日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブル〔2〕

 僕には父さんがいない。いや、いない筈はないんだけど。
 少なくとも僕の記憶の中には全くと言っていいほど見当たらないんだ。事実顔も、名前す
らも僕は知らない。
 物心ついて、母一人子一人が必ずしも普通じゃないと解って。
 勿論、何度か母さんに訊こうとした事はある。何かしら事情を抱えて離れ離れになったの
は間違いないのだから。
 でも、そうやって訊ねる度、母さんは哀しそうに微笑(わら)っていた。幼かった僕の頭
を撫でながら「全ては貴方の為に決めた事なの」と言って詳しい経緯は決して話してはくれ
なかった。
 だから……何時しか僕も訊ねる事を止めた。問い詰めても母さんを苦しめるだけだと子供
心に察したからなのかもしれない。
 僕らは母一人子一人、それでいいんだと思う。今の時代、結婚の形はそれこそ多様だし、
何より母さんと父さんが決めた事だ。それが僕らにとってベストの選択だったんだろう。

 母さんは研究者だ。IT技術で皆を快適に、幸せにする為の研究を日夜行っている。
 物心ついた頃から母さんは多忙だった。一年を通して家にいる事は稀で、大抵は勤め先の
研究所に泊り込みで仕事をしている。
 寂しいと……思わなかったと言えば嘘になる。
 でも多分、僕も子供なりに解っていたんじゃないかなと思う。仕事に没頭すれば、その間
は過去(むかし)を忘れられる。父さんと別れたその何かしらの過去(きおく)を再生して
いる暇は削がれる。それに僕に会わなくていいんだ。息子が目の前にいれば……否応なしに
父さんの事が思い出されてしまうだろうから。
 幸い、僕には助けてくれる人達がいた。ご近所の青野さんと、天ヶ洲さん一家だ。
 海沙と宙。それぞれおじさん・おばさんには事務的な手続きと、料理を始めとした家事全
般のスキルを学んだ。大切な人達だ。もし彼女達がいなければ、僕はとうに家で一人途方に
暮れていただろう。

 今までずっと、僕はそんな皆の厚意のおかげで生きてきた。海沙、宙、皆人に陰山さん。
大切な友人にも囲まれて、僕は何一つ不自由のない生活を送れている。
 だけど……いつも僕には穴が空いている。いつもぽっかりと、胸の奥に大きな穴が空いて
いて、気を緩めばすぐにでもその暗がりの中に巻き込まれそうになる。
 助けてくれる人がいる。支えてくれる人がいる。
 でも、なら僕はどうだろうか? 僕は彼らに、そうした恩に報えるほどの事をしてあげら
れているだろうか? どうしても埋まらない。受け取ってばかりで、与える事も出来やしな
い自分は悪い子なんじゃないだろうか? 折につけて、そう背中に針を刺されるような痛み
を覚えることがある。
 ……気付かれちゃ駄目だ。甘えちゃ駄目だ。
 他人の厚意は素直に受け取っておくものだとは云うけれど、やっぱり何処かで後ろめたく
思っている自分がいる。
 笑っていなくっちゃ駄目だ。不幸な顔をしていたら、きっとまた皆は僕を助けようとして
くれる。それが、何となくだけど、どんどん泥沼に嵌っていく事になるような気がして。
 正直、恵まれているんだと思う。
 でも……だからこそ僕は、自分が“欠けている”と自覚しているからこそ、この疑問を自
身に問い掛け続ける事を止められない。

“何故、僕はここにいるのだろう?”

“そもそも僕は、本当に生まれてくるべき人間だったのかな──?”


 Episode-2.Prologue/超越者の誕生

「……え? ええぇぇぇーッ?!」
 周りの面々は勿論の事、当の睦月本人も驚愕していた。
 自身を包むのはフルフェイスな白亜のパワードスーツ。胸元の球(コア)には茜色の輝き
が宿り、指先や二の腕などの稼動部はあたかも予め自分のために設えられたかのような黒い
ラバー素材がぴっちりと覆っている。
「変身、した……」
「信じられん。あれだけ実験段階では失敗続きだったというのに」
「お、おい。すぐに計測を! 彼のデータを収集するんだ!」
「……」
 睦月がまじまじと“変身”した自身をためつすがめつ見渡している中、白衣の皆が慌しく
荷物からノートPCや接続式の計器を取り出し始めた。その中で唯一、昏倒した冴島の傍に
駆け寄っていた母・香月だけは、この息子の姿を複雑な表情で見つめている。
「適合値出ました! に、二七〇〇」
「二千ん!? 冴島君の三倍じゃないか!」
「彼は、一体……」
 故に暫く、睦月は彼らと、彼らに襲い掛かろうとした怪物達との間に唖然と立ちぼうけの
ようになっていた。
 蛇腹の配管をぐるぐるに巻きつけたボディに、鉄板をぎゅっと押し当てたかのような異質
な顔面。ギチギチと両の五指から伸ばした鋭い爪を構えながら、この三体は鉄板顔から空く
赤い瞳をぎらつかせながらゆっくりと近付いて来る。
「ど、どど、どうしよう。つい無我夢中で冴島さんのリアナイザを取っちゃったけど……」
『大丈夫です。まさかこれほどの適合者が現れるとは想定外でしたが、今はもう手段を選ん
でいる暇はないです。戦ってください! 私がサポートします!』
 でも……。パワードスーツに身を包みながらも身じろぎする睦月。だが状況が状況だけに
意を決したのか、銀のリアナイザの中からそうパンドラからの声がする。
『──今の貴方は、次元の壁すら越えられる存在です!』
 そうして、次の瞬間怪物達が襲い掛かってきた。両手の五指を引っ下げて、その装甲ごと
睦月を切り裂こうとする。
『リアナイザを口元に近づけてシュート、スラッシュ、ナックルの何れかをコールしてくだ
さい。基本武装を切り替える事が出来ます』
「う? うん」
 先ずパンドラからそんな指示が出た。されどこの姿は何で、何の為にあるのかがいまいち
判らないままだ。睦月は言われるがまま、この銀のリアナイザを持ち上げて頬近くに持って
いき、叫ぶ。
「シュート!」
『WEAPON CHANGE』
 するとまたもや鳴る機械音のコール。怪物達がすぐ近くまで迫ろうとして来ていた。
 睦月は叫んだ単語と、このリアナイザの形状から、半ば反射的にその銃口を彼らに向けて
思いっきり引き金をひく。
「ガギャッ!?」「ンギャハッ?!」
 するとどうだろう。銃口からは予想に違わず、エネルギーの弾丸が次々と発射されたでは
ないか。纏まって迫ってくる怪物達は次々に撃たれていった。激しい火花を放ち、明らかに
ダメージを受けたように吹っ飛んで転び、硝煙を上げながら床に倒れ込む。
『よしっ!』
「当たった……。コンシェルに、攻撃が……?」
『ぼさっとしないでください! 来ますよ!』
 背後でガッツポーズを取る白衣の皆と、自身の為した事に驚く睦月。
 しかしパンドラの言う通り、怪物三体の内、一体は他の二体の被弾を身代わりにするよう
に少し迂回しながら迫って来ていた。
 大きく鉤爪の手が振り上げられる。睦月は咄嗟に、次の武装をリアナイザにコールした。
「っ、スラッシュ!」
『WEAPON CHANGE』
 身を守るように両手を構え、引き金を握る。
 するとどうだろう。今度は銃口から弾丸ではなく、エネルギーの刀身がブゥンと現れたで
はないか。直後、怪物の鉤爪がこれとぶつかり激しく火花を放つ。とんでもない力だ。睦月
は一瞬その尋常ではない筋力に驚きつつも、同時に自分が──このパワードスーツを纏って
いる自分が、その威力に充分に耐え切っている事に気付く。
「ぬぅぅ……。どっ……せいッ!」
 全身に力を込めてこれを弾き、一閃二閃とリアナイザの剣でこの怪物の内一体を斬りつけ
てみせる。彼(?)は思わずよろめいた。そこへ先ほど撃たれて地面に転がっていた残りの
二体が合流し、今度は三対一で睦月に襲い掛かる。
「だわっ!? 痛だっ! 痛い痛い! くそっ、こん……にゃろうッ!」
 パワードスーツに一撃二撃、鉤爪を叩き込まれ、睦月は火花を散らしながら左右にふらつ
いた。口にはする。が、存外身体の芯にというよりは衝撃でそう感じるようだ。すぐに両脚
を踏ん張り、必死になってこの怪物達三体と立ち回って取っ組み合う。
「猪口才、ナ」
「なっ……。や、止めろ離せ!」
 すると怪物達は、一体が背後に回って睦月を羽交い絞めにし始めた。当然睦月もこれにじ
たばたともがいて抵抗する。だがその間に残り一体が鉤爪を、もう一体が五指を筒状にして
弾丸を放ち、パワードスーツ姿の彼を攻め立てる。
「あだだだだ!? 止めろ、止めろって!」
『睦月さん、ナックル・モードです! 拳の力場で後ろの奴をぶっ飛ばして!』
「ぐ……。な、ナックル!」
『WEAPON CHANGE』
 所詮は素人。劣勢になったとみるや否や、パンドラが続いてそう指示を出してくれた。羽
交い絞めで苦しみながら、それでも睦月はリアナイザを頬の傍まで引き寄せると、残り一つ
の武装形態に切り替える。
「ギャッ!?」
 直後、引き金をひいた瞬間、銃口を中心にエネルギーの球が形成され、ちょうど顔の側面
にそれが触れた背後の怪物が吹っ飛んだ。慌てて睦月はこれから離れて身構え、球系のエネ
ルギーを纏うリアナイザを拳具よろしく握る。
「おかえし、だっ!」
 半身を返して飛び退いた背後から迫ってきた他の二体を、裏拳で先ず叩き落し、放ってく
るエネルギー弾をこの光球に弾かせて防ぐ。どうやらこの武装は単に殴るだけではなく盾と
しても使えるようだ。
 一体目の方に蹴りを入れてもう一体の方へ跳ね飛ばし、駆けながらこの纏まった二体に思
いっきり右ストレートを叩き込んで吹き飛ばす。
「……化け物相手とはいえ、あんまり気持ちのいいものじゃないな」
『言ってる場合ですか。次はこの子達──サポートコンシェルを使ってみてください。ホロ
グラムから選択して、引き出したいタイプのボタンを押して引き金をひくだけです』
 香月や、白衣の皆の応援を背に受けつつ、ぽつりとフルフェイスの茜色のランプ眼を気持
ち点滅させながら睦月はごちた。だがそれを、他ならぬパンドラが制してそう次なる指示を
出してくる。
『先ずは……この獅子(ライオン)の子を。アームズ、武装追加は右のボタンです。最初に
押したトレース、装甲追加の下の段ですよ』
 ふるふると首を横に振って気を持ち直しながら、さっき発動と同時に吹き飛ばした怪物が
のそりと起き上がり始めていた。
 睦月の背後。彼はフーッ!と息を荒げ、五指の爪を振りかぶりながら飛び掛かってくる。
『ARMS』
『FIRE THE LION』
「せいっ!」
 ホログラム上の画面からコンシェルを選択し、銃底の右のボタンを。
 引き金をひいて銃口から飛び出た赤い光球が左腕に纏いつくのもそこそこに、睦月は振り
向きざまにこの襲い掛かってくる怪物を真正面から殴りつけた。
「ンギャァァ!!」
 轟。睦月の左アッパーは文字通り火を噴いていた。
 獅子を象った拳具。その目が赤く光り、メラメラと真っ赤な炎を纏っている。
「熱、イ……。熱イィッ!?」
『ふふん? なら冷やしてあげましょうか。睦月さん、この子の属性(エレメント)──左
のボタンを!』
「オッケー」
 火に巻かれて地面を転がる怪物に吐き捨てて、パンドラが言った。睦月はホログラムの画
面上でアクティブになる別のコンシェルを確認すると、そのまま銃底の左ボタンを押して引
き金をひく。
『ELEMENT』
『ICE THE WOLF』
 今度は青い光球が飛び出し、胸元の球(コア)と吸い込まれていった。
 クゥゥン……。力が満ちたように唸るそれを見てもう一度この怪物に向けて掌を開くと、
次の瞬間大量の冷気が吹き出し、みるみる内にその身体は氷漬けになる。
「だっ、しゃあッ!!」
 それを、睦月は再び獅子の拳具で叩いた。炎を纏い、氷を融かしながら砕いて殴り飛ばす
一撃。そしてそのまま、この怪物の内の一体はバラバラに四散してひび割れ、次々に宙で破
裂しては消滅していく。
「よしっ!」
「一体やっつけたぞ!」
 だが……その隙を突かれたのだ。自分達の開発したパワードスーツ──睦月が怪物の一体
を撃破したさまに喜んでいると、残る二体が彼らの姿を認め、にわかにその標的を切り替え
て来たのだ。
「ひっ……!?」
「や、止めろォ! 来るなぁ!」
「──ッ! 母さん、皆!」
『待って、睦月さん。こんな時こそサモンタイプの出番です。この子を真ん中のボタンで。
一対一の戦いに持ち込みましょう』
 咄嗟に割って入ろうとした睦月に、パンドラが言った。再び更に別のコンシェルがホログ
ラムの画面上でアクティブになり、睦月は駆け出しながらボタンを押し、引き金をひく。
『SUMMON』
『THUNDER THE DEER』
 するとどうだろう。今度は引き金から、黄色の光球を纏いつつ、鹿をモチーフにしたよう
な二足歩行の怪物が現れたのだ。
 思わず一瞬、睦月は足を止めかける。だがパンドラが『博士達を守って!』と言った瞬間
この鹿のコンシェルが肩越しに振り向いて頷いたのを見て、睦月も彼は敵じゃないと直感的
に理解する。
「ガッ!?」
「新、手……?」
 香月達に迫ろうとしていた怪物達を、睦月と鹿のコンシェルはほぼ同時に飛び込んで食い
止めた。それぞれに一体ずつを受け持ち、殴り合い防ぎ合いの戦いを繰り広げる。身を割り
込ませて皆から怪物達を引き離し、半ばヤケクソになってその身体に連撃を叩き込む。
「こん、のっ! 母さん達から、離れろ……ッ!!」
「フ、シャアァァァァーッ!!」
 じわりじわりと殴って後退させる横で、鹿のコンシェルが雄叫びを上げながら対する怪物
を猛烈に押し出していた。
 思わず睦月が通り過ぎて行った先を見遣る。どうやらその大きな角で挟み込み、体当たり
をかましたようだ。
 しかもである。壁際に追い込んだこの怪物を、彼は角から発生させた電撃で以って怒涛の
攻め。あっという間にこれにオーバーキルのダメージを与え、ヒビ割らせたのち爆発四散さ
せてしまう。
「……僕、要らなくない?」
『呼び出す本人がいなければ出て来れませんから。ささ、私達もフィニッシュですよ!』
 五指の鉤爪をしのぎ、その隙を突いて拳や蹴りを入れながら、一旦睦月は大きく残る一体
を蹴り飛ばして距離を取った。ふらふら。仲間達を次々に倒された怪物はさも怒りに震えて
いるかのようにみえる。
『いずれかの武装を起動させた状態でチャージをコールしてください。エネルギーの充填が
始まりますから、腰のホルダーのどちらかにリアナイザを挿入、完了音が出るまでしっかり
狙いを定めておいてください』
「……了解。シュート、チャージ!」
『WEAPON CHANGE』
『PUT ON THE HOLDER』
 基本武装を射撃に切り替え、とどめの一撃に入る。
 リアナイザからは例の如く機械音のコールが鳴り響き、一旦出していた他の追加武装も解
除して銃口を腰に下がっている一対の金属ホルダーへと収める。
 オォン……。全身に力が満ちていくのが感覚で分かった。そしてそのエネルギーの流れが
胸元の核(コア)から全身を伝い、腰のベルトからホルダーに注がれていく。
『今です!』
 キィン──。甲高い完了音が鳴り、パンドラが叫んだ。睦月はくぐもりながらも雄叫びを
上げて突っ込んでくるこの怪物と真っ向から対峙しながら、こちらも半ば必死になって叫び
つつ、ホルダーからリアナイザを抜いて銃口を向け、一気に引き金をひく。
 轟。両手で支えていないとこちらが吹き飛ばされそうな衝撃だった。
 銃口から放たれた極太のエネルギー砲。それは真っ直ぐにこの最後の一体に直撃し、これ
を消し炭にしながら瞬く間に消滅させる。
「……はぁ、はぁ、はぁっ……!」
 暫し、しんと辺りが急に静かになった錯覚がした。だがそれでも館内の警報は相変わらず
何処か遠い所で鳴り続けている。
「睦月……」
「睦月君……」
 ゆっくりと振り返る。香月以下、研究室(ラボ)の皆が驚きと安堵の様子でこちらを見て
いた。睦月も笑う。最初と同じようにデジタルの光輪が彼をぐるりと回り、その姿はいつも
の心優しい少年のものに戻った。
「……よかった。皆、無事、で──」
 睦月!? 彼らが血相を変え駆け出してくるのが見える。
 だが睦月は、次の瞬間、もう意識を手放す強烈な眩暈に抗う術を持てなかった。


「──ん。んぅ……?」
 いつの間にか深く沈み込んでいた意識が、はたと激しく揺らめくようにさざめいた。
 瞼の裏にそっと光が差し込む。睦月はぼうっと目を開き、ややあってそこが普段見慣れた
天井ではない、酷い白く清潔感のあるそれだと知る。
「ッ!? 睦月!」
「睦月君!?」
「おい、目を覚ましたぞ」
「急いで出入口を固めろ。誰も通すなよ」
 するとぼやっとした意識に、突然複数の声が飛び込んできた。
 視界の中へ覗き込んでくる顔。母・香月や彼女が勤める研究所(ラボ)で睦月も顔見知り
になったその同僚達である。
 もう少しすれば泣き出しそうな母と、安堵し、或いは慌てて医師に知らせに──行くよう
では何故かなさそうな彼ら。睦月はようやく此処が病院のベッドである事に気付いた。
 全身にだるさが残っている。あれは……夢だったのだろうか?
「……母さん。僕は、奴らは一体──」
「大丈夫。全部、貴方がやっつけてくれたから」
 だから言い掛けて、フッと哀しげに母が答えたその言葉が全てを物語っていた。
 夢なんかじゃない。彼女が作っていた、まるで人間のような心を持つコンシェルの少女と
現実(リアル)を破壊する怪物──異形めいたコンシェル。
 そうだ。奴らが母さん達の研究所(ラボ)にやって来て、滅茶苦茶にして、それで……。
「……冴島さんは? 研究所(ラボ)の皆は無事なの?」
「ええ。多少怪我人は出たみたいだけど、幸い犠牲者は出なかったわ。奇跡的ね」
「冴島君なら安心したまえ。今は別の病院で眠っている。尤もダメージがダメージなものだ
から、暫くは絶対安静だそうだが」
「……。そうですか」
 恰幅のよい男性──確か所長さんが皆を代表して答えてくれた。どうやら命に別状はない
らしいが、それでも睦月の表情は曇る。あれは一体、何だったのだろう?
「佐原君」
「……ええ。もう、覚悟は決めました」
 暫く睦月も、この場に集まっていた香月以下研究所(ラボ)の面々も、どうしたものかと
押し黙っていた。
 しかし最初にそれを破ったのはこの所長だった。ちらと香月を見遣って訊ね、彼女の苦渋
と言ってしまっていい表情と肯定の返事に、彼はもぞもぞと懐を探りながら進み出る。
『ヤッホーです。また会いましたね、睦月さん。ご無事で何より』
「あ、ああ。君も、元気そうで」
 それはパンドラと──あの銀のリアナイザだった。
 ホログラム越しに電脳の少女がにぱっと笑って挨拶をしてくる。だが一方で所長や香月達
の表情は至って真面目、神妙だ。
「さて、何から話してゆけばいいか……。睦月君、テイムアタックは知っているかね?」
「はい。コンシェル同士を戦わせて遊ぶゲーム、ですよね。その、リアナイザっていう機械
を使って」
「ああそうだ。とある企業が生み出した、今日のVR技術の粋を集めて作られた巷でも人気
のコンテンツだよ」
 でもね……。所長は続けた。掌の中のリアナイザを、複雑な表情でそっと撫でながら彼は
衝撃の事実を告げる。
「ある時看過できない問題が発生している事が分かった。コンシェル達が、現実(リアル)
に侵食して様々な事件を起こしているとね」
「コンシェルが……?」
「睦月、貴方も見たでしょう? 現実の怪物と化したコンシェル達が、この世界で好き放題
に暴れ始めているの。二次元──VRは本来現実(リアル)とは触れ合えない。だけど彼ら
はある手段を使ってこの世界に実体化する事に成功してしまったの」
「それが、もしかして……?」
『はい。他ならぬリアナイザなのです。通常では単にホログラムとしてしか姿を現す事がで
きない私達を、ある特殊なリアナイザを使えば、一時的とはいえこの世界に呼び出してしま
う事ができます』
「……そんな事が」
 睦月は全身のだるさを押してもぞりと上半身を起こし、居住まいを正すようにベッドの上
に座った。母や研究仲間の面々がそっと身体を支えてくれる。
 パンドラがぎゅっと両手を握って深刻そうな表情をしていた。母が、所長達が、一旦呼吸
を置き、動揺している睦月の様子を慎重に窺いながら続ける。
「一般にテイムアタック用に流通しているリアナイザと区別して、仮に“改造リアナイザ”
と呼ぼう。これは見た目こそ市販のリアナイザと瓜二つだが、その中身はコンシェルを実体
化させる為の特殊な改造が施されている」
「正直、最初に診た時はいち研究者として度肝を抜かれたわ。才能の使い方は間違っている
けど、あんな発想ができるなんて間違いなく天才ね」
「何より厄介なのは、この改造リアナイザを通じて実体化したコンシェル達は、極めて凶暴
な性質を帯びるという点だ。これまでの調べで奴らは、自分を起動させた人間に対し、その
“願いを叶える事”でこの現実世界に影響を及ぼし、それによって生じたエネルギーで以っ
て自身を本物にしようとしている」
「その為には、奴らは手段を選ばないのよ」
「それこそ、破壊活動や殺人であってもお構いなし。君も聞いた事があると思うが、飛鳥崎
や各地でここ最近噂になっている“怪物騒ぎ”は、その大部分が奴ら暴走したコンシェル達
が引き起こした事件なんだ」
「──」
 突拍子もない。何よりも現実離れした話。
 だが睦月はそれが間違いのない真実だと知っていた。他ならぬ自分があの時コンシェルら
しき怪物達に襲われ、パンドラを通じて変身し、奴らと戦ったのだから。そしてそれがただ
の夢想ではなく、実際に起こった事件だと母らが皆口を揃えて言うのだから。
「……にわかには信じられないですけど。でも、どうして? どうしてそんな事に? 何で
皆さんがそんな事を知っていているんですか?」
「……大人の事情、とでも言えばいいのかな。考えてもみてくれ。我々はIT技術者だ。社
会をその技術でもって便利で豊かなものにする事を使命としている。だがそうした技術が、
この世界の如何なる武器を以っても倒せない──全てすり抜けて傷一つつかない怪物を生ん
でしまったと世に知られればどうなる? これまで人々が積み上げてきた科学技術への信頼
は地に堕ちるだろう。そしてこれら技術を前提にした文明はリセットを余儀なくされる。何
よりも人命だ。奴らによって実際に命の危険に晒されるだけでなく、現在のインフラを暮ら
しを手放さなければいけなくなるかもしれない。その時……果たしてどれだけの数の人間が
路頭に迷うだろうね?」
「……」
 所長の、人の良さそうな笑顔がすっかり消え去っていた。
 細められた眼、全身が纏う切迫した危機感。いざそう指折るように指摘され、睦月は思わ
ず反論すら出来ず押し黙ってしまう。
「奴ら──我々が“越境種(アウター)”と命名した彼らに対抗する手段が必要だった。奴
らを倒し、何者かが流通させているであろう改造リアナイザを回収・破壊する組織の立ち上
げが急務だった。我々はそんなチームの一員なのだよ。この事態に対し密かに協定を結んだ
業界各社からなる、越境種(アウター)対策チームの研究部門としてね」
「その結果、生まれたのがパンドラなんです。彼女はそのEX(エクステンド)リアナイザ
の使用者となる者をサポートし、越境種(アウター)達と共に戦うサポートコンシェルの中
心的存在として開発されました」
「……そう、だったんですか」
 えっへん。若手の研究員に紹介されて、ホログラムの中の彼女が仰々しく胸を張る。
 曰くその開発の実質的貢献者が、他ならぬ母・香月なのだそうだ。コンシェルの開発にお
いて、彼女の右に出る者は他にはいない。
「切欠は、幸運にも改造リアナイザを回収する事に成功した時よ。そこから奴らの中身を解
析して、対抗策を練ったの。普通の兵器じゃあプログラムである奴らには触れる事すら叶わ
ない。だけどそこで発想を変えて“コンシェルを着る”事が出来ればどうだろうって考えた
の。中身は現実(リアル)の人間だけど、包んでいるのはプログラムだから、奴らにも届く
筈だって判ってね」
「だが……そこに大きな障害が立ち塞がっていた。理論上、佐原君の計画は身を結びつつあ
ったのだが、肝心の装着者が見つからない。一応うちの研究所(ラボ)で最も適合値の高い
冴島君が暫定の装着者という事になっていたが、今まで彼ですら装着に成功した試しはなか
ったんだ」
『そうです! だから睦月さんは凄いんですよー! 志郎にも出来なかった事を、あんなに
あっさりやってしまったんですから!』
 黄色い声を出して興奮するパンドラ。しかし当の睦月も、周りの香月達も、その表情は対
照的に重苦しかった。
 そんな困難を極めたシステムに、自分が適合してしまった。冴島を跳ね除けてしまった。
 そんな危険を伴うプロジェクトに、自分の、同僚の一人息子が関わってしまった……。
「……睦月君。正直こんな事を頼みたくはなかった。だが現状、設計上の装着が実際に可能
なのは君しかいないんだ。頼む。我々チームの一員として、越境種(アウター)達と戦って
はくれないだろうか?」
 お願いしますッ! 所長以下、場に居合わせた研究員達一同がそう声を揃えてベッドの上
の睦月に頭を下げていた。ちらと横目を遣る。その中に、苦渋の表情で同じくゆっくりと頭
を下げようとする母・香月の姿がある。
「睦月。無理はしなくていいのよ? 冴島君が回復すれば、また──」
「……それじゃあ今までの繰り返しじゃないか。やるよ。所長さん、やらせてください。そ
れが僕にしか出来ない事なのなら」
 母の懇願。痛いほど分かる気持ち。
 だが睦月はさもその言葉を振り切るように返事をした。ベッドの上で向きを直し、唇を結
んで直立不動になっている彼に向かって言う。
「そうか……。やって、くれるか」
「はい」
 母が、彼らが複雑な心境になっている事は解る。でも睦月は、この時内心もっと別の事を
考えて決意していた。
 ──僕にしか出来ないこと。
 もしそんな事があるのなら、それは“自分がここに居ていい”確かな証明になるんじゃな
いかって。
「……ありがとう。そうと決まれば我々も全力で君をサポートさせて貰うよ。ともあれ先ず
はその身体を回復させる事に専念してくれ。初めての装着で、君は経験したことのない程の
生体エネルギーを消耗したんだからね」
「……はい」
 ぽん。所長がそっと優しく肩に手を置く。睦月はコクリと頷いた。
 養生の身の。
 しかしその両の瞳は、危うげなくらい黒く深い眼差しを向けて揺らめいていた。


 ばたばたと、院内を走り抜ける人影がある。
 エレベーターがその階に着き、扉を開けると、その者は周りの人達が振り返るのも構わず
走り出す。
「睦月、大丈夫? 生きてる!?」
「おい、五体満足か!? 香月さんとこの研究所(ラボ)が爆発したって聞いたぞ?!」
 それは他ならぬ宙と輝の父娘だった。二人は周りの迷惑も構わず開いたエレベーターから
猛ダッシュで病室に駆けつけ、後ろで「ちょっと、あんた達落ち着きなさい!」だの「ま、
待って~……」だのと、叱ろうとしたり息切れしたりしている翔子や海沙を置いてけぼりに
してしまっている。
「……う、うん。大丈夫。平気、です」
 そんな幼馴染ズに、当のベッドでのんびり本を読んでいた睦月は、思わず呆気に取られて
しまって。
「ぜぇ、ぜぇ……。ご、ごめんね? むー君が巻き込まれたって聞いて、ソラちゃんもおじ
さまももの凄い血相を変えて……」
「あ、当たり前でしょ! それにあんただって、連絡受けた時、大泣きしながらあたしに電
話してきたじゃない」
「そ、それはぁ~……」
「……本当、ごめんなさいね? 後でしっかり叱っておくから」
「い、いいえ。こちらこそご心配をお掛けしたようで、申し訳ありませんでした」
 宙に言い返されて顔を真っ赤にしている海沙。その横で笑顔で夫への鉄拳制裁を済ませな
がら翔子が言った。随分と賑やかな、大げさな……。だがそれだけ自分を心配してくれたの
だろうとすぐに思い直し、睦月はベッドの上からぺこりと苦笑しながらも頭を下げる。
「はは。なぁに、案外元気そうで何よりだ。ニュースを見てまさかと思ったが、どうやら手
塩にかけた弟子がくだばってなくて安心したぜ」
「お父さんとお母さんも、お仕事が終わったらすぐにこっちに来るって」
 むくり。壁にめり込んでいた筈の輝がひょこっと顔を出し、そう呵々と言って笑った。隣
にいた海沙も、そう言って心配と安堵の入り混じった表情をしている。
「……そっか。またおじさん達にもお礼言っておかなきゃなあ」
 苦笑いを見せつつも、睦月は内心そんな彼らの姿と次々に掛けられる言葉に大きく安らぐ
心地がしていた。
(爆発事故、ねえ……)
 先日の研究所(ラボ)襲撃は、どうやら施設内の電気系統を原因とした爆発事故として処
理されているらしい。まさか越境種(アウター)という怪物の仕業です、などとは口が裂け
ても言えまい。
 改めて事の深刻さを、間接的ながら知ることになった。自分が受けた使命の重みが望まず
ともずしりと圧し掛かってくる。
「それで、その。むー君は大丈夫なの? 何処か怪我してない?」
「うん。僕自身はそう目立ったものは無いよ。ここに担ぎ込まれたのだって、念の為の検査
入院だそうだから。一週間くらいしたら退院できるって」
「そっかあ……。よかったぁ……」
 ちょこんとベッド脇に身を乗り出した、この控え目な幼馴染の安堵するさまを見て、睦月
はフッと微笑みを向けながら苦笑する。実際倒れた原因は初めての変身による過負荷であっ
て、あれだけの大立ち回りを演じたのにリアルの身体には怪我らしい怪我はない。母の作っ
た装着システムさまさまである。
「──あまり病院内で騒ぐなよ。ここは学園じゃないんだ」
 すると、それまで部屋の隅で黙り込んでいた人物がそっと口を開いた。先客として睦月を
見舞ってくれていた、皆人と國子である。
「あれ? 皆っちに國っち。来てたんだ?」
「ああ。親父の名代でな」
「そっか……。あの研究所って三条君のお家の系列だもんね」
 宙が視線を遣って気安く笑い、海沙がご愁傷様と言わんばかりに困り顔になる。
 だが当の皆人はくすりとも表情を変えなかった。付き添いで来た國子も同じく彼の傍らで
微動だにしない。
「そう言えばむー君、おばさまは? 大丈夫なの?」
「うん。怪我人は出たけど、皆命に別状はないって。母さん達も今朝出て行ったよ。事故が
起きて後始末が色々あるとかで」
「あ~……」「まぁ、そうなるわよねぇ」
 故に間が持たないと思ったのか、そう海沙が話題を変えて訊ねてきた。これも想定内だ。
事実をあるがままに、そして詳しい隠すべき所はオブラートにして答える。
 命に別状はない。だが重症の人もいるにはいるのだそうだ。
 あの時ぐったりと倒れていた冴島の姿が浮かぶ。退院したら、早い内にお見舞いに行かな
きゃなと睦月は思った。
「……じゃあ、俺達はこれで」
「失礼します」
「およ? もういいの?」
「えーと、ごめんね? 折角来てくれたのに騒がしくしちゃって」
「気にするな。というよりそれは俺じゃなく睦月に言え」
 そうして皆人と國子が背を預けていた壁から離れ、病室を立ち去ろうとする。宙や海沙達
が各々に気を遣って引き止めたが、肩越しの皆人の表情(かお)はむしろ穏やかなものだ。
「……幼馴染同士、ゆっくりしていけ。俺達も色々やる事が溜まってる」
 しん。二人が出て行って、暫し睦月達は黙り込んでいた。
 院内の小さな生活音や、機材を運ぶ車輪(カート)の音が聞こえる。ようやく宙達も落ち
着いたようだ。ふぅと一度大きく息をつき、苦笑いしながら再びこちらに話し掛けてくる。
「ま、無事で良かったよ」
「一時はどうなる事かと思ったからねえ。この前は強盗事件もあったし、どーにも最近物騒
だったからさあ」
「……そうなんだ」
「ああ、確かにそういうニュース見たわねぇ。災難って重なるのかしら。香月さんも、お仕
事が水の泡になってないといいけど……」
「泡っつーか灰だろ。火事なんだし」
 う・る・さ・い。翔子が黒い笑顔のまま振り返り、輝のしたり顔なツッコミを黙らせた。
(……やっぱり、僕が装着者になって戦う以上、皆を巻き込まないようにしないと……)
 相変わらず面白い人達だ。睦月は苦笑(わら)う。だけどそんな明るく、情に篤い彼らが
いたからこそ、自分は今まで何不自由なく生きてこれたのだと思う。
「ねぇむー君、何か手伝える事ない?」
 そんな時だった。そう内心改めて腹を括り直す睦月に、すーっと海沙が甲斐甲斐しく世話
を焼こうとしたのだ。ベッドの脇に置かれた彼の荷物を覗き込み、ファスナーを開けようと
する。
「急な入院だったから、足りない物もあるだろうし──」
「ああぁーッ! だだっ、大丈夫! 大丈夫だから! その辺は母さんが来た時にやってく
れてるから、気を遣ってくれなくていいから!」
 故に睦月は慌ててこれを手を伸ばし制止した。びくんと海沙が思わず身を強張らせて手を
止め、目を瞬かせながら頭に疑問符を浮かべている。
「そ……そう? ご、ごめんね。そうだよね。いくらむー君のでも、男の子の私物だし」
「あ、うん。まぁ……ね。こっちこそ、いきなり叫んじゃってごめん……」

『──睦月、お前に返しておく。これからはお前の持ち物だからな』
 遡ること十数分前。睦月の病室を訪れた皆人は、そう言って彼にある物を手渡していた。
 それはあの銀のリアナイザと、いつの間にか手元からなくなっていた自身のデバイス。
 だが睦月は後者よりも、そのリアナイザが彼の手にある事の方に驚いていた。何故ならあ
れは、越境種(アウター)を討伐する為に作られた特別な物であって──。
『何を今更驚いてる。俺が何も知らないと思ったか?』
『え?』
『三条電機第七研究所(ラボ)──名前の通りあそこはうちの系列だ。越境種(アウター)
の事も対策チームの事も、全部知っている。そもそも親父は、対策チームのリーダーをやっ
ているしな』
『そう、なんだ……』
 だが何を隠そう、親友(とも)は以前より知っていたというのだ。
 越境種(アウター)の事、母ら対策チームの研究にパンドラの事、自分が現状唯一の変身
可能者である事。
『まぁリーダーと言っても、実際は責任の押し付け合いの結果なんだが……』
 睦月が自分からデバイスとリアナイザを受け取ったのを確認すると、皆人はカツカツと窓
際に歩いて行ってまだ眩しくも穏やかな外の風景を眺め出す。
『俺や國子も、対策チームの一員だ。これからは友人として、同胞として、お前の戦いをサ
ポートする。そのデバイスにはパンドラと、今調整が済んでいる全てのサポートコンシェル
をインストール済みだ。分からない事があれば彼女か、或いはおばさ──香月博士に訊け』
『……うん。ありがと』
 ぶっきらぼう。だがこの親友(とも)は何処までも親友(とも)なのだなぁと思う。
 銀の、EXリアナイザを鞄の上にそっと置き、睦月はそう、何となしに手の中のデバイス
をころころと転がしていた。
『それと、もう一つだけ』
『うん?』
『そこに新しく連絡先を入れておいた。退院して、一段落ついたら掛けてきてくれ』
『? 分かった。でも、何で……?』
 そして更に言われて、睦月は小首を傾げる。
 皆人の連絡先? そんなのはとうに交換してる筈だが。番号でも変えたのだろうか。
『……お前に、見せておかなければならないものがある』
 沈黙すること数拍。
 するとこの親友(とも)はそう、窓際に差す光を浴びながら、この寡黙な護衛の少女を従
えるままに言ったのだった。

「──はふぅ」
 それから数日後、睦月は退院した。
 どさり。研究所(ラボ)側が出してくれたタクシーで自宅に辿り着き、仰向けに部屋のベ
ッドへと倒れ込む。
 睦月は暫し独り、大きく溜息をついていた。
 一週間ほど前に起きたあの襲撃事件、母達から引き受けた越境種(アウター)との戦い。
 今でこそ入院も一段落ついて落ち着いたが、それが故に気を抜けば、あの一連の非日常が
あっという間に何処か遠い場所へと置き去りになってしまいそうになる。
『ぷはー、やっと解放された~。ここがお二人のご自宅ですかあ。しっかし何というか……
地味ですね』
「研究所(むこう)を基準にすればそりゃあね。それにもう知ってるとは思うけど、この家
に住んでるのは実質僕だけだから。母さんは基本、向こうの部屋(ラボ)に篭り切りの生活
だし。正直、広過ぎるくらいだよ」
 ごろんと寝転び、手元に投げ出していたデバイスの中からパンドラがぐぐっと伸びをしな
がら言った。
 解放も何もデバイスの中にいるのは変わらないんじゃ……? 睦月は思わずツッコミたく
なったが、どうもこういう口調が彼女の地であるらしいので一々乗っからないようにと頭に
留めておく。
「それよりも」
 代わりに、睦月はうつ伏せになってデバイスを取り、画面の中でふよふよと浮いている彼
女に向かって念を押した。はて? 尤も当の本人はあまり自覚はないようだが。
「病室でもちょっと話したけど、当面他の皆の前にしゃしゃり出るのは禁止だからね? 母
さん達が極秘に開発した君なんだ。僕にも秘密を守る義務がある」
『それはそうですけど……。EX(エクステンド)リアナイザさえ見つからなければいいん
じゃないですか?』
「最悪はね。だけどパンドラ。君だって大抵の人にとっては充分にイレギュラーだよ。こん
なに流暢に普通に会話できるコンシェルなんて聞いた事がない。それに僕は今まで汎用型の
コンシェルを使ってたから、急に君みたいな子に換えたってバレれば怪しまれるかもしれな
いし」
『なるほど……。そういう事なら了解しました。以後、マスターの指針に従います』
「分かればよろしい。……って、マスター?」
『はい。マスターはマスターです。今回正式に対越境種(アウター)用システムの装着者に
なられた訳ですから。志郎からも卒業です。なのでマスターなのです』
「……まぁ、そうなる、のか」
 ぴこぴこと三対の金属の翼を動かしながら、パンドラはにこにこと実に嬉しそうに笑って
いた。だが一方で睦月の内心は複雑だ。理屈は分からんでもない。だがそんな言い方をして
しまっては冴島(かれ)が不憫ではないか。
 実際あの時、彼は身を挺して自分達を守ろうとしていた。
 確かに結果だけを言えば、変身に失敗して大ダメージを負ってしまったが……その傷口に
塩を塗ってまで母に近付く男性(ひと)を哂って憚らないほど、この性根は腐ってしまって
はいないつもりだ。何より、実の息子を戦いに出す事になった母の心痛は、想像するに余り
ある。
 悶々。睦月は画面の中のパンドラを眺めながら段々情けなくなってきた。
 こちらは人間、片やコンシェル。
 なのに彼女の方がより自分の気持ちに素直で、何より人間らしくさえ思えるのは……気の
せいだろうか。
『そう言えばマスター。三条の坊ちゃんから言われたこと、覚えてますか?』
「ん? ああ、覚えてるよ。帰って来たら連絡くれってアレでしょ?」
 しかしそんなこちらの内心など知る由もないか、次の瞬間にはパンドラがそうぺいっと話
題を変えて訊ねてきた。
 睦月は勿論と頷く。デバイスの画面を操作し、パンドラがその端から覗き込んでくるのを
そのままに、電話帳から新しく登録されている番号を呼び出す。
「僕に見せなきゃいけないものがあるって言ってたけど……。パンドラ、心当たりある?」
『ええ。多分あそこの事だと思いますけど……。まぁ、とにかく掛けましょうよ』
「そうだね。帰って来たって報告もしたいし」

『──帰って来たか。睦月、これから時間は空いてるか? お前に一度見せておきたいもの
がある。先ずはお前の家の北にある公園に向かってくれ。……ああ、ああ。そうだ、その公
園だ。そこに入って西奥にある、オブジェの裏を調べてくれ』

 手早く遅めの昼食を摂って身支度を済ませ、睦月はパンドラと一緒に自宅を出た。
 件の番号に電話すると、すぐに皆人が出てきてそんな指示を出してきた。
 公園? オブジェ?
 何のつもりなのかは分からなかったが、他ならぬパンドラも何か知っているようで大丈夫
ですよと言って微笑(わら)うので、小首を傾げながらも素直に彼の指示に従う事にする。
「むー君、どうしたの~?」
「あ、いや……。その、辺りを散歩でもして来ようかと思って。入院してて何だか身体が鈍
っちゃってるからさ」
「そっかあ。車に気を付けてね~?」
 途中、家を出て路地を曲がる前に、二階の自室から海沙に見つかり呼び止められた時には
内心怪しまれないか肝を冷やしたものだが。
「……ここ、だね」
 公園は睦月達が暮らす閑静な住宅街の一角、北に歩いて十分ほどの敷地にある。
 幸い、人気はそう多くはなかった。元々そう普段から賑わいのある場所でもなかったが、
一応遠くでサッカーボールを蹴っている子供達に気付かれないにしつつ、がさりと植え込み
の中に入っていって目的のオブジェへと向かう。
「先ずこんなのがあるって事自体、うろ覚えだよ」
 それは結構に歳月が経ったと思われる石造りのオブジェだった。天を指すようにして立つ
人間……のようだが、正直こういうアートな世界はよく分からない。
『マスター、ささ早く』
「うん。裏側裏側……ん? 何かここだけ草がなくなってる……」
 パンドラに促されつつ、少し調べてみる。するとオブジェの裏には、明らかに人の手が加
えられたと思しき鉄製の床があった。
 その大きさ、およそ二メートルほど。形状は四角いが、ちょうどマンホールくらいの幅の
ようである。更にぐいと乗せられていた蓋をスライドさせると、その中には深く地下へと続
く梯子が延びていたのだった。
「これって……」
『秘密の入口の一つですよ。さぁマスター、誰かに見つからない内に早く』
「う、うん」
 よく分からないまま再び促されて、睦月は注意深く梯子を降りていった。
 幸いぼやっとだが、内部は照明などの設備が点々とつけられているらしい。蓋も内側から
は開閉しやすくする為の取っ手も付けられている。
 カンカン。睦月はおっかなびっくりになりながらも地下へと降りて行った。ポケットの中
のデバイスから、パンドラのお気楽な鼻歌が聞こえる。
 何なんだここは? 皆人は自分に何を見せたいっていうんだ……?
「──お待ちしていました」
 ちょうど、そんな時だったのだ。
 梯子を降り切り、傍を下水が流れていくコンクリの地面に立って辺りを見渡し始めたその
時、カツンと、さも当たり前に何時もの淡々とした調子で國子が現れたのである。

「へぇ……避難シェルター」
「はい。元々は飛鳥崎が作られる際、大規模災害に備えて設けられた地下空間でした」
 彼女の案内で地下通路を往く。
 曰くこの空間は、かつて飛鳥崎が集積都市として整備される際に巨大な避難シェルターと
して作られたものらしい。
 しかしそれから数十年。飛鳥崎全域をカバーするこの地下空間は、今新たなるプロジェク
トの為に転用されようとしている。
「着きました。こちらです」
 入り組んだ内部を何度か曲がっては降りて。やがて國子は巨大な金属の扉の前で立ち止ま
るとそう言った。
 睦月は唖然とする。何だかどんどんスケールが大きくなっている。
 確かに皆人は、自分たち庶民とは比べ物にならないくらいのお金持ちだけど……。
「皆人様、睦月さんをお連れしました」
 とはいえ巨大な扉を丸々開ける訳ではない。
 國子は城門でいう所のくぐり戸部分を開けて、そう中にいるであろう者達に声を掛けた。
 そして睦月は大きく目を見開いて暫し言葉を失う。
 そこには──見慣れぬものと、見慣れたもの達がそれぞれ一堂に会していたからだ。
「……来たわね」
「やあ。暫くぶりだね」
「ようこそ、睦月君」
「ああ、貴方が香月博士の息子さんの……」
「よく来てくださいました。話は伺っています。装着者の件、本当に有難うございました」
 ざわり。そこにはそれまでの殺風景な下水道とは打って変わった、機械仕掛けの広々とし
た空間が広がっていた。
 形容するならば……司令センターとでも言うべきか。正面の壁に無数のカメラ映像を映す
モニターが並べられており、更にそこから左右にずらりとPC端末や諸々の機材が置かれ、
粛々ながらも忙しい様子が見て取れる。
「えっと……?」
「“司令室(コンソール)”だ。ここは俺達、越境種(アウター)対策チームの頭脳となる
場所になっている」
 突然の、妙に期待の眼差しで出迎えられた格好に機先を制された睦月が口篭る中で、皆人
がこの面々の中から彼らを従えるようにして近付いて来た。
 対策チームの……。そうか、もしかしてとは思っていたけど、それ絡みか。
「驚かせてしまってすまない。だがこの場所は関係者以外極秘でな。実際にここに来るまで
安易に口外する訳にはいかなかったんだ」
「ううん、それは構わないけど……。何か凄いね。あれって全部監視カメラでしょ? それ
に母さん達もいるし……」
 睦月は苦笑しながらも段々興味が勝り、この部屋・司令室(コンソール)内部をぐるりと
見渡していた。職員らしきこの面々の中には、別途専用のスペースと機材を与えられた格好
で母・香月ら研究所(ラボ)の皆の姿もある。
「ああ。関係各所から協力を取り付けてあってな。ここで飛鳥崎全域をカバーする事ができ
るようになっている。香月博士たち、第七研究所(ラボ)の研究部門も順次こちらに拠点を
移す予定だ。敵に襲撃された以上、もうあそこを使い回す訳にはいかんからな」
「では睦月さん、これを。高性能の小型インカムです。アウター討伐時にはそれを通じて此
方で収集した情報やリアルタイムの街の様子をお伝えします。この司令室(コンソール)は
貴方を、対アウター用システムの装着者をサポートする為に作られました」
 皆人に続き、睦月は國子からそんな事実を告げられつつこの小型インカムを受け取る。
 何だかどんどんスケールが大きくなっていく……。
 それだけ、越境種(アウター)による被害が、密かにこの街の裏で酷くなっているという
事なのだろう。街中を監視されているというのは正直プライバシーも何もあったものじゃな
いなと思ったが、そもそもそういった向きは何も今に始まった事ではない。
「改めて自己紹介しよう。俺はアウター対策チーム情報部門・司令室(コンソール)室長、
三条皆人だ」
「同じく実働部門・リアナイザ隊隊長代理、陰山國子です」
 びしり。二人に改まってそう名乗られ、睦月は思わず身を硬くして敬礼し返していた。
「こ、こちらこそ……。装着者になります、佐原睦月です」
 よろしく。司令室(コンソール)の職員もとい隊員達が心優しく迎えてくれた。同室に拠
点を移すという研究所(ラボ)の皆も、申し訳無さそうな表情(かお)をしながらも新たな
仲間に心強さを覚えてくれているようだ。
「……」
 勿論、その中には複雑な表情で苦笑する母・香月も含まれているのは言うまでもない。
「……さて。挨拶はこの辺りにしておこう。早速だが睦月、お前にも本格的にアウター討伐
に参加して貰う」
 数拍の沈黙。だがそれを破るように、ぱんと一度手を打つと皆人が言った。
 視線を正面モニター群に向ける。司令室(コンソール)の隊員達がすぐさま持ち場に戻っ
ていって機器を操作する。
 映し出されたのは、幾つかの銀行強盗の一部始終だった。
 逃げ惑う人々、銃を撃てど為す術なくぶっ飛ばされていく警官達。
 そこには確かに映っていた。明らかに人ではない、怪物──越境種(アウター)の姿が。
「これって……」
「ああ。アウターだ、間違いない。この容姿からして“黄金虫(スカラベ)”をモチーフに
した個体だろう。アウターはそれぞれ、自身を呼び出した人間の願い──欲望に合わせた姿
形や能力を備えていく傾向があるらしい」
 睦月らも皆、モニター群の前に集まってこれを見上げる。皆人の言う通り、映像には甲虫
を模したような怪人が暴れているさまが見える。
「ここ数日、連続して起こっている強盗事件を知っているか? 警察や都市公社は公表して
いないが、一連の事件は全部こいつの仕業だ」
「何だって……!?」
 ガタン。目を見開いて睦月はそう一見何ともないといった風に言う親友(とも)を見た。
 南の方で起きている連続強盗事件。確か、見舞いの時にも宙が話していたような……。
「過去七件の犯行。その位置を地図上に落とし込んだ所、それらは全てある一つのエリアを
中心とした円内で起こっている事が分かった。厳密な中心点も計算した。コーポさんかれあ
という小さなアパートだ。おそらく、その近辺にこのアウターと、奴を召喚・使役している
人間がいる」
 皆人がちらりとこちらを見遣る。睦月はぎゅっと唇を結び、懐にしまっていたリアナイザ
を上着の上から握ると、決意を固めた。
「……分かった。そいつを見つけて、倒してくる」
「ああ。ではアウター対策チーム──出動だ!」


 ドサドサッと、それは青年の頭上からなだれ落ちてきた。
 札束だった。人一人を埋め隠すほどの札束の山だった。ひぃひぃと、彼は震える声を漏ら
しながらそこから這い出ると、目の前にいたもう一人の脚に縋りつくようにして叫ぶ。
「もういい、止めてくれ! もう、もう充分だから! 大体俺は、こんな事を望んだんじゃ
ない……」
「却下だ。貴様の願いは既に受理された。俺はお前のその欲望を糧に、進化する!」
 だが青年の叫びは虚しく、縋りついたその脚で彼は手荒く蹴り飛ばされた。
 怪物だった。彼の目の前にいたのは、コガネムシを象った姿をした怪人だった。
 黒光りする硬い外皮、ギザギザに尖った五指。この怪人──スカラベ・アウターは金色の
両目を不気味に光らせながらそう言い放つと、もう片方の手に下げていたアタッシュケース
の中身をぶちまける。
 ドサドサと、同じくケース一杯の札束が青年に降り注いで再びこれを埋もれさせる。
 止め……。彼は叫びかけていたが、それも途中で聞こえなくなった。
「ふん。人間は大人しく、ただその引き金をひき続けていればいいんだ」
 そんなぐったりと倒れた彼を鼻で笑い、空になったケースを投げ捨てながら踵を返すと、
スカラベ・アウターはそのままこの狭い畳敷きの部屋を後にしていく。

『……』
 古びた小さな二階建てのアパート、さんかれあ。
 その入口を覗き込むように、二人の男がじっと物陰に潜んでいた。
 一人はスーツ姿の背の高い若い男。もう一人は厳つい眼光を湛えた、同じくスーツ姿の中
年男性である。
 二人は刑事だった。彼らは課とは別に独自の捜査を行い、遂にこの日、犯人のアジトと思
しきこのアパートを張り込んでいたのだった。
「……兵(ひょう)さん。本当にホシはここにいるんですかね?」
「ああ、間違いねえ。これまでの強盗は全部このアパートを中心にした円の中で起きてる。
手口も雑だが考えも雑──その短絡さの所為で被害がこれ以上増えない内に、俺達だけでも
奴を押さえる。いいな?」
「ええ。そりゃあまぁ、自分は兵さんについて行きますけど……」
 中年刑事は、そう苦笑いする後輩を黙して一瞥すると再びアパートの方へと監視の眼を向
け直した。
 俺の勘が告げてる。このシマは放っておけばやばいものになる。ホシの手口も行動半径も
捕捉した。後は奴がもう一度犯行を重ねようとした瞬間を取り押さえればいい。
(怪物……か。全く、最近の奴らは何を考えてるんだか……)
 ちょうどそんな時だったのだ。頭の中で諸々の情報が錯綜する中、遂にアパートの二階か
ら誰かが出て来たのだ。
 兵さん。後輩刑事が小声で呼ぶ。
 分かってる。物陰で息を殺し、彼らはその人物を見る。
「──」
 それはスーツ姿の男だった。
 一見すると何の変哲もないサラリーマン風。だが中年刑事は見逃さない。その粗暴な性質
を宿す眼の光は、どれだけ普通を演じてみた所で隠せやしない。
「よし。由良、追──」
 しかし二人の意識はその直後、真っ暗に消し飛ぶ事になる。
 突如として背後に現れた“般若面の侍”と、國子・睦月達。
 この二人の刑事は、そんな彼女らによって、刹那目にも留まらぬ峰打ちを受けて気絶して
しまったのだった。
「……。あの、死んでませんよね?」
「大丈夫ですよ。少し眠って貰っただけです」
 アスファルトの地面に倒れ込んだこの二人組を見下ろして、おずおずと睦月が心配そうに
訊ねている。その一方で、峰打ちを打ち込んだ國子と般若面の侍は平然としたものだ。
「ならいいんですけど……。やっぱり凄いですね、そのコンシェル。朧丸(おぼろまる)、
でしたっけ?」
「ええ。暗殺に特化させた個体です。ステルス──彼自身と彼が触れたもの全てを不可視の
状態にする事が出来ます。直接的な攻撃能力では、ありませんが」
 肩越しにそっと振り向き、國子は言った。
 その手にはリアナイザ。彼女が率いる隊員数人も同じくこれを握っている。
(暗殺って、物騒な……)
 睦月は苦笑いを隠せなかったが、実際このコンシェルの能力があったからこそ彼らに気付
かれずにこの人数が背後に回る事ができたのだ。結構、便利な能力だと思う。

『皆人。陰山さん達のこれって……』
『ああ、リアナイザだ。お前のEXリアナイザが作られた経緯についてはもう聞いているん
だろう? 心配は要らない。元こそ改造リアナイザだが、博士達によって念入りにチューニ
ングが施されている。調律リアナイザ──とでも言おうか。これで実体化させたコンシェル
達がアウター化する事はない』

 出動の前、彼女達が鍵付きロッカーから各々のそれを取り出してきた時はびっくりしたも
のだが、戦力が大いに越した事はない。心強い。
 しかしそれは、あくまで越境種(コンシェル)対コンシェルである場合だ。人間の方は未
だ奴らに触れる事すらできない。いざ奴らに彼女達を直接狙われてしまったらおしまいだ。
 だからこそ……戦いにおいては自分という存在が肝となる。
「貴方達はこの二人を離れた場所へ。私達は、あのアウターを討ちます」
「……」
 しかしぼやっとしている場合ではなかった。敵はもうすぐそこに現れていたのだから。
 アパートの二階、入口へとぐるり回って降りてくる階段の途中。そこから一人のスーツの
男が、明らかに怪訝ではなく強い警戒の眼差しでこちらを見ている。
 朧丸ら、隊員達のコンシェルが臨戦態勢に入っていた。
 同族の嗅覚。それは即ち、あの男が件のアウターである証だ。
(チッ。あれが話に聞いていた“我々の敵”とやらか。どうする? あの人間にはもう暫く
死なれては困るんだが……)
 遠巻きに睨みながらの思案。
 だが次の瞬間、この男に般若面の侍──國子のコンシェル・朧丸が迫っていた。太刀を手
に大きく跳躍してながら横殴りに振り抜き、されど寸前でこの男を仕留め損う。
「……止むを得ん」
 ひらりと宙を舞いながら男はアパートの屋根に着地し、睦月達を睥睨していた。
 オォン……ッ! デジタル数字や記号のモザイクが彼の全身を覆い、次の瞬間男はその正
体を現す。越境種(アウター)だった。司令室(コンソール)のカメラ映像で見た、あの怪
物に間違いなかった。
 不気味に金色に光る両目、黒光りする鉄甲のような外皮。
 するとその直後、彼──スカラベ・アウターは再び大きく跳躍し、遠く街の屋根から屋根
へと渡って行ってしまう。
「あっ、逃げた!」
「睦月さんは奴を追ってください。私達は、召喚者の確保に向かいます」
「うん!」
 逃げるアウター、追う一行。
 睦月は國子らリアナイザ隊の面々に場を託し、駆け出した。
 遥か上空を跳んでいく怪物の影。
 必死の表情になりながらも、彼は人気も疎らな細い路地の中を駆け抜けていく。

 スカラベの召喚主はすぐに見つかった。案の定アパートの一室から、改造リアナイザの反
応が検出されたからだ。
「二〇三号室。朧丸達が反応しているのは此処ですね」
『こちらもデータベースの参照が終了しました。金居健太郎、二十三歳フリーター。本籍は
飛鳥崎ではありませんね。おそらく市外からの出稼ぎでしょう』
 扉の前で國子らリアナイザ隊の面々が立ち、インカム経由で司令室(コンソール)から詳
しい情報が伝えられる。
 眼だけで合図をし、扉の左右に散ると隊員達はじっと突入の構えを取った。それを確認し
て國子がそっとドアノブに手を掛ける。……開いていた。無用心か、或いは罠か。
「……突入!」
 されど躊躇している暇はない。
 次の瞬間、國子は叫び、隊員達が一斉に部屋の中へとなだれ込んでいく。
「ひっ……?!」
 しかし彼女達がそこで見たのは──“敵”の姿ではなかった。
 一人の青年が酷く怯えて腰を抜かしていた。顔はげっそりとやつれ、その周囲には彼を埋
め隠してしまえるほどの札束の山が転がっている。何よりも彼の手には、こんな状況である
にも拘わらず、引き金をひいたままのリアナイザが握られていた。
「間違いありませんね」
「ええ。それにエネルギー吸引の中毒症状が出ています。ざっとⅠ度からⅡ度の間といった
所でしょうか。もう数日突入が遅れていれば、あのアウターも実体化(しんか)を完了して
しまっていたでしょう」
 隊員達がこの青年・金居の下へと近付いていく。國子と朧丸も、部屋中に所狭しと投げ捨
てられた札束をちらちらと見ながら、スッと彼の前に立つ。
「金居健太郎さんですね?」
「あ、ああ。な、何なんだあんた達は? けっ、警察か?!」
「いえ。彼らとは似て非なる者です。しかしご安心を。私達は貴方を助けに来ました」
 その一言が効いたのだろう。國子がそう告げた途端、金居はプライドも何もかなぐり捨て
てぼろぼろと泣き始めた。隊員達が彼の握るリアナイザをそっと引き剥がす。黙して、國子
は朧丸の召喚を解いた。そっと膝をついて屈み、彼に事の一部始終を聞き出し始める。
「……お話を聞かせてくれませんか。何故貴方はあの怪物を呼び出してしまったのです?」
「……金が欲しかったんだ。俺、フリーターなんだけど、中々まとまった稼ぎのある仕事に
就けなくて。そうしたら一週間くらい前に凄いデブを連れた、柄の悪そうな兄(あん)ちゃ
んが現れてそいつを──リアナイザをくれたんだ。『願え、欲しろ。その全てが力になる』
とか何とか言ってた。それで試しに一緒に入ってたデバイスで起動させてみたら、化け物が
現れて、願いは何だって聞いてきて、俺、つい……」
 ああああ! 金居青年はたどたどしくそこまで語ると、発狂したように叫びながら酷く頭
を抱えた。よっぽど自責の念に駆られていたのだろう。國子ら隊員達も黙してこそいるが、
彼の不憫さとあのアウターの非道ぶりに沸々と怒りが込み上げている。
「もう大丈夫です。貴方は引き金を解いた。奴らの策略から逃れました。もうこれ以上銀行
強盗が行われる事はありませんよ」
 くしゃくしゃに涙目になっていた彼が、ゆっくりと顔を上げていた。
 本当か? 視線がそう訊いている。國子は頷いた。するとやがて金居の視線が戸惑いを多
く含むようになって言う。
「……一体、あんたらは何者なんだ」
「名乗るほどの者ではありません。ですがそうですね……。人間の味方、でしょうか」

『あっ、また方向を変えました! 北北東です!』
『睦月、その右の路地裏に入れ。突き当りを左だ』
 スカラベの反応を辿りながら叫ぶパンドラと、インカム越しに街の地図と睨めっこし、最
短距離を弾き出して指示を出してくれる皆人。
 睦月は飛鳥崎の街並みをすっ飛ばしながら、何度も何度も路地に入っては出てを繰り返し
ていた。頭上、屋根伝いに跳んでいくスカラベ・アウターだが、その有利を埋めるべく相手
の進行方向に合わせて最も詰められる移動ルートを選ぶ。
 やがて両者は、街の一角にある小さな工場跡に足を踏み入れていた。
 ストンと音もなく着地するスカラベ。そこへ、やや遅れて息を切らしながら睦月が追いつ
いてくる。
「……さっきいたガキだな。馬鹿め。人間如きに何が出来る?」
「ぜぇ、ぜぇ……。それが出来るんだよね、これが」
 大きく息を吸って呼吸を整える。緊張も合わさって内心は心臓がバクバクいっていたが、
睦月は不敵な笑みを作って言った。
『TRACE』
 懐から銀のリアナイザを取り出して上蓋をスライド。パンドラの収まるデバイスを挿入す
ると、銃底部分の上段真ん中のボタンを押す。
 スカラベが明らかに、眉根を寄せるような怪訝の様子をみせた。睦月はそのまま銃口を左
掌に押し当て、あの時と同じ動作をする。
『READY』
「変身!」
『OPERATE THE PANDORA』
 認証音の直後、銃口を高く頭上に掲げ、睦月はその引き金をひいた。直後白い光球が飛び
出し、彼の周りをデジタル数字の群れが輪のように取り囲みながら回転する。
 収縮する輪、ぐるんと旋回し、彼に激突する光球。
 睦月は再び変身していた。
 茜色の球(コア)を胸元に宿す、白亜のパワードスーツを全身に纏った姿に。
「何……!?」
「アウター、覚悟っ!」
 うおおおお! 驚くスカラベの虚を突くように、睦月は猛然と走り出していた。
 先手必勝。これ以上犠牲者も被害も出ない内に、やっつける。
「あだっ!?」
 しかしそう上手くはいかなかった。確かに一瞬驚いていたものの、スカラベは迫ってくる
睦月を認めるとカッと口を開き、そこからサッカーボールほどの大きさはあろうエネルギー
弾を放ってきたのだ。
「痛でで……。あ、あいつも弾を撃てるのか」
 装甲からしゅうしゅうと白い煙が上がっている。思わず吹き飛んで尻餅をつき、睦月は再
び大きく息を吸い込もうとしているスカラベの姿を見る。
『マスター、避けて!』
「うひぃッ!」
 そこからは向こうの連撃だった。
 口から射出される大型のエネルギー弾。睦月はごろごろと転がりながら、物陰に飛び込み
ながら何とかこれをかわし、破壊されるそれらを横目にすると、リアナイザを頬傍に寄せて
コールする。
「シュート!」
『WEAPON CHANGE』
 撃ち合いが交わされた。スカラベが放ってくるエネルギー弾。それをこちらは数発打ち込
む事でようやく相殺できる。
 周囲の物陰を盾にしながら、両者は暫し銃撃戦を繰り広げた。
 しかし如何せん相手の方が一撃一撃のパワーがある。一つまた一つと隠れ蓑が吹き飛ばさ
れ、睦月は少しずつ押され始めていく。
「くそっ! これじゃあ押し切られる」
『ならこの子のエレメントを使ってください。射撃を強化です!』
 物陰に隠れつつ、ホログラム画面上でそう、パンドラがとあるコンシェルを示してきた。
如何せん交戦中で画面も小さめでじっくり見る暇はないが、キツツキ型のそれのようだ。
『ELEMENT』
『RAPID THE PECKER』
 コンシェルを選択し、左のボタンを押す。
 スカラベからのエネルギー弾を転がりながら避けつつ引き金をひくと、濃い白の光球が飛
び出て胸元の球(コア)へと吸い込まれていった。
「こん、のぉ!」
 するとどうだろう。引き金を一度ひいただけで、数十発もの銃撃がスカラベに向かって放
たれたではないか。向こうも再度この大きなエネルギー弾を放つが、威力がある分連射には
劣り、相殺された上で更に飛んで来るこちらからの残弾をもろに受けて押し出され、どうっ
と倒れる。
「よしっ! スラッシュ」
『WEAPON CHANGE』
 なので睦月は駆け出し、追撃を加えようとした。基本武装をエネルギー剣に切り替え、こ
の怪物を斬り付けようとする。
「……くぅッ!」
 しかしその寸前で、スカラベは大きく跳んだ。煙が立つ胸元を押さえつつ、睦月の放った
斬撃の上を跳び越えて工場跡の屋根に逃れ、再び伝おうとする。
「ああ、また……っ! パンドラ、僕らも跳べるようなコンシェルってない?」
『勿論ありますよー。この子の、アームズを使ってください』

 中空を舞う。
 スカラベ・アウターは焦っていた。あの少年は今まで見た事のない人間だったからだ。
(俺とした事が……。まさか俺達に攻撃を当てられる人間がいようとは。あの妙な装甲を着
たからか? 少なくとも“我々の敵”め。とんでもないモノを作り出したな……)
 だが次の瞬間だったのである。スカラベは背後から向かってくる気配に気付き、振り向い
て再び度肝を抜かれた。
 跳んできたのだ。あのガキが……こちらと同じように中空を跳んで追って来ている。
「にゅおおおおーッ!」
 睦月が半分ヤケクソというか、必死の声色になって跳んでいる。
 その両脚には、草色のジャッキが装着されていた。JUMP THE LOCUST──飛蝗(バッタ)を
モチーフにしたコンシェルの武装である。
「どっ──せいッ!!」
「ガァッ?!」
 空中では避けようもなかった。スカラベは一度屋根に着地し、強烈なキック力で自身の遥
か頭上に飛び上がった睦月から、渾身の斬撃を浴びて叩き落される。
「……う、あぁ……」
 廃ビルのようだった。その屋上から数階分をぶち抜いて落下し、スカラベはこの衝撃です
ぐには動けなかった。トスン、睦月もそこへ降り立ってくる。エネルギー剣をゆっくりと持
ち上げて数歩進み、頬傍にこれを寄せてコールする。
「チャージ」
『PUT ON THE HOLDER』
 一旦引き金を離し、腰の金属ホルダーに銃身を収め、睦月は必殺の一撃を放つ為の充填に
入った。ガラリ。スカラベもダメージを刻まれた身体に鞭打って起き上がる。金色の両目は
一層殺意でギラつき、大きく大きく息を吸って作り出したエネルギー弾は……それまでとは
比べ物にならないほど巨大になっていく。
「えっ。ちょ、ちょっとあれはヤバいんじゃ……?」
『モンドームヨーです。このままぶった斬っちゃいましょう!』
 ホルダーにリアナイザを挿入したまま、睦月は思わず後退ったが、一方の相棒は血気盛ん
に、揚々にびしりと指を差した。
 巨大なエネルギー弾が、やや胸を反らしたスカラベの口の上に浮かぶ。オォン……。全身
にエネルギーが巡り、その全てが睦月の握るリアナイザへと集中する。
「──ッ!?」
 だがその時だったのだ。突然、ふとスカラベの身体がさもノイズを掛けたようにザザザッ
と揺らめいた。それまで真ん丸に膨れ上がっていたエネルギー弾も、ぐにゃりとその形の均
衡を崩しかける。
「これ、は? まさか、人間の方に何か……」
『今です、マスター!』
 おおおおおッ! キィンと充填が完了し、これぞ好機とパンドラの叫びと共に睦月は強く
地面を蹴って飛び出した。
 スカラベは迎撃も出来ていない。完全にワンテンポ・ツーテンポ、出遅れている。
「ぬぅ、らァッ!!」
 強く大きく輝く一閃が描かれた。抜き放たれたエネルギー剣は通常時よりも大きく強い輝
きを纏いながら幅広の刃となり、がら空きになっていたスカラベの胴体を深々と切り裂いて
いた。ズザザと勢いをつけたままブレーキを掛け、暫し睦月は残心のままに剣を握る。
「い……嫌、だ。まだ、死に、たく──」
 巨大エネルギー弾が不発のまま四散し、スカラベの全身に大きなヒビが入り始めた。
 びくびくと点滅する金の瞳、紡ぐ最期の呟き。しかしその直後、このアウターは断末魔の
叫びを上げながら爆発四散した。身体だった筈のパーツが粉微塵になり、デジタルの粒子と
なって一つ残らず消えていく。
「……」
 ゆっくりと振り返り、睦月は引き金から指を離して押し黙っていた。頬傍にリアナイザを
宛がい「リセット」と小さくコール。変身は解除され、佐原睦月本来の姿に戻った。
『やりましたね! 大勝利ですよ、マスター』
「……うん」
 リアナイザから取り出されたデバイスの中で、パンドラが万歳のポースをしている。
 だが当の睦月は、言葉少なげに、暫くこの怪物が散った場所を眺め続けていたのだった。


「おはよ~」
「おはよッス、佐原」
「聞いたぜ? 新学期早々災難だったなあ」
 それから週明け。睦月は今まで通り幼馴染二人と一緒にクラスのドアを潜っていた。
 それぞれに登校済みのクラスメート達と挨拶を交わす。やはりというべきか入院の話は皆
にも伝わっているようだ。
「ホントそれ。何やってんだかねぇ……」
「そ、ソラちゃん。むー君を責めたって……。ただ巻き込まれただけなんだから」
 國子やクラスの女子達と話し始めていた宙と海沙も、そう呆れたり苦笑したりしている。
「……よう。睦月」
「うん、おはよう。皆人」
「お疲れさん」
「……うん」
 スカラベの召喚主・金居は結局警察に自首する事にしたそうだ。國子らリアナイザ隊に救
われ説得され、自分の犯してしまった罪を償うと決めたらしい。
 尤も銀行強盗(はんこう)自体は、アウターの仕業だ。しかしアパートの部屋には大量の
札束(ぶっしょう)が残っていたし、加えて改造リアナイザを握らされ続けていた後遺症と
やらで本人の記憶も大分曖昧になってしまっているという。
(……やっぱり、いい気分じゃないな……)
 一件落着。一先ず対策チームの一員として、事件解決に貢献する事は出来たのだろう。
 だが睦月自身、必ずしも晴れやかな心地とは言えなかった。
 スカラベの最期、まだまだこの街に隠れているであろう他のアウター。
 自ら踏み込んだこの戦いに、正義に、睦月はねばつくような罪悪感を覚えたままだ。

『──スカラベが死んだ?』
『死んだって……。おいおい、その辺の人間がどうこう出来るモンじゃねぇだろ』
 何処か遠くの、薄暗い部屋。
『普通ならね。そうか、いよいよ僕達の“敵”が本格的に動き出したか……』
 そこに潜む七つの影。
 そしてこの面々を代表するように、一人の男がそっとその眼鏡を光らせる。

「はいはい~。ホームルーム始めますよ~」
 教室に豊川先生がやって来て、室内に散らばっていたクラスメート達が各々の席に着き始
めた。睦月達もいそいそと、自分の席に戻って朝の一齣を迎える。
 間延びした彼女の声が、出席を取り始めた。
 いつもの光景だ。この一週間、自分の周りには想像だにしなかった非日常が駆け抜けてい
ったが、こうして見慣れた人々が日々の営みを送っている事がとても微笑ましく思える。
『Zzz……。う~ん、マスタぁ~……』
 机の陰に忍ばせていたデバイスを覗く。その画面の中では、うとうとと幸せそうに居眠り
をするパンドラの姿があった。
 ふふ。睦月は静かに微笑(わら)う。だがそれも束の間、彼は内心でその緩んだ気持ちを
独り引き締め直していた。
 きっと戦いはこれからも続く。せめてこの身近で大切な人達は、必ずこの手で守ってみせ
ると誓う。
(……何だか、途方もない事に首を突っ込んじゃった気がするな)
 皆人が國子が、そして何も知らない海沙・宙の幼馴染コンビがちらとこちらを見ている。
 睦月はその微笑を努めて崩さず、普段の自分であろうとした。

 ──僕にしか出来ないこと。
 もしそんな事があるのなら、それは“自分がここに居ていい”確かな証明になるんじゃな
いかって。

「……」
 春先の窓辺を眺めながら、睦月はぼんやりと思う。
 戦い。
 これでもう、後戻りは出来なくなったのだと。
                                  -Episode END-

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  1. 2015/04/16(木) 18:00:00|
  2. サハラ・セレクタブル
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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