼吸をしていた。
 スーツ姿の全身は既にボロボロで、口元や脇腹、手足などあちこちが血で汚れている。奔
る痛みと共に身体の芯が軋んでいた。どうやら、肋も何本かやられたらしい。
「──」
 そんな彼へと、ゆらり迫って来る影がある。
 怪物だった。寸胴な肉柱のような身体に巨大な唇を貼り付けた醜い怪人──本性を現した
杉浦こと、詐欺師(ライアー)のアウターである。
「……まさか、あんたが化け物だったなんてな」
「ふん。その割には随分落ち着いているようじゃないか」
 やっとの事で絞り出した声に、ライアーが哂う。由良も必死の苦笑いを浮かべていた。
 だが一方で、その内心では猛烈な勢いで思考を回している。ボロボロの身体に鞭打って、
自分に何が出来るのかを懸命に探ろうとしていた。
 ……この事を、兵(ひょう)さんは知っているのだろうか?
 いや、そんな筈はない。だってこれは核心なのだから。今目の前には、一連の不可解事件
の答えと言ってもいい存在が迫って来ている。
 あの人は、騙されていたんだ。こいつとは長い付き合いだと言っていたから、多分何処か
で入れ替わっている。元から化け物なら、そもそも捕まるようなヘマはしないだろうから。
少なくとも数年、こいつはあの人を騙してきたんだ……。
「ま、伊達に何度も目撃して(みて)きてはいねぇか」
「……?」
 何故それを──。だが由良のそんな思案は、次の瞬間ライアーが呟いた一言に中断させら
れた。一歩二歩、扁平な足を踏み出して近付いて来る巨体。由良が眉を顰めて問う前に、彼
はおもむろにその両手を大きく広げた。パァンと、自身の目の前で音を鳴らして合わせる。
「“この場の俺達に、誰もが気付き、足を止める”」
 最初、一体何をしているのか解らなかった。ただ手を合わせた直後、そうライアーが言葉
を紡いだだけだ。
 その内容とは打って変わって、やはりしんとしている路地裏。
 だが何故だろう。今ちょうど、奴が喋った直後“周囲が歪んだ”ような……?
「これで、よし」
 サッと合掌のように合わせた手を解き、ライアーは呟いた。由良が目を瞬いている間にも
彼はその巨体を揺らし、こちらのすぐ目の前へと近付いて来る。ガシッ。胸元を掴まれて、
由良は彼に片手で軽々と持ち上げられた。じたばたと、反射的にもがくが、相手は全くもっ
て微動だにしない。
「あんたに恨みはねぇが……。ここで死んで貰う」
 もう片方の手が、ギチギチと自分の身体に向かって狙いを定め始めている。由良はいよい
よ終わりかと覚悟した。何でこんな事に。一体誰の差し金なんだ? 何が一番の理由となっ
たのだろう? いや、それよりも──。
「……一つ、訊いてもいいか?」
「あん?」
「守護騎士(ヴァンガード)は……お前達の味方か?」
 だから最期の最期で訊ねた由良の一言に、ライアーは一瞬止まった。止まって、逆上する
ように肉塊な全身に血管が浮き出る。
「はあ!? 何を寝惚けたことを言ってる? 同胞達を殺して回ってる奴だぞ!?」
「……」
 嗚呼、上手く引っ掛かってくれた。由良は酷く安堵したが、同時に酷く自分が可笑しくな
ってしまった。息を詰まらせながらも、フッとその口元には乾いた自嘲(わら)いが込み上
げてくる。血の痕が伝っている。
 嗚呼、そうか。つまりは自分の杞憂だった訳だ。
 我ながら馬鹿だな。そうなると自分は、結局そんなことの為に死ぬのか……。
(すみません……兵さん……。未熟な俺を、許し──)
 そして次の瞬間、由良の身体をライアーの手刀が貫いた。内蔵から口から、ごぼっと大量
の血が溢れ出る。瞳の色から生気が褪せ始める。「……何が可笑しい」ライアーがそうチッ
と、不機嫌に舌打ちをしながら手刀を引き抜いた。そのまま由良の身体はどうっと壁際の地
面へと崩れ落ちる。
「まぁいい。心配するな。すぐにお前の相方も、後を追わせてやるからよ」
「──っ!?」
 だが、その一言がいけなかった。流れ出る血と共に失せようとしていた由良の命を、内な
る炎を、再びその一言が火を点けたのだった。
「や、めろ……。兵さん、に……手を、出すな……ッ!!」
 地べたを這いつくばりながら、ライアーの脚にしがみ付く由良。
 その最期の抵抗に、ライアーはキッと怒りを露わにした。既に相手は瀕死の重傷で、たか
が人間という侮りがあった。「うるせえ!」すくい上げるように、その拳が由良の胸元から
顔にかけてヒットした。その身体は大きく吹き飛ばされ、近くの立てかけられた鉄パイプを
崩しながら転がり込む。
「……」
 血が止まらない。由良はボロボロになった身体と意識を自覚していた。崩れて転がった鉄
パイプの中に塗れながら、彼はずざり、ずざりと血塗れの腹を押し付けながら進もうとして
いた。……知らせなくては。兵さんに、こいつの正体を。答えは、自分達のすぐ近くに潜ん
でいたのだということを……。
「おっと」
 だが、そんな由良の悪あがきをライアーが見逃す筈もなかった。力の入らない手で懐に伸
ばした手。それをパシッと取って遮り、彼は由良からそのデバイスを取り上げた。取り上げ
て画面をその場でタップし、慣れた様子で操作し始める。
「悪いが、させねえぜ? 時間稼ぎに利用させて貰う」
 操作している様子までは見えなかった。というより、もう身体を起こして見上げる余力す
ら残っていなかった。
 く、そ……。由良はそれでもじり、じりっとその場から這いつくばる。血に塗れた指先を
伸ばし、暗がりに一層隠れた、建物の隙間と隙間に向かってその指を走らせる。
「……」
 伝えなくては。
 朦朧とする意識の中、ライアーが自身のデバイスを弄っている隙を狙い、由良は震えの止
まらないその手で、血の文字を書き始めた。


 Episode-30.Control/越境者の条件

「畜生ッ!!」
 廃工場のアジトに帰って来るや否や、人間態に戻ったバイオは手近な機材を殴りつける。
加減も何もなかったらしく、機材は配線で繋がっていた回りの壁を巻き込んで引き千切り、
激しくへしゃげて物言わなくなった。
 戻って来たと思いきや、不機嫌マックスのリーダーに怯えている部下達。
 その一方で、同じく戻って来た彼の側近──人間態のトーテムとヘッジホックは落ち着い
たものだ。片ややれやれとため息をつき、片やゆっくりと近寄り、この難物なリーダーを何
とか宥めようと試みる。
「止めぬか。皆を怯えさせてどうする? ……まだ良かったのではないか? もしあのまま
守護騎士(ヴァンガード)を倒した所で“蝕卓(ファミリー)”は我々を認めてはくれなか
っただろうよ」
「……」
 老紳士──トーテムの言葉に、バイオは小さく舌打ちをしながらも反論することはできな
かった。事実だったからだ。もしこちらの推測通りだったとすれば、あのまま戦っていても
元々の目的は果たせなかった筈だ。
 何のトラブルがあったかは知らない。だが守護騎士(ヴァンガード)は、どうやら現在変
身できない状態にあるらしい。つまり全力を出すことができず、満足に戦うこともできない
ということ。
 こちらとしては、その彼を叩き潰すことで蝕卓(ファミリー)を認めさせようとしていた
のに、それでは証明にならない。加えて例の黒騎士──エンヴィーまでが割って入って邪魔
をしてきた。あの場はトーテムの機転で何とか離脱することができたが、結局こちらは思惑
が外れるわ手負いになるわで骨折れ損である。
 何より……バイオが内心苛ついてならなかったのは、エンヴィーこと勇であった。
 確か龍咆騎士(ヴァハムート)といったか。所詮人間と高を括っていた、油断があったと
言ってしまえばそれまでかもしれない。だがそんな彼に圧倒されたのは事実。そしてそんな
事実が、バイオの自尊心──自身の強さへの絶対的な自信に傷をつけていたのだった。
「やっぱ、無茶だったんだって」
「そうだな……。蝕卓(ファミリー)を敵に回してしまっては元も子もないぞ?」
 ドラム缶の上にひょいっと座り、灰色フードの青年──ヘッジホックが言う。トーテムも
控え目ながら、その場で腕を組んで帽子の下で思案顔をし、そうやんわりと諌めてくる。
 バイオは相変わらず不機嫌だった。先ほどのように物に当り散らすということはしなくな
ったが、こういう時の彼にはあまり関わりたくない……。部下達の内心は、総じてそんな所
であるのだろうと思われた。
「じゃあお前らは、このままでいいと思ってんのか? 蝕卓(ファミリー)に、人間のガキ
にいいように使われて、それで構わないっていうのかよ?」
「それは……」
「まあ、何でっていう気持ちはありますけど……」
「このままじゃあ、なし崩しだぞ? これ以上機会を逃したら後がねえんだ。多少無茶をし
てでもひっくり返さなきゃ、幹部の席には座れねえ」
「……。ねぇバイオ、何でそんなに幹部に拘るのさ?」
「あ?」
「そうだのう。確かにお主は、前々から大口を叩く男じゃったが……」
 だからヘッジホックが、トーテムが改めて訊ねた時、バイオは一瞬押し黙った。部下達も
少なからず興味があるといった様子でこちらを見てくる。ぽりぽりとモヒカン頭を掻いて、
彼は何処かばつが悪そうな表情をみせる。
「……だってそうだろうが。俺達はシンに作られた“駒”だ。理由は知らねえ。だが俺達は
生まれた時から繰り手(ハンドラー)を見つけて、進化することばかり考えてきた。実際こ
こにいる面子はそうやって実体を手に入れて、気ままに暮らしてる。……だがよ。どれだけ
俺達が必死こいて進化を果たしても“自由”はねぇんだ。蝕卓(ファミリー)に……何だっ
け? ああ、生殺与奪を握られてる。そんなの“駒”と一緒だろ。モルモットと同じじゃね
えか。だから……手に入れたいんだよ。強くなれば、連中の幹部の席に座れるだろ? そう
すりゃあ少なくとも今よりは安全を得られる筈なんだ。……あわよくば、シンの首だって狙
える。お前達を、モルモットから解放できるかもしれねえ」
『──』
 ヘッジホック達は、言葉を失っていた。目を真ん丸に見開き、信じられないといった様子
で。いつも大雑把で無鉄砲な彼が、そんなことを考えていたなんて……。腕っ節の強さと何
だかんだと仲間思いな所からリーダーになっていた彼だったが、一同は改めて彼の“器”と
いうものを思い知る。
 動機はとことん突っ走りだ。
 だがその先に見ていたのは、自分だけに留まらぬ皆の“自由”だった。自身が頂点に君臨
すれば、そんな良い影響を皆にも及ぼせるかもしれないと。
「バイオ……」
「意外だのう。そんな事まで考えておったとは」
「り、リーダー……」
「うおおおおおーッ! リーダー! 俺達、一生あんたに付いていきますッ!」
「尤も、やり方は乱暴だがの」
「うるせえな。他に、思いつかなかったんだよ」
 にわかにハイテンションに、情が移ってやいのやいのと歓声を上げる部下達。
 ぽつりと締めのように皮肉を言ったトーテムに、バイオはむすっとした表情(かお)で流
し目を遣った。それでもまだ、普段表にしない思いだったのか、当人はこっ恥ずかしさを隠
せない様子だったが。
「……理由は解った。でも、だからってどうする? これで蝕卓(ファミリー)の禁止令は
今までよりも強くなる筈だよ?」
「ああ、そうだな。だがやる事は変わんねえよ」
 深い嘆息。それは「やれやれ」とでもいうかのような穏やかな吐息だった。ヘッジホック
が皆を横目にしながら、バイオに向き直って言う。作戦会議だ。一度自分達は失敗してしま
ったのだから、今度はもっと考えなければいけない。
「少し待つ。ただちょっと、標的(しゅだん)を変えるだけだ」
 バシン。
 片方の掌にもう片方の拳を叩き付け、バイオは言った。

 木陰の下は思ったよりも涼しかった。尤もそんな過ごし易さも、夏本番になれば失われて
しまうのだろうが。
 バイオ達との戦いから数日。放課後睦月は一人、河川敷の草むらに寝転んでいた。以前に
勇と戦った、あの河川敷である。ただ当時の痕跡はもう無くなっていた。倒木があると行政
部門が仕事をしたのか、或いは司令室(コンソール)による“後始末”なのか……。
「……」
 睦月は多くを語らずにそこにいた。傍らにはパンドラの入ったデバイスが無造作に置かれ
ている。空を見上げ、深く静かな嘆息を。ゆっくりと右手を持ち上げて、その視界の中に白
いEXリアナイザを捉えている。
『マスター?』
 そんな時だった。画面の中で小首を傾げているパンドラごと、睦月はおもむろにデバイス
を取った。EXリアナイザの上蓋の中に挿入し、何度となく走らせてきた動作を試みる。
『TRACE』
 だがしかし、機械的な音声が返ってきたのはそこまでで、掌に押し当てようとした銃口は
やはりバチバチッと小さな迸りを纏いながら押し返される。っ──! 睦月は一瞬顔を歪め
たが、すぐに諦めて銃口を離した。操作がキャンセルされたと判断されたのか、EXリアナ
イザはその後沈黙し、睦月はとすんとその両手を草むらの上に放り出す。
『ま、マスター。あまり無茶にやり過ぎると……』
「分かってるよ。ただ、いつ復活してるか分からないから……」
 ホログラム画面から、にゅっとパンドラが姿を見せて言った。そんな彼女に、睦月は視線
を向ける事さえせずに応じている。
 ……悶々としていた。今まで変身できる事が当たり前になり過ぎていた反動なのか、一転
変身できなくなった自分に言いようもない無力感を覚えていたのだ。……今なら解るような
気がする。冴島が、入院を余儀なくされるほどの反動ダメージを受けると知りながら変身を
強行し、やはり結果力及ばなかったあの頃の無念を。

『これはまだ、仮説の域を出ないのだけど……』
 そして、睦月は思い出していた。バイオとの戦いから辛うじて逃げ切り、己の無力さを痛
感しながら司令室(コンソール)に戻って来た時のことを。
 海沙と宙が、正式に対策チームの一員となったやり取りの後、母・香月は確かに睦月や場
の面々に向けて語ったのだった。突如として彼が変身できなくなった原因、その思いもよら
ない理由を。
『端的に言うと、睦月が変身できなくなったのは──“安堵”したからよ』
 は? 当の睦月本人を始め、場の面々の多くが最初、そんな反応を示した。その言葉を第
一声から重く受け止めていたらしいのは、原因調査に携わっていた萬波以下研究部門の面々
と、静かに眉根を寄せた皆人ぐらいだったと記憶している。
 安堵……? ぽつりと呟く睦月や仁、海沙に香月はコクと頷いていた。反応は、動揺は想
定内だと言わんばかりにそのまま話を続ける。
『睦月はああギリギリまで不本意だったみたいだけど、今回の異変は状況的にも海沙ちゃん
と宙ちゃんがうちのチームに加わったことが切欠だと考えるのが自然よ。これでもう、遠回
しに二人を守る必要はない。すぐ傍で守れる。もうあれこれと、隠し事をしなくてもいい』
『……』
『本格的な検証はこれからだけど、おそらく適合値を上昇させるものは“強い願い”だと私
達は結論付けたわ。ある種の自己暗示、かしらね。使用者の強い願望が、コンシェルが本来
持つ“人を援ける”部分と噛み合うことで数値の上昇という現象を生み出しているのだとし
たら……? そう考えると、アウター達の生態にもある程度の整合性がつくのよ。彼らは人
に害為す存在だけど、元はコンシェルだもの。あくまで“召喚主の願い”を梃子に実体化を
図ろうとするのは、そんな性質の名残じゃないかしら?』
 故に、睦月達は暫く呆然としてしまっていた。
 そんな理由で……? 同じ、コンシェル……。
 少なからず自分達ヒトと“違ったもの”という認識でもってこの「敵」と戦ってきた面々
にとって、その分析はすぐさますんなりと受け入れられないものでもあった。
 願い一つで、彼らは忠実な隣人にもなるし、害為す敵にもなる。
 そんな脳裏に浮かんだフレーズは、他でもない面々が、これまでの戦いの中で幾度となく
経験してきたものでもあったのだから……。
『……随分と、エモい根拠ッスね』
『そうでもないわよ。こう言ってしまうと何だけど、感情ってのものも結局は電気信号の流
れ方や脳内物質の分泌の如何な訳だし』
 尤も、その辺りを突っ込もうとすると私の専門分野じゃなくなっちゃうけどね……。仁の
苦笑に香月は言った。彼女もまた別の意味で、苦々しい笑みを零さずにはいられなかった。
睦月はそんなやり取りを、ぐらりと揺れる瞳の中で見ている。ちらちらと、次第に仲間達が
その様子に気付き始めていた。気付いて、掛けるべき言葉を見つけられないでいた。
『だから──この先、私達の取りうる選択肢は二つよ。睦月にもっと、戦いに対して欲を持
って貰うか。或いは守護騎士(ヴァンガード)の換装システム自体を、ダウングレードさせ
てハードルを下げるか』

 暫く時間を頂戴。きっと、何とかしてみせる。
 母(かづき)はそう言った。結局その日はその話題の後解散になり、以降彼女ら研究部門
の面々は二十四時間体制でシステムの再構築に当たっている。
 要は変身し易く、必要な適合値の下限を再調整する作業だそうだ。
 それがたとえ、出力(じのちから)を落とす事になっても……。睦月や誰かが変身できな
い以上、そうでもしなければ自分達はアウターらと満足に戦えない。
「……全部、僕のせいなのかな」
 ぽつりと、睦月はそう誰にともなく呟いた。ホログラム画面から現れていたパンドラが、
ザザッとノイズに見舞われながら『マスター……』と漏らしている。
 つまり、全部自分のせいなのではないか?
 海沙と宙が味方になった。もうこれ以上彼女達を“守る為に突き放す”ことをしなくて済
むようになった。……救われた。あの時、海沙に「いいんだよ」と言って貰えて、自分の中
で何かが堰を切って溢れ出してしまったような気がする。もしそれが、母の言う“安堵”な
らば──あの時既に適合値の低下は始まっていたのかもしれない。瀬古さんと戦った時は、
まだ海沙を守らねばと気を張っていたけれど、二人が味方になって、対策チームの一員とな
って、確かに自分は“安堵”したのではないか? 安堵して、力を失って、その結果由良刑
事の確保が後手に回ってしまった。皆人達の計画が狂った。新たなアウター達が現れても、
まるで満足に戦う事ができなかった……。
(……強い、願い)
 EXリアナイザを傍に置いたまま、睦月は自身の掌を持ち上げてじっと見る。強い願い、
それが自分を守護騎士(ヴァンガード)にしていた原動力だった。
 嗚呼、ならばあの時見た幻影(こうけい)にも合点がいく。自分は訊ねられたのだ。一体
何が望みかと。あの時は海沙と宙と、大切な人達を守りたいと答えた。それで充分だった。
でも──本当にそれ“だけ”だったんだなと改めて思う。彼女達の、すぐ近くの平穏が守れ
れば、他人は案外どうでもよかったんだ。そしてそれが、自分でも思ってもみないほどの強
烈さだったというだけ。別に、自分がそこまで特別だった訳じゃない。ただ偶然にも願った
ものが狭くて強くて、彼らを動かすに足りたという、それだけ……。
「……」
 母さん達は、今も守護騎士(ヴァンガード)のシステムを再調整してくれている。だけど
それは事実上の弱体化だ。本当は解っている。他ならぬ自分自身が、しっかりしなきゃいけ
ないんだということぐらい。
(僕の、本当にやりたいことって……何なのかな……?)
 ちょうど、そんな時だった。EXリアナイザの中から──デバイスに着信が入った。睦月
はハッと我に返って身を起こし、パンドラの入っているそれを取り出すと急いで繰り返され
るコールに応じる。
 相手は、司令室(コンソール)の皆人だった。
『緊急事態だ、睦月。今何処にいる? 街にアウターが現れた。進坊本町の大通りで暴れて
いる。例の──この前の三人組だ』


 由良が欠勤し始めてから三日が経とうとしている。この日筧は一人、彼が住んでいる筈の
アパートを訪れていた。
 大通りから外れた、奥まった路の中ほどに位置した五階建て。少し外観が古びているので
安上がりだったのだろう。エレベーターは無いようだ。一度ちらっと上階まで見上げ、筧は
一人ゆっくりと、中央から左右に分岐するタイプの階段を昇り始める。カンカンと、年季の
入った金属製の足場が喧しく音を立てる。
(三〇三、三〇三……あった。ここか)
 由良の部屋は、三階の中央やや左寄りの一室。筧は表札も何も出ていない殺風景な扉の前
に立つと、ノックする前にざっと周囲を観察していた。職業柄の癖である。
 正直言って、筧は怪しんでいた。あの根の真面目な由良が、二日酔いなどという安っぽい
理由で仕事を投げ出すとは思えない。尤も、本当に自分が酔い潰してしまったという可能性
もなくはないが……それにしたって三日も休んでいるのは不自然だ。
 初日の連絡だって自分にではなく、部長に来ていた。しかもメールの短い文面のみだ。翌
日からはこちらにも連絡を寄越すようになったが、どうもおかしい。大丈夫か、何かあった
のかと訊ねても『大丈夫です』『疲れが出ただけです』等の一点張り。
 ……嫌な予感がした。それに、相棒として直属の上司として、このまま放っておく訳には
いかないだろう。直接顔を見るまでは安心できなかった。
「おーい、由良ー! 起きてるかー?」
 チャイムを鳴らし、数度ドアをノックしてから気持ち大きめの声で呼び掛ける。
 だが、中からは全く返事がない。うんともすんとも言わない。深く眉根を寄せて改めて何
度かノックをし、チャイムを鳴らしてみたが、室内は物音一つせずしんとしている。
「変だな……」
 まるで壁と話をしているような気がして、筧は思わず渋面を浮かべた。ドア下の郵便受け
を見てみる。少なくとも、何日分も溜まっているような様子は──いや、そう言えばあいつ
は電子版で済ませているんだっけ……。
「疲れてるにしても、よっぽどだぞ」
 ついごちる。別々にヤマを追わせていたのが、それほどあいつの心身に負担を掛けてしま
っていたとでもいうのか。
(……?)
 そんな時である。ふと、階段の下からこちらへ青年が上って来た。コンビニの袋を手に提
げている所を見ると、昼飯でも買って来たのか。向こうも筧の姿には気付いていたようで、
何処かおっかなびっくりな様子で警戒し、鍵を取り出して自室のドアを開け始める。
 隣だった。由良の、三〇三号室の隣人であった。
「すまん、ちょっといいか?」
 故に、筧はここぞと言わんばかりに呼び止めていた。自分が由良──この部屋の住人の上
司であるとか、連絡の取れない彼を捜しているとか、そんな余分な情報などは一々出すこと
もなく、筧はこの相棒が戻って来ていないか? ただそれだけを訊ねてみる。
「さあ……? 昨夜は見てないッスけど」
「なら、君が最後に見かけたのはいつだ? 覚えてるか?」
「うーん、どうだったかなあ……。三・四日ぐらい前じゃないッスかね? 俺とは違って朝
早いみたいですから。ゴトゴト出掛ける音はしてたと思いますけど……」
「……。そうか」
 ただでさえ猥雑で、旧時代のようなコミュニティが絶滅危惧種のような昨今だ。隣人だと
いっても取れる証言はこんなものか。
 青年は、やはり怪訝な表情(かお)を浮かべつつも、そのまま自室の中に入って行った。
暫く筧はその背中を見送っていたが、このまま棒立ちになっていても埒が明かないと思って
一人踵を返す。
(……少なくとも、あの日の朝までは普通に出勤してた訳か。本当に、俺が余計な世話を焼
いたからぶっ壊れた? それにしちゃあ、後々の文面(フォロー)が妙に丁寧過ぎる。そん
な余裕があるとは思えないが……)
 口元にじっと手を当てる。首を捻ってああでもない、こうでもないと考える。
 再び金属足場の階段を下りながら、筧はどうしたものかと思った。どうやら部屋にはいな
いようだ。何処に行ったんだ? まさか、何か事件に巻き込まれたんじゃあ……?
『──』
 そんな筧の後ろ姿を、階段の裏側からじっと見つめている者がいた。
 杉浦である。人間態の彼は、ゆっくりと筧の歩む速度に合わせて動き出した。階段の物陰
を通った直後に、肉柱と唇の怪物──ライアーに変身する。気配を殺して、思案に集中力を
割いていた筧の背中目掛け、その五指を振り上げて──。

 最初こうして問い掛けられたのは、玄武台(ブダイ)の事件のすぐ前のことだっけ。
 思えば、あの時も今回も、瀬古さん絡みだったんだなあって思う。あの人も、強い願いが
あったから、ああも僕達の前に立ち塞がるようになってしまったんだろうか? 皆もう、元
には戻れないのだろうか?
『──なあお前。お前は一体何の為に戦ってる?』
『──佐原睦月さん、貴方は自分を騙している』
 初めてケルベロスフォームになった時、僕は彼らに訊ねられた。延々と真っ白な空間の中
で、数列の人型をとったサポートコンシェル達に。
 最初“正義の味方”を理由にした僕に、彼らは「違う」と言った。それは僕の本心じゃな
いと言い切り、やがて僕は海沙や宙、おじさんやおばさん、母さんや皆人達といった身近な
人達を、大切な人達を守りたかったんだと気付いた。狭い範囲でもいい。僕が僕であること
を許してくれるのは、他ならぬそんなすぐ手の届く所にいる彼女達だったから。
 ……でも、それだけでは足りなくなった。瀬古さんが“蝕卓(ファミリー)”の側につい
てしまい、戦いはきっとこれから一層激しくなる。なのに僕は、気付けば変身できなくなっ
ていた。母さん曰く、強い願いが足りないからだと。
『何故?』
『願いが叶ったと思ったんだろう?』
 うん。きっとそうなんだ。あの時、僕は海沙に「いいんだよ」って言って貰った。多分あ
の言葉で救われたんだと思う。面と向かって許されたから、理由が無くなってしまったので
はないか? “正義の味方”ではなく手の届く人達、という願いも、元を正せば彼女達こそ
が僕の意味を保障してくれる人達だったから。失う訳にはいかなかったから。
『だったら、もう私達がいなくても、貴方は生きてゆける』
 違う! ……違うんだ。それじゃあ駄目なんだ。
 だってまだ由良刑事を何とかしなくちゃいけないし、新たなアウター達や、何よりその元
凶である蝕卓(ファミリー)の事だってよく判ってはいない。このまま放っておいたら、投
げ出したら、それこそ取り返しのつかない事態になってしまう。
『もっと願うのかい?』
『だがそれは、本当にお前の意思か?』
「……」
 違う。今となっては確かにそう自問に答える事はできる。
 だけど、そこで皆との関係をぷつっと切ってしまっていいとは思えない。僕だけが満たさ
れたって、それは幸せじゃない。君達には、プログラムである君達には、すぐには理解でき
ない感情かもしれないけれど……。
『面倒臭いモンだなあ。人間ってのは』
『ですが、そこまで拡げなくてもいい──正義の味方などではないと認めたのは、貴方自身
ではないですか』
 うん。それはそうなのだけど。
 だけど、このまま僕だけが“退場”するなんて……。

「らっシャアア!! 邪魔すんじゃねぇ、この雑魚どもが!!」
 報せを受け、睦月はバイオ達が暴れているという大通りへと駆けつけていた。そこで彼が
目にしたのは──まさに地獄絵図だった。
 滅茶苦茶に破壊された街灯や木々、抉られ吹き飛んだアスファルトの地面に、ひび割れ半
壊しているビル群。傷付きぐったりと倒れている人々や、逃げ惑う人々……。
「ぐっ……! あぁ……」
「何だよ、こいつ。前より強くなってねぇか……?」
 そんな人々を守ろうと、既に國子や仁、リアナイザ隊の面々が交戦を続けていた。
 だが圧倒的なパワーとタフネスを誇るバイオの前に彼らは苦戦し、睦月が辿り着いた時に
はもう壊滅一歩手前まで追い詰められていた。一人、また一人と吹き飛ばされ、隊士とその
コンシェルが地面に転がる。ダメージを負った身体で起き上がろうにも、力が入らない。
「こやつは、責めるのも責められるのも好きだからのう」
「おいこら! 変な言い方するんじゃねえ!」
「まぁ事実だし……。諦めなよ。所詮は生身の人間だ、俺達には敵わない」
 立ちはだかるのは例のアウター三人組。杖(ステッキ)をぽんぽんと左右の手に持ち替え
ながら歩くトーテムと、淡々と何処か冷めた様子で言うヘッジホック。
 加えて、相も変わらずそう荒々しく叫ぶバイオの全身は、湯気が立ち上るほどに赤く熱を
帯びていた。
 破壊特性(ブースト)──バイオ当人や仲間達はそう呼んでいる。ダメージを与えたり、
或いは受けたりする度、パワーが増してゆくという彼の特性。難点はただでさえ頭の足りな
い彼を熱くし、凶暴にしてしまうことだが、これにより長期戦になってもその力は衰えるど
ころか寧ろ増してゆくことさえできる。
(……しっかし、奴らがてんで動かねえな。こっちの狙いが読まれたか?)
 だが一方で、バイオは内心不審がっていた。これだけ触れを破って暴れているにも拘わら
ず、蝕卓(ファミリー)の者が出てくる様子がない。守護騎士(ヴァンガード)の仲間らし
き前菜どもは比較的早い段階で沸いてきたのだが。
 それはヘッジホックやトーテムも、同じく密かに怪訝に思っている所であった。これでは
今回の作戦が上手く機能しない可能性がある。
 ──人目につくほど暴れ回れば、守護騎士(ヴァンガード)達は駆けつけて来るだろう。
 しかし前と違って今回の本星は彼ではない。変身できなくなっている彼を今倒しても、本
来の目的は達せられないからだ。
 狙うは、蝕卓(ファミリー)の誰か。出来るならエンヴィー本人が望ましい。
 街を襲って破壊特性(ブースト)で自身を強化し、万全の状態で今度こそ奴に直接この前
のお返しをする。守護騎士(ヴァンガード)を倒すという遠回りな方法を採らなくとも、そ
れで自分達が幹部級に優れていることを証明できると考えたからだ。
 だが……そのエンヴィーこと勇の姿は一向に見えない。只々破壊工作ばかりが進み、沸い
てきたのは所詮TAの延長線上の、小手先でしかない雑兵だけ。
 そんな思惑を明かすでもなく、逃げ惑う人々と破壊した街並みを、バイオはざっと見渡し
ていた。思い通りにならない状況に、ついチッと舌打ちをして不機嫌に口元を歪める。
(何て酷い……。これも、僕のせいで……?)
 目の前に広がる惨状に、睦月は暫く呆然としていた。仲間達が、人々が傷付いている。苦
しんでいる。自分がぐすぐすしている間に、状況は最悪に近い所まで進んでいた。
(……どうして)
 ぎゅっと胸元を掻き抱いて、睦月は悔やむ。次々と胸に去来するのは、これまでの様々な
戦いの記憶である。
 せめて身近な人達だけでも守りたい──守る事で、自分が此処にいる意味を見出そうとし
ただけなのに、戦いはどんどん激しく複雑になってゆく。災いは、次々に認識の前に現れて
は拡大してゆく一方だった。
 倒してきたアウター達の数と、守れなかったもの。後者が前者を上回るジレンマ。
 皆人などは否定的だけど、彼らの全てが“悪”ではないらしいということも判ってきた。
黒斗と淡雪、二見とミラージュ。人と解り合い、共に暮らすアウター達も一部だがこれまで
の戦いの中で出会ってきた。出会ってきたからこそ、守りたいと願う。守りたかったという
無念が今も胸奥に残る。
 守りたい──全てから。そんな美しいものを、壊す奴ら全てから。
『不可能だよ』
『偽善だな』
 脳裏にちらつく真っ白な空間と、デジタル記号のノイズ。
 一瞬ぎゅっと目を瞑ったが、睦月はふるふると静かに首を横に振っていた。それは彼らの
声であり、自分自身の心の声だ。そうやって否定してきた。でも……。
「……違うよ。“正義の味方”だからじゃない。これは──“僕の我が儘”だ」
 睦月は心の中で言い返す。
 見ていられないから、守るんだ。その人達の為という以上に、他ならぬ自分自身の良心の
呵責の為に。
 だから、偽善だと呼ばれても仕方ないと思う。それでもいい。だからこれは詰まる所自分
の我が儘だ。見ていられないから、放っておけないから、戦う。身近な世界に閉じ篭ること
も、他人びとの願いに介入することも罪ならば……全て背負ってやる。背負ってみせる。
『なるほど』
『思い切ったな。だが、嫌いじゃないぜ?』
『了解です。確かにその本心(ねがい)、受け取りました』
『引き金をひけよ。その欲望の果てまで……力になってやる』
「──」
 はたして、次の瞬間だった。EXリアナイザにデバイスを挿入し、睦月は生まれ変わった
ように素早く操作を行う。辺りに響いた機械音声。掌に吸い込まれた銃口。バイオ達が、満
身創痍となった仲間達が、その姿に気付いてめいめいの表情をみせる。
『TRACE』『READY』
「変身!」
『OPERATE THE PANDORA』
 一瞬、現実(リアル)の周囲に、あのデジタル記号のノイズが見えた気がした。画面の中
でパンドラが戸惑った様子をみせる。だがそんな彼女の感情とは裏腹に、システムは問題な
く動作し始めていた。高く撃ち上げられ、落下してきた光球に包まれ、睦月は白亜のパワー
ドスーツに身を包んだ。
 守護騎士(ヴァンガード)の復活だった。バイオ達は目を見開き、そして仲間達や通信越
しの皆人や香月らは、その姿にやがてパァッと明るさを取り戻して歓声を上げた。コク、と
力強く頷いて、その後ろ姿を見つめていた。

「ほう? ようやくその気になったか」
 突然現れたかと思うと、なれなかった筈の守護騎士(ヴァンガード)姿になった睦月を見
遣って、にぃっとバイオは嗤った。エンヴィーが現れなかったのは失敗だが、これでこちら
の本来の目的を達することができる。
 通信越しに、司令室(コンソール)の皆人や香月、萬波以下研究部門、対策チームの面々
が固唾を呑んでこれを見守っている。再び変身に成功したことは喜ばしいが、されど複雑な
気持ちはある。はたして強靭を誇るこのアウターにどう戦うのか? そもそも、何故今にな
ってまた変身できるようになったのか? 彼の中で一体何が起こったのか……?
『國子、大江。皆を連れて一旦離れろ。ここからは睦月をサポートする』
 了解! 皆人の指示を受けて、それまで必死にバイオ達を食い止めていた仁達があたふた
と後方へ下がり始めた。隊士達もお互いに肩を貸し合い、ふらつきながら、ゆっくりとこち
らへと歩いて来る睦月と入れ替わりになるようにして距離を取ってゆく。
「バイオ」
「ああ。お前らはそこで見てろ。俺が……奴を倒す」
 鉄球拳を左の掌でゴン、ゴンと打ち鳴らしながら、バイオもこの標的に向かって一人近付
いていった。互いの距離が詰まってゆく。一歩、もう一歩。一撃を叩き込むに足りる間合い
まで近付いて……。
「っ、らぁッ!!」
「ナックル!」
『WEAPON CHANGE』
 初手、拳によるパワー勝負だった。鉄球拳と、ナックルモードの光球がぶつかり合う。
 だが──その勝敗は思いもよらぬ結果だった。真正面からの打ち合いであったにも拘わら
ず、睦月が数秒の拮抗もなく押し返したのだ。衝撃で半身がぐらついたバイオが、驚愕した
ように血走った目を見開く。見開いて、しかし更に闘争心に火が点いたのか、咆哮する。
 突きと横払い。続く鉄球拳の連撃を、睦月は着実に回避していた。
 そのままより深く懐に入り、続く左腕のネイルガンによる攻撃を防ぐ。大きく蹴り上げて
弾いた勢いを利用してその場でぐるりと一回転。「スラッシュ!」と叫び武装をエネルギー
剣に替えると、返す刃でバイオの身体に巻きつけてあった弾倉を切り裂いたのだった。
 散る火花。またしても大きくぐらつく身体。
 バイオは数歩よろいめいたが、すぐに踏ん張って身構えた。押された事が信じられないと
いうよりは、その事実に対する反感(いかり)がまず先に出てきている。
「こん、のっ──!」
「おおおッ!!」
『ELEMENT』
『RAPID THE PECKER』
 再び武装をナックルに替え、すぐさま次の攻撃が始まる。
 バイオの凄まじい速さで打ち込まれてくる拳の連打に、睦月も負けず劣らずにこれを繰り
出していった。周りに風圧が起こるほど、霞むような怒涛の攻防。既に破壊された街灯や瓦
礫が煽られて軋む。ヘッジホックやトーテム、距離を取り直してこれを見ていた仁達双方も
が、この激しい戦いに唖然とさせられていた。
『な、何か凄いことになってるな……』
『おい。ぼさっとしてる場合じゃないぞ!』
『今の内に測定急げ! 睦月君のデータを採るぞ!』
 司令室(コンソール)の研究部門の面々が、にわかに慌しく動き始めた。戦いに見惚れて
いる暇はない。何故彼が、急に変身できるようになったのか、詳しく調べておかないと。
『適合値算出開始。波形調整……完了』
『出ました! 適合値、二四〇〇! いえ、まだ上がります。二八〇〇……三〇〇〇!』
 故に、場の面々は一様に驚愕していた。彼の適合値が持ち直していたどころか、以前のそ
れさえも遥かに上回って、ぐんぐんと上昇を続けていたのだから。
『三〇〇〇……だと? か、彼は一体……??』
『……』
 流石の萬波も度肝を抜かされて戸惑っている。香月が、そんなモニター越しの我が子の姿
を、複雑な様子で見つめていた。
 拳の打ち合いは、天井知らずに加速する。
 だがそれに最初に音を上げたのは、バイオの方だった。追いつき切れぬ攻撃のラッシュに
弾かれ、掠りを受け始め、とうとう顔面へまともに食らって吹き飛ばされたのだ。
「ぐうっ……!? な、何なんだ? こいつ、本当にあの時の腑抜けか……?」
 じわりと、滲み出る血と、焦り。
 この形勢の変化に、ヘッジホックとトーテムが駆け寄ろうとしていた。バイオはまだ片膝
をついて口元を拭っている。
 俺が、打ち負けた? 破壊特性(ブースト)で十二分に温まった状態だってのに、こいつ
はそれよりも速くて強い、だと……?
「バイオ! 大丈夫か!?」
「奴の様子が変だ! 我々も加勢する!」
 そして、二人が加わり、戦いは三対一の構図に持ち込まれようとしていた。当のバイオは
正直不服なようだったが、それよりも反撃に転じる方が先だと言わんばかりの突進。それで
も睦月はこの三人からの攻撃を巧みにかわしながら、一発二発と攻撃を加えていた。そんな
一部始終を見ていた仁が、通信越しの皆人に向かって言う。
「お、おい。やばくないか? いくら何でも、三人相手じゃあ……」
『……大丈夫だ。すぐに分かる』
 あん? 仁は、隊士達は頭に疑問符を浮かべたが、その答えはすぐにやって来た。
 攻撃があったのだ。三対一で混戦する睦月とバイオ達に向けて、何処からか突然後者三人
だけを的確に狙って何者かからの銃弾が次々にヒットしたのである。
「ぎゃばっ!?」「がっ?!」
「な、何だ……!?」
 火花を散らして、地面を転がるバイオ達。必然三人は、睦月から一旦間合いを取る格好に
ならざるを得なかった。当の睦月も、パワードスーツの下で何が起こったのかと辺りを見渡
している。すると次の瞬間、その耳に、この狙撃の主達からの声が届いてきたのだった。
『やっほー、睦月。変身、できるようになったみたいだね?』
『私達だよ、むー君。援護なら任せて?』
 海沙と宙だった。先日対策チームの一員に加わった幼馴染達だった。
 彼女達は、遠くビルの屋上から睦月達の戦いの現場を見つめていた。宙はMr.カノンを
調律リアナイザで召喚し、匍匐前進よろしく長銃(ライフル)を構えて狙撃の体勢を取って
いる。その横で、海沙のビブリオ・ノーリッジが幾つもの電子の本を開いて浮かんでいる。
薄く瞑った目と周囲には無数の数列──複雑な計算式が浮かび、リアルタイムでこちらと現
場とを結ぶ射線を導き出している。
『聞こえるか、睦月? 二人にはそれぞれのコンシェルの特性を最大限活かせるようコンビ
を組んで貰っている。銃撃戦に秀でるカノンは遠距離からの援護射撃。検索・演算能力に秀
でるビブリオには、その軌道計算といった具合にな。三対一でも問題ない。ここで一気に、
奴らを叩き潰す!』
 ……うん! 通信越しの幼馴染達や皆人の言葉を受けて、睦月はコクリと大きく頷いた。
 後ろは大丈夫だ。二人がフォローしてくれる。ならば自分は真っ直ぐ目の前の、この三体
のアウターを倒すだけだ。
「くそっ……。遠距離射撃、だと……?」
「流石にこれは予想できなかったねえ」
「ねえ、じゃねえよ! 聞いてねーぞ、こんなの!」
 あああああ! 瓦礫を吹き飛ばして、バイオが苛立ちを頂点にしながら叫んでいた。同じ
くしてやられながらも、残り二人は比較的めいめいに思案をしつつ立ち上がってくる。
 だが、再び睦月に襲い掛かろうと駆け出したバイオを、またしても何処からとも知れぬ銃
弾が阻んだ。海沙と宙による、超遠距離からの援護狙撃である。火花を散らして、バイオが
また吹き飛ばされた。吹き飛ばされて、ガバッと起き上がりながら銃弾の飛んできた方向を
睨む。しかしもうその時には、彼女達は狙撃地点を移動していた。それぞれのコンシェル達
に掴まりながら、ビルとビルの上の間を跳び回るように移り変わっている。
 そんな時、司令室(コンソール)から、通信越しに香月が指示を飛ばしてきた。
『睦月、今がチャンスよ。コーカサスフォームに換装して』
「えっ?」
 だから最初、睦月はその言葉に若干疑問符を浮かべた。オレンジカテゴリ、鹵獲能力に特
化させた強化換装。確かあれは、対由良の為に変身しようとしていたものの筈だが……。
「ケルベロスやフェンリルじゃなくて?」
『ふふ。何も記憶を操るだけがコーカサスじゃないのよ? このサポートコンシェルの武装
を使って』
 EXリアナイザのホログラム画面に、香月の指示したコンシェルのデータが表示された。
それに睦月は数拍目を通していたが、ややあってニヤリとその意図する所を汲んで小さく口
元に笑みを浮かべる。
「畜生……何処のどいつだ? 見えねえ所からチクチクと……」
 海沙と宙による狙撃・妨害。これが決定的な隙──時間を作ってくれた。
 睦月は、画面の中のパンドラは、再三狙撃されてよろめているバイオ達を見据えながらE
Xリアナイザを操作した。同カテゴリのサポートコンシェル達を順繰りに押し、ドラッグで
一括選択する。
『Beetle』『Stag』『Mantis』
『Spider』『Bee』『Scorpion』『Locust』
「……っ」
『ACTIVATED』
『CAUCASUS』
 バチバチッと奔る電流と銃口をぐっと掌に押し込んで、睦月は高くこれを掲げた。ひいた
引き金と同時に大きな橙色の光球が発射され、七つに分裂すると、円陣を組んで旋回しなが
ら次々と彼の下へと降り注ぐ。
「──」
 鮮やかなオレンジ色の装甲を纏った、新たな姿の守護騎士(ヴァンガード)がそこには現
れていた。甲虫を思わせる触覚が取り付けられた頭部に、複数の暗器を仕込んだ両手甲。腰
にはEXリアナイザとはまた別の、同じくオレンジを主体とした短銃が下がっている。
「これが……」
「コーカサス、フォーム……」
「……はん。色が変わったからって何だ。んなモン、こけおどしだッ!!」
 仲間達がそれぞれの場所で、口々に呟く。
 そんな敵の新しい姿に、バイオは怒号を吐き捨てながら向かってきた。黒鉄色だった全身
は今や破壊特性(ブースト)で真っ赤に熱を帯び、並大抵の相手ではビクともしない……。
「ふっ──」
 筈だった。しかし次の瞬間、彼の鉄球拳は、睦月の手甲から迫り出した逆刃でもってあっ
という間に受け流されてしまったのである。続いて間髪入れず、舞うように回転しながらそ
の刃で連続の斬撃を。散る火花とバイオ自身の巨体が視界を邪魔し、次の瞬間には大鋏型の
アームが彼の身体をがしりと捉えていた。
「よしっ!」
「ば、バイオ!」
「……チッ。この程度で、捕らえた気になるなあッ!!」
 されど散々に強化されたその肉体は、ぐぐっといとも容易く大鋏のアームを引き千切る。
 バイオは苛立ちと共に咆哮した。もう誰も彼の暴走を止める事はできない筈だった。
「てめえ、ちょっと俺を押したぐらいで調子に──」
 刺していた。次の瞬間、バイオの脇腹に今度は鋭い尾のような針が突き刺されていたので
ある。叫びかけて、バイオは一瞬目を丸くした。舌打ちをして、乱暴に払い除ける。
 狙いはこっちか。逆刃の剣も大鋏も、こいつを視界から隠す為のフェイク……。
「はん。中々小賢しい真似をするじゃねえか。だがそんなもんじゃあ、俺には決定打は与え
られねえぜ」
「……いや、これでいい。これで“詰み”だ」
「? あん? 何を──」
 その直後である。粋がっていたバイオが、突如としてガクンと全身を震わせた。
 いや、震わせたのではない。震えたのだ。その身体は彼の意思とは無関係に、まるで痙攣
したかのように震えてまともに動けない。
「か、身体が痺れて……。くっ! まさか、てめえ!」
『ええ。スコーピオン・コンシェル。サソリ毒の味は如何ですか? 身体の自由を奪う即効
性の神経毒です。プログラムですから、貴方達アウターにも効果覿面ですよ?』
 くそう……! バイオは顔を顰めながら必死に抵抗しようとしていた。しかし即効性の毒
が全身に回り、電脳の生命体としての彼の身体は着実に壊されている。膝をつき、その場か
ら動けなかった。ヘッジホックとトーテムが、彼の名を叫びながら走ってくる。睦月は数歩
後ろに下がると、腰の短銃を持ち上げてコールした。
「……。チャージ」
『PUT ON THE ARMS』
 短銃の後部フレームを開けてEXリアナイザを挿入する。合体した二丁は両手持ちのショ
ットガンのような形状となり、握り締めた睦月を通じて大量のエネルギーが装填される。狙
うは勿論、目の前で動けなくなっているバイオ。その更に後ろ、射線上には彼を助けようと
駆けて来るヘッジホックとトーテムの姿も垣間見える。
 銃口に集まった橙色の鮮やかな光は、やがて収束して濃い翠色へと変わっていった。その
中には蠢く生物のような奔流が閉じ込められ、睦月が引き金をひくその瞬間まで持てる力を
限界まで溜め込もうとする。
「っ!」
 轟。そして引き金をひいた瞬間、銃口から解き放たれた翠の光は、幾つもの巨大な生物の
姿を借りてバイオに向かって襲い掛かったのだった。
 いや──その全てが昆虫型をしていた。甲虫から鍬形、カマキリや蜘蛛、蜂にサソリにバ
ッタなど。巨大で様々な昆虫の姿を取って、そのめいめいが一挙にバイオに喰らい付く。
「ぎゃああああああッ!!」
 爆ぜるエネルギーの中で、バイオが断末魔の叫びを上げた。
 喰らい付かれ、粉微塵に破壊されていく身体。それだけでは飽き足らず溢れたエネルギー
の奔流は、後方にいたヘッジホックとトーテムにも襲い掛かる。
 ヘッジホックが、彼の名を叫んでいるように見えた。だが迫る敵からの大技に、咄嗟の判
断でトーテムがその首根っこを掴んで大きく跳躍。その場から退避する。
 そうして後に残ったのは、綺麗に消し飛んだデジタルの残滓だけだった。彼らによって破
壊された街の姿だけが、尚もそのままになって惨状を晒している。
「……」
 合体銃をゆっくりと下ろし、睦月は静かに変身を解いた。後ろから仁ら仲間達が駆け寄っ
て来る。勝利と守護騎士(ヴァンガード)の完全復活と、両方に嬉々とするその姿に思わず
彼はフッと表情を緩めていた。肩越しに振り向いたその顔は、それまでの鬼気から少し解放
されたかのようにみえる。
『──』
 そんな自分達を、勇がずっと物陰から覗いていたことを、睦月達は知らない。彼はまるで
宿敵(ライバル)が本調子を取り戻したことを見届けるように小さく哂うと、そのまま音も
立てずに踵を返して消え去ってゆく。
『やりましたね、マスター!』
「……うん」
 仲間達が、通信越しに皆人達がめいめいに賛辞を送っていた。或いは安堵していた。画面
の中からパンドラにもサムズアップで微笑まれ、睦月は静かに苦笑いを零している。結局、
成し遂げたのは“敵”を斃すことには変わらなかったのだから。
 結果オーライ? これでいい?
 睦月は握ったままのEXリアナイザを見つめた。この中には、デバイスには、パンドラを
含めた七十八体のサポートコンシェル達が眠っている。
 これで……いいんだよね?
 これからも、宜しく。
 多分応えてはくれないのだろうけど、睦月はそう心の中で、静かに力の源達に感謝した。

『──』
 筧目掛けて振り下ろされた五指を、割って入って阻んだ第三者がいた。
 冴島のコンシェル、ジークフリートである。アパートの階段裏から襲い掛かったライアー
は、この突然の乱入者に唇を大きく開いていた。ギチギチと五指をジークフリートの剣が受
け止めている。他ならぬ筧本人も、この背後からの襲撃と庇い立てに目を丸くしている。
「……なっ」
「何なんだ? お前ら……?」
 隊長! 物陰から数人の隊士達が出て来ていた。ジークフリートの後ろで、筧を守るよう
にして、冴島が調律リアナイザを握ってライアーと向かい合っている。
 彼らは、國子達とは別行動で由良の行方を捜していたのだった。捜していて、彼の自宅で
あるこのアパートを密かに張っていた所、筧が訪ねて来るのが見えて、更にアウターの反応
が迫ってきた。冴島は咄嗟に、コンシェルと共に飛び出していた。
「……貴方と同じ、由良捜し(もくてき)の者ですよ」
 筧の戸惑う問いに、冴島は肩越しにそう静かに答えていた。ギチギチと、尚も五指と剣の
鍔迫り合いは続いている。ライアーが少し押し返され始めていた。唇から大きな息を吐き出
しながら、苛ついた様子で叫ぶ。
「ちいっ! 邪魔をするな! お前達だって、こいつも消した方が都合がいいだろうが!」
「……お前達と、一緒にしないで欲しいね」
 じりじりっと剣ごとライアーを押し戻しつつ、冴島が言った。一旦反動をつけてこれを弾
き飛ばし、隊士達に筧を避難させるように指示する。「おい、今何て……?」筧がライアー
の発言に目を丸く、瞳を揺らしていたが、冴島らは敢えて反応しない。
 ライアーとジークフリート、冴島の両者はアパート傍の横道を逸れ、人気のない倉庫群の
前へと転がり込んだ。じっと互いの出方を窺っていたのも数拍の事、二人はほぼ同時に切り
結ぶ。結んで、しかし直接的な戦闘力に勝るジークフリートが終始戦いをリードする。五指
をかわして斬撃を叩き込み、怯んだ隙に更にもう二発三発と追撃を加えて火花を散らす。
 ぐぅっ……! ライアーは胸元を押さえ、大きく後退っていた。隊士達が援護に駆けつけ
ようとするが、筧も筧で大人しく避難させられている性分ではない。彼らに「危険です、下
がって!」と制止されるも、繰り広げられる戦いを肩越しから目に焼き付けている。
 駄目押しと、冴島はジークフリートの身体を流動化する炎に変えた。
 彼を狙っていたという事は、おそらくはもう一人も。ここで逃がす訳にはいかない……。
「お前らは……そうか。例の“知られたら困る連中”か」
 呟く筧に、ちらっと冴島は一瞥を遣った。隊士達が彼を閉じ込め守るように、ぐるりと外
向きの円陣を組んで押し返している。
 だが──それがいけなかった。冴島達が注意を向けた一瞬の隙を、ライアーは逃さずに反
撃に打って出たのだった。
 パァンと、胸の前で両手を合わせる。その音に気付き振り向いた時には、もう遅かった。
「“今日は快晴良い天気。ゲリラ豪雨一つも無い”」
 次の瞬間である。それまで程々に晴れていた空が、瞬く間に曇って暗雲を立ち込ませ始め
たのだ。
 いや……本当にそうか? 冴島達は思わず空を見上げる。
 まるで建物と建物に区切られた空だけが、寄せ集められたように下り坂になってゆく気が
した。気温が下がり、鈍い雷音が鳴り響く。するとどうだろう。ザァァッと、バケツを引っ
くり返したかのような豪雨が辺りを襲い始めた。その雨量に、思わず冴島達は両腕で庇を作
り、身動きを封じられる。炎を纏ったジークフリートも、あっという間に消火される。
 そうして気付いた時には、既に手遅れだった。
 明らかに異常な局地的な雨が治まったと思った時には、ライアーの姿は忽然と消えてしま
っていたのである。
「……。逃げられたか」
 ずぶ濡れになって、冴島は静かに嘆息をつく。調律リアナイザを切って、ジークフリート
の召喚を解いた。消火されて煙が立ち上る相棒が物寂しげだった。剣をザラッと鞘に収めな
がら、小さく頭を垂れるようにして掻き消える。隊士達も同様に戦闘態勢を解いていった。
彼らと、冴島の握っていたリアナイザを見つめて、筧はじっと瞬きもせずに黙っている。
「隊長……」
「彼らの前に出るのは、拙かったのでは?」
「ああ、そうかもしれないね。命令には無い。僕が責任を取る」
 そんな彼をちらちらと見遣りながら、隊士達は口々に小声を掛けてきた。ぐしょぐしょに
濡れてしまったスーツを応急処置的に絞りながら、冴島は言う。
「目の前で人が殺されそうになっていたんだ。黙って見ているなんて、出来なかったよ」
 隊長……。隊士達が複雑な表情で呟いていた。それはそうかもしれないが。彼らもめいめ
いに、多分に迷いを含みながら、互いの顔を見合わせている。
「……。なあ」
 そして、筧が言った。同じく先程の豪雨でずぶ濡れになったまま、ゆっくりと晴れてゆく
黒い曇天を見上げ、貼り付いた前髪で表情が隠れたまま、誰にともなく呟いている。
「あいつは、俺“も”消した方がと言っていた。つまり由良は、もう……」
『……』
 暫くの間、両者は何も言えなかった。相手に声を掛けてやることさえなかった。
 ややあって、先ず冴島が動く。調律リアナイザから自身のデバイスを取り出すと、画面を
タップし、とある場所へ──司令室(コンソール)へと電話を繋いだ。
「もしもし。僕だ。すまない、トラブルが発生した」
「由良信介捜しは……失敗らしい」
                                  -Episode END-

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  1. 2018/01/16(火) 18:00:00|
  2. サハラ・セレクタブル
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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