日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(企画)週刊三題「王国」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:人間、激しい、消える】


 ある所に、小さな島国がありました。大陸の東端に位置し、四方を海で囲まれた国です。
この国は大きく九つの地域に分かれており、古くからそれぞれが独自の文化を育みながら発
展してきました。

 遥か大昔、この国の人々の祖先に当たる人達が大陸から流れて来ました。
 ある者は当時まだ地続きだった陸地を渡って、或いは新天地を求めて船で。今も国の北側
では狩猟が、南では漁業や農耕が盛んなのもそうした彼らの遺伝子なのかもしれません。
 最初は皆ばらばらで、辿り着いた土地に暫く住んでは移動し、暫く住んでは移動し、食料
を求めながら点々としていました。やがて船の民から広まった農作によって食糧の確保が進
み、定住が深まるにつれ、人々はその各地で集落を作るようになりました。
 緩やかな豊かさと、しかし遠からず訪れる戦いの兆しでした。
 食料──生命線の確保は人々の余力を生み、管理する者とされる者を生み、そして更なる
豊かさを求めて進出する声となりました。
 太古、最初の戦乱の始まりです。各地の集落は互いにその富を巡って争うようになり、時
には武器を持って殺し合うこともありました。
 勝った集落(もの)は奪い、負けた集落(もの)は吸収される。
 そうして最初いくつもあった集落は次第に方々で統一され──されど時折復讐に駆られた
者達の反撃に遭い──クニと呼ばれるようになりました。
 ですがそれで丸く収まりはしません。今度はクニとクニとが争う時代となっただけです。

 明確にこれらが歴史として語られるようになったのは、そんな大と大が潰し合う時代も終
わりに近付いていた頃、この国がおそらく原初の形で一つになった頃の事でした。
 ただ武力をもって従えるのではなく、祈りと奇跡によって信頼を勝ち取る。
 それまで力にものを言わせてきたこの国の人々にとっては、目を見張る光景でした。何よ
りも実際にこのクニは知識を与え、技術を与え、人々の飢えや悩みを次々に解決していきま
した。
 血で血を争うことばかりやっていたクニ達は、この祭礼のクニを大いに尊敬しました。
 やがて国中のクニ達は、この祭礼のクニの長を自分達の王として擁くようになりました。
 おそらく最古の、この国の統一です。
 最初の王。
 故にこの祭礼のクニ長を、後世人々は「始祖帝」と呼ぶようになります。

 それからは、現在に至るまでこの一族をなしにこの国を語ることはできません。
 代々の帝は、国を統一こそせど全てを黙らせるようなことはしませんでした。統一の遥か
前からクニ達はそれぞれの歩みがあり、風土があり、人の意識は大きな枠組みでは分断され
ていると知っていたからです。
 ですので、帝都とその周辺を除き、この国は大きく九つの地域に分けられ、基本的にはそ
れぞれの自治に任せることにしました。後に人々が自らを「ココノエの民」と呼ぶようにな
ったのはこの頃です。九つの地域に長がおり、更にその下にもっと細かく分かれた地域の既
存コミュニティがある──統一せど、彼らの心まで踏み込むことはしませんでした。したと
しても、それは不可能です。寧ろ為政の側をより早く滅ぼす劇薬であると、始祖帝の一族も
代々のクニ長らも身に染みて味わうことになるのですから。

 有り体に言ってしまえば、ある時あるクニで、ふっと国の全てを獲ってやると目論む者が
現れるからです。ある時は権力争いで、ある時は力ずくで。帝を擁いた当代の有力者を打ち
倒し、自らが実権を握ろうと、或いは彼の者を倒さねば民は苦しむだけだと“義憤”に駆ら
れて行動を起こす……そんな歴史の転換点が何度がありました。
 しかしそれでも、帝自体を何とかしようという者は皆無でした。寧ろ無事であって貰わね
ば困るのです。「正統」など証明しようがない。ましてや付け焼き刃に上座を覆し、歴史と
いうほどの代を重ねていない者達からすれば。
 だからこそ、始祖帝の血筋はほぼ唯一最大の証でした。帝に自らを認めて貰えれば、その
支配は磐石なものになる。利用はしても、始末してメリットになる事など殆どなかったので
すから。それだけ始祖帝──帝の威光はこの国の人々にとっては絶対でした。何度と時の実
権を持つ者が代わろうと、人々は比較的冷静でした。帝さえ御座すのなら、大丈夫でした。
ゆっくりと季節と月日が流れる中で、人々は益々九つの地域──ココノエ独自の文化を守り
ながら、まどろみのような日々を過ごすのでした。

 ですがそんな長いまどろみを叩き起こすような転機が訪れました。海を渡り、外国の船団
がココノエに迫ってきたのです。
 かねてより、ココノエも海を隔てた他国との交易はありました。少なからず、彼らから得
た最新の知識や技術、物資は人々を豊かにしていましたが、島国という性質上、ココノエの
民らはそれ以上外国から何かを得ようという気概には欠けていました。のんびりと、この旧
き良き生活が続けばいいなと、そう大半が考えていたからです。
 ですが時代が、各国はそうはさせてくれませんでした。
 この時世界はまさに大開拓時代。力をつけた国々は皆勇んで国外へ、海の向こうへと飛び
出し、新天地を求めて数多の冒険を繰り広げていました。
 それは詰まる所──搾取する為。古くより度重なる戦で磨き上げた武力を背景に、彼らは
次々と(彼らにとって)未開の、新天地の人々を制圧していきました。……国内だけでは既
に飽和していたのです。発達した文明が生み出す多くのもの、その消費を担う者が国内の民
だけでは足りなくなっていたというのが要因の一つでした。
 ココノエの民、こと帝都の上層部は困惑します。
『彼らは港を今までの倍開けという。だがそんなことを急に言われても用意できない。何よ
り民らにそこまで求められてもいない』
『事実上の圧力ですな。こちらの要求を呑まなければ、力ずくでも傘下に置く、と』
『随分と気忙しい者達だな……。そこまでして版図を広げねばならんのか?』
『卿は呑気ですな。海外の国々は、今や競うようにして自らの傘下の国を増やそうと躍起に
なっておるようですぞ』
『そして次は我が国、か……』
『回り出した歯車は、自分達ですら止められぬ、と……』
『どうする? 要求を呑むか? あくまでこれまでの通りに付き合うか? 私の見解ではど
ちらにして奴らがこの国を喰らわんとするのは時間の問題であるように思う』
 帝を前にした御前会議。ココノエ独自の礼装に身を包んだ大臣達は、大まかに開明派と守
旧派に分かれて議論を戦わせていました。
 現場の交易に多少なりとも関わっている者は知っています。彼らの英知と、それらを上回
って余りある貪欲さを。
 現場の交易にあまり関わっていない者は懐疑的でした。そこまでして、他のクニを侵奪し
て何になるのだ? 血で血を洗う争い。果てのない戦い。そんな不毛を治めてくれたのが他
でもない我らが始祖帝だというのに……。
 大臣達は悩んでいました。認めたくないが、どうやら時代は動きつつある。どれだけ我ら
ココノエが連綿と続く伝統を望もうとも、彼らは構わず他国(くに)から他国(くに)へと
移っては喰ってゆくのだろう。かの昔、先祖達が国の内側においてそうしていたように。
『帝……』
 故に、最終的な判断は当代の始祖帝──ココノエの頂点に君臨する者に委ねられました。
 御簾を挟んだ上座。そこで帝は暫く思案します。さらり。立ち上がるのに併せて御簾が少
し揺れて、小珠を繋いだ装飾に彩られた冠を揺らしました。
『余の望みは民の安寧だ。閉じて攻められるのであれば、開こう。但しただ彼らを待つだけ
ではいけない。我らも外へと出、今ココノエを取り巻く環境がどうなっているのか確かめる
必要がある。使いを、出そう』

 そんな帝の一言で、ココノエ中がざわめきました。
 海の向こうへ学者さん達が旅に出るそうだぜ……? 人々は港から仰々しく船を着けて準
備を進める使節団の面々を見て、期待と不安が入り混じっていました。
 外国がこの国に迫っていることは多かれ少なかれ聞き及んでいる。聞き及んでいて、帝は
その外国を調べてみようとお考えになったのだ。人々は帝都に向かって手を合わせて祈り、
この国が無事でありますようにと願いました。やがて船に帆が張られます。ザザーッと水面
を滑り、ココノエの命運を左右する船団が出発します。
 ──世界は、使節が予想していた以上に荒れていました。
 表現するならば、帝が現れなかった乱世。それが国という内側に留まらず、外側へと溢れ
ていくことの茶飯事。一見すると様々な国々の文物が行き交い、豊かに見えますが、その実
は富の奪い合いでした。揉めれば官憲が駆けつけ、睨みを利かせます。時折、滞在中の街で
暴動がありました。かつて制圧された土着の民らでした。それを、鉄砲を持った軍服らがさ
も当たり前のように隊伍を整え、パンパンと撃ち殺します。
『これは、ココノエの未来だ』
 使節の一人が、馬車の中でそう小さくごちました。
 はたしてそれは、決して明るい未来を語ったものではありません。自分達も傘下──彼ら
に支配されていれば、ああいう景色が日常となっていただろうという悪寒でした。
 帝のご判断は正しかった。そう思う一方、はたして自分達はここに来てよかったのだろう
かという戸惑いもありました。ですが彼らには伝える義務があります。対等でなければ、き
っと彼らは奪ってくるだろう。もっと違う「戦い」方で生き残るべきだと。
 そしてそれは、帝への奏上よりも一足早く、使節の面々も予想だにしない形で実現してい
ました。
 珍しかったのです。ココノエは長く半ば閉じたような文化の中で暮らしてきたため、使節
が贈り物として海の向こうに持ち込んだその工芸品・食は、彼らの猛烈な新鮮味と驚きをも
って迎えられました。
 ──こんな鮮やかな色使い、見た事がない……。
 ──こんな美味い食べ物、食った事がない……。
 ──こんな柔和な民族、出会った事がない……。
 少なくとも現地土着の民らと使節団、ココノエの民らはあちこちで友好を築く事ができま
した。互いの知識と技術、文物を交換し、固い握手を握ったのでした。
 外で出て良かった。使節団はそう思いました。折につけ、海の向こうが何たるかを瓦版で
読んだ人々は、異国の可能性に思いを馳せました。
 ……ですが彼らはまだ気付いていなかったのです。友好とは、別の誰かとそうではない状
態でもあるのだと。

 詰まる所、嫉妬と焦りだったと考えられます。世界中に進出していた国々──北海連合は
少しずつ、ココノエに対する態度を硬化させていきました。
 自分達ではなく、ココノエの民に現地土着の民がよく商いをするようになったからです。
彼らの目的は自国から溢れた商品の新しい販路、新しい労働力や資源でした。それを期せず
して遥々交易にやって来るようになったココノエの民達に、大きく奪われている──そう感
じたからです。
 連中との取引を止めろ。彼らは命令しました。しかし土着の民らは言う事を聞きません。
高圧的で一方的な北海連合よりも、同じ目線で接してくれるココノエの民らの方がよっぽど
心通わせられる相手だったのですから。
 確かに言葉の壁、文化の壁はありました。ですが物事をじっくりと見つめ、且つそれらを
“恵み”として享受する風土を持つココノエの民らは、ゆっくり時間を掛けてその違いを乗
り越えていたのです。豊かに、幸せになる為には奪っては駄目だ。寧ろ一緒になって育てる
くらいの気長さでいなければ──それが一方で彼の者の友好となり、一方で彼の者の敵愾心
となったのはどうしようもない皮肉だったのですが。
『貴国への交易を年○○パーセント減額する』
 締め付けが始まりました。北海連合はあの手この手を回し、ココノエと取引する国々に圧
力を掛けていきました。それまで、使節を皮切りとする開国に転じて物流の多くを海外に頼
るようになっていた──自国にはない文物を当たり前として暮らす環境になっていたココノ
エにとって、それは大きな痛手でした。
 何がいけないのだ? 何度も高官達は抗議しました。
 しかし北海連合はにべもありません。代わりに更なる交易の停止を突きつけ、本来流れて
くる筈だったモノやヒト、カネが彼らの側へと流れていきます。それでもココノエと、と願
って取引しようとした者達は彼らによって容赦なく処刑されていきました。
『やはり奴らは畜生だった!』
『だからこそ、我らは対等になろうと努力してきたのだろう? ……しかし参った。今や海
外の文物が民らに与える恩恵は凄まじい。これらが完全に断たれてしまえば、この国はもう
立ち行かなくなってしまう』
『……そもそも、ココノエの文化を守り続けていれば』
『今更何を言うか。門戸を開かねば、とうに連合にこの国は潰されていたのだぞ!』
『それよりも貴様、帝の下された裁断に不服を申す気か!?』
 険悪な空気。御前会議は酷く荒れていました。礼服はかつてよりも少し“世界標準”に変
わり、されど御簾の向こうの帝は黙して唇を結んで黙っています。
『北海連合(むこう)は、何と言ってきている?』
『はっ。来月からは交易全般において、同連合が仲立ちに立つ、と……』
『露骨な妨害という訳か』
『完全にこの国を蚊帳の外に置くつもりだな』
『どうする? 仮に黙って言うことを聞いてもジリ貧だぞ?』
『寧ろそれが目的だろう。こちらが爆発するのを待って、潰しに掛かる気だ』
『……』
 届いた最後通牒(ぶんしょ)を訊ね、帝は再び黙り込みます。大臣達も酷く難しい顔をし
て次の言葉が出てきませんでした。詰み──所詮は彼らに対する、延命措置に過ぎなかった
のかもしれません。
『最後まで諦めてはいけない。交渉を続けるのだ。彼らとまともにぶつかっても、とてもで
はないが勝てない。勝った所で、あの大国群をどう治めろというのだ』

 しかし肝心のココノエの民達は、怒っていました。理不尽な要求を通しにかかる北海連合
に対し、天誅討つべしとの声が高まっていたのです。
 それは一方でココノエへ足を運び、或いは移り住んだ世界中の人々も少なからずでした。
ただ奪われるのではなく、共に歩む──その理想に感化され、救われた各地の土着の民達も
また、北海連合を憎むべき“敵”として認識して久しかったのです。
 政治的には何とか激突を回避しようとしました。しかし連合からの締め付けと、何より内
側の突き上げとが繰り返し、いつ噴火してもおかしくない状況でした。そしてある日、大規
模な暴動を北海連合が武力で鎮圧した事件を切欠に、遂にココノエは同連合への宣戦布告を
行わざるを得なくなったのです。
 後に北九戦役と呼ばれる大戦の始まりでした。当初は各地で同時多発的に起こった蜂起に
援けられて、ココノエ軍は北海連合の要衝を次々に落としていきましたが、やがて勢力を盛
り返した同連合の圧倒的物量に押し返されていったのです。
 三年半ほどの出来事でした。逆らう者はことごとく殺され、最新鋭の空飛ぶ兵器が猛威を
振るい、ココノエに与した旧国家らは次々に炎上、陥落していきました。そしてその炎は他
ならぬココノエ本国にも及び、遂に戦役はココノエの敗北という形で決着を迎えます。

『余の首を差し出す。だからこれ以上民には、決して……!』
 帝都に攻め入り、占領した北海連合は、宮廷にてそう頭を垂れる帝を前にしました。しか
し当時の司令官はこれを断りました。彼らにとっては意味のない事だったからです。
 総大将の首を獲る。それで全て終わるという文化は彼らにはありませんでした。降伏を認
める文書にサインをした、それで充分だったのです。勿論、このまま帝を──ココノエを支
える国王を根絶やしにする案もありました。ですが当時の軍上層部は寧ろ生かし、彼を傀儡
とする事でココノエの民らを効果的に治められるのでは? と考えました。かの大戦の遠因
を、彼らも彼らなりに見つめてはいたのです。
 故に、とにかく北海連合は帝を中心とするココノエの制度を根こそぎ破壊することに注力
しました。同時に帝がいたから戦いは起きた、お前達が悪いのだと人々に喧伝して……。

『そんな事はない! 帝の下で我々は生きてきた。戦った。負けることが多くを失うことで
あるのなら、今度こそ我々は負けないように強くなればいい!』
 はたして戦後、ココノエの民は大きく分けて二つの考え方に染まる者達に分かれました。
一つはかの大戦の肯定派、一つはかの大戦の否定派です。
『嗚呼そうだ! この国は昔から、帝を担いで権力者がやりたい放題してきたじゃないか。
戦わされた。負けることが多くを失うことであるのなら、もう二度と我々は戦わない!』
 北海連合に都合が良かったのは、言わずもがな後者です。
 喧伝戦略も兼ねて、連合は否定派の有力者達を戦後の自治政府の要職に取り立てていきま
した。半ば心が折れていたのです。この国、ココノエは、自分達が直接支配して汁を吸うに
は手間隙が掛かり過ぎる……。

『まだ帝、帝と言っているのか? この、悪の手先め!』
『手先はどっちだ! ココノエの魂を売り払った連合の狗め。お前達などココノエの民では
ない! この国から出てゆけ!』
 さて、その後ココノエという国はどうなったのか? 一言で言えばもうかつてのココノエ
ではなくなった、というのが大雑把な答えでしょう。否定派は自分達の「正しさ」に従わな
い者達を徹底的に排除しました。肯定派は帝とココノエの復権を信じ、その志を共有しない
「仲間」ならざる者達を徹底的に批判し続けました。……交わることがなかったのです。彼
らは一つの国に住めど、もう一つではありませんでした。帝も民に語りかける術を奪われて
沈黙していました。誰も、激情の中でこれを止めることはできませんでした。
『もういい! 我々は北海連合と共に生きる! ココノエは消滅する!』
『ふざけるな! ココノエは不滅だ! 我々が、ココノエを継承する!』
 決裂したのでした。否定派は世界の覇者、北海連合の傘下へと下り、その自治権だけを授
かって「東部自治領」の王とその側近達として再出発しました。肯定派はあくまでココノエ
の存続・復権に拘り、北海連合に大きくその領土を没収されながらも、自分達で「新生ココ
ノエ帝国」の建国を宣言しました。

 ……ですがその後、約百年ほどでこの二国は世界の地図から姿を消す事になります。
 東部自治領は親北海連合でない者達を見つけては逮捕し、投獄・処刑を繰り返しました。
自分達に与しない者達を消し続けました。そうしていって誰もいなくなったのです。命を失
い、或いは国外へ逃げ、同自治領はいち州として存続できなくなり、やがて北海連合の一部
として吸収──完全に消滅しました。
 新生ココノエ帝国は帝の末裔を新たな帝に迎え、再出発しようとしました。しかし元より
北海連合に睨まれ続けた環境、何よりも“ココノエ魂”に凝り固まった閉鎖性からやがて身
内同士の潰し合いが始まり、東部自治領の消滅から約二十五年ほど後、誰にも庇い立てされ
ずに崩壊──完全消滅しました。

 かくして王国はもうこの世にはありません。仮にまた生まれても、いずれ“自分達”では
ない者達を排除し続け、そこに居る者すら皆無とするだけでしょう。
 それでもここに付け加えるとすれば、かの北海連合もまた、ココノエの消滅から半世紀ほ
どの後、内部対立の激化によって崩壊──いくつもの国々に分裂・元鞘となり、再び争いの
時代に突入することになる……という歴史なのですが。
                                      (了)

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  1. 2016/08/21(日) 00:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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