日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブルⅡ〔22〕

 握り締め、振り上げた神像を叩き付ける。
 直前、瞳に映った男の驚く表情(かお)。だが来栖の身体は既に命じられたままに解き放
たれ、人気のない教会内に鈍い音を立てた。
「ガッ?! 何(なん)──」
 人間らしい抵抗があったのは最初だけだった。
 何で。突然の出来事に男は思わずくぐもった悲鳴を漏らし、理解できずに問うてきたが、
勿論答えなど返ってはこない。
「あがっ……! や、止め──」
 殴る。殴る、殴る、殴る。殴打する。
 手の中の神像が真っ赤に染まっていこうとも、見開いた眼鏡越しの視界が次々に汚れてい
こうとも、来栖は振り上げる手を止めなかった。
 止められなかった。目の前に映るのはただこの男──あの善良なる愛しき母子(おやこ)
を殺めた犯人の姿、憤怒の対象だけだった。
 ……憎い。何故このような理不尽が許される?
 幸せになれた筈だ。彼女達には、その資格があった筈なのだ。
 それをこの男は奪った。その浅薄で身勝手な理由で、二人の未来を。可能性を。
 何よりも……自分が許せなかった。こんな結末を防げなかった自分が許せなかった。
 結局、自分は逃げていたのだ。心は彼女達を愛していたのに、神父と信者という枠組みか
ら外れることを恐れ、ただ見守るだけに終始した。苦しくとも祈りを捧げることを忘れなか
ったその強さに惹かれながら、自分は都合よくその姿だけを愛でていた。苦しんでいる現実
があると知っていたのに、打ち明けられたのに、実際に手を差し伸べることをしなかった。
 ……許さない。この男も、自分の偽善ぶりにも。
 来栖の中に込み上げた無力さは、まるでこの期を逃さぬとするかのように全て“怒り”と
なって沸き上がった。
 最早止められぬその衝動。ちょうどその時、憎き仇が目の前にいる。
 彼の視界(セカイ)はただ、そんな目の前の一点に狭まっていった。振り上げた凶器は繰
り返し繰り返し、執拗に男の頭部を狙い、赤黒い飛沫を辺り一面に撒き散らし続ける。
「はあ……はあっ! はあっ、はあっ……!!」
 故に、ようやく気付いた時には全てが終わっていた。
 酷く息切れした身体。手や全身に残る生温い感触。かつて信仰の依り代であった像は今や
真っ赤に濡れて滴り、落とした視線の先にはかつて男だった者の肉塊が大きな血だまりの中
に突っ伏している。
「……」
 サァッと、冷静さが戻ってきた。つい先程までの激情は何だったのか。
 確かめる必要もない。死んでいる。自分でも数え切れないほど殴り続けた男の頭部は最早
原型を留めないほどにぐしゃぐしゃに歪み、破け、まだ何処の何ともつかない液体達が零れ
続けている。
 震え出す手。ゆっくりと見つめ返した自身のそれは赤黒く汚れ、更に握られていた神像は
全身だけでなく、まるで哀しみを向けているかのように、目の下からもどろどろと赤い涙を
垂らし続けている。
「あ、ああ……」
 殺した。私が、殺したんだ。
 赤黒いイメージが目に焼きつく。これは、罪だ。私は罪を犯したんだ。
「あ……あアアアアアーッ!!」
 次の瞬間、来栖の脳裏が爆発する。一瞬にして過ぎるのは、これまでの日々で鬱屈してき
た自身の記憶だった。
 寂れた教会、すっかり見知った地元の信者達。
 その中で出会ったあの母子(おやこ)と──苦笑いを零すその優しい面影。
 彼女達は死んだ。殺された。イメージは、自分はまだその面影を追っていたいのに、その
像を教会に押し寄せる人々が掻き乱す。
 憤怒に包まれる自分が視えた。法衣に身を包みながらも、その本質は悪魔だった。
 来栖は叫ぶ。ギリギリッと強く頭を抱え、一人その場に崩れ落ちながら雄叫びを上げる。
 ひび割れは瞬く間に広がった。広がり、砕け散った。
 信仰の徒としての自分、絶対だった筈の自負。
 しかしそんなものは何と脆いものだろう。自分はずっと偽り続け、罪を抱え、遂には人を
殺めてしまったのだ。何より頭を抱えるこの掌の感触には大量の血のぬめりがあり、頬にも
眼鏡にも全身にも、今や赤い烙印が無数に飛び散っている。
「アアッ、アア、アアアアーッ!!」
 締め付けてきたからこそ、それは苛烈を極めた。
 締め付けてきたからこそ、それは許されなかった。
 来栖は自らもまた血塗れになり、枯れ果ててしまいそうな程に悲鳴を上げ、天を仰いだ。
 そうするしかなかったのだろう。これまで信じてきたもの──拠り所の全てが音を立てて
崩れ去ったこの瞬間、彼に残された道は一つしかなかった。

 全てを棄てて、狂うことしか。


 Episode-22.Wrath/或る信仰者の墜天

 夜の飛鳥崎を、またもや災いが包んでゆく。
 この日市内に厳戒態勢が敷かれた。突如として大規模な爆発が相次いだからだ。
 まさか、テロか──!? 現場となったビル街は程なくして大混乱に陥っていた。激しく
くすぶ炎と巨大な瓦礫の、地獄絵図と化していた。
 逃げ惑う人々。けたたましく響く消防や警察車両のサイレン。
 本署からの緊急連絡を受け、筧と由良も現場に駆けつけていた。同僚達と合流しつつ、破
壊されたビル街のありさまに暫し呆然と立ち尽くす。
「こいつは……酷い」
「おい。一体何があったんだ? 何処のどいつだ?」
「わ、分からん。俺達も連絡を受けて慌てて来たもんだから……」
「どうやら何処かから攻撃が飛んできているらしい。今、ヘリ隊が出動して犯人の位置を特
定してる」
 市民も当局も、筧達が駆けつけた時にはまだ打って出ることさえ出来ていなかった。
 夜闇が拙い。ネオンの灯は方々に点いているにせよ、このビル群の中から人一人の姿を見
つけ出すのは困難だ。それ以上に突然の襲撃に遭い、負傷した人々の救護や避難誘導が先で
ある。ボマーの事件を思い出しているのだろう。彼らの横顔は、総じて怯えていた。不安や
怪我でやつれ、弱り切っていた。
「うわっ!? また……」
「チッ、何処から狙ってやがる!?」
 慌しく動き回る末端の警官達や救急隊員。
 そんな中でも、尚も散発的に爆発は続いていた。轟音が響き、遠くまた別のビルから看板
やら何やらが落下していくのが見える。
 筧は一見アトランダムなこれらの爆発を、夜闇の中で点っていく赤を、ぎゅっと眉を顰め
て睨んでいた。由良も遅れてこれに倣う。まるで常識の外だが、相手が動いていないのであ
れば、その射線を辿れば大よその位置は掴める筈である。
(……妙だな)
 しかし筧はこの時、周りの警官達とは大分違った感慨を持っていた。
 当局による厳戒態勢と、周辺への交通規制。
 理由は明らかだ。被害を最小限に防ぎ、拡大させない為。だがそれにしては、上層部の動
きが早過ぎるのではないか?
『総員に通達! “特安”に指定、先ほど本件に対し“特安”指定が決定された。事態は緊
急を要する。犯人の潜伏先を見つけ次第、特殊部隊を投入する。速やかに確保せよ!』
 加えて無線から飛んでくるのは、一連の暴挙を続ける犯人に対する“特安”──特別治安
案件。指定対象の即抹殺も止む無しという強力な命令だ。
 このままでは被害は益々膨れ上がっていく。ある意味当然の判断かもしれないが……筧に
はどうも早足なように思えた。
 ……何かある。
 筧の第六感、刑事(デカ)としての直感が、そう頭の中で忙しなく捲くし立てていた。
「兵(ひょう)さん」
 そしてそんな感慨は、相棒たる由良も同じだったらしい。
 ああ。筧はちらと肩越しに彼を見て小さく頷く。やはり今夜の一件、ただのテロ事件で済
ませるには手に余りそうだ。お互いに、おそらく同じ人物の姿が脳裏に浮かんでいる。
『攻撃地点、特定しました! 最上ビルの屋上です!』
『総員に告ぐ! 現場から市民を避難させよ。これより上空・地上から同時に犯人の制圧を
試みる! 繰り返す、これより上空・地上から同時に犯人の制圧を試みる!』
 どうやら、犯人の居場所が掴めたようだ。ひっきりなしにやり取りされる自分達の車両内
の無線から聞こえてきた情報に、筧達はそのビルの方向を見上げる。
 高層には眼下の灯りは届かない。そこだけは、まるで切り取られたように闇に溶かした暗
がりが広がっている。
 そうしていると、一機の大型ヘリがこのビルの方へ向かって飛んでいくのが見えた。中に
降下部隊が乗っているのだろう。その一方で、地上の面々は休む暇もなく人々の救助に奔走
していた。怒号のように叫び、呼び掛け、まだ周囲に残っている人々を何台もの救急車が入
れ替わり立ち代わり運んで行っては戻ってくる。夜の街に転がった、幾つもの巨大な瓦礫が
見る者に強い違和感を与えていた。
『こちら突入班。目標地点に到達しました! ここからでも、屋上から何かしらの火器が火
を噴いている様子が確認できます!』
『一体、何者なんだ? 対戦ロケットでも持っているのか……?』
 上空からだけではなく、地上からも。
 あちこちの怒声に交じり、無線から漏れ聞こえてくる声。ただ彼らは、少なからず戸惑っ
ているように思えた。高く頭上を飛んでいく砲火は大きく軌跡を描き、また四つ五つとビル
の一角に着弾する。また轟音が響き、その後止んだ。思わず庇を作っていた手を除け、筧達
はおずおずとその場から視線を上げる。
「……と、突入したのか?」
「どうだろう? だったらもっと抵抗されてると思うが……」
「もしもし、もう始めちゃってるんですか!? まだこっちは避難が──」
 戸惑っている者、状況を確認しようとする者。周りにはめいめいの動きを見せる同僚達の
姿があった。筧は由良とちらと互いに顔を見合わせ、眉を顰めた。少なくともこの沈黙は、
風向きの良いそれではあるまい。
「……どうやら、悠長にヒーローを待っている暇はなさそうだな」
 小さく呟いた筧。ハッと、由良がその横顔を渋い様子で見つめている。
「? 何だ……?」
 そんな時である。
 部隊が突入して行った筈のビルの屋上から、何か黒く大きな塊が膨れ上がってゆくのが見
えたのは。

「出て来い、守護騎士(ヴァンガード)! てめぇが面を出すまで暴れ続けるぞーッ!!」
 ビルの屋上に陣取っていたのは、レンズ甲のアウター・トレースだった。
 有り体に言ってしまえば、彼は自棄が故にこのような暴挙に出た。相棒であるジャンキー
やストームが次々に倒されてしまい、彼は一人生き残った。にも拘わらず自分達を呼び出し
た当の蝕卓(ファミリー)──ラースからは最後通牒を突き付けられ、二進も三進もいかな
くなってしまったのだ。
 彼、トレースの能力は入れ替え。両掌のレンズに映した物体同士の位置を瞬時に逆転させ
ることができる。
 だがそれ自体に攻撃力はない。トレース自身、自らはあくまで誰かをサポートすることで
最も力が発揮されるタイプだと理解していた。それ故に、ラースからの通告は事実上の切り
捨て宣言に等しかった。あの二人がサシで戦って勝てないような奴らに、自分が勝てるなど
思えなかった。
 ……だからこそ、トレースは自棄に走るしかなかった。
 戦っても勝てる見込みは低い。されど与えられた任務を放棄すれば、蝕卓(ファミリー)
から正式に追討命令が下るだろう。もう自分に、安穏と自由気ままにこの世界を生きること
のできる余裕は失われていた。
(あいつのせいだ……。守護騎士(ヴァンガード)と、あのマント野郎のせいだ。あいつら
さえいなけりゃ兄貴達が死ぬことはなかったし、おいらもこんな目には……)
 怪人態のまま、両手の五指からエネルギー弾を放つ。
 戦闘向けではないとはいえ、その身は実体を得た進化体の一人だ。眼下の街に撃ち込まれ
る弾丸の大きさも破壊力も、サーヴァント達の比ではない。
「お前らじゃ……ねえよッ!!」
 バババババッ。途中、偵察の為か突撃の為か飛んできた大型のヘリを、逆ギレのように叫
んで撃ち落す。雨霰とエネルギー弾を叩き込まれ、機体は炎を上げ、きりもみしながら眼下
の街へと墜落していった。爆音が響き、人々が悲鳴を上げて逃げ惑う姿が見える。
「ははははは! そうだ……逃げ惑え。こんな街、おいらがまとめてぶっ壊してやるよ!」
「止めろぉぉぉッ!!」
 ちょうど、そんな時だった。はたとトレースの背後から猛然と迫る声があった。
 ピクッと反応してトレースは振り返る。そこには鷹(ホーク)のコンシェルに換装し、空
を飛ぶ睦月──守護騎士(ヴァンガード)と、鋼の白馬──仁のチャリオッツデュークに乗
った冴島のジークフリートら、リアナイザ隊の面々が同期したコンシェル達の姿があった。
「やっぱり、あいつの仕業だったのか」
「や、やばくないか? 下、火の海だぜ?」
「ひでえな。滅茶苦茶しやがる……」
「……僕のせいだね。あの時、捕らえ損ねたから……」
「いえ、あの判断は間違っていませんよ。今更悔いるよりも、先ずは目の前の敵を倒すこと
に集中しましょう」
 ビルの屋上に、睦月とグレートデューク、ジークフリートにクルーエル・ブルー、同じく
隊士らのコンシェル達が着陸し、勢揃いした。既にめいめいに武器を抜き放ち、臨戦態勢は
整っている。ニタリ。トレースはさも哂うように小首を傾けながら一歩二歩と進み出た。そ
の指先からは、ついさっきまで弾丸を撃っていた証たる硝煙が上っている。
「……やっと来やがったか。遅ぇよ。待ちくたびれたぜ……」
 ククク。肩を震わせながら笑うトレース。
 その姿は以前会った彼とは随分と違っていた。自信? いや、これは自棄と言うべきか。
パワードスーツの下で、睦月は沸々と怒りを溜めている。
「……許さない。関係ない街の人達を、あんなに巻き込んで。今夜ここで、お前を倒す!」
「はん! それはこっちの台詞だ! 何もかも、全部お前らのせいなんだよ!!」
 そして二人のその叫びが、早速戦いの合図となった。
 再びトレースが五指からのエネルギー弾を放つ。睦月は跳んだ。通常形態に戻ったデュー
クが盾を掲げ、他の皆を守る。スラッシュ! コールし、握り締めたEXリアナイザを刀剣
モードに切り替える。
「睦月、短期決戦だ! もう辺りは騒ぎになっている。打ち合わせ通りビルの突入口は別働
隊が押さえてくれているが、長くは持たないだろう。俺達がサポートする。全力でやれ!」
 指弾を打たせまいと一気に近接した睦月の背へと、クルーエル・ブルーと同期した皆人の
声が飛ぶ。皆が一斉に攻撃を打つ構えを取った。分かってる! 睦月もまた、怒涛の剣撃で
もってトレースを押し、これ以上被害を出させない。
「こ、こちら突入班!」
「扉が開きません! どうやら、内側から塞がれているようで……」
『何だと!? ……くっ、止むを得ん。破壊を許可する! 時間がない、押し通せ!』
 一方で皆人の言葉の通り、リアナイザ隊の別班が、一足先にビルの内部に進入してその出
入口にバリケードを作っていた。言わずもがな、自分達以外の当局者らがここに突入してく
るのを防ぐ為である。
 地上の突入部隊の面々が、無線で上官達に指示を仰いでいた。通信の向こうの彼らはその
報告を聞いて深く眉根を寄せたが、すぐに命令を飛ばす。彼らも彼らで、必死にこの街を守
ろうとしている。
「どっせいッ!!」
「貫け、クルーエル・ブルー!」
「炎は……目立つな。だったら……!」
 睦月の斬撃の間を縫うように、仁や隊士達がトレースに斬り込んでいった。クルーエル・
ブルーの伸縮自在の小剣が更にこれを突き、風と化して流動するジークフリートの身体が煙
幕を兼ねながら皆の攻撃を援護する。
「ぐぅっ!? 畜生、次から次へと……!」
 そしてまた仲間達の隙間を縫い、睦月の剣が。トレースの身体は何度となく激しい火花を
散らしてダメージを受ける。
 大きくグラついて、トレースは憎々しげにこれらを睨んでいた。指弾を放とうとも、両掌
の能力を使おうとも、その寸前にことごとく阻まれる。宣言の通り、一気に自分を叩き潰す
つもりなのだ。
「ッ、舐めるんじゃ……ねぇ!!」
 だがそれでも意地があった。跳び込み、四方八方から攻撃してくる隊士らの一人をゼロ距
離からの指弾で吹き飛ばし、一瞬できた隙を見て能力を使おうとする。
「──」
 しかし、その瞬間だったのである。
 直後、伸ばしたトレースの右手を奔る一閃があった。彼自身がそれを受けたと理解するよ
りも早く、手首から上が飛ぶ。目の前のくるくると回転しながら浮かんでいく自身の片手を
目に映して、一瞬世界がスローモーションになったように感じる。
「き……。貴様ァァァ!!」
 國子だった。彼女が同期する、ステルス能力を持つコンシェル、朧丸だった。
 何もなかった筈の空間から突如として現れた彼女の、奇襲の一閃。トレースの右手はざっ
くりと斬り落とされてコンクリートの地面に落ち、やがてデジタル記号の粒子を蒸発させな
がら少しずつ消え始める。
「……お前の能力は既に分析済みだ。その両手のレンズに映した物同士を、入れ替えるんだ
ろう? 以前の戦いで拳ではなく、足技を主体にしていたのはその為だ。片手を失った今、
もうその厄介な能力は使えない」
 手首の切り口も同じく、シュウシュウとデジタル記号の粒子を蒸発させながら。
 激昂したトレースに対し、皆人──クルーエル・ブルーは対照的に淡々と語った。元より
策の内だったのだ。たとえジャンキーやストームに比べて直接的な戦闘能力が劣っていると
しても、相手はアウター。危険性は最大限排除しておきたい。
「とどめだ!」
 チャージ。睦月がEXリアナイザにコールし、デュークが手にする突撃槍(ランス)を発
光させて力を込める。クルーエル・ブルーも朧丸も、ジークフリートや隊士達もそれぞれ必
殺の一撃を放つ体勢を取り、取り囲んだビルの屋上に幾つもの輝きが生まれる。
「……フッ。ふふふ……」
 にも拘わらずだった。次の瞬間、トレースは何を思ったのか突然狂ったように笑い始めた
のである。
 とうとう頭がおかしくなったか? いや、自棄になってた時点で似たようなものか。
 思わず仁達がその様子に戸惑う。僅かだが、一瞬攻撃を放つタイミングが遅れた。
 しかしそれが決定的だったのである。トレースはニィッと嗤い、残った左手である物を取
り出した。掌に収まった小さな部品──黒いチップ。それを見て睦月が、皆人や國子がサァ
ッと血相を変える。
「ッ!? あれは──」
「拙い、止めろ!」
 だが叫んだ時にはもう遅かった。トレースは文字通りこのチップを自らの身体に刺し込む
と、狂ったように笑った。チップはずぶずぶとまるで生き物のように彼の、アウターの実体
に潜り込み、内部からその姿形を瞬く間に膨張・破裂──激変させていく。
「はははっ! ……もういいや。何もかも、お終いだあ……」
 未知の感覚に苦しみながら、しかし瞬く間にその膨張に呑まれていったトレース。
 睦月達は思わず大きくこれを見上げた。この追い詰められたアウターは、更に自暴自棄と
なり、隠し持っていた奥の手に手を出してしまったのである。
「オオッ……。ヴォ、オオオオオオーッ!!」
 その姿は、はたして暴走態。
 本来とはまるでかけ離れたように禍々しく膨れ上がったその巨体は、二つの顔を持った、
黒く獰猛な狗の化け物へと変貌を遂げたのである。


 我に返った来栖が最初に考えたのは、この目の前の亡骸(ゴミ)をどう処分すればいいか
ということだった。
 罪の意識、焦り、囚人服の未来。
 様々な感情とイメージが脳裏に去来したが、今や一線を越えてしまった彼にとってそれら
は、以前に比べて随分と些末なことのように思えた。
 幸い、ここは飛鳥崎でも郊外も郊外。山野の類ならば飽きるほどある。
 この時、他に誰もいなかったことが更に行動を後押しした。来栖は意を決するとすぐに動
き出し、血だまりや室内に飛び散った血を隅々まで拭き取った。その上で男を何重にも麻袋
とビニールシートで包み、一人車を走らせる。
 日はすっかり沈み、曇天の空は辺り一帯を普段以上に闇で覆い隠していた。
 来栖は山野の奥深くへと入り込み、人手の入っていない林の中に男の死体を埋めた。ザク
ザクと、日没の暗がりに響いたスコップの音が耳に張り付いている。急いで教会に戻ると、
繰り返し繰り返し手を洗った。汚した、汚した、汚した……。その行為は結果この日何時間
も続くことになる。翌日も、そのまた翌日も、はたと気になればすぐさま蛇口へ向かった。
来栖は暫くの間、この一連の症状に悩まされることになる。
 当然ながら、もう神父として祭壇の前に立つ事はできなくなった。できる訳がない。
 何度振り払っても消えぬ事実と、自らの意識。心安らぐ暇さえなくなった彼は、以来ずっ
と教会奥の自室に閉じ篭もる生活を余儀なくされていった。
「神父様、大丈夫かねえ?」
「何か、病気になったって聞いたけど……」
「お見舞いに行った方がいいのかしら?」
「行くって……どっちに? 奥の家の方か? それとも病院か?」
「そもそも俺達、神父様のプライベートって知らないからなあ」
「あまり詮索するのも良くないだろう。祈ろう。神父様の為にも、この町の為にも」
 時折、祈りに訪れる住民達の気配がした。ひそひそとしたやり取りが聞こえた。
 しかし来栖は憤っていた。あの母子(おやこ)の死も、あの男の行方知れずも、さも他人
事のように奇麗事で濁し、直接触れようとはしない。自分だけは助かろうと、内心ただその
為だけに祈る。
 ……腹立たしかった。憎々しかった。何もかも遅過ぎるんだ。結局誰一人彼女達に手を伸
ばさなかった癖に、あくまで自分達は善人面をする。面倒を嫌い、身勝手で、何も学ぼうと
はしない。ただ誰かが、他の誰かが助けてくれる──犠牲になってくれる“英雄”が現れる
と、当たり前のように信じて疑わない。
 ……嗚呼、そうだ。そんな他力本願を、人は信仰と呼ぶのだ。
 今なら解る。この砕けた硝子のように脆い、かつての信心の無意味さなど。
 祈るだけでは誰も救えない。何も変わらない。彼らが誰かに頼りきり、外野の存在である
ことに疑問を持たない限り、救いを叶える力は常に需要に対して圧倒的少数なのだから。
 不条理だ。
 はたしてこの世とは、常に“怠慢”な輩が、真に敬虔な者達を無慮に奪っていくのだと。
 やがて来栖は、自ら信仰の道に進んだことそれ自体も後悔し始めていた。激烈なまでに自
らを責め、憤った。己の弱さが、彼女達の殺生を招いたのだと。

 ──いっそ始めから、心のままに生きていたら……。

 事件から一週間、二週間、一ヶ月。閉じ篭る日々は延々と積み上がり、来栖は酷くやつれ
て人前に姿を見せなくなっていた。最早身体を動かすことも、尚も祈りに訪れ、縋る住民達
の気配を知ることすらも苦痛だった。己の中の怒りが、もう自らの制御すら離れては勝手に
火をくべ、酷い痛みをもたらしてくるからだ。
(もう、駄目かもしれない……)
 そんな、ある日の出来事だった。すっかり弱った身体を引き摺りながらも、それでも用を
足して自室に戻ってきた来栖が目にしたのは、勝手にこの部屋に居座る見知らぬ二人組だっ
たのである。
「やあ。戻って来たか」
「な……?! な、何なんだ君達!? い、いつの間に……。いや、そもそもここは関係者
以外立入禁止で──」
「いいじゃない、別に。小さい奴ねえ……。で? あんたが来栖信彦で合ってるのかしら?
ここの神父で、一月ほど前、人を殺した」
「ッ?!」
 数秒呆気に取られたが、性質の悪い進入者だろうと思い、追い出そうとする来栖。
 だがその直後、しれっと二人組の片割れに言われた一言に、彼は一瞬世界が凍りついたか
のような錯覚に叩き落される。
「正解のようだな」
「そのようね」
 何も答えられなかった。否定すれば疑われる。いや、既に知られているのだ。だがそもそ
も、彼らはどうやって……?
「そう身構えなくてもいい。私達はただ、君を迎えに──助けに来たのだからな」
「……助けに?」
「ええ。貴方の望み、叶えてあげる」
 言って、二人は立ち上がった。そして戸惑う来栖へと歩み寄り、スッと奇妙な短銃型の装
置を差し出してくる。
「さあ、引き金をひきなさい。全部終わらせましょ?」
「……」
 暫く視線を落として、揺らぐ瞳を見開いていた来栖。
 だがやがて、彼は吸い込まれるようにこの装置に手を伸ばしていた。その様子(こたえ)
に二人は小さく、ニヤリと口元に弧を描く。

 ゴスロリ服の少女と、高そうなスーツに身を包んだ男。
 本当の始まりは、ここからだった。

「──んぅ……?」
 時を前後して。海沙は着信を告げ始めたデバイスの音で目を覚ました。
 全身をふわっと包む感触がする。仰向けの背中も大きく受け止められていて……どうやら
自分はベッドの上にいるようだ。
(ここ……私の部屋……?)
 そしてまだ頭はぼうっとしていたが、程なくしてここが見慣れた場所だと分かる。
 しかし妙だ。今日は新生電脳研の創部パーティーが開かれ、皆で学園に泊り込みで遊び明
かす予定だった筈だ。予め学園側にも許可を取ったし、家族にそう伝えてある。
 にも拘わらず、自分は今家に帰っており、眠っていた。誰かが送ってくれたという事なの
だろうか? 確かに皆で飲んで食べて、お喋りしてゲームして、その後の記憶があまりはっ
きりと残ってはいないようだが……。
「……っと。それよりも」
 そう疑問は浮かんだが、それよりも先ず海沙は自分を起こした着信に応えることにした。
 ベッドから這い出し、うつ伏せに身を捻ってヘッドボードの棚に置いてあったデバイスを
手に取る。薄暗い部屋の中、画面を見てみれば、相手は宙だった。その名前を見て妙にほっ
とした自分を自覚しながらも、海沙はちょこんとベッドの上に座り込んだまま、画面をタッ
プして通話に出る。
「もしもし」
『あ、もしもし? よかった。起きてたみたいね。……というか、起こしちゃった?』
「うん……。でも大丈夫。こんなことになってたなら早く起きるべきだったろうし」
『そっか。じゃあそっちは、まだおばさん達に何も訊いてないのね? うーんと。ざっくり
状況を説明すると、思ったより皆が疲れて寝ちゃうのが早くって、皆っちが気を利かせて私
達を家まで送ってくれたって話らしいんだけど……』
「だけど?」
 二言三言、やり取りをしてから宙が言う。やはり大方そんなことだったか。しかし電話の
向こうの親友は、どうも煮え切らない言い方をする。
『だって、勿体無いじゃん? 折角一晩泊まってもいいように学園に許可も取ったっていう
のにさあ。あたし達が疲れて寝ちゃってても、今日くらいは部室でもよかったのにさ?』
「うん……。そうだね……」
『それに何より、どうも睦月の姿がないのよ。てっきり一緒に帰って来たんだと思ってたの
に、家の中は真っ暗。電話しても返事すらないのよね。パンドラがいるんだし、気付かない
筈はないと思うんだけど……』
 海沙は目を瞬き、ベッドから起き上がった。降りて自室の窓際まで歩き、カーテンを開い
て隣──つまり睦月の家を確認する。
 見れば確かに家の中は明かり一つ点いていなかった。最もそれ自体は、彼が実質一人暮ら
しであることもあって珍しい訳ではないのだが、如何せんここ暫くの当人の挙動を考えると
不信感が勝る。
「寝てるって訳じゃあ……ないのかな?」
『あたしもそう思ったんだけどねえ。でもお父さんやお母さんに訊いてみたら、あいつが帰
って来た所は見てないって言うのよ。もしかしたら三条の人達があたしらを送ってきた時の
出迎えやら何やらで、見逃してた可能性もあるにはあるけどさ』
「……」
 だからこそ一つまた一つと互いに疑問を、可能性を潰していく先にあるのは、やはり幼馴
染が任されたというあの役目のこと。
「三条君ん家の、お手伝い?」
『多分ね。でもおかしいじゃない。何で今日って日まで、パーティーを切り上げてまで出て
行かなきゃいけない訳? パンドラのテストって、そんなに大事なの?』
「……」
 その実、自分に向けられた言葉ではないことくらい解っている。
 だがそれでも親友の声色は、聞くこちらも気持ちがキュッと固くなってしまう程にピリピ
リと甲高かった。鋭利さを増していた。
 海沙は半ば無意識にしゅんと眉根を下げる。少なくとも今、彼女に対する否定材料を自分
は持ち合わせていない。現在進行形の事実を積み上げれば、自ずと生じる違和感──不信感
を払拭できない自分がいる。
 パーティーを切り上げて送ってくれたのは、あくまで厚意。
 その空いた時間を使ってパンドラの運用テストに出掛けたのは、あくまでついで。
 そう考えることもできた。そうであって欲しい。だが電話の向こうの親友は、すっかりそ
んな楽観説を棄ててしまっているようだ。相変わらず自分達を除け者にしてまで何かこそこ
そしている。その事実が、選択が許せないとでも言いたげに。
『やっぱりあいつら、何か隠してる。今日だけでも……なんて言えないよ。これじゃあ』
「……うん」
 自分もまた思う所があったからだろう。海沙は結局、ご機嫌斜めな宙を最後まで宥める事
はできなかった。
 部屋の中から外の暗がりを眺める。窓ガラスに不安げな自身の姿が映る。
 睦月は、皆人達は、一体何処へ行ってしまったのだろう?

 壁掛けのテレビに、火の海と化した夜のビル街が映っている。
 飛鳥崎東部・藤城邸。一人を除きもう誰一人味方のいなくなってしまった屋敷のリビング
で、淡雪は黒斗と一緒にテレビを観ていた。画面の向こうでは複数の報道ヘリが飛び、しか
しあちこちで上がったままの火の手が故に、下手に近付けないでいる。
『こちら現場、万世通り上空です! ご覧になられるでしょうか? 火の海です! 夜の街
が……炎に包まれています!』
『現場は、まさに地獄絵図の様相を呈しています! 突如として起こった謎の連続爆破から
二十分以上が経過しましたが、未だ消火活動は間に合わず、被害も広範囲に及び、我々報道
班も地上からでは近付くことができず──』
 その直後だった。上空から決死のレポートをしていた彼女らの少し後方を飛んでいた別の
報道ヘリが、突如として爆音を上げて粉々になったのだ。
 誰の目にも明らかだった。犯人に撃ち落されたのである。
 機内ではその轟音に思わず後ろを振り向き、呆然と固まってしまった女性レポーターの姿
が映っている。暫く言葉が出なかったのは他のクルーも同様だったが、それでもこの目の前
で起きた出来事を伝えるよう、マイク外から呼びかけている様子が確認できる。
 だが彼女は、画面から見てちょうど奥へと振り向いたまま、震える身体を止める事ができ
なかった。一歩間違えれば自分達が狙われていた事実と、文字通り消し飛んだ同胞。そんな
すぐ背後で放たれた一撃に恐怖しない訳がない。
「……黒斗。これって」
「ああ。間違いなく同胞だろう。随分と傍迷惑な暴れ方だ」
 ソファに座る淡雪は、暫くの間絶句していた。それでもごくりと息を呑み、傍らに控える
執事の黒斗──かつて自身が召喚したアウターに、確認するように問うた。一方で黒斗当人
は彼女を見るでもなく、じっと画面に目を遣って渋い顔をしていた。言葉通り、悪目立ちが
過ぎるという意味なのだろう。
 先日、守護騎士(ヴァンガード)打倒の為に“蝕卓(ファミリー)”が召集した刺客達。
話によればその後内二人は返り討ちに遭い、残り一人は逃亡したという。
 おそらくはその最後の一人なのだろう。ラースが一体何を吹き込んだのかは知らないが、
追い詰められて発狂したといった所か。刺客という割には案外肝の小さい──浅慮な者であ
るらしい。
 案の定というべきか、個人的には安堵するべきか。
 黒斗は内心、そう複雑な心境でこのニュース映像を見ていた。
 手段としてはあまりに粗雑過ぎるが、これも守護騎士(かれ)を誘い出す為なのだろう。
蝕卓(ファミリー)として動きがない以上、この暴走も計画の内か。……少なくとも、それ
でも彼は止めに駆けつけるのだろうが。
「ねえ、黒斗。本当に彼らに話さなくてよかったの? そもそも私達があの子の正体を報せ
なかったから、こんな事になったんじゃ……?」
「……それとこれとは話は別だ。互いを売らない。そういう約束だった筈だ」
 不安げにこちらを見上げてくる淡雪。黒斗はそこでようやくちらっと、位置関係上見下ろ
す形で、彼女を見遣って言った。
 淡々と。その話し方は静かで付け入る隙がなく、主人である淡雪にも遠慮がない。
 だが、当の彼女は「そうだけど……」と特に気にも留めず、しゅんとただ眉根を下げるだ
けだった。そもそもに、これが二人の本来の姿なのだ。二人っきりの時は主従の垣根などは
必要とせず、もっと親密なそれへと装いを解く。
「それに、あの同胞の暴走についてお前が気を揉むということは、私達という存在の暴力性
に屈するということだ。こじつけても、何の利益にもならない。お前は、お前の幸せを考え
ていればいい」
「……。うん……」
 ぽすん。ソファの肘掛け越しに、淡雪が頭をこちらに預けてきた。その表情は不安に圧さ
れてくしゃっと哀しげになり、今にも泣きそうである。
 たっぷりの沈黙。やがて黒斗は黙ったまま彼女の頭にそっと手を乗せ、撫でた。艶々の黒
髪が掌の中に流れる。フッと、それだけで淡雪は少なからず安堵しているように見えた。
「……」
 全く。どうして我が同胞達は、こうも極端で節度を知らないのだろう。
 黒斗はもう片方の手でそっと懐から自身のデバイスを取り出し、目を落とした。そこには
既に、ビルの屋上を撮った画像──巨大な黒い怪物の影(すがた)がアップされていた。


「嘘……だろ?」
 夜闇の外に響いた咆哮。変貌したトレードの姿に、仁以下新参メンバーを中心とした面々
が特に驚愕する。
 だが勿論の事ながら、敵はそう悠長に待ってくれる筈もない。次の瞬間、この暴走態──
トレースの大狗は睦月達に向かって大きく前脚を上げ、叩き付ける。それだけで一同は巻き
起こる風圧で吹き飛びそうになり、かわすのに精一杯で、ビル全体も轟音を立てながら大き
く軋んだ。
「み、皆人。これって」
「ああ。法川晶の時と同じだ。奴め、潜伏している間に同じ者を受け取っていたか」
 舞い上がる粉塵とぐらつく足場。間一髪の所で回避した仲間達を横目に確かめながら、睦
月は大きく後退りつつ、クルーエル・ブルーと同期した親友(とも)に問う。
 皆人も同じことを考えていた。見上げるそれは、かつて自分達が遭遇したアウターの暴走
形態。周囲の被害など顧みず、ただ敵を叩き潰すそれだけに特化したもう一つの姿。
「どうしますか?」
「どうするのも何も、こんなデカブツどうやって倒せってんだよ……?」
 逡巡する睦月達。だがその間にもトレースの大狗は眼下の一同を見つけると咆え、前脚を
払ってこれを吹き飛ばそうとした。寸前で姿勢を低くする睦月達。しかし一方でその風圧を
避け切れなかった仲間達が大きくバランスを崩し、空中に投げ出される。「危ない!」寸前
の所で冴島のジークフリートが流動する風の身体を伸ばし、彼らを引き戻した。一歩間違え
ればそのまま地上へ真っ逆さまだっただけに、コンシェルの同期越しに彼らはがっくりと床
に膝をついて息を荒げている。
「くそっ! とにかく攻撃だ!」
「とにかく撃ち込め! これだけ的がデカいんだ、外しはしない!」
 誰からともなく隊士達が、一斉にそれぞれ同期するコンシェル達の大技をこの巨体目掛け
て放った。大型のエネルギー弾や散弾、炎に冷気に電撃、回転する錐など。
「──」
 だが当のトレースの大狗はけろっとしていた。痛くも痒くもないといった様子で、ただあ
っという間に四散していく彼らの攻撃を浴び、牙を剥いて睨みつけている。
「効いて……ない?」
「だ、駄目だ! 身体が大き過ぎて威力が追いつかない!」
「怯むな! 撃って撃って撃ちまくれーッ!!」
 絶望する。されどここで自分達が退けば、一体誰がこの化け物から街を守るというのか。
 隊士達や仁、國子、冴島らが引き続き一斉攻撃を開始する。双頭の巨体に繰り返し繰り返
し幾つもの爆風が飛び散るが、やはり仰け反る様子すら見せない。
 ……そんな時だった。バババとこちらへ近付いて来る耳障りな機械音が数個。
 ヘリだった。保護色も何もなく、ただ近付こうか近付くまいかと旋回を繰り返している姿
を見る限り、報道のヘリか。
 おい、馬鹿──。思わず誰かが口にしようとしたが、もう遅かった。次の瞬間、トレース
の大狗が闇夜の中の自身を撮ろうとする彼らの存在に気付き、大きく開いた二つの口から炎
弾を放ったのである。
 爆音。一発は機体のど真ん中に当たり、もう一発は傾いた瞬間のプロペラを捉え、この報
道ヘリはそのまま為す術も無く炎上しながら真っ逆さまに落ちてゆく。
「……何てこった」
「やべぇぞ。もうこいつ、見境なしだ」
「こ、こんなのが地上に降りちまったら……」
 そうしてトレースの大狗が再びこちらを見、雄叫びを上げて前脚を叩き付ける。再び轟音
と共にその足元がへしゃげ、ビル全体も更に軋んで無数の破片を落とす。
 とばっちりを──逃げ惑うのは地上の人々だ。件の屋上で何かが起き上がったように見え
て程なく、繰り返し激しい揺れが襲い、上空から幾つもの炎の塊と瓦礫がまるで雨霰のよう
に降り注いでくる。
 消火活動、救助活動に奔走する隊員達さえも散り散りに逃げ回った。ビルの入口で押され
押し返されをしていた内部バリケードの別働隊と当局の突入班も、それぞれ崩壊の進む頭上
に恐れをなして悲鳴を上げ、縮こまる。
「拙いぞ……。このままじゃ俺達よりも先にビルがぺしゃんこだぜ」
「そもそも私達が無事で済むとは。地上の被害が、更に甚大になってしまいます」
 元より足元の面積はそう大きくはない。暴れ回り、こちらを追ってくるトレースの大狗の
攻撃に、睦月達は確実に追い詰められていた。コンクリを積み上げた筈の床はとうに大きく
傾き、深くひび割れ、もう立っているのがやっとだ。
「場所が悪過ぎる。どうにかもっと人気の無い場所へ移せれば……」
「で、でもどうやって? あんな巨体、俺達の力じゃ到底──」
「僕がやるよ。皆は、逃げる準備をして」
 だがそんな時である。流石の皆人も作戦を練り直そうとしていたその時、ふと睦月が真っ
直ぐトレースの大狗を見上げたままで言ったのだった。
「佐原……?」
「冴島さん。さっきの風で、あいつを浮かせられないでしょうか?」
「? あ、ああ。最大出力を足元に送り込めば何とか。でもそう長くはもたないよ」
「充分です。お願いします。合図と同時に、僕ごとこのビルから引き離してください」
 怪訝にも答え、しかし決定打にはならないと返す冴島。
 しかし睦月はこれに振り返ろうともせず、既にEXリアナイザのホログラム画面を呼び出
していた。一歩二歩、仲間達の前に進み出る。
「無茶だ、睦月! ここは一旦奴を誘導するんだ!」
『そっ、そうですよ、マスター! この前とは状況が違います。ライノ・コンシェルで貫い
ても地上の人達に──』
「大丈夫。それに、そんな時間を掛けている暇なんてないでしょ? ここで、一撃で倒さな
きゃ、皆が犠牲になる」
 パワードスーツの下で、睦月は眼を光らせながら二人の言葉を撥ねつけた。
 ホログラム画面をタップし、新しいサポートコンシェルを呼び出す。それはこの状況を逆
転させる、起死回生の一手となった。
『ARMS』
『COMPOSE THE IRON』
 銃口から飛び出した光球は、銀色を宿していた。光球は睦月の右腕から背中を通って左腕
にも及び、その両腕を大きく頑丈な手甲へと変える。
『アイアン・コンシェル……。シルバーカテゴリ……?』
「冴島さん、お願いします!」
「あ、ああ!」
 パンドラがきょとんとホログラム映像の中で小首を傾げた。睦月が大きく腰を落として拳
を握り、冴島とジークフリートに合図する。
 加速度的に、巨大な風が生まれ始めた。それらは崩壊の一歩手前だった屋上を覆い、この
様子に低い唸り声を漏らしていたトレースの大狗の足元にも潜り込み始める。
「チャージ!」
『MAXIMUM』
 そして次の瞬間、睦月は更にこのサポートコンシェルを選択した状態で、必殺の一撃を放
つ体勢に入った。力を込める両腕にバチバチッとエネルギーの迸りが溜まってゆく。皆人ら
仲間達がゆっくりと後退しつつ、彼のこの一手に目を離せないでいる。
 睦月と、トレースの大狗が睨み合い、互いに前のめりになりかけた。その瞬間、睦月はこ
れだと言わんばかりに叫ぶ。
「今です!!」
 同時、地面を蹴った睦月。そしてその背中を追い越し巻き上げるように、ジークフリート
の全力の突風が巨大な竜巻となって吹きすさいだ。
 まさかこんな事をするとは思いもしなかったのだろう。いや、もう相手にそんな冷静な思
考をする能力など失われているのか。
 はたして睦月とトレースの大狗は、冴島が起こした渾身の豪風によってビル屋上の更に頭
上へと巻き上げられた。その距離十メートル近く。前のめりになった所を狙い、僅かな時間
の浮遊ではあったが、この戦いに決着をつけるには充分だった。
(……ここはビル街。周りには無数の瓦礫。“材料”なら、いくらでもあるっ!)
 バッと空中で広げた両腕。その周りには目に見えない引力があった。
 引き寄せられていく。屋上の瓦礫が、地上の瓦礫が次々に引き寄せられていく。屋上から
ふわりと浮き上がった何か──怪物の存在にようやく気付き始めた人々が、筧達が誰からと
もなく夜の空を見上げ、同時自分達の周りからひとりでに無数の瓦礫がそこへと吸い寄せら
れていくのを目撃する。
 仲間達も、その光景に唖然とした。見る見るうちに、睦月の両腕が巨大なそれへと変わっ
てゆくではないか。
 ……いや、厳密には睦月の腕ではない。睦月が装備したあの手甲を中心として、瓦礫達が
巨大な鋼鉄の腕として再構築されていたのだ。
 組成(コンポーズ)──それがこのコンシェルの特性。
 シルバーカテゴリは金属系、防御力に特化したサポートコンシェル達。だが堅固な防御力
は即ち、高い攻撃力にも転化する。
 トレースの大狗もようやく理解したようだった。獣の眼を見開き、目の前に造り出された
自分よりも遥かに巨大な鋼鉄の腕に驚愕する。
「う、おオォォォォーッ!!」
 メゴッ。そして次の瞬間、雄叫びと共に睦月はその巨大な両手でトレースの大狗を挟むよ
うに左右から手刀を打ち込み、捻じ切ったのだった。隊士ら仲間達総出の攻撃でもびくともし
なかった巨体が、メキメキと不自然にひしゃげて引き裂かれる。
「ガ……ッ?! ゴ、ガアァァァーッ!!」
 破裂した。そして次の瞬間、堅固な攻撃力に耐え切れなくなった大狗の巨体は、三つに千
切れて爆発四散したのだった。ビル屋上、その更に上空で爆ぜた膨大なエネルギーは、風圧
こそ地上の皆を散々に煽りはしたものの、結果として誰も巻き込む事はなかった。あの化け
物が倒された。その事実を理解するまでに、人々はたっぷりと十数秒を経ることになる。
「やっ──」
「やったぁぁ! 倒したぞーッ!!」
「すげー、すげー! あんなデカブツを!」
「あ、ははは……。やっぱり規格外なんだなあ。あいつ……」
 崩れかかった屋上で、仲間達が弾かれたように喜び、互いにハイタッチをした。この一撃
の一部始終を見ていた皆人や國子も、冴島のジークフリートが流動の風で睦月を無事回収し
終わったのを見届けると、ホッと息をついて酷く安堵したようだった。
「やったよ! やったよ睦月君!」
『反応、完全にロストしました。やりましたね。マスター』
「……うん」
 冴島や仁達に抱えられ支えられ、流石に脱力した睦月。
 彼らの喜びは、安堵は、即ち地上の人々もまた同じである筈だった。


 再び彼が現れた時は、彼らの最期の時。
「……? 神父様!」
 その日も住民達は、相次いだ事件の不安から教会を訪れていた。救いを求める為に、一心
に祈る。だがそこに現れたのは、他でもない来栖だった。
「──」
 しかし様子がおかしい。
 彼の存在に一人また一人と気付いて振り返った住民達だったが、程なくしてこの異変に気
付いて近寄ろうとする動きが止まる。
 ここ暫く臥せっていたという話から、以前よりやつれているのは仕方ない。だが彼はこの
教会に住み込んでいる神父であり、姿を見せるなら住居を兼ねる奥からの筈だ。
 それに、後ろに二人は誰だ? 何よりも、自分達を見る彼の眼が明らかに以前とは違う。
まる憎しみのような、激しい感情に燃えた眼をしているような……。
「神父、様?」
「一体どうなされたので──」
 怪訝に思い、何人かが意を決して近寄り、訊ねようとした。
 その瞬間である。来栖は不意に懐から何か──短銃型の装置を取り出し、銃口をこちらに
向けると、燃える敵愾心のままに引き金をひいたのだった。
 現れたのは……怪物。赤銅の肌に擦り切れた僧服を纏った、三面六臂の怪人だった。
「ひぃ!?」
 或る者は恐怖で引き攣り、或る者は腰を抜かしてその場に倒れ込む。
 何が、何が起きた? 混乱し、悲鳴を上げる礼拝堂内の住人達。
 そんな彼らへとゆっくり近付いていきながら、三面六臂の怪人はデジタル記号の光から生
まれた剣や槍、弓などの武器をめいめいの手に握り締め、次の瞬間先ずこちらへ近付こうと
していた住民数名を地面を蹴ると同時に斬り伏せた。
 がっ……?! 赤く激しい飛沫を撒き散らして、一瞬の内にこの数名が倒れ込む。
 絨毯や石畳に転がって動かなくなった同胞。住民達の悲鳴は更に激しく、切迫したものと
なり、てんでばらばらに逃げ出してゆく。
 だがここは礼拝堂。空間も限られていれば長椅子や祭壇など、障害物も少なくない。
 或る者は壁際に追い詰められ、或る者はこれらに足を取られて転び、その隙を容赦なく突
かれて殺された。斬り、刺し、撃ち。白と藍のタイルを基調とした堂内は、瞬く間に、幾つ
もの皮袋から噴き出す赤色で塗りたくられていく。
「……」
 来栖はその間も、じっと引き金を握り続けていた。眼は細められ虚ろで、害意の感情しか
表出しない。そんな彼と彼の呼び出した三面六臂の怪人を、ゴスロリ服の少女と高級そうな
スーツの男は、入口の縦枠にもたれ掛かったまま満足げに見物し続けている。
「ぐびゃッ?!」
「ぎ……ぎゃばッ!!」
 形振り構っていられなくなったのだろう。中には近くの椅子や祭具を手当たり次第に投げ
つけ、何とか追い払おう逃げようとする者もいた。
 しかしそれらも結局は無意味──次の瞬間、カッと目を見開いた怪人の力によって目に見
えない壁のようなものに押し返されると、そのまま潰れてしまう。
 只々殺戮だけが実行された。来栖は誰一人として、ここから彼らを逃がす気はなかった。
 ……清算する。この教会で祈った日々を無にする。祈られた日々を無かったことにする。
 何も救わなかった。何も救えなかった! 全ては彼らの、自分の、人間という生き物が孕
む怠慢さ故だ。それ故に、彼女達は失われた。お前達など祈るに──救うに値しない!
「はあっ、はあっ、はあっ……」
 殺し尽くすのに、そう時間は掛からなかった。堂内が静まり返った頃には全ては終わって
おり、何十人ものかつての信徒──住民達だった赤黒い肉塊が辺り一面に転がっているだけ
である。
「お見事。初めての繰り(ハンドル)にしては中々のものだ」
「私達の見込みは間違っていなかったようね。喜びなさい? 貴方には素質がある」
「……いや、まだだ。まだ壊し足りない。苛々が、私の中の苛々が、治まらない……!」
 その、次の瞬間だったのだ。
 高級スーツの男とゴスロリ服の少女からの賛辞にも、来栖は満たされていなかった。憎悪
に満ちた瞳で喉元を掻き毟り、肩越しに彼らを見遣って訴えようとする。
「──いや、もうその必要はない。用なら済んだ」
 振り向いたその隙を突かれていた。来栖は他でもない、自身が呼び出した三面六臂の怪人
の手によって背後から胸を刺し貫かれ、激しく赤をぶちまけた。ガッ……?! 口からこの
傷口から、あらゆる穴から鮮血を吐き出し、来栖はゆっくりと震えながら振り返る。何故?
怪人を見たその眼は、あたかもそう問うているかのようだった。
「案ずるな。君の憤怒は、私が引き継ごう」
 握った刀剣を引き抜き、どうっと来栖がその場に崩れ落ちた。どくどくと赤い血だまりを
広げながら、静かに冷たくなってゆく。
「実体、手に入ったのね」
「ええ。これだけの数の存在を抹消すれば、嫌でも影響力(ちから)を得られる」
 三面六臂の怪人は、そのまま予めプログラムされたかのような動作で倒れ伏した来栖から
短銃型の装置──改造リアナイザと装填されたデバイスを回収すると、ずぶずぶと自身の身
体の中へと取り込んだ。実体化(しんか)完了である。ゴスロリ服の少女の問い掛けにも、
この怪人は垣間見せる牙と共にすっかり余裕を獲得していた。
 かくして、教会内は真に皆殺しとなった。
 来栖の握っていたリアナイザを取り込んだ怪人は、デジタル記号の光に包まれ、その姿を
他でもない来栖そのものに変える。薄眼鏡の神父姿──人間態へと落ち着いたのだ。ゴスロ
リ服の少女と高級スーツの男が、陰のある微笑みを向けて言う。
「後始末の方はこっちに任せておいて?」
「そしてようこそ。我らが蝕卓(ファミリー)へ」

「──そうですか。トレードは斃れましたか」
 ポートランドの地下空間に広がる、長い秘密の通路を行く。
 ラースは道中、サーヴァント達からの報告を聞き、そうさして驚きもせずにごちた。
 彼が直接戦闘に向かない個体であることは、とうに把握している。故に今回の真の目的は
この戦いで守護騎士(ヴァンガード)を公の眼に曝すことだった。自分達の前に立ちはだか
る彼は十中八九、何かしらの組織の後ろ盾がある。これまで何度となく刃を交えてきたとい
うのに、その尻尾をこうも出したがらないということは、向こうもその存在を知られては困
るということ。真偽はともかくとして表に引っ張り出しさえすれば動き難くなるし、こちら
も討伐がし易くなる。
 ……忌々しい。この“憤怒”の名を与えられたアウターはカツカツと歩を進めながらも、
また自身の内側で渦巻くエネルギーの躍動に眉を顰めていた。
 突き当たりの大扉の前に立ち、懐から取り出したカードキーと暗証番号でこれを開ける。
 中には薄暗い中に点々とランプを灯す巨大なサーバー群と、その半階下の円卓に陣取る者
達の姿があった。
『──』
 一人は柄の悪そうなチンピラ風の男。一人は特大のコーラを既に何本も空けている肥満の
巨漢。一人はゴスロリ服の少女で、一人は黒スーツに身を包んだ寡黙な青年だった。
 加えてサーバー群の前には、彼らの主たる痩せぎすの白衣の男・シンと──。
「これは珍しい。貴方も来ているとは。プライド」
「ああ。俺達も最初びっくりしたんだけどな」
「ふふふ。今日は他でもない、彼からの要請なんだよ」
 チンピラ風の男がわざとらしく肩を竦め、シンが不気味に微笑む。
 そこには普段中々顔を出せない、彼ら蝕卓(ファミリー)の一角を占める者がいた。
 高級そうなスーツに身を包んだ鋭い目の男──飛鳥崎中央署警視・白鳥涼一朗だった。
 皆に促され、視線を受け、フッと彼は嗤った。黒スーツの青年──黒斗がじっと密かに横
目にその様子を窺っている中で、彼は流れるような所作で本題に入る。
「是非、皆に紹介したい者がいる。“七人目”の候補だ」
 パチン。言って白鳥──プライドは軽く指を鳴らして合図した。カツンと、それに合わせ
て暗がりの一角から、こちらへ近付いて来る人影がある。
「……」
 シン及びラース以下、蝕卓(ファミリー)一同が一斉に視線を向ける。
 現れた人影。暗がりに隠れた何者かの姿。
 しかしそこから覗く両の眼光は、間違いなく並々ならぬ鋭さを宿していた。
                                  -Episode END-

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  1. 2017/02/22(水) 18:00:00|
  2. サハラ・セレクタブル
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自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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