日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブルⅡ〔24〕

「……さようなら。先輩」
 失望し、一転して冷たく見下した眼と共に、スーツ姿の男が呟いた。それを合図として、
金色の騎士甲冑──セイバー・アウターがその剣を振り下ろす。
 睦月は、動けなかった。同じくセイバーの能力でコンシェルを掻き消された冴島達が叫ぶ
も、吸い取られたエネルギーはすぐには戻って来ない。
(くうっ。身体が……)
 力が入らず、項垂れる首元へと迫る刃。
 これまでになかった事態に、守護騎士(ヴァンガード)姿の睦月は正直もう、ここまでか
と思って──。
「ぬっ!?」
 だがイメージした切断は来なかった。一向に刃が触れないことに異変を感じ、恐る恐る顔
を上げると、そこにはセイバーの剣をがしりと片手で受け止める別の怪人の姿があった。
 全身錆鉄色のトカゲ型──いや、竜(ドラゴン)のアウター。隆々とした巨躯はつい先程
まで睦月らを圧倒していた剣を容易く受け止め、口からフシュウ……と、熱を帯びた息を漏
らしている。
「な、何だ、こいつ……?」
『アウターです! しかも、もの凄いエネルギー量……。一体何者……?』
「……何のつもりだ? 何故我々の邪魔をする?」
「おい、セイバー、何をやってる!? そんなデカブツさっさと倒しちまえ!」
 まるで庇われる──乱入されたかのように。驚いて見上げる睦月やパンドラを余所に、当
のセイバーやこの召喚主の男は怪訝に、そして苛立ちを隠せないでいた。
 しかし対するこの竜(ドラゴン)のアウターは、低い唸り声こそ上げど応えない。その膂
力に任せてぐいぐいと、セイバーを剣ごと押し返すばかりで意思疎通が取れているようには
見えない。もしかしたら見た目の凶悪さに相応しく、かつてのボマーなどのように狂化され
ているタイプの個体なのかもしれない。
 オォォ……! そして次の瞬間、竜(ドラゴン)のアウターはセイバーを押し飛ばした。
思わずふらつき、剣を構え直す暇も与えずに襲い掛かってくるこの同胞に、セイバーは守勢
に回らざるを得ない。
「あ、あれ? もしかして仲間割れ?」
『少なくとも、加勢に来た訳じゃなさそうですね。とりあえず助かったみたいです』
『そのようだな。睦月、今の内だ。撤退しろ。このままじゃジリ貧だ。それに、当初の目的
ならもう果たしている』
 図太い鉤爪の豪腕を振り回し、セイバーに火花を散らせる竜(ドラゴン)。
 いきなりの展開についていけない睦月達に、通信越しから皆人が指示を出した。コクリと
頷き、物陰の向こうにいた冴島達もこちらを見遣って首肯を返してくる。
 竜(ドラゴン)とセイバーが戦っている隙をみて、睦月達は急いでその場を後にした。男
がそれに気付いて止めさせようともするも、狂気のままに襲い掛かってくる竜(ドラゴン)
に頼みのセイバーは終始押されっ放しだった。
「くそっ! 逃げられ……。っていうか、何であいつ、セイバーの剣が効いてないんだ」
 十数度目かの火花。だがふと睦月達が逃げていったのをまるで確認するかのようにちらっ
と横目を遣ると、竜(ドラゴン)のアウターは突然大きく背中の翼を広げて舞い上がった。
轟と舞う風圧にセイバーやスーツの男が思わず仰け反る中、この錆鉄色の闖入者はまたして
も理由(わけ)も告げぬまま飛び去っていってしまう。
「……一体、何だったんだ?」
 ぽかんと、その場に取り残された男とセイバー。実際に刃を交えたセイバーに至っては、
自分の力が通じなかった事実と共に、剣を地面に差して杖代わりにしながら少なからず肩で
息をしている。
「……」
 そんな二人、事の一部始終を、工場の物陰から見つめている人影があった。
 背格好からしてまだ少年だろうか。影になった暗がりに潜み、その手には間違いなく引き
金をひいたリアナイザをぶら下げている。
「この程度か……。同じ候補者だったと聞いていたんだが、大したことないな」
 もう放っておくか。静かに呟き、そっと引き金を離す。場に取り残された格好になった男
とセイバーを暫く観察していたものの、この少年はやがて興味を失ったのかそのまま人知れ
ず踵を返して物陰の奥へと消えて行った。
「奴は──俺の得物だ」
 ギロリ。暗がりの中でも映える血走った眼。
 はたしてその少年は、佐原睦月と因縁のある人物だった。


 Episode-24.Heroism/君がいるから憧れた

 治癒能力のコンシェル達が、寝台に仰向けになっている睦月の全身を優しい光で包む。
 地下司令室(コンソール)。四ツ谷自工の工場から逃げ帰ってきた睦月達は、すぐ回復の
為に手当てを受けていた。奪われたエネルギーを取り戻さなければ、どのみちにろくに戦え
なかっただろう。
 そうして暫くの間、治癒の光を浴びていた睦月は、ようやく身体の自由を取り戻して起き
上がった。コンシェル達に礼を言って施術室を出ると、メインルームには既に皆人以下対策
チームの面々が勢揃いしている。
「ああ、睦月か。ちょうど良かった。今例の召喚主の身元が特定できた所だ」
 司令官たる親友(みなと)が振り返り、中央のディスプレイ群を促す。職員が制御卓を操
作すると、そこにはあの時のスーツの男の詳細情報が表示されていた。
「天満洋輔、二十七歳。飛鳥崎市内の小さな精密機器メーカー勤務のサラリーマンだ。主に
カメラや時計などを生産・販売している」
 顔や年齢だけでなく、生年月日や身長・体重・血液型、出身地の家族構成や現在住んでい
るアパートの地番まで。この秘密基地には飛鳥崎とその一帯に関するありとあらゆる情報が
集まってくる。
 腕に引っ掛けていた上着を弄りながら、睦月はこの詳細画面を見上げていた。“救世主”
を名乗る人物の割には、これといって特異な情報はない。普通の一般市民のようだ。
「しかし、化けの皮さえ剥がれれば呆気ないもんだな。要するにアウターの力を笠に着てる
だけな訳だろ?」
「自ら救世主(セイバー)と名乗っていた点からも明らかですからね」
「問題は、あの剣だね」
『それに、乱入してきたあのアウターも気になります。もしかしなくても、セイバーより強
力な個体のように見えましたし……』
「そうだな。あちらも近い内に調べる必要がある。だが今は、目の前の敵に集中しよう」
 仁や國子、冴島やパンドラの呟きに頷きつつも、皆人は再び一同をこちらに向かせた。手
でサッと軽く合図して制御卓を弄らせると、今度はディスプレイ群にセイバー・アウターの
姿と各種データが呼び出される。
「先ほどの戦闘データだ。冴島隊長も言った通り、一番のネックはこいつの剣だろう。相手
のエネルギーを吸収して自分のものにできる。このアウターの特殊能力とみて間違いないと
思うが」
「ええ。武器を備えている個体は多いけれど、武器そのものに能力の大半を移しているのは
珍しいタイプと言えるわ。でも、吸収したエネルギーを流用した肉体強化も手伝って、地の
戦闘能力自体もかなり高い筈よ。それは直接戦った睦月が一番分かってると思うけれど」
 早速始まった作戦会議。皆人の発言を引き継ぎ、研究部門を代表して香月が答えた。萬波
以下他のメンバー達も自前のPCのキーボードを叩き、ディスプレイ上の数値に強調の囲い
印を表示させる。
 睦月は母をちらりと見て頷き、難しい表情(かお)をしてこれを見上げていた。初見では
知らなかったとはいえ、ああも打つ手なく追い詰められたのは心苦しい。
 救世主(セイバー)。
 なるほど。あの黄金に光輝く鎧や剣といった姿は、彼の願いのイメージを色濃く反映した
結果という訳か。
「厄介な能力だな。あれがある以上、俺達もろくにサポートできやしない」
「コンシェルはエネルギーの塊だからね。それを突き崩されるとなれば、どれだけ頭数を用
意しても二の轍を踏むだけだろう」
『うーん……。だったら、剣に触れなければいいんじゃない? 受けるんじゃなくてかわし
ていれば少なくとも吸い取られることはないと思うんだけど。接近戦に持ち込んだのが今回
の敗因だったんじゃないかなあ』
「どうでしょうか。シュートモードでも弾は掻き消されていました。エネルギー系の攻撃は
どのみち無意味です。それに、距離を保って戦ったとしても、向こうに間接攻撃がないとは
限りませんし……」
 うっ。國子の淡々とした反論に、パンドラが眉を顰めて再び考え込んでいた。彼女達も先
の戦いでは力になれなかった──寧ろ吸収されて相手にエネルギーを与えてしまったと考え
ているからか、総じて表情は険しいままだ。コンシェル達も守護騎士(ヴァンガード)の装
甲も結局は高エネルギーの塊。相性は極めて悪い。
「少なくとも、また無策でぶつかるのは絶対に避けたい所だな。天満の動向は追うにしても
先ずはあの剣を何とかしないと」
 苦戦は必至。司令塔たる皆人も、既に口元に手を当てじっと考え込んでいた。流石に今回
ばかりは条件が悪過ぎるかもしれない。
「……」
 だがそんな中、当の睦月はぼうっとディスプレイ群を見つめ続けていた。
 セイバーの振るう特殊な剣。皆が言うように、あれさえ何とかできれば、彼らを止められ
るかもしれないのだが。
「……吸収、か」
 ぽつり。仲間達が議論を重ねている中で、睦月はそう独り呟く。

「くそっ! 何なんだよ、あいつは!?」
 自宅のアパートに戻って来たスーツの男・天満は、激しく苛立っていた。帰宅して早々、
机に近付きざまに拳を叩き付け、やり場のない怒りを吐き出す。
「何がどうなってんだよ……」
 とんだ邪魔が入った。よりにもよって奴らを逃してしまうとは。
 守護騎士(ヴァンガード)の反応からして、あの緑色のデカブツは味方ではなさそうだ。
寧ろこちら側に近いのだろう。あの野性味溢れるパワー、セイバーの剣を物ともしないタフ
ネス。人が皮を被っているのとは訳が違う。
 天満は頭を抱えていた。両肘を机に突っ立て、ガシガシと苛立ちのままに髪を掻き毟る。
 まさかあんな裏切りに遭うとは思ってもみなかった。守護騎士(ヴァンガード)、飛鳥崎
を守る正義のヒーロー。自分はあんたに憧れて同じ道を歩いてきたというのに、真っ向から
否定された。しかもその正体は自分よりもガキで、力を振るうことにさえ消極的な腰抜けだ
ったとなれば。
 はっきり言って、落胆以外の言葉が見つからない。この力は悪と闘う為の、選ばれし者の
証ではないのか? あの場では怒りさえ覚えてああ言ってしまったが、受けたショックは今
もまだ拭えないでいる。
「畜生。今日は散々な日だ……」
 “セイバー”としての依頼をしくじった事は勿論、自分達の正体を知る目撃者を取り逃が
してしまったという不始末。次に出会った時こそは確実に仕留めなければならない。少なく
ともあの邪魔なデカブツが出しゃばってさえ来なければ、あのまま“世代交代”は実現して
いた筈なのだから……。
『同感だな。しかし洋輔、妙だとは思わないか? 何故奴らは我々の出没を把握していた?
どうも出来過ぎている。もしかしたら、今回の依頼自体が罠だったのではないか?』
 そんな時だ。胸ポケットの中に突っ込んでいたデバイスからセイバーの声がし、画面を明
滅させながらそんな可能性を示唆する。
 まさか……。天満は目を見開いてハッと我に返り、机の上のデスクトップPCを立ち上げ
始めた。起動までの時間がじれったい。回線が繋がるや否や、天満はすっかり慣れた手付き
で自身の専用BBSへと飛ぶ。更に複数のウィンドウを開いて守護騎士(ヴァンガード)に
関する情報が更新されていないか確認してみる内に、この指摘が杞憂に終わらなかったこと
を突きつけられた。
『続報・万世通りに現れたヒーローの正体』
 インターネット上に、いつの間にかそんな記事がアップ、シェアされていた。先日の現場
付近と思しき路地の一角で、双頭の狗の姿をした怪物が他ならぬセイバー、金色の騎士甲冑
に襲い掛かっている様子が写真に収められている。
 しかも画は複数枚あり、左から右へ、セイバーがこの怪物をその一太刀で真っ二つにして
ゆく一部始終が掲載されていた。……間違いない。先刻、四ツ谷自工の工場内で襲い掛かっ
てきた個体と同じだ。だが場所が違う。そもそも自分達は万世通りの事件の際、現場にいた
ことすらないというのに。にも拘わらず、記事には『セイバー、怪物の残党退治!』との文
言が大々的に書かれており、あたかも一連の怪物騒ぎが自分達によって解決されたかのよう
な印象を与える。
「……何なんだこれは。知らないぞ、こんなの!?」
『どうやら、確定のようだな。おそらく背景画像は加工されたものだろう。素人仕事にして
は精緻過ぎるように思えるが……』
 取り乱しながらも、デバイスを出してセイバーにも見せてやり、そう淡々と「クロ」の判
断が下される。おかしいとは思ったのだ。何故あそこで万世通りの事件と同じ怪物が出て来
たのか。自分達は、嵌められたのだ。
「守護騎士(ヴァンガード)め。始めから、そのつもりで……」
 これこそが、皆人の立てた“作戦”だった。万世通りの一件で守護騎士(ヴァンガード)
に向けられた世間の眼を逸らす為、用意周到にセイバーを生贄にしたのだった。
 ギチッと歯を噛み締め、天満はそれでも尚、自身のBBSやネット民の反応を調べる。
 案の定、既にそこではセイバーに対する批判が噴出していた。掌を返したように攻撃的な
書き込みの矛先が自分へと向き、守護騎士(ヴァンガード)ではなく“セイバー”が街を壊
したのだとの結論、偽善者との非難がスレッドに連なる。
 ──いや、寧ろ守ってくれたんだ。倒してくれなかったら、被害はもっと他の地区にも及
んでいたかもしれないんだぞ?
 それでも、中には擁護してくれる声もあった。事実これまで多くの悪人どもを懲らしめて
くれた事には変わりないと、こちらを信じようとする勢力もあり、ここぞと言わんばかりに
批判的になった勢力と書き込みの上で激しく言い争う。
 だが……そんな賛否の如何は些細な事だ。この時世において、賛否両論が膨れて“炎上”
すること自体、そもそもにマイナスに働く場合が多い。
 少なくとも、これで“セイバー”の評には間違いなく傷がついた。嵌められた。その事実
以上に、これまで築いてきたものが侵されることが天満には我慢ならなかった。黙してデバ
イスの中に収まっているセイバーを余所に、その表情は怒りと焦り、綯い交ぜになった激情
でもって鬼気を孕んでゆく。
「俺を潰すつもりか。守護騎士(ヴァンガード)」
 嵌められた。だがもうこの道を引き返す事はできない。それは再び自分に“負け”を認め
ろと言っているのと同じだからだ。
「……ならもっとだ。ならもっと、文句の出ない程に正義を執行してやる……」
 ぶつぶつ。
 他に誰もそれとは知らぬアパートの一室で、独り呟きながら、天満はこれまで以上にその
欲望に忠実になろうとしていた。


「な、内通者ぁ!?」
「しーッ! 声がデカい!」
 時を前後して、飛鳥崎中央署刑事一課。
 その給湯室の隅で、由良は思わず叫んでいた。その口を慌てて筧が押さえている。
 当然、人気のない場所まで連れて来られてそんな事を言われたのだから、驚くなという方
が無理だった。
 もごもご。口を塞がれて何度も小刻みに頷く由良。筧は部屋と廊下の向こうにある一課の
オフィスにいる他の刑事達が、この叫びを聞いていないらしいと耳を澄ませて確認すると、
ほっと胸を撫で下ろして続けた。その声色はやはりというべきか、多少なりとも声量を落と
してある。
「……そうとでも仮定しないと、辻褄が合わないんだよ。どうも上はこの前の怪物騒ぎを揉
み消そうとしてる。テロには違いねぇが、あくまで犯人は“人間”だと決めてかかってごり
押してるからな。今回だけじゃねえ、これまでの不可解な事件全般だ。どうやら巷で噂され
てる怪物やら、守護騎士(ヴァンガード)は、よほど都合が悪いらしい」
「警察内に仲間を潜り込ませてるって事ですか? じゃあ守護騎士(ヴァンガード)は」
「十中八九、そういう組織がある。いち個人が演じるにはヤマがデカ過ぎるんだよ。そうで
もなきゃここまで隠し続けるなんて無理だ。ただ都合のいいだけの“正義の味方”とするに
は楽観的過ぎる」
 コンロ傍の壁にとすんと背を預け、腕を組みながら筧は言った。そんな並べられる推測に
由良はじっと口元に手を当てながら考え込んでいる。
「でも、警察の秘密兵器説……なんてのもありますよね?」
「らしいな。だが多分違う。もし本当に奴が身内──上が奴を囲ってるなら、もっと被害を
出さないように立ち回れる筈だ。存在を秘匿するにしても、その為に市民からの突き上げが
確実な犠牲をホイホイ許すとは思えん」
「……つまり兵(ひょう)さんはこう言いたいんですか? こちらにパイプを持つ外部勢力
が怪物と対峙している、と……」
 ちらっと筧の方を見る。視線を返すこの先輩にして師匠は、言葉にこそ出さずとも小さく
頷いて肯定していた。ついこの前までなら、おとぎ話に過ぎると一笑に付していただろう仮
説である。
「俺自身、どうかしてると思うよ。だが玄武台(ブダイ)の一件であんなものを見せられち
まったらなあ」
「……ええ」
「何処のどいつかは分からん。だが、これまで俺達が何度も助けられたのは事実なんだ」
 守護騎士(ヴァンガード)。それは二人にとってはもう、わざわざ言葉に出さずとも伝わ
る主語だった。
 だがそんな筧に対して、由良は内心彼については否定的だった。信用する訳にはいかなか
った。なまじメディカルセンターの奥で、あんな光景を見てしまった後となっては。
「……化け物に対抗できるのは、同じぐらい化け物な奴かもしれませんよ」
 ぽつり。たっぷりと間を置いて由良が絞り出した言葉に、筧が少々怪訝な眼をして眉を顰
めながらこちらを見ていた。……どうにもばつが悪い。由良も由良でハの字に眉間に皺を寄
せてそっと顔を上げ、この尊敬する先輩を見る。
「正直、自分は怖いです。本当に彼は味方なんでしょうか? 今はまだそうでも、いつこち
らに牙を向けてくるかなんて分からない」
「……かもしれないな。だがよ、由良。“誰が”助けるかってのは、そんなに重要か?」
 だからこそ、ハッと身に詰まされる言葉だったのだ。まるで導くかのように切り出す筧の
言葉に、由良は静かに目を見開いてこれを見つめていたのだった。
「警察だってそうさ。こういう言い方をするのはアレだが、権力を持ってるヤクザみてぇな
モンだろ? まぁ、基本法を守る側と破る側であって、水と油ではあるんだがな……。それ
でも暴力(ちから)の本質ってのはそこなんじゃねぇのか? 振るう理由次第で賞賛もされ
るし、忌み嫌われたりもする。大事なのは如何に人を守るかってことだ。誰が、じゃねえ。
もし寄り添う者がいなければ、その代わりになる……。刑事(デカ)ってのは、そういう仕
事だと俺は思う」
「……」
 流石に臭いかな。筧は腕組みをしたままごち、そう照れ臭そうに苦笑(わら)っていた。
 いえ。由良は小さく応える。やはり貴方は素晴らしい刑事(デカ)だ。
「そりゃあ奴の正体は知りたいさ。仕事としても、個人的にも。だがもしお前の言うように
奴が俺達の敵に回るなら……その時はその時さ。そもそも俺達はずっと、あいつなしでこの
街の悪と戦ってきたんだからよ」
「……はい」
 これで呑み込んだだろう。そう判断したのか、筧はそっと壁から背を離していた。身体を
起こして由良の前に出、沸かしたヤカンから湯を注いで茶を淹れる。
 ずぞぞ……。束の間の一服だった。今し方話した内通者説も、そんな間延びの中に一旦隠
し直したかのようだった。
「とりあえず、こっちに戻って来てる内にそれだけは言っておきたかった。お前も言ってた
通り、このヤマは普通のやり方じゃ掴み切れねえ。俺は過去の不可解事件を洗う。以前手帳
が何者かにごっそり破り取られまでしたんだ。連中はよほど真相に近付いて欲しくないらし
いな。一旦家に帰って、予備でワープロに起こした分のUSBを引っ張り出してくる。まぁ
普段からそう頻繁にバックアップを取ってた訳じゃないし、全部が全部復旧できるとまでは
思っちゃいねぇが」
「……そう、ですか」
「お前も、気になったヤマがあれば貪欲に吸収しとけ。何処に接点があるか分からんぞ? 
ヤバさで言えば……やっぱり瀬古勇の件だろうな」
 そうして直近の予定を言い残し、筧は給湯室を去って行った。背中を向けたまま軽く手を
振って後輩の健闘を祈り、再び捜査の波に飛び込んでいく。
「……」
 由良は独り立ち続けていた。静かに湯気を立てるヤカンを視界の端に、ぼうっと心ここに
あらずといった様子で考え事をしている。
 内心、その思いは複雑だった。まだ彼には近付いて欲しくなかった。
 その理由は先日──筧と離れて単独捜査に臨んでいた、数日前に遡る。

 それはちょうど、睦月と仁がセイバーのBBSに書き込みを行った日だった。
 事前に筧に申し入れて別行動を得、あの時の光景の真実を追うべく、由良は一人飛鳥崎の
街を駆け回っていた。
 だが、当初成果は決して芳しいものとは言えなかった。林の証言からリアナイザが何かし
ら関与しているのは間違いなかったが、その製造・販売元であるH&D社へ突撃を試みるに
はガードが堅く、困難を極めた。そこで一旦ターゲットをもう一つの手掛かりである学園生
に絞り、校門前まで足を運んだのだが、奇しくも“答え”はそこにあったのだ。
(さて……どうしたものか)
 とりあえず足を運んではみたものの、これと言って当てがある訳でもない。やはり下校途
中の生徒達に片っ端から当たっていくしかなさそうだが、それはそれで変に警戒されてしま
うリスクもある。
「……?」
 そんな時だった。ふと近くの物陰から様子を窺っていた由良の目に、一組の怪しい動きの
少女達が映ったのだった。
 下校する他の生徒達に交じっているが、どうも様子がおかしい。何だかコソコソして物陰
から物陰へと移っては、二人してじっと息を殺している。
(もしかして、尾行か?)
 暫くそんな後ろ姿を見つめていて、由良は苦笑いを零した。流石に自分達本職と同レベル
になれと言うのは酷だが、あれでは気付かれるだろう。一体誰を尾けようとしているのかと
彼女達の視線の先を辿ったが、如何せん下校時間で人数が多いため、全くの他人である自分
には分かりそうにない。
 それでも、由良の足は自然と彼女達を追っていた。二重尾行という奴である。何故そうし
ようと思ったのかは分からない。しかしこれが、日頃筧の言っていた刑事(デカ)の勘とい
う奴だったのではないかと今では考えている。
 その後二人は商店街を抜け、雑居ビルひしめく繁華街へ向かった。
 案の定、彼女達が追っていた人物とやらは見失ったようである。途中で気付かれたのか人
波に巻かれたか。ともかく二人は困った様子で何度もキョロキョロと辺りを見渡し、暫くそ
の場に立ち尽くしていた。負けん気の強そうな方と、楚々とした気弱そうな方。二人は何や
ら言葉を交わしていたが、再び動き出した。とにかく捜さなければという感じだろう。
 一体何故そこまで……? そんな疑問が、更に由良を彼女達の追跡に集中させた。
 少なくとも見失ってしまったのは確かなようだ。暫くは負けん気の強そうな方がもう一方
の手を取ってずいずいと前に進んでいたが、やがて目的の人影が見えないと心が折れてしま
ったのか、また道の真ん中に立ち止まって途方に暮れている。
「うう……。見失った……」
「ねえ。もしかして逃げられたんじゃ」
「かもしれないわね。ったく、こっちの気も知らないで……」
 今だな。様子を見ていた筧は、そう話し込んでいる二人へと近付いていく。
「君達。ちょっといいかな?」
 努めて笑顔で、あくまで紳士的に。
 だがこの学園生二人は、こちらの接近に随分と驚いたようだ。ビクッと身体を強張らせ、
気弱そうな方に至ってはまるで食われそうほどに怯えてこの相方の後ろに隠れている。
「……何ですか。今、私達忙しいんですけど」
「そうみたいだね。でもちょっとだけ時間をくれないかな? 俺はこういう者なんだけど」
 あからさまに警戒して、尚且つこの相方──友人を守ろうとする負けん気の強そうな方。
 随分と親しそうだ。由良はそう観察も怠らず、一方で早々に身分を明かす事にした。周り
の視線が集中しない内に懐からサッと警察手帳を見せ、捜査に協力して欲しいと要請する。
「刑事さん……なんですか」
「私達、何も悪い事してませんよ?」
「はは。分かってるよ。少し訊ねたいことがあるんだ。君達と同じ、学園(コクガク)生ら
しいんだけど……」
 あくまで捜査の一環、聞き込みだと説明し、今度は一枚の紙を取り出す。
 それはとある少年の似顔絵だった。林に話を聞きに行った際、同行させた似顔絵捜査官に
書いて貰った物だ。それを二人に見せ、問う。
「この子なんだけど、見た事ないかな? 身長は百六十センチ後半で痩せ型、線目の大人し
そうな男の子らしいんだけど……」
『──』
 最初は、同じ学園(コクガク)生という共通点だけで訊いていた。他にも数を当たらなけ
れば判らぬだろうと思っていた。
 しかしちらっと目を遣ると、彼女達の様子がおかしい。目を真ん丸に見開いて、驚愕した
ように固まっている。
「見た事も何も……」
「これ、むー君、だよね? 私達の、幼馴染です」
 制服姿の少女二人──宙と海沙はそう、お互いに顔を見合わせてから頷いた。似顔絵に描
かれた少年の姿を、間違いなく自分達がよく知る人物だと証言する。
「……何だって?」
 驚いたのは当の由良もだ。ぱちくりと目を瞬いて数拍言葉を失い、しかし次の瞬間にはと
んでもない当たりを引いてしまったのだと理解する。

「──佐原睦月。その子で間違いないんだね?」
 すぐに由良は二人に了解を取り、近くの喫茶店へと連れ立った。もっと詳しい話を聞かな
ければならない。
 そして彼女達もまた、突然出てきた幼馴染の名前に、何か思う所があったらしい。
「はい。私のお隣さんです。ソラちゃんはお向かいです」
「何でまたあいつが……。全く、迷惑掛けてんじゃないわよ」
 少年の名は佐原睦月。そしてこの目の前の少女達は、その幼馴染だという。負けん気の強
そうな方の子は天ヶ洲宙、楚々とした気弱そうな方の子は青野海沙。先ず一番肝心な情報か
ら聞き出し、由良は深く何度も頷きながら手帳にしっかりとメモを走らせる。
「ごめんね? 結局時間を取らせちゃって。……実は以前、彼らしき学園(コクガク)生が
俺達の担当した事件に首を突っ込んでいたようでね。もし分かるなら見つけて止めておきた
かったんだ。証言してくれた人も心配してくれていたからね。分かって良かった」
 刑事だと知って協力的にならざるを得なかったのか、おずおずとしながらもきちんと話し
てくれる海沙と、むすっと膨れっ面になっている宙。由良はあくまで穏やかさを繕いながら
少しずつ質問を切り出しつつ、苦笑(わら)う。
 彼を止めたい。それは事実だが、結局は建前だ。
 本当は知りたかった。爆弾魔(ボマー)の一件で浮上したリアナイザとの接点、ちょうど
その前後から巷に認知され始めた守護騎士(ヴァンガード)との関係。
「そう、ですか……」
 宙がむすっとしたまま一応納得してくれた様子でこちらを見つめていた。だがその内心は
疑念を抱えているのだろう。わざわざ注意喚起する為だけに刑事が動くとは、子供ながらに
不自然だと思う筈だ。
「大丈夫。君達から注意してくれれば伝わると思うよ。何なら俺の名前を出してもいい。こ
れでも本職の肩書きは効くだろうからね」
「あはは……。そう、ですね」
「うん。ところでもう一つ訊きたいんだけど、その佐原君って子は、リアナイザを持ってい
るのかい?」
 えっ──? だから二人がそんな狐につつまれたような表情を見せた時、由良は内心急い
てしまったかなと思った。話題に出すのが早過ぎたか。もう少し、彼の人となりを掘り下げ
てからそれとなく訊いてみるべきだったか。
「リアナイザって……あのリアナイザですか?」
「他に何があるっていうのよ。うーん、持ってないと思うけどなあ。あたしと違ってTAは
やってない筈だし。まぁ、それでもパン──」
 だが次の瞬間だった。宙が海沙から引き継いで答え、小首を傾げて何かを語り始めようと
したその時「わーッ!?」とその口をこの親友に塞がれたのだった。
「……?」
「な、何でもないです! そ、ソラちゃん。駄目だって。あの子は開発中でしょ? いくら
刑事さんでも私達の一存で漏らしちゃ拙いよお」
「むぐぐ……? ぷはっ。確かにそうね……。あー、ごめん、刑事さん。今のナシで」
「は、はあ」
 面白い子達だ。というか、そんなリアクションを取られて怪しまない方がおかしいと思う
のだが。
 しかしこの様子からして、今口を割ってはくれなさそうだ。もっと時間を掛けて信頼を勝
ち取っていかなければならないだろう。そもそも、彼女達が引っ込めたそれが自分の探して
いる真実(こたえ)と関係しているのかどうかさえ分からない。
「えっと、その……。実はむー君、今年から友達のお仕事を手伝ってて……。それで少し、
危ない目に遭っているらしいんです」
 取り繕う為なのか、はにかんで苦笑(わら)って語る海沙。
 だが由良は内心、再びクリーンヒットが来たと思った。危険を伴う仕事──ポートランド
辺りのバイトか何かだろうか。いや、この文脈では違う気がする。彼女達はもっと、自分の
持ち込んできた情報に何か別の不安を重ねているように見えるのだ。
(まさか……)
 合致する。少なくとも、断片的なこれまで情報と彼を結ぶ合わせられるとしたら。
 この飛鳥崎で幾度となく起こってきた不可解な事件。もしそれら全てに佐原睦月が首を突
っ込んでいる──関わっているのだとしたら。今まで見えていた事件達は、これまでとは全
く違う姿となって映ってくる筈だ。
 ……いや、流石に決め付けてしまうには早計か。もしかしたら偶然かもしれない。もっと
詳しく話を聞きたいが、この様子を見る限り彼女達はもう口を閉ざすフェーズに入ってしま
っているだろう。
「そうだったのか。なら尚の事、俺の名前は出した方がいいかもしれないね。その友達とい
う子にも、あまり無茶はさせないよう伝えることを勧めるよ」
 はい……。海沙と宙は、何処か哀しそうな眼をしていた。その理由はやはり、終ぞ訊けな
かったが、ここで逃してしまうのは惜し過ぎると由良は思った。手帳の頁を破ってペンを走
らせ、二人にずいと申し入れる。
「これも何かの縁だ。ここに俺の連絡先を書いておくよ。もし困った事があったら、電話し
てきてくれ。出来る限り相談に乗るよ。君達の方も……教えてくれるかな?」
「あ、はい」
「うーん。まぁ、いいけど……」
 何だか女子高生を口説くみたいな形になってしまった。海沙の方は促されるがままこの紙
に自分の電話番号を書き、宙も一瞬躊躇うが、それでも幼馴染が抱える不穏を詳らかにする
糸口になればとこれに続く。
 こうして由良は、彼女達と連絡先を交換した。
 きっとこの二人と、佐原睦月との間には何かある──。それは筧が言う所の刑事(デカ)
の勘だったのだろうが、この時由良は、不思議とこの偶然を必然とさえ思ったのである。


 子供の頃からずっと、ヒーローに憧れていた。
 弱きを助け、悪しきを挫く。そして最後は円満で幸福な結末。そんな唯一無二の力を持つ
万能の存在に、いつか自分もなりたいと願った。
 だが……夢は叶わない。現実はいつも非情だった。
 年齢を重ねるにつれ、成長するにつれ、自分の凡庸さを思い知らされた。何度も何度も。
そんな現実と向き合う度、全身が芯から引き裂かれるような苦痛を味わってきた。
 これといって突出した才能に目覚めるなんてこともなく、妥協した末に入った大学もギリ
ギリで出た後は、ただ淡々と繰り返されるだけのしがないサラリーマン生活。
 そんな時だ。突如として飛鳥崎に現れ始めた謎の怪人達。そして何よりそんな悪と戦う謎
のヒーロー・守護騎士(ヴァンガード)の噂。
 ネット越しに自分は熱狂した。ヒーローは本当にいたんだと。もうずっとおとぎ話の世界
でしかないんだと諦めていた心に、再び熱い火が点った気がした。
 それからはずっと、有志のまとめ記事で彼の活躍を追っていた。程なくして日々の唯一の
楽しみであり、希望となっていったことは言うまでもない。憧れた。何処の誰かは知らない
が、この現実(リアル)でも人はヒーローになれるんだと証明してくれたから。……だから
かその一方で、以前に増して世の悪人ども──クソっぷりが目に付くようになっていったの
だけれど。
『引き金をひけ。そうすればお前の願いは叶う』
 そして……そんな日々の最中だった。ある日、自分の前に高級そうなスーツに身を包んだ
男が現れ、そう言って一つのリアナイザを差し出してきた。ご丁寧にデバイスも一緒につい
てきている。最初はとにかく怪しくて、半信半疑だったが、銃口から出てきた怪人──後の
セイバーを見た時には、自分は酷く興奮したものだ。昔思い描いていた形とは随分違ってし
まったけれど、自分は力を手に入れた。選ばれし者となったのだ。
 願いは勿論ただ一つ。子供の頃からの夢。世に蔓延る悪を駆逐する、正義のヒーローにな
ること。
 ……なのに、あいつは否定した。期せずしてようやく出会えた守護騎士(ヴァンガード)
本人に、戦う力を否定された。何より罠に嵌められた──裏切りに遭ったんだ。
 ショックだった。落胆と、失望しかない。憧れの人に拒まれ、それまで自分を支持してく
れていたネットの向こうの者達が、次々に掌を返した。
 ……まだだ。まだ終わらない。
 この世の中にはまだ、もっと数え切れないほどの悪がのさばっているのだから──。

「ぐびゃッ?!」
 睦月らによって損われた“セイバー”への風評を挽回すべく、天満はこれまで以上に悪人
退治に邁進していた。
 その日の夜も、彼はセイバー・アウターと共にとある闇金業者の事務所を襲撃していた。
如何にも柄の悪い男達だったが、人外の力を備えるセイバーが相手では手も足も出ない。彼
らを千切っては投げ、千切っては投げ、程なくしてスキンヘッドな最後の一人が大きな陥没
を作りながら強かに壁にぶつけられる。
「片付いたぞ」
「ああ。よくやった。これでまた一つ、悪を摘む事ができた」
 剣の柄でこの闇金業者らを軽々と全滅させ、セイバーが言った。天満は口元に笑みを浮か
べて悦びながら、伸びた彼へと近寄ってはこれを写真に撮って収めていく。
 自身のBBSへ依頼完了の報告と共に載せる為だ。証拠を見せて、それでこそ人々の溜飲
が下がるというもの。更に天満は部屋の奥へと進もうとした。半開きになった扉の隙間から
大きな金庫が置かれているのが見える。
「後はこいつらの溜め込んだ金を市民に還元して終了だ。ぶっ壊してくれ」
「……」
 途中、肩越しに天満は振り返る。するとセイバーは何故かぎゅっぎゅっと自身の手を何度
も握り返して見つめていた。バチッと、全身に小さく電流のような迸りが駆け抜けたように
も見えた。天満がその場に立ち止まり、ぱちくりと目を瞬いて問う。
「? どうした」
「ようやくのようだ。洋輔、今この瞬間、私は進化を完了した。もうリアナイザなしでも実
体化することができる。これで私は百二十パーセントの力を発揮することができるだろう」
「おお……! 本当か!? それは頼もしい。お前らの仕組みはよく分かんないけど、これ
でもっと悪人どもを成敗できるな。よしっ、大丈夫だ。俺達は、最強だ……」
 うんうん。天満は何度も頷いてその実興奮していた。片手に握っていたリアナイザの引き
金を離してみても、セイバーは消えない。何とも心強かった。これでもう誰も自分達には逆
らえないだろう。守護騎士(ヴァンガード)も、きっと……。
「帰ったら軽くパーティーでもやろう。だがその前に、あそこの金庫をぶっ壊してくれ。そ
れで今日はもうお終いだ」
 嬉しくて小躍りした。明日からのことを思い、つい浮き足立つ。再びくるっと前を向いて
奥の部屋へと向かい、改めてセイバーに指示を出した。
「──」
 だが、その次の瞬間だったのである。
 フッと音もなく迫ってきたセイバーの気配。それに天満が気付いた時、自身の身体にワン
テンポ遅れて激痛が走った。背中から胸元へとセイバーの剣が、赤を撒き散らしながら真っ
直ぐに刺し貫かれている。
「……ごっ?! セイ、バー。何を……?」
「お前の言う通り、お終いだからさ。もうお前に用はない。ここで消えて貰う」
 何で……。胴体のど真ん中から噴き出したそれと同じくらいに、天満は口から大量の血を
吐き出していた。ガクガクと震えながらセイバーへと振り返り、突然のことに短く同じ台詞
を紡ぐことしかできない。
「洋輔。お前は勘違いしているようだが、私はお前の“正義”とやらに共感してはいない。
お前達が“私刑”に群がるそのさまを観ていた。人を学ぶ良い材料だったからな」
 全く……。セイバーは、金色の騎士甲冑はやれやれと嘆息をついた。曰く、あくまで天満
がターゲットの不殺を貫くものだから、中々実体化するのに時間が掛かってしまったと。
「かっ、あッ……。そん、な。始めから、俺を……」
「安心しろ。人(あく)は私が駆逐してやる」
 そしてセイバーはずるりとその剣を天満から引き抜いた。どうっと力なく崩れ落ちてゆく
かつての繰り手(ハンドラー)。広がる血だまりに、瞬く間に生気を失っていく眼。そこへ
セイバーは一旦屈むと、彼の手から改造リアナイザとデバイスを回収した。シュウシュウと
金色の装甲と剣にこびり付いた血が蒸発してゆく。ずぶずぶと、自身の身体にこの二装置を
喰わせて取り込みを完了する。……これで、完全に自由だ。
「……む?」
 ちょうど、そんな時だったのである。ばたばたと、部屋の外からこちらへ近付いて来る足
音達が聞こえた。リアナイザを取り込んで波紋の余韻を残す身体で立ち上がると、セイバー
はこれを真正面から待ち構えた。
 はたして、睦月達だったのである。睦月と、冴島や國子、仁に数名のリアナイザ隊士達。
約一名知らぬ顔があったが、他の面子からしてすぐにあの時の者達だと分かった。睦月達は
傍に転がる血だまりの天満を見て、すぐに状況を理解したようだった。
「チッ!」
「!? あれは……」
『……どうやら、既に遅かったようだな』
 驚き、そして険しい表情(かお)で即座に身構えてくる睦月達。
「ふん」
 そしてついっと小さく顎を上げ、セイバーは再びこの邪魔者らを睥睨する。

『結局、振り回されるんだな……』
 出現を察知して駆けつけた時には、事態は既に最悪の結末を迎えていた。
 刺し貫かれて絶命した天満と、にも拘わらず目の前に立つセイバー。
 どうやら実体化(しんか)を完了してしまったようだ。奴らはいつも、ヒトの願いを食い
物にする。
「性懲りもなく現れたか……。まぁこちらとしては手間が省けて助かる」
 戦いの場は、事務所すぐ下のだだっ広い駐車場へと移った。すっかり夜も更けていること
もあり、辺りには人っ子一人見当たらない。
 暗がりの中、セイバーと睦月は向かい合っていた。騎士甲冑が放つ金色と遠巻きに点る外
灯だけが一同をぼうっと照らしている。ゆっくりと剣を持ち上げ、セイバーはそう口上しな
がら切っ先を向けてきた。
「生憎、私の力は最高潮に達した。あの時手も足も出なかったお前達に、勝ち目はないぞ」
『ふふん。それはどうですかねえ?』
「……睦月君、本当に大丈夫なのかい?」
「結局あれから、あいつの剣の攻略法、見つかってないじゃねえか」
「それなら大丈夫。パンドラにも計算して貰ったし、僕達の考えが正しければ……。それよ
りも下がってて。天満さんの方をお願い」
 最初、冴島ら仲間達は一対一で戦おうとする睦月を不安視した。彼のやや後ろに立ち、改
めてどんな策があるのかと問うが、睦月は背中でそう語るだけで敵から目を離さない。
 数拍逡巡して、冴島が國子に向いて頷いた。それを合図に、彼女と隊士ら数名が事務所に
残された天満の遺体を処理しに駆け出してゆく。
 どのみち加勢はできないのだ。あの吸収能力の剣がある限り、コンシェル達を召喚しても
却って彼の足を引っ張ってしまう。
「いくよ、パンドラ」
『はい。いつでも準備オッケーです』
 懐から取り出したEXリアナイザにデバイスを差し込み、操作用のホログラム画面を呼び
出す。セイバーが兜の覗き目からじっとこれを見ている。指先で次々にタップしていくのは
七体のサポートコンシェル達。
『GIRAFFE』『DEER』『GOAT』
『SHEEP』『RABBIT』『MOUSE』『SQUIRREL』
『ACTIVATED』
「……っ!」
『ZEBRA』
 掌に押し付けられた銃口と、澱みない機械音。
 ぐっと唇を噛み締めて大きく右腕を振り上げ、睦月は頭上目掛けて引き金をひいた。同時
に銃口からは大きな黄色の光球が射出される。
 セイバーと、仲間達が夜闇の中に輝くそれを見上げる。光球はそのまま一回り小さい七つ
のそれに分裂して円陣を組み、次々と睦月の身体へと降り注いだ。
「──」
 弾け跳んだ雷光。
 はたしてそこに現れたのは、新たな力を纏った睦月こと守護騎士(ヴァンガード)の姿だ
った。全身の装甲はセイバーと似て鮮やかな黄色を基調とし、頭部には一対の巻き角、両肩
の付け根にはふんわりと柔毛が巻かれ、装甲表面には滑らかな濃黄の縞模様が至る所に描か
れている。
「これが……睦月の出した答え」
「ええ。あれが第三の強化換装、ジィブラフォームよ」
 通信越しに、司令室(コンソール)の皆人と香月らが呟いてた。ディスプレイ群に大きく
その勇姿が映っている。
 目を見張る一同を前に、睦月はザッと武器を取り出した。自身のカラーリングと同じ濃い
黄色の杖である。
「……そんなもの、虚仮威しだッ!!」
 そして、先に動いたのはセイバーだった。ぐぐっと数拍間を呑み込んでから地面を蹴り、
両腕で担いだその剣を振りかぶりながら襲い掛かってくる。
 ガンッ! 互いの武器がぶつかり、鋭く重い金属音が響いた。二撃、三撃、四撃。睦月は
セイバーから繰り出される剣閃を、その杖で巧みに受け止め続けてみせる。
「ふん……。剣を杖に変えようが問題ない。忘れたか? 私の剣は、触れるだけでお前から
力を吸い取っていく」
「ああ。だから、僕はこの姿を選んだんだ」
「何──?」
 次の瞬間だったのだ。あくまで不敵に鍔迫り合う睦月の一言に、セイバーが怪訝に兜の奥
の眼を光らせた。するとどうだろう。それまで濃黄の棒切れでしかなかった睦月の杖が、急
激にエネルギーを蓄えて発光し始めたのである。
 勿論、セイバーの剣はその力さえも吸収しようとした。同じくこのエネルギーを吸い込ん
で激しく発光する。
 だが睦月の、ジィブラフォームのそれは、セイバーの能力を一瞬にして凌駕した。
 力の飽和、剣と自らに流れ込む膨大なエネルギーの奔流。ゼイバーが拙いと気付いた時に
はもう、彼が誇る宝剣は自ら爆発してしまったのである。
「があッ……!?」
 爆発の衝撃で吹き飛ぶセイバー。全身にはまだ電撃の余韻がバチバチと残り、身体の自由
が利かない。
 そんな目の前のアスファルトの地面を、ガランと圧し折れた刃が転がっていった。他なら
ぬ彼の吸収剣の刀身である。
「な、何が起きたんだ?」
「なるほど。そうか……そういう事か」
『ふふん。そうです。イエローカテゴリはエネルギー出力に特化した子達。その力を百二十
パーセント引き出す黄の強化換装は、守護騎士(ヴァンガード)の中でも最大の火力を発揮
することができるんです』
「吸収するってことは、きっとその限界量がある筈だと思ったんだ。だから剣をかわそうと
するんじゃなく、真正面からぶつかった。相手の吸収限界さえ超えてしまえば、その能力も
破れる筈だって」
 仁が驚き、冴島がややあって理解する。音声越しに胸を張るパンドラと共に、睦月は尚も
迸る電流の杖を手に語っていた。その為の強化換装。事実作戦は大成功だった。
「……お。おのれぇぇぇッ!!」
 ふらふらと立ち上がり、あちこちが焼け焦げた身体で叫ぶセイバー。
 だがもう、そこに強者の風格はなかった。睦月はサッと左手をかざして磁力を操ると、彼
の傍に落ちていた折れた剣の柄を手繰り寄せる。はしっと受け取って、一瞥を寄越すとその
まま後ろに投げ捨てた。
 怒り狂って襲い掛かってくるセイバー。しかし吸収剣を失ったこの敵に、もう恐れる要素
はなかった。睦月は突っ込んでくる彼を懐に巻き込んで体勢を崩してやりながら、電撃迸る
杖を二度三度と打ち込む。ふらつき、尚も殴りかかってこようとする彼に、放電の瞬間移動
で翻弄しながら、右に左にと反撃を加える。
 あがっ……。ごろごろと地面を転がり、セイバーは這う這うの体だった。何とかして起き
上がろうとするその後ろ姿を見つめながら、睦月は腰に下げたEXリアナイザを持ち上げて
コールする。
「チャージ!」
『PUT ON THE ARMS』
 杖の真ん中に据えられたコネクタにEXリアナイザを挿入し、大きく両手で杖を旋回させ
ながら頭上に掲げる。その速さを増していく回転と共に、周囲にはバチバチッと電撃の大玉
が幾つも生まれ始めた。ようやく力の入らぬ身体を起こし、セイバーがハッとなってこれを
見上げている。頭上で回す杖と電流は辺りを激しく染め上げていた。くわっとフルフェイス
の眼が光り、睦月は必殺の一撃を発動する。
「どっ……せいッ!!」
 回転の勢いのままに杖を振り下ろし、電撃の大玉が一斉にセイバー向かって襲い掛かって
いった。最早避けることも叶わず、彼は次々に飛んでくるこの攻撃を只々火花を散らしなが
ら喰らい続けることしかできない。
 そして、更に駄目押しの一発が飛び込んできた。大玉達に隠れて助走をつけた睦月の強烈
な突きが、セイバーの身体に深く突き刺さったのだ。
 ガッ……?! 大きく仰け反るセイバー。その杖には尚も電撃と化した大量のエネルギー
が宿っている。その抱え切れぬ膨大な破壊力は、やがてこの異形の全身を瞬く間にひび割れ
で覆い尽くしていき、刹那爆発四散させた。
「こんな、筈では。私は、まだ何も──」
 断末魔。何か未練を伝えかけた声も、爆ぜ飛んだ轟音の中に掻き消される。
 眩しいほどに広がっていた雷光が、一斉に消え失せていった。場にはトンと着地する強化
換装姿の睦月と、めいめいにガッツポーズする仁ら仲間達の姿。
 ……リセット。数拍撃破の余韻で突っ立っていた睦月が、ゆっくりと頬元にEXリアナイ
ザを持ってきてコールした。直後変身は解け、彼はそのままどうっと地面に仰向けになる。
 睦月! 睦月君! 仲間達が駆け寄って来る。睦月はぐったりと襲ってきた疲労のまま動
けず、ただ皆に囲まれるがままにされた。
「はあ……。疲れた」
 やはり強化換装(このちから)は反動が大きい。どっと疲労が押し寄せてくる。
 だが一方で安堵があった。それは目下の敵を、天満の仇を討てたことであり、初夏の夜に
冷えたアスファルトの地面の温度もまた、手伝っていた筈だった。


 かくして“セイバー”こと天満洋輔の身柄は確保された。
 ネット上で義賊として持て囃されていた彼だったが、その実やっていたことは連続傷害と
建造物侵入、複数件の窃盗行為である。尤も本人は既に亡き人物だ。形式上、当局は被疑者
死亡のまま書類送検という形を取らざるを得なかった。
 この一件を機に、天満洋輔という男の素顔は大々的に暴かれてゆくことになる。マスコミ
だけではない。一旦こうなってしまえば、こちらが放っておいてもネット上の“有志”達が
根掘り葉掘り競うように情報をアップしてくれる。
 こんな状況になったのは、他ならぬ皆人ら対策チームが手を回したからだ。メディアへの
告発と同時にリークされ、当局も動かざるを得なかったのである。
 表向きには、天満の死は依頼上のトラブルとされた。
 勿論そんな結論を訝しみ、或いは何者かの陰謀だと訴える一部の支持者らもいたが、真実
はもう二度と明るみになることはない。死人に口なしという奴である。歪んだ正義感に酔っ
た末の自己責任──大方の反応はそんな冷めた眼差しだった。
 そして警察が前面に出てきたこの騒ぎにより、先のトレード暴走態による事件も半ば自主
規制的に沈静化してゆく。ただでさえ“セイバー”が関わっているとの情報が出回っていた
矢先、この話題に言及すれば今度は自分が疑いの眼を向けられかねない。
「──ねぇ、皆人。流石に今回はやり過ぎじゃないかなあ? 作戦だから仕方ないとは思う
けど、これじゃあ……」
「いや、これでいい。そもそもお前の為でもあるんだぞ? それに、もう二度とああいう勘
違いをした奴を出してはいけない」
 事件後、束の間の暇ができた司令室(コンソール)。
 睦月は司令官の席にどっかりを座るこの親友をちらっと見遣り、そう訊ねてみていた。相
容れぬ相手だったとはいえ、彼は自分に憧れてあんなことをやっていたのだから。
 しかし対する皆人は、あくまで非情に徹するようだった。勘違い──つまりは見せしめ的
な意味合いが強いのだろう。睦月は言い返せずに口を噤んだ。元はと言えば万世通りの事件
で目立ってしまった自分達を隠す為、その人柱として目を付けられたのだから。
 ちゅーちゅーと、ストローを挿した筒状の飲料を吸う。ぶらぶらと何となく手持ち無沙汰
に、座っている回転椅子を左右に揺らした。
 思う。少なくとも群れで酔っている者達に正義を語る資格はあるのか? これまでの戦い
を通じて痛感している。戦いとは陰惨だ。だからこそ、自分は天満の振りかざすヒーロー像
には共感できなかった。
 正義とは、一体誰が持っているのだろう?
 本当に、自分達は「正しい」のだろうか……?

 ネット上、ことアングラ界隈では今回の事件は少なからぬ影響があったようだ。セイバー
の死とその身が暴かれたことは、彼の“悪目立ち”と捉えられる向きが強い。
 それでもその実、この飛鳥崎を覆う怪人達の噂は何一つ解決していないことも彼らは理解
していた。自分達ではどうしようもないことは解っている。それでも人々は、誰からともな
く様々な憶測と陰謀論を囁き合うことを止められない。

『……』
 海沙と宙は、それぞれの自室で浮かない表情(かお)をしていた。
 勉強机に座り、或いはベッドの上にうつ伏せになり、手の中に握って眺めているのは由良
が書き残してくれた連絡先だ。
 もし困った事があったら電話してきてくれ。
 出来る限り相談に乗るよ。
 じっと見つめる。間違いなく何かが進展した筈なのに、この胸奥をざわめかせるものは一
体何なのだろう……?

 対策チームのそれとは知らず、天満に関するリークで三度掻き乱される飛鳥崎当局。
 上層部は、自分達をすっ飛ばして情報が行き交うことに不快感を示した。何処の誰かも分
からない情報に踊らされて、しかもその出所さえ探る事ができない。彼らの鬱憤は、即ち末
端の刑事達にまで伝播していった。綯い交ぜの苛々と疑心が、その崇高な使命感をいとも容
易く奪ってゆく。
「──」
 はたして、その人物も密かに苛立っていた。
 明かりの点いていない、自身に宛がわれた執務室。
 彼は人知れず小さく舌打ちをし、ザッと踵を返すと、更なる暗がりの奥へと消えてゆくの
だった。
                                  -Episode END-

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  1. 2017/04/18(火) 18:00:00|
  2. サハラ・セレクタブル
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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