日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(書棚)感想:櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス』

書名:ホーンテッド・キャンパス
著者:櫛木理宇
出版:角川ホラー文庫(2012年)
分類:一般文藝/オカルトミステリ

君の微笑みがプライスレス。
恋に悶える草食系霊感学生と仲間達の、割とゆるゆる、キャンパスライフ──。


お久しぶりです(もう此方のカテゴリではすっかり定型句となってしまった感)
今回もまた間が空きましたね……三ヶ月強ほどですか。いい加減もうちっと積ん読の消化に
もコンスタントに時間を割くべきなんでしょうけども、何かどんどん創る方の工数が増えて
いくばかりで……。

まぁ、言い訳は止しましょう。今回は櫛木理宇氏『ホーンテッド・キャンパス』の読書感想
となります。レーベルは角川ホラー文庫……なのですが、実は最初、自分がこの本を見つけ
て手に取った時は、その表紙の絵がやや二次元絵っぽかったので「ラノベかな?」と思って
しまったのでした。それでもっていざ読み始めてみると、レーベルの示す通り、柔らかいの
はこの絵くらいなもので、中身はしっかし小説小説しておりました。
作者さん、版元さん(届く訳ないでしょうけど)侮ってすみませんでした……;
尤も、絵で釣られて購入っていうのは、ある意味「計画通り」なのかもしれませんがね。
では物語の概要は次の通りです。

八神森司(しんじ)は霊が視える。だけども別に本人はただ視えるだけで御祓いなど対処が
出来る訳でもなく、そもそもホラーは怖いから嫌だという草食系の学生。
そんな彼がとある切欠で一目惚れしたのが、一個下の美少女・こよみ。
高校時代は特に進展がある訳でもなく、自身が一浪した事ですっかり疎遠になってしまって
いたが、その二年後、入学先の大学で期せずして再会を果たす。
そして(不本意ながら)そんな彼女を追う形で所属する事になったのが、学内でも色モノと
認識されているらしいオカルト研究会。
なまじ視えてしまうが故に霊障には関わりたくない森司だが、片思いの相手が在籍している
となればそうもいかず、かといってそれでは平々凡々には済まない。
そして今日も、アクの強い同好会のメンバー達と共に過ごす部室へと、怪奇現象にまつわる
相談が持ち込まれる──といった内容。

本作はざっくりと言えば、よくある心霊探偵?系の連作小説です。全五つのエピソードから
なっていて、一応緩やかにですが時系列も通っています。ですがよくある「ラノベ的調理」
──例えばファンタジーから出てきたような妖怪とドンパチする、みたいな世界観──では
なく、本当にこざっぱりと淡々と、各話に持ち込まれる依頼を軸にお話が進むといった正統
派のオカルトミステリとなっています。
(まぁ自身がファンタジー畑なのも手伝って、普段からついそういう対異形ドンパチや異能
バトルみたいな装飾の方向に頭が慣れ過ぎていた、というのもありますが)
主な登場人物は主人公である森司と、物静かなヒロインポジのこのみ、彼女の幼馴染であり
オカ研に引き込んだ張本人たる、知識だけは豊富な黒沼部長、その従弟で護衛役を自称する
偉丈夫の泉水、そして姉御肌なムードメイカーな藍の五人(プラス各話の依頼者)。
上述の通り、物語は基本的に彼らオカ研に持ち込まれた怪奇現象──オカルト的な諸々にま
つわる相談から始まり、綴られていきます。そこにちょいちょい、森司のこのみへの長年の
悶々とした片思いが入り混じるといった構成です。
ちなみに実際に霊が視える・感じる事が出来るのは、五人のうち森司と泉水のみ。後は黒沼
部長がその豊富なオカルト知識(と煽っていくスタイル)で事件を解きほぐし、このみと藍
の女子ズはそれらに乗っかかったり巻き添えを食ったり、或いはふと思わぬ糸口になったり
する。繰り返しますがファンタジーなドンパチはありません。地味~に怪奇現象と対峙し、
その原因を取り除く。そんな、基本コテコテに盛った装飾なぞ殆どないのに、不思議と面白
くって頁を捲っていける──。

一つは自分自身、テンプレと化したラノベ的装飾群に食傷を覚えていたからというのが少な
からずあったのでしょう。だから裏を返せば地味でも、丹念に物語で勝負しようという小説
が肌に馴染んだ。
(やっぱり自分は文学寄りなんだろうか。自分で書く題材は割かしラノベ調の癖に……)
もう一つは作者である櫛木氏の、適度な密度と丁寧な描写による文体が故なのだと思います。
経験からもついありがちなのですが、いざ「書こう」としてしまうと結構ゴテゴテと描写を
加え過ぎてしまうんですよねぇ。書く自分はホクホク出来るかもしれないけど、読む側にと
ってはしばしば煩雑にさえ為ってしまうケースがある。でも本作は、同氏は、それらの按配
を上手くセーブしながら書き切っているなと感じました。物語の構成も、数話連作という形
を採りながら綺麗に〆てあったように思います。
ちょっと?したコツですね。風呂敷を広げようと思えば広げられる端々の設定・エピソード
(本編で引き合いに出すならば、オカ研の面々の馴れ初めや森司の恋の結末など)を特段、
“敢えて一シーン丸々割いて言及しない”事で、軽く地の文などで流してしまう事で読後の
未回収感をぐぐっと押さえ込める、といったような。
それでもまぁ、人物造形に草食系な片思いとつけている事で、森司の内心描写が少なからず
テンプレ的な──やれやれ系。だけどもいざって時には漢を見せる=そこが最大の見せ場と
なるというパティーンになってるなぁというのは否めませんが(元よりそう意図しての性格
づけ・ありきの構成としているならそれはそれでOKなんですけども)。

表題でちょっと勘違いしてしまいましたが、中身は割としっかりと文藝です。個人的な感覚
ではありますが、ラノベ偏重のユーザーよりは少々読書に慣れた人の方が向いているかな?
派手盛りのドンパチや大立ち回りはありませんが、ああ「物語を読んでいる」と思える一冊
ではないかなと思います。以前の新聞でみた程度なので記憶が曖昧ですが、どうやら続巻も
あるみたいです。機会があれば手に取ってみてもいいですね。

<長月的評価>
文章:★★★☆☆(程よく分量の詰まった全体。可もなく不可もなく)
技巧:★★★★☆(意図的に?セーブされた描写が好印象。畳み方というものを見習おう)
物語:★★★☆☆(緩く繋がった連作形式。ホラーを目的、重視する方には物足りないか)

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  1. 2015/12/17(木) 22:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

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