日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブルⅡ〔18〕

 一人海沿いを歩き続け、やがて足元はコンクリートの船着場へと変わった。
 ストーム──人間態に戻った胴着姿の灰髪の男は、潮風と注ぐ日差しを身体いっぱいに受
けながら、そっと目を細めると空を見上げる。
 邪魔が入ったが、守護騎士(ヴァンガード)の正体は知れた。
 睦月という名らしい。あの時遠くから探し、呼び掛けてきた少女達の声に、彼の表情はま
さに鬼気であった。正直嫌いではない。大切なものを、何が何でも守ろうとするその必死さ
を備えているのならば──。
「む?」
 故に、事前に言い付けられていた通り、先ずはジャンキー達に報告をしようと思った。
 だがデバイスを取り出そうとして左のポケットに手をやった瞬間、ストームは違和感に気
付いて視線を落とす。ポケットから出てきたデバイスは、見るも無惨に砕かれていた。
(……ああ。あの時か)
 一瞬眉根を顰めるが、すぐに合点がいく。
 戦いの最中、守護騎士(ヴァンガード)が赤い鎧に姿を変えた際のものだろう。確かあの
時自分は、最初の一発を左脇腹に貰った筈だ。十中八九、その時に壊れてしまったのだろう
と結論付ける。
「ふふ……」
 なのに、笑っていた。
 期せずして連絡手段を断たれたにも拘わらず、ストームは何処か嬉しそうに犬歯をみせて
笑っていたのだった。

『願い、か……。そうだな。もっと戦いたかった。この武をもっと高め、この名を世に轟か
せたかった。だがもう、このような老いぼれになってしまっては最早叶わぬ』
 初めて召喚された時、目の前にいたのは一人の老人だった。
 とは言っても、その辺にいる並の爺ではない。着流しの下の身体は老いて尚、引き締まっ
た筋肉の名残を残し、全盛期には相当の猛者であったことを窺わせる。
 しかし当人は、過ぎ去ってしまったその日々を懐かしみ、そして悔いていた。願いは何か
と訊ねた時、真っ先に返ってきたのは、そんな在りし日々への憧憬だった。
 ストームはその願いを聞き入れた。額に触れ、彼──武道家・五十嵐典三の全てを受け継
いだ存在となったのだ。
 願いを叶える為、そして実体を手に入れる為。
 二人は五十嵐のかつてのライバル達の下を訪ね歩き、道場の看板を賭けて彼らの弟子達と
の試合に明け暮れた。
 ストームは強かった。五十嵐の全てをデータとして取り込み、更にアウターとしての常人
を超えた力を持つ。ライバル達が育てていた後継者らは、次々と彼の前に破れた。この灰髪
の胴着男に誰一人敵わず、倒されていった。
 実体を手に入れたのは、そうして十ほどの道場破りを終えた頃だったろうか。一方で五十
嵐の老いは確実に強くなっていた。道場破りが四十を越えた頃、遂に彼は病床に臥せってし
まう。
『……ありがとう。ストーム、お前は儂の願いを叶えてくれた。まごう事なくお前は儂の後
継者じゃ』
『何を言う。お主の夢はまだ果たされてはいないだろう? 我々の武を、もっと世に知らし
めたいと言っていたではないか』
 フッと微笑(わら)う。しかし五十嵐の身体はもう限界だった。
 それから程なくして、流浪の武道家・五十嵐典三は逝った。齢八十九の大往生だった。
 ストームは一人遺された。実体化したこの身体のみを残して。師であり友である彼の亡骸
は、かつてのライバル達の手で丁重に弔われた。身内は手を挙げなかった。数も少なくその
全てが遠方に離れて久しく、縁はとうに切れていたという。
 ……五十嵐。私はお主の夢見た戦士となれただろうか?
 この身体に宿る力。風の異能。
 強さには自信がある。だがそれは、はたして本当の強さなのだろうか?
 以来、ストームは探し続けた。戦って戦って、その答えを探し求めていた。

「──」
 そっと瞑っていた目を開き、視線は軽く掌へと落ちる。
 守護騎士(ヴァンガード)。間違いなく彼は、これまでとは一線を画す相手になる筈だ。
もうただの人間では証明し切れない。彼を破ることができたなら、自分は一つ大きな区切り
を迎えられるかもしれない。
 ストームは歩き出した。再び、踵を返して歩き出した。
 海沿い、その更に島の奥側へ。後ろ姿が遠くなっていく。
 回り込み湛えたその表情(かお)は、一抹の緊迫と、何より悦びに溢れつつあった。


 Episode-18.Storm/天を裂く一矢

「お前は……?」
 朝、登校時間の迫った飛鳥崎学園前の並木通り。
 学園生である筈の守護騎士(ヴァンガード)を誘き寄せる為、待ち伏せていたジャンキー
と逆さ帽子の少年は、やがて一人のスーツ姿の男性の出現に出くわしていた。
 冴島志郎だった。かつて睦月の前に装着候補者として目され、しかし変身に成功すること
は叶わずに長らく入院していた筈の元第七研究所(ラボ)のメンバーだった。
 兄貴。逆さ帽子の少年が呟き、ジャンキーも頷く。
 釣ることには成功した。だが引っ掛かった相手がどうも違う。
 つまりどういう事だ? 少なくとも本人ではない。だとすれば……。
「奴の仲間、か」
 小さく、ジャンキーは舌打ちをした。どうやらハズレを引いたのは自分達らしい。
 という事は、当たりはストームの方か? 或いは仲間に任せて、一先ずこちらの出方を窺
っているのかもしれない。
 両者は暫く距離を取って向かい合い、睨み合っていた。その間も、登校してくる生徒達が
時折ちらっと怪訝な眼を遣り、しかしそれ以上の関わりを持とうとも思わず学園の敷地へと
消えてゆく。
「お前達だな? この前、学園に忍び込もうとしたというのは」
 そして、最初に口を開いたのは、冴島の方だった。
 気持ち声量を落とし、二人にだけはっきりと聞こえるように問う。逆さ帽子の少年が睨み
を利かせ、その隣でジャンキーはむすっとした表情のまま肯定も否定もしなかった。
「目的は僕達なんだろう? ここでは拙い。場所を移さないか」
「断る。何で俺達がお前のペースに合わせなきゃならん」
 冴島は言う。だがジャンキーは哂って跳ね除けた。戦いは既に始まっている。
「……だろうね。では仕方ない」
 しかし次の瞬間だった。まるでそんな返答を織り込み済みだったかのように、冴島はポケ
ットに突っ込んでいた左手でデバイスを操作した。合図が飛ぶ。直後ドォン! と路地の奥
から爆発音が聞こえた。
「ば、爆弾だー!」
「爆発したぞー!」
 上がり始める火の手。何処からともなく響いてくる誰かの叫び。
 すると冴島達の周囲は、瞬く間にパニックになった。学生達や路地にぼうっと出ていた住
民らが反射的に悲鳴を上げ、散り散りになって逃げ惑う。それを、路地の方から現れた男達
が誘導し、火の手とは逆の方向に一挙に集めて遠ざけていく。
 ボマー・アウターの事件のトラウマだった。
 多くの市民にとって、直接どうこうされた訳ではない。だが安寧を保証された筈のこの飛
鳥崎で起こった一連の爆弾テロは、人々の心に少なからぬ恐怖を植えつけるに充分だった。
 それを冴島達は利用したのだ。小火とデマで煽ってやれば、かなり高い確率で場の人払い
を行うことができる筈だと。
「古傷を抉るようで彼らには申し訳ないが、実際に巻き添えを喰わせてしまうよりはずっと
マシだからね」
「……チッ」
 ややあってがらんと人気のなくなった並木通り。尤もそれも長くは続かないだろう。
 冴島は突っ込んでいたデバイスを取り出すと、周囲に散開させたリアナイザ隊士らに命令
を下した。
「フェイズ2だ。総員、範囲内のサーヴァント達を駆逐してくれ。くれぐれも一人で戦おう
とはするな。必ず一体に対し、複数人で掛かるように──」
 一歩二歩と。ジャンキーがそっとサングラスを外し、逆さ帽子パキパキと拳を鳴らし、こ
の指示を飛ばす冴島の方へと歩き出していた。
 やはり、自分達とやり合う為に姿を見せたようだ。二人は本来の姿──袖なしの革ジャケ
ットに身を包んだ猿人のアウターと、レンズ甲のアウターに姿を変えた。サーヴァント達の
配置にも勘付かれている。ここで潰す以外に、選択肢はない。
「……急ごしらえだが、さて、どれだけ戦えるか……」
 するとどうだろう。冴島はこれを見遣って呟きながら、サッと懐からリアナイザを取り出
したのだ。
 調律リアナイザ。上蓋を開き、自身のデバイスをセットする。「むっ?」と眉を顰める二
人に向けて、その引き金をひいた。
「来い、ジークフリート!」
 飛び出した光球を弾き、現れたのは、大きな茶色のマントを翻した剣士だった。機械的な
面貌を長髪と首元に巻いたマントの留め部分で隠し、手の長剣をずらりと水平に掲げてこの
アウター達と相対する。
「はん。やっぱりか。だがその手の雑魚とは、もうやり合い済みだ!」
 叫ぶジャンキーの、高速の連打が飛ぶ。ジークフリートはこれを素早く刀身で受け止め、
一閃二閃と反撃を試みた。
 初っ端から常人の域を越えた攻防が展開される。だがその隙を縫い、レンズ甲のアウター
が少し迂回しながら冴島の横へと回り込もうとしていた。
「トレ坊!」
 それが合図。レンズ甲のアウターは激しく剣戟をぶつけ合う両者──冴島の頭上にコイン
を放り投げ、即座に両手のレンズにこれとジャンキーの姿を映した。
 彼の能力である。
 次の瞬間、両者の位置は入れ替わり、ジャンキーは中空の背後から直接冴島を狙い打とう
とし……。
「ッ?!」
 だがそれを、他でもないジークフリートが防いだ。マントを翻した次の瞬間、轟と激しい
炎が巻き起こり、その身体を炎そのものと化しながら冴島の周囲を覆ったのだ。
 拳を炎の壁に弾かれ、咄嗟にその反動を利用して飛び退くジャンキー。
 レンズ甲のアウターが唖然としていた。ストンと、冴島と彼を結んだ対角線上に着地し、
ジャンキーが少し口元を拭う。
「……なるほど。そいつの特性は、その流動する身体か」
 ジークフリートの身体は、マントの下からが全て長い尾を引く火炎へと変わっていた。
 召喚主の冴島を守るように、この寡黙な剣士はぐるぐると旋回しながらジャンキーとレン
ズ甲の二人を睥睨している。五指をぐっと開き、レンズ甲のアウターが身構えていた。ぐい
と腰の酒筒(フラスクボトル)を取って一口煽ると、ジャンキーは嗤う。
「だがよ。炎なら俺も負けちゃいねぇぜ!」
 フゥゥと大きく息を吸い込んでから、ジャンキーはその口から激しい炎を吐き出した。
 一度はレンズ甲の相棒と力を合わせ、睦月を苦しめたとっておきである。だが冴島は驚く
様子もなかった。迫る炎をちらと見、前に立つジークフリートにパチンと軽く指を鳴らして
合図を送る。
「なっ──!?」
 今度は、水。
 何と次の瞬間、マントを翻したジークフリートの身体は大量の流動する水へと変わったの
だった。
 更なる変化にジャンキー、レンズ甲のアウターも驚く。当然ながら襲い掛かった炎の息は
この水量に掻き消され、逆に二人を押し流した。半ば反射的に五指からのエネルギー散弾を
撃とうとしたレンズ甲も巻き込みながら、冴島とジークフリートは二人を一旦正面の一ヶ所
に集めて倒れ込ませる。
「……っ。まさか変化する物質も──属性も変えられるのか」
「畜生、舐めやがって。効くかよ、こんなもん! 次でぶっ殺してやらあ!」
「いや……。もう終わりだ」
 ずぶ濡れになったジャンキーとレンズ甲。激昂する彼に、冴島は至って冷静だった。
 パチンと軽く指を鳴らし、再びジークフリートの身体を流動する炎に変える。轟々と巻き
上がった熱気が、二人の下にも届く……。
「うぇ!? な、何」
「しまった。これは……気化熱か!」
 レンズ甲のアウターが、そしてジャンキーがその意図に気付いた時にはもう遅かった。二
人を襲った炎は直接攻撃する為ではなく、ずぶ濡れになった彼らを一気に追い詰める最後の
一押しだったのである。
 巻き上がった急激な炎と熱は、二人から体温を奪っていった。そして水の流動によってず
ぶ濡れにされていたその体表面は、現象に比例して急速に凍て付いていく。
 二人はろくに身動きが取れなくなってしまった。ジャンキーは足元から氷に捕らわれ、辛
うじて被害の量が劣っていたレンズ甲のアウターも、両手や全身の方々といった部分的な凍
結に四苦八苦させられる。
「クソッ! これじゃあ入れ替えが……」
「さて。そろそろ決めさせて貰うよ」
 そっと握っていた調律リアナイザを頬の前まで持ち上げ、冴島は自身のコンシェルに送る
力を強めた。
 ジークフリートが炎の噴射で高く舞い上がり、回転させながら翻すマントごと巨大な炎の
角錐と変貌していく。狙いは勿論、ジャンキーとレンズ甲の二人。逃げられなかった。少な
くとも両脚が凍て付いてしまったジャンキーはその戒めを解くことすら容易ではない。
「……そんな、馬鹿な。この、俺が……」
 おおぉぉぉーッ!! 最期の最期に断末魔を残して、二人の頭上に燃え滾る螺旋となった
ジークフリートの一撃が降り注いだ。
 弾け飛ぶ炎、弾け飛ぶ電脳の粒子。ジャンキーの肉体だったのもの。
 ひい、ひいっ……! しかしその一方で、脚が動いていたレンズ甲のアウターは間一髪こ
の直撃を回避していた。散々に凍り付いた身体を引き摺り、必死になり逃げて去ってゆく。
「……逃げられたか。まぁいい。少なくともこちらの本丸は崩せたようだし……」
 パチパチと地面に散らばって残る炎の残骸。
 だが冴島は、このレンズ甲のアウターを追おうとはしなかった。作戦自体は予定通りに進
んでくれた。何より人払いに費やした騒ぎを、早々に収めなければならない。
「こちら冴島。アウターの主力を撃破した。総員、すぐにフェイズ3へ。サーヴァント達の
排除と併行して、小火の後始末をしてくれ」
 ジークフリートの召喚を解き、リアナイザから再び取り出したデバイス越しに路地裏の部
下達に次なる指示を送る。隊士達は動き出した。電子の塵になって還ってゆくサーヴァント
達を尻目に、統率された動きで起こした小火の鎮火と、避難させていた人々の解放に回る。
「……睦月君。僕達なら大丈夫。こっちは任せておいてくれ」
 残骸の火もやがては消えてゆく。
 冴島は一層がらんとした通りの真ん中に立ち尽くしたまま、静かに空を仰ぐと、そう一人
小さく語り掛けるように呟くのだった。


「睦月ー!」
「むー君~!」
 幼馴染達の声が聞こえると、睦月や皆人、國子は半ば反射的にデバイスを取り出し、リア
ナイザを隠すようにしまい込んだ。ストームの姿は既に見えなくなっていた。何としても守
ろうとしたものが難を逃れたと知り、内心睦月は酷く安堵さえした。
 こちらの存在に気付き、二人が浜辺への坂を駆け下りてくる。皆人と國子がちらと互いに
目配せをして頷き、すっくと睦月の前で立つように歩いた。同期中にあれだけコンシェルを
叩き付けられてダメージが無い筈はないのに、彼らはあくまで平穏無事を装ったのだ。
「もう~、探したよ。一体何してたのさ?」
「……ああ、すまない。こいつが日差しに中てられてしまってな」
「それで、それを見つけた私達が、涼しい所に移そうとしていた所だったのです」
 砂浜の上にまだ仰向けのままの睦月。そんな親友(とも)の様子を、皆人は國子と共にそ
うこじ付けて弁明する。
 普段は見れない景色だからな。言って、例のパンドラの試用運転の一環だと臭わせる。
「……子供か。あんたは」
「あはは。ご、ごめん……」
 実際半分迷子の上に、身体はくたくただ。情けない姿を晒してしまっている事には間違い
はない。片眉を上げて呆れる宙の一方で、海沙は「それは大変」とこの睦月の傍へ駆け寄っ
ていた。國子と一緒になって肩を貸し、一旦近くの木陰へと移動させる。本当は熱ではなく
あのドリルにやられたのが……勿論、そんな事実を話すつもりはない。
「全く、何やってんだか」
「本当だよお。パンドラちゃんに色々見聞きさせたいのは分かるけど、むー君自身が無茶を
したら元も子もないんだからね?」
「……うん」
『申し訳ないです……』
 ヤシの木にもたれ掛かってしょんぼり、デバイスの画面の中でもしょんぼりと。
 睦月は苦笑いにも徹し切れず表情を暗くし、パンドラもまた主を守り切れなかった無念も
相まって眉をハの字に下げてしまっている。
「香月おばさんの力になりたいってのは分からなくもないんだけどさ……心配なのよ。もし
あんたに何かあったら、一番気を揉むのはおばさんなんだからね?」
「勿論、私達も」
「……ありがとう」
 だからこそ、この幼馴染達を騙し続けていることが辛かった。彼女達を守る為、ひいては
飛鳥崎や他の街に広がる改造リアナイザの魔の手から人々を守る為、必要な嘘だと言い聞か
せてきた筈だが、そのために肝心の彼女達の気を揉ませてしまうのは何という皮肉だろう。
一周回って……という逆転現象なのだろうと思う。
 少なくとも、彼女達は嘘はついていない。だからこそ睦月はただ苦笑を貼り付けて小さく
詫びるしかなかった。今回の事も、口には出せないアウター達との戦いそれ自体も。
 暫くの間、睦月達五人は木陰で休んでいた。
 それでもあまり長居はしていられない。皆人がデバイスで時刻を確認し、そろそろ戻ろう
と切り出した。今度はこの親友が睦月に肩を貸し、立ち上がらせた。國子が後ろにそっと付
きつつ、宙と海沙もちらちらと振り向きながら、横に並びながら歩き出す。
「……??」
 そんな最中、海沙はふと気付いた。はっきりとはしないが、違和感という奴であろうか。
 何だか……ここは荒れている気がする。この島に着いてから見てきた浜辺はどれも均され
たように綺麗に波打っていたが、ここにはそれが欠けている気がするのだ。
 均すというより、吹き飛ばされたような?
 去り際、何となく浜辺に目を遣っただけのことだったが、海沙にはあちこちが妙に抉れて
いるように見えた。それに何だろう? あそこの岸壁、妙に凹んでいる? まるで何かが、
大きな力で押さえ付けられたみたいに──。
「海沙ー? どうしたの? 行くよー?」
「あ、うん……」
 目を瞬いて止まりかけていた足。だがそれを引き戻したのは、先を行く宙からの少し怪訝
な声だった。思わずハッと我に返り、故に海沙はこれ以上考えるのを止めた。
「急ぎましょう。確かこの後は、キャンプ場で飯盒炊爨(はんごうすいさん)でしたね」
『あ、それ知ってます。カレーにして食べるんですよね?』
「カレーだけとは限らないが……。まぁ大抵はそうだろうな」
「人数が集まると、それだけで量が多くなるからねぇ。一種の様式美ってやつだよ」
 わいわい。知ってや知らずか、或いは隠す為に敢えて話題を膨らませようとしたのか、國
子を皮切りに坂を登って引き返す一行の会話は弾み始めていた。
 実際、あまり本隊から長く遠くへ離れていれば、今度は教師らにも怪しまれる。
 そのキーワードを聞いて、画面の中のパンドラがぱぁっと目を輝かせた。皆人が淡々と肩
を貸しながら歩き、睦月も何処か微笑ましいという風に笑って応える。
「……」
 ぱたぱた。
 呼ばれたのと、気にしても何かある訳でもないと、海沙は皆に追いつくべく走り出す。

 並々と湯が注がれ、時折カコンと音がする。
 すっかり日も暮れて、睦月たち学園高等部一年生は宿に戻っていた。夕食やその後開かれ
た勉強のオリエンテーリングも終わり、今はちょうど女子が風呂に入っている頃である。
 高い岩と竹柵に囲まれた大浴場を借り切り、湯気の中で彼女達は賑やかに談笑──義務づ
くめの一日、小中高と繰り返してきたこのイベントを、少しでも自分達にとって楽しい思い
出にしようと全力を注ぐ。
 その殆どが今日というこの日、この島で起こった出来事を知らない筈だ。浜辺での戦いで
は期せずしてストームが退いてくれたが、それで彼の脅威が去ったとまでは言えない。
「──そっか。あん時、やっぱ敵が追っかけて来てたんだな……」
 先に入浴を済ませた男性陣、睦月や皆人、仁は、他の複数の班の男子達と共に宛がわれた
部屋で話し込んでいた。畳敷きの本格的な和室である。
 ようやく初日の義務から解放され、方々で雑談をしたりカードゲームに興じている彼らを
余所に、三人は襖で隔てた広縁の机を囲むようにして顔を寄せ合っていた。言わずもがな、
周りにこの話が悟られぬ為である。
「すまん。俺も加勢に行けばよかった。そうすりゃあ、少しは……」
「いや。あの時の國子の判断は正しかった。もしお前だけでも休憩所に残ってくれていなけ
れば、天ヶ洲や青野はもっと早く俺達の所へ辿り着いていただろう。そうなればアウターの
姿も見られていたし、誤魔化す事だってできなかった」
 他の生徒達の眼もあり、ようやく仁は昼間の一件について詳しい経緯を聞くことができて
いた。戦いがあったのは予想していたようで、力になれなかったことを詫びたが、皆人はそ
れも含めて一先ずやり過ごせたのだと応じている。
「ストームって言ってたっけ。凄く強かった。ケルベロスの速さにもすぐ対応してきたし、
まともに肉弾戦をやるのは難しいと思う」
「ああ。本人の話が本当なら、召喚主が武道家だそうだからな。それに、あの風を操る能力
も厄介だ。距離を置いて戦おうにも、あれでは元も子もない」
 圧倒された、その敗北感を改めて味わっていたのだろう。睦月はぎゅっと握った拳を見つ
めて呟いていた。皆人も頷く。曰く、隙がない。
 風か……。すると今度は仁が口を開いた。難しい表情(かお)をして腕を組み、ちらと夜
闇で真っ暗になった部屋の外を眺めている。
「なあ、三条。やっぱりそいつが例の三人目って事でいいんだよな? 風を操れるんなら空
だって飛べるんじゃないか? 司令室(コンソール)が目を光らせてても気付かなかった筈
だぜ。元から船には乗ってなかったんだからよ」
「ああ。俺もそう考えている。小松大臣の事件の時、一度睦月は遥か遠くへ吹き飛ばされて
いる。あれが奴の仕業で、あれだけ大規模な竜巻も生み出せるのなら、充分あり得る話だ。
まだ実際に、飛んでいる姿を見た事はないが……」
 一戦交えたことで、判ったことが幾つかある。その強さは勿論、彼はこの天童島まで追っ
て来たのだ。刺客として、この海に囲まれた密室に。
 実際に仁が口に出し、実感はより大きなプレッシャーとなって睦月達に迫ってきていた。
臨海学校どころじゃない。奴がその気になれば、島民全部と一学年全てがその脅威に晒され
ることになる。
 正直、先刻のオリエンテーリングなどろくに集中できなかった。向こうはもうこの一年生
の中に睦月がいると確信してしまっている。攻められれば、ひとたまりも無い筈だった。
「あいつ、何処に行ったのかな?」
「分からん。正直何故、あれから攻めて来ないのかと不審に思っているぐらいだ。一応は人
目につくのを避けているのか。しかし、学園に潜入を試みようとした件といい、島民に見つ
かっていたらしい件といい、それでは整合性が取れない……」
「相手は怪物だぜ? 俺達の常識がそもそも通用するのか? それよか、今の内に対策を練
った方がいいだろ」
「そうだね。空まで飛ばれちゃ、どうしようもないよ」
「……」
 少なくとも、現状は手詰まりだった。この限られたフィールドで、島民を含む皆に気付か
れず、且つ確実に倒せるような弱点を見つけること……。
「やっぱ、こっちも飛ぶしかねぇんじゃねえか? 佐原、お前らのサポートコンシェルにも
飛べる奴はいるんだろ?」
『はい。ホワイトカテゴリの子達ですね』
「いるにはいるけど、ただ飛べるだけじゃ問題は解決しないんじゃないかな? 相手と同じ
土俵に立つってだけだし、どのみち戦闘能力の差を埋めないと……」
「うーむ……」
 空中戦ならば、クリスタル・アウターの一件などで演じた事はある。
 だがあれは、止むに止まれぬ状況だったからであって、別にこちらが空中戦を得意として
いた訳ではない。そもそもあの時は敵は地面に居たままで、的自体も暴走・巨大化して狙い
易かったという側面がある。
「……とにかく、ここが飛鳥崎でない以上、司令室(コンソール)からのサポートを充分に
受ける事は難しい。状況は間違いなく俺達の不利だ。今夜中にも昼間の戦闘データを向こう
に送る。その上で、奴に付け込めるような弱点がないか分析して貰おう。それまで奴と戦う
のは避けてくれ」
 あーだこーだ。暫く三人(とパンドラ)は話し合っていたが、やがて皆人が苦渋の決断を
下す事になる。口調は相変わらず淡々としているが、その表情にはいつもの数割増しで眉間
に皺が入っていた。
「まともにぶつかるのは愚策だ。この島にいる以上、俺達はアウェイにならざるを得ない」

 だが異変は、その翌日から始まった。
 臨海学校二日目。布団から起き、朝食や身支度を済ませてぞろぞろと宿から出て来た時、
彼は姿を現したのである。
「……」
 ストームだった。胴着姿の灰髪の男。人間態のままでじっと、宿の玄関先の竹柵に背を預
けて立っている。
 待ち伏せか……!
 最初これに出くわした時、睦月達は大層驚き、そして身構えた。
 なのに彼は現れただけで、その場で襲い掛かってこようとはしない。ただちらっと何とな
しを装ってこちらに視線を投げてくるのみであり、その場から動く気配もない。
 他の生徒や教師達の手前、睦月達も目立った行動を起こせなかった。ただこの大男の前を
通り過ぎ、ちらちらと他の生徒達も時折「誰だろう?」と怪訝を投げるも、何が起こる訳で
もない。学年主任が声を張り、皆を率いていくのみである。
 浜辺に出て、カヌー体験。
 島の歴史を紹介する史料館の見学。
 昼食にと訪れた観光客向けのフードコート。
 或いはその後の、島のメインストリートでの自由時間。
 ストームはその全ての場所に現れていた。自分達をこっそりと追ったのだろう。カヌーの
際には海辺にじっと立って見つめていたし、史料館の中にも先回りをしてお一人様を装う。
フードコートでは自身ももしゃもしゃと食いながらこちらへの視線も怠らなかったし、その
後の自由時間においては、途中で島民らに声を掛けられ、連行されていた。
「……なあ。どういうことだよ? 何で俺達を見てる? 何で仕掛けてこない? 俺はとも
かく、佐原達の面はもう割れてる筈だよな?」
 当然ながら、睦月達は気が気でなかった。島民らに怪しまれ、その場から引っぺがされて
いくストームを横目に確認しながら、仁がひそひそともう堪らずといった風に訊ねてくる。
「誘われてるん、だよね?」
「ああ。或いは仲間が合流してくるのを待っているのか。しかし、そうならわざわざこうも
しつこく姿を晒す必要はない。一体何のつもりなのか……」
「……正々堂々、なのかもしれません」
 だから隙を見てひそひそと四人で話している最中、ふと國子が口にした言葉に、最初睦月
達は言わんとする所が分からなかった。
「正々、堂々?」
「はい。これは私の推測なのですが、昨日の戦いの際、彼は天ヶ洲さんと青野さんが近付い
て来た時──睦月さんが必死の形相になった瞬間、自ら戦いを止めました。鬼気……と言い
ましょうか。二人が大切な人だと、直感していたように思えます。だからこそそんな状態で
戦うのは卑怯だと、そう考えたのかもしれません」
「……怪物にそんな心意気があるとは思えんが」
 眉根を寄せたまま、皆人は言う。だが“武人”という枠で括るならば、あながち彼女の推
測は間違ってはいないのかもしれない。実際疑問こそ口にはしたが、真正面から否定しに掛
かるようなことはしなかった。
「ですがそもそも、睦月さんの顔が割れてしまった時点で、向こうはいつでも攻め込めた筈
なんです。それこそ周囲の被害など考えなければ、昨夜の内にも仕掛けられていた。なのに
彼はその選択はしなかった」
『……』
 ならばと國子は続ける。睦月達は押し黙らざるを得なかった。
 そうだ。昨夜の内、夜襲だってあり得た。だから昨夜は内心ハラハラしながら夜を明かし
たというのに。
 やっぱり変な奴──。お互い口にこそ出さなかったが、睦月達の感想は一致していた。
「それで? 一体どうするよ? まさかこんなわちゃわちゃ人がいる中で戦おうってのはな
いよな?」
「当然だ。向こうが実害を出していない以上、こちらも下手には動けん。奴の弱点について
もまだ分析中だ。どのみち時間が要る」
 周囲、特に宙や海沙の様子に注意しながら、仁が改めて訊ねた。皆人が肯定し、眉間に皺
を寄せたまま言う。
「最善とは言えないが……当面、無視する。暴れられればおしまいだが、向こうもこちらの
警戒には気付いている筈だ。司令室(コンソール)から連絡があるまで、抑止する」
 コク。睦月や國子、仁は頷いた。ちらと前方に目を遣れば、幼馴染達が他の女子生徒らと
談笑しながら辺りの土産屋などを覗いている。もどかしかった。だが彼女達の為にも、戦い
はもっと離れた場所で起こるようにしなければならない。
(……あいつに、勝つ方法)
 ぎゅっと。
 睦月は密かに握り拳に力を込める。

「ふむ……。怖気づくか」
 そして島民達から逃れ、屋根の上に立っていたストームは、そんな一行の様子を密かに観
察していた。
「仕方あるまい」
 そっと掌を開き、渦を巻く小さな竜巻の素を作りながら。


 そして、災いは程なくして訪れた。
 臨海学校三日目。先日まで快晴だった空は、突如として大荒れに変わっていた。ニュース
に耳を傾ける限り、どうやら南の海上に大型の雨雲が発生しているらしい。
 睦月たち高等部一年生は、朝から宿での待機を命じられていた。こうなってしまえば今日
の予定は全て取り止めだ。轟々と、雨風が窓を打つ音が絶え間なく聞こえ、生徒達は気持ち
しんみりとした面持ちでそれぞれの部屋に籠もっている。
「いきなりだよなあ。予報じゃあ今回の間は全部晴れだったろ?」
「そうだな。だが、俺達には好都合だ。時間も稼げるし、他の生徒達が巻き添えになる確率
もぐっと減る」
 そうやって午前中のどれくらいが過ぎただろう。
 睦月と皆人、仁の三人は部屋からフロントに降りて来ていた。一角にある自販機と休憩ス
ペースのコーナーで飲み物を買う為である。
「ここが狙わなければ、だけどね」
「でも昨日一昨日でなかったんだ。大丈夫じゃねえの? あ、何にする?」
「俺は紅茶を。睦月は?」
「あー、うん。僕もお茶にしようかな」
 話しながら自販機の前に立ち、仁に三人分の小銭を渡してボタンを押そうとする。
 するとおずっと、受付に控えていた女性が一人、戸惑った様子でこちらに出て来て近付い
てきた。ガコンとコーラと紅茶、お茶の缶やペットボトルが受け取り口に落ちる。睦月達は
何だろうと、何の気なしにこの彼女に振り向いていた。
「あのう……。今そちらの方、睦月さんと言いましたか? 飛鳥崎学園の、睦月さん?」
「? はい。睦月は僕ですが……?」
「あっ、よかった。あのですね? 実は今朝方、五十嵐様と名乗る方にそちらへ渡して欲し
いと頼まれまして……」
 苦笑と安堵。彼女から差し出されたのは小さな便箋だった。
 三人は面を食らっている。だが驚いたのはそれ自体に対してではない。他の誰でもなく睦
月を指定し、五十嵐と名乗った、その人物の正体を彼らは知っていたからである。

『この嵐は私のものだ
 嵐の見える浜辺で君を待つ
               五十嵐典三』

 慌てて受け取った便箋を開き、達筆な字で書かれたその一文に目を通す。
 手紙を握る睦月がグシャッと力を込めた。肩が拳が抑え難く震え出しているのが分かる。
 紛れもない、ストームからの挑戦状だった。
 この嵐は奴の仕業。嵐の見える浜辺で待っている……。
「おいおい。これって」
「ああ。睦月、一旦落ち着──」
「ッ!」
「おい待て、睦月っ!!」
 故に、次の瞬間睦月は駆け出していた。文面を覗き込み、同じくその意味を悟った仁と皆
人の制止など聞く耳すら持たず。

 はたして、灰髪の男ことストームはそこにいた。
 島の南側にある浜辺。ちょうど集落の中心部とは正反対の方向。
 遥か海の向こうに、暗雲の下渦巻く巨大な竜巻が見えた。空はまるでこの衝突を待ち侘び
るかのように不気味に鳴り、絶え間なく風が吹きつけている。
「……来たか」
 ざりっと砂を踏み締めた足音と気配に、そっとストームは振り向いた。全速力で駆けて来
たのだろう。息を荒げ、殺気を剥き出しにした睦月がそこには立っている。
「ストーム……何故こんなことをした!? 皆を、島の人達を人質にするような真似を!」
「こうでもしなければ応じてくれそうになかったのでな。私としても、あまりこのような手
段は使いたくなかったのだが……」
「五月蝿い!」
 あくまで鷹揚と答えるストームだったが、睦月は既に激情の人だった。
 フッとストームは笑う。背後の嵐からくる風を受け、灰色の髪先を揺らしている。
「あの竜巻はお前の仕業なんだろう? 今すぐ止めろ!」
「それはできん相談だな。だが、お主が私を倒すことができれば、或いは……」
 じりっ。そして両者は睨み合った。睨みながら、スッと睦月はEXリアナイザと心配そう
な表情のパンドラを映す自身のデバイスを取り出し、セットする。ストームもにやりと笑っ
てみせた直後、アウター本来の姿へと変身する。
『TRACE』『READY』
「お前は……僕の“敵”だ!」
『OPERATE THE PANDORA』
 うおぉぉぉッ!! 正面に引き金をひきながら駆け出し、睦月は叫ぶ。宙を旋回した光球
が彼を守護騎士(ヴァンガード)に変え、ナックルモードの拳とストームの拳が激しくぶつ
かり合う。
 案の定、パワーでは向こうに分があった。打ち、防ぎ、また打ち。初手の攻防はお互いま
だ牽制程度で、睦月はストームから放たれた風撃を大きく横に転がり飛んで避けると、直後
すぐさまホログラム画面からサポートコンシェル達を呼び出す。
『SUMMON』
『BITE THE JAGUAR』
『TORRENT THE SHARK』
『GROUND THE BUFFALO』
「……む?」
 現れたのは、トラバサミ状の両面手甲を装備したジャガー型のコンシェル、鋸状の双剣を
手にした鮫型のコンシェル、分厚い手斧を握った雄牛(バッファロー)型のコンシェル達。
 三体は睦月の正面に立ち、三方向からストームへと襲い掛かると、時間差でもって次々に
攻撃を仕掛けていく。
「こういう事まで、できるのだな。力で及ばぬと考えた次は、数で挑むか」
 しかし感心こそ示しながら、ストームはすぐにこの攻めにも対応し始めていた。双剣や手
斧、爪などに接触して火花こそ散るが、体捌きは防御しながらの最小限のダメージ。一体を
受け流せばもう一体を片方の肘で打ち、残る一体の攻撃をぐるりとこの二体を盾にするよう
に半身を返しながら食い止める。
「シュート!」
『WEAPON CHANGE』
 そうして三体の仲間に引き付けて貰いながら、睦月は武装を射撃に換えた。三体が組み付
いて空いたストームの背中や脇を、右に左に駆け回りながら撃つ。ダメージは微々たるもの
だったが、先日とは違い、一撃のみではない。睦月達は押そうとした。元より倒れるまで攻
撃し続けようとした。
「ふん……小賢しいわ。離れていろ。私が戦いたいのは守護騎士(ヴァンガード)だ!」
 故に痺れを切らしたのだろう。ストームは腕に竜巻を纏わせ、あのドリルアームを使い始
めた。獣の爪も、鋸の双剣も、分厚い斧も、次々に撃ち返しては弾き飛ばす。
「いいや、そうはさせない!」
 だが次の瞬間だった。くわっとパワードスーツの眼が強く光り、まるでそれが合図とでも
言わんかのように三体のコンシェル達は動きした。
 先ずは弾かれたシャーク・コンシェルが、離れる反動のままに口から激しい水撃を放つ。
ストームは特にかわすでもなく、片腕でこれを受け止め、防ぎ流した。
 しかしこれは陽動。直後、ゴガッという音と共にストームは足元に違和感を覚えた。
 土が硬く捏ね固められ、自身の両脚を覆うように纏わり付いていたのだ。見ればバッファ
ロー・コンシェルが少し離れた位置から砂浜を叩いている。──大地を操る能力だ。
 更に背後からこの隙にジャガー・コンシェルがその両手のトラバサミ手甲でストームの両
腕を押さえた。鋭い幾つもの刃がギチギチとめり込み、ジャガーが引っ張るのに合わせて重
心が後ろに引っ張られ、固定される。
「ぐぬっ……!?」
 これが狙いか。ストームが理解した時にはもう睦月達の作戦は始まっていた。動きを捉え
てから更にシャークとバッファローが代わる代わるに斬撃を叩き込む。防御もできず、ただ
ストームはその肉体の頑強さのみでこの火花散る連撃に耐えるしかない。
「チャージ!」
『PUT ON THE HOLDER』
 おおおおおッ! そして睦月は必殺の一撃をコールし、一旦EXリアナイザを腰の金属ホ
ルダーに挿し込む。
 だが睦月はそのままストームへ向かって走っていた。射撃モードなのだからこのまま狙い
撃てる筈なのに。
「──ッ!?」
 否。それだけでは足りなかったからだ。睦月は限界までエネルギーを増幅させたEXリア
ナイザを引き抜くと同時、すぐ眼前まで迫ったストームの胸にその銃口を押し付けていたの
である。雄叫びを上げながらひかれる引き金。直前、三体のコンシェル達も押さえを止めて
一気に飛び退く。
 刹那、迸る轟音と視界を真っ白に染め上げた閃光。
 確かに必殺の、ゼロ距離からの一撃はストームに叩き込まれた。睦月は自身が放った攻撃
の反動に耐えかねて後ろに吹き飛び、よろりと疲労しながら立ち上がって、その濛々と立ち
上った砂埃の中に目を凝らしている。
「…………」
 しかし、生きていたのだ。ストームは、姿こそ大破していたが、そこに変わらずボロボロ
になりながらも立ち続けていたのである。
 睦月の、守護騎士(ヴァンガード)の顔に絶望が浮かぶ。一旦距離を置いた三体のサポー
トコンシェル達も何処となく唖然とした様子だった。
「ふふ……。なるほど、考えたな。流石に効いたぞ……。だがもう少し、私を破るには足り
なかったようだ……」
 ざりっ。一歩二歩と身体を揺らしながら笑うストーム。ばさついた灰髪は焼け焦げ、渦巻
き模様のヘッドギアや革と赤茶のチェインメイルはあちこちが抉れて千切れている。
 ヘッドギアと覆面に隠れた赤い双眸が、ブゥゥン……と勝ち誇ったように明滅した。
 むんっ! そして気合いと共に周囲へ放った風圧は睦月と、三体のコンシェル達を吹き飛
ばし、その身を遥か上空へと舞い上げた。ヤシの木や岸壁に叩き付けられた衝撃で、頼みの
綱だったサポートコンシェル達は遂に力尽きて消滅してしまう。
「ふふふ……ふははは! 久々の強者だ、ここまでやるとは。やはり私の見立ては間違って
いなかったようだ。お主の真の強さとは、その鬼気の中にあるらしい!」
 遥か海上で渦巻く巨大な竜巻。それに負けず劣らず、ストームは叫んで自身の回りに大型
の風を呼び起こし始めた。
「来い、守護騎士(ヴァンガード)! 私は全力で君を倒そう!」
 両手それぞれに収束させた竜巻。これを見上げる睦月。
 心からの悦び。ストームは上空に漂ったまま叫ぶ。
「……」
 じりっと。
 睦月は再びEXリアナイザを、頬の傍まで持ち上げた。

「あんの馬鹿。ホイホイと釣られやがって……」
「そういう奴なんだよ、良くも悪くも。それより急げ。嵐の見える浜辺と書いてあったが、
島との位置関係上、この表現を満たす場所はそう多くはない筈だ」
 時を前後し、皆人と仁は一人飛び出した睦月を追って島の中を駆けていた。
 嵐が刻一刻と近付いている。それにつれて、吹き付ける雨風が二人の足を阻む。
 デバイスに表示させた地図を片手に、皆人は傍らの仁を急かしていた。國子には、宿を出
る前に海沙と宙を押さえておくよう、メールで指示をしてある。
「いた! あそこ……!」
 そうして十五分ほど走った頃だったろうか。二人は島の南に位置する砂浜で、相対する両
者を見つけた。上空には両手に風の渦を集めた怪人態のストームが、地上にはこれを見上げ
る格好の守護騎士(ヴァンガード)姿の睦月が片膝をついている。
「ど、どういう状況だ、これ?」
「分からん。だがもう戦いはとうに始まっているようだな」

「来い、守護騎士(ヴァンガード)! 私は全力で君を倒そう!」
 上空から叫ばれるストームの声。睦月はゆっくりとEXリアナイザを頬の傍まで持ち上げ
てこの“敵”を睨んでいた。
 自分の考えた作戦は失敗した。ゼロ距離からの全力攻撃でも倒し切れなかった。
 だが諦める選択肢などなかった。今自分の背中には、この島の──海沙や宙、皆人たち皆
の命が掛かっているのだから。
 再度ホログラム画面を呼び出し、コンシェル達の選択画面のロックを外す。
 パンドラはそれが意味することをすぐに悟った。音声越しに、無言のままの睦月に必死に
呼び掛ける。
『む、無茶ですよ、マスター! チャージアタックを打った直後に強化換装なんて。身体が
もちません!』
「でも、もうこれしかない。それに……ボロボロなのはあいつだって同じだ」
 マスター……。引き絞った静かな鬼気に、パンドラは押し黙るしかなかった。構わず睦月
は操作する。ならば自分は、彼の負担をなるたけ制御して抑え込むだけだ。
『HAWK』『EAGLE』『PEACOCK』
『FALCON』『SWALLOW』『PECKER』『OWL』
『ACTIVATED』
「……っ!」
『GARUDA』
 連続して叫ばれるコンシェル達の名。掌に吸い込まれた銃口と、澱みない機械の音声。
 直後、同時にストームからの双風撃が叩き落された。一瞬で睦月の姿は唸りを上げる轟風
の中に呑まれ、この一部始終を見ていた皆人と仁が目を見張って叫ぼうとする。
「終わりか。これでは結局──むっ!?」
 しかしである。次の瞬間、ストームが嘆息をつきかけたその時、叩き付けられた風の中か
らこれを貫いて真っ直ぐに伸びてくる何かがあった。
 寸前でこの気配を察し、ストームは咄嗟に防御体勢を取った。ガッと強烈な圧がガードし
た腕ごと身体を押し出し、彼を弾き飛ばす。
「──」
 そこには、睦月の姿があった。ストームと同様空に浮かび、新たな姿へと生まれ変わった
守護騎士(ヴァンガード)の姿があったのである。
 透き通る白を基調とした鎧。背中に広がる金属の大翼。
 ヘルム部分は鳥のクチバシと羽根をあしらった装飾が加わり、ウェーブした突起は両手・
両脚などにも及ぶ。
 その手には弓が握られていた。両側の反りが刃のように鋭く磨かれ、これもまた羽を広げ
たような主装が彼の手の中に収まっている。
 ガルーダフォーム。
 守護騎士(ヴァンガード)・白の強化換装。風の力、ホワイトカテゴリのコンシェル七体
を同時に纏った、機動力に特化した形態である。
「……また姿が変わった。ふふ、そうか。それが私に対する本気(こたえ)という事だな」
 地上の皆人と仁は勿論、ストームも目を丸くして驚いていた。だが彼は次の瞬間にはフッ
と笑って悦んでいる。同じく空を制し、同じ目線に並ぶ敵の出現を心から悦んでいた。
「もう、お前の好きにはさせない!」
『短期決戦です! 一気に落としますよ!』
 ニタ。ストームと睦月、宙を蹴ったのはほぼ同時だった。
 霞むような速さで加速し、ぶつかる両者。あの強力なドリルアームの鋭さを、睦月は弓の
反りと同化した刃で受け流す。
「うおおおおおおッ!!」
 二撃、三撃、四撃、五撃。弾かれ合うように距離を取り、今度は空中戦且つ射撃戦。掌か
ら次々と渦巻く風を撃ち出すストームに対し、睦月は高速で旋回しながらこれをかわし、弓
から放たれる風の矢でこれに応じた。
 再び切り結ぶ。切り結んで、また巨大な双風撃がうねりを上げる。すると今度は背中の金
属翼から無数の羽根刃が射出され、猛烈な速さで撃ち込まれながらこれを相殺する。
 皆人や仁はぽかんとこのさまを見上げていた。嵐迫る空で、目にも留まらぬ激しい空中戦
が繰り広げられている。
「ふはははは! 血沸く血沸く! ここまで追いついてくる者はお前が初めてだ!」
 一見してストームは嬉々としていた。根っからの戦いを愉しむ性質である。
 だがその実際は、彼もそう長くはもたなかった。ゼロ距離からのチャージアタックをもろ
に受けた際のダメージは、ボロボロになったその見た目以上に彼から余力を奪いつつあった
のである。
 口元から電脳の粒子が零れ始めていた。それでも尚、表情は笑い、ストームは再度ぐんと
距離を取り直す。
「しかしそろそろ決めさせて貰おう! 我が最大の攻撃、受けてみるがいい!」
 ちょうど互いに空中で、睦月はストームを見下ろす位置関係。
 するとストームはそう宣言すると、ドリルアームを右手だけではなく両腕に装着した。辺
りの風が猛烈な勢いで集まっていき、彼を芯としながらどんどん巨大な螺旋になってゆく。
「……」
 睦月もぎゅっと主装の弓を握っていた。それはこちらの台詞だ。お前を、倒す。
「チャージ」
『PUT ON THE ARMS』
 EXリアナイザを取り出し、コールしてからこれを弓の中心部分に取り付けた。ぐぐっと
矢を番える動作をし、それにつれて周囲の風がまるで圧縮されるようにエネルギー矢の先端
一点に集まっていく。
「ぬう……おおおッ!!」
 巨大なコマのような竜巻と化しながら、ストームが突撃してきた。ギリギリまで睦月はこ
れを引き寄せる。だが程なくして、軋み鳴り響く風圧の何処かを合図にするかのように、握
り締めていたその羽を手放す。
 轟。解き放たれた矢は、直後巨大な風の塊となって、向かってくるストームへと襲い掛か
った。目を見開く。しかしもう止まらない。巨大な風の塊に抉り込もうとする巨大な竜巻の
切っ先。両者の膨大なエネルギーはぶつかり合い、遥か上空で雷光を散らし合う。
「ぐうう……ッ!」
「……っ!」
 それこそ、拮抗しているように見えた。実際この激突を見上げていた皆人も仁も、傍から
見ている限りでは分からなかったのだ。
 しかしここに来て大きな違いが命運を分けた。一つはストームのダメージが睦月の捉えて
いた程度以上に蓄積していたこと。もう一つは、ガルーダフォームの必殺技がエネルギーの
みを放つタイプの技であるのに対し、ストームの側は彼自身がその力の核として機能してい
た点だ。
 押し負けたのだ。はたとある一点の瞬間にストームが突き進む竜巻の先端、両手のドリル
の切っ先が押し返されてへしゃげ、気付いた時には彼の目の前に唸る巨大な風の塊が迫って
いたのである。
「──」
 その瞬間、ストームは理解した。自分は敗れたのだと。削られ続けた余力の差が、遂に自
身を敗北に追い込んだのだと。
 轟。ガルーダフォームから放たれた風の塊はストームを呑み込み、その膨大なエネルギー
でもってその身体を加速度的に引き千切っていった。
 壊れていく。
 だが当のストームは、不思議と安堵したかのように微笑(わら)っていたのだ。
(……五十嵐。私は、貴方の武を究められただろうか……?)
 全てが押し流されていく。この男も、空を覆っていた荒れ狂う竜巻も。

「空が……吹き飛んだ」
「ああ。やったんだ。あいつが、睦月が」
 島から臨む景色は一変していた。厚く暗雲を垂らし込む嵐は次の瞬間弾け飛び、代わりに
初夏の晴れ晴れとした青空が現れる。
 仁がやはり呆然として立ち尽くしていた。にわかに注いできた日の光に手で庇を作り、皆
人がそう静かに呟きながら空を仰ぐ。
「──」
 ひゅるひゅると、睦月は上空から砂浜に降り立って来た。
 だが彼もまた全力を出し切ったのだろう。次の瞬間変身は解除され、どうっとそのまま白
い砂の上に倒れ伏す。
 睦月! 二人はほぼ同時に叫び、駆け出していた。ざくざくと砂浜を蹴る音が景色の中に
繰り返されていく。
 空は青く澄み渡っていた。
 もう憂いは無いのだと、慰めるように。


 臨海学校四日目。即ち天童島を発つ日。
 一旦昇った太陽が下がり始めた頃、睦月たち高等部一年生及び引率の教師達は行きと同様
船に乗り、飛鳥崎への帰路に就いていた。
 正直な所、今回のそれは生徒達には評判が悪いまま幕を下ろした。理由は言わずもがな、
昨日の突然の嵐である。天候自体は午後には回復したが、一旦雨風でぐちゃぐちゃになって
しまった島内がすぐに復旧する筈もなく、結局予定されていたイベントは全て中止された。
その結果、皆が楽しみにしていた二度目の自由行動──長い方の買い物タイムも無くなり、
ご機嫌斜めという訳だ。一応学園側も土産などを考えて出発前に時間を取ったが、そもそも
島内の店の多くが被害を受けており、気兼ねなく楽しめるものでは到底なかった。
「……」
 そうして帰りの船上。睦月は、思い思いに時間を過ごす同級生らの姿を遠巻きに、一人ぼ
うっと甲板の柵に持たれかかって空を眺めていた。澄んだ青空である。初夏の日差しが自己
主張している点を除けは、実に平和な一時の筈だった。

『司令室(コンソール)で調べて貰ったんだが、あの竜巻はそもそも、島に直撃するコース
ではなかったらしい』
 ストームとの戦いの後、宿の部屋で目を覚ました睦月は、そう皆人から思いもよらぬ事実
を聞かされた。
『それって……どういう事? じゃあ放っておいても、皆が巻き込まれることはなかったっ
ていうの?』
『そういう事になる。お前の早とちりだったんだよ』
『で、でも。あいつは確かに僕宛てに手紙を……』
『ああ。俺も正直癪だが、一芝居打たれたんだろう。お前を、奴との戦いに駆り出す為に』
『……』
 始めから相手は、島の皆を人質に取るつもりなどなかった。
 ただ勘違いだけをさせたのだ。敢えて自分に怒りの矛先を向けさせ、全力で立ち向かって
くるように。
『こうして事実がある以上、そう考えるのが自然だ。國子の勘は当たっていたんだな。怪物
とて、奴も武人の端くれだったのかもしれん』

「……ストームの事を考えていたのか?」
 記憶を辿り、漏れるのは嘆息ばかり。
 するとそんな親友(とも)の姿に気付いたのか、カツンカツンと皆人と國子、仁が近付い
てくるのが見えた。半ば条件反射的に海沙と宙の方向を見遣る。幼馴染二人は観光客用の観
覧室の一角に座っているようだ。他の女子生徒らと楽しげに話している。
「うん。やっぱりまだ、モヤモヤしててさ」
 こちらの視線に気付いたのか、海沙が肩越しにちょこんと振り向き、小さく微笑みを寄越
してきた。何でもないよ──。屋根や柱の骨格で上手く見えていないかもしれないが、睦月
もそう静かな苦笑を返して応えておく。
「うーん、そりゃあ一本取られたのは悔しいけどさ……。結果オーライじゃね? こうして
他の誰にも手を出されずに事が済んだんだからさ」
『そうですよ。別のアウターなら、きっととっくに宿ごと襲われていた筈です』
 仁が、そしてデバイスの中からパンドラが、そう思い煩う睦月を心配して言う。
「……そうなんだろうね」
 悔しいが同感だ。しかし睦月が悔いているのは、ストームに欺かれたことではない。あの
時激情のままに飛び出した自分自身である。
 別のアウター。パンドラの言うように敵が違っていたら、自分はもっと苦戦していたかも
しれない。或いは返り討ちに遭って、本当に大切な人達を失っていたかもしれない。
 怖かった。
 今までになかった敵だったからこそ、自身の中でそれは際立つ。
 越境種(アウター)を倒す。
 その目的の為に、一体自分はどれだけ人の心を犠牲にできるのだろう……?
「敵ながら、真っ直ぐな者だったのかもしれませんね」
「うん……」
 國子が静かに言った。睦月達は、ただ黙って頷くしかなかった。
 船が進んでゆく毎に、穏やかな海面が掻き分けられている。
 誰からともなく、睦月達はこの遠景に祈っていた。嵐と共に現れ、嵐と共に散っていった
あの男の、妙に人間臭い生き様に敬意を払うかのようにして。
                                  -Episode END-

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  1. 2016/10/18(火) 18:00:00|
  2. サハラ・セレクタブル
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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