日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅵ〔69〕

 ──志士十二聖(ししじゅうにせい)。
 およそ千年前、世界を席巻していた大帝国ゴルガニアに対し、果敢にも反旗を翻した十二
人の英傑達の総称である。
 即ち、帝国将校の一人でありながら、圧政に苦しむ民を憂い、解放軍を立ち上げた十二聖
の長“英雄”ハルヴェート。その腹心であった“大戦士”ベオグと“忠騎士”レイア。
 正義感に溢れた若き竜族(ドラグネス)の青年“勇者”ヨーハンと、その終生の友であり
解放軍の頭脳として才覚を振るった“賢者”リュノー。
 東方の小さき國の剣豪皇“剣帝”シキ、妖精族(エルフ)の弓使い“弓姫”アゼル、義の
為ならば命も惜しまぬ在野の武侠“巨侠”デュバルに、反帝国のパトロンとして力を貸した
地底層──魔界(パンデモニム)の有力者“闇卿”エブラハム、謎多き旅の道化“千面”の
イグリット。
 何よりも有名なのは、敵味方を問わず傷付いた人々に手を差し伸べ、のちに己が名を神々
の御遣いとして祀られる事となる“聖女”クリシェンヌ及び、当代最強の魔導師と謳われた
若き天才“精霊王”ユヴァンであろう。
 始めはごく小さな力だった。
 だが、圧政と果ての見えぬ未来からの解放を願った人々の力は徐々に集い、大きくなり、
何より先頭に立つ十二聖らの活躍により、やがてその巨大なうねりは人類史上稀にみる大国
であるゴルガニアすらも呑み込んでいった。
 正義の勝利。
 かくしてゴルガニアという大帝国が滅んだその時、人々は如何に歓喜したか。
 歴史に刻むべき偉業。
 故に現在も、十二聖の名は数多くの伝承・物語の中に登場し、最も身近な所では曜日の名
ともなっている。

 ──だがしかし、そんな華やかな呼び声とは裏腹に、当の十二聖達は必ずしも幸福な余生
を送った訳ではない。史実は伝える。彼らもまた、等しくヒトであったことを。
 “英雄”ハルヴェートは病に倒れ、戦後の統一政府完成を見る事なくこの世を去った。
 “剣帝”シキは、その尋常ならざる力を恐れた義弟に謀られた末、壮絶な最期を遂げる。
 “弓姫”アゼルは俗世に関わったとして里の古老達に追放され、名軍師として称えられ何
不自由無かった筈の“賢者”リュノーも、後年自身の大書庫に閉じ篭ってしまう。
 もしかしたら彼の戦いの最後、皇帝オディウスと刺し違え亡くなった“精霊王”ユヴァン
の──戦友(とも)のことを、彼らは悼んでいたのかもしれない。だが今となってはもう確
かめる術もない。

 夥しい──数え切れぬ犠牲の上に今日(いま)がある。
 しかしそれでも尚、ヒトは繰り返し争いを続けてきた。かつて帝国がそうしたように未だ
見ぬ浮遊大陸(だいち)を求め、開拓し、国を作り、諍いの種を撒く。止めようのないうね
りと共に豊かさを、己が好転を求め、突き進む。
 かつてのような大戦はない。
 だが今この時こそが……まさに膨大な争いの世なのかもしれない。
 “結社”もまたその一例に漏れぬのだろう。幾度もの犠牲を受け、世界は改めて大きな戦
いの波へとさらわれていく。
 誰に選ばれたのか。その戦いに今、この新たなる時代の『英雄』の卵達がかち合わされよ
うとしている。翻弄されようとしている。

 皮肉にもその旅路は、かつての『英雄』達を求め、足跡を追ってゆくものになるのだが。


▼第Ⅵ部『古記なる旅路(リプレイ・ザ・レコード)(前)』編 開始

 Tale-69.羽捥げし、蒼染の鳥(ブルートバード)

「ハロルドと……リカルドさんが?」
 地底武闘会(マスコリーダ)決勝の翌日。
 ジーク達はラグナオーツ市内に入院しているイセルナとミアを見舞っていた。そして皆を
代表し、事の報告を預かっていたダンが一同に、現在遠くホームで起きているトラブルにつ
いて話す。
 白く清潔なベッドの上で、イセルナは静かに驚いていた。隣で同じく座っているミアも寡
黙なままながら、その瞳はぐらぐらと確かな動揺を宿している。
「ああ。マジモンの決闘だったみたいぜ。特にリカルドはまだボロボロにされたまま目を覚
ましていないらしい」
 それに──場のジーク達とて、そうした驚きは同じだった。
 彼とイヨが何やら深刻そうな表情(かお)をして話を切り出したかと思うと「二度手間に
なるし、向こうで話す」と出発前にお預けを食らっていた分、身構えていた以上に予想斜め
上の方向から告げられたその話に、正直それぞれがまだガツンと頭を殴られたかのような心
地になっている。
 団長不在の中、夜の梟響の街(アウルベルツ)郊外で起こったエルリッシュ兄弟の私闘。
 理由は片方が目を覚まさず、もう片方が今も硬く口を噤んでいる所為で不明だが、少なく
とも勝敗は兄・ハロルドの勝利──それもあと少しで彼を、実の弟を殺している所だったと
も聞く。
 そんな馬鹿な。
 あのクランの知恵袋(リカルドさん)が……?
 嘘だと言ってくれ。イセルナは勿論、ジーク達も最初は心の中で言葉の詰まる喉の奥でそ
う願ったが、目の前のダンの様子はとてもではないが冗談だとは思えない。
「……何でだよ。何でそんな大事なこと、今の今まで教えてくれなかったんだよ?」
「すまん。途中で話していたら、お前達の試合に──修行の締め括りに支障が出ると思った
んだ。最初伝えてくれたミフネ女史に頼んで、口止めして貰ってた。……俺の独断だ」
 苛立ちに変わり、ジークが言った。
 だがそれはとうに想定の範囲内だったのだろう。普段は豪胆なダンが、すぐに小さく仲間
達に頭を下げて詫びた。イヨも「……すみませんでした」とこれに倣う。ジーク達もそんな
出方をされれば二の句を継げられない。
「それは仕方ないわ。ちょうど私が搬送(こんなこと)になった後だもの。状況からも指揮
権は貴方に渡っていた筈だし……。それに向こうでも詳しい事が分かっていない以上、まだ
下手に情報を漏らしてしまう訳にはいかないわ」
「……ああ」
 手負いながら、団長イセルナは冷静だった。彼(ダン)の判断を追認し、それでいて的確
に当面の方針をそれとなく皆に示す。
 顰めっ面を崩せず、ダンはただ言葉少なげに頷くしなかった。そうした場の一同を、リオ
は気持ち遠巻きの位置から眺めている。
「それにしても参ったね。あのハロルドがそんな無茶をするなんてよっぽどの事だよ」
「そうだな。地底武闘会(マスコリーダ)も終わっていよいよという時に……」
 シフォンとリンファ。同じくクラン創設以来の幹部達も揃って困惑と嘆きを零す。他の皆
も、さてどうしたものかと互いに顔を見合わせている。
 驚きから疑問へ。不安、恐怖、或いはこの先の算段。
 ジークとアルス、兄弟もその漠然とした気持ちに漏れなかった。一度は苛立ちという形で
ダンに問うたジークだったが、今は自ら落ち着くように努め、ちらとこの頭の切れる弟に目
を遣って次の言葉を求めている。
「……一体、何故そんな強硬策に出たんでしょう? お二人が少なからず因縁のある兄弟ら
しいというのを含めても、何故今なのか」
「さてな。さっきも言ったが、辛うじて動けるハロルドの方がだんまりだからなぁ……。そ
れでも手掛かりがあるとすれば、二人をしょっ引いてきた“青龍公”だが──」
 ダンがはぁとため息をつきながら、ガシガシと首筋を掻く。
 曰く、ホームの留守番組からの報告によれば、当夜決闘でボロボロになった二人を連れて
帰って来たのは、七星が一人“青龍公”ディノグラード・F・セイオンだったのだそうだ。
そして彼は現在もそのままホームに滞在し、自分達の帰りを待っている……。
「何でまた七星が。それも、基本天上層(うえ)で活動してる筈のあいつが……?」
「そっちについても本人がだんまりだ。ただ皆が伝えてきた話だと、どうもレナに用がある
みたいでな。それで養父(オヤジ)である所のハロルドに話を通しに来たらしい」
「わ、私に……?」
 ピクン。そう名指しされて、当のレナが若干緊張した様子で息を呑んだ。
 さらりとした淡い金髪。白鳥系鳥翼族(ウィング・レイス)の白い翼。
 ローブの胸元に手を当て、ダンと、ジークら仲間達から一斉に注がれる視線に思わず動揺
隠せずにいる。
「レナに? 何でまた」
「だよねぇ。てっきり特務軍繋がりかと……。でもそれならジークやイセルナさんの名前を
出してくる筈だし。う~ん……」
 怪訝と、彼女を慮るが故の警戒に細めた両目。
 ジークの再びの呟きに、ステラら女性陣も大いに頭に疑問符を浮かべて唸っていた。情報
ではありながら、結局現状、謎が一つ余計に増えただけのような気がする。
「ああ。だがそれより妙なのは“青龍公”が振ってきた質問だよ。──彼女の色装は《慈》
ではないか? そう皆に訊いてきたそうだ」
「えっ」
「……? 何でそれを団員でもねぇあいつが知ってんだ?」
「レナさん。以前誰かに話しましたか?」
「ううん。お父さんからもみだりに話すなって言われてたし……そんな事は」
 更に不可解なのは、そんなホームの留守番組からの証言。
 故にジークが、アルスが、代わる代わるでレナ本人に訊ねた。彼女はふるふると不安そう
に首を横に振っている。……無理もない事だ。彼女だけに限らず、色装の銘とはその者が持
つ能力の正体である。知識なり文献を事前に照らし合わされてしまえば、戦いにおいて存在
したであろうアドバンテージをみすみす手放すことになる。
「……ディノグラードが、か」
「私も修行中、レナが口外していないのは確認している。大会が始まるまで互いの色装を知
っていたのは私達だけの筈だ」
 それまで言葉の少なかったリオも、またクロムもそう証言し、眉を顰めた。
「うーん。レナさんの色装が何だっていうんだろ……?」
「《慈》……。うん……?」
 ぶつぶつ。アルスやリュカも、それぞれに呟き、何やら必死にその記憶の引き出しの中を
探し回っている。
「……ともかくだ。大会も終わった事だし、少なくとも早くホームに戻った方がいいのは確
かだろうな」
「イセルナとミアはどうする? まだ出歩ける状態ではないが」
「しゃーねぇだろう。俺達だけでも一足先に戻る。誰か、何人か付いててやってくれると有
り難いんだが──」
「ならば俺が残ろう。お前達は急いで戻れ」
「ん。分かった。あんたが居てくれりゃあ百人力だしな」
 されどこのままウジウジしてばかりもいられない。ダンが再び音頭を取り、皆に足早の帰
還を打診した。そうなると未だ入院中のイセルナとミアを残すことになるが……それはリオ
が立候補してくれた事ですぐに解決した。
「……ごめんなさいね。二人の、クランのピンチだって時に」
「気にすんな。今はしっかり怪我を治すのが仕事だろ。……それにお前はミアを庇ってくれ
たんだ。責める理由なんてあるかよ」
「──」「……そうね。ごめんなさい」
 ミアがごくごく僅かに、シーツの下の手を握り締めた。あくまで事なげも無く言ってみせ
るダンに、イセルナはフッと静かな笑みを浮かべる。
「よし。そうと決まったら早速宿に戻って荷造りするぞ」
『応ッ!』
「ダン、リン、シフォン」
 はたっと。気合を入れ直し、一斉に病室を後にしていく直後。残されるイセルナはベッド
の上からダン達の背中に声を投げた。
 ぴたり。彼らが肩越しにこちらを見て立ち止まっている。哀しげな、あくまで気丈に微笑
を解かない彼女は少し間を置き、言う。
「その。二人の事だけど」
「ああ」
 ダンが応える。言わずとも知れていた。何せ長い付き合いだ。
「俺に、任せてくれるか?」
「ええ。でも……」
「分かってる。結成前からの付き合いなんだ」
 リンファ、シフォン、更に先を行こうとするジーク達も頷き、見遣っている。
 再び歩を進めながらダンは言った。娘も見送り、何か言いそうで言葉はない。猫系獣人の
大きな背中が語っていた。
「ただ外に弾き出して丸く片付くなんてモンなんて無いんだ。そうだろ?」


 時を前後して、梟響の街(アウルベルツ)──クラン・ブルートバード宿舎。
 その一角の空き部屋に、ハロルドは事実上の軟禁状態に置かれていた。
 起こした行動が行動だけに、それでも尚、事情を語らずに口を噤む彼に、ホームに残され
た団員達が採った苦肉の対応である。
 私闘当夜にかけて手当は施されたものの、頬や腕の薄汚れてしまった絆創膏・包帯は痛々
しく、彼をただじっと窓際に座らせて白ばんだ昼下がりの光を浴びせている。そして何より
も、彼が今負っている痛みとは、そんな身体的なそればかりに限らない筈だった。
「……」
 虚ろな眼だった。普段は理知的の象徴でもあったその薄眼鏡は、今はだらりと鼻先に掛か
っているだけである。
 ハロルドは一見抜け殻のようにぼうっとしていたが、その実焦燥していた。
 休んでいる場合じゃない……動かなければ……。しかしそんな内心の想いとは裏腹に、肝
心の身体はろくに言う事を聞いてくれなかった。
「こ、こっちです」
 ちょうど、そんな時だった。扉の向こうから聞き慣れた声がくぐもる。
 何人かの団員達だ。カツカツと控え目な足音を鳴らし、どうも緊張した様子でこちらに近
付いて来ているようだ。ハロルドはこけた頬や髪のまま肩越しに振り返り……そっと眉を潜
めた。団員達だけではない。もう一つ、気の抜けない気配がついて来ている。
「入るぞ。ハロルド・エルリッシュ」
 ノックはおそらく別の団員が、しかし次の瞬間掛けてきた声はこの男から放たれた。
 外からの鍵を開けて室内へ。入って来たのは七星“青龍公”こと、ディノグラード・F・
セイオンだった。後ろでそわそわと彼を連れてきた団員達数名がこちらを覗いている。彼に
見下ろされる格好で、ハロルドはまだ覇気の失せた瞳でじっとこれを見返していた。
「いつまでこんな物置で燻っているつもりだ。部下達が心配しているぞ」
「……」
 たっぷり間を置いて開口一番。セイオンは言った。
 しかしハロルドは答えない。じっと彼を見返して尚も黙り込んでいる。
 余所者が我が物顔に……。
 そもそも事の発端はあの夜、レナの秘密を知ってしまった弟(リカルド)を始末しようと
していた時のことだ。まさに完遂、こっそりと処分する──その直前にこの男は現れ、自分
達の間に割って入ったのだ。勿論邪魔をされる訳にはいかないと抵抗したが、相手は現役の
七星である。敵う筈もなく、自身もまた一度ボコボコに締められてしまった。
「ハ、ハロルドさん」
「すみません。彼がどうしても会わせろと言うもので……」
「……」
 ついて来た(連れて来た)団員達がおずおずと言う。だが別にそこを責める心算はない。
 ただ黙ったまま眼で許す。それより今肝心なのは、この男の目的だ。
 あれから一夜二夜と此処に留まり続けている。自分でしでかした事とはいえ、情報が漏れ
難くなることを考えれば好都合なのかもしれないが、それらを差し引いてもやはり「何故」
は強く大きく残る。
「団員達のリーダー格らには話をしたが……私が足を運んだのは他でもない。君の娘である
レナ・エルリッシュについてだ」
「っ!?」
「……明確な返答は貰えなかったが、間違いないのだろう。彼女の色装は《慈》だな?」
 問い返すまでもなく次に発してきた言葉。確認。
 それを聞いた瞬間、ハロルドは全身に力が──激情の類が駆け上ってくるのを感じた。彼
をギロリと殺気を込めた眼で睨み、言外に何故その事を? と問う。
 応答次第では。今一度──。
「……そう怖い顔をされてもな。私は別に構わないが、君がそんな蛮勇な人間だったとは思
わなかった。いや、それだけ切迫した事情がある……違うか?」
 力を込めた手先から、ぐぐっと退く気配があった。
 見抜かれている。いや、彼は彼なりのルートがあって、こちらの状況を理解し始めている
のだろう。ハロルドは自戒の目的も兼ねて、湧き上がる激情を抑えようと努めた。そもそも
手負いのままで、究理偽典(セオロノミコン)も没収されたまま、現・七星の一角に太刀打
ちできるとも思えない。
 改めて数拍の間を置き、セイオンは言う。
「《慈》の色装は、かつて“聖女”クリシェンヌが有していた能力と同じものだ。そして大
爺様──“勇者”ヨーハンことディノグラード・ヨーハンが言うには、君の娘は当時の彼女
と瓜二つなのだという」
 そこで彼は、先日ディグラード本邸にてヨーハンに呼び出され、一つの依頼を受けてきた
ことを明かした。
 地底武闘会(マスコリーダ)の配信映像に映り込んだ観客席のレナ。その横顔を見てヨー
ハンは大いに驚いたそうだ。まるで生き写しだ。一体あの子は何者なのか……。
「私はただ、大爺様から彼女について調べ、もし可能なら屋敷まで招いて欲しいと頼まれた
に過ぎん。君達クランの主力が大会(あちら)に出ているとは知っていたが、それでも保護
者である所の君はいると聞いたので、せめて事前の了承を取ろうとしてな」
『……』
 そこで偶然にも、夜の郊外で私闘を演じるハロルドとリカルドを見つけたという訳だ。
 当のハロルドも、セイオンの後ろで様子を窺っていた団員達も、それぞれに黙して目を丸
くして驚き、動揺しているようだった。
 腰の剣からそっと両手を離す。セイオンはそうやって害意が無いことを、生真面目な仏頂
面のままだがアピールし、促してくる。
「彼女をどうこうしようという心算はないんだ。教団とは違って、な」
「……」
 やはりこの男は自分の抱えている理由に勘付いている。ハロルドは思った。
 だがそれも幾つかの情報を捉えていれば当然だろう。レナの養父であり、彼女を連れて教
団を抜けた元司祭であり、彼女の色装に関してナイーブである──。《慈》という能力の性
質とかつて同じく有していた人物の経歴を考えるに“そういう結論”に達するのは何も不思
議な事ではない。
 ただ守りたかった。養娘(むすめ)を教団の──大人達の勝手な都合・欲望から。核心に
触れてしまった者をみすみす逃がせば、いつ奴らはあの子を連れ戻しに来るか分からない。
だからこそリカルドを──実の弟であっても、自分は容赦しないと決めた……筈なのに。
(おいおい……マジかよ)
(こ、これ、団長達に知らせた方がいいんじゃないか?)
 ひそひそ。セイオンの後ろで団員達が戸惑いながら相談し合っている。ややあって、逡巡
があって内何人かが、ぱたぱたと場から駆け出していくのが合間から見て取れた。
 気持ち眉間に皺が寄る。止めるべきかと思い──しかし同時に最早口封じは叶わないのだ
ろうともハロルドは思った。
 セイオンがじっとそんなこちらの様子を見つめている。
 言いたい事は言った。早く吐いてしまえ。そんな催促・じれったさが言外に現れている。
「連絡を受けているのを見た。今日にも本人達は戻ってくるのだろう?」
 そしてゆっくりと、彼は踵を返してその場を立ち去ろうとする。
「……さっさと片付けて欲しいものだな。身内同士のゴタゴタは」
 その肩越しに見遣った眼は、言葉通り若干の辟易を宿していた。

 ハロルドとリカルドの私闘の一件以来、同じ屋根の下でありながら団員達の間には明らか
な亀裂がみられた。即ちそれは主に、ハロルドを庇う古参──旧団員達と、リカルドを庇う
その部下──神官騎士達の対立である。
『……』
 ホームの酒場。そこはまだ昼を回った辺りながら、険のある雰囲気に包まれていた。
 店主不在の閉店状態が続くテーブル席やカウンター。その方々でクランの留守を任された
団員達はグループを作って座り、同じく徒党を組んで固まっているリカルド隊の神官騎士達
とじろり、時折睨み合っては無言の緊張を続けている。
(参ったな……)
(しっ。あんまり声立てるなって)
 まさに冷戦と言ってしまって良かった。
 片や“結社”との戦いが始まるより前からクランの一員として所属し、ハロルドの暴走も
きっと何が理由があっての事だと言い聞かせている旧団員側。
 片やリカルドに引き連れられる形でクランに合流し、団長イセルナの鶴の一声でその共闘
関係を結んでいた神官騎士側。
 どちらもが、相手にこそ非があると考えていた。信じていた。
 それは何より──当のエルリッシュ兄弟が真実を語らぬ・語れぬ状況にある事で、一層静
かに加熱していた筈だ。不信や敵意とは、概して相手をよく知らない──知ろうともしない
態度に凝り固まってしまった時にこそ最も高まる。
 そんな目に見える対立に、第三のグループ──団員選考会以降、クランに加わったいわば
新団員側の面々はほとほと困り果てていた。同じ空間・所属を共有する身でありながら、彼
らほど強くハロルドないしリカルドを信じて、かつ片方に敵意を向けられるだけの蓄積がこ
のグループにはない。
 ひそひそ。ぎゅっと押さえ込まれ、視線を合わさぬように。
 イセルナ団長……ダンさん……。早く帰って来て……。
 ただ彼らが祈り、頼れるのは、今は遠き場所のクランの幹部達だけだ。
「──た、大変だ~!!」
 ちょうど、そんな時である。
 ばたばたと、この居た堪れない酒場(くうかん)へと不意に駆けて来る者達がいた。先刻
ハロルドの軟禁部屋にセイオンを案内していた団員達の一部である。
 数にして二・三人程度。しかし彼らの──酷く慌てた様子の彼らがもたらした情報は、良
くも悪くもこの冷たい均衡を突き崩す事となる。
「……どうした?」
「隊長が目を覚ましたのか!?」
「それよりもハロルドさんだ。まだ物置なんだろ? 流石にもう閉じ込めとくには──」
「い、いや、どっちでもないんだ。でも、その……“青龍公”がハロルドさんと話している
のを聞く限り、どうも今回の件、とんでもない事になってるみたいでさ……」
『……??』
 旧団員側と神官騎士側、双方が何事かと見返し、気持ち身を乗り出していた。
 だがこの団員らはやんわりとこれを退け、しかして場の面々を惹き付けるには十二分なと
ある話をし始める。
「レナちゃんの色装なんだけどさ……。実はあれって、どうも“聖女”クリシェンヌと同じ
能力らしいんだよ」
 そして語られる断片的な情報。
 セイオンが一族の本邸でディノグラード・ヨーハンからレナと接触を図れと依頼を受けた
こと。彼が地底武闘会(マスコリーダ)の配信映像に偶然映った彼女の姿を、クリシェンヌ
の生き写しと表現したこと。何よりそれらのこと──《慈》の色装イコール“聖女”という
情報を投げ掛けられ、確認された時、ハロルドの様子が明らかに険しくなっていたこと。彼
にセイオンが口にした「教団」の一言。
 まるで……ハロルドが養娘(レナ)を庇おうとしていたこと。
「お、おい。それって──」
 暫しの沈黙。そして驚きに歪んでいく各々の表情。
 確かだとは言い切れない。だが推測のピースを完成させるには充分だった。
 つまり守る為だったというのか? レナの《慈》の色装──聖女の素質に周囲の者達が気
付き、悪用されぬよう秘匿する。場合によっては実力行使にも打って出る。それがたとえ実
の弟──教団関係者でも……。
 主に旧団員達は、思わず互いに顔を見合わせた。
 まさか。そういう事なのか。
 同系統の能力の持ち主ならば、探せば誰かしらいる。
 だがあの知恵袋(ハロルド)がこんな無茶をやらかし、且つセイオンが口にしたという生
き写しというフレーズ。
 レナちゃんが……聖女クリシェンヌの生まれ変わり……?
 だとすれば、ハロルドさんはその事を以前から知っていた……?
「……何てこった。もうそうだとしたら、今回のことは全部辻褄が合う」
「そ、そりゃあ、確かにレナちゃんの色装は《慈》だし」
「俺達の天使だし……」
 ざわ、ざわ。
 しかしそこまで秘匿していたものを、何故知られた──リカルドは知ったのか?
 故に次の瞬間、旧団員達の疑いはやはりというべきか、神官騎士側に向けられた。かの聖
女と関わりの深い教団関係者ならば、事前に《慈》イコール“聖女”という情報を知ってい
た可能性が高い。
「……そうか、やっぱ」
「始めっからその心算だったんだな! レナちゃんを、教団に連れていく心算で近付いて来
たんだな!」
「はっ? 何を言って──」
「うるせぇ! これだけ状況証拠が揃ってるんだ。お前らの隊長が、この事を知らない筈は
ねえ。やっぱり犯人はお前らなんだ!」
 一度はセイオンという強烈な仲裁役によって鎮火させられていた対立の火が、そうして再
び燃え始めた。
 そもそも、リカルドが彼女の正体に気付き、ハロルドがそれを気取らなければこんな事に
はならなかった。
 旧団員を中心として、団員達はここぞとばかりに神官騎士──リカルド隊士らに食ってか
かり始める。神官騎士達も騎士達で、いきなりの言い掛かりに戸惑い、そして怒りを爆発さ
せてゆく。
「言い掛かりだ! 俺達だってこんな話、聞かされてない!」
「そもそも隊長をボコボコにしたのはお前らの所の御意見番だろうが!」
「──いい加減にしろっ!」
「はいはい~。一旦落ち着こうか? 皆の衆」
 だが……そんな再びの衝突を寸前で一喝し、食い止めたのは、この場に残っていた留守番
組のリーダー格達であった。
 “聖壁”のアスレイ。
 “傾奇(かぶき)”のテンシン。
 “地違(ちたがえ)”のガラドルフ。
 いずれも新団員側──団員選考会後に加わったメンバーではあるが、この二年間で実績を
重ね、それぞれ一個部隊を任されるほどになった実力派達である。
「アスレイ隊長、テンシン隊長……」
「で、ですが……」
「少なくとも、団長達が僕らのこんな有り様を望んでいると思うか? 頭を冷やせ」
「そうそう。早合点はよくないぜ? 目の前の情報をただ鵜呑みにしたって大コケするのが
世の常ってモンさ」
「……大体、このクランに合流する前から知っていたとしたら、何故二年もたった今になっ
て事を起こした? 状況から考えても、彼奴(あやつ)もつい最近知ったとした方が辻褄が
合うじゃろうに」
「……。そう言われれば」
「じゃ、じゃあ一体どうすれば……」
 特に普段の気難しさに拍車を掛けた、ジト目でのガラドルフの一言が大きかった。
 取っ組み合いになりかけていた旧団員達と神官騎士らが、揃って押し黙る。取っていた袖
や襟元を離し、されどまだ戸惑いが抜けぬままで突っ立っている。
(……な、なぁ)
(うん? どうした?)
(これって、拙くないか? あいつらの言う通り、本当に今回の一件が隊長一人で知って動
いたものだとしたら……)
(あ……。た、確かに。そうなるともう……)
 ひそひそ。一方でリカルド隊の何人かが、そう何やら小声で話し、青褪め始めている。
 ガラドルフ、そしてアスレイが血の気の上った団員や騎士達に睨みを利かせていた。戸惑
いは不安や疑心となり、各々を襲う。
 本当に悪いのは俺達……? それはお互いに抱き始めた疑念であった。
 そもそも、今回の一件で二人に明確な善悪を付けようという事自体、間違っていたのかも
しれない。ハロルドは、やり方が平素の彼とは全く違って極端ではあったが、レナとその魂
の力を護ろうとした。リカルドも、もしかしたら彼女の正体を以って教団に連れ戻すという
意図は薄く、ただ水面下で兄に確かめようとしただけなのかもしれない。兄同様、直接血が
繋がっている訳ではないが、彼もまた彼女とは家族同然の間柄だったのだから。
「……隊長は?」
「まだ眠ってる。もう命に別状はないが、暫くは安静だな」
「……なあ。俺達は」
「ああ。青龍公(よそもの)に割って入って貰わなきゃ、何も出来なかったんだ……」
 当初のような衝突はもう起こらないだろう。
 ただ互いの間に横たわるのは、何ともし難い無力感のみである。

『──』
 そして彼らは知る由もなかった。
 ちょうどその頃、梟響の街(アウルベルツ)へと続く街道に、目深にフードを被った武装
集団が一個隊、静かに街へと近付いていた事に。


「以上が、現在までの経過となります」
「……うむ」
 アトス連邦朝王都、クリスヴェイル。
 その王宮の中枢・玉座の間にて、急遽上京したセドは朗々と読み上げた報告書を閉じた。
 玉座には老練の国王、ハウゼンが言葉少なく彼の上げてきた報告を静かに反芻しているよ
うに見える。セドはじっと第一声を待っていた。普段思慮深い王の表情が、気のせいか平素
以上に難しいものになっているように感じられてしまう。
「……。あまり宜しくない状況だな」
「はい」
 事の発端は先日の夜半のこと。密かにクラン・ブルートバードの本拠に、二人の怪我人が
運び込まれた事に始まる。
 キースから報告が上がって来た時、何だろうと同時にまたかと思った。友の息子とその仲
間達にまたトラブルが舞い込んできたのかと思わず顔を顰めたものだ。しかし詳しい報告を
聞くにつれ……その表情は次第に険しいものとなった。何でもクランのメンバー同士が、夜
の郊外で激しい私闘を繰り広げたというのだから。
 当事者はハロルド・エルリッシュとリカルド・エルリッシュだった。それを聞いてセドは
益々疑問に頭がいっぱいになり、抱えた。
 何故彼が? 知る限り、彼はクラン内でも団長イセルナに並び冷静沈着な人物だった筈。
それに相手が──瀕死の重傷を負わせた相手が、よりにもよって実弟にしてクリシェンヌ教
団傘下の神官騎士とは。
 間違いなく内紛であった。第一の報告を聞いたセドは、急いで現地のアウルベ伯と連絡を
取り合い、密かに事が大きくならぬよう手を回した。何せ地底武闘会(マスコリーダ)──
二年間の修行期間が終わろうとしていた矢先の事である。もしマスコミなどに漏れてしまえ
ば、対結社特務軍の本格始動はその出先から少なからず蹴つまづく。
「私闘の理由も解せぬが、割って入ったという彼も解せぬな。何故今このタイミングで“青
龍公”がしゃしゃり出る? 現状、事を大きくしてしまうだけになりそうだが……」
「はい。現在はブルートバードの本拠(ホーム)にて滞在を続けているようですが、未だそ
の目的も判然としません。キースを含め、要員は送ってはいるのですが」
「仮にも七星の一角だからな。無理もあるまい」
「……」
 片足を折って跪いた格好のまま、正装のセドはただそんな王の理解の速さに頭を垂れるし
かなかった。その通りだ。相手が相手な分、たとえ自分達の国益、利益の為とはいえ、隠密
な真似で接近しても無駄に人員を討たれかねない。
「ただ、アウルベ伯に押さえて貰っているものの、事が露見するのは時間の問題だろう。せ
めて内部の──団員達の様子だけでも確かめられればいいのだが」
「先程も申し上げました通り、困惑と苛立ち、といった所でしょう。拙い事にここ数日、兄
ハロルドを庇う団員達と、弟リカルドを庇う神官騎士達の間で溝が深まっているようです」
「やはり、そうなるか。主力は──イセルナ・カートン達はまだ魔都(ラグナオーツ)にい
るのだったな?」
「はい。先日こちらへの飛行艇と鋼車の予約があったのを確認しておりますので、今日明日
には彼らも帰還してくれる筈なのですが……」
 迷ったが、結局セドはその中にイセルナとミア、そして“剣聖”が含まれていない事も併
せて報告した。言わずもがな大会二日目の折、天使(エンゼル)ユリシズの一件で負傷入院
したのと、その護衛である。
 ふむ……と、ハウゼンは言葉少なく白い顎鬚を擦っていた。
 このような時に団長不在。いや、不在・遠征中だったらこその今回のトラブルなのか。
 セドは思考を二度三度、様々な角度から検証する。自分の記憶ではあのクランは中々結束
の固い集団だった筈だ。その結び付きを跳ね除けてまで、長年疎遠だったとはいえ実の弟を
危うく殺しかけてまで、ハロルド・エルリッシュは何を守ろうとしたのか……。
(……落ち着け。推測だけでは何とでも出来る。とにかく彼らと直接接触するように指示を
出すんだ。勿論市民やマスコミに悟られずに……)
 考えて考えて、しかしセドは、そうして親友(とも)の子らすらもナチュラルに出しにし
ようとしている自分に嫌気を覚え、密かに自嘲(わら)っていた。
 それが政治・政局というものだと言ってしまえばそれまでで、詮無いが、何故いつも自分
達はこうも競うように狡猾でなければならないのだろう? 皆を守れる力が欲しい。たとえ
元はと言えばそう願ったからこそ、飛び込んだ世界ではあるが……。
「場合によっては、他の王達とも話し合う必要があるな。特務軍に託す任務──親“結社”
分子の掃討と、例の一手。当初の予定より遅れるやもしれん」
「はい……」
 正直心苦しい。
 一方で、では目の前の王はどう思っているのだろうか?
 自分とは違って直接深い縁故がある訳ではない。だが皇国(トナン)内乱に際してもシノ
の訴えに情で以って応え、助けを惜しまなかったお方だ。きっと自分よりももっと、王とし
て多くのしがらみと責務に囚われながら、最善──次善の一手を探しているのだろう。
「妨げにならねばいいがな……。彼らには酷な事を押し付けてばかりだが、今や彼らの動向
は世界の秩序に直接揺らぎを与える」
「……仰る通りです」
 玉座の上のハウゼンは、一度そう深く悩ましい嘆息をついてから、言った。セドも恭しく
首肯し、その言葉の端々から真意と自分のなすべきことを捉えようとする。
「とにかく、何をするにしても主要メンバー達が帰って来てからだ。身内で片付いてくれれ
ばそれに越した事はないが、もし事態によっては……統務院として介入を検討する事になる
だろう。その心算でいてくれ」
「はっ……」
 やはりそうなるか……。
 僅かな臣下のみが立ち会う閑散とした広間で、セドは内心そう思いながらも、深々と恭順
の意を示すのだった。

「────んぅ?」
 自分は一体どれだけ眠っていたのだろう。
 文字通り吹き飛んでいた意識がはたと引き戻され、リカルドはゆっくりと目を覚ました。
 まだ頭がぼうっとする。最初に視界に飛び込んできたのはお世辞にも綺麗とは言えないま
でも、この二年間で随分と見慣れた内装・天井だった。
 どうやらクランの宿舎らしい。思って寝返りを打とうとし、手を伸ばそうとし、全身を駆
けた痛みに思わず顔を歪める。
 身体のあちこちに触れる布──包帯と、塗られた薬の感触。
 ああ……俺は助かったんだな。ようやく理解して何処かホッとしたような、改めて気落ち
したような。意識がはっきりしてくるにつれ、リカルドは倒れるまでの出来事を思い出す。
 そうだ。自分はあの夜、兄に思い切って疑問をぶつけたのだ。
 地底武闘会(マスコリーダ)出場の為にイセルナさん達が出払ったタイミング。確実にあ
いつの身柄を捉えるにはまたと無い機会だった。
『……やはり、知り過ぎたか』
『お前には……消えて貰う』
 だが返ってきたのは、予想を遥かに越えた強烈な拒絶。
 ショックだった。何処かでまだ自分達は兄弟なんだという驕りがあった。
 兄はそのまま、自分を殺そうと襲い掛かってきた。……冗談など一セリロ(=mm)も無
かった。兄貴は俺を、本気であの場で“消して”しまおうとしていた。
(青龍公……)
 なのにこうして生き長らえているのは、ひとえに何故か場に現れ割って入って来たディノ
グラードのお陰だった。結局あの時は兄に負わされた傷で息も絶え絶えで、把握する暇も無
かったが、今は一体どうしているのだろう?
 身体を起こそうとする。だがやはり全身の痛みがこれを阻み、ベッドの中に押し戻す。
 深く大きな息をついてリカルドは一旦諦めた。兄もディノグラードも、隊の部下達の事も
気掛かりだが、今はともかくこのダメージを回復させなければどうにもならない。
(兄貴……何でなんだ?)
 今は何刻(ディクロ)頃だろう。窓から差し込む光が、静かに部屋の中を漂う埃を部分的
に照らしている。
 拒絶されたという事実が重く圧し掛かる。
 何故そこまで、あんたは俺も団員達も頼らなかったんだ……?

 ──まだ神官騎士ではなかった頃。自分は俗に言う遊び人、フーテンだった。
 代々教団の幹部を輩出してきた厳格な家柄。
 物心ついた頃には三つ上の優秀な兄・ハロルドがいた。
 若さもあったのだろう。束縛を嫌った怠け者に、同じ居場所はなかった。教団直営の学校
も中途で辞めてしまい、毎日のように気の合う仲間達──詰まる所、聖都のはみ出し者達と
一緒に遊び回った。
 そんなある日の事だった。自分とは違って着実に出世し、司祭の地位にまで登っていた兄
が、突然「娘」を連れて帰って来たのだ。
 話を聞くに……担当している聖堂に捨てられていた、とか何とか。
 だからって自分が背負い込む必要もなかろうに……。あの頃の自分は兄の抱えていた想い
などまるで気付く事もなく、そう言って苦笑いしていたっけ。親父もお袋も、結婚すらまだ
なのに何処ぞとも知れぬ子を預かってきた事に最初、あまりいい顔はしなかった。それでも
他ならぬ兄貴自身の頼みにより、その赤ん坊は──レナちゃんは、兄貴の養女として正式に
引き取られることとなる。
 自分はこんな身分だからずっと実家にいる訳ではないけれど、それでも、ふらっと帰って
来ては土地土地の土産をあげていたものだ。両親も何だかんだといって自分の娘のように可
愛がるようになり、実際あの頃からとっても可愛らしく行儀よく育っていたと思う。
 ……なのに、ある時兄貴はそのレナちゃんを連れて、突然教団を──自分達の下を去って
行った。
 親父やお袋、親戚連中はそれこそ大層狼狽したものだ。怒り狂ったものだ。
 何てことをしてくれたんだ!? これは教団への裏切りだぞ!? 残された私達がどうな
ると思っている──。
 故に矛先は、穴埋めは無理やり引き戻された自分に、次男坊に託された。両親も親戚連中
も、こちらの意思なんて全く聞く素振りすらなく、只々己の保身の為だけに捲くし立てた。
 ……嗚呼、こういう事だったんだな。兄貴。
 以前、現在の教団についての批判云々を酒の勢いに任せて訥々と語っていた兄の事を思い
出す。だけども出奔前には脱会の手続までされていたために、教団としてもいち司祭のその
後を(この時は)まだ本気で追おうともしなかったようだ。
 兄はともかく雲隠れし続けた。
 風の噂で冒険者に転身したと聞いた時は、自分は既に「史の騎士団」の神官騎士として第
二の人生を送らされていた最中だった。
 元より鍛錬など怠り、才能だって兄に比べれば天地ほどの差がある身だ。
 調刻霊装(アクセリオ)を背中に彫るなど、付け焼き刃の改造に心身を曝し──そしてそ
んな理不尽に対する内心の怒りの捌け口を、気付けばこの過大で分不相応なプレッシャーを
与えてくる親父達や一族ども、教団という存在に沸々とぶつけ、育てていった。
 どれだけ綺麗事を並べようが結局はその利権を貪り、決して手放そうとしないクソッタレ
な集まりでしかない。
 元より神官騎士として戦う理由に“忠義”などはなく、ただ単純に“憎かった”からだ。
この気持ちをぶつける先が欲しかった。
 ……だが、今なら解る。
 やっと兄貴が、ハロルド・エルリッシュがレナちゃんを伴って逃げたその理由が判った今
なら、自分は何て馬鹿な歳月を過ごしてきたんだろうと認識できる。
 何故俺を頼ってくれなかった? 何故クランの仲間に相談しなかった?
 期せずした私闘(こうせん)の中で、その頑ななまでに己のみに背負い込もうとする彼の
姿に怒ったその時、自分は気付いてしまったからだ。
 ……偽物だ。このずっと自分の中で燻り続けていた憎しみさえ、その実はただの紛い物に
過ぎなかったんだってことに。
 もっと素直になれば良かったんだ。
 今でも俺は、兄貴を尊敬していて、心配していて──そして何時からか、その繕った平静
から救い出したいと願っていたんだってことを。

(──何でだよ? 兄貴……)
 レナちゃんを守りたい。だって大事な自分達の娘で、姪っ子だもんな。
 思いは同じなんだ。なのにあんたは俺の言葉をあんなにも拒絶して、自分一人で背負い込
んで……。まるであの時までの俺そっくりじゃねぇか。今の俺が教団の関係者だからか? 
ならそもそも俺はずっと、ことごとく選択を間違っていたっていうのか……?
「っ!? 隊長!」
 だがそんな時だった。ふと部屋を覗きに来た部下の一人が、そうベッドの中で悶々と考え
込んでいたリカルドの姿を認め、声を上げたのだ。
 ハッと我に返って視線を、何時の間にか半開きにされていた扉へと向ける。部下の一人が
目覚めた自分を見て驚き、そして「おーい、皆~!」とおそらく他の隊士らに伝えるべく駆
け出していく。
「隊長、ご無事ですか? 意識ははっきりしていますか?」
「ああ……良かった。本当に良かった」
「一時はもうどうなる事かと……」
 はたしてぞろぞろと、部下達が部屋に押しかけてきた。何度も呼び掛けてきたり、おんお
んと咽び泣いたり。おい、まだ俺は一応怪我人だぞ……五月蝿ぇよ……。
「……心配掛けたな。それで? あれから状況はどうなってる? 兄貴は? イセルナさん
達は? 今何日だ?」
「あ、はい。それなんですけどね」
「向こうは向こうでずっと物置部屋に軟禁状態です。流石に団員達も、自由に歩き回らせる
訳にはいかないと判断したんでしょう。ずーっと部屋の中で、口を噤んでます」
 部下達が矢継ぎ早に交代しつつ答える。
 それはそうだろう。レナちゃんの正体を──“聖女”の生まれ変わりであるという事実そ
のものを隠すことが目的なのだ。こんな事態になったとはいえ、きっと兄貴なら本当のギリ
ギリまで意志を貫き通そうとする筈だ。
 リカルドは一度深く息をついてから苦笑いしていた。自分がこんな事になってしまって、
すっかり部下達も怒り心頭という感じである。
「無理もないな。だがまぁ、ちょっと待──」
「隊長! もうこんな共闘止めましょう!」
「今回の件、本部に報告しました。皆で帰りましょう。このままじゃあ二度三度と隊長が死
に掛けるかもしれない。貴方が背負い込むことなんて無いんです!」
 故に、早速やんわりと事情を話してやろうとした矢先、リカルドは次の瞬間部下達の放っ
たその言葉に背筋が凍り付いたのだった。
 ……ちょっと待て。本部に知らせた? 教団が、俺達の私闘(ケンカ)を……?
「おい。それ本当か?」
「? はい。許可なくとは承知の上です。でもこれも、隊長の為だと思って」
「あの……大丈夫ですか? 急に顔が青くなってますけど……」
 リカルドは暫く言葉を失っていた。サァッと、脳裏に映る最悪と悪寒が止まらない。
 部下達に悪気はないのだろう。少なくとも自分が兄にボコボコにされ、危うく死にかけた
という事実は変わりないのだから。肝心の事情──レナちゃんのことまで未だ知らないとな
れば、充分取りうる強硬策なのだろう。
「ああ……。拙い……」
 だからリカルドは、ただそれだけを呟いた。部下達にそっと支えられ起こされていた上半
身をぐったりと項垂れさせ、頭を抱える。彼らが頭に疑問符を浮かべている。
「──? 何だか下が騒がしいな……」
 更に、ちょうどそんな時だったのだ。
 妙に宿舎の外が騒がしい。部下達が、リカルドが扉の向こうの通路、その窓越しに遠巻き
の目を凝らす。
「酒場の方、ですかね? 他の連中が集まってるみたいですが……」

「な、何だ……?」
 セイオンとハロルドのやり取りから、今回のトラブルの内実が見えてきてから半刻ほどが
経った頃だった。陰気の類という点では変わりないが、この事ですっかり棘が取れて別の意
味で居た堪れなくなった留守番組がぱらぱらと集うホームの酒場を、軽くノックする音が聞
こえた。団員達が思わずビクンと身体を強張らせる。
 通りに面した此処の出入口は、カーテンを引いて中が見えないようにしているし、そもそ
もここ暫くはずっと「CLOSED」の札と諸事情により休業中との注意書きが貼り付けて
あるのだ。何より今は……トラブルの真っ只中でそれ所ではない。
 少なくとも、自分達の事情を大なり小なり知っている筈の──街の住民ではなさそうだ。
 ごくり。眉間に皺を寄せ、互いに顔を見合わせて、団員達はおずおずと掛けていた扉の鍵
を開けに近付く。
『……』
 店先に立っていたのは、茶色いフード付きのマントを目深に被った一団だった。
 旅人だろうか。道行く疎らな人々が時折その後ろでちらちらと視線を遣っている。しかし
この応対した団員達の直感が、彼らがそんなただの訳知らぬ素人であるという可能性をすぐ
さま否定してくる。
「あ、あの~……すみません。ちょっと酒場の方は休んでるんですよ~」
「ええ。分かっていますよ。そちらにも張り紙がありますし」
「そもそも私達は、客ではありません」
 すると直後、やんわりと追い返そうとした団員の言葉を遮り、一団はそのマントを一斉に
脱ぎ捨てた。
 その姿は揃いの黒衣。肩や胸当てといったどう見ても軽装ながらに防具、武装。
 そして何より──各々の胸元にあしらわれた三柱円架のピン。
「っ!? あんたら……!」
「申し遅れました。初めまして。私の名はリザ・マクスウェル──クリシェンヌ教団直属、
史の騎士団の団長を務めています」
 だからこそ、一同は激しく狼狽した。はたして教団関係者だったのだ。
 それも……史の騎士団のトップ。アッシュブロンドのミドルショートの髪をサラリと靡か
せて、同騎士団総長・リザは流麗な所作で挨拶をしてきた。背後には隊長格と思しき神官騎
士が三人と、更に兵卒な部下ら三十人弱。
 ……拙い。
 店先で応じた団員達と店内の団員達、リカルド隊士らがまるで錆び付いたブリキ人形のよ
うに互いに顔を見合わせ、サァッと冷や汗・脂汗を流し始めた。
 よりにもよって。
 よりにもよって、今一番現れてもらっては困る類の者達が押しかけて来た。
「そちらの、部下の隊より本部に報告がありました。事態の重大性を鑑み、私自らこうして
足を運ばせて貰った次第です」
「なっ……!?」
「て、てめぇら、何て事してくれやがったんだ!」
「やっぱお前らは俺達の敵なのか!?」
「え……? いや、ちょっと待て」
「そんなの聞いてないぞ!?」
「いや、そういや確かボーンズ辺りが教会に行っていたから、もしかすると……」
「……マジか」
「お、おい。どうするんだよ?! あの話が本当だったとしたら──」
「どうかなさいましたか」
 ざわめく団員達。慌てるリカルド隊達。
 やはり裏切ったのか? 一部の団員が彼ら隊士に掴みかかったが、当の本人達すら殆ど覚
えがない。辛うじて一部の隊士が勇んで報告が行ったかもしれない可能性を思い出し、双方
が再びざわつき……しかしてリザが、そこに割って入るように静かな声を差し挟む。
「うちの部下がお世話になったようで……。ブルートバート幹部、ハロルド・エルリッシュ
殿はおられますか」
 リザはあくまで丁寧に喋っている。
 だが教団直属の騎士団長という肩書きが示す通り、彼女は間違いなく只者ではなかった。
 努めて冷静な振る舞い。しかしその背後には巨大で静かな威圧感が漂う。
「あ、いや……」
「そのぉ……」
「代われ。このまま立ち話という訳にもいかないだろう。……街の人達が見ている」
 躊躇う団員達。そうしていると騒ぎを聞き付けてアスレイやテンシン、ガラドルフといっ
たクランの隊長格達がやって来た。アスレイは神妙な面持ちで場を引き受けると、とりあえ
ず今この状況をこれ以上衆目に晒さない為にも、一旦彼女らを酒場の中に入れる事にする。
「その、ハロルド殿は……現在手が離せません」
「ではエルリッシュ隊長を出してください。事情を聞かねばなりません」
「……彼も出られません。負傷、しておりまして」
 臨時の代表となったアスレイとリザ、両者がテーブル席の一角に相対して座る。その背後
周りに団員やリカルド隊、史の騎士達がそれぞれの長を囲む。
 さりとてアスレイ自身にも明確な打開策がある訳ではなかった。ただ徒に荒事にしてしま
っては拙いという思考だけが大音量で赤色灯を鳴らしている。
 スッ……。しかし対するリザはその冷静な表情(かお)のまま、何処か精神的マウントを
取るように言ったのだった。
「ハロルド・エルリッシュに瀕死の重傷を負わされて、ですね」
「──っ」
「そんなに驚かないでください。報告を受けたと言ったでしょう? ……それに、何も本部
がこちらに対して持っているパイプはエルリッシュ隊長だけではないのですから」
 にこり。彼女はそう穏やかに笑っている。
 要するに密偵の類か。おそらくは大よその状況──今回の私闘の背景も、いや教団だから
こそ、既に把握済みだと考えてしまっていい。
 アスレイが、背後傍らのテンシンやガラドルフが渋面を浮かべていた。
 さて、そうなれば一体どれだけ「話し合い」が通じるのか。
 冷静に事が荒立たなければしめたものだが、場合によっては始めから……。
「例えば、二年前の貴方達の修行開始時、ハロルド・エルリッシュが娘・レナの色装習得に
難色を示していたこと。発現した彼女の色装が《慈》──我らが開祖、聖女クリシェンヌの
それと全く同じであるということ。現在、クラン幹部の殆どが地底武闘会(マスコリーダ)
出場の為に不在──同兄弟が秘密裏に接触を図るには絶好の機会だったこと」
『……』
 後者であった。私闘の件に留まらず、彼女らはレナの正体まで把握していたのだ。
 やはりそれも教団の密偵か。部外の協力者か。一体、何処のどいつだ……?
 だが、今はそこを突いている場合ではないだろう。実際教団の使者、リザ・マクスウェル
が部下達を引き連れてここまで迫って来ている。次の瞬間──恐れていた言葉を発する。
「──こちらの用件はただ一点のみです。ハロルド・エルリッシュ及びレナ・エルリッシュ
を我々に引き渡していただきます」
 団員達、リカルド隊達はそれこそ絶望のどん底に叩き付けられた気分だった。特に隊士達
にとっては一部の仲間の勇み足で起こった事態である。責任を感じない訳がなかった。この
二年間で我らが隊長は、血の繋がらないあの少女をかつてのようにとても可愛がっていた。
今ここでその彼女と、兄を連れ去られては、もう顔向けができない。
「……返事はどうしたのですか? まさか拒否するとは言いませんでしょうね」
「非はどう見たってお前らだろう? 一旦はリカルドの奴を懐に抱え込んでおいて、結局は
ボコボコにしやがった。落とし前とすりゃあ軽過ぎるくらいだ」
「まぁ、ただ私達は同志の要請があった通り、粛々と任務をこなすだけです」
 リザの背後に控えていた三人の隊長格も、其々さも当然と言わんばかりに言葉を紡ぐ。
(おいおい。これって拙いんじゃねーの?)
(……ああ。街の人達に見えぬようにしただけで、何も変わっちゃいないからね)
(そもそも相手が大き過ぎる。ここで抵抗すれば、それこそ教団という巨大組織を敵に回す
事になるぞ)
 ひそひそとテンシンに応えてアスレイが、平時三割増しの顰めっ面でガラドルフが。
 勿論、彼女達はその威圧効果を充分解っていて訪ねて来た筈だ。団長や殆どの幹部が不在
な今、その中でも唯一の指揮官役であった筈のハロルドが出られない今、そもそも自分達に
クランの行く末を左右する程の決定など出来る訳がないのだから。
「待ってください……! 総隊長!」
 だがそんな時だったのだ。はたと背後、酒場の奥の方から、残りの神官騎士らに支えて貰
いながらリカルドが歩いて来た。
 目が覚めたのか。しかし未だ怪我のダメージは少なくなく、頭も身体のあちこちも包帯だ
らけで、見るからに痛々しい。
「エルリッシュ隊長。無事……とは、少し言い切れませんね」
「それは教団の意思ですか? 教皇様からの勅命ですか? 待ってください。つい部下達が
先走ってしまいましたが、これには事情がありまして──」
 リザのあくまで沈着冷静な第一声が飛ぶ。部下達に支えられながらリカルドが訴える。
 兄貴とレナちゃんを連行する? させては駄目だ。教団(やつら)の為に二人が“犠牲”
になる。そうなったらもう取り返しがつかない。
 ……やっとなんだ。やっと、解ったんだ。
 実際に兄貴と戦って話して貰えて、ようやく知る事ができた。守るべきものは昔からすぐ
近くにあったんだ。もう、間違えない。間違えたくない……。
「どういう事でしょうか? エルリッシュ隊長」
「まさか──我々を裏切るお心算ですか」
「……っ」
 しかしそんな庇い立てはやはりリザに、そして背後の三人の内、唯一女性の隊長格の騎士
に疑われる。いや、おそらく──兄弟という関係を知っている分──予想した上でここに来
ているのだろう。
 リカルドは思わず喉を詰まらせた。
 でも、どうすればいい……?
「余計な気を回すな。リカルド」
 しかしである。次の瞬間同じくして現れたのは、薄汚くやつれてしかし静かな怒りを瞳に
宿したハロルドであった。傍らにはセイオンがおり、視界に映った場の面々をざっと見渡し
てからリザ達を見遣る。
「私からも異議を申し上げる。こちらも彼女らに用があって訪ねて来たのだ。そちらの一方
的な通告には了承しかねる」
「“青龍公”……。これはこれは、七星の一角が直々に。それはどのようなご用件ですか?
やはりレナ・エルリッシュの正体に関する事でしょうか?」
 片や、世界屈指の信者数を誇る教団が従える騎士団長。
 片や、世界屈指の実力を持つ冒険者達の頂点。最強の空戦団長。
 静かに、両者の間に火花が散り始めていた。アスレイらを含む団員達が、リカルドや部下
の神官騎士達がその迫力に思わず身じろぎ、息を呑む。
(兄貴……)
 しかし中でも尚、リカルドはまた少し違った感慨を抱いていた。
 他ならぬハロルドの態度、先程の言葉である。
 まだなのか? まだ自分達を許してはくれないのか……?
 この状況にあっても未だ頑ななままの兄の姿が、まるで未だ責め続けられているようで、
リカルドは胸が再び塞がる思いだったのだ。
「──これは参ったね。随分と多いじゃないか」
 だが、更にである。
 またしても次の瞬間、今度は酒場の扉から入って来た者達がいた。
 王冠と天秤、宝剣と長盾のエムブレム──統務院の肩章と揃いの軍服に身を包んだヒュウ
ガ・サーディスとグレン、ライナのサーディス三兄妹及び、配下の手勢達。
 統務院直属懲罰軍。通称“正義の剣(カリバー)”の面々であった。
 リカルドもハロルドも、団員達もリカルド隊も、リザやセイオン達も。
 場にいた者達の殆ど全てが、再三の予期せぬ来客に面を食らっていた。またしても外の通
りでは街の往来が──人々がざわめき、野次馬を形成しながら覗き込み始めている。
「でも一番の先約は俺達だ。……知ってるだろ?」
『……』
 クラン対リザから始まり、リザ、セイオンと──ヒュウガ達。
 気付けば三つの勢力が散らし始めた静かな火花に、団員達は思わず震え上がるのだった。

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  1. 2016/01/09(土) 18:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
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自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
します。

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