日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅴ〔64〕

「……マスコ、リーダ?」
 リオの投げかけたその一言が、宴の余韻に浸っていた場の面々をサァッと現実へと引き戻
していた。
 皆が目を瞬き、或いは互いに顔を見合わせる。
 中にはダンやイセルナ、グノーシュ、リカルド──冒険者として先輩な面々が言葉はなく
とも「ああ、あれか」と言わんばかりに視線を上に、思い出すような仕草をしていたが、皆
を代表してジークがこのフレーズを反復する。
「“地底武闘会(マスコリーダ)”──魔界(パンデモニム)の都ラグナオーツで毎年この
時期に開催されている総合武術大会だ。非合法なものを除けば、俺の知る限り数も質も世界
で一・二を争う大会だ。お前達のこの二年の成果を、あそこで見極めたいと思う」
 ざわ……。皆が、団員達が息を呑み、緊張するのが分かった。
 夢見心地はもう終わりだ。さもそのように、酒で朱に染まった彼らの表情(かお)が引き
締まる。
「誰でも構わない。優勝してみせろ。それくらいでないと“結社”という規格外の敵と渡り
合うには命がいくらあっても足りないからな」
「それは、そうッスけど……」
「だ、大丈夫かな? そりゃあ俺達も二年前に比べて大分強くはなったと思うけど……」
「その辺は実際かち合ってみねぇと分からんさ。でもまさか俺達全員でって訳にはいかねぇ
よな? なまじ有名になっちまってる。余計に混雑するし、迷惑になるんじゃねぇか?」
「それに、人数だけを投入すればいいというものではないわ。目的が優勝なら、遅かれ早か
れ仲間同士で潰し合う事になるものね」
「ああ。だから参加メンバーは絞ってもらう。ジークやお前達──クランの中核メンバーが
出場すれ(でれ)ばいい。他の面子は、また後日個別に見極める」
 加えて設定されたハードルはいきなり高いように思えた。団員達に不安の声が漏れる。
 それでもダンやイセルナ、皆のリーダーの疑問に、リオは予め用意していたかのようにそ
う答える。少数精鋭。それは無用な混乱を避けるだけではなく、単純に数で攻め立てて確率
を上げるような姑息を許さぬという意味合いもあるのだろう。
「……どうする? 無理にとは言わんが」
 言って、されどリオは静かに腕を組んでジーク達を睥睨していた。それまでの愉しみが嘘
のようにテーブルに残った料理の皿や酒、壁周りの飾りが何処となくちょこんと遠く置き去
りにされて佇んでいる。
『──』
 団員達は互いに顔を見合わせていた。それはおそらく、戸惑いという感情(もの)だ。
 何となく誰もが解っている。きっとこれは修行の終わり、モラトリアムの終わり。今宵の
宴すら遠い日の思い出になっていくもの。
 少なからぬ者がイセルナやダン、幹部メンバー達を見ていた。
 恐れていないと言えば嘘になる。だけども彼らが往くと決めるのなら、自分達は何処まで
もついていくつもりだ。
「……ああ。勿論、行くよ」
 そんな中で、最初に返事を口にしたのはジークだった。
 不安が過ぎっていたのは始めの内だけ。皆がハッと視線を向けたその横顔は、何処か不敵
な笑みすら作ろうとしているかのように見える。
「団長、副団長。出場して(でて)、いいよな?」
「ええ。他でもない貴方がそう望むなら」
「大体ここまでお膳立てされておいて逃げる俺達だと思ったか? 存分に暴れようぜ!」
 応ッ! イセルナの、ダンの呵々とした笑いに団員達は一斉に声を上げた。
 不安はある。だけども皆、やっぱり本質は冒険者(あらくれ)なのだ。
「……了解した」
 フッ。少しだけ、ほんの少しだけ嗤ったような気がした。
 やれやれ。調子づく面々に苦笑するシフォンやハロルドを横目に、そうリオはじっと腕を
組んだままの姿で瞳を閉じたのだった。


 Tale-64.矛と盾と、爆ぜる成果(ちから)

 リオの提案から数日後。
 旅支度を整えたジーク達は飛行艇に乗り込み、一路地底層の一つ、魔界(パンデモニム)
へと向かっていた。
 ぐるぐると、ゆっくりと一行を乗せた飛行艇は霊海の空を旋回しながら下へ下へと下って
ゆく。世界と世界の境目が近いのだろう。気付けば辺りの靄──魔力(マナ)の気流が濃く
鈍一色になってきた。
「魔界(パンデモニム)か……。どんな所なんだろうな」
「そうだね。僕も本で読んだ事しかないけど、基本的に今はもう顕界(ちじょう)と大差な
いって話だよ」
 船内の団体用客室の一つで、一行は寝泊りしながら到着の時を待つ。
 今回遠征するのは、最初リオが話していた通りクランの中核・精鋭のメンバーだ。
 ジーク、イセルナ、ダン、グノーシュ、リンファにシフォン、ミア、サフレ。更にここへ
アルス(とエトナ)が加わる。
 勿論ジーク達は心配して参加を希望する彼を止めたのだが、どうしても一緒に戦いたい・
成果を確かめたいと食らいつく彼に根負けし、最終的に学院の許可が下りればという条件付
きでこれを許したのだった。
「どの世界も中央に世界樹(ユグドラシィル)が通ってて、東西南北にそこへ繋がっていく
支樹(ストリーム)があるっていう構造は変わんないからねえ。結局は住んでる人達の歴史
と文化次第なんだよ。昔は……色々あったしね」
 窓際でぼうっと変わり映え乗せぬ景色を観ていたジークとアルスの兄弟に、傍をふよふよ
と横になりながら浮いていたエトナが言う。
 向かいの席でリオが、一人黙したままじっと腕を組んでいた。
「そうですね……。今でこそ共存していますが、以前は万魔連合(グリモワール)と統務院
が直接戦ったんですよね……」
 一方彼を始め、大会自体には参加しないものの、ジーク達に同伴するメンバーも今回は相
応数にいる。
 言わずもがな、成果の見届け役であるリオとクロム。
 ジーク達の応援と諸々のサポートの為について来たレナとステラ、マルタにクレア。
 加えてイヨ以下侍従衆が数名。リュカと、アルスの参加に際してお目付役として派遣され
たブレアがこの面々に名を連ねている。ハロルド・リカルド兄弟、及びオズや他の団員達は
梟響の街(ホーム)で留守番だ。
「ま、百年以上も前の話だ。今は地上からの開拓と技術流入で便利になった生活を享受して
いる奴が大半だろう。それでもただでさえこっちは皇子様が二人、公子が一人いるしな。大
会以外で目立つような真似は控えるのが吉ではあるんだろうが……」
 フッと知識から湧き起こったレナの不安に、背後のソファ型の席で横になっていたブレア
が言う。ジークとアルス、そしてサフレに流し目が向けられた。
 分かってますよ──。
 不敵・苦笑・神妙。三者三様の面持ちが、そっと彼に返される。
『お客様にお知らせします。これより次元装甲を展開致します。速やかにお席に着き、衝撃
に備えてください。お客様にお知らせします──』
「おっと……」
 そんな時だった。船内にアナウンスが響き渡り、ジーク達はだらりとしていた心身を一度
引き起こした。繰り返されるメッセージの中、席のシートベルトを着けたり、壁面に備え付
けてある手すりを握るなどをしてその時を待つ。
 ……ゴゥンッ!
 刹那、機体全体が何か大きな質量に包まれて圧迫される感じが分かった。その直前に窓か
ら見える景色は、全て迫り出してきた分厚い折り畳み式の壁に覆われ、その一切が見えなく
なる。
 これが次元装甲だ。霊海の濃いエリア──特に世界と世界の境界線ではあらゆるものが無
に還る、咽返るような高いエネルギーが充満している。そこを渡り世界同士を行き来するに
は、竜族の屈強な身体や導きの塔による転移網を除けば、こうして飛行艇に専用の緩衝装備
を備えた上で突っ切るしかない。
 暫し景色も見えない中で、ジーク達は断続的な振動に耐えつつ待った。今まさに世界の垣
根を越えようとしている最中だった。
『──』
 そして……開(ひら)ける。
 フッとにわかに衝撃が止んだかと思うと、機体の速度が緩やかになった。霊海の高濃度を
抜けたのだ。ややあってアナウンスと共に機体全体を覆っていた次元装甲が再び格納され、
一行の眼下には魔界(パンデモニム)の──地底層の世界が果てしなく広がる。
『お客様にお知らせします。長旅お疲れ様でした。これより終点、魔都ラグナオーツへと着
陸致します』

 “魔都ラグナオーツ”。
 そこは魔界(パンデモニム)のほぼ中心に位置する都で、地底層世界の政治・経済の中心
地でもある大都市だ。
 地上と同じく茜色を帯びた世界樹(ユグドラシィル)を背後に抱く街。
 その全景は岩山立ち並ぶ一つの浮遊大陸(りくち)に丸々都市を形成したような姿だ。
 都の空港(ポート)、空の玄関口から降り立ち、その上下の落差と独特の石造りの街並み
にジーク達は、暫く辺りをぐるりと見渡しながら呆気に取られる。
「……でかいな」
「そうだね。大都(バベルロート)といい勝負かも」
「人口はあれの三分の二ほどだ。鬼ヶ領、迎心街、幻夢園、常夜殿──ちょうど東西南北に
魔族達の本拠地が散在しているからな」
 その中であたかも場慣れしているかのように、サッと黒衣を翻しながらリオが歩き出す。
ジーク達もそんな解説を聞きながら、坂道の多いこの地底の都を歩き始めた。
「……都があるのに、本拠地じゃないのか?」
「地底層の土地柄だな。古くから魔界(パンデモニム)以下、地底層では各地の豪族がそれ
ぞれの支配に腐心し、長らく統一された政権が作られる事はなかった」
「あ、それなら私も知ってる。派閥(ファミリー)でしょ?」
「今は特に宿現族(イマジン)のそれを指す事が多いがな……。昔からこちらの世界の住人
は、地縁・血縁を重んじ独立独歩の精神が強かったんだ。開拓線を広めたい地上の者達と、
一度は戦にまで発展したのも、それまでのコミュニティが壊される事を懸念した人々が相当
数いたからなのだろう」
「ふーん……。地上(おれたち)で言う東方みたいなもんか」
 両手を頭の後ろに回し、ジークは語るリオや「はいっ!」と手を挙げるステラを横目にし
つつ空を見上げた。
 そこで思ったのは一言。暗い。今はまだ昼前の筈なのだが、見上げた魔都の空は均等に淡
い灰で塗りつけられたように暗く、陽の光というものに乏しかった。
「地底層は何処もこんな感じみたいですよ? 太陽の軌道との位置関係上、どうしても光は
届き難いんですって」
「へぇ……」
 そんな見上げているジークに気付いて、観光案内の雑誌を開いていたレナが照れるように
そう補足してくれた。なるほど。確かにこう年がら年中薄暗くっちゃ、身内で凝り固まるよ
うにもなるか……。
 それから少し街中を歩き、ジーク達は路面鋼車に揺られながら波打つように街の坂を上っ
ていった。
「此処だ」
 やがて着いたのは、坂もかなりの高さ、丘になっている広々とした公園のような一角。
『……』
 そこにはどんと、見上げるような巨大なドーム群が姿を見せていたのだった。
 地底闘技場(コロセウム)。
 毎年マスコリーダが開かれる会場であり、ここ魔都を代表するスポットの一つだ。
 構造としては主立った施設が集まっている本棟と、そこから東西南北に分かれている実際
の試合会場となるドーム棟が四つ。観光ガイド曰く、これらは世界樹(ユグドラシィル)と
四大支樹(ストリーム)をイメージしているのだそうだ。
「……思ってたよりデカいんだな」
「うん。ここにお客さんが全部入っちゃうんだよね……?」
「上等だ。俺達の修行の成果、披露するにはもってこいの舞台だぜ」
「そう上手くいくといいけれど。これだけ、規模が大きいとなると……」
「……」
 集大成の舞台を前に、ジーク達は思い思いにこの場所を見上げていた。驚きや不安、不敵
な笑みで思案。それら一同の姿をリオはじっと肩越しの眼で見つめている。
「先ずは受付を済ませるぞ。日程的にギリギリだしな。ミフネ達も宿のチェックインを済ま
せている頃だろうから、連絡を取って──」
 だがそんな時だったのだ。カツンと、次の瞬間石畳の上で靴音を鳴らし、ジーク達の前に
現れたのは、とある見知った人物の姿だった。
「……やれやれ。よりにもよって儂の縄張りにやって来るとはな」
「!? あんたは、確か」
「……」
 両目の下の線を持ち、黒いテンガロンハットと分厚いコートを着込んで葉巻を噛んだ、貫
禄たっぷりなマフィア風の男。ジーク達が、リオが、その姿に一斉に視線を向ける。
 ウル・ラポーネ。
 万魔連合(グリモワール)の頂点・四魔長の一人にして、宿現族(イマジン)の長。
「暫く──二年ぶりだな。レノヴィン兄弟」
 そんな、かつて大都(バベルロート)で共に脱出戦を戦ったその一人が、取り巻きを連れ
一行の前に現れたのである。


「……ブルートバードが、魔都(ラグナオーツ)に?」
 時を前後して大都バベルロート。統務院直属警護軍・正義の盾(イージス)本部。
 かつての消失事件から二年が経ち、その復興も大分進んできたこの棟の一室で、ダグラス
は思わず目を見開きながら椅子を回してこちらを見ていた。
「はい。出航記録が残っています。どうやら“剣聖”は彼らを地底武闘会(マスコリーダ)
に出場させるようです」
 相対するのは小脇に書類を抱え、あくまで冷静にこの執務室の扉をノックして入って来た
副官・エレンツァだった。抱えた書類から一枚、飛行艇の乗客リストを取り出し、残り共々
彼のデスクの上へと提出する。
 暫しぱらぱらと報告書に目を通す。通して、ダグラスは心労で頭が痛くなった。
「そろそろ締めに入るとは聞いていたが……よりによって地底層(あそこ)か」
 片手でわしゃっと頭を抱え、呟きながら苦虫を噛み締めたような表情をする。
 自分もいち武人だ、知らない訳がない。
 地底武闘会(マスコリーダ)──それは毎年秋口、魔界(パンデモニム)最大の都市ラグ
ナオーツで開催される大規模な武術大会だ。かつては世界各地にある剣闘イベントの一つに
過ぎなかったが、ラポーネ閥(ファミリー)がその運営権を得たのを切欠に、今や同市にお
いて一・二を争うビックイベントとなっている。
 エレンツァが部下から報告を受け、上げてきた。
 という事はこの情報は既に上層部にも伝わっていることだろう。きっと王達の少なからず
が発作のように慌てふためく筈だ。嗚呼、頭が痛い。
「全く……。修行が終わる前に皇子達にもしもの事があったらどうするんだ……」
 あの食えない男の事だ。大方我々が渋い顔をするのが分かっていて、あちらでさっさと話
を進めたに違いない。いや、そもそも彼らの修行を一手に引き受けたのも、もしかしたらこ
の結びを当初から想定に入れての行動だったのかもしれない。

『そう、です。確かにいました。三人目の……男。芥子(からし)色のフードを被った魔導
使いです。あいつだ。あいつが、俺達を、滅茶苦茶に──ぁ、あぁァァァーッ!!』

 現在、ヒュウガ達が中心となって進められている“結社”討伐戦。
 現在、剣聖(かれ)が皇子達を放り込もうとしている世界屈指のレベルである武術大会。
 確かにより実戦らしい実戦として利用できるかもしれない。二年間の集大成として十二分
な舞台なのかもしれない。
 だが相手は“結社”なのだ。手塩にかけて育てていた部下に再起不能な傷(ダメージ)を
負わせて易々と聖浄器を奪い去った者達なのだ。
 あんな経験は、出来ればもうしたくない。墓の前で嗚咽する彼らの親族に、私は一体何が
できたというのか。
「……。どうするんだ……」
 誰にともなく、呟く。
 そんな上司(ダグラス)の姿を、エレンツァはただじっと見つめ、待っていた。
「長官」
「……ああ、すまない。そうだな。“剣聖”がいるのだ、そうそう大事には至らないとは信
じたいが……」
 気持ちを切り替えるように呼吸を整え直し、思う。
 問題は彼らの居場所がラグナオーツ──地底層であるという事だ。
 自分たち王貴統務院は、あくまでこの地上・顕界(ミドガルド)の統治機構である。それ
より「下」に在るあれらの世界群は万魔連合(グリモワール)の支配領域だ。
 だから拙い。もし万一の事があった時、自分達は下手に介入する事が出来ない。
 内政干渉になってしまうからだ。そもそも歴史的に万魔連合(グリモワール)と統務院は
一度限りなく戦争に近い交戦を経験している。加えて二年前の大都消失事件で招待した四魔
長達を巻き込んでしまい、上層部にも民らにも少なからぬ不信感を抱かせてしまっている。
 そんな状況で大っぴらに介入を強行すれば──間違いなく政治問題になる。
「とはいえ、何もしない訳にはいかないな」
 改めて深く息をつき、ダグラスはデスクの上の書類を眺めた。そして数拍思案し、棟内の
内線でとある場所へと導話を掛ける。
「……もしもし、私だ。セラ右席。急で悪いが君に一つ頼みたい事がある」

『此処では目立ち過ぎる。来い』
 地底闘技場(コロセウム)正面玄関前でジーク達の前に現れたウルは、そう言うとすぐに
踵を返して場内へと引き返していった。
 お世辞にも出迎えではなかったらしい。それでも一行は彼らの後についていく。
 外観の通り、コロセウムの内部は中央のドームを中心に四方の試合会場へと分岐する構造
のようだった。
 例年同じような感じなのだろうか。場内ロビーには既に多くの観客がごった返している。
 彼らは一様にチケットを求めて横並びの窓口に列を作り、或いは天井から吊り下げられて
いる大型の映像器を見上げて目当ての選手がどの試合に出るのかを事前に知ろうとしている
ようだ。
「へぇ……。ここ、地下もあるのか」
「地理を上手く生かした造りらしいな。これだけ高低差があれば、単純な床面積以上の収容
能力が見込める」
 一人また一人と人々とは別の窓口でエントリーを済ませ、ジーク達が戻って来る。
 手にはその時渡されたと思われる書類入りの封筒と、コロセウム内部の案内パンフレット
が握られていた。
「……それで? 何故彼らを連れて来た? リオ。お主、また儂の興行を引っ掻き回すつも
りではなかろうな?」
「? また?」
「あの。叔父さんって、前にもここに来た事があるんですか?」
 そんな中、人ごみの端に隠れ佇むようにしていたウルが、同じく佇むリオに静かな威圧感
で問い詰めている。そのやり取りを、ジークやアルスは聞き、ふと疑問に思った。
「……あるないなんてものじゃない。こいつはまだ“剣聖”などと大層に呼ばれる前、七星
に推されるより前、武者修行の一環で何年かうちの大会に出ていた事があってな……。まさ
に疫病神だったよ。毎年毎年、参加者を一人残らず斬り捨てては優勝を掻っ攫っていきおっ
た。おかげであの七年は商売上がったりだった。マンネリ化した興行でスポンサーが離れ、
どれだけ儂が腐心した事か……」
「……。マジかよ」
「あ、ははは……。その頃から、強かったんですね」
 二人が、手続きを済ませて戻って来た仲間達が、そう苦笑いをしながら互いの顔を見合わ
せる。一方で当のリオはそんな過去の事など何処吹く風という様子で、気持ち視線を逸らし
たままだ。
「昔の事だ。今回はただ、ジーク達の修行の成果を試したい」
「ほう……?」
 だがウルの疑いの眼は途切れない。ゆっくりと視線を戻してくるリオに、彼は新しい葉巻
の火を点けながら言った。
「一体、何を企んどる」
 そしてそれはイセルナやリュカ、一部の仲間達も既に嗅ぎ取っていた違和感らしかった。
 集まり直った皆の視線が向けられる。仕方ないか……。リオは呟き、尚もチケットを求め
映像器を見上げている人々を遠巻きに眺めながら話し始めた。
「言葉通り、ジーク達の修行の成果を見極めるのが一番の目的だ。だがそれ以外にも狙って
いる事はある。牽制だ。世界中に配信されるこの剣闘イベントで活躍するジーク達の姿を見
せつけることで“結社”を含めた敵性勢力の蛮勇を削ぎたいと考えている」
「……なるほど。だが奴らは神出鬼没だぞ? 儂らも警備には万全を期しておるが、そもそ
も今回の出場選手にこやつらを狙う刺客が混ざっておる可能性もある」
「勿論、承知の上だ。その上で戦って貰う。十や百、雑多な刺客すら捌けぬようではこの先
の戦いで特務軍などと看板を掲げてなどいられぬだろう?」
『──』
 さらり。問われてあっさり。
 そんなリオの、何気なくしかし全く聞かされていなかったハードルにジーク達は驚いて暫
し言葉を失っていた。だがリュカやイセルナ、アルスなどは既に予想していた事なのか、や
れやれと、或いはやっぱりかぁと苦笑いを零して佇んでいる。
「だ、大丈夫なんですか? それ。分かっててマスターを放り込むって事じゃ……」
「うん。でも、それを含めてリオの試練。だからそいつらも含めて倒して、ボクらの誰かが
優勝すればいい」
「そーいう事だ。何も“敵”がごちゃまんとしてるのは今に始まった事じゃねぇしな。いい
んじゃねえの? 分かりやすくて好きだぜ、俺は」
「ああ……。やってやろうじゃねぇか」
「はは。やれやれ……」
「リオ様の事だから、易しいものではないとは思っていたけれど……」
 血の気の多さは似たようなもので、ダンやジークが意気込みを新たにしている。
 一方でシフォンやリンファはそんな戦友(とも)の姿が不安で、守るべき兄弟(ひと)の
安全が気掛かりで、既に軽く頭痛の種が増えているようにもみえる。
「ふ……。伊達にあの一件を打破した連中ではないか。よかろう。存分に暴れ回るがいい。
だが既知とはいえ肩入れはせんぞ? くじも何も、公正中立に進めさせて貰う」
「ああ」
 興行主ウル曰く、地底武闘会(マスコリーダ)のルールは以下の通りだ。
 大会の全試合は大きく予選と本選に分かれる。先ずは出場選手が計八つのブロックに振り
分けられ、予選が行われる。これは各ブロック最後の一人になるまで戦うバトルロイヤル方
式で、ここで勝者となった八人が翌日の本選に進む事となる。予選とは打って変わり、こち
らはこの八人によるトーナメント方式だ。つまりは一騎打ち。より選抜された者同士の戦い
という事もあって、例年取り合いになるほどの満席になるのだという。
 因みに、勝敗条件については至極シンプルである。
 ダウンして三十細刻(セークロ)以上経つか、リングの外に出てしまうかで失格。
 後は剣だろうが銃だろうが何を使って戦っても構わない。仮に試合中に死んでしまっても
それは自分の力量不足という事で文句は言えない決まりになっている。
「──って、死んでも!?」
「ああ。受付で契約書にサインしたろうが」
 さらりと、何を今更と言わんばかりにウルが吐き捨てた。ジークが、ミアやサフレ達も同
じように先刻サインをしたばかりの書類を封筒から取り出し、検める。
「……。マジだった……」
 そこには、確かに“本大会中での死亡及び後遺症に関し、当運営はその責を負わないもの
とする”という条項が書かれている。
 流石にジークは閉口した。死ぬかもしれない程の実戦。それくらいの覚悟で臨むべき集大
成という訳か。
「だ、大丈夫かなぁ……」
「大丈夫です。アルス様は私が守ります」
「いや、ブロックの割り振りはくじだから、一緒とは限らないよ……?」
「ほれほれ。ジーク、んな暗い顔すんなって。見世物って時点でそんなもんだろうよ。要は
勝ちゃいいんだ。いつも通り、生き残る為に戦え」
「……はい」
「でも、そうなると困ったわねえ。下手をすると皆同じブロックで鉢合わせって事にもなり
かねないけど」
「その時はその時ッスよ。流石にそれだと、そこのオッサンが俺達を潰す為に細工したと疑
う観客も出てくるだろうし」
 あわあわ。呵々。
 家族(なかま)同士で潰し合うのが心苦しいイセルナに、そうグノーシュがウルの方をち
らと一瞥しながら言った。ふん……。当の興行主は特に何も言わずに葉巻から煙を燻らせて
いる。
「──出場者の皆さ~ん! これより皆さんを控え室に案内致します!」
「これから所属ブロックを読み上げますので、お名前を呼ばれた方は順に、そのブロックの
立て札の前に整列してくださ~い!」
 するとエントリー作業が一通り済んだのか、係員らしき男女数人がそうロビーで待機して
いた面々に呼び掛けた。「オーナー」同時にウルにも他の係員が何やらリストらしき書類を
持って来てひそひそと耳打ちをされている。
「さて……お前達も行け。控え室はここの地下だ。四方のドームにも通路で繋がっている。
係員が呼ぶまで、精々その無事を祈りながら待つんだな」
 言って、ウルは取り巻き達を連れてその場を後にしていった。いよいよ大会も本番が始ま
ろうとしているのだろう。ジーク達は、互いに顔を見合わせた。
「……。じゃあ、行くか」
 ぞろぞろと。
 そして左右の人の流れに──屈強な出場者達に交じって、九人と一体はリオやレナ以下残
る仲間達に見送られ、歩いていく。


「お~い、まだかー?」
「ちょっと待ってくれよ。地底層(した)のチャンネルなんて滅多に観ないんだから……」
 酒場『蒼染の鳥』(バー・ブルートバード)。
 大会一日目。留守番となった団員達は壁掛けの映像器の周りに集まっていた。皆が急かす
中、内一人が映像器の裏に回って色々と配線から何からと設定を変え直している。
「……これでよし。じゃあ、点けるよ」
 リモコン片手にこの団員が後退る。ぐるりと囲んでその時を待つ団員達を、常連客らを、
カウンター席の内側でハロルドはグラスを拭いながら見遣っていた。リカルドも壁際に背を
預けてじっと目を凝らし、オズも年季の入った常連客達に交じってぱちくりと茜色のランプ
眼を瞬かせている。

『──さぁ皆さん、お待たせしました! 本年の地底武闘会(マスコリーダ)、その前半戦
が始まります! それでは選手、入場っ!』
 同じく打金の街(エイルヴァロ)ではセド・アリシア夫妻らが。
 学院のユーディ研究室(ラボ)ではエマやシンシア、ルイス、フィデロ達が。
 輝凪の街(フォンテイム)ではサウルらが、トナン王宮ではシノ・コーダス夫妻が。それ
ぞれに自分達の居場所でこの集大成の始まりを待っている。加えてヴァルドーのファルケン
王を始め、各国の王らも此度のジーク達の参戦を知り、玉座や執務室からやはりその動向を
注視しようとしている。
 魔都(ラグナオーツ)の高台、観客満員御礼のコロセウム。
 四方に分かれる各ドームにて実況役のアナウンサー達が仰々しく叫んだ。同時に、これら
各リングへと延びる通路を隔てる大柵が唸りを上げて引き上げられ、今回の大会を戦い抜く
戦士達が次々に入場する。
『──』
 北棟・第一ブロック。屈強な戦士達の中で一際存在感を放つ、竜族の戦士が嗤っていた。
 東棟・第二ブロック。大柄な面々に交じり、ミアとサフレが神妙な面持ちで歩いている。
 南棟・第三ブロック。血の気多い戦士らの中、静かに舌を舐めずる魔導師の青年がいる。
 西棟・第四ブロック。少なからず周囲から警戒されつつ、ジークがその一歩を踏み出す。
『ここで簡単なルールを説明しておきましょう! 本日大会一日目は予選が行われます。計
八ブロックに振り分けられた選手達が、それぞれ最後の一人になるまで戦うバトルロイヤル
方式です。そしてここで勝ち残った八人が、翌日の本選にて激突します。こちらは予選とは
違ってトーナメント方式となっており、この一対一の戦いを最後まで勝ち残った選手が、栄
えある今年の優勝者となる訳です!』
『予選・本選共に、ダウンから三十細刻(セークロ)以上経つか、リングの外に出てしまっ
た時点で失格となります。さて今年は一体どんな猛者が勝ち上がってくるのでしょうか?』
 おおお……! 既に熱気に包まれている観客達と、会場。
 しかし今年はこれだけでは無かったのである。
 例の如く、ざっと大会のルールを説明した後、実況役らは一旦一呼吸を置くとさも満を持
してと言わんばかりにその一言を解き放つ。
『更に更に! 今年の大会は一味違います! 何と今回は、あの大都消失事件を解決に導い
た立役者、冒険者クラン・ブルートバード──あのジーク・アルス両皇子、レノヴィン兄弟
も参戦だあっ!』
 お……? オォォォォッ!!
 ばんっ演台を叩き付けて告げられたその情報に、数拍の驚きを経て観客達が沸点を大きく
跳び越えるようにして叫んでいた。
 何処だ? 何処だ!? 少なからぬ人々が辺りをきょろきょろと見渡して、入場してくる
選手達の中からそのメディアでしつこい程に見知った顔を捜そうとする。
「……余計な真似を。煙たがってた癖に、集客(こういうこと)はしっかりやるんだな」
 一方、そんな人々の熱狂を、当のジークは何処か冷めたように見上げていた。
 ギリギリ。拳を握り、早くも槍を取り出し、ミアやサフレも既に臨戦態勢だ。
「頑張れよ、ジーク!」
「頑張ってね。本選で会いましょう」
 背後、ちょうど本棟地下になる選手控え室で、ダンやイセルナ、後半戦に所属する仲間達
がそうエールを送ってくれていた。リングは四つあるが、あそこにはだだっ広い中に出場者
全員が収容されている。
「……ええ」
 肩越しに軽く手を振り、ジークは応えていた。
 だが正直、その内心は複雑だった。途中リオにその意図を聞いたとはいえ、あまりこうい
った趣向は好かない。
 単純に二年の修行の成果、それを試せるという高揚感があった。
 しかし一方で、戦いは、自分達の戦いは決して見世物なんかじゃないという反発もある。
 相反する感情が自分の中で沸々としている事に、ジークは少々戸惑っていた。故に意識せ
ずとも表情は険しくなる。ガチャ、ガチャ。腰に下げた三刀と懐に差した三剣がただ静かに
主の歩に合わせて揺れている。
「……いよいよ、だな」
「ああ」
 そんなジークを、ミアやサフレの姿を、観客席の一角に陣取っていたリオ達もまたつぶさ
に見つめていた。騒々しいほどに熱気溢れる周囲。だがクロムは、何時ものように、それで
いて何か思い煩うような面持ちをしている。
「リオ。本当に私は参加しなくても良かったのか? いざという時、ここからだけでは間に
合わなくなるかもしれないぞ?」
「それも含めて、だ。余程の事があれば俺達も動くが、基本俺達はあいつらの成長を確認す
ることに集中していればいい」
 ちら。リオが席に腰掛けたまま隣のクロムを一瞥していた。
 だがそれも僅かな間。再び彼は視線をリング上のジーク達に戻し、言う。
「それにお前は、公に出てしまうと色々言われるだろう?」
「……」
 レナやステラ、宿のチェックインと荷物置きから合流したイヨ達がその後ろの一段高い席
に座っていた。双眼鏡を回し合い、ドキドキワクワクと試合の開始を今か今かと待ち侘び、
或いは心配している。マルタとクレア、リュカの三人は第二ブロック──ミア・サフレの観
戦担当だ。
『それでは選手各位、準備は宜しいでしょうか?』
「……では、二人の方を観て来よう」
「ああ。頼む」
 相変わらずテンションの高い各リングの実況役が喋っていた。リング上でも審判と思しき
男らが殺気漂う戦士達の輪の外に立ち、構えるよう指示を出している。
 ミアが静かに呼吸を整えていた。サフレがひゅんと槍を回して両手に握り、クロムがそう
言って一人席を立つ。
「……」
 ジークは未だ抜かなかった。二刀を腰に差したまま、ゆっくりと腰を沈める他の選手達の
中でただじっと、待つ。
『それでは予選前半戦──開始(スタート)ッ!』
 実況席横の係員が、大きなドラを鳴らす。
 刹那、四つのリング上の選手達が、一斉に雄叫びを上げて駆け出した。

「おぉぉぉぉっ!」
「はぁァァァーッ!」
 開戦(ゴング)と同時に、各リング上で数百人単位の乱闘が始まった。そんな轟音に負け
ず劣らず、観客達の声援も天井知らずに大きくなる。
 あちこちで、剣と剣がぶつかった。選手達は試合開始直前までリング上を睥睨し、目の合
った相手に片っ端から挑んでいく。或いは斧、或いは槍。オーラを纏った身体と得物でもっ
てぶつかり合う。
 だが何も、この混戦は一対一を推奨するものではない。予選開始直後から、生き残る為に
違った戦略を取る者はいくらでもいた。
 一対一でぶつかる者達を強襲し、漁夫の利を得る者。元よりチームだったのか、一人ない
し少数に対し集団で襲い掛かっていく者。
 剣と斧が克ち合う中、その背後を槍で貫く者がいた。敢えて戦線から一歩引き、二丁拳銃
で次々とライバルを撃っていく者もいる。──そんな銃使いを、側方から魔導師の炎が周り
の戦士達を巻き込みながら駆け抜ける。
「ふ~、ラッハァ!」
「げばっ!?」
『おーっと、また一人撃沈! 流石はクラン・クオーツパーティー団長“金剛石”のディア
モント。第一ブロックの台風の目となるか!?』
「食い殺せ、我が眷属達よ!」
「ひいっ!」
「ま、止め──」
『強烈ぅ~! 歴戦の猛者達が次々に爆発に巻き込まれていく! 迎心街きっての賞金稼ぎ
“狩人”エイカー。今回初参戦ながら、最初の予選突破者となるか!?』
 そして、ジーク達以外の第一・第三ブロックでも、選手達の中で頭一つ抜きん出ようとし
ている者らがいた。
 一人は鎖帷子(チェインメイル)を纏った大柄な竜族の戦士。そのオーラに包まれた右半
身はまるでダイヤのように白く輝く結晶と化している。
 もう一人は魔導師風の人族(ヒューネス)青年。次々とそのオーラを練った両手から生み
出される狼型の使い魔に噛み付かれる度、対峙するライバルは大きな爆発に呑み込まれる。
「つぅ……!」
「──」
「くそっ!」
「一繋ぎの槍(パイルドランス)──」
 第二ブロック。サフレとミアが割り振られたリング上。
 周りで多くの選手達がしのぎを削る中、二人もまたその首を狙われていた。ブルートバー
ドの団員。それだけで彼らにとっては勝ち取るだけの功名(かち)がある。
 振り下ろされる剣、突き出される槍。しかしサフレはそれらを全て見切った上でかわして
いた。目にオーラの輝きがある。見氣だ。次々と襲い掛かる彼らの動線を縫うように左右へ
身を捌き、ぎゅうと縮めたその手槍を脇に引きつける。
「迅(スプリング)!」
 瞬間、突き出され収縮を解き放たれた槍先が直線上のライバル達を吹き飛ばした。
 目にも留まらぬ速さだった。サフレの手元にはただ元のサイズの槍と煙の残り香のような
オーラが漂い、ごっそりとすぐ隣が空っぽになった選手達が青褪めている。
「調子に!」
「乗るなよ!」
 そこへ、別の銃使いと魔導師が仕掛けてきた。オーラを込めた弾丸と、雷の魔導がサフレ
に目掛けて飛んでいく。
「……」
 だが彼は落ち着いて、二人を一瞥するとサッと襟元の楯なる外衣(リフレスカーフ)を広
げて視界を遮るように駆け出していた。「ぎゃっ?!」外見以上に大きく広がった魔導の布
が銃弾や雷撃を弾き返し、この二人を含め周囲の戦士達を散々に巻き込む。
「あ、危ねぇな、馬鹿野郎!」
「出しゃばるんじゃねえ。すっこんでろ!」
「何を! 束で掛かっても取れない癖して──」
 喧々。元より団結など無い選手達は咎め、そして口論になり始めた。
「ぐっ!?」「おぶっ!」「ガッ……?!」
 しかしそんな暇など、この戦いにはない。
 次の瞬間、収められていく楯なる外衣(リフレスカーフ)を陰にしながら地面を蹴ってい
たサフレの流れるような動作によって、穂先・石突・蹴り。多段の攻撃が彼らの顎や鳩尾へ
と打ち込まれ、倒れる。
「はあァーッ!!」
 一方でミアも、功名心から襲い掛かってくる大人数の戦士達を相手に一騎当千の活躍をみ
せていた。
 相手の力をいなし、利用して入り込み、打ち込む。
 たった一人の猫耳少女の前に、戦士達は次から次へと倒されていた。顔に傷跡のある男が
大斧を振り下ろすが、これもミアは右掌底でサッといなすと同時に彼の懐へと入り込み、左
の肘鉄がその顔面へと吸い込まれる。
 大いに凹んでぐらりと後方へ倒れていく。そんな彼女の背後を、また別の数人が取って襲
い掛かろうとした。
 しかしミアは肩越しにその動きを一瞥すると、この斧男の顔面を片手で鷲掴みにして地面
に叩き付けると踏み台にし、彼らの斜め側面から鋭い蹴りを打ち込んだ。まるでしなるよう
に逆立ちした彼女の脚が彼らの顔面に吸い込まれる。どうどうっと、結果白目を剥いた彼ら
はリングの上に転がり、彼女を取り囲んでいた戦士達は思わず一人また一人とたじろぐ。
「な、なんて奴だ。これだけ束になっても掠りすらしねぇ……」
「流石は副団長“紅猫”の一人娘ってか。丸腰だからって甘く見過ぎた……」
 だがそんな時だったのである。
 ズンッと、そう攻めあぐねていた彼らの背後に、新たに二人の人影がこの場へと近付いて
来た。それを実況席のアナウンサーが見て身を乗り出し、叫ぶ。
『おおっと、ここで大会常連組の登場だー! 一昨年の一撃五十人抜きは今もラグナオーツ
市民の語り草、ハンマー・スミス!』
「ふん。だらしのない奴らだ、退いていろ」
『その変幻自在の投剣は回避困難! “戯剣”使い、ピエール・ド・シャルハン!』
「ほほう? 可愛らしい仔猫ちゃんじゃないか。ククク……切り刻み甲斐がありそうだ」
 一人は浅黒く隆々とした身体の、巨大な鎖鉄球を引きずった大男だった。
 一人は対照的にひょろりとし、しかし猟奇的な笑みが不気味な二刀の曲剣を持つ男。
 粗方襲ってくる敵を捌き終えたサフレとミアも、それぞれに並んでこの新しい刺客と黙し
て相対していた。実況役の紹介ボイスもあり、観客達のボルテージも更に上がっている。

 ──練習用の石人形に、鋭く大きな穴が空いた。
 サフレは自身が放つ事ができたその一撃に驚き、オーラがくゆる己の手槍を目を見開いて
見つめている。
『ふむ。どうやらこれが君の色装のようだな。《矛》──オーラに刺突を付与する性質か。
リオと同系統のものだな』
 修行を見てくれていたクロムからの一言。だがサフレはそんな朗報がもたらされたにも拘
わらず、暫し覚醒した自身の能力にじっと思案をしていた。
『……地味じゃ、ないだろうか?』
『もっとジークのような、か?』
『……。ああ』
 知識として解ってはいる。だが正直力を得ても不安だった。
 修行が始まってからもう一年以上。クランメンバーの中には既に覚醒し、その鍛錬へと軸
を移した者も少なくない。
 しかしクロムは一度軽く目を瞑ったものの、淡々とした表情を変える事はなかった。それ
でも、投げかける言葉はその歳月の中で確実に“仲間”のそれへと変わりつつある。
『色装とは魂の形、性質を反映したものだ。それを恣意的に変える事はできない。私は良い
と思うぞ? 研ぎ澄まされた槍の如く貫く意思、強さの象徴──リオと同様、自身の得物に
ぴったりの力じゃないか』
『……随分と臭い台詞を吐く』
『要は工夫次第さ。自分の、自分だけの力で何が出来るのか。他人を羨むより先ず、それを
考えるべきだ。補完し合えるからこその仲間、なんじゃないのか?』
『……』

 ──彼女が練ったオーラがその姿を得た時、流石のリオもついと片眉を吊り上げた。
 ミアだった。実直にただ只管実践と瞑想を繰り返し、当初とは比べ物にならない程の錬度
となったそのオーラは、遂に彼女だけの形を獲得するに至る。
『ほう……。これは珍しい』
『? そうなの?』
『ああ。おそらく《盾》の色装で間違いないだろう。強化型の一種だ。オーラの外側に強い
反発力を、内側に包容力を持つ二面性のある色装だ。見ろ。お前のオーラの内側と外側で、
地面の削れ方が違う』
 促されて見れば、確かにミアが練るオーラの外周を縫うように、土がじりじりと抉れてい
こうとしているのが見て取れた。
 なのにオーラの内側、彼女の身体近くには全くそのような気配がない。寧ろ不思議と、心
落ち着くような感覚すらある。
『ボクの……色装……』
『ああ。勤勉さの賜物だな。或いは《盾》として発現するほどに“守りたい何か”がお前に
はあるのか』
『……』
 真顔で言われる。数拍の沈黙の後、彼女の頬が若干赤くなる。
 自覚はあった。瞑想を、修行を繰り返す中、想っていた事がある。
 アルスだった。一度は守ろうとして倒れ、自ら危険を冒してまで心配されてしまった苦い
経験がある。こんな怪力女でもちゃんと一人の女の子として扱ってくれる、そんな心優しい
あの笑顔を守りたい。彼が守りたいと願うこの仲間達を何としてでも守りたい──。
『……あまり俺が口酸っぱく助言する必要はなさそうだな。引き続き鍛錬を続けろ。尤も、
あまり一つの念に寄り掛かり過ぎてもいざという時に脆くなってしまうリスクはあるが』
『……はい』

「俺の色は《鎚》、打撃を加える能力だ。練れば練るほど、俺の相棒は無敵になる!」
「逃げられないよ……。さぁ、美しく鮮血して(おどって)見せてくれ!」
 全身に大量のオーラを纏い、スミスが高速で鎖鉄球を振り回し始めた。シャルハンも曲刀
を手に、コートの下から更に多数のオーラを纏った曲刀を空中へと投げ放つ。
『……』
 サフレが一瞬で槍を込めたオーラごと縮め、ミアが静かに呼吸を整えて立つ。
 スミスの鉄球が、シャルハンの《傀》の色装で遠隔操作された曲刀達が襲い掛かる。二刀
を交差させて、シャルハン自身も獲物(ミア)の柔肌向かって突っ込んでくる。
「一繋ぎの槍(パイルドランス)──迅突(スラスト・スプリング)!」
「ふっ──!」
 だが拮抗は、そんなほんの一瞬でしかなかったのだ。
 サフレの放った槍とスミスの放った鉄球。両者はそのインパクトの瞬間こそかち合ったよ
うに見えたが、次の瞬間にはあっという間に鉄球の側がオーラを湛える槍先に砕かれ、貫か
れ、驚きで目を見張ったスミスを直後そのままリング外の壁へと叩き付けて巨大なヒビ割れ
を刻んだ。
 ミアに向かい、四方八方から襲い掛かったシャルハンの投擲曲刀。
 だがそれらは彼女がオーラを練り、瞬間彼女を覆うように硝子のような球体になったその
表面にぶち当たると一切の例外なく粉々に砕けた。「へっ……?」シャルハン自身の二刀も
同じ。結果彼女に対して前のめりな格好になったその顔面は、直後この球形のオーラを拳に
移した彼女の一撃によって地面に叩きつけられたのだった。
 不細工に白目を剥き、歯も砕けて血を撒き散らし、この優男は丸く凹んだ地面の中心で防
御一つできぬまま轟沈する事になる。
『…………』
 他の選手達が、観客達が暫しこの結果に呆然としていた。
 大会の常連、ややもすれば本選出場もありうる選手を、この若き二人はあっさりと倒して
しまったのだから。
『……な、何という事でしょう! 一撃、一撃です! フォンティン選手、マーフィ選手、
この二人を瞬殺したーっ!!』
 おぉぉぉぉぉぉぉッ! だがややあって実況役の叫びによって、観客達のボルテージに再
びが火が点る。
 鳴り響く轟音のような歓声。方々からの、二人やブルートバードの名を呼ぶ声。
 だがサフレもミアも、元サイズの槍を引き寄せながら拳を引きながら、あくまで狙いは残
る選手達へと向いている。
「ひっ──!?」
『凄いぞ、凄いぞクラン・ブルートバード! まさしく本年の台風の目になりそうだッ!』


 時を少し前後して、コロセウム本棟ロビー。
 アリーナに入りそびれた人々に混じり、ブレアは一人この中央に下がっている映像器越し
に予選前半戦各ブロックの試合を眺めていた。
「……」
 内外で沸き立つ観客達の熱気。
 だが彼だけは、そんな人々の熱狂を遠巻きに、何処か冷めたようにして眺めていた。
『圧倒的ィー!! 前半戦早々に本選出場を決めたのは、第一ブロック“金剛石”のディア
モントぉ!』
『これで撃破百人目! エイカー選手、次々に並み居る強豪を打ち負かしています! 第三
ブロックの勝者は彼で決まりかーっ!?』
 映像器には、ブルートバードの面々以外にも他のブロックでの試合状況もリアルタイムで
伝えられていた。
 どうやら一人本選に進む選手が決まったらしい。竜族(ドラグネス)──最強の古種族。
 かつてはその裏切られた歴史から表舞台に出る事を戒めてきた者達だが、それでも時代は
良くも悪くも進んだのか、今ではこうして剣闘に出場するような、冒険者をやっているよう
な者も少なくなくなっている。
『ジーク選手、また一挙纏めてぶった斬りィ~! 二年前よりも格段に腕を上げている模様
です!』
 一方で、第四ブロックのジークも順調に勝ち進んでいるようだった。
 映像越しとはいえ、何となく自分と似た雰囲気を感じるのは、彼の横顔が少なからず気乗
りしない風で、あくまで迎撃という形で剣を振るっているように見えるからか。
(……皮肉なもんだよな。戦いまで娯楽にするだなんて)
 ブレアは小さく哂う。それが彼の、先程からの冷めた目の理由だった。
 おかしいではないか。あれほど“結社”の脅威に怯え、平和を個々の安寧を願うのに、そ
の一方でこうして人々の側から戦いを求めるという構図がある。
 リアルとショーではまた違う、と言えばそれまでなのかもしれない。
 だが力が力として振るわれる以上、誰かが傷付き、時には死んでしまう可能性を孕むのは
変わらぬ事実である。
 尤もそれらを承知で生業とし、魔獣退治や傭兵、賞金稼ぎとして各地を渡り歩くのが彼ら
冒険者という者なのだが。
「……俺も随分、日和っちまったもんだ」
 自嘲。そう誰にともなく呟く。
 だが──ちょうどそんな時だった。
 カツン。ロビーの床の上を歩き、覚えのある気配が背後から近付いて来るのが分かる。
 今は益体の無い思考を排し、ブレアは後ろを振り返った。するとそこには、少し離れてこ
ちらを見ているクロムの姿がある。
「此処にいましたか」
「……アルス達は、まだ出番じゃないみたいなんでね」
 言って、彼が言葉少なく隣に歩いて来た。一緒になって並び、暫し天井から下がるこの映
像器越しに前半戦の模様を眺める。
「三人とも、今の所順調みたいですね」
「ええ。リオではありませんが、あの程度で敗れてしまってはこの先が思いやられます」
 クロム曰く、リオに代わってサフレとミアの見極めに行くのだという。その途中でイヨ達
に自分の姿が見えないのだが、探しておいて欲しいとも頼まれたとの事。
「そうですか……。まぁ気が向いたら戻りますよ。尤も、結果はぼちぼち出そうですけど」
「ええ」
 しかし──。クロムは一旦言葉を切った。一人になりたいというブレアの感傷に気付いて
いるのかいないのか、彼は映像器から視線を戻すと、その黒く真っ直ぐな瞳を向けて言う。
「私の方(こっち)は一波乱ありそうだ。やはり、潰し合いになりそうです」

 どうっと最後のライバルが倒れ、リング上はミアとサフレの二人だけになった。
 予選第二ブロック。数多くの出場者で混戦を極めた此処も、いよいよその勝者が決まろう
としていた。
『さぁさぁ! この第二ブロックもいよいよクライマックスとなりましたァ! ご覧の通り
リング上に残るのはブルートバードの二人。本選に進むのは一体どちらなのかっ!?』
「……結局こうなったな。どうする? リオさんからの課題を考えれば、より確実な方が本
選に進むべきと考えるが」
「愚問。お父さんやグノーシュおじさんも言っていた。ボクは、手は抜かない」
 実況役が観客達を焚きつける中、サフレの言葉にミアは問答無用だった。ぎゅっと拳を握
り直し、カツンと「やれやれ」と苦笑する彼の方へと向く。
「マスター、頑張ってくださ~い!」
「ミアちゃんも、頑張って!」
「え。えっと……。ふ、二人とも頑張れ~!」
 オォォォォ! 割れるような歓声の中、マルタやリュカ、クレアもそれぞれに二人へ声援
を投げていた。リング上でたった二人、サフレとミアは槍を構え拳を握り、間合いを取って
対峙する。
「一繋ぎの槍(パイルドランス)──」
 刹那、噴出するように湧き上がったオーラを己の中に畳み込み、サフレは槍を縮めた。
 同時にミアも、両拳に球形のオーラを纏わせて真っ直ぐに地面を蹴る。
「迅突(スラスト・スプリング)!」
 目にも留まらぬ速さだった。並みの使い手ではこの初撃で沈んでいただろう。
 だがミアはこれを紙一重のタイミングでもっていなし、サフレの間合いへと拳を打ち込も
うとした。しかし彼も彼で、即座に槍を引き寄せて回収。二発目三発目の刺突を撃ち出し、
彼女の球形のオーラ──《盾》の拳と何度も激しくぶつかり合う。
(……近接戦闘では彼女に分がある。中から遠距離を維持しなければ)
(……懐に入り込めなければ勝負にならない。この槍を、何とかしないと)
 入れ替わり立ち代わり。幾度となくサフレの射出する槍に迫られ、それをかわしつつ幾度
となく拳を打ち込もうとし、二人は暫くリング上を縦横無尽に駆け回りながら攻防を繰り広
げた。
 ギィンッ! ミアの《盾》の拳がサフレの槍とぶつかり火花を散らし、されどギリギリの
所で接触点をずらし、彼女が地面を蹴る。それを彼は槍を引き戻しながら尚且つ、もう片方
の手の指に嵌めた魔導具で雷撃を放ち、妨害する。
 一旦二人が距離を取った。左手の指輪に魔力(マナ)を込め、左手を添え、右手の五指を
鷲掴みのように構えを取る。
『……』
 ちょうどそんな中で、リュカ達のいる席にクロムとブレアが合流してきた。
「──来い、石鱗の怪蛇(ファヴニール)!」
「三猫(さんびょう)、必殺──!」
 次の瞬間、二人が大技をぶつけ合った。
 サフレは召喚系の魔導具から、全身が岩で出来た大蛇を。
 ミアは牙を剥く、巨大な猫のようなオーラの塊を。
 轟。二つの力がぶつかり、大きく爆ぜた。互いが互いに相手に組み付いて噛み付き、ひび
割れながらほぼ同時に四散していく。
 きゃあ……! 観客達は思わず手で庇を作って自らを庇っていた。数拍。リング上に残っ
ていたのは立ち込めるオーラの残滓で、尚もサフレとミアはお互いに対峙したまま気難しい
表情(かお)で向き合っている。
「……中々、決まりませんね」
「そうだな。お互いの色装が正反対な性質である事も影響しているのだろう」
「しかも実力はほぼ伯仲。こりゃあ僅差の戦いになるな」
「マスター……」
 クロム・ブレアを加えた観客席の仲間達が固唾を呑んで見守っていた。周りの人々も、同
じようにこの一騎打ちの行く末に目を離せない。
『──』
 そして、遂に二人は動いた。
 サフレは左腕を捲くり、手甲型の魔導具・三つ繋の環(トリニティフォース)の三つのス
ロットの真ん中に一繋ぎの槍(パイルドランス)の指輪形態をセットした。
 ミアも今までにない程に膨大なオーラを練り込む。それらを、全身を大きく包んで余りあ
るそれを一気に右拳一つに集中させ、大きな大きな球形の《盾》を作る。
「一繋ぎの槍(パイルドランス)──」
「……っ!」
「剛突(スラスト・ギガンツ)!」
 発動と同時に、サフレの右腕に巨大な巻き取り式の錨が形成されていった。
 以前、大都消失事件でその外壁を守っていた巨人族(トロル)の信徒を粉砕した大技。そ
れを今ここで、ミアに向かって撃ち放つ。
 地面を蹴る。だが彼女はその攻撃を避ける事はしなかった。
 勝負! あたかもそう言わんばかりに、真正面からこれを受けて立ち、その大きな《盾》
の拳をぶつけたのである。
「ぐっ……!?」
「っ、くっ……!」
 バリバリッ、お互いの全力全開の一撃がぶつかった。文字通り拮抗する。溢れ出す膨大な
エネルギーが観客席の人々まで届き、次々と気中りをすら引き起こす。
 マスター! ミアちゃん!
 仲間達も目を見開いてこの激突を見遣った。最初こそ、単純な質量で勝るサフレの巨大槍
がその射出の勢いのままミアを押し切っていくかのように見えた。
「……」
 だが、奔流の中、少しずつその状況は変わっていったのである。
 耐えるミア。その《盾》の拳が、少しずつ削られながらもじりじりっとサフレの槍を押し
返し始めていたのだった。

『或いは《盾》として発現するほどに“守りたい何か”がお前にはあるのか』

 目の前の巨大な攻撃(あいて)に、諦めそうになる。
 だがそんな時彼女の脳裏に過ぎったのは、リオの言葉。あの時自覚し、ほうっと頬を赤く
染めた時の自分自身。
 そうだ。ボクは強くなるって誓ったんだ。
 アルスにもうあんな哀しい笑顔をさせないように。
 彼が願う、ボクが願う、仲間達(みんな)の笑顔を……守るんだ。
「はあァァァァァーッ!!」
 そして、その振り絞った力は文字通り彼女の最後の一押しとなった。
 ミシッ! サフレの剛(ギカンツ)が切っ先から、徐々に軋みながらひしゃげていく。
 サフレは思わず目を見開いた。その間にも、ミアは雄叫びを上げながらメキメキとこの巨
大な射出機構を破壊しながら突き進んだのである。
「ぐっ……がぁッ!?」
 砕けた。ミアの踏ん張り、《盾》がサフレの《矛》を防ぎ切ったのである。
 バラバラに壊れた剛(ギカンツ)のパーツがリング上に散らばる。本来の形を失って次々
に現出が解け、どうっとサフレ自身も吹き飛ばされてリングの端へと倒れ込む。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
 ミアも汗だくになってその場に立ち尽くしていた。拳を纏っていた球形のオーラは随分と
磨耗して、彼女が肩で息をするのに合わせてシュウシュウと霧散していく。
「……。参ったな、まさか壊されるなんて」
 リングの石畳の上で仰向けになり、サフレも大きく胸を上下させながら息を荒げていた。
 ざわざわ。リュカらを含めた観客達も、どうなったのかその結果を注視している。
「……君の勝ちだ。僕はもう、これ以上動けそうにない……」
 オォォッ?! 故に刹那、観客達は歓声を上げた。クロム達が小さく息をつく。唯一己が
主人である彼が負けた事がショックでしょぼんとするマルタを、リュカとクレアが優しく慰
めている。
『勝負ありーっ! 勝者はミア・マーフィ! 第二ブロック本選出場者はクラン・ブルート
バード所属、ミア・マーフィ選手ですっ!』

「ジーク・レノヴィンっ!」
「覚悟ッ!」
 西棟・第四ブロック。其処ではジークが、開戦直後から多くの選手達に狙われていた。
 無理もなかろう。彼はあまりにも有名になり過ぎた。
 これまでに重ねてきた──しかし十中八九彼の内心の労苦など知るまい──その実績。
 この若き皇子を取れば、間違いなく名を挙げられる……。
 そう目論む周りの選手達が、試合開始前から睨み付けように狙い定め、いざこうして開戦
のドラが鳴った瞬間大挙してジークに襲い掛かってきたのだ。
「……」
 だがジークは物怖じしない。飛び込んで来る、優に十数人はいようかという者達の初撃の
山を、彼はざらりと抜き放った二刀ただそれだけで全て受け止めてみせていたのだった。
「なっ……!?」
「何て、膂力……!」
 バチンッ。驚く彼らをそのまま力押しで弾き返し、逆手に抜かれた左手の蒼桜をくるりと
宙でひっくり返して順手に持ち直しながら、ジークは深く息を吸いつつ彼らを睥睨した。
(……とりあえず、気装の方から確かめてみるか)
 考え、静かにオーラを練り始める。
 先ずは集氣。魔力(マナ)を取り込み、地の魔力量を溜める技術だ。
 こんのッ──! 側面から大鎚を振りかざす戦士が迫る。だがジークはその動きなどとう
に承知の上で内心反復していた。
 次は錬氣。体内の魔力(マナ)をオーラとして練り上げ、武器や全身の様々な部位を強化
する技術。
(腕に集中すれば、腕力)
 ギンッ! ダルマ落としよろしく振り抜かれた男の一撃は、即座に錬氣で強化されたこの
ジークの左腕──遮るように突き出された蒼桜の刃によって止められる。
 何……っ!? 明らかな体格差。しかし微動だにしない相手の膂力。
 男は驚愕で次の行動にすら後れを取った。ジークはそれを、見逃さない。
(脚に集中すれば、脚力)
 今度はオーラの中心を下半身へと移しながら、この大鎚を弾いて跳び上がる。
 まるで舞うようだった。男の顔面側方に跳んだジークは飛び出した勢いのままぐるんと身
体を回転させ、そのまま落下するに任せて上から下へ、二刀でこの男の身体をざっくりと袈
裟懸けにして斬り捨てる。
「ガッ……?!」
 どうっと倒れる男。されど着地もほどほどに周りの他の戦士達が必死の形相で襲い掛かろ
うとしていた。
 突き出される剣、槍。振り出される矛、斧。
 それらの軌道をジークは一瞬で読み取るとその隙間に身を収め、彼らが互いに自滅し合う
のもそこそこに地面を蹴りながら一閃を放つ。だばっと、刹那また十数人単位のライバル達
が血を撒き散らしながらリング上に散る。
「何をしてる!?」
「相手は剣士だ。射殺せ!」
 そこへ更に今度は数名の銃使いと、詠唱を始める魔導師らが立ちはだかってきた。
 一斉に向けられる銃口、放たれるオーラの篭もった弾丸。
 続いてそれらを追い越すように炎や氷、風といった魔導の攻撃が飛んで来る。
(目に集中すれば、視力)
 三つ目は見氣。両目にオーラを集中させ、普段は知覚しにくい流動する魔力(マナ)の実
体をつぶさに観察する技術。
 駆けながら、途中で襲い掛かってくる戦士達を一人また一人と斬り捨てながら、ジークは
確かにこの無数の遠距離攻撃を観ていた。
 ……落ち着いて対処すれば何て事はない。銃弾ならば尾を引くオーラを、魔導ならば術者
から攻撃本体に伸びる魔流(ストリーム)の軌道を読めば、ある程度どの辺りにどれくらい
の速さで飛んで来るのかが分かる。
「トナン流錬氣剣──八旋(やつむじ)!」
 飛び込んで来る弾丸を、攻撃魔導を、ジークは的確に直感的にかわしながら螺旋を描くよ
うに距離を詰め、一気に剣技を叩き込んだ。
 ギャアッ──!? 八つ、九つ? 彼らの目にも留まらぬ流れるように迫ってくる斬りや
突きの連鎖が、直後彼らをそのねじ切る渦に巻き込むようにして斬り刻む。
『は……早い! あっという間に四十人近い選手がダウンしました! 尚もレノヴィン選手
の進撃は続きます!』
 外野の、功名よりも確実に一人一人を潰そうと戦っていた他の戦士達が少なからず、唖然
としてこちらを見ているのが分かった。剣戟と歓声。されど当のジークには実況役のような
アナウンスは心地悪い。
(……ん?)
 するとその最中にあって、尚もジークを狙おうと身構える者達がいた。
 周囲から二波・三波。
 じりじりと、その戦士や術師達は明らかに先程までの者達とは異質の、尋常ではない殺気
を纏っているように感じられる。
(もしかして、リオが言ってた紛れ込んでる刺客、か……?)
 眉間に皺。だがそうだと仮定すれば辻褄は合う。
 エントリーの際に彼が言及していた通り、おそらく奴らは“結社”の息が掛かっている者
達なのだろう。ならば遠慮は要らない。修行の成果を存分に発揮する時だ。
「ぐあっ!?」
「がはっ……!」
 尚も四方八方から迫ってくる戦士達を捌きつつ、ジークはひゅっと紅梅の刃先を密かに最
寄の魔流(ストリーム)へと絡めた。
 見氣が無ければ知覚できないそれ。
 ジークは絡めたこの魔力(マナ)の束を放り投げるように刃先を小さく払いつつ、その糸
先が自身の背中に挿さる瞬間、クッと耐えるように表情を引き締める。
「──接続開始(コネクト)」
 それは二年前、リュカの手を借りなければ使う事すらできなかった独自の強化術だ。
 世界中、ありとあらゆる場所に漂う魔流(ストリーム)──魔力(マナ)の束を直接己の
身体に挿し込む事で、一時的ながらその導力を爆発的に高める事が出来る。
 修行の末、ジークそれを独力で且つより負担に耐えられるよう自身を作り変えたのだ。
「……ッ!?」
「消えた……?」
 故に、刺客達は総じてそう思ったことだろう。
 大量のオーラを抱え込み、そのスペックを通常以上に引き上げたジークの動きは、彼らに
とってはまさに目にも留まらぬ速さだったのだ。
「ガ──ッ?!」
「げふっ!?」
 故に、蹂躙される。
 次の瞬間、刺客達は次々に何者かに──言わずもがな高速で立ち回るジークに攻撃され、
倒れていった。それでも彼らは一体何が起こったのか分からず、ただ狼狽する。
「ぎゃッ?!」
「っ、そこか!」「この野郎!」
 しかしようやく同胞達を犠牲にし、動きに追いつこうとしたその時、ジークは次の手を打
っていた。また一人、斬り捨てた刺客の傍に残像を残しながら姿を見せ、されどその直後蒼
桜の斬撃をリングに叩き付けて濛々と土埃を舞い上がらせたのである。
「うわっ!?」
「チッ……。煙幕か」
 舞い上がった土埃。果たしてそれは刺客達の視界を奪う為のものであった。
 尤もそれは理由の一つに過ぎない。本当はもう一つ、ジークが自身の戦いを“見世物”に
したくないという思いがあったからなのだが。
「ぎゃあッ!!」
 そして直後、また一人刺客が切り伏せられた。
 何処だ? 彼らは必死になって周りを見渡すが、先程とは違って視界は舞い上がった土埃
で広く妨げられている。
「……まさか。断氣か」
 そして悟る。いつの間にか、ジークの気配(オーラ)が視えなくなっている事に。
(断氣。オーラを閉じ込める技。……これは案外使えそうだな)
 それまでの大きなオーラ量を全身で蓋をするように閉じ込め、ジークはあたふたと周りを
見渡している刺客達の隙を窺っていた。
 閉じ込める。その意味では一応、見氣とも併用できる。今のように相手の数が多い場合に
はこうして確保撃破に持ち込む事も可能だろう。
「がっ?!」
「くそっ、また!」
「おい馬鹿止めろ! 見えない状況で無闇に攻撃を撃つんじゃない!」
 まだ土埃は晴れない。その間に、刺客達は次々とジークの奇襲戦法に沈んでいった。
 必死に見氣も併せて居場所を探る。だがそもそも彼が今抱え込んでいるオーラの量は視覚
で追い切れないほどの速さを生んでいるし、何よりこう視界が悪いと下手に得物を振り回せ
ば同士討ちの危険性を孕む。
『──』
 そして……ややあって土埃が晴れた時、そこには何人もの倒れ伏した刺客(せんしゅ)達
の姿があった。
 黙々、ギラリと。
 ただその中に一人、ジークだけがコートを揺らしながら、二刀を手に下げて佇んでいる。
『……こ、これは凄まじい事になっております! ジーク選手、またもや自身に迫る挑戦者
を薙ぎ倒し──』
「ほう。面白い技を使うんだな、お前は」
 だがそんな多くの面々が驚き言葉を失う中で、一人の戦士が何処か嬉しそうに嗤いながら
進み出ていた。
 分厚い鎧に身長大の重剣を持つ大男。
 赤い髪と褐色の肌という事は……蛮牙族(ヴァリアー)か。
「魔流(ストリーム)を挿して導力を底上げか……。そのドーピング、身を滅ぼすぞ?」
 しかしジークは答えない。ただ肩越しにじろっと彼を睨み、ゆっくりと向き直り、この新
たな挑戦者と暫し間合いを取り合って身構える。
『おっと、今度の相手はハリー・ブレイド選手のようです! これまで数多くの大型魔獣を
屠ってきたその剣を、ジーク選手は如何に攻略するのでしょうか?』
 実況役のアナウンス。じりじりっと、二人は構わず初撃の瞬間を計っていた。
 風が吹く。その次の瞬間、両者はほぼ同時に地面を蹴り、互いの武器を激しく激突させ始
めた。
「オラオラオラオラァ! ははは、いいぞいいぞ! 若いのに大した腕だ。俺とここまで打
ち合える奴は久しぶりだぜ!」
「……そりゃどうも。だがオッサン、そんな余裕こいてていいのかよ」
 うん? 傍目からには文字通り霞むような斬撃の打ち合いの中で、そうジークは言った。
 この大男──ハリーが一瞬怪訝な表情をする。だが彼はそれを単なる若さ故の負け惜しみ
と捉えたのか、また呵々と笑ってその重剣を薙ぎ払う。
「ふっ──」
 しかし、結果的にそれは驕りだったのだろう。
 ジークはその瞬間、大きく跳んでこの刀身を踏み台にするように高く高く跳び上がった。
ハリー本人も、他の選手や観客達も、彼のこの跳躍に思わず目を見開いて天を仰ぐ。
「と、飛んだ!?」
「錬氣の応用だな。一瞬で脚力に全振りしたか」
「でも、あんな高く跳んだら狙い撃ちにされちゃいませんか?」
「そ、そうですよ! あわわ。ジーク様……」
「……」
 観客席にいたレナやステラ、イヨがこれを隙をみせた事にならないかと心配する。しかし
対するリオは、ただ淡々と解説したまま、この高く跳んだジークの姿を見上げたまま慰みの
一つも言わない。

『──こ、これが、俺の……色装……??』
 修行を始めてから半年が経とうとしていた頃だった。その日ジークは、偶然にもいつもと
は明らかに違う一撃を放つ事に成功する。
『半覚醒、だな。今の感触をよーく覚えておけ。どうやらお前のそれは、かなりピーキーな
代物らしい』
 目の前で文字通り、辺りの地面ごと粉微塵になった訓練用人形の残骸がある。
 自身の放った力に動揺するジークの傍で、リオはそうアドバイスしていた。その眼には既
に、彼が一体どんな魂の形を持って生まれてきたのかの結論が出ていた。
『……おそらくは《爆(はぜ)》の色装、強化型の一種だろう。これは自己強化──自身の
オーラを何倍にも高める事ができる性質だ。これを利用すれば圧倒的な火力で敵を叩き潰す
といった戦い方ができるだろう』
『圧倒的な、火力……。なるほど、パワー重視って訳か』
『ああ。桁外れの馬鹿力とも言う』
 ガクッ! 思わずジークは前のめりに倒れそうになった。しかし当のリオは、そんなこち
らをじっと見下ろしたまま至極真面目な表情(かお)をしている。
『あまり調子づかないように、という事だ。よく考えてもみろ。この手の色装は途轍もない
パワーを発揮できる反面、簡単に自身の導力の限界を越えてしまう危険性を孕む。使い方を
誤れば即自滅だ。激情は敵だけでなく己を滅ぼす力にもなる。お前の先の師匠──“竜帝”
クラウスは、やはり先見の眼を持っていたようだな』
『……』
 そう言われてじっと手を見る。ジークは自身の中に眠るその色装(ちから)が、ただ単に
薔薇色のものではない事を知らしめさせられた。
 激情。リオはそう言った。色装は魂の形だと云う。
 だとすれば、俺は──。
『とにかく、能動的に引き出せるようになれば、特にその制御を重点的に鍛えろ。すぐに限
界を越えてしまわぬよう、導力もな。八割……それ以上は出すな。いいな?』
『……ああ』
 コクリ。深く刻み込むようにジークはしかと頷く。
 それでもリオは寡黙な表情を崩さなかった。では少し休め。そう言って衣を翻すと自身も
別の仲間達の方へと歩き出す。
(偶然と言うには出来過ぎている。“英雄(ハルヴェート)”と同系統の素質、か……)

「──色装」
 高く高く中空に跳んだまま、ジークは静かにそう力を込めた。
 眼下にはハリー以下、リング上に生き残っている選手達が一様にこちらを見上げている。
 その瞬間だった。ボウッと、ジークの纏うオーラにそれまでのものとは明らかに異質な、
燃え盛るような激しさが加わり出す。
 大きく彼は振り上げた。右手に握った紅梅。その紅いオーラが、みるみる内に巨大な刀身
状のオーラとなって燃え上がり、肥大化する。
「な……!?」
「何だありゃあ?!」
 会場全体が騒然としていた。無理もない。それほどジークが振りかざした錬氣の剣は巨大
だったのだ。軽く彼自身を押し潰すほど、リング全てを巻き込んで余りあるほどの膨大な力
の奔流が紅い輝きを放ちながら轟々と燃え続ける。
「あ、あれって……」
「うん。ジークの色装だよ!」
「はわぁ……。相変わらずとんでもない大きさですね……」
 レナ達が、仲間達が騒然とする人々の中で唯一興奮していた。
 本棟地下の控え室、別ブロックの観客席やロビー。観戦する世界中の人々。誰も彼もが、
この途轍もない力の顕現に度肝を抜かれている。
「嘘……だろ……?」
「無理だ……。あんな馬鹿でかい攻撃、かわせる訳がねぇ……!」
 逃げろォォォ!! リング上の選手達がややあって、我先にと逃げ始めていた。そこには
つい先刻まで彼と剣戟を交えていたハリーも、顔を引き攣らせながらじりじりっと後退し始
めている。
「……いけ。ジーク」
「……爆ぜろ、紅梅」
 轟。観客席の一角でリオが呟き、遥か中空でジークが己が得物(あいぼう)に呼び掛けて
いた。紅い輝きは一層強さを増し、彼が落下し始めるその只中で、一挙に秘めたる力を遺憾
なく叩き付ける。
「──三分咲ッ!」
 轟。次の瞬間、リング上に膨大な量とエネルギーの紅が満ちた。まるで小さな点のように
逃げ惑う選手達の姿を、オーラは瞬く間に吹き飛ばしていく。
「……」
 轟。コロセウムに紅い紅い光が満ちた。観客達や実況役のアナウンサーも目を見開き、度
肝を抜かれてすっかり言葉を失ってしまっている。
(これが俺の力……俺の、色装……)
 中空からゆっくりと落ちていく。
 ジークはそんな眼下の圧倒的な光景に事実恐怖さえした。
 戦いは見世物なんかじゃない。ただ只管に、大切な人達を守り抜く為に起こる悲劇なのだ
と考えていた。
(本当に俺は、誰かを守れるんだろうか? 本当に俺の力は、世界を“平和”にする為の力
なんだろうか……?)
 大きく自身が起こした風に煽られる。
 そして今全身を包むのは、戦いを勝ち抜いた達成感ではなく、その操るには大き過ぎると
感じてならない不安である。
『……きょ、強烈ゥゥ!! なな何とジーク選手、上空からの大技で、残るライバル達を文
字通り一網打尽にしてしまったーっ!』
 そしてここぞとばかりに畳み掛け、叫ぶ実況役のアナウンサー。
 かくして武祭は始まり、きっと幾つもの波乱をその中に内包する。

スポンサーサイト
  1. 2015/06/04(木) 18:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<(雑記)荒×愛(ラフ・アンド・ピース) | ホーム | (企画)週刊三題「柱達の詞(ことば)」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://higurasisouann.blog27.fc2.com/tb.php/599-01d4f6b1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
します。

訪問者累計

最新記事

最新発言

検索窓

月別履歴

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

分類/索引

【案内板】 (2)
【小説:短編】 (20)
本の蟲 (1)
硝子野不動産店 (1)
夏の日の幻影 (1)
四番線の彼女 (1)
夢視の宿 (1)
線を曳く町 (1)
炬燵の神様 (1)
三者三盗噺 (1)
色眼鏡 (1)
奴らは攻城戦師 (1)
詰め替える (1)
同じ籠の狢 (1)
二十年後の遺言 (1)
轍の先 (1)
水に流せば (1)
真夜中の御二柱 (1)
いつか見た夢 (1)
神様達の初詣 (1)
白い花束 (1)
丸の代償 (1)
【小説:長編】 (147)
Amethyst League (6)
アンティーク・ノート (3)
ユウキのヒカリ (5)
NIGHT GUNNERS (5)
レディ・ルーン-Bonds of RU'MEL- (6)
ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle- (86)
死に損いのデッドレス (5)
Dear SORCERY (4)
サハラ・セレクタブル (27)
【企画処】 (334)
週刊三題 (324)
その他参加物 (10)
【資料庫】 (15)
【落書帳】 (6)
【詩歌帳】 (6)
【雑記帳】 (315)
【読書棚】 (30)
【遊戯倉】 (24)
path. (4)
decide: (3)
ユー録FW (16)

記事録

交友関係

このブログをリンクに追加する

(RSSリンク)

(QRコード)

QR

@long_month からのツイート