日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブルⅡ〔27〕

 元玄武台(ブダイ)校長・磯崎康太郎は震え続けていた。あの日から、まるで生きた心地
がしなかった。言わずもがな、瀬古勇による同校舎襲撃の一件である。
 一体どんな手段を使ったのかも分からない。だがこのご時世、ネット上には爆弾の製造法
くらい調べれば載っているだろう。事実、千家谷を皮切りにした爆弾魔(ボマー)も元々は
市外のいち住人だったと聞く。
 あの日以来、磯崎はすっかり自宅に引き篭もるようになってしまった。またいつ命を狙わ
れるとも知れぬ状況で、必要外の外出は文字通り自殺行為だ。
 事件を重くみた政府の第三者委から、飛鳥崎の教育委へ。
 結果自分は校長の職を罷免され、直後当局に在宅起訴されてしまった。あたかも始めから
そういうシナリオで、周囲が準備を進めていたとしか考えられない。追い詰められた自分を
見捨てるように、妻は実家に逃げてしまった。子供達とも、全く連絡が取れない──関わり
たくないと避けられているのは明白だった。自分は全てを失ったのだ。
「……ひっく。くそう、くそう、何で私がこんな目に……」
 その日の夜も、磯崎は独り閉め切った部屋の中で酒を煽っていた。連日、気持ちがざわつ
く度に縋って空にした瓶が床のあちこちに転がっている。酔いが回り、身体もフラフラとし
ているものの、彼の心を満たすのは只々“他者”に対する“怒り”ばかりである。
 全てはあいつの──瀬古勇のせいだ。あいつのせいで人生を狂わされた。
 弟ともども、とんだ疫病神だ。こんな事になるなら、入学などさせなかったのに。
 何故自殺した? 何故復讐なんぞに走った? 校長とはいえ、幾つもある部の内情を全て
把握できる訳がないだろうに。いじめがあったというが、なら何故自ら死を選ぶような──
迷惑にしかならない方法を採った? 何故職員らに相談しなかった? 信用できるとかでき
ないとか、そういうレベルの話じゃない。あるべきプロセスを踏んでいるかどうかの問題な
のだ。第三者委での尋問でも、その辺りを突かれた。生徒達に対するケアを、怠っていたの
ではないかと。
 ……ふざけるな。自分達はエスパーじゃない。政府(おまえたち)も常日頃言っていたで
はないか。教育の目的は馴れ合いじゃない。子供達を将来、なるべく多く社会で活躍できる
人材に磨き上げることだと。
 その意味で、瀬古兄弟は不良品だ。多少他人に揉まれた程度で死に、その弱さの責を他人
に転嫁して憚らない傲慢さ。甘えるな。そんな考えで、この世の中は渡っていけない。
 ……大体、警察は何をしている? まだ瀬古勇は捕まらないのか?
 どんな理由があろうと、あいつは人殺しだ。国として許してはならない筈だ。あいつが今
も何処かで逃げ延びているから、自分はこうしてろくに家から出られなくなってしまった。
毎日交代で警官達が家の周りをガードしてくれているが、それは少なくとも根本的な解決に
はならない。さっさと牢屋にぶちこんでくれ。そうでなければ本当に──自分はおかしくな
ってしまう。
「──?」
 こんな筈じゃあ……。
 再三、独りで頭を抱えていた、そんな時だった。
 磯崎はふと部屋の外で、ガタンバタンと何かが倒れる物音を聞いた気がした。ビクッと身
体を震わせ、おずおずと扉の向こうを振り返る。耳を澄ませる。警官達か? じっとその場
で理解が進まないまま見つめていると、やがてトン、トンとこちらへ近付いて来る足音があ
った。半ば本能的に顔が青褪める。警官達じゃない。まさか──。
『……』
 そのまさかだった。現れた、目深に帽子を被ったまま立つ少年は間違いなくあの瀬古勇で
あった。加えて何よりその横には、全身錆鉄色のトカゲ人間──巨大な竜の化け物が控えて
いる。
 ひいっ!? 磯崎は殆ど条件反射的に叫び、後退った。テーブルの上や床に転がった酒瓶
が喧しく音を立ててぶつかり合う。勇は無言のままこちらを見下ろし、一歩また一歩と近寄
ってきた。はたしてその背後、半開きになった扉の向こうには、血だまりの中に沈んで動か
なくなった警官達の姿が見て取れた。
(本当に……本当に来た! 私を、私を殺しにっ……!)
 部屋はさして広くはない。磯崎はあっという間に壁際に追い詰められていた。
 勇と化け物──竜(ドラゴン)のアウターは、暫く何も言わず、じっとこれを見下ろして
いた。酷く冷たい、ゴミ屑を見るかのような眼と狂気そのものの眼だ。抵抗すらままならな
かった。わたわたと、磯崎は両手をばたつかせ、必死に身を守ろうとする。
「たっ、助けてくれ! い、命だけは! もういいだろう、充分だろう?! 何で今になっ
て私なんだ!? 私を殺しても、お前の弟は戻って来ないんだぞ!?」
「……ああ、知ってる。正直お前の命なんかもうどうでもいいんだ。だがよ、お前を殺って
おかなきゃあ、こいつとの契約が完了しない。最後の一ピースが嵌らないんだ」
 何を……?
 勇が竜(ドラゴン)をすいっと指差し、淡々と答える言葉に、磯崎は引き攣った瞼を瞬く
しかなかった。意味が分からない。大体お前、その化け物は──。
「ぐぶっ!?」
 だが磯崎が問い返す事は永遠になかった。次の瞬間、彼の顔面は竜(ドラゴン)の分厚い
片手に掴まれていた。ギチギチと、今にも握り潰されそうになる。指と指の間から眼球が飛
び出しそうになり、くぐもった声と共に血管が赤く浮き上がってゆく。
「やめっ、止めっ……! 潰、れる……ッ」
「やっとここまできたんだ。取り戻せたんだ。今まで生かされていた事をありがたく思え」
 ぷるぷる。がしりと掴まれたままで、磯崎は首を横に振った。圧迫で充血した眼球からは
恐怖の極限に追い詰められた結果、涙が溢れ出している。
「ず、ずまながったっ! 許じ──」
「おせぇよ」
 ザン。刹那、竜(ドラゴン)の手刀が霞む速さで叩き込まれた。
 堰を切ったように噴き出した血飛沫。磯崎の首と胴は、直後完全に切り離された。


 Episode-27.Bahamut/復讐鬼との再会

 翌日、磯崎邸は大量投入された警官達と、非常線の外に張り付いた報道陣らによって混乱
の最前線へと変わっていた。
 朝早くから、ブルーシートで囲われた同邸内へとひっきりなしに刑事や鑑識らが出入りを
繰り返す。そんな様子を各取材クルーはめいめいに中継しており、同じく現場に集まった野
次馬達は大きく二つの態度に分かれていた。殺人事件そのものに対するショック、不安と、
遂にこの時が来てしまったかという感慨である。ひそひそと囁き合う彼らの中には、磯崎へ
の同情といったものは最早一切ない。
 白布で厳重にぐるぐる巻きにされた遺体が、一人また一人と担架に乗せられては運び出さ
れてゆく。情報では、磯崎を含め、前日彼の警護に当たっていた警官達が軒並み殺害されて
しまったという。逸早く現場を見てしまった者は災難だったろう。何せ同邸内外にはおびた
だしい量の血飛沫が血痕となって残っており、事件の凄惨さを如実に物語っている。当局が
ブルーシートで当座それらを隠しておかなければ、この場にいる報道陣も野次馬らも、現状
を正視することすらできなかった筈だ。
「──瀬古勇が死んだ?」
 その頃、磯崎邸内。
 磯崎殺害の一報を受けて駆けつけた筧らは、一足先に集まっていたキャリア組の刑事達か
ら、そう今回の全容を聞かされていた。
「それ、本当なのか……?」
「ああ。間違いない。少し前に、遺体が運ばれるのも確認した」
 昨夜、瀬古勇が侵入し、玄武台(ブダイ)前校長・磯崎とその警護に当たっていた警官数
名を殺害。異変に気付いて駆けつけた他の面々によって射殺されたと。
 筧らはそんな報告に、目を丸くして立ち尽くしていた。おえっぷ……。少なくとも廊下や
リビングに飛び散った大量の血痕は物語っている。由良やまだ若手の刑事らがその惨さに思
わず吐き気を催していた。
(……そんな馬鹿な)
 要約するならば、本懐を果たした直後の死。
 だが筧は、そんな彼らからの報告を素直には信じられない。
 あまりにも不自然だったからだ。玄武台(ブダイ)襲撃の後、今日まで自分達から逃げ延
び続けたあの少年が、理由もなくこんな“無謀”に出るとは思えない。
 確かに殺害方法は以前と同じ──首を刎ねるという惨殺、憎悪の籠もった手口だ。
 それに何故、守れなかった? 最早ただの少年犯罪でないことは重々承知しているが、仮
にもこちらは警察官(プロ)を毎日交代で警戒させていたのだ。磯崎に近付く前に何故気付
かなかったのか? 捕らえられなかったのか? 何だか嫌な予感がする。
 まさか、奴は今も──。
「という訳で、被疑者死亡で一連の事件は終了。飛鳥崎史上稀にみる連続殺人もこれでよう
やく打ち止めだ。如何せん、犠牲が多過ぎはしたがな」
「正式な発表はここのゴタゴタが片付いた後だ。今は事後処理に専念しろ」
 いいな? そんな筧の、同僚刑事らの思考に割って入るように、キャリア組の面々は念を
押してきた。返事を聞くまでもなく、次の瞬間には散開して、邸内にいる部下達に次の指示
を飛ばす。彼らは皆一様に忙しなく、気が立っていた。これだけ凄惨な現場に付き合わされ
なければならないのだ。職業柄とはいえ、無理もない。
「……兵(ひょう)さん」
「ああ」
 まだ顔を青くして口元を押さえつつ、由良が密かに呼び掛ける。筧もそんな相棒の言わん
とすることは解っていて、ただ一回相槌を打ってこの広がる捜査の輪を見つめている。
 間違いない。今回の一件で、上層部は事件全体の幕引きを図っている。
 瀬古を射殺? 確かにかねてより“特安”指定を受けていたとはいえ……。

「──瀬古さんが死んだって!?」
『本当ですかあ?!』
 飛鳥崎地下の司令室(コンソール)。磯崎元校長の殺害、そして現場での瀬古勇射殺の第
一報を聞き、睦月は大慌てでこの対策チームの拠点へと集まっていた。内部には既に皆人以
下、他の仲間達も集合している。それぞれが不安げに、或いはディスプレイと睨めっこをし
ながら、行き交いまだ混乱している情報の収集に当たっていた。
「ああ。ニュースではそうなっている。“特安”指定もある。もし次に見つかれば命の保証
はないだろうとは思っていたが……」
 忙しなく制御卓を叩いている職員達。その後ろで、椅子に腰掛けた皆人が駆けつけた睦月
を見遣ると開口一番、言った。
 あくまで冷静に。淡々と。だがその平素以上に寄せた眉間の皺からは、彼が言葉とは裏腹
にこの報道を未だ信じていない様子が窺える。
「何てこった。あの時、俺達が逃がしさえしなけりゃあ……」
「どのみち極刑は免れなかったと思いますよ。玄武台(ブダイ)襲撃の時点で二十名以上を
殺害しているんですから」
「少年だから刑を免れるなんてのは、旧時代の話だからねえ」
「でも、何で今頃になって……?」
 悔しそうに仁が、あくまで感情を表に出さないように淡々と國子が言う。冴島も同様だ。
 そして睦月が呟いた疑問。それに皆人は「ああ」と頷いていた。
「それは俺も考えていた。これまで奴は、巧妙に──アウター達に匿われていたとはいえ、
警察の追跡から逃れ続けてきたんだ。そんな奴が敵陣のど真ん中に突っ込むような無茶をす
るとは思えない。だが実際、磯崎は殺されている」
「……急がなきゃいけない理由があった?」
「分からん。だが、何の理由もなく突撃したとは考え難い」
「それってもしかして、新しくアウターを手に入れたとかじゃねえかな? これ、現場の画
像だけど、かなりエグいぜ。一介の高校生がプロの警官を片っ端から千切っては投げつつ、
磯崎を殺るなんて、普通じゃ不可能だ」
 一旦目を瞑る皆人。すると仁が、それまで自分の席に置いていたタブレットの画面を見せ
てくれた。どうやら現場・磯崎邸を早い段階で撮影した画像らしい。流石に屋内までは見え
ないが、侵入したと思われる裏口や外周の壁には、べっとりと大量の血飛沫がそのままに貼
り付いている。
「……予想する限り、最悪の結果になったみたいだね」
「ええ。西大場のビルの一件も然り、瀬古勇はあの後、アウター達──蝕卓(ファミリー)
と接触していた可能性が高い。力さえ再び手に入れば、途絶えていた復讐も再開できる」
「んー? だとしたら妙だよなあ。また召喚主になったっていうのに、生身の警官に後れを
取るもんかね?」
「そこなんだ。磯崎は殺されても仕方ないとして、その射殺の報道というのがどうにも引っ
掛かる」
「ちょっ、皆人……」
 だからこそ、さらっと言い切った親友(とも)に睦月は慌てた。
 ここは地下の秘密基地で、誰も他に聞き耳を立てている者はいないにしても、流石に言い
過ぎではないだろうか? 確かに磯崎校長は、保身に走って事態を悪化させた人物ではある
けども、本来ならきちんと法の裁きを受けて償って貰うべきである筈で……。
「まぁ落ち着け。俺個人が、という話ではない。庶民感情としてだ。お前だって彼の悪評は
散々聞いているだろう? そんな奴は“死んでもいい”と大抵の者は考える」
「……」
「出来過ぎているんだよ。事態を引っ掻き回した磯崎と、犯人である瀬古勇、その両方が今
回の一件で死んだ──いや、死んだことにされた。おかしいとは思わないか? さっき大江
が言ったように、おそらく瀬古勇は新たなアウターを──改造リアナイザを手に入れた可能
性が高い。そんな人間を、俺達対策チームでもない者達が倒せるとは思えん」
 睦月達は、互いに顔を見合わせると目を瞬いていた。
 それまでじっと耳を傾けていた香月や萬波、研究部門の面々も、神妙な表情で眉間に皺を
寄せている。
「それはつまり、射殺の報道を仕組んだ何者かがいるってこと?」
「ええ」
「いや、ちょっと待てよ! それってつまり……」
「警察内部に、蝕卓(ファミリー)の協力者がいるということになるね」
 ざわっ。引き継いだ冴島の一言に、睦月達が、職員達がどよめいていた。
 考えたくはなかった可能性。頭の片隅にはあった思考。これまでのアウター関連の事件が
表向き隠し続けてこれたのは、ひとえに対策チームから派遣された内通者達のお陰だと思っ
ていたのだが……。
「向こうにも、いたのですね」
「想定はしていたがな。だがこれで、いよいよ彼らには動いて貰い辛くなってしまう」
 ふむ。皆人は両手を組んで深く腰掛けていた。じっと、これまでの情報と自分達にとって
の最適解を整理・整頓しようとしているように見えた。
「それで、どうするの? 皆人」
「瀬古がまたアウターを使い始めたとなりゃあ、放ってはおけねぇぞ?」
 そして睦月が、仁がそうきゅっと唇を結んで問うた。司令官たる皆人に指示を促した。
「……そうだな。なら確かめて来てくれ。瀬古勇が、本当に死んだのかどうか」


 瀬古勇射殺のニュースを目の当たりにした時、小松健臣は思わずダンッと目の前のテーブ
ルを叩いて立ち上がっていた。壁掛けの大型テレビには、当局関係者らが忙しなく出入りを
繰り返す磯崎邸が、やや遠巻きのアングルで映し出されている。
「何てことを……」
 この国の中枢。集積都市・東京。
 その一等地に建つ年季の入った屋敷の一室で、健臣は呆然とした後、頭を抱えていた。
 何てことだ。磯崎も、瀬古君も死んだ? 侵入した彼を射殺? 何故そんな早まった真似
をした? 裁判はもう少しで始まる所だったのだ。法の下で裁きを受けさせ、磯崎の過ちを
自他共に明らかにする。それが瀬古優君の無念を晴らすことにも、その兄が復讐の名の下に
奪った命達への弔いにもなる筈だったのに……。
「殺すことなんて、なかったじゃないか」
『……』
 健臣は、まるで自らの半身がもがれたかの如く、テーブルの上に頭を垂れた。食い縛った
口元から何とも言えない嗚咽が漏れ、同席していた秘書の中谷や、お付きのSPらが困惑し
た様子でこの主人の姿を見つめている。
「瀬古勇は……“特安”指定を受けていましたから」
「知っている。だがこれでは、真相解明も再発防止もままならないじゃないか。彼にはきち
んと罪を償って欲しかった。自らの意思で止めて欲しかった……。その旨は、中央署にも伝
えておいてくれたんだろう?」
「ええ。それは、まあ」
 中谷のようやく絞り出した回答と、歯切れの悪い部下の一言。
 健臣は大きくため息を吐き出した。バクつく心臓を、動悸を必死に宥めつつ立ち上がり、
ふらふらと室内を横切って行こうとする。
「先生、どちらへ?」
「……すぐに飛鳥崎行のチケットを。こうしてはいられない。この件は、私が総理から預か
っているんだ……」
 ぶつぶつと呟く健臣。だがそんな彼を、背後からしがみ付くように止めたのは、他ならぬ
秘書の中谷だった。
「落ち着いてください! 先生が動いたら余計にややこしくなります!」
「離せ、中谷! お前達は何とも思わないのか!? 殺したんだぞ! 国家権力が──俺達
大人が、少年一人を救いすらせずに抹消(ころ)したんだぞ!?」
 中谷が、SPや部下達が、一様に顔を引き攣らせていた。
 彼は確かに激情に駆られて動こうとしている。政治家としては甘過ぎる。だが彼が自分達
に突きつける言葉は、紛れも無い事実だった。“特安”指定された時点で、瀬古勇は救うべ
き国民ではなく、国にとって“不要”な存在となっていた。
「だからと言って、貴方まで危険に遭わせる訳にはいかない! 忘れたんですか!? 貴方
は飛鳥崎(むこう)で殺されかけたんですよ!!」
 しかしただ一人、そんな彼に負けない男がいた。中谷だった。
 言わんとする事は解っている。だがそれでも、自分達にはこの男、文教大臣・小松健臣を
あらゆる害意から守るという使命がある。必死になって部屋を出て行こうとする彼を背後か
ら羽交い絞めにしながら、中谷はくわっと彼に負けず劣らずの剣幕で叫んでいた。
「……」
 そしてそれは、結果として有効に働いたようだった。秘書の身を挺した諫言に目を見開い
て振り向いた格好の健臣は、振り解くの止めてゆっくりと立ち尽くしたのである。
「犯人は、まだ?」
「ええ。この手の実行犯なんてのは尻尾切りですからね。失敗した時点で既に消されている
可能性も高いですし」
 ……そうか。中谷の返答に、健臣はきゅっと唇を噛んでいた。
 対する中谷も、大方彼の心中は予想できていた。何せ先代から仕えている身だ。彼が自身
の父親、“鬼の小松”こと小松雅臣元総理の七光りで政治家をやれていると見られるのを何
よりも嫌っていることぐらいは。
 気持ちは分からなくもない。こうして間近で一緒に仕事をしているから分かる。この人は
本当に熱意と誠意の塊だ。だが現実とは、得てしてそういった人間ほど理解されない。今回
の政敵(はんにん)は、十中八九、自分達をそういう眼で見ているのだろう。
「すまない。つい、熱くなってしまった」
「いえ……」
 だがそんな中谷も、もう一つの理由だけは知らなかった。
 瀬古勇と磯崎康太郎。二人の暮らす飛鳥崎には、佐原香月と睦月母子(おやこ)がいる。
かつて愛した人とその子が住む街だからこそ、健臣は尚の事力が入っていた。事件がより平
和的に解決することは、即ち彼女達の平穏にも繋がる。
 そんな複数の事情が、思考が交錯したのだろう。健臣は深く呼吸を整えると中谷に向き直
って謝っていた。故に中谷もそれ以上は責めない。願わくばこの良くも悪くも強い情熱が、
公的な場で爆発しないことを祈るばかりである。
 部下達が、SPらがその場で立ちんぼになっていた。下手に諌めに入った所で、彼のこの
熱量には勝てない。そんなどうしようもない事実に臆する他なかったのだ。軽く瞼を伏せて
思案し、やがて健臣は中谷に指示をする。
「……だが何もしない訳にはいかない。会見でも、俺はこんな事件を二度と繰り返させない
と誓ったんだ。中央署に連絡を取ってくれ。射殺に至った経緯、しっかりと説明して貰う」
「はい。それくらいなら」
「それと、向こうの説明とは別に、こちらでも別途情報収集をしてくれ。いまいち、報道に
は不明瞭な点が多過ぎる。磯崎の殺害を許してしまった警備体制、何故今になって瀬古君は
出てきたのか? ただの突発的な犯行とするには、どうも不自然だ」
「はい。……仰せのままに」

 時を前後して、飛鳥崎メディカルセンター。
 筧と由良は、磯崎邸のゴタゴタの合間を縫って七波に会いに来ていた。ベッドの上に座っ
ている、以前よりは多少包帯の取れた彼女に、瀬古勇が射殺されたことを伝える為に。
「そう……ですか」
 案の定、七波はやや俯き加減になって、複雑な表情(かお)をしていた。
 これでもう事件が拡大することはないという安堵と、それ以上に真相解明や勇に罪を償わ
せるチャンスが永遠に失われたという事実。実際、磯崎も死んだ。あたかも道連れにされた
かのように。何より自らが背負い込んだ罪悪感のために、彼女はどうしてもその報告を素直
に喜ぶ訳にはいかなかったのだろう。
「……これから、玄武台(ブダイ)はどうなるんでしょう?」
「分からん。だが、以前のままにとはいかないだろう。もしかしたら、学校自体がなくなる
可能性もあるだろうな」
 七波の呟き、質問に筧はあくまで冷静に答えていた。冷静を装うことぐらいしか、彼女の
不安や哀しみを和らげてやる術を持たなかった。
 それに、あながち間違った予測でもなかろう。瀬古兄弟にまつわる事件によって、ブダイ
の評判は地に落ちた。これだけ世間に悪評が広まった学校に、今後も生徒が集まるとは考え
難い。
「ま、まあ、今はそれよりも自分の回復を第一に考えようよ。ね?」
 明らかに落ち込んでいる七波。そんな背中を優しく擦ってやりながら、由良があくせくと
焦りながら必死に慰めようとしている。言い放った当人が言うのも何だが、仮に退院できる
まで回復したとしても、復帰する学校自体がなくなるのなら中々その気力だって湧いては来
ないだろう。
「……これは個人的な見解なんだがな。本当に瀬古勇が死んでるのかは怪しい」
「兵さん?!」
 だから、言った。筧は暫く意気消沈する七波を見遣っていたが、はたと絞り出すように自
らの中にある疑惑を打ち明けた。
 由良が慌てる。それはそうだろう。捜査内容も捜査内容、第一級の内部情報だ。だが筧は
正直に話すべきだと判断した。少なくとも彼女は自分達にとって重要な証人であり、信頼を
置くべき少女だ。
「どういう、ことですか……?」
 ハッと顔を上げて、二人を見つめてくる七波。
 むべなるかな。由良の方はまだ少し迷っていたが、筧が頷いてやると承知したようだ。個
室がしっかりと閉められているのを改めて確認してから、二人は磯崎邸で見聞きした違和感
について話し始める。
「──そんな訳で、今回の射殺に関してはどうにも不自然な点が多いんだ。俺達は実際に瀬
古勇の遺体を見た訳じゃねえし、今も報道が先行してる」
「おそらく上層部は、一連の事件に幕を引きたがっている。結局磯崎も殺されてしまったか
らね。このままじゃあ、自分達に矛先が向かってくるのは時間の問題だ。真偽はともかく、
そんな状況で被疑者死亡となれば、得をするのは組織だろう? 出来過ぎてるっていうのが
俺や兵さんの見解なんだ」
 あくまで、例の怪物については彼女には伏せる方向で。
 筧と由良は、互いに言葉を引き継ぎながら言った。改めて言語化してみると、今回の構図
にはやはり意図的なスムーズさが感じられる。尤もそれは、上層部に対する個人的な不信も
混じってはいるのだろうが。
「……確かに、これ以上掘り返しても誰も幸せにはならねえがな」
 瀬古兄弟の母は、息子達の死と凶行を受け止め切れずに発狂してしまった。今は精神病棟
に入れられ、事実上隔離されている。
 一方父親はといえば、事件の初期から家族を見限り、雲隠れしてしまった。既に裁判所に
訴えを起こし、本人不在のまま離婚を成立させようとしている。
「だがよ。それでも、失われた命を忘れてしまっていい理由にはならねえ。たとえもう瀬古
勇一人で償い切れないほどの重さになっちまってても、な」
「筧さん……」
 ベッドの上で、七波は眉を下げて、きゅっと唇を結んでいた。目には薄らと涙が溜まって
いる。だがそれは悔しさではなく、嬉しさによるものだ。この人達に打ち明けて本当に良か
ったと彼女は思う。
「……悪ぃな、こんな話して。流石に重過ぎるか」
「いえ。私だって関係者です。最後まで、お付き合いします」
 ありがとよ。筧はフッと苦笑(わら)った。由良にも笑顔が戻り、幾許か肩の力が抜けた
ようだ。七波はこれからも協力は惜しまないと約束してくれた。できるなら、瀬古の両親も
助けたいと言ってくれた。
(ん……?)
 そんな時だった。
 マナーモード中の由良のデバイスに、一件の着信が入ってきたのは。

「──瀬古秀司だな?」
 そしてちょうどその頃、白鳥らはとあるネットカフェを訪れていた。なるべく店内を騒が
せないよう、受付を半ば勢いのまま説き伏せ、目的の人物のいる個室へと踏み込む。
 取り巻きの二人、角野と円谷が警察手帳を見せ、本人確認を取ると、その人物は顔を真っ
青にして固まっていた。
 瀬古秀司。瀬古勇・優兄弟の父親だ。神経質そうな痩せた頬と撫で付けた髪、銀フレーム
の細い眼鏡のスーツ姿。テーブルの上には食い散らかしたコンビニ弁当の空箱と、几帳面に
重ねられた書類が置かれている。離婚調停用の資料だろうか。
「な、何ですか!? わ、私は関係ありません! あんな奴ら……もう息子じゃない。じき
に縁も切るんだ、他人になるんだ。もう家には帰らない。放っておいてくれ!」
 こちらの身分を知って、そのやつれ、神経質な表情が更にヒステリックになった。
 情報通りだ。次男の自殺から始まって、長男の殺人犯化、妻の発狂──広がる噂に職場に
もいられなくなり、家を出てしまった。今ではこうして貯金を取り崩しながらネットカフェ
などを点々とし、妻達と完全に決別する準備を進めている。
「優も、勇も、とんでもないことをやらかした。失敗だ。勇は射殺されたんだろう? 構い
やしない。処分されたんなら、それでいい……」
 相手は三人。だが警察がここまで踏み込んできたなら、もうお終いだと思ったのだろう。
秀司はぐったりと頭を垂れ、諦めの境地に入っていた。家を出た時点でその人生はもう破綻
していたのだから。
「いや。別に、私達は君を咎めに来た訳じゃあないんだ」
「……え?」
 しかし、白鳥は嗤う。角野と円谷を引き連れて、その微笑は何処か薄ら寒いほどの落ち着
きを纏っている。
 ひょい。そこへ更に、四人目の人物が顔を出してきた。白鳥はまるで彼を迎え入れるかの
ようにそっと半身を逸らしてスペースを空けてやる。
「よう」
 そこに立っていたのは、ずいっと身を乗り出してきたのは、如何にも荒っぽそうなチンピ
ラ風の男──“蝕卓(ファミリー)”が一人、人間態のグリードだった。


 瀬古勇の葬儀が行われるとの発表があったのは、磯崎邸の一件から二日後の事だった。
 主に悪い意味で時の人だった少年のそれとあって、開始時刻の日没後には辛うじて呼び寄
せられた親族を始め、多くの報道陣が押し寄せる結果となった。事件以来、長らく主不在だ
った瀬古宅には、決して真っ直ぐな弔意など持ち合わせていない人間達が大挙する。
「──この度は、我が愚息が多大なご迷惑をお掛けしましたこと、深く深くお詫び申し上げ
ます。それでもせめて、今夜だけは、彼の冥福を祈っていただければこれ幸いと存じます。
僅かな時間ではありますが、我々に弔いをさせることをお許しください──」
 そして何よりも驚きだったのは、病床の妻に代わってあの父・秀司が喪主を務めていたと
いう点だ。事件以来の報道では、不祥事続きの家族に嫌気が差して家を出て行ってしまった
と言われていたが、今夜の彼はまるで別人のように粛々と務めを果たしている。
 罪人とはいえ、流石に葬式一つ出さないのは憚られたのか。
 或いは何のかんのといって、親子の情が残っていたのか。
 報道陣が忙しくなくフラッシュを焚くのをされるがままに、秀司はそう深々と頭を下げて
いた。喪服揃いの出席者達も、そんな真面目な対応をする彼に、正面から非難や罵声を浴び
せる訳にはいかず、苦虫を噛み潰したような表情をしている。
「……やっぱり妙だね」
 そんな黒い人ごみの外側に、冴島と数名の隊士達は立っていた。周りと同じく喪服に身を
包んで出席者を装い、今日この日の葬儀を偵察に来ていたのだった。
『ええ。聞いていた話とはまるで別人だ』
 インカム越しの呟きに、司令室(コンソール)の皆人が同意する。室内では職員達が総出
で現場の様子をモニタリングし、何か新たな情報がないかと目を光らせている。
 少なくとも、彼個人が心を入れ替えたとは思えない。この場をセッティングし、一挙手一
投足をレクチャーした者がいる筈だ。
「当局、かしら」
「おそらくは。瀬古勇の死を大々的に知らしめるという意味でも、これほど事件の幕引きに
都合のいいイベントはないですから」
 香月が、少々顰めっ面でこのディスプレイ群に映る映像を見ていた。彼女もまた、この儀
式に一種のおぞましさを感じているのだろう。皆人は振り向きもせず、テーブルの上に両肘
を立てて寄り掛かったまま、両手を口元に持ってきている。同じくじっと見つめるディスプ
レイ群には、現在進行形で進む、瀬古勇の葬儀の様子がライブされている。
「……それで睦月、大江。そっちはどうだ?」
 そして暫く映像を眺めていた皆人が、ふいっと視線を横にずらして問う。そこには別窓で
表示された、西大場の廃ビルが映っていた。日が沈んで、辺りはすっかり不気味さを増して
いる。
「駄目だな。がっちり閉鎖されちまってる」
「コンシェル達を使えば入れなくもないけど……どうする?」
『いや、そこまではしなくていい。一度戦っているんだ。これ以上警戒されては得られる情
報も得られなくなる』
 葬儀の偵察は冴島らに任せ、睦月と仁、元電脳研のメンバーな数名の隊士らは、以前サー
ヴァント達が現れた勇の隠れ家を訪れていた。犯人は現場に戻ると云うやつである。本人の
生死も、居場所も不明瞭な今、自分達が辿れるのはその足跡だけだ。
 了解。司令室(コンソール)の皆人からそう指示を受け、皆人と仁、隊士らは夜の廃ビル
を見上げていた。一度筧らが事件に巻き込まれたのもあってか、その入口は既に鉄条網が設
置されて固められてしまっている。
「ま、大体予想はついてたけどなあ」
「やっぱり警察の中に、アウターが……」
 まだ何か手掛かりが残っていいれば。そう思って足を運んだが、どうやら目ぼしい収穫は
なさそうだ。仁が肩を竦め、睦月が口元に手を当てて考え込んでいる。皆人も、その別窓の
映像をチェックしながら彼らを見、少し思案してから指示を送る。
『可能性は高いだろうな。とりあえず、ざっと周りを確認してから戻って来てくれ。冴島隊
長達とも合流して、一度情報を整理したい。既成事実化は……おそらくもう防げないしな』
 そう、だね。映像の向こうで、睦月と仁が頷いていた。隊士達を連れて、より奥の暗がり
へと進もうとする。「うん……?」だがその時、睦月が物陰に何かの姿を認めたのを、皆人
はこの時まだ気付いていなかった。もう一つ、割り振っておいた通信先を切り替える。
(……さて。もう一つの懸念の方はどうなっているか……)

 日が沈んでしまっても、街は変わらずに動き続けている。
 夜の大通りに面するファミレスに、由良は一人訪れていた。今日一日走り回った疲れこそ
あったが、彼女達からの声を聞き漏らす訳にはいかない。
「やあ。お待たせ」
 目的の人物──海沙と宙は、店内をぐるりと見渡してすぐに見つけられた。観葉植物や仕
切り板で死角になっている隅の席をわざわざ選んでくれている。……やはりそういう話か。
 最初はあくまで穏やかに、不安を刺激しないように。
 由良は二人が座っている席まで歩いて行って顔を出すと、そう朗らかな感じでもってその
向かい側に着く。
「その……。いきなり呼び出してすみません」
「構わないよ。困った事があれば連絡してって言ったのは俺の方だからね」
 七波の病室を訪ねていた時に掛かってきたのは、彼女達からだった。何でも相談したい事
があるから会いたいとのこと。内心、由良は思わず膝を打った。辛抱強く待っていた甲斐が
あった。以前踏み込めなかった更なる情報を、聞き出せるかもしれない。
 全員が揃った所でウェイトレスがやって来た。場所賃代わりにアイスコーヒーと、彼女ら
にパフェを一つずつ。二人は遠慮したが、それくらいは驕らせてくれと笑って押し切った。
注文を取り終えて去っていくこのウェイトレス、周囲の気配を確認してから「さて……」と
由良は早速本題に切り込んでいく。
「それで? 相談したい事っていうのは、一体……?」
「は、はい」
「えっと。単刀直入に訊きますけど、刑事さんって“人の記憶を消す方法”って知ってます
か?」
「……記憶?」
「はい。その、この前ちょっとトラブルがあって、その後の事が思い出せないんです。今回
に始まったことじゃありません。前にも何回か、似たようなことがあって……」
「思い出そうとすると、頭がズキズキ痛んで思い出せないんです。だから、もしかたらあい
つらが、電気ショックとか薬とか、そういう類の物を使ってるんじゃないかって……」
 由良は思わず、ぱちくりと大きく開いた目を瞬いていた。
 何だ? 急に物騒な話になったな。記憶喪失? それも何度も? 睦月少年が危険な事に
首を突っ込んでいるらしいとは聞いたが、実は彼女達も大概なのか……?
「この前のは、ちょうど刑事さんと会った後の──むー君達に疑惑を向け始めた時のことで
したから。やっぱり偶然とは思えないんです」
 俺と会った後に?
 それに、頭痛? 思い出そうとすると痛む……?
「……同じだ」
「えっ?」
「同じなんだ。実は俺も──俺と、俺の師匠も前々から似たような症状に悩まされててな。
時間が経って治ってきたのか、最近はそう痛むことは減ってきたが……」
 だからこそ、由良は打ち明けた。まさかと、彼の中の刑事(デカ)の直感がそうさせてい
たのだ。今度は海沙と宙が目を見開いてぱちくりと瞬く。互いに顔を見合わせて、改めて見
つめ返したこの刑事の表情(かお)に、嘘やからかいなどが無いことを確認する。
「そ、それ、本当ですか?」
「刑事さんも、記憶喪失……?」
「君達と同じだとしたら、そうなるな。少なくとも俺達は一度、調べていたヤマの情報をご
っそり失っている」
 言って、由良は自身のメモ帳を二人に見せた。普段仕事で使っている物だ。その一部の頁
だけが、今もごっそりと破り取られている。筧の物も同じだ。守護騎士(ヴァンガード)の
存在を嗅ぎ回られては困る何者かが、実力行使に打って出た証拠だ。
「……自分で破った訳じゃ、ないですよね」
「何でそうなるのよ。あたし達がこの話を誰かにするのは初めてでしょ? 何で刑事さんが
それを見越して仕込めるっていうのよ。っていうか、そうする理由が分かんないし」
「う、うん……」
「天ヶ洲さんの言う通りだ。全くの偶然だよ。俺だって驚いてる。……そうなると、益々睦
月君が怪しいな。彼は今何処に?」
『……』
 偶然。そうとは言ったが、内心由良は寧ろ確信を持ちつつあった。
 やはり一連の事件と、睦月少年には繋がりがある。いや、守護騎士(ヴァンガード)本人
なのではないか? にわかには信じられないが、彼が現れ始めた時期も、睦月少年が友人の
“手伝い”をし始めた時期も……。
「話してくれ。彼が手伝っている仕事とは、一体何なんだ」
 核心に迫る。予めそのつもりで連絡を取ってきたのか、ごくりと揃って息を呑んでいたも
のの、その眼は真っ直ぐにこちらを見つめている。いいよね? うん。互いにそう小さく最
後の確認をし合ってから、海沙と宙は答える。
「実は……。むー君、もしかしたら玄武台(ブダイ)の事件に首を突っ込んでいたかもしれ
ないんです」
「──っ!?」
「はっきりとした証拠はないわ。でもあいつ、ちょうどその頃、大きな怪我をして入院して
たんですよ」
「……続けてくれ」
「お手伝いというのは、むー君の親友、私達とも仲のいい三条君の家の会社の、モニターの
お仕事なんです」
「三条?」
「聞いた事ないですか? 三条電機。皆っち──皆人は、そこの御曹司なんですよ」
 由良は目を見開いている。先ほどから驚きっ放しだ。しかし今まさに無数の点が猛烈なス
ピードで線になっている。繋がっている。あの会社か。香月博士も所属している、国内屈指
のITメーカー。親友というのには驚いたが、両親繋がりならば納得がゆく。
「これ、本当はまだ企業秘密なので内緒でお願いしますね? 実はむー君、そこが開発中の
新型コンシェル──パンドラを持ってるんです。パンドラちゃんって凄いんですよ? 見た
目は可愛い女の子で、AIだってをこと忘れちゃうくらい凄く自然にお喋りできるんです。
元はおばさま──むー君のお母さんが開発した子で、今は色んな所に連れ出してはデータを
採っているらしいんですけど……」
「あいつが怪我ばっかりするようになったのは、その頃と一致してるんですよ。出掛けた先
で何やってるのか分かんないけど、きっとパンドラと一緒に、街中の色んな面倒事に首を突
っ込んでるに決まってます」
 秘密と言いながら最初は随分自慢げに、その後しんみりと。海沙と宙はそれぞれに言葉を
継いで継がれてその事実を打ち明けていた。由良は内心興奮のまま、必死にメモを取り続け
ている。……間違いない。繋がった。彼がそうなのだ。第七研究所(ラボ)の火災に巻き込
まれて入院していたという事実も同時に聞き出した。全てが繋がる。自らの力で行き着いた
達成感に、由良は昂っていた。
 しかしどういう事だ? 仮に彼が守護騎士(ヴァンガード)で確定なら、何故あの時、彼
は怪物と一緒にいた? 共闘していた? まだピースが足りないというのか? まさか怪物
の中にも、守護騎士(ヴァンガード)に味方する者と、敵対する者がいる? 分からない。
或いはあれに関しては、睦月少年の正体とはまた別の問題なのか……?
「……話してくれてありがとう。秘密は守る。だからどうか、君達からも彼や三条君を止め
るよう働きかけて欲しい」
 ペンを走らせていた手を止め、顔を上げる。
 由良は言った。もしこれらが全て事実なら、止めるべきだと思った。母も親友も全てグル
になって、彼を守護騎士(ヴァンガード)に仕立て上げているのだとしたら……こんなに残
酷な現実はない。

『──拙いな』
「はい。とても」
 そんな三人のやり取りを、國子や数名の隊士、司令室(コンソール)の皆人達は一言一句
漏らさずに聞いていた。こんな事もあろうかと、彼女らの持ち物に発信機を仕込んでおいて
正解だった。場所はファミレスの裏手。盗聴音声をこちらに回して貰い、國子らは壁に背を
預けてこの会話全てを聞いている。
『海沙ちゃん、宙ちゃん……』
『彼女は彼女達なりに、睦月君を心配していたんだろうな。秘密を漏らしたとはいえ、一方
的に責める訳にはいかんよ』
 香月が、萬波がそうインカムの向こう側で嘆息をついている。國子率いる一隊は、皆人の
指示で、海沙と宙の動向を監視していたのだった。あれだけこちらを怪しみ、直接詰め寄っ
てきた彼女らを、対策チームとしてはもう野放しにはできない。
『よりにもよって、あの刑事の片割れと繋がっていたとはな……』
「どうしますか?」
『リモートは……拙い。これ以上乱用しては彼女達へのダメージが心配だ。それに、あんな
他人の眼の多い場所で三人を昏倒させる訳にはいかないだろう』
 ぎりっと、皆人は苦々しく歯を噛み締めていた。唇を結んでいた。
 以前話し合ったように、もう限界なのだろう。
 皆人は大きく嘆息をつく。親友(むつき)には悪いが、これから國子達に彼女らを回収さ
せて──。
「おい」
 ちょうど、そんな時だった。皆人が國子達に二人を接触させ、いよいよ全てを打ち明けて
引き入れようとした瞬間、現場の國子隊に声を掛けてくる者が現れたのだ。彼女が、隊士達
が弾かれたように驚愕し、こちらに向かって歩いて来る男の姿を見遣る。
「……てめぇら、そこで何やってる」
 筧だった。
 スーツ姿が夜闇とネオンの逆光に紛れ、ギロリとその鋭い眼光が向けられる。

「パンドラ、本当にアウターで間違いないの?」
『はい! 反応ビンビンです!』
 睦月と仁、元電脳研のメンバーな隊士達は、不審な影を追って廃ビルの裏側へと駆け出し
ていた。進んだ先には手頃な雑木林が広がっている。頭上からの月明かりが夜闇を照らして
くれていたが、それでも不気味なまでの静けさは変わらない。
「まさか本当に出るとはな……。俺達はちらっと見えただけだが」
「なあ、これって罠じゃないのか? 都合が良過ぎだろ。一旦三条に指示を仰いだ方がいい
んじゃ……?」
「そうなんだけどね。どうもさっきから回線がゴチャゴチャしてるんだよ。多分、冴島さん
や陰山さんの方で何かあったんだと思うんだけど……」
 雑木林の中を走りながら、睦月は不安視する隊士に答えた。言われずとも駆け出した直後
から呼び掛けているが、応答がない。代わりに向こうからは忙しないやり取りと、複数のノ
イズが聞こえる。待っていては、逃げられてしまう。
「何にしろ、相手がアウターとなりゃあ、放ってはおけねえだろ」
「まぁ、そりゃあそうなんだがよお……」
 暫く走って、息を切らせながら、睦月達は立ち止まった。雑木林の只中、月明かりだけが
頼りの夜闇をぐるりと見渡し、それぞれに物陰から逃げ去った先刻の影を探す。
「パンドラ、反応は?」
『ロストはしていません。まだ近くにいます。七時……いえ、八時の方向!』
 そしてその言葉に睦月達が振り返ったのと、暗闇から何者かが襲い掛かってきたのはほぼ
同時だった。
 月明かりを反射する、鋭い爪の一閃。
 咄嗟に睦月達はめいめいに地面を転がり、すんでの所でこれを避けた。ズンッと着地する
その巨体の背中を、一同はすぐさま起き上がると見据え、身構える。
「……」
「っ!? こいつ!」
「間違いねえ。あの時の……」
 こちらに振り返った巨体。全身錆鉄色の隆々とした身体。
 それは紛れもなく竜(ドラゴン)のアウターだった。血色の双眸を光らせ、牙の生え揃っ
た口元から荒々しい息を漏らしながら、ゆっくりと身を低くして再びこちらを狙おうとして
いる。
「お前か……。よくも、二見さん達を……!」
 これに、対する睦月も即座に動き出していた。パンドラの入ったデバイスと懐から取り出
したEXリアナイザを構え、セットし、ホログラム画面を操作する。
「全員、敵を包囲! 佐原をサポートする! 内一人は司令室(コンソール)に呼びかけ続
けろ! こっちもやべぇことになってるぞってな!」
 これに仁も、すぐさま仲間達に指示を出した。彼を含めた元メンバーな隊士達がぐるりと
竜(ドラゴン)を取り囲むように散開し、それぞれに調律リアナイザを取り出す。睦月も手
早くホログラム画面から装備を呼び出すと、頭上に向かって引き金をひいた。
『TRACE』『READY』
「変身!」
『OPERATE THE PANDORA』
『ARMS』
『DRILL THE RHINO』
 光球を纏って守護騎士(ヴァンガード)姿になった睦月と、仁のグレートデューク以下、
隊士らのコンシェル達が一斉に地面を蹴った。うおおおおおおッ!! 円形に包囲した四方
八方から、睦月が正面から、ドリルアームの武装を振りかぶる。
「グ……オォォォォォッ!!」
 言わば突発的な、ミラージュの弔い戦だった。初手から出し惜しみをせず、パワーで押そ
うとする睦月。突撃槍(ランス)やそれぞれの得物を光らせて襲い掛かる仁達。
 だが竜(ドラゴン)は、この猛攻にも怖気づかなかった。先ず睦月のドリルアームをその
硬い装甲のような片腕でいなすと、続いてデュークの突撃槍(ランス)を受け止めてぐるん
と身体を回転、鈍器を振り回す要領で続く他のコンシェル達を吹き飛ばす。
 どうどうっと、面々は倒れた。しかし睦月達も睦月達で、闘志には火が点いている。起き
上がるとすぐに駆け出し、再びまた再びとこの錆鉄色の怪物に向かってゆく。
「まだまだァァァー!!」
『ARMS』
『GROUND THE BUFFALO』
「相手は硬い! 考えなしに叩いても駄目だ! 関節だ、間接を狙え!」
 右腕のドリルアームに加えて、左手に分厚い斧。そして仁も仲間達に、すぐさま堅固なこ
のアウターにダメージを与えるべく指示を飛ばす。
 竜(ドラゴン)が睦月からの二刀流を受け止めた隙を突き、仁達が一斉にそのがら空きに
なった脇腹や膝の裏を狙って刃を突き立てた。今度は通った。竜(ドラゴン)も、一瞬激痛
に顔を歪めたように見えた。しかし……。
「グッ……オオオオオオオオーッ!!」
 咆哮と、全身に込めた筋力が、その束の間の強襲を吹き飛ばした。今度は睦月達が顔を歪
めてぐらりと宙を浮く。そこへ竜(ドラゴン)が、ぶんっと尻尾を鞭のようにしならせて、
霞むような速さの回転を加えながら追撃を叩き込んでくる。
 があっ!? コンシェル達が吹き飛ばされ、そのフィードバックを受けた仁達が苦痛に顔
を歪ませた。中にはがくんと膝をつき、息を荒げる者もいた。乾いた土をズザザッと踏ん張
り、睦月らは顔を上げる。するとそこには、関節を突かれて出来た竜(ドラゴン)の傷が、
ジュウジュウと再生してゆくさまがあったのである。
「自己、再生?」
「マジかよ……。っていうか、これって──」
 仁が思わずごちた、ちょうどその時だった。
 目の前で発揮されたその能力。その光景に既視感を覚えた直後、ざく、ざくとこちらへ近
付いて来る足音が聞こえてきたのである。
 睦月が、仁や隊士達が半ば反射的にその方向を見遣る。そして見遣って──驚愕する。
「……やっとだ。俺は、この時を待っていた」
 瀬古勇だった。逃亡生活が続いたからか、着ている服は随分と荒々しく擦り切れ始めてい
たが、その憎しみに満ちた眼光は変わらない。寧ろあの時よりも強くなっている。
 ぶつぶつと呟き、彼はこちらへ歩いて来ていた。睦月が呆然としている。仁が、仲間達が
ゆっくりと眉間に皺を寄せ、そしてギリッと強く歯を噛み締めた。
「瀬古さん……」
「あんにゃろう。やっぱ生きていたか」
「いや、それよりも……。あいつが持ってるのって──」

『逃げろ、國子! そいつだけには捕まるな!』
 一方時を前後して、司令室(コンソール)の皆人達も緊迫していた。海沙と宙、そして由
良の密会現場に聞き耳を立てていた國子ら小隊の前に現れたのは、鋭い眼光で一切遠慮なし
の疑心を向ける、刑事・筧その人だったのだから。
 状況を理解するや否や、弾かれるように國子達は逃げ出した。彼にリモートを使う暇もな
かった。駆け出した直後には、もう筧は後続の隊士の一人に迫ろうとしていたのだから。
「ぐあっ……!?」
『っ!』
「吉村ぁ!」
「くそっ、捕まった!」
 一歩逃げ遅れたこの隊士を、筧は逃さなかった。目にも留まらぬ速さで覆い被さるように
体勢を崩させて倒し、両手足を体重を乗せて完全に掴んでしまったのだ。國子や他の隊士達
が切羽詰る。見捨てるべきか? いや、一人でも捕まったらお終いだ。
「悪いが、逃がさんぞ。電話を取ってから由良の様子がおかしいと思えば……ん?」
 この隊士を取り押さえた筧が、深く息をついて呟いている。
 だが次の瞬間、彼の懐から零れ落ちたある物に、筧も國子達も目を見張ることになる。
「これは……リアナイザ?」
 独特なフォルムをした短銃型のツール。
 それが、この隊士の懐から出てきた。筧の眼がこれに釘付けになる。國子や他の隊士達、
司令室(コンソール)の皆人らが、絶望した様子でその瞬間、硬直している。

「拙い……。筧兵悟にバレた……」
「司令! 司令!」
「大変です!」
 思わず頭を抱えてしまいそうになる。
 だがそんな皆人を、職員達が強い口調で呼びかけた。ハッとなって視線を返すと、彼らは
また同じくピンチの余り興奮しているものの、皆人に示すべきものは忘れなかった。
「アウターです! 例の竜(ドラゴン)のアウターです!」
「現在、睦月さん達と交戦中! それに──」
 夜闇に紛れ、雑木林の向こうからやって来た勇。驚く睦月ら一同は、更にその右手に見覚
えのあるものが下がっているのを見ていた。
 リアナイザである。
 短銃型の、本来TA専用のツール。彼はその装置の、闇のように真っ黒に塗り上げられた
それを、ぶらぶらと手に下げて近付いて来ていたのだった。
「黒い……リアナイザ?」
「じゃあ、やっぱりあいつはまたアウターを……?」
 めいめいに弾き飛ばされた位置のまま、竜(ドラゴン)を囲むように片肘をついていた睦
月達。そんな様を見ているのかいないのか、勇はにぃっと口角を吊り上げると嗤った。ゆっ
くりと視線を上げ、睦月らと竜(ドラゴン)のアウターを視界に映し、直後その新しい力を
見せ付けるように叫ぶ。
「来い、ドラゴン!」
 再びの咆哮。するとドラゴン・アウターは、まるで勇の命令に応じるかのように踵を返し
て振り向き、大きく腕を広げて夜空を仰いだ。睦月達が思わず目を見開いている。見開いて
いるその前で、突然黒い光の粒子となって収束し始めると、ぎゅっと小さなサイズ──それ
こそ形だけならデバイスと同じ掌大の長方形になって高速回転、伸ばした勇の手の中に収ま
ったのである。
『おい。まさか……』
 慌てて映像をズームして、この一部始終を見ていた皆人、司令室(コンソール)の面々が
戦慄していた。仲間を捕らえた筧に向かって、追い詰められた國子が自身のデバイスをザッ
とかざそうとしている。ファミレス内では由良が、引き続き海沙と宙から話を聞いている。
「……」
 真っ黒なデバイスと化したドラゴンを黒いリアナイザにセットし、ちょうどリアサイトの
下部に備えられた数字キーを勇は押す。『666』小刻みに鳴り響いた重低な電子音の後、
続いて『READY』の一声。まさかとその場から動けない睦月達をちらっと一瞥すると、勇は
サッとそのリアナイザを握った腕を水平に掲げた。手首を捻り、上面を下へ。ちょうど親指
を下に向けて、地獄へ堕ちろとジェスチャーするかのように。
「変、身」
『EXTENSION』
 そして次の瞬間、それは起こった。守護騎士(ヴァンガード)と同じく、一旦水平に掲げ
た腕を捻り返しながら胸元に戻し、銃口をもう片方の左掌に押し当て、最後の電子音声が鳴
り響く。違ったのは光球が飛び出すのではなく、彼を中心として大きな黒い光球──バブル
ボールのようなどす黒いフィールドが展開された点。それらは彼の全身を覆うように蠢き、
次々とその身体に装甲を纏わせる。
「……」
 深く小さな吐息。変貌──変身はほどなくして完了した。
 全身を、黒を基調に統一された禍々しいパワードスーツ姿。ゆっくりと光った両眼はドラ
ゴンと同じ暗い錆鉄の緑であり、まるで夜闇と同化するように不気味な余波を放った。
「なっ──!?」
「嘘、だろ……?」
『……』
 睦月が仁が、隊士や司令室(コンソール)の皆人達が驚愕し、言葉を失っていた。

 “黒い守護騎士(ヴァンガード)”。
 一言で形容するならば、まさにそうとしか言い表せないような彼の姿が、そこにはあった
のである。

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  1. 2017/07/17(月) 18:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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