日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブル〔11〕

 日が落ちて、今日も街に夜がやって来る。
 とある商店街だった。昼間あった明るさはなりを潜め、立ち並ぶ店先から漏れる照明や道
端にぽつぽつと立つ街灯がこれに代わっているが、正直心許ないのは否定できない。行き交
う人の数も明らかに少なく、漂う物寂しさに拍車を掛けている。
「……」
 そこに、一人の少女がいた。
 やや薄めの鹿射ち帽と黒縁の眼鏡、ベージュの薄手のコート。そして肩には大きめのショ
ルダーバッグを引っ掛けており、その手を彼女は随分と大事そうに、この鞄を庇うように隠
すようにして添えていた。
 はっきり言ってしまって、挙動不審である。
 彼女は先程から何度もきょろきょろと辺りを見渡し、あたかも他人の眼を気にしているよ
うだった。もしこの場に彼女の知人がいたならば「そんなんじゃ余計に目立つよ?」と苦笑
いを向けたに違いない。
 ──知人がいたならば。
 そう、彼女は他ならぬ海沙だった。どうやら普段はあまり着ない中性的なファッションに
身を包み、変装をしている心算のようだ。
 だがどれだけそんな努力をしても、こうもあくせく何度も周りを警戒しているようでは逆
効果というものだ。事実、既に行き交う人々の何人かは時折ちらっと彼女を見ると、不思議
そうな表情(かお)をしたまま立ち去っていく。
 日没後の、人気も疎らな小さな商店街。
 そんな時分に海沙が向かっていたのは、道端の一角に立っているポストだった。
 ガサゴソ。最後に改めて自分を見ている眼がないのを確認すると、彼女は鞄の中から大き
めの茶封筒を取り出した。
 暗くて見え辛いが……赤ペンで何処ぞやの宛先が書かれているようだ。そしてこれをえい
やと投函し、手元が空になって初めて、海沙はホッと深く静かに安堵の息をつく。
「──っ!?」
 しかしその時だったのである。海沙は直後、背後から何者かの視線を感じると慌てて後ろ
を振り返った。
 なのに誰もいない。見遣った先は街灯の光も届き切らない暗がりで、代わりに彼女の視界
をぽつ、ぽつとおよそ無関係な通行人らが通り過ぎていく。
 海沙はぼうっと立っていた。暫く目を瞬かせてゆっくりとこの方向に目を凝らし、しかし
やはり誰もそこにいるようには認められず、ごくりと喉を鳴らす。
 薄ら寒かった。確かに今、自分は誰かに見られていた。
 だが振り向いた瞬間にはその姿はなく。ただそんな自分を、時折疎らな通行人が怪訝な眼
を遣りながら通り過ぎていくだけだ。
「……。また?」
 ようやく、僅かにだが言葉が出た。
 海沙はぎゅっと、胸元に遣っていた鞄を一人握り締める。

 日の落ちた街の片隅で。
 ややもすれば気のせいかと忘れ去ってしまいそうな出来事だったが、少なくとも彼女にと
っては、得体の知れぬ恐怖を与えられるには充分だった。


 Episode-11.Emotion/結社M.M.T

「──誰かに監視されてる!?」
 昼休み。何時ものメンバーで何時もの中庭(ばしょ)で。
 この日も持ち寄ったお弁当を囲み、突いていた中、そう意を決して口を開いた海沙の相談
に思わず宙が驚きの声を漏らす。
「し~っ! そ、ソラちゃん。声おっきい……」
 顔を真っ赤にしながらこの親友の口を押さえる海沙。もごもご、ごめんと言いつつなすが
ままにされている当の宙。
「……」
 睦月も、急に何を改まってと聞いていたのだが、その内容にすっかり唖然として箸が止ま
ってしまっている。
「……それは確かなのか?」
「う、うん。一度や二度なら気のせいかもしれないけど、もうここ一週間くらいずっとこん
な調子だから。ふと気付いたら誰かに見られているような気がして、だけど振り返ってみて
も誰もいなくて……。私、不安で……」
 代わりに、皆人が全員を代表して話を進め始めていた。國子と復帰した宙、そして睦月も
誰からともなく互いにきゅっと円陣を組み、声量も抑えて気持ちひそひそ声になる。
「そっか……。ごめんね。そんな事になってたのに気付いてあげられなくて」
「他に被害はありませんか? 例えば少しずつ物を盗られている、というような」
「ううん。今はまだそういうのはないかなぁ。ただじ~っと見られている感じがして、気味
が悪くって……」
 睦月が力不足を謝り、國子がもう少し突っ込んだ話を訊く。
 だが、努めて苦々しいながらも微笑を繕おうとする海沙本人曰く、それ以外の実害は出て
いないらしい。いや、まだ出ていないと言うべきなのか。
 睦月は押し黙っていた。
 話を聞いて先ず脳裏を過ぎったのは、先日宙を狙ったクリスタル・アウターの一件だ。宙
の次は海沙に……。睦月は追い払おうとも追い払い切れないそんな懸念に圧迫され、つい顔
を顰めてしまっていた。
 ちらり。或いは、と思い、こっそり皆人(とも)の顔を見る。
 返って来たのは小さく横に振られた首。どうやら司令室(コンソール)の側で彼女に用心
をしてくれているという訳ではないらしい。或いはまだ越境種(アウター)であると断定す
るには早過ぎるという合図か。
「っていうか、それ、ストーカーじゃん」
 ずずいと。今度は宙がそう円陣の中の一同に迫るようにして言った。
 ストー……?! 他ならぬ海沙自身が叫びそうになり、ハッと自分の口を押さえていた。
睦月や國子がちらと肩越しに、中庭にいる他の生徒達を確認する。だが幸いにも、こうして
集まってお昼を食べているのは公然の事実のようになっていることもあり、多少視線は向け
られども話自体を聞かれてしまっている様子はない。
「……青野。この事、ご両親には?」
「話してないよ。皆が最初。何も分かってないし、やっぱり気のせいかもしれないのに心配
を掛けたくなかったから……」
「うーん。気持ちは分からなくもないけどさぁ。何かあってからじゃ遅いんだよ?」
「そうだよ。……というか、何で昨夜は出歩いてたの? ここ暫くは物騒な事件も続いてる
し、女の子一人でうろうろするのは危ないよ」
「う、うん。そう、だね……」
 だから皆人も、そして睦月も至って真面目に彼女からの相談に、不安に応えようとしてい
たのだ。……だけど何故だろう? いざ当日出歩いていた理由について訊ねた瞬間、妙に歯
切れが悪くなったような。
「その……。ちょっと用事があって……」
 睦月は越境種(アウター)という、街に潜む脅威を知っているからこその心配だった。
 だがその一方で海沙は、そんな幼馴染の抱えている秘密など知る由もなく、彼女は彼女で
また別の秘密を守るのに必死であったのだ。
 ──流石に言い出せない。恥ずかしい。
 自分がずっと小説を書いていること。それも男女の組み合わせに囚われぬ愛の形を描いた
ものであり、昨夜はちょうど小説賞への応募の為に原稿を投函しに出掛けていたことなど。
(うう、やっぱり言えないよぉ。むー君も皆も、こっちの気はなさそうだしなあ……)
 悶々と若干涙目。
 紅潮する頬とぐるぐると回る目の中に、大切な幼馴染達の心配そうな顔が映り込む。
「うーん。なら仕方ないけど」
「でも今度からは絶対、誰か一緒に来てくれる人を探すこと。あたしでも睦月でも、いっそ
皆っちの家からSPの一人や二人……」
「ささ、流石にそれはやり過ぎだってぇ!」
 わたわた。今度は別の意味で海沙が必死になっていた。気持ちはありがたいが、いくら何
でも大事過ぎる。
「……場合によっては、俺が部門に掛け合うが?」
『えっ』
「そうですね。皆人様の要請とあらば、我々も無碍にはできません」
「マジっすか……」
「あははは。そ、それはともかく。やっぱり一度警察に相談した方がいいんじゃないかな?
勿論、それまでにおじさんとおばさんにも」
 尤も、当の御曹司が糞真面目な表情(かお)で前向きに検討し始めていたのだが。
 國子もしれっと頷いている。友のピンチとあらば、ということなのか。睦月は苦笑いを零
しつつ話を軌道上に戻した。
 海沙の性格を考えれば、もし実現してしまえば緊張でカチコチになってしまうのは目に見
えている。それにそこまでして彼女の自由を、日常をこちらから壊してしまいたくはない。
「うーん……。でも……」
「どうだろうな。俺もこのまま警察に丸投げするのは賛成しない。この手の相談は彼らにと
っては有り余っている。本気で動いてくれるとは思えないな」
「……まぁ、そうかもしれないけど」
「それに現状、犯人の目撃もなければ実害も発生していません。彼らが腰を上げる可能性は
かなり低いかと」
 だが、尚も躊躇う海沙本人に便乗するように、皆人や國子がこれに異を唱えた。
 睦月はぐうの音も出ずに押し黙ってしまう。確かに彼女の言う通り、今はこのストーカー
らしき人物について、何一つはっきりとしたことが無いのだ。
「……よしっ、決めた!」
 しかしそんな時だったのである。それまで妙に黙り込んでいた宙が、不意にぎゅっと拳を
握り締めて叫んだ。何を……? その一言、増した声量に、睦月達は思わず一斉に彼女の顔
を見遣る。
「ならあたし達で捜そうよ、その犯人。あたしらの海沙に手を出そうだなんていい度胸して
るじゃない」
『えっ──?』
 唖然、驚愕、或いは嘆息。
 海沙本人を含めた睦月たち四人の声が綺麗に重なった。

「……」
 そんな一同のやり取りを、物陰から遠巻きに覗いている人影がある事に、この時五人は気
付くこともなく。

 作戦決行は、その日の放課後──夕暮れ時だった。出発前に一度ザァッと雨が降り出し、
中止しようかと話し合い始めていたが、幸い通り雨だったようで半刻もすれば止んだ。
 これから日没にかけて。
 海沙の話の通りだとすれば、件のストーカーが現れたのはこの時間帯である。
 睦月達五人は一旦帰宅して支度を整え、それぞれに街の一角へと現地集合していた。犯人
が何時・何処から監視を始めているか分からない以上、用心に越した事はないという皆人の
発案である。
「じゃあ海沙。打ち合わせ通りにね」
「うん。頑張る……!」
 連絡のやり取りは終始デバイスのチャット越しに。
 海沙を一人往来の中に残し、睦月と宙、皆人、國子の四人はそんな彼女をやや離れた位置
の物陰から見守っている。
 ──では実際問題、どうやって犯人の尻尾を掴むか?
 睦月らは話し合ったが、結局自分達が取れる現状唯一の手は海沙本人を泳がせてひたすら
相手の出現を待つあぶり出し──囮作戦くらいしかなかった。
 無論、睦月は最初この案に反対したが、リスキーであることは言い出しっぺの宙を始め皆
が分かり切っていた事だった。何より、当の海沙本人がやる気を出してしまった以上、睦月
にもう思い止まらせる術はなかった。……おそらくだが、自分から相談をして巻き込んでし
まった以上、多少のリスクは自身が負うべきだとでも考えたのだろう。
(海沙……)
 かくして、日暮れ時の繁華街にて囮作戦がスタートした。視界一杯に立ち並ぶ雑居ビルと
掲げられた看板の数々、眼下のアスファルト上を行き交う顔も知らない人達。
 暫く、海沙はふらり外出していますという体で以って辺りをうろついていた。本屋や雑貨
屋などの前を通り掛かると、それっぽく立ち止まってショーウインドウ越しに中を覗いたり
看板を見上げたりして散策を満喫しているよう装う。
 ……それでも、睦月達にはやはり、そんな彼女の表情(かお)は普段よりも三割増しくら
いにはおどおどしていて、不安そうに思えた。
 ごめんね、海沙──。
 それぞれが心の中で謝りながら、しかし彼女に近付いて来る怪しい人間を見逃すまいと、
一瞬たりともその後ろ姿から目を離さない。
「中々……出て来ないね」
「そりゃそうでしょうよ。向こうだって必死の筈だからね。根比べよ」
「警戒しているのかもしれませんね。日が落ちて、もっと人通りが減るのを待っている可能
性もあります」
「ああ。そもそも、今日中に出没する(でる)とは限らない」
「そりゃあ、そうだけど……」
 海沙が歩いていく度に、たたと小走りで距離を保ちつつ物陰に隠れていきながら。
 友人らの言葉に、睦月は湧き上がっては止まぬ不安を隠せなかった。かれこれ一時間以上
経ったが、未だ怪しい人影の一つも確認できない。
 宙は元より粘るつもりでいた。國子は木刀入りの布包みを片手に、じっと油断ない眼差し
と思考を遣っている。皆人も、彼女の推測に概ね賛成だった。
「ま、今日が駄目なら明日、明日が駄目なら明後日よ。あたし達がいるって分かって海沙に
手出ししなくなったら儲けものだし、少なくともこのまま何も手を打たなきゃ状況は変わっ
てくれないでしょ」
「うん……」
 睦月は思う。だが作戦はやっぱり止した方がいいんではないだろうか?
 ……いや。彼の脳裏にはずっと恐れが纏わり付いていた。そう勇ましく前向きに傍にいる
他ならぬ宙のことである。彼女は先日、クリスタル・アウターに狙われてあわや大惨事とな
る寸前であった。なのに今度は海沙が──もう一人の幼馴染までもが危険に晒されている。
相手からにしても、自分達からにしても、晒されるかもしれない……。それが酷く睦月の心
をざわめかせた。同時に、こんな理不尽で得体の知れない悪意に怒りすら覚える。
「……」
 ギリッ。睦月は半ば無意識に奥歯を噛み締めていた。遠巻きの海沙を見つめる眼には次第
に鬼気にも似た気配が籠もる。
 ただ皆人は、そんな親友(とも)の姿を密かに横目で見遣っていた。
 やはりお前は恐ろしい。だがそれが、いつしか弱点になるかもしれない……。懸念も推測
もその淡々とした表情の中に押し込め、噤む。
「う~ん……。こりゃあ一度場所を変えた方がいいかもねぇ」
 気付けば辺りは暗くなり始めていた。褪せた茜の空がどんどん闇色になる。
 すると宙は埒が明かないといったように呟き、手元のデバイスを操作し始めた。睦月達が
覗き込む画面には打ち込まれるメッセージ。言わずもがな、送信先は海沙だ。
『もう少し場所を変えてみよっか? 適当な所で路地に入ってみて。私達も追う』
『了解。お願いします』
 頷いたりして反応してしまったら勘付かれる。海沙は少しカチカチと俯き加減でデバイス
を操作した後、スィッと近くの路地を曲がっていった。睦月達も急いで後を追う。
(一歩入るだけでこんなに違うんだな……)
 日没が近付いていることもあり、景色は途端一変した。
 元より日当たりの良い場所ではないのだろう。歩を進めた路地裏は既に薄暗く、人気の無
さも相まって不気味に静まり返っていた。
 コツ、コツ。海沙の靴音だけが妙にはっきりと聞こえる。背中から見ても不安そうだ。
 明かりは辛うじてこの路地──ビル間を抜けた隣の通りから漏れ差している。早く抜けて
しまいたい。彼女の足が、気持ち早足になっているように見える。
「……?」
 だが、その時だったのだ。じっと先を行く海沙の背を眺めていた睦月は、ふと彼女と自分
達の間に何者かが現れたのを見つけたのだった。
 ピシャン。路地裏に残っていた僅かな水溜りが、誰もいない筈なのに跳ねた。
 ドクンッ。睦月の全身の神経が一瞬にして昂ぶる。誰かが、いる──。
「後ろだ、海沙!」
「──っ!?」
 故に刹那、咄嗟に叫んでいた。海沙が驚いた顔でこちらを振り返り、同時、確かに何者か
の動揺する呼吸がか弱く、肌に伝播した。
 拙い……! 真っ先に睦月が駆け出していた。更にそのすぐ後ろを國子が木刀を布包みか
ら解きながらこれに続く。
 いつの間に自分達の間に? だが考えている暇などなかった。
 海沙が危ない。ただそれだけで睦月の身体は予めインプットされたかのように動き、手を
伸ばす。……空を切った。しかし海沙へと伸ばした手は迫っていた何かを捉えることは出来
ず、代わりに次の瞬間、はたと足元に感じた衝撃につんのめって倒れ込んでいた。
「ふっ──!」
 そこへ國子の一閃が描かれた。見えない。だが、間違いなく何かが今ここにいる……。
 しかしその一撃も、次の瞬間には虚しく空を切るだけだった。
 一瞬にして収縮した全身と体感時間。海沙がへたっと、ようやくその場に尻餅をついた。
顔が酷く青褪めて腰が抜けてしまっている。その真前には転んだ睦月と、一閃した木刀をす
ぐさま構え直して辺りの気配を探っている國子の姿があった。「海沙!」「青野!」やや遅
れて宙と皆人も追いついて来る。
「大丈夫!? 何かされた? 怪我はない?」
「ううん、それは。でも、でも……怖かった……ッ!」
 駆けつけて抱き寄せてくる親友の顔。それを見てやっと海沙はこの囚われた恐怖心を実感
できたらしい。宙に抱きついてわんわんと泣き始める海沙。身体を起こし、辺りを見渡しな
がら彼女達を見つめて混乱している睦月。
 気配は──消えていた。國子が暫く殺気を漂わせて警戒していたが、ややあって構えを解
くと眉根を寄せたままで立ち尽くす。
「……まさか本当に“見えない犯人”だったとはな」
「うん。こんなの、普通じゃあり得ないよ」
 そっと近付いてくる皆人。ぼそっと、幼馴染達には聞こえないように声を潜めて呟きを返
す睦月。二人は國子とも一度顔を見合わせ、神妙な面持ちになる。
 つまりは、そういうことなのか……。
「……うん?」
 しかし更に次の瞬間だったのである。一体何処に……? そう何となく辺りを改めて見渡
し始めた睦月と皆人の目が、向かいの物陰からこちらを覗いている人影を認めたのだ。
「っ! あいつ──!」
「國子、天ヶ洲と青野を頼む!」
 咄嗟に二人は駆け出していた。対する物陰の相手も、そのさまにビクッと身体を震わせ、
逃げ出す。

「待てェェ~ッ!!」
「逃がすかっ!」
『さっきの見えない犯人、アウターの反応でした。間違いありません! という事は……』
 裏路地を抜け、隣の表通りを抜け、更に右へ左へ。
 睦月と皆人は逃すまいと必死になってこの覗き見をしていた人影を追った。ひい、ひい。
日没と半端なネオンではっきりとは見えないが、どうやら相手もあまり俊足という訳ではな
いらしい。
「どっ……せい! 捕まえた!」
「ひぃっ!?」
 故に暫くして、睦月はこの人物に追いつき、飛び掛った。数区画分先の路地裏で倒れ込み
もつれ合うようにして格闘した挙句、遂にこの犯人は睦月に仰向けになって手足を押さえら
れ、身動きが取れなくなってしまう。
「もう逃がさないぞ、ストーカー! よくも海沙を!」
「おい。落ち着け、睦月。そいつの顔……よく見てみろ」
「えっ?」
 だが興奮する睦月とは裏腹に、追いついて来た皆人は既に冷静に戻っていた。そう友に指
摘され、睦月はぱちくりと目を瞬いてから向き直り、自身が組み伏せた当の相手を見る。
「……大江君?」
 それは何も見も知らぬ人間ではなかったのだ。
 大江仁(おおえひとし)。ちょっと小太りでいわゆるオタクな、睦月達のクラスメートで
ある。故に睦月は戸惑っていた。酷く頭の中が混乱する。何故彼が、こんな事を……?
「いでで……。は、離してくれよぉ。ス、ストーカーじゃない。俺じゃない……」
「えっ?」
「だが大江。お前はさっき、俺達を見ていたろう? 何故あそこにいた?」
「そっ、それは……」
 とてもじゃないが荒事に長けているとは思えない。
 仁は横長の身体をじたばたとさせ、必死に無実を訴えようとしていた。しかし次の瞬間に
はじっと疑惑の眼で見下ろされる皆人に問い質され、言葉を濁してしまう。
「……その鞄、検めさせて貰うぞ」
 あっ。ちょっ──!? 仁が同意する暇もないまま、皆人は隣に落ちていた彼のリュック
を拾い上げた。手こそ離せど、睦月は彼にマウントを取ったままこれを見上げている。
「ほう? これは」
「リアナイザ、だね……」
 そしてガサゴソ。中を弄って出て来たのは……TA(テイムアタック)専用の拳銃型出力
装置、リアナイザだった。
 確定と言ってしまってもよかった。睦月と皆人は、互いにどちらからとでもなくじとっと
ゆっくりとこの容疑者を見下ろす。
「な、何だよ! リアナイザを持ってちゃ悪いのかよ!? 俺だってTAプレイヤーなんだ
から当たり前だろ!? 大体、お前ら──」
 だがそんな最中だった。はたと上着のポケットから着信音が鳴り、睦月がもぞもぞとデバ
イスを取り出す。
 宙だった。そう言えば陰山さんに任せっきりになってしまってたな……。急ぎ画面をタッ
プして通話に応じる。
『もしもし? 今どの辺? 犯人は?』
「あ、うん。何とか捕まえたよ。えっと、今は北園町の──ぐっ!?」
 しかしそれが気の緩みとなった。電話に集中し、近場の標識に視線を上げた隙を突いて、
直後仁が睦月のマウントから抜け出したのだ。
 わたわた。睦月も皆人も、電話の方に視線を向けてしまっていたため、反応が遅れた。仁
は覚束ないながらもそのまま地面を転がり、起き上がると、ひぃひぃッ! と情けない悲鳴
を上げながら逃げ去ってしまう。
『……睦月?』
「ご、ごめん! 逃げられちゃった。すぐに後を──」
「いや。もういい。誰かは確かめたんだ。それよりも一旦國子達と合流しよう。青野の事も
心配だしな」
「……そうだね」
 ぽかんとし、しかし再び聞こえてきた宙の声に我に返って睦月は立ち上がろうとする。だ
がそれを皆人は落ち着いた声で制した。海沙が心配──サァッと頭に上っていた熱が一気に
冷めていく心地がする。口惜しかったが、睦月はきゅっと唇を結んで頷いた。

「──」
 そんな、リアナイザを鞄に押し込みながら来た道を引き返していく二人を、近くのビルの
屋上から見下ろしている人影に、終ぞ彼らは気付かぬまま。


(これは……拙い事になった)
 翌日の学園。仁は一人トイレの個室の中で頭を抱えていた。言わずもがな、昨夜かち合っ
てしまった睦月達との一件である。
 はっきり言って、訳が分からない。だが少なくとも確かなのは、あれ以来ずっと彼らが自
分のことを疑いの眼で見ているという点であった。
 訳が分からない。だけど実際居た堪れなくて、こうして今朝から休み時間毎に教室を飛び
出し、彼らの視線から逃げ回ってしまっている。
(ちゃんと説明はしたいけど……)
 でも。でも、その為にはどうしても越えなければならないハードルがある。そしてそれを
カミングアウトする事は、オタク側の人間である自分にとっては酷く難しいのだ。
 ──M.M.T。
 それが現在、自分が代表を務めている秘密結社の名だ。
 正式名称『海沙さんマジ天使』──清楚可憐にして微笑が似合う大和撫子、今や絶滅した
と言ってもいい男子理想の女性像を体現した彼女の魅力に心奪われ、密かに愛でることを誓
い合った同志達の集まり。それが自分達だ。普段はとある同好会をカモフラージュとして活
動し、彼女の近況やその他サブカル全般についても熱く語り合ったりしている。
 ……ぶっちゃけてしまえば、要するに非モテの集まりだ。ファンクラブと言えば聞こえは
いいが、本人に了解を取った訳でもなければこんな自分達に好かれてもきっと気持ち悪がら
れるだけだろう。
 だけど……それでも自分は知っている。彼女が時々、こっそり本屋で新刊から過去の名作
まで、ライトノベルを買い求めていることを。もしかしたら自分達は、高嶺の花だとばかり
思っていた彼女と、実は同じ趣味で語らう事が出来るかもしれないと。
 ……でも明かすまい。悟られるべきではない。そういう場所で見かける時、彼女は決まっ
て変装をしてまで訪れているし、普段仲の良い天ヶ洲や佐原、三条とお付きの陰山などとは
そういった方面の話は殆どしている様子がない。おそらくこっち側の趣味については隠して
いるのだろう。まぁゲーマーの天ヶ洲辺りならば、親友でもあるし、そう露骨に拒否反応を
示されない気もするが……。
 ともかくである。オタクはオタク、モテ男はモテ男なのだ。
 もしかしたら、という淡い期待は始めから持っておかない方がいい。知らない方がいい。
無駄に浮かれて近付いて、玉砕したら多分二度と立ち直れない。そもそも自分達M.M.T
は彼女を「密かに」愛でることを誓い合った仲間であって、もし抜け駆けなんてしようもの
ならその結束はいとも容易く崩れ去ってしまうだろう。
(……結束、か)
 しかしそう自分で言っておいて可笑しくなる。現行のリーダーでありながら、自分は今現
在進行形でその仲間の一人を疑っているのだから。

 発端は少し前の出来事だ。その日もいつものように部室に集まり、海沙さんやサブカル談
義で盛り上がっていた中、自分達の前に思わぬお宝がもたさらされた。
 それは海沙さんの生写真だった。しかもこれまでに流通していたものとは明らかに表情も
アングルも異なる、ありのままの海沙さんの姿。
 自分達は興奮した。まさかこんなアップのショットが撮れるなんて……。
 当初自分は、仲間達はこの写真を持ってきた主を尊敬の眼差しで見ていた。
 名は八代直也。比較的後から入ってきた部類だが、その行動力と情熱の強さは皆も一目を
置いている。
 ……だがそうやって熱に浮かされている中で、自分はふと疑問に思ってしまったのだ。

“そもそもこいつ、一体どうやってこんな画を撮ったんだろう──?”

 そうだ。あまりにも出来過ぎではないか?
 こんな至近距離の画、普通にやっていちゃあ先ず撮れない。それこそ間近まで隠れ続けな
ければ、犯罪紛いの盗撮でもしなければ不可能だ。しかし自分達はM.M.T。彼女のこと
は全力で愛でるが、彼女を不快にさせたり害を及ぼしてまでその欲求を満たす事はしない。
してはいけない。
 ……だから、居ても立ってもいられなかったんだ。
 昨日、偶然渡り廊下から見たのだ。海沙さんが「ストーカー」の相談を、佐原や三条達に
していたのを。慌てて近くの物陰に隠れて、必死になって聞き耳を立てて、その不安のほど
を知ってしまったのだ。
 まさか……。そう思った。
 ストーカー? 八代が? それまで漠然と抱いていた疑問が、その瞬間強くて明確な不安
と恐れに変わっていた。身内を疑って、寒気が走った。
 だから佐原達が犯人を誘き出そうと話し合い始めたのを聞いて、自分もこうしてはいられ
ないと思った。確かめなくてはならないと思ったのだ。
 犯人は誰なのか? もしそうなら、俺はリーダーとしてけじめをつけなきゃいけない。
 せめて先に確かめたかった。
 だからあの時俺は、せめて自分なりに犯行の瞬間を押さえようと──。

 皆人に呼び出され、睦月達は校舎裏の一角に集まっていた。
 睦月と海沙、宙が指定された場所までやって来ると、既にそこでは皆人と國子が軽く打ち
合わせをしているようだった。二人はこちらに気付いて振り返ると、では早速といった風に
話し始める。
「大江仁についてある程度情報が揃いました。私達のクラスメート、というのは皆さんとう
にご存知ですね? それといわゆるオタクと呼ばれる趣味嗜好の持ち主であることも」
「うん。何度かお友達と一緒に盛り上がってるのを見た事があるよ」
「それで陰山さん。何か、今回の事件に関係しそうなことってあったんですか?」
「……はい。直接的ではありませんが、彼は現在『電脳文化研究会』という同好会の会長を
務めているようです。放課後その部室に出向けば、彼との接触も容易になるかと」
「電脳文化……? 聞いた事ないなあ」
「それだけマイナーな部という事さ。そもそも小さなものまで含めれば、学園(うち)の文
化部全てを把握している生徒の方が珍しい」
 むー? 宙が記憶にもないと言わんばかりについっと小首を傾げ、皆人が淡々と國子の発
言を繋いだ。はい。國子は言い、更に調査報告を続ける。
「本題はここからです。調べてみるにどうやらこの同好会は、裏の顔があるようでして」
「裏の顔?」
「ええ……」
 首肯。すると國子は、珍しくそこまで口にすると言葉を濁した。
 睦月達はきょとんとする。いつも凛としている彼女を淀ませるなんて。……いや、表情か
らしてこれはひょっとして“苦笑い”なのか……?
「……陰山さん?」
「コホン。失礼。彼らの裏の顔とは、M.M.Tと名乗るグループです」
「? えむえむてぃー?」
「はい。その、正式名称を……『海沙さんマジ天使』と言います」
『……はい?』
 睦月と宙、そして海沙の声が殆どぴったり同時に重なった。特に当の海沙はたっぷり数秒
のタイムラグを経てから、ぼふんっと顔を真っ赤にする。
「な、なななっ……?!」
「え? 何それ?」
「掻い摘んで言えば、青野さんのファンクラブ、ですね」
「あ~、なるほどねえ。海沙は女の子女の子してるから……」
「ふぇっ!? えっ? えええーっ?!」
「落ち着け、青野。……一応訊くが、この事は?」
「し、知らないよぉ。初耳だよぉ~……」
「そうか。つまり非公式のファンクラブという訳か」
 わたわたと顔を真っ赤にして慌てふためく海沙本人を余所に、國子や皆人は妙に冷静にこ
れを見ていた。宙もファンクラブと聞き、何故か我が事のように嬉しそうに笑いながら納得
してしまっている。
「ですので、状況証拠としては申し分ありません。青野さんのファンクラブの会長であり、
昨日あの場にいた。今回のストーカーの正体、彼とみるのが自然かと」
「うう……」
「そっか。まさかこんな近くにいたなんてね」
「確かにねー。大体、あれからずっと逃げ回ってる時点で真っ黒だけどさ?」
「大方思慕を拗らせて先日のような凶行に走ったのだろう。取り返しのつかない事になる前
でよかった」
 つまり、そういう事なのだろう。ぷるぷると震える海沙の背中を擦ってやりながら、宙が
大きく安堵やある種嘆きの息をついている。皆人も、親しい友に迫る脅威の正体が判明する
に至り、淡々としている普段に比べて気持ちふっと優しさのようなものが滲んでいるかのよ
うに見えた。再び口元を引き締め、一度小さく息をつくと、言う。
「國子、二人を頼む。これから俺と睦月で大江と話してくる。もう二度とこんな事がないよ
うにな」
「はい。お気をつけて」
「行くぞ、睦月」「うん」
「むー……」
「? どうしたの、宙?」
「いやね? 海沙がカワイイのは当たり前だよ? でも何であたしのファンクラブは無いん
だろうな~って」
『……』
 知らんがな。
 睦月達は思わずそう、心の中で苦笑(わら)う。

「──ここか」
 そうして睦月と皆人は二人して、文化部棟の一角にある電脳文化研究会の部室前へとやっ
て来た。廊下の中途半端な位置。部名の小さなプレート以外特にこれといった装飾も見当た
らず、なるほど予め存在を知っていなければ見過ごしてしまう同好会の一つだろう。
「失礼する」
 扉を見上げ、少し躊躇している横で、スッと皆人がこれをノックして中に入って行った。
中には数人の部員らしきオタクと──彼らと話していた仁がいた。乗り込んできたこちらを
見て、あからさまにギョッとしている。
「なっ、何だお前らは!?」
「侵犯だぞ! こ、ここは俺達の神聖なる──」
「大江会長に話がある。少し借りていくぞ。来てくれるな?」
「……分かったよ」
 続いてにわかにざわつき、警戒感を露わにする部員達。だが彼らにまで用はない。少なく
とも現状の段階で巻き込む訳にはいかない。やはり睦月が気後れする中、皆人はそのまま仁
の前まで進み寄ると言い、本人からも了承を得てすぐに部屋の外へと出て行ってしまう。
「……何の用だよ。わざわざこんな所まで押しかけて来て」
「それはお前が一番よく分かっている筈だがな。いい加減答えて貰うぞ。何故昨日、あの場
所にいた? 何故俺達に見つかった瞬間、逃げた?」
 一旦部室棟端の螺旋階段を降り、途中の踊り場で本題に入った。仁はあくまで不用意に口
を開こうとはしなかったが、皆人と睦月に前後を確保された上では逃げ出す術もない。
 それは……。彼はやはり言葉を濁した。視線を逸らし、苦々しく何かとても迷っているよ
うに見える。
「大江君。君はアウターの召喚主なの?」
「アウター? 何だそれ?」
「とぼけるな。お前が昨日、青野にけしかけた者の事だ。あの時リアナイザだって持ってい
た。ストーカーの正体、お前なんじゃないのか?」
「ち、違う! 俺じゃない! 大体昨日も言ったろ、俺もTAをやってるんだからリアナイ
ザを持っててもおかしくはないって! つーか返せよ、俺のリアナイザ。一体何なんだよ?
いきなり、訳の分かんない事を……」
 自分達にだけになって──海沙と宙がいない状況になって、意を決して睦月が核心を突い
てみた。彼女らに自分達の戦いを知られる訳にはいかない。
 だが……対する仁は、ぶんぶんと首を振って否定してきた。知らない俺じゃないの一点張
りだった。そんなあくまで“抵抗”する態度に、今度は皆人からの更なる追及が飛ぶ。
「今日は持って来ていない。それより話は聞いているぞ? 青野に許可もなく彼女のファン
クラブをやっているそうだな」
「っ!?」
「ストーカーなど止せ。彼女を怖がらせてどうする」
「……」
 仁が言葉を詰まらせる。皆人はこれで彼がこの一件から手を引いてくればベストだと考え
ていた。海沙という睦月(しんゆう)の琴線に関わる戦い──彼を修羅の如くさせない為な
らば直接の対決は避けたかったし、何より彼のリアナイザは今、司令室(コンソール)に預
けて分析中だ。これ以上、新たな襲撃は起こらない筈だった。
「……んな」
『?』
「ざけんな! いい加減にしろ! 俺じゃないって言ってんだろうが! なのにそうやって
何かあったら全部オタク(おれたち)の所為にしやがる……。リア充(てめぇら)はいっつ
もそうだ!」
「……大江君?」
「大体! 佐原、てめぇだ!」
 だが返ってきたのは──予想以上の激情だった。一度は沈黙してしまったと思われた仁が
くわっと突然大声でどなり出し、次の瞬間には思わず困惑する睦月に振り向き、胸倉を掴ん
できてその出所不明の憎悪を向け始める。
「てめぇだよ。あんないい娘(こ)を二人も侍らせておいて、お前は何やってんだよ!」
「な、何を……」
「守れよ! 彼女は──海沙さんは、あんたの……ッ!!」
 ズン。まるで至近距離から心臓に銃口を当てられたような感覚だった。睦月の表情がぐら
ぐらと揺らぐ。しかしそんな実力行使を、今度は皆人がビシリと間に割って入って振り解き
ながら睨み返す。
「分かってる。その為に調べてるんだ」
 暫くの間、彼と仁はじっと睨み合っていた。けほけほと小さく咳を零しつつ、睦月は痛み
と混乱で掻き回された頭で必死にこの状況を把握しようとする。
「……ちっ」
 そして、先に退いたのは仁だった。小さく舌打ちし、苛立ちを抑え切れぬまま睦月を撥ね
除けると踵を返し、ずんずんと螺旋階段の上へと戻って行ってしまう。
 ぼうっと、睦月はそんな彼の立ち去った方向を眺めていた。皆人もようやく頭が冷えてき
たようで、やや逸らしめの視線でそっと胸元のタイを締め直しつつ、じっと何やら考え事を
している。
「皆人……」
「……。一旦戻ろう。すまない、失敗した」

 そうして二人もまた螺旋階段を降り、教室棟へと戻っていく。
 仁もまた、来た道を戻って部室に帰ろうとしていた。
 ……やってしまった。あいつらの態度が犯人だと決め付けてかかっていたからとはいえ、
これでは益々自分が怪しまれてしまうではないか。
 ガシガシ。ばさついた髪を掻きながら思い悩む。それに仲間達にもどう説明すればいい?
普通なら決して自分達の所になど来ないリア充(あいつら)のことを、何と言って誤魔化せ
ばいい?
「──」
 ちょうど、そんな時だった。そうしてふと視線を前に向けたその時、物陰から一人の男子
がこちらを見ているのが分かったからだ。
 八代だった。目を瞬き、しかし仁は思う。
 ちょうど良かった。せめて事の真偽だけは、それとなく探りを入れておこう。
「何だ、聞いてたのか。悪ぃな。こっちでちょっとトラぶっただけだ。気にしないでくれ」
「……」
 しかし八代は黙っている。まぁいきなり言われても返事に困るよなと仁は思った。そして
努めて苦笑いを繕うと、彼は遂に問い掛ける。
「まぁちょうど良かった。八代、実はお前に訊いておきたい事があるんだけどさ──」

『……』
 部室棟を降りてから、二人はずっと黙っていた。言わずもがな仁との決裂である。
 皆人は柄にもなく解決を急いたことを悔い、次へと思考を巡らせていた。
 睦月はそんな親友(とも)の取った態度にまさかと思い、故に下手に慰めもできない。
「もう一度、情報を整理しなければならないな」
 だが先に口を開いたのは、こちらの視線に気付いてあくまで冷静に振る舞う皆人だった。
先ずは國子達と合流し、事の顛末を伝える必要があるだろう。
「昨日の犯人だが、お前や國子が捉えようとも触れられなかったんだよな?」
「うん。多分あれは、僕は足でも引っ掛けられたんだと思うけど……陰山さんの木刀は間違
いなくあいつのいた場所を打ってた筈だよ。でも手応えはなかったって言ってた。直前でか
わされたんだろうって本人は言ってたけど……」
「ああ。あれで確信した。今回の犯人は姿を消す能力を持つアウターである可能性が高い」
「姿を……消す?」
「國子の朧丸やお前のカメレオン・コンシェルと同系統の能力ということだ。もしそうだと
仮定すれば、青野への被害を含め、これまでの全てに説明がつく」
 ごくり。睦月は静かに息を呑んだ。確かにそれなら海沙の訴える見えない何者かの正体も
納得がいく。それでも内心は複雑だった。別の個体だとはいえ、自分達が持っているものと
同じような能力で誰かを──よりにもよって幼馴染を危険な目に遭わせられるとなると。
「今、香月博士達に大江から没収したリアナイザを調べて貰っている。もしあれが改造品で
あれば奴が召喚主(クロ)であるのは確定するが……」
「でも、本人は違うって言ってたよね」
「……ああ。そこが問題なんだ。俺のミスとはいえ、あそこまで逆上されるとは思わなかっ
たしな」
 言葉を挟まれ、再び皆人が閉口する。
 よほど先刻の決裂(しっぱい)がショックだったらしい。何分普段が淡々としていて、身
分が身分だけに横柄だと勘違いされ易いが、今この親友(とも)は深く反省している筈だと
睦月は思う。

『守れよ! 彼女は──海沙さんは、あんたの……ッ!!』

 脳裏に蘇る仁の言葉。後半はその衝撃と途中で皆人が割って入ったことで結局はっきりせ
ずじまいだったが、睦月にとっても彼との決裂は少なからぬダメージだった。
 本当に、彼が今回の犯人なのだろうか?
 だったらあんな、彼女を思いやるかのような言葉を叫ぶ筈が──。
「うわっ……!?」
「──ッ!?」
 だがちょうどそんな時だったのである。校舎裏を並んで歩いていた二人のすぐ前に、突然
何かが激しく叩き付けられたのだった。
 寸前で風を切る音に意識を揺り戻され、回避する。
 地面にはジュゥゥと蒸気を上げながら、まるで鞭か何かで抉られたような痕が残る。
「な、何……?」
『アウターです! この反応……昨日の見えない奴と同じですよ!』
「……どういう事だ。リアナイザは取り上げた筈だぞ」
 慌てて身構える二人。しかし周りにそれらしい敵影はない。
 パンドラが制服のポケットに忍ばせたデバイスの中から叫んでいた。皆人が愕然とした様
子で呟いている。……本当に、大江じゃないのか? 冷静沈着な親友(とも)に、確かな戸
惑いが浮かぶ。
「応戦するよ! 皆人、今回は文句ないよね?」
 一方で睦月は即座に動き出していた。以前の、宙とクリスタル・アウターの一件を思い出
していたからだ。仕方ない──。コクッと頷く皆人をサッと片手で制して後ろに逃がし、睦
月は懐から取り出したEXリアナイザにデバイスをセットする。
『TRACE』『READY』
「変身!」
『OPERATE THE PANDORA』
 高く銃口を掲げた彼を中心として、白い光球が空に撃ち上がる。同時にぐるりとスキャン
するように通り過ぎていくデジタル記号の輪は次々とこの見えない攻撃を弾き返し、主たる
睦月を守る。
 降り立った光球が睦月を包み、彼を白亜のパワードスーツ姿に変えた。対アウター装甲、
通称・守護騎士(ヴァンガード)。EXリアナイザをぎゅっと握り締め、睦月は未だ姿の見
えないこの敵を睨み上げる。
『攻撃、来ます! 十一時の方向!』
 再び攻撃が来る。僅かに風を切る音だけが予兆だった。パンドラの熱源感知に助けられな
がら、睦月は四度・五度・六度、これをナックルモードに変えた武装で防ぎ、叩き落した。
その度に周りの地面は抉れ、やはり鞭を叩き付けたかのような痕跡が付く。
『──ッ! ──!?』
「睦月!」
『マスター、これでは』
「うん。埒が明かないね。だったら……」
 目に見えない敵が驚いているような気配がした。皆人が、パンドラが呼び掛けてくる。
 睦月は頷きつつ、既にホログラム画面を操作していた。
 ブルーカテゴリ。水の力──感応能力に特化したコンシェル群である。
『ELEMENT』
『DRAINAGE THE TUNNY』
 真横に撃った水色の光球が、旋回しながら睦月の左手に吸い込まれていった。そしてその
手に力が滾ったのを確認するようにぐぐっと拳を握り締めた次の瞬間、睦月はサッとこの掌
を開き、飛び出した大量の水を辺り一帯にぐるりとぶちまけていく。
「タニー・コンシェル……? そうか、その手があったか」
 当然この場一帯は水浸しになる。事実校舎裏や倉庫の壁は放水で濡れ、ぴしゃぴしゃと雫
を滴らせてゆく。
『──ッ!? ッ……?!』
 だがそれが目的だったのだ。姿が見えないのなら、見えるようにすればいい。
 はたしてそれまで居場所も分からない敵の姿がそこにあった。放水を浴び、自らもずぶ濡
れになったその身体が、当初何もなかった空間の中ではっきりと半透明な凹凸を露わにして
いる。
『おお……』
「よし、見えた!」
「そこだ! 撃て、クルーエル・ブルー!」
 正体が露見して慌てる敵、アウター。その隙を突き、続いて皆人が懐から取り出した調律
リアナイザで自身のコンシェル──クルーエル・ブルーを召喚する。
 藍のメタリックブルーで統一された甲兵のような姿。構えたその手には鋭い小剣が一本。
 顕現して直後、クルーエル・ブルーはこの握った得物を大きく振りかぶって突き出し、そ
の刃を猛烈な勢いで射出させた。
 伸縮自在の刃。その特性を持った一撃は、寸分違わずこの水濡れのアウターの腹に突き刺
さり、背後の壁へと激しく叩き付ける。
『があっ!? いっ、痛ェェェッ!! 痛い痛い痛い痛いィィーッ!!』
 その衝撃で、姿を消す能力が解除されたようだ。
 はたしてそれはアウターだった。くすんだ緑色とギョロついた眼、おそらく先程の攻撃の
正体と思われる長い舌。
 差し詰め、カメレオン・アウターといった所か。
 能力も同系統であれば、その姿のモチーフも同じである。何とも厭な一致であった。
「……? 何か随分と人間臭いな」
「なるほど。そういう事か。睦月、おそらくこいつは今“同期”で動かされてる。召喚主が
リンクした痛覚で悶えているんだろう」
「ああ……」
 ヒュン。伸ばした刃を一旦元に戻し、クルーエル・ブルーと皆人が見下ろすように並んで
言った。対して件のカメレオンは突き刺された腹を抱えてじたばたと地面を転がっている。
 うつ伏せにになりながら、それでもくねくね、じわじわと逃げようとしていた。睦月は嘆
息をつき、再びホログラム画面を操作しながら新たな武装を召喚する。
『ARMS』
『WATER THE OCTOPUS』
 左腕に蛸の吸盤を思わせる手甲が嵌められ、そこから幾本もの水の触手がカメレオンを捕
らえて縛り上げた。ぐえっ!? 逃げようとした彼を問答無用で引き寄せて、ぐいぐいと睦
月は力を込める。
「もう逃がさないよ。……でも皆人。実際こうやってまた犯人が──アウターが出て来たっ
てことは」
「……ああ。どうやら犯人は別にいるようだ。或いは、俺が取り上げたリアナイザがフェイ
クだったか」
 渋い表情(かお)。皆人は認めざるを得なかった。
 実行犯のアウターとその召喚主は、今同期状態で目の前にいる。
 やはり、もしかしなくても自分達は、とんでもない勘違いを──。
「うおっ!?」
 だがその直後だった。それまでオクトパス・コンシェルの水の鞭に捕らわれていたカメレ
オンが、突然姿を消してしまったのである。
 睦月は抵抗する力を失ってつんのめりそうになった。ぬるりと滴る解かれた鞭だけが、虚
しく地面に零れ落ちている。
「逃げられた……? パンドラ、奴は!?」
『っ、駄目です。反応、ロストしました。此処にはもう居ません』
「同期を切った上で召喚を解除したか。抜かったな。あれだけ悶えていてもそれくらいの判
断能力はあったか……」
 パンドラが答えてホログラムの中でふるふると首を横に振り、皆人もふむと口元に手を当
てながら小さく舌打ちをする。口惜しそうな表情を漏らして自身のコンシェルの召喚を解除
し、調律リアナイザを懐にしまい込んだ。
「ああ、もしもし? 俺だ」
「……」
 近付いて来ながらデバイスを取り出し、皆人は電話を掛け始めた。話しぶりからしておそ
らく司令室(コンソール)だろう。睦月も変身を解除し、生身の制服姿に戻った。にわかに
湧き上がっていた緊張感も文字通り空振りした事でふいっと抜けてしまい、ただ辺りにはず
ぶ濡れの壁面と、カメレオンが残した地面の殴打痕が残っているだけである。
「状況が変わった。香月博士に代わってくれ」


『詳しく調べてみたけど、大江君が所持していたリアナイザは正規品よ。間違いないわ』
 そして更に日没後、司令室(コンソール)にて対策チームの皆が集まった中で。
 香月はデスクの上に件のリアナイザを置き、研究部門の代表としてそう結論を述べた。睦
月はただ言葉にならず、そっと隣にいる筈の親友(みなと)を見た。……ただじっと目を細
めて、何度も細かく咀嚼するように聞いていたように思う。
 改造リアナイザではない。つまり仁は犯人ではなかったという事だ。
『……ひどいこと、しちゃったね』
『ああ。俺のミスだ。すぐにでも口封じしない(てをうたない)とな』
 だから一見して変わらず淡々と呟き、思案していた彼に、睦月はどうにも居た堪れない感
じを抱く。
 ぼんやりとで証拠もないが、もしかしてと思っていた。自分が海沙達を大切に思っている
のと同じくらい、彼も自分たち仲間を大切に思ってくれているのだろうかと。その思いが、
一度は宙が狙われたことも相まって、この冷静沈着な司令官を急かしたのだろうかと。
 ごめん、皆人……。
 何故だろう。だが睦月は心の中でそう謝らずにはいられなかった。同じ気持ち、仲間意識
や絆を感じてくれていることが嬉しい一方で、事実今回のように彼自身や他の誰かを傷付け
る原動力になってしまったのであれば、それはそんな気持ちをいつの間にか強いてしまった
自分にも非があるのではないかと思ったのだ。
 ……僕だけでいい。
 多分これは凄く我が侭な願いなんだとは解っている。でも、もし君がその所為で正気を失
ってしまうのなら、この想いは自分だけが抱いて背負っていけばいいんだと思った。
『ですが、そうなると一体召喚主は誰なのでしょう?』
『うーん……。一応パンドラとクルーエル・ブルーのログから声は拾ったがなぁ』
『流石に声だけではなぁ』
『しかし仮に大江仁がシロだとしても、昨夜司令達の前に姿を見せた説明がつきませんよ?
ただの偶然にしては出来過ぎているように思いますが』
『実際、司令達を見た瞬間に逃げてますしねぇ……』
 ざわざわ。國子やリアナイザ隊、職員達が互いに顔を見合わせて難しい顔をしていた。確
かに目の前の代物が仁の容疑を限りなく晴らしているにせよ、自分達が解くべき謎はむしろ
増えてしまったのだから。
『……とにかく。俺達は明日もう一度、大江に会ってみようと思う』
 それでも皆人は言葉にした。ちらと睦月を見て、その首肯も取りつける。
『そうだね。どちらにせよこのままじゃいけないよ。会って誤解を解いて、謝らなくちゃ』

(──とは言ったものの……)
 夜が更けていく。司令室(コンソール)での全体会議を終えた睦月は、いつものように地
下迷路から地上に出、一人自宅に続く夜道を歩いていた。
 方針は決まった。尤もそれは作戦というよりは、通すべき筋と言うべきだけれど。
 しかし苦境である事には変わりない。おそらくアウターと無関係と判った仁をどのように
誤魔化すか。いや、それ以前にまともに話を聞いてくれるにはどうすればいいかを考えなけ
ればならないだろう。
 深く大きくため息をつき、そっと胸元──懐にしまったEXリアナイザに触れる。
 今回の敵はカメレオンをモチーフにした、姿を見えなくする能力のアウターだ。皆人もあ
の時同じようなことを言っていたが、同じ系統の力でも使い方次第では犯罪の片棒を担ぐ事
だって不可能じゃない。
(……僕は、本当に正しくこの力を使えているんだろうか……?)
 正義の味方? ストーカー?
 睦月は頭の中がぼんやりぐるぐるとして、分からなくなる。

(──大江が犯人じゃない? だったら誰が海沙を付け狙ってるのよ……?)
 時を前後して、宙は風呂上りのパジャマ姿でベッドに転がり込み、むすっとした表情でう
つ伏せの身体を預けていた。
 放課後、皆人からあった連絡。
 何でも問い質しに行った仁とは喧嘩別れに終わってしまい、更によくよく調べてみると彼
が犯人ではないらしいというのだ。そもそも海沙の背後から迫っていたのにその前方でこち
らを見ていた矛盾とか、色々小難しい事を説明されたが……大事なのはストーカーに怯える
親友をどう助けるかである。その意味では、事件は大して前に進んでいないのではないか。
「む~……」
 悶々。自分の無力さと、浅薄さを思い知る。
 何てざまだい。大見得を切って囮作戦までやったのに、結局自分は親友にトラウマをまた
一つ植えつけただけではないか。……最悪だ。まぁあの子の事だから、今頃きっと自分が相
談を持ちかけた事自体を悔やんでめそめそしているのだろうけど、それを含めてあの子を苦
しめてしまった自分が情けない。
(睦月。あんたはどう思う? っていうか、こんな時に何処ほっつき歩いてんのよ……)
 ごろごろとベッドの上を行ったり来たり。
 宙の部屋からは、明かりが一切点いていない佐原家が見える。

(──はあ。どうしよう。私のせいだ。私のせいで皆に迷惑を掛けちゃった……)
 その一方で案の定、海沙は一人自室でしょんぼりとしていた。
 くてんと机に突っ伏して後悔また後悔。彼女にとって心に圧し掛かり、責め立てるのは、
自分がストーカーの恐怖に曝されたことよりも、何より大切な仲間達をこの一件に巻き込ん
でしまったという点であった。
 睦月からの電話では、容疑者として挙がったクラスメートの大江君とは上手く話が出来な
かったらしい。……そりゃそうだ。よくよく考えてみれば、いきなりやって来てお前あの子
のストーカーだな? などと言われて感情的にならない方がおかしい。加えてあの時の状況
から、彼が自分を背後から襲うのは不可能だったのではないかというのだ。確かに彼を二人
が見つけた時、ちょうど彼は自分達の前方遠くに立っていたが。
(……M.M.T、かぁ)
 それにしてもである。まさか自分の(非公式)ファンクラブが存在しているなんて思いも
しなかった。ソラちゃんは在っても不思議ではないとは苦笑(わら)っていたけれど、普通
に考えて恥ずかしいのなんのって。……彼らの中にいるのだろうか? 一先ず大江君が犯人
じゃないと判ったものの、その中に。
(気持ちはありがたいけど、私は……)
 と、心の中で言いかけてまた一人ぼんっと顔が赤くなる。
 やだ。私ったら何を。こ、心に決めてるなんて、そんな……。
「……」
 ぺたん。火照った頬を改めて冷やっこい机の表面に押し当てる。
 ファンクラブ。
 その、むー君は、私を──私達を、そういう風に見てくれているのかな……??

 夜が更けていく。不安と不確定を含んだ時間が過ぎていく。
 だが睦月達は気付く事はなかった。
 そんな自分たち三家を、じっと物陰から観察している人影があることを。
「──」
 静かに夜闇に溶ける黒いコート。
 それは油断のない刑事(デカ)の眼を光らせる、退院した筧と由良の姿だった。

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  1. 2016/01/20(水) 18:00:00|
  2. サハラ・セレクタブル
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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