日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-〔3〕

「いるもん! 皆はいるもん!」
 それはまだ少年が、その瞳に映る世界が必ずしも他人と同一でないと理解していなかった
頃の話だ。幼い彼は涙目になって訴えていた。
 場所は近所の森の中。
 村の遊び仲間達を前にそう力説する。それが、少年にとっての現実だったから。
「いねーよ! どこにいるんだよ~」
「オレ達には見えないぞ。この嘘つき!」
「い、いるよ! 今だって……ほら!」
 しかしこの他の子供達は一向に信じてはくれなかった。
 ぐっと堪えて、少年はびしりと一同の中空を指差した。
 彼の瞳には、確かにそこには頭に疑問符を浮かべてこちらを見てくる千差万別の姿をした
御遣い──精霊たちがふよふよと漂っている。
「……何もねぇぞ?」
「ほら~、やっぱり嘘つきだ~」
 しかしその世界は他の子供達とは共有できていなかった。
 再び幼さ故の容赦ない批判が待っていた。皆から連呼される「嘘つき」のコール。
「違……。ほ、本当にいる、もん……」
 そして少年の涙目が限界を迎えようとしていた、その時だった。
「こらー! お前らアルスに何やってんだー!」
「げっ。ジークだ」
「逃げろ~」
 同じく子供の、だが確かに叱り付ける声色が飛んで来たのだ。
 少年──アルスも含めた面々がその少し年上の少年の姿を見遣ると、子供達はとてとてと
散り散りになって逃げ出し始めた。
「あ。こら、待て!」
 少し年上の少年──ジークが睨みを効かせたが、相手は散開した複数人だ。とてもではな
いが捕捉できない。ジークの動きに隙ができたのをいい事に、彼らはそのまま森の出口、村
の方へと走り去って行ってしまう。
「あんにゃろ。帰ったら一発シメとかねーとな。……大丈夫か、アルス?」
「ぅん……。ありがと」
 駆け付けてくれた兄に、アルスはついに涙を零していた。
 少し遅かったか? ジークは弟の涙を見て内心かなり狼狽している。
「ねぇ、兄さん。兄さんは見えるよね? ここにいる皆のこと」
「えっ?」
 だから次の瞬間、まるで懇願するかのようにアルスに言われ、ジークは困り果ててしまう
こととなった。
(それって例の森の“トモダチ”の事、だよな……)
 弟が村、特にこの森の中でたくさんの何かを見ているらしい事は前々から知っていた。
 だがジークもまた、他の子供達、いや多くの村の大人達と同様にその姿を知覚できてはい
ない。だからといって嘘つきだとは思わないが、少なくとも弟の期待に応えられる自分では
なかった。
「あ~……」
 アルスが懇願の眼差しで指差す中空。だが、やはりどんなに目を凝らしてもそのトモダチ
とやらを見つける事はできない。
(うぅ。俺にどーしろってんだよぉ……)
 兄として、ジークは大いにその返答に迷っていた。
「──それは精霊よ」
 だがそんな時、助け舟が来た。
 二人が振り返ると、村の方向から一人の女性が近付いて来ていた。
 サラリとしたセミロングの濃紺の髪。そのうなじには宝石状の器官“竜石”が髪の間から
垣間見えている。
 リュカ・ヴァレンティノ。村の教練場で子供達に勉強を教えているドラグネスの女性だ。
「せーれい? 何だよそれ」
 ジークは聞き慣れない言葉に眉根を上げていた。
 その隣でアルスは優等生よろしく、フッと微笑んで言う。
「マナにとても近い、魔導の御使い様……ですよね」
「ええ、そうよ。よくできました」
 リュカは二人の傍まで歩いてきた。そして教え子を慈しむように微笑みながら、模範解答
をみせたアルスの頭をポンと撫でてくる。
「精霊はね、魔導を勉強した人でないと目には見えないの。彼ら自身が姿を現してくれない
限りはね。だからあの子達やジークが見えていなくても仕方ないのよ?」
「そうなんですか……。じゃあ、兄さんは」
 優しく諭すようなその言葉。
 その包容力にアルスの泣きべそが止んでいく。
 だがそれと同時に、アルスはふと兄が実は見えていなかった事に気付きかけるが、
「あ、いや……そ、それじゃあ先生。何でアルスにはそのせーれいが見えてるんだ? その
話だと、まどーってのを勉強しないと見えないんだろ?」
 その不満な視線を振り払うように、今度はジークが質問を投げ返していた。
「そうね……。ちゃんと検査しないと確かなことは言えないけれど」
 リュカは微笑の中に何処か複雑な感情を湛えていた。
 もう一度、そっとアルスの頭を撫でる。彼のその無垢な幼い瞳が彼女を見上げている。
「……アルスは間違いなく素質があるわ」
 リュカはきょとんとする兄弟を見下ろしながら、静かに呟いていた。
「魔導師の、それも天賦の才に近いような素質が……ね」


 Tale-3.ルーキー達の学び舎

 会場内は式の始まりを待つ人々のざわつきでごった返していた。
 中央には幅広く新入生達の列。その両翼には在校生が、更にその外側、演壇の上座方向に
は来賓及び教職員らが陣取っている。
「……こりゃあ、思ってたより多いなぁ」
 ざっと見て数百人規模。
 ジークは二階の父兄席の一角から、ぼんやりとそんな人々の群れを眺めていた。
「ふふ。だって魔導学司(アカデミア)直営の学校なんだもの。注目されて当然よ」
「しかしここからでは……アルスが何処にいるかは分からないな」
 その傍らには、イセルナとリンファの二人が座っている。
 今日はアカデミーの入学式。しかもアルスはその新入生主席としてスピーチを行う事にな
っている。まさに晴れ舞台と言っていいだろう。
「まぁこれだけの数ですからね。スピーチに備えて別の場所にいるかもしれないですし」
 その晴れ姿を一目見ようと、いやむしろ兄として心配で堪らなくて。
 ジークは普段着慣れない余所行きの服に身を包み、既にそわそわと何度も演壇の方を確認
していた。加えて、以前に手続きの付き添いで学院に訪れた際に守衛らに見咎められた件も
あり、正装なイセルナ達と同様、今日は刀(えもの)も差して来ていない。
(……本当に大丈夫なんだろうな? あいつら……)
 そうした普段とは違う場・装いなども相まって、現状ジークのそわそわした心持ちは中々
治まる気配を見せずにいたのである。
 ややあって、不意にブザー音が会場内に響いた。次いで天井から下がる照明が落とされて
ゆき、辺りは適度な薄暗さになる。
 式が始まった。
 それまでざわついていた人々の声が徐々に静まっていく。
 その様子を確認するように、進行役と思わしきスーツ姿の女性──エマがスポットライト
を浴びながらざっと会場内を見渡すと、宣言した。
「本日はお忙しい中、当アカデミー・アウルベルツ校第七十七期入学式典にご参加頂きあり
がとうございます。これより式典を開会致します。では、先ず始めに学院長よりご挨拶を頂
きます。……全校生、起立」
 エマの淡々としたその言葉一つで新入生・在校生両者を含めた生徒達や教職員らが一斉に
立ち上がる。
 同時に壇上へと登り姿を見せたのは、学院長・ミレーユだ。
 そして彼女が演壇に着いたのを見計らい着席の号令が掛けられ、同じく一斉に一同が重な
る物音と共に席に着く。ミレーユはフッと満足気な微笑を見せてから口を開いた。
「新入生の皆さんは初めまして。在校生の皆さんは終業式以来ですね。私が当校の学院長を
務めています、ミレーユ・リフォグリフです。先ずは入学おめでとう。私達アカデミーの教
職員一同、そして生徒達は貴方達を歓迎します。……そして壇上からではありますが、来賓
の皆さんには本日多忙な中お越し頂き、この場を以ってお礼を申し上げます」
 新入生達にそう微笑んでから、こくりと壇上から来賓席にを向いて会釈を一つ。
 のんびりとした雰囲気ながらも、知的にまとめられた佇まい。
 ジーク達には彼女がどれだけの間学院長というポストに就いているかは知る由もないが、
少なくとも彼女の様子からはこうした公の場における手際の良さと慣れを感じさせる。
「……さて。これから新入生の皆さんは五年間、基礎基本から応用に至るまでみっちりと魔
導のイロハを学んでいって貰います。履修など学院生活に関する細かい点は、合格通知と共
に送付したしおりをしっかり精読しておいて下さいね? それと分からない事があれば、私
達教職員だけでなく、先輩達も大いに利用して下さい。訊くは一時の恥かもしれませんが、
知らぬは一生の恥ですから」
 会場内の面々は、しんと静かに彼女の紡ぐ言葉に耳を傾けていた。
 それは時折茶目っ気を交えつつも、そこには教え子達への確かな愛情が見え隠れするから
なのだろう。
「──故に魔導とは人的要素を濃く持つ技術なのです。これからの皆さんが修めてゆく知識
や実技は勿論のこと、学院やその周辺での出会い、別れ、各々が取る選択……その全てがこ
れからの皆さんの一人一人の魔導を形作ってゆくのです。私達アカデミーは最大限、そのお
手伝いをしましょう。皆さんの形作る魔導が、これからの貴方に、他の誰かに、そしてこの
世界にとって良きものとなることを願います」
 そうしてサラサラと流れるように、ミレーユの挨拶が終わった。
 再びエマの合図による一同の起立・着席の波と共に、彼女は悠々と壇上から去ってゆく。
 それから暫くは式は厳粛に、滞りなく進んだ。
 来賓達の長ったらしい挨拶に始まり、在校生代表のスピーチやエマによるアカデミーの教
育システムの紹介など。時間の経過と共に粛々と予定の項目が消化されていく。
「──続いては新入生挨拶です。新入生代表、アルス・レノヴィン君」
「は、はいっ!」
 そして……その時はやって来た。
 進行役に戻っていたエマが次のプログラムを読み上げ、新入生席の一角──出て来やすい
ように前列端の席から、やや空回った声と共にアルスが弾かれるように立ち上がる。
「やっと出番のようだね」
「……随分緊張しているようだな」
「まぁ今朝もガッチガチだったしなぁ……。ホント、大丈夫なんだか……」
「ふふ。でもこれもアルス君にはいい勉強よ。私達も見守りましょう?」
 その動きを、ジーク達もまたしかと確認していた。
 ブルートが鳥の眼で皆の代わりにアルスの様子を伝え、三者三様の反応が返ってくる。
 アルスは緊張に身体を強張らせつつも何とか壇上に登っていた。
 ちらりとエマが無言のまま眼鏡の奥の目を光らせる。
 新入生代表──即ち今年の受験生の頂点に立った人物。会場内の面々の視線が否応なしに
一斉にアルスに向けられる。
「……」
 そしてごくりと大きく唾を呑んで。
「ご、ご紹介にあ、預かりました。新入生代表、アルス・レノヴィンですっ。こ、この度は
栄えある当アカデミーへの入学を許して頂き、私自身、身の引き締まるおみょひっ!?」
 続けようとしたその言の葉が、突如として中断した。
 他ならぬ──アルス自身によって。
『…………』
 至って真面目に聴いていた一同が呆気に取られていた。
 壇上では顔を俯けて言葉なくプルプルと震えているアルスの姿が見える。
「……もしかして、噛んじゃったのかしら?」
「あのバカッ! 早速やっちまいやがった……!」
「むぅ」「こ、これは流石に……」
 紛れもなくアルスは舌を噛んでいた。緊張の余りに呂律が回り切らなかったのだろう。
 唖然とするイセルナとブルート、愕然と頭を抱えるジークに、思わず苦笑を隠せないでい
るリンファ。父兄席からその一部始終を見ていたジーク達だけではない。どうやら壇上の彼
の様子がおかしいらしいと、出席者一同や教職員らが少しずつ戸惑い混じりに騒ぎ始める。
「ちょ、ちょっとアルス! しっかりして!」
 だがそんなざわめきは、壇上の相棒の失態に慌てて姿を見せたエトナによってより一層大
きくなることとなった。
 無理もない。現役で活動する者達ですら、持ち霊付きの魔導師の数は全体の半分に届くか
否かと言われている。にも拘わらず、この壇上に立つ魔導師の卵は既にその持ち霊を従えて
いるのである。
 当のアルスとエトナはそれ所ではなかったが、彼女が姿を見せた事により、アルスの学年
主席としての実力の片鱗はしかと場の者達に示されることになった。
「……う。あ、ぁぁ……」
 恐る恐ると顔を上げるアルス。だが当然ながら皆の視線は色んな意味で彼にこれでもかと
注がれている。
(ど、どど、どうしよう……!?)
 手元に置いていたスピーチのメモの内容などすっかり吹き飛び、アルスの頭の中は瞬く間
に真っ白になっていく。
「お、落ち着いてアルス。ここでリタイアしちゃダメだよぉ。……ほら、ジークも言ってた
じゃない。今朝のアドバイス思い出して」
「今朝の……」
 だがそうはさせまいとエトナは必死だった。
 碧のオーラを纏いながらふよふよと漂い、そう相棒に語りかける。

『──で。結局今になってガチガチに緊張してるわけか』
 それは今朝の身支度時、宿舎の部屋でのやり取りだった。
 余所行きのローブに身を通したアルスの漏らした不安の声に、ジークが嘆息を混じらせた
表情(かお)でぼやいたのだ。
『だから言ったんだよ。さっさと断わっとけって。お前、大人数の場で熱弁とかキャラじゃ
ねぇじゃん』
『で、でも……学院長先生からの直々の頼みだし、主席の僕が断わったりしたら後味が悪く
なるかもしれないし……』
『そういう心理が分かっててあの学院長も言ったんだろうよ。まぁ、結局ここまで来ちまっ
たんだ。もうやるっきゃねぇんだろうけど』
『うぅ……。そうなんだけどさぁ』
 もじもじと。アルスはローブの裾を握って煩悶していた。
 とは言っても、こいつは元々内気な部類だ。そもそもこういう役割は合わねぇよな──。
 そしてそんな弟を暫し眺め、ふとジークは一つの案を思いつく。
『……だったらよ。精霊だって思えばいいんじゃねぇか? 見知らぬ人間に見られるのが恥
ずかしいってんなら、そう思い込んでみた方がお前の場合、気が楽だろ。俺とは違って精霊
の姿は普段から見慣れてるし、話してたりするだろ?』
『……うん。確かにそうだけど。なるほど、精霊か……』
『ま、気休めみたいなもんだけどなぁ。ともかくだ。後はぶっつけ本番だ。せいぜい盛大に
当たって砕けて来い』
『く、砕けちゃ駄目なんだってば~!』
 得心したり、また弱気になったり。
 兄のそんな言動に弄ばれるようにして、アルスは半ば本気でツッコミを入れていた……。

「……精霊だと、思え」
 今朝の一コマを思い起こし、アルスは俯き加減でそう小さく呟いていた。
 こくんと頷くエトナ。周りでは相変わらずわざめきの声が聞こえてくる。
(精霊、精霊、精霊。僕を見てるのは人じゃなくて精霊。大丈夫、大丈夫、大丈夫……!)
 次の瞬間、アルスは意を決したようにバッと顔を上げた。
 瞳に映る無数の出席者達。その驚きや苦笑の顔一つ一つを、アルスは脳内で馴染み深い隣
人──精霊達へと置き換えてゆく。
「……こ、この度は栄えある当アカデミーへの入学を許して頂き、わ、私自身、身の引き締
まる思いです」
 コホンと小さく咳払いをして、再び開かれ始めた口。
 それが彼の軌道修正への試みだと皆が気付くのにさほど時間は掛からなかった。
 ざわめいた声の重なりが、徐々に静けさの中に収まっていく。
「私も、そしてきっとこの時を同じくした新入生の皆さんも、それぞれに魔導師への憧れと
夢を持ってこ、この学び舎の門を叩いたのだと思います」 
 その後のアルスは、再び噛んでしまうというような事はなかった。
 相変わらず緊張でたどたどしさを残してはいたが、時折手元のメモに視線を落としつつも
折り目正しい誓いの言葉を紡いでゆく。
 背後でその様子を見守っていたエトナも「もう大丈夫だね」と言わんばかりに微笑み、や
がてフッと姿を消していた。
「──私達は、これより一人前の魔導師を目指して切磋琢磨することを誓います。先生方、
先輩方、学院関係者の皆様。まだまだ発展途上な私達に、是非ともご指導ご鞭撻を宜しくお
願い致します。そして来賓の皆様も、これからの私達の成長を温かく見守って頂ければ幸い
です。……まことに簡単ではありますが、これを以って新入生代表の挨拶と代えさせて頂き
たく思います。ご清聴、ありがとうございました」
 ペコリと頭を下げてスピーチが終わる。
 数拍の間があって、会場内にどっと拍手の合奏が響いた。
 二階で一部始終を見ていたジーク達も、何とか形になったアルスの晴れ姿を見て一安心と
いったように頷き、顔を見合わせつつその拍手の中に加わる。
「……ありがとうございます」
 もう一度頭を下げて、アルスは小さく呟いていた。
 ちらとエマを見ると「やれやれ」といった苦笑が向けられている。アルスは彼女に苦笑を
返してその目での合図を受け取ると、ゆっくりと壇上から去ってゆく。
 暫しの間、会場はアルスを──新しきルーキーを讃える拍手で満ちていた。
「…………くっ」
 ただ一人、その中で密かに舌打ちをしていた者がいた事に気付くこともなく。

「ふぃ~、終わった終わった。やっぱこういう堅苦しいのは柄じゃねぇや」
 かくして入学式は無事に終了した。
 ジーク達は二階席から外へ、会場である学院の講堂の外廊下へ出ると、階下に下りて行く
人々の波の中に合流する。
「でも一息つくのはホームに戻ってからよ? 家に着くまでが、出席(えんそく)」
「しかし……一時はどうなることかと思ったな」
「えぇ……。全くですよ。エトナがフォローを入れて何とかなったみたいですけど」
 リンファの呟きに苦笑して、ジークはちらりと周囲の人々を見遣ってみた。
 父兄席からの人なので当然なのだが、その多くは子の親たる世代の男女(と子の兄弟と思
われる少年少女達)のようだ。
 ざっと見た限りではアルスを悪く言っているような者は確認できなかったが、ジークは弟
のあのテンパり様を思い出し、はたと我が事のように恥ずかしくなって黙り込んでしまう。
(……ん?)
 そんな折だった。
 ふとジークの視界の先──階下の学院のキャンパス内に、何時の間にか多数の人々が集ま
り人ごみができていた。
 少なくとも父兄ではない。多少の年格好の差はあるが、おそらく学院の生徒だろう。
 よく見てみると彼らは皆、口々に何かを叫び、プラカードを掲げたり、通り掛かる人々に
ビラを配ったりしている。
「あれは研究室(ラボ)の勧誘だな」
「ラボ? それが学院と何か関係あるのか?」
 そしてジークがぼんやりと目を遣っているのに気付いたのか、ふとブルートがそう言葉を
挟んでくる。聞き慣れない。ジークは少し眉根を上げて彼に振り返った。
「知らぬのか……。まぁいい。いいか? アカデミーとはそもそも魔導学司(アカデミア)
直営の魔導師養成学校だ。アカデミア自体もそうだが、基本的に魔導師というのは学者の類
でもあるのだ」
 アカデミアにおいて、所属する魔導師は組織の研究者である。
 そしてその実績を認められた者は自身の研究室(ラボ)を与えられ、他の魔導師らを部下
としてより一層の研究に勤しんでいる。
 そしてそんな部局的な構造は、その下部機関でもあるアカデミーにおいても同じだ。
 生徒達に魔導の指南を行う教師陣。彼らも元はアカデミア所属や在野からスカウトされた
魔導師であり、多くの場合同じくラボが割り当てられている。
 所謂ホームクラスという概念がなく、基本的に自由に履修講義を選べるシステムである学
院の性質上、ラボとは生徒達にとっては所属先となり、その主が彼らの指導教官となる。
「ふーん……。でも何で所属してる連中が勧誘してんだ? 人数が増えたらその分、そこの
先公は教えるのが大変になるんじゃねぇの?」
「その面はある。だが基本的にラボへの予算配分は在籍人数に比例するからな。誰とて良好
な環境で学びたいと思うだろう? 故に新入生を引き込もうとする現象が起こる」
「とはいっても、それ以外にも教官自体の研究実績や研究分野によって必要な設備の違いも
あるから。一概に人数の多さがイコール予算の多さにはならないのだけどね」
「……なるほど」
 ブルートが、そしてイセルナが捕捉して言う。
 伊達に魔導の心得があるだけではないらしい。ジークは正直半分くらい頭に入っていない
ながらも頷いてみせ、再びその人だかり──新入生勧誘の様子を見下ろした。
「ふむ……。だとすれば、アルスは大変だな」
「えっ?」
 すると、それまでイセルナらの説明を聞いていたリンファが真面目腐ったように呟いた。
 少々間抜けな顔で振り向くジーク。そんな彼に、彼女は静かに破顔する。
「だってそうだろう? アルスは今年の新入生主席。しかも見習い段階で持ち霊(エトナ)
付きというレアケースだ。式でスピーチもしたのだし、先輩諸氏らが獲得に動かないとは思
えない」
「あ~……。た、確かに」
 言われてジークはようやくその意味を悟った。くしゃっと前髪を抱えて眉を寄せる。
 どうするんだよ。あいつはただでさえ遠慮がちというか、内気な部分があるのに……。
「……。アルス、大丈夫かなぁ……?」
 今も尚、現在進行中でざわめいている新人勧誘の人の波を見下ろして。
 ジークはどよんと迫ってくる心配に気分を重くする。

 一方時を前後して。
「レノヴィン君、是非うちのラボに!」
「いやいや、何とぞうちに!」
「何言ってるの。彼が入るのは私達のラボよ!」
 アルスは大丈夫ではなかった。
 その姿を認めた次の瞬間、殺到してきた先輩達。アルスは為す術もなく人ごみの渦中の人
となり、方々からのラブコールを受けつつ揉みくちゃにされていた。
「あばばば……」
 アルスはその謙虚さ故、正直言って自分の置かれている状況を認識していなかったと言え
るだろう。式が終わり、新入生が居残って今後についてのガイダンスを受けた後も、アルス
はミレーユとエマから労いと苦言をそれぞれ受けていた。
 だからこそ、そのやり取りも済ませた事でホッとし、油断していたのだ。
「す、すみません。僕はもう──」
 アルスは揉みくちゃにされながらも何とか口を開こうとしていた。
 だがラブコールを受ける当人といえどそんな控え目な声が彼らに届くわけがなく、次の瞬
間にはついにバランスを崩してその渦の中に転げ込んでしまう。
 頭の上で、騒々しく自分を呼ぶ声が幾重にも重なっていた。
 目の前に映るのは先輩達の脚、脚、脚。
 しかしアルスは今しかないと思い立ち、時折彼らから無自覚に蹴られながらも、四つんば
いの体勢でこっそりと人ごみから顔を出すと、気付かれぬ内にその場を逃げ出す。
「……はぁ。ひ、酷い目に遭った……」
 そしてその脚で暫し逃げ回った末に辿り着いたのは、種々の草花が生い茂る庭園らしき場
所だった。
「ふふん~? でもモテモテだったじゃない。流石はアルスだよ~」
「からかわないでよ……。エトナだって、僕の進路の事は分かってるくせにさ」
「……ま、そーだけどぉ」
 まだ少し荒いままの息を整えながら、アルスはぼんやりとその周囲を見渡す。
 人ごみから解放されてやっと姿を見せたエトナが冗談半分でからかってくるが、アルスは
あまり余裕はなかった。少し真面目腐ってそう言い、つーんと唇を尖らせる彼女の反応に対
して苦笑の顔色を漏らす。
 学院の敷地内に間違いは無いのだが、辺りは静かだった。
 見た印象では、校舎同士の狭間のスペースを利用した中庭といった所か。緑の放つ空気が
講堂内とは違う感触を味わわせる。
 改めて大きく深呼吸をしてから、アルスはようやく人心地をついた。
「で、アルス。これからどうするの? ガイダンスじゃあもう今日からラボ見学が始まって
るって話だけど」
「うーん……どうしようかな。一応は講義目録(シラバス)から幾つかはピックアップして
きてはいるけど……」
 先輩達の勧誘があれほどなのだ。自分がひょいっと気軽に顔を出してみても、あのように
騒がれてしまうのは何だか申し訳ない気がしてしまう。
 アルスは暫し思案顔になった。その傍らでエトナはふよふよと浮かんでいる。
「……とりあえず、兄さん達に連絡は取っておこうか。僕は少しラボを回ってみるから、兄
さん達には先に帰っていいよって」
「うん。おっけー」
 腰掛けていた花壇の端から立ち上がって、アルスはエトナを見上げて言った。
 頷く彼女を確認すると、
「皆~、ちょっといいかな?」
 アルスはエトナ──ではなく、周囲の中空に向けてそう呼び掛け始める。
 するとその声に惹かれるように、ポウッとあちこちから光る毛玉だったり、羽の生えた半
透明な小人だったりといった下級精霊達が姿を現した。
 まるで雛鳥が小さく鳴くように、ふわふわと漂いながら近寄ってくる彼らに、アルスは穏
やかな微笑みを返してお願いをする。
「えっとね。兄さん達に伝言を頼みたいんだ。僕らは少しラボを回ってから帰るから兄さん
達は先に帰っててって。……頼める?」
 言うと、精霊達は言語にならない鳴き声を上げていた。
 それは彼らの快諾の合図。アルスはにっこりと優しく微笑んだ。
 兄さんは魔導が使えないから皆は見えないけれど、今日はイセルナさんやブルートさんも
一緒らしいから、伝え聞いて貰える筈──。
「じゃあ、よろしくね」
 言ってアルスはふよふよと飛んでいく精霊達を見送った。
 少しだけ寂しくなったような気がする庭園。アルスは暫し緑と灰色の絨毯から中空を見上
げると、エトナを伴い早速幾つかラボを回ってみようと歩み出そうとする。
「──見つけましたわ」
 だが、その歩みはすぐに遮られることになった。
「……貴方は?」
 そこに立っていたのは、一人の少女。年格好はアルスより少し上だろう。サラリと長い淡
い金髪を揺らし、いかにも勝気な瞳をアルスに向けている。
 ふわりとエトナが黙したままアルスの傍らに並んだ。
 少なくとも見覚えは無い。アルスはぱちくりと目を瞬かせて彼女を見る。
「アルス・レノヴィンで、間違いありませんわね?」
「あ、はい……。そうですけど」
 だが対する彼女はそんな質問は無視していた。代わりに思わず肯定してしまうアルスの返
事を聞いて、彼女はふんっと口元により一層気の強い孤を描く。
 そしてビシリと。その指を真っ直ぐにアルスに差して、
「私(わたくし)の名はシンシア・エイルフィード。アルス・レノヴィン、貴方に勝負を申
し込みますわ!」
 この少女、シンシアはそう高らかに宣言してきたのだった。


「勝負? 何で僕に……」
 突然の出来事にアルスは戸惑いの表情を隠せなかった。その傍らではエトナがむくれっ面
であからさまな警戒心をこの金髪少女に向けている。
 間違いなく、彼女とは初対面の筈だ。なので何か失礼をした記憶はない。
 しかし、先程から彼女から感じているこの気配は──。
「とぼけないで下さるかしら? 貴方が新入生主席だという事は明白でしてよ。それも私と
同じ、持ち霊付きの……ね」
「えっ?」
 アルスが小さく驚き、エトナがむすっと眉根を寄せる。金髪の少女・シンシアは不敵に口
元に孤を描いて哂うとパチンと指を鳴らす。
「カルヴィン!」
 次の瞬間、彼女の傍らの中空から紅い奔流が迸った。
 それは間違いなく精霊の顕現である。数秒も経たずして姿を見せたのは、隆々とした身体
に鎧を纏った、人馬の姿をした精霊だった。
「やっぱ、あいつも持ち霊付き……」
「うん……。僕ら以外にもいたんだね」
 そしてシンクロするように腕を組んだ彼女達二人に、エトナはさっとアルスを庇うように
して一歩前に出る。
「我が名はカルヴァーキス! 鉄と戦の精霊なり!」
 カルヴィンの愛称で呼ばれたその精霊は相棒(シンシア)以上に暑苦しい叫び声で名乗り
を上げていた。中空に浮かぶ人馬の武人。そんな強面の佇まいがアルスとエトナを見下ろし
ている。
「ま、待って下さい。僕は別にあなた達と争う理由なんて」
「お黙りなさい。貴方になくても私にはあるのですわ。そう、この私を差し置いて主席の座
に収まるなど……認めませんわ!」
「はぁ!? 何言ってんのよ、アルスは正真正銘主席だもん!」
「ちょ。エ、エトナ落ち着いて……」
 シンシアは勝気に高らかに言い放つ。だがそれ以上に、彼女の言葉にエトナが喰って掛か
っていた。今にも飛び掛りそうになるエトナをアルスは宥めるが、ムキになった彼女の怒り
は中々治まってくれそうにない。
「じゃあ訊くけどさ。あんたは受験の成績いくつだったのよ?」
「えっ。それは」
「……確か筆記が百八十三点。実技が百九十点だったな」
 躊躇するシンシアの代わりに、カルヴィンが答えていた。
『…………』
 互いの空白に隙間風のような間が空いた。
 目を丸くして自身の持ち霊を見遣るシンシアに、ややあってエトナはぷっと小さく吹き出
して笑う。
「ふっふっ~なんだぁ、やっぱりアルスの勝ちじゃん。アルスは満点と百八十八点の合計三
百八十八点。あんたよりも上だもんね!」
「ぬぐっ……! か、カルヴィン! 何で喋っちゃうのよ!?」
「勝負をするのであろう? ならば正々堂々とぶつかってゆくのが武人というものだ」
 シンシアは思わず頭を抱えていた。その相棒の姿にカルヴィンは至って真面目に、至って
不思議そうに眉根を上げている。対してエトナは得意気に胸を張っていた。
「え、え~っと……」
 一方で、当のアルスはあわあわと両者の間で視線を行ったり来たり。
 事態が悪化している。何とかしないと……。
 混乱からまだ立ち直り切っていない頭をフル回転させ、アルスは何とかこの場を穏便に乗
り切ろうと試みる。だが、
「……じゃ、じゃあ導力! 導力検査の結果は!? ちなみに私は780MCですわ!」
「780ぅ!? う、嘘……アルスより上じゃない」
「ふふっ。私の勝」
「でもさ? 導力検査は受験の成績に入ってないよね?」
「ふむ。確かにな」「……」
 事態は無情にもアルスを置き去りにして二転三転してゆく。
「あぁ~、もうっ! カルヴィンあんたはちょっと黙ってて! 何にせよ魔導は実践よ。今
ここでその白黒をはっきりさせますわッ!」
 そして、遂にヒステリーが頂点に達したシンシアが叫んだ。
 その様と言葉を受けフッと口元に孤を描き、相棒の真上に位置取って構えるカルヴィン。
見ればシンシアの身体からはマナの光が輝き出している。
「アルス!」
「……う、うんっ」
 だがそこはお互い卵と言えども魔導師だった。アルスとエトナは瞬時にその動作が意味す
るもの──相手が魔導を放ってくることを察知し、迎え撃つ体勢を取る。
「盟約の下、我に示せ──散弾の鉄錐(ファル・ヴァロン)!」
「盟約の下、我に示せ──大樹の腕(ガイアブランチ)!」
 次の瞬間両者の魔導が激突した。
 シンシアの周囲から射出されたのは、大地の鉄分を凝縮して形成された多数の鋼の尖った
弾丸。対するアルスの足元から躍り出たのは、同じく大地から周囲の草木を編み込むように
して巨大な形を形成した樹木の鞭。
 短縮詠唱。それは持ち霊という固定の協力者を持つ故に可能な、瞬時の術式展開である。
 降り注ごうとする鋼の弾丸と樹木の鞭が、お互いを薙ぎ払い合った。
 樹木の鞭を貫いてゆく弾丸もあれば、鞭にを受け止められ、弾き返されるそれもある。
 数十秒ほどの間、アルスとシンシア達は互いに放った魔導の破壊力の余波にあおられて身
を庇っていた。
「止めて下さい! 僕らに戦う理由なんてない! カルヴァーキスさん、貴方は彼女の持ち
霊なんでしょう、どうして止めて下さらないんですか!?」
 もうもうと土煙と細切れに散った草木が舞っている。
 ようやく余波から顔を上げたアルスは、そう中空に浮かんでいるカルヴィンに向かって訴
え掛ける。
「止める? 何故だ? 申したように我は鉄と戦の精霊……。強き者とは即ち悦びなのだ。
お主の力は我が主に並ぶ……久しぶりの好機、拒む理由など無かろうて」
「そん、な……」
 だが自分達に好戦的なのは彼も別の意味で同じだったようだ。
 純粋に戦うことが楽しい。アルスにとっては共感したくない感情だったが、精霊とは姿も
その性格も千差万別なのは重々承知している。
「……譲歩することなんてないよ。喧嘩を吹っかけて来たのは向こうなんだから」
「エトナ……。でも……」
 加えて傍らのエトナも、すっかり敵対心を露わに身構えていた。
 それはきっと彼女達が自分に害を成してくる故なのだと信じたかったが、アルスは正直心
が痛む思いがした。
 何よりも──このまま此処で戦えば、この庭園や校舎、もしかしたら他の学院生まで巻き
込んでしまうと思ったから。
「アルス!」
 だがそんな思慮の暇は許されなかった。
 エトナの声に我に返ると、見上げた先の中空でカルヴィンが掌に鈍色の炎を生み出してい
るのが見えた。そしてそのまま腕を振るい、その炎の奔流をこちらに向けて放ってくる。
「くっ……! 盟約の下、我に示せ──水泡の護衣(バブルコーティング)!」
 アルスは再び咄嗟に、エトナを仲立ちに短縮詠唱で魔導を完成させた。
 足元を中心に現れる水色の魔法陣。そしてそこを中心に大量の巨大な泡が溢れてくると、
その泡がアルス達を守る巨大な緩衝材のような役割を果たし、鈍色の炎を受け止め掻き消し
てくれる。
「こんのぉっ!」
 続けざまにエトナが両掌を向けた。同時に地面の草木らがその意思に従うように一斉に躍
り出て、縄のようにカルヴィンを捕らえようとする。
「盟約の下、我に示せ──烈火の矢(フレアアロー)」
 だがそんな無数の縄は、シンシアが放った“焔”魔導によって一挙に焼き払われていた。
 一瞬にして燃えて灰になり、朽ち消える草木。
 数拍。撃ち合いになったお互いが、それぞれの持ち霊を傍らに従え、再対峙する。
(なるほど。アルス・レノヴィンの得意系統は……“魄”魔導ですわね)
(シンシアさん達の魔導……“銕”属性が主力、か)
 瞬時に分析する、互いの得意な魔導。
 樹木を司る魄の魔導と、金属を司る銕の魔導。
(────相性が、悪過ぎる)
 だがその両者は相反する関係にある魔導系統だった。
 二人は同時にその事実に気付き、撃ち合いの手を止める。そして思案する。
 幾つかの属性・系統に分類される魔導だが、その両者が仮に相反する属性であった場合、
よほど力量差がない限りは相殺される結果になってしまう。一方で、親和性のある属性同士
である場合は相乗効果を発揮する。
 しかし少なくとも、両者の実力は伯仲しているというのがこの撃ち合いでの感触だった。
(厄介ですわね。パワーで押し切ろうにも、彼はかなり反応が早いですし……)
(ここが庭園で助かった……。地の利が活かせてる。でも、あの話が本当なら導力は彼女の
方が上だ。持久戦になってしまえばこちらが不利になる……)
 二人は考えた。
 どれだけ自分の得意な魔導を放っても、この主席を掻っ攫っていった少年は素早く反応し
相殺していってしまい埒が明かないだろう。
 持久戦になれば不利になるのは間違いない。それに何よりもこんな無益な戦いは何とかし
て終わらせたい。
(────だったら、次の一撃で勝負に出るしかない)
 二人は同時に詠唱に入っていた。互いの意図はすぐに分かった。
 先程よりももっと威力の大きな魔導を放ち、戦意を失わせる。それがおそらくこの撃ち合
いに早急な決着をつける道となる。
「……」
 だが、アルスは迷っていた。
 一から詠唱を構築し、確かな威力を担保しようとしながらも、やはり彼女と戦わねばこの
場は収まらないのだろうかという自問自答と罪悪感。それと、不思議な違和感。
 正当防衛? でも僕は、こんな形で魔導を使うなんて望んでいないのに……。
「盟約の下、我に示せ──」
「ッ!?」
 しかし結果的に、それはシンシアに先手を打たれる遅れを作る原因になった。
 紡ぎ終わりかけようとしている彼女の詠唱。そしてその自分へとかざされた掌には、周囲
の地面から大量の鉄分が集束し始めている。
「巨柱の鉄錐(ラジアス・ヴァロン)!」
 次の瞬間、彼女の掌に広がった銀色の魔法陣から巨大な金属の角錐が飛び出してきた。
 大きい。直撃したら無事では済まない。いや……避けたって周りの被害は確実だ。
「アルスッ!!」
 エトナが叫んでいた。自身の奇蹟を駆使し、すぐさま遅れをとった相棒のフォローへ樹木
の鞭達を差し向けようとする。
 だが遅いように思えた。世界が、スローモーションになったような錯覚に陥る。
 顔が恐怖で引き攣る。
 巨大な鋼の角錐が、ゴゥンと目の前に迫って来て──。
(……?)
 しかし、銕の魔導がアルスに届く事はなかった。
 数拍遅れて、アルスがゆっくりと思わず瞑ってしまった目を開く。
 するとそこには、蒼いオーラを振り撒くブルートの姿と、
「なっ……!?」「むぅ?」
 彼によって凍り付けにされた角錐を、掌でかざしたマナの障壁(シールド)で受け止め、
その攻撃を粉微塵にしてアルスの前に涼しげに立っているイセルナの姿が。
「……イセルナさ」
「ひっ!?」
 そして、その一瞬だがとても長いように感じられた隙を縫うように駆け、シンシアの首筋
へと迅速の身のこなしで小刀を突き付けたジークの姿あった。
 驚くアルスとエトナ、そして何よりもいきなり懐に入り込まれたシンシア。
 ジークは逆手にした小刀を握ったまま、普段の気だるい様子から考えられないほどの強烈
な殺気に満ちた両の眼でシンシアを捉えると、
「…………てめぇ。俺の弟に何してやがる」
 まるで呪詛のような重い声色を放った。

 シンシアはどっと冷や汗が背を伝うのを感じた。
 気品などまるでない、荒々しい眼。そして瞬く間に己の喉元に突きつけられた刃。
「お、弟……? では貴方はアルス・レノヴィンの」
「兄だよ」
 ジークは短く答えた。だがその切っ先は微塵もぶれない。
 カルヴィンはそんな彼女のピンチに動こうとしたが、すぐさま目を細めて冷気を漂わせる
ブルートがそれを遮る。
 凍り付き粉々になって崩れる角錐。
 イセルナはそれを一瞥すると、そっと掌から練ったマナを解いてジークに声を掛けた。
「ジーク、その辺りにしておきなさい? 彼女、怯えているわよ?」
「……うっす」
 肩越しに一瞥。団長の命令という事もあって、ジークはそっとシンシアから身を退いた。
同時に懐に忍ばせた鞘に収め、もう一度彼女を睨み付けてみせる。
「全く。念の為に脇差を持って来ておいて正解だったぜ。アルス、エトナ。無事か?」
「う、うん……」
「うん。ありがとう兄さん。イセルナさん、リンファさんも」
 一方アルス、そしてエトナはリンファにそっと介抱されていた。
 魔導を撃ち合い、多少の擦り傷などは負っていたが、命の別状はないようだ。
 ジークがその様子を見てやっと安堵し殺気を収め、視線を向けてくるイセルナを迎える。
「お嬢さん、どうしてこなったのかしら? うちの下宿人に何か恨みでも?」
「うっ。えぇっと……」
 イセルナはあくまで柔和な表情を崩していなかったが、シンシアは思わず大きく後退って
いた。それは彼女の傍らで浮かんでいるブルートの警戒の眼の所為でもあり、自身の全力で
放った筈の魔導をいとも簡単に防いでみせたイセルナの力量への怯えであったり。
「……何でも、ありませんわ」
 そして何よりも、こんな私闘を演じた自分をやっと冷静に見れたからであり。
 だが彼女は素直にそんな感情の変遷を口にする事はなかった。いやできなかった。
 イセルナは黙っていた。だが実弟を危うく大怪我させられかねなかったジークはあからさ
まに不信の眼で再びシンシアを睨み付ける。
「何もない訳ねぇだろうが。てめぇ、もう一回」
「待つんだ。ジーク」
 しかし一歩踏み込もうとしたジークを、リンファが呼び止めた。
 振り返る彼に、彼女はついっと別の方向へと視線を誘導する。
 するとそこには徐々に何処からともなく現れ、集まり始めていた野次馬らの姿があった。
 とはいっても、ここは正真正銘学院の敷地内。その多くは学院の生徒であり、その父兄ら
しき人物であるらしい。
 おそらくは周辺で、アルスとシンシアが魔導を撃ち合った第一砲を聞いていたのだろう。
「……人が集まってきたわねぇ」
「どうする、イセルナ? このままだと私達も当事者扱いされるかもしれないが」
「アルスが巻き込まれた時点で俺達も当事者ですよ。さっさとアルスを連れてここを去」
「ほらほら、野次馬連中は退いた退いた」
「ガハハ。すまぬな、通して貰うぞ?」
 そんな折だった。ふと野次馬の中を掻き分けるように、二人組の男がこちらに近付いて来
たのである。
 一人は頭にバンダナを巻いた長髪の、ヒューネスの男性。
 もう一人は見上げるほどの巨躯をした──巨人族(トロル)の男性だった。
「げっ。ゲド、キース……」
 するとシンシアの表情が分かりやすい程に変化した。
 強気な態度は何処へやら。それはまるで悪戯がバレた子供のようで……。
「あだっ!?」
 次の瞬間には、すたすたとやって来た二人、いやヒューネスの方の男性からの拳骨を頭に
受けてプルプルと悶絶してしまう。
「痛~ッ! ちょっとキース、主に手を上げるなとあれほど言っているでしょう!?」
「勘違いすんな。俺らの雇い主はあくまで伯爵だ。お嬢はあくまで警護対象だっつーの」
 シンシアはムキになってこの男性・キースに怒りを向けるが、当の彼はこうしたやり取り
は慣れたものなのか、そうあっさりと言い放って平然としている。
「ホーさん、野次馬はどーっすか?」
「うむ。今帰しておる所だ。暫し待ってくれぃ」
「へ~い。じゃあそっちは頼んます」
 一方でもう一人の男性・ゲドはこちらへ近付いて来ようとする野次馬らを制止していた。
 なまじ巨人の体躯という事もあり、また彼自身が何やら説き伏せているらしく、彼らは戸
惑いを見せながらも一先ずはこれ以上進んでくる様子はない。
「さて……」
 そうした様子を一瞥し、確認するとキースはシンシアの首根っこを掴んで言った。
「どうも、うちのお嬢がバカをやらかしたみたいで……。すみません。俺らからもキツ~く
言っておきますんで、今回は俺らの顔に免じて許しては貰えませんか」
 頭を(ついでにシンシアの頭も強引に)下げての謝罪表明。
 ジーク達は突然現れた、このシンシアの関係者らしき人物からの言葉に目を瞬かせる。
「……つーか、あんたら誰だよ?」
「ん~、別に名乗るほどの者じゃないですけどね。このじゃじゃ馬娘の親父さんに雇われた
護衛役──いや、お目付け役みたいなもんです」
 問われて、キースは何処か自嘲気味に言った。その後方ではゲドが野次馬らを少しずつ追
い返しているのが見える。
「そう言われもな。こうド派手に暴れられて黙ってろってのは」
「いいんだよ。兄さん」
 ジークは渋っていた。怒りがまだ収まらないといった感じだった。
 だがそんな彼を止めたのは、他でもないアルス自身で……。
「謝ってくれたんだし、僕はそれでいいよ。ね? エトナも」
「えっ? わ、私は……」
「ね? もう戦う理由なんて、ないんだよ」
「……むぅ。分かったよぉ、分かりました~」
 汚れや傷で台無しになった今日の装いを纏って、彼は自身の兄と持ち霊(パートナー)を
そうやんわりと諫めようとする。
「アルス君本人がそう言うのなら、仕方ないわね」
「そうだな。諍いは、もう収まったのだから」
「……しゃあねぇな。今回はアルスの顔を立ててやる……」
 イセルナとリンファも、当の本人のその言葉で引っ込みをつけたようだった。
 ジークもエトナも渋々とながらだが、それに従う形を採らざるを得ない。
「ですが、このままお開きという訳にはいきませんよ」
 しかし憤っていたのは他にもいた。
 ピリピリとした静かな怒りの声色に一同が振り返ると、そこにはゲドと複数の学院職員と
見られる面々を引き連れたエマが立っていた。
 同じく騒ぎを聞きつけやって来たのだろう。眼鏡の奥で鋭くなった眼差しがシンシアとア
ルス、当事者二人を射抜いている。
「……入学式早々、これはまたとんでもない失態を犯してくれましたね。二人とも、学院長
室に来なさい」
「は、はい……」
「分かり、ましたわ……」
 その眼光や強烈なもので、二人はしゅんとなって大人しくただ頷くしかない。
 エマはその返答に小さく頷き、きびきびとした所作でその場から身を翻して歩き出す。
「お、おいアルス。大丈夫なのか……?」
「うん……。でも仕方ないよ。僕らの事はいいから、兄さん達は先に帰ってて?」
「シンシア様」「お嬢」
「……分かっています。ちょっと行って来ますわ。貴方達は待機していなさい」
 ジーク達と、ゲド・キースの護衛二人組に見送られて。
 アルスとシンシアは、そのまま教職員らに両脇を固められる様にして連行されていった。


「なるほど。大体の事情は分かりました。入学早々、騒がしいイベントでしたね」
 学院長室に連行されたアルスとシンシアは、デスクに陣取ったミレーユの前で事情説明を
求められていた。
「す、すみませんでした……」
「申し訳、ありませんですわ……」
 両肘をついて手を組み、ちらりと微笑の隙間から二人を覗き見る確かな威厳。
 アルスもシンシアも、その静かな緊張感の下、ただ頭を深々と下げることしかできない。
「全く……前代未聞です。入学式当日に主席と次席が私闘など」
 その様をミレーユの傍らでエマが厳しい眼差しに見遣っていた。
 くいっと眼鏡のブリッジを押さえ、憤りを嘆息に込めて言う。
「次席? えっと、もしかしてシンシアさんがですか?」
「ええそうです。シンシア・エイルフィードは貴方の次に高い成績を収めています」
「……というより、あの場でカルヴィンが話したではありませんか」
「でもその点差の間に誰か他に食い込んでたかもしれないじゃん。ね~、アルス?」
「むきぃ~! そんな事あり得ませんわ、私を差し置いてこれ以上……!」
「お、落ち着いて下さいよ……。エトナも、火に油を注ぐようなこと言わないでってば」
 だが相変わらずシンシアとエトナの相性の悪さは健在のようだった。
 故意にそう言ってみせるエトナに、シンシアはくわっと声を荒げて食ってかかる。この場
がお説教の場であることも理由だったが、アルスは慌てて両者を治めようとする。
「とにかく。厳正な処分が必要です。……学院長、ご決断を」
 それらを結果的に鎮めたのは、コホンとわざとらしく強い音で咳払いをしたエマだった。
 まるで条件反射のように姿勢を正し直すアルス達。
 エマは小さくため息をついてから、その厳しい眼差しで面々を見渡し、そうミレーユに訴
えかける。
「そうねぇ……。でもまぁ、今回は別にいいんじゃない?」
 だがこの学院長は彼女とは対照的に、朗らかに微笑んでいた。
「な、何を仰っているのですか。これだけの騒ぎを起こしたのですよ? 何も処分を下さな
いとなれば学院としての面目が……」
 当然ながら、エマは驚いていた。
 元よりマイペース、底の知れない上司ではあったが、流石に今回はすぐに承諾はできずに
彼女は食い下がろうとする。
「ユーディ先生。学院の面目と生徒達、どちらが大切ですか? 規律を正す事は確かに必要
です。ですがそれによって入学早々生徒達を陰鬱にさせてしまうのは、教育者として如何な
ものかと思いますよ。……いいではないですか。幸い、物的損害程度で済んだのです。大事
なことは、もっと別な筈でしょう?」
「……それが学院長判断であるのなら。私どもは、従うまでです」
 しかしミレーユは変わらず鷹揚としていた。
 その彼女の判断に、本心では不服のように見えたが、エマは渋々と了解を示す。
「ですが、今後このような私闘を起こされては困ります。当学院内には演習場(アリーナ)
もあります。事前に事務局に申請し、許可が下りれば、講義以外でも利用が可能です。もし
貴方達が互いの実力を図りたいというのなら、そうした模擬戦で以って行いなさい。……分
かりましたね?」
「は、はい」
「……承知致しましたわ」
 そして実際的な処分は下されることなく、二人には厳重注意という態で。
 アルスとシンシアは、エマのその言葉に改めて姿勢を正して頷き、応える。

(──何だか、釈然としませんわ)
 それから暫くの時間が経ち、シンシアはキャンパスの一角に居た。滑らかな質感の石材で
造られたベンチの一つに腰掛け、むすっと無言の不機嫌顔を浮かべている。
 入学式が終われば、所属ラボを決める為の見学が始まる。
 だがこんな事になった(起こした)手前、少なくとも今日はとてもではないがそんな気分
ではなかった。実際、時折近くを通り掛かる学生がこちらを見遣っていた。傍に控えさせた
キースが眼を光らせている事もあり、特に絡まれたりといった事態は起きていないが。
「いつまでむくれてるんです? 厳重注意で済んだだけでも儲けものでしょうに」
「うるさいわね。黙ってて」
 気だるげに口を挟んできた従者に短くそう言い返して、息を一つ。足を組み替える。
 こうもムシャクシャ──いや、モヤモヤとするのは何も足元を見られ、敢えて寛大な処分
で事が済まされたからではない。
(……アルス・レノヴィン)
 そう。今脳裏にあるのは、あの自分から主席の座を掻っ攫っていった少年である。
 実際に魔導を撃ち合い、その実力はある程度量ることはできたと思う。自分とは対照的と
でもいうべきか、パワーで押し切るよりも技巧でその場の局面に対応するタイプと見える。
 悔しいが、確かに主席に収まるだけの力は持っているようだった。
 だが……何よりも鼻につくのは、あの態度だ。
 状況的に彼は「正当防衛」を主張できた側だった。なのに学院長らに説教を受けていた時
も、彼は一貫してそんなことを話さなかったのである。ただ私闘を演じたことを侘び、頭を
下げていた。自身を正当化しようとは微塵もしなかったのだ。
 ──同情? ふざけないで。
 シンシアはギリッと奥歯を食い縛っていた。
 主席の座を掻っ攫い、自分の攻撃もしのぎ切り、加えてあくまで「優等生」であろうとす
るその姿。
 屈辱だった。まるで……あたかも自分が全て悪いと言われているような気がして。
「……」
 確かに、客観的に見ても自分が勝負を仕掛けたのは事実ではある。
 それ自体を恨んでも仕方ないことは流石に分かっている。だがやはり釈然としない。決着
だってついて──いや、あのままなら撃ち勝っていた。あのルソナの女や野蛮剣士の邪魔さ
え入っていなければ自分の方が強いのだと示せていたのに。
「待たせたの」
「おいっす。どうでした、庭園(げんば)の方は?」
 そうしていると、先刻から別行動を取っていたゲドが戻って来た。
 キースが軽く手を挙げつつ訊ねると、彼は巨躯を揺らして大らかに笑う。
「私が着いた折には元通りになっておったよ。流石は魔導師の学校だの。ああも綺麗に草花
を咲かせ直すとは」
「そりゃそうでしょう。いくらお咎めなしとはいえ、お嬢が魔導をぶっ放して暴れた事実は
消えない訳ですし。早い段階で後始末をするのは何も不思議な事じゃない」
「ちょっと待ちなさい。魔導を撃ったのはアルス・レノヴィンも同じでしょう? 何をこっ
そり私一人のせいにしようと……」
「しかし仕掛けたのは我らが先だぞ?」
「うっ……」
「ガハハ! 反論できませぬなぁ」
 従者二人や、加えて自身の持ち霊にすらそう突っ込まれて、シンシアはぐうの音も出ずに
黙り込むしかなかった。
 何だかこれもこれで屈辱だわ。
 むすっとふくれっ面をしたまま、彼女は釈然としないモヤモヤを抱えつつも立ち上がる。
「と、とにかく今日の所は帰りますわよ! この汚れた服も替えなければ……」
 そして半ばムキになって言いながら踵を返し、建物の曲がり角に差しかかろうとした。
 ちょうど、そんな時だった。
「──待っててくれたの、兄さん?」
「ッ!?」
 ふと進行方向から聞こえてきたのは、アルスの声。
 シンシアは殆ど反射的に目を開いて立ち止まり、サッと身を返してその物陰に隠れる。
「どうかなされたか? シンシア様」
「……? あ~、鉢合わせっすね」
 次いでゲドとキースの二人も、彼女に追いつくと各々の反応を示して同じく物陰へ。
「もう……。ゴタゴタするだろうし、先に帰っててって言ったのに」
「あぁ。団長とリンさんには帰って貰ったよ。でもお前を一人放って帰ったままって訳にも
いかねぇだろ」
 シンシア達三人が物陰から覗いた先には、向かい合って立つレノヴィン兄弟の姿。
 どうやら兄が弟のやって来るのを待っていたらしい。穏やかに苦笑しながら見上げてくる
アルスに、ジークは気だるい感じを保ちつつも応えながら、そう手にした何かを差し出す。
 それは畳まれた服らしかった。
 一瞬、目を瞬くアルスにジークは口を閉じたまま小さなため息をつくと、
「あれから一回部屋に戻ってお前の服、取って来た。そのままのボロくなった格好で街中を
歩かせるのもなんだろ?」
「あ……。うんっ、ありがとう」
 満面の笑みでそれを受け取る弟の姿を、逸らし気味の視線の中に捉えている。
「良き兄弟のようだな」
「そうっすね。あの時のキレ具合もこれで納得できます」
「……遠回しに私を批難してないかしら?」
「はは。気のせいっすよ」「……」
 微笑ましく、それでいてこちらも主従が主従なのか怪しいやり取りを。
 シンシア達は暫しその場を彼らの様子を窺っている。
「で? お前はさっきまで何してたんだよ? ラボ見学か?」
「はは……まさか。こんな事になったすぐ後に見学しようにも、周りの目があるもん」
「私は別にいいじゃんって言ったんだけどね~。非があるのはあの金髪女の方でしょ?」
 傍らで尚もむくれているエトナを穏やかに宥めつつ、アルスは苦笑していた。
 兄の質問に、少しばかり恥ずかしそうな戸惑いを見せつつも答える。
「えっとね。庭園を直してたんだ」
「庭園って……あのタカビー女が喧嘩売ってきた所か?」
「うん。僕達が魔導を撃ち合ったせいで、草木が皆ボロボロに荒れちゃったから……。あそ
こは他の精霊達(みんな)も気に入ってるみたいだったし、早く元通りにしてあげたいなっ
て思って」
「何せ私は樹木の精霊だからね~。植物(みんな)を元気にするのは大得意だよ」
 穏やかに笑いながら言うアルスと、その中空でそう胸を張るエトナ。
 だが、対するジークはその返答を聞くや否やあからさまに大きな嘆息をつくと、掌でそっ
と自身の顔を覆っていた。
「あのなぁ……。そういう後始末は加害側がやるもんだろ。お前らがやってどーすんだよ」
「でも、僕だって魔導を撃ち返したんだし……」
「だからさ~お前はお人好し過ぎるんだっての。あの後、野次馬をとっ捕まえて聞いたが、
何でもあの女、お前に主席を取られたからって喧嘩を売ってきたらしいじゃねぇか。逆恨み
もいいところだぜ? そんな相手にそこまで情をかけてんなって」
「あはは。その点は私もジークに賛成だね」
「う~ん……。でもそれって、多分表面的な理由なように思うんだよね……」
「あん?」「表面って……?」
 それでもアルスの態度はあくまでのんびり穏やか、マイペースだった。
 彼が口にするその言葉。ジーク、そしてエトナも頭に疑問符を浮かべてその思案顔を見遣
ってくる。二人に迫るように見られたからなのか、アルスは少々もじもじと恥ずかしそうに
しながらも、
「うん……。えっとね? これは僕の推測、なんだけど」
 ゆっくりと自身の思考を整理するようにしながら、口を開き始める。
「あの人──シンシアさんには、もっと深い理由がある気がするんだよ。戦っている途中で
精霊達(みんな)がこそこそ伝えてきてくれたのもあるんだけど、何ていうのかな……彼女
の魔導からは、何だろう。必死さ……みたいなものを感じたんだ。すごく真っ直ぐで、だけ
ど迷いも一緒に吹き飛ばそうとしているみたいな。辛そう、とも言い換えられるのかもしれ
ないけど……。だから僕は、躊躇ってた。このまま本当に戦って、ただ打ち負かし合うだけ
でいいのかなって……」
 訥々としたアルスのその紡いでゆく言葉。
 それを、当のシンシアはじっと聞いていた。いやもっと言えば射抜かれたように硬直して
いたと表現する方が正確だっただろう。
 その様子にはたと気付き、従者二人が声を掛けてみようとするが、彼女は上の空だった。
 それはジークやエトナも少なからず似た反応であり、眉間に皺を寄せたり、あの一戦での
記憶を辿ったりして耳を傾けている。
「だからね。この件が落ち着いたらシンシアさんに謝ろうと思う。……多分、あの時のそう
いった躊躇いも、彼女には侮辱と取られたかもしれないから」
 アルスはフッと苦笑していた。
 エトナだけではない。その周りにはふよふよと何時の間にか精霊達が集まっていた。
 穏やかな表情(かお)で彼らをそっと掌で迎えながらも、アルスは静かに自分の中の心苦
しさを呑み込もうとしている。
「……やっぱお前、筋金入りのお人好しだわ。自分に剣を向けてきた奴に情をかけ過ぎだっ
つーの」
「そうかなぁ? というか、剣を向けていたのはむしろ兄さんじゃ……」
「ぬぅ。そ、それは言葉の綾って奴で……あ~、もういい! 分かったよ! お前が怒って
ないならそれでいいよもう……。ほら帰るぞ? 団長達も心配してたんだぜ?」
「う、うん……」
 そんな弟のマイペースぶりにジークは頭を抱えたが、結局それ以上追求しない事にしたよ
うだった。ぽやっと小首を傾げるアルスに半分やけくそ気味なると、彼はくると踵を返して
正門のある方向へと歩き始める。
 くすくすと笑うエトナと、その眼下で頭に疑問符を浮かべているアルス。
 そんな先を行こうとする彼の後を、二人はとてとてとついてゆく。
「……良かったっすね。相手が寛大で」
「少々掛け違いがあるようにも思えるが……。ふふ、面白い者だの」
 そしてキースとゲドはそんな彼らを物陰から見つめつつ、静かに微笑ましく呟いていた。
「……ふん」
 しかし、ただ一人シンシアだけはその微笑ましさの波には乗らなかった。
 やや俯き加減になった前髪に表情を隠し、短く鼻で哂うようにすると、二人を余所に立ち
上がりジーク達とは逆方向へと踵を返す。
「興が削げましたわ。帰りますわよ。ゲド、キース」
 数拍、従者二人はその反応に呆気に取られていた。
 だがそれも束の間。彼らは互いに顔を見合わせると、
「うい~っす」「承知した」
 彼女に気付かれぬようニカッと笑い合い、いそいそとその後に従ってゆく。
(全く……。何なんですのよ……)
 お嬢と従者達と兄弟と。
 二手に分かれた両者はそれぞれに帰宅の路に就いていった。


 酒場『蒼染の鳥』に深夜の来訪者がやって来たのは、その日の夜更けになろうかとしてい
た頃合だった。
「すみませんね。今夜はそろそろ閉めようかと思っているのですが」
 街の常連は既に帰ってしまい、店内に残っていたのは数名の団員と、ちびちびと飲み合っ
ているジークとシフォン、ダンの三人だけだった。
 カウンター内でも一人後片付けをしていたハロルドは、不意に開いた扉の音を耳にして、
そう断りを入れようと振り返る。
「そうか。夜分すまぬな」
「ま、でも大丈夫だ。俺達は客ってわけじゃないからさ」
 戸口に立っていたのは、長髪にバンダナをしたヒューネスと刈り込み頭のトロルの男性。
キースとゲドだった。
 その姿を認め、小ジョッキを口元に運ぼうとしてたジークが驚いたようにその手を止めて
目を見開いている。
「あんたら……」
 ジークの姿を見つけて、彼らもフッと表情を緩めた。
 だがそれも一瞬の事であり、すぐに口元には真剣な気色が宿り直す。
「どうも昼間はお騒がせ申した」
「改めて、詫びに来ましたって訳でね」
「……? ジーク、知り合いかい?」
「あぁ。ほら、昼間学院でアルスに喧嘩吹っかけてきた女がいたって話をしたろ? そいつ
の護衛役らしいんだ」
「そうだったのか。わざわざ足労を掛けてさせてすまねぇな」
 誰だと頭に疑問符に浮かべるシフォンとダンに、ジークは説明する。
 するとダンは酒が入った赤みを帯びた顔のままで、そうこの来訪者二人に笑いかけた。
「いやいや。それで……あの少年、確かアルスといったか。彼は今何処に?」
「あいつなら部屋だよ。ハロルドさん」
「ええ。内線で呼んでみましょうか」
 言ってハロルドはカウンター内の導話を取り、レノヴィン兄弟の部屋への内線番号を打っ
た。受話筒を耳元に当て、暫し皆に背を向けて応答を待つ。
「アルス君ですか? 私です。今酒場に、昼間に貴方とやり合った方の従者の方達が来てい
るのですが……。えぇ、はい、ではお願いしますね」
 そして導話の向こうのアルスと二、三やり取りを交わして、彼は皆に振り返った。
「少しお待ち頂けますか? すぐにこっちに来ますので」
「まぁ、立ちっ放しもなんだろう? 座れよ」
「……うっす」「うむ。では失礼致す」
 ジークら三人の座るテーブルへとダンに促され、ゲドとキースは近付いて来て空いた席に
腰掛けた。他の数名の団員らも、傍観者的に様子見の体勢を取っている。
「ま、軽く自己紹介をさせて貰おうかね。俺はキース・マクレガー。昼間のやり取りでも分
かってたかと思うが、お嬢──シンシア・エイルフィードの護衛もとい目付け役を任されて
いる者だ」
「同じくゲド・ホーキンスだ。キースと共に伯爵殿よりシンシア様の従者を任されておる。
ちなみに、これでも私達もお主らとは同業者だ」
 先ずはと、二人はそう改めてジーク達に名乗った。
 キースは言ってゲドに目で合図を送り、彼は懐から自身のレギオンカードを取り出して見
せて続けた。
「エイルフィード伯……。確かここよりも少し西の“爵位持ち”の家柄だね。魔導師として
業績を挙げて、数代前に爵位を得た家柄だった筈だけど」
「ふぅん……」
 爵位とは、何かしらの功績を残してきた「名士」たる者やその一族に与えられる特権的階
級の称号である。原則、一度与えられると以後は世襲となって受け継がれるが、その称号に
そぐわぬ言動などが重ねれば、最悪本籍国の政府より没収されてしまう事も珍しくない。
「爵位持ちねぇ。通りでタカビーだった筈だよ。でも、それよりも俺は……」
 シフォンがそう記憶を辿って口にするのを聞き、ジークは頭の後ろで手を組み合点がいき
つつもスッと目を細めていた。
「何であんたらがこの場所を知ってるのかが気になるんだがな。少なくとも、俺は話した覚
えはないんだが?」
 それは遠回しな牽制。だが対するキースは動揺した様子はなく、
「ま、そういう諸々を調べたりするのが俺の仕事だからな。俺はホーさんみたく生粋の戦士
ってわけでもないんでね」
 そう気安い感じを保ったまま、片眉を僅かに上げて言ってみせる。
(……なるほど。密偵か)
 ジークはその言葉の端を捉え、そう結論付けると納得していた。
 だが同時に、下手な事は喋れないなと警戒心を密かに維持しておくことも忘れなかった。
「すみません。お待たせしました」
 そうしていると、アルスがやって来た。
 アルスはジーク達がテーブルに集まっているのを認めると、若干警戒の気色を見せるエト
ナを伴って近づき、残りの空いた席に着く。
 ゲドとキースは改めて二人に自己紹介をし、揃って昼間の非礼を詫びていた。
「いいんです、気になさらないで下さい。もう済んだ事ですし……。こちらこそ、わざわざ
ご丁寧にありがとうございます」
 だがアルスは笑って許していた。
 それが彼の飾らぬ本心でもあった。応戦した自分にも非はある。何より彼女から感じた必
死さを、アルスは自分の“正当性”で踏み躙りたいとは思えなかった。
「……まぁアルスがこう言ってるから私も目くじらは立てないけどさ? そういう事ならせ
めて本人も連れてきて欲しかったな~」
「うむ……。その点は、私達も済まないと思っている」
「俺達も引っ張り出そうとはしたんだがな。お嬢の奴、屋敷に帰った後、部屋に籠っちまっ
た切り不貞腐れて出て来なかったもんだから……」
「不貞腐れて、というよりは何か考え込んでいたように、私には見えたが……」
 その代わりにエトナが遠回しに難癖をつけていたが、ゲドとキースは苦笑を隠せずにそう
弁明して困り顔を見せていた。
 とはいえ、シンシアのそういう所は今に始まった事ではないのかもしれない。
 アルスには、何処か彼ら二人が“親愛の情”を以って彼女に接しているように思えた。
「……まぁ、結果的にはこれでよかったのかもしれないんだがな。あんたらに改めて侘びを
入れるのもそうだが、それ以上に今夜はちと話しておこうと思う事があってさ……」
 そして、ふとそうキースが切り出した言葉に、アルス達一同は小さな怪訝を浮かべた。
 周りの団員らの眼を気にして、少し身を乗り出す従者二人組。
 アルス達も同じようにその動きに合わせると、少し声量を落としてゲドが言った。
「他でもない。シンシア様の事だ。先程話したように、シンシア様は魔導によって立身出世
を果たしたエイルフィード家の直系、現当主の一人娘だ」
「そういう訳で、その例に漏れずお嬢も成人の儀を終えた後、領内近くのアカデミーを受験
して魔導師を目指そうとしたんだが……これにスベッちまってな」
「しかも一度ではない。二度だ。それでシンシア様はわざわざ領内を離れ、この街で三度目
の正直を目指したわけだ」
「……ふーん。でもよ、アカデミーの試験ってそもそも難しいんだろ? 浪人なんて別に珍
しい訳でもねぇだろうに」
「そうだね。それに十五からきっちりではなく、ある程度経験を積んでから受験してくる者
も少なくないと聞くよ? 大抵は冒険者上がりだそうだけど」
 二人は大事そうに、重苦しそうに言ったが、ジーク達の反応は淡白だった。
 事実アカデミーの競争率は高い。それを踏まえた“庶民”の感覚としては当然だった。
「そこはまぁ……爵位持ちの家柄故というか、プライドというかさ。魔導の名士なのに何度
も落っこちてちゃあ格好がつかないんだよ。だから領内を飛び出した訳で」
「シンシア様が本家を出ると言い出した時は、伯爵殿も大層心配されていたがな」
「……でも、三度目の正直は叶った」
「そう。だけどその代わりと言っちゃあ何だが、主席の座は得られなかった。他ならぬお前
さんによってな」
「……はい」
 二人の話に従い、神妙な表情になっていくアルス。
 そんな彼の表情の変化を確かに目に映しながらも、キースはそう続けた。
「悔しかったんだろうよ。元々気の強い性格で、且つ今まで二度も落ちてきたっていう負い
目が付いて回ってる。プライドが許さなかったんだろうな」
「面倒臭ぇ女だな……。どのみち逆恨みじゃねぇか」
「そうだよ! アルスだって一生懸命勉強したんだから!」
「お、落ち着いて二人とも。お二人に言ってもしょうがないよ……」
 途端に撥ね返す、呆れ顔のジークと我が事のように憤るエトナ。
 だがそんな二人を咄嗟に宥めていたのは、他ならぬアルス自身で……。
「いや、君達の言う通りだ。どれだけ自身が努力しようとも、試験といったものは相対的な
評価である事に変わりはない。シンシア様を責めるに拒む理由などなかろう」
「……ま、でもそういうお嬢個人のややこしい私情があったんだって事は、補足させて貰い
たくってさ。俺達もお嬢の思いが分からないわけじゃねぇが、それがあんたらにとっては理
不尽なものだって事もよーく分かってるつもりだ。そもそも俺達がちゃんとお嬢を見てて、
防げなかったのも一因なんだ」
 それでも従者二人は謝罪を止めなかった。
「改めて……すまなかった」
「改めて……申し訳ない」
 ただ主の名誉の為、義理を通す為、二人は自身の恥も顧みずに深々と頭を下げる。
 ジーク達は少々呆気に取られていた。
 シンシアという人物をよく知らない事もある。会った限りでは高飛車にしか映らなかった
という事もある。
「……いいんです。どうぞ頭を上げて下さい。そのお話のおかげで僕も納得ができました。
こちらこそ、ありがとうございます」
 しかしその中でただ一人、アルスだけはフッと微笑んでいた。
 既に、元より必要以上に彼女を責めるつもりはなかった。むしろあの時自分が感じた彼女
の必死さの理由が分かったような気がして、スッキリとした思いだった。
 許してくれるか半々だったのだろう。その言葉を受けて、ゲドとキースはゆっくりと顔を
上げてから互いの顔を見合わせる。
「……ま、そういう事だ。アルス本人がこう言ってるんだ。もう謝り合いはこの辺にしとこ
うじゃねぇか」
「そだね。私も何か毒気を抜かれた気分だよ……」
 アルスがそう言うのなら。ジーク達場の面々はやがて同じ思いになっていた。
 まだ若干驚いている従者二人組に向かい合い、彼らはからっと済んだ事と言わんばかりに
それぞれに笑っている。
「……すまねぇ」
「恩に、着る」
 キースとゲドは最後にもう一度軽く頭を下げ、苦笑していた。
 雪融け。だがそう表現すべき雰囲気が醸成されたと思われた次の瞬間、突然ドンッと大き
な酒瓶がテーブルの中央に置かれた。
「ははっ! じゃあ陰気臭い話はこれで終いだ。折角だから飲んで行けよ? 俺が奢るぜ」
 ダンが満面の笑みで豪快に笑っていた。
 ゲドとキースは思わず面を食らっていたが、すぐに表情を綻ばせてその申し出を受ける事
にする。
「おーい、ハロルド。もっとつまみを頼まぁ!」
「はいはい……。少し待っててくれ」
「というか、ダンはただ飲む口実が欲しいだけだよね?」
「全く……。副団長、二人を酔い潰すのだけは勘弁して下さいよ?」
「がはは! 分かってるって」
 そうしてにわかにテーブルが騒がしくなっていった。
 置かれてゆく酒瓶と肴。ダンに催促されるように飲み始めるゲトとキース。そんな猫耳の
副団長を、シフォンとジークはそれぞれに生暖かく見守──監視している。
「……ふふっ」
 アルスはそっとその場を離れるようにして座り直し、そんな彼らの様子を眺めていた。
「何笑ってるの?」
 ふよふよと、エトナが浮かんだまま少しふくれっ面で声を掛けてくる。
 アルスはそんな相棒を微笑ましく見上げながら、静かに口を開いた。
「うん……。やっぱりね、皆が笑ってるのが一番だなって思って」
「そりゃあ、ね……。でもやっぱり、アルスは甘い気がするんだけどなぁ……」
 まだ少々ぶつぶつと。エトナは漂いながら複雑な感情の間を行ったり来たりしている。
 テーブルの端にそっと肘を乗せ、アルスは穏やかに思った。
 ようやく胸の奥の突っかかりが取れたような気がする。彼女はどう思っているかは流石に
察し得ないが、これでやっと今日という一日が終えられるような気がする。
 しかし……と、同時に思う。
 まさか自分が主席の成績を取ってしまったことで、このような苦悩を抱えさせる人を出し
てしまうなんて。
 あの向けられた対抗心が客観的には理不尽である事は重々承知しつつも、アルスは何だか
申し訳ない気持ちになっていた。
(……主席、か)
 僕はただもっと本格的に魔導を学びたかっただけなのに。
 しかしそんな平穏を望む学院生活はどうにも危うくなっているらしい。
 なまじ主席となってしまい、次席たる彼女と入学早々私闘を演じてしまった。……今後、
波風が立たないとは到底思えない。
(どうなるんだろう? これから……)
 密かな嘆息と、同時に少しばかりの期待感と。
 徐々に打ち解けつつあるジーク達の様子を眺めながら、アルスはぼんやりとそんな物思い
に耽ったのだった。

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  1. 2011/08/24(水) 20:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

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