日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅴ〔59〕

 アルス達が清峰の町(エバンス)に滞在し始めてから一週(=十二日)が過ぎようとして
いた。
 山々からゆっくりと降りてくる、川面から立ち昇る朝霧。
 この日もカルロはまだ日が昇り切らぬ内から起き出し、店を開ける準備を始めていた。
 ひんやりとした朝の冷えに身を任せ、軽く鼻歌を歌いながら軒下の郵便受けに差し込まれ
てあった新聞を抜き取る。
「……。ッ!?」
 だがざっと紙面を開いて目を通している内に、彼の顔色が変わった。
 ふと目を留めた記事を暫く食い入るように見つめ、やがて慌てて家の中へと駆け戻る。
「お、皇子! 皇子! 起きてますか!?」
 向かった先は二階──現在はアルスを泊めている息子(フィデロ)の部屋だった。
 室内には四人。
 昨夜、夜遅くまで夏休みの課題を消化する勉強会をやっていたため、アルスやエトナに加
えルイスもこの部屋で寝落ちした格好になっている。
「うぅん? なーにー?」
「何だよぉ。まだ起こすには早ぇぞ……。親父……」
「……おはようございます。どうしたんですか? そんなに慌てて」
 むくり。寝惚け眼を擦りながら、アルスは相棒と共に毛布を除けながら身を起こした。
 フィデロとルイス、更には階下のルーディ、奥の居間で寝泊りしているリンファとイヨも
このカルロの慌てぶりを聞きつけ何事かと顔を出してくる。
「こ、これを。お兄さん──ジーク皇子の記事が」
 言われてアルス達ははたっと目を覚まされた。彼に差し出された新聞、そのとある記事を
皆で覗き込み、読む。

『フォーザリア慰霊式 ジーク皇子暗殺未遂!』
『左手負傷の皇子 温情に加害女性号泣』

 それは先日フォーザリアで執り行われた、テロ犠牲者の追悼式典を報じる記事だった。
 印刷された記事の詳細を読み込む。報道によると、何とジークが献花している最中、これ
を狙って刃物を持った女性が飛び出してきたのだという。幸い彼はすぐに迫るこの女性に気
付くと攻撃を──左掌を刃で傷付けられながらも防ぎ、更に警備兵らの怒号が鳴り響く中、
彼女を諭して戦意を喪失させたとも。
 後の調べで、彼女は先の同爆破テロで犠牲になった鉱夫の妻であると判明したらしい。
 なのに、自らの身が危険に晒されのに、当のジークは彼女を赦したという。拘束・連行し
てゆく警備兵達に向かって、彼は寛大な処理を懇願したと記事は伝えている。
「お兄さん……」
「相変わらず、型破りな人だね」
「もう。あいつってば、無茶しちゃって……」
「フォーザリア? 慰霊式? 兄さん出席してた(でてた)の……?」
「……申し訳ございません」
「ジーク様より、ギリギリまで黙っておいてくれと……」
 負傷の二文字に背筋が凍り、しかし詳細を読むにその怪我も大した事がないと判りアルス
は一先ず胸を撫で下ろす。
「そんな。謝る必要はないですよ。兄さんの事だから、大方僕の療養に水を差すのを嫌った
んでしょう? まったく、しょうがないんだから」
 そして頭を下げてきたリンファとイヨに、ふっと優しい声色を向けて苦笑(わら)う。
 兄らしいと思った。向こうでの行動も、今の今まで黙っていたことも。
 実際、今回が初めての公務であった筈だ。自分だって未だに緊張してばかりなのに……。
「大事にならなくてよかった。でもこの日付だと……もう向こうを出たのかな?」
「あ、はい」
「その事なのですが……」
 しかしアルスの内心を波立たせる情報は、何も一つだけでは収まらなかった。
 一度互いの顔を見合わせたイヨとリンファ。数拍の逡巡からの開口。
 更に二人から、アルス達は新たな動静を知らされる事になる。
「実は先日、ジーク様に付けさせた侍従達と、ダンから連絡がありまして」
「クロムの居場所が分かったので会いに行ってくる、と……」
 カルロ以下、フィースター家の面々とルイスは頭に疑問符を浮かべていた。当然だろう。
まだ彼の名までは公表されていない。まさか“結社”の魔人(メア)──あの大都での戦い
で“捕らえられた”者の名だとは、つゆも思わないだろう。
「そっか……」
 故にただ短く、アルスは彼らをそっと一瞥しながら、そう呟いた。
 手の中できゅっと握り締めた朝刊。改めてこの静かな時間の中(りょうようちゅう)でも
世界は動いているのだなと思う。
(……。待っててね、兄さん)
 窓の外、少しずつ昇ってきた日が差してくる方向を遠望する。今日もまた新たな一日が始
まろうとしている。
(すぐに……追いつくから)
 軽く唇を結んで、その小柄(ちいさ)な身体に活力を。
 アルスは遠い北の地から、兄ら仲間達の姿を想った。



 Tale-59.汝は正しきものなりや

 クロムの言葉に、ジーク達は水を打ったように静まり返っていた。
 心許ない灯りだけが点々と揺らめき、暗く冷たい地下の封印房が心なしか一層冷え込んだ
ような錯覚すらある。
「……消滅? そもそも大盟約(コード)って、壊したり何なり出来るモンなのか?」
「理論上はな。大盟約(コード)とは単なる約束事ではない。れっきとしたシステムだ」
 何度も目を瞬き、訊ねたジークにクロムは答えた。酷く落ち着き、そして覚悟を決めた強
い響きと眼差し。鉄格子越しに、彼はスッと何かを思い出すように目を細める。
「私は、かつてその実物を見せて貰った事がある。まだ“結社”に名を連ねる前の事だ。私
は彼に──あのフードの男達に、世界の真実を見せ付けられた……」
「フード? それってまさか」
「ああ」
 思わず聞き返してしまったジーク。しかしただ短く首肯するだけのクロムをそこそこに、
彼は次の瞬間にはちらと、肩越しに仲間達の様子を確認していた。
『……?』
 幸い、バレてはいないようだ。あの時一緒にデュゴーから話を聞いたオズを除き、皆は頭
に大なり小なりの疑問符を浮かべている。
 騙すとか、そういうつもりではない。
 話してしまうべきではないと思ったのだ。
 ユヴァン・オースティン──“精霊王”の異名を取った十二聖きっての魔導使い。
 まさか千年も前の人間がなんて、言い出せない。アルスと話した時にだって確かな事は分
からず、あくまで仮説の段階だ。
 少なくとも、今ここでうっかり名を出す訳にはいかないだろう。団員達(みな)になら、
然るべき時に団長が話してくれるものだと思う。……それに、今この状況では周りの看守や
獄卒やら全員が知ってしまう事になる。あの時のデュゴーの姿を思えば……軽々しく打ち明
けられたものじゃない。
「大盟約(コード)──今の魔導は、あまりにも多くのものを犠牲にし過ぎている。そして
それらが生み出してきた歪みは、今も着実にこの世界を殺しつつある」
 クロムもそんなジークの判断を見据えていたのだろう。彼はあくまで話を進めることに努
め、結局ユヴァンの、彼自身も知っているであろう“フードの男”についてはそれ以上触れ
る事はしなかった。
「結社の標榜する“世界を在るべき姿に戻す”とはそういう事だ。大盟約(コード)を消し
去り、世界をその成立以前の姿に戻す──それが彼らの最終目標なんだ」
「……ッ! そんなこと!」
 リュカが悲痛にも似て叫んだのは、その直後の事である。
 彼女はふるふると激しく首を横に振り、空を薙いだ。サフレやマルタ、エリウッドなども
そこまでの強い反応はしなかったが、それぞれに険しい表情をしている。
「そんなことをしたら、今の文明が崩壊するわ! 文明の片輪を外すようなものよ!?」
「そうですね。魔導と機巧技術、この二つの力が互いに組み合わさっているからこそ、僕ら
は今この生活を営めている……」
「衰退は、免れないだろうね。もしかしたらヒトそのものが滅びるかもしれない」
「それでも構わないと思っているんだ。結社(かれら)はあくまで“世界を救う”為に活動
しているのであって“ヒトを救う”為じゃない。その為なら、たとえヒトが滅んでしまって
も構わないとすら考えている」
「な、何よそれ」「……不遜」
「おいおい。随分と上から目線だな。奴らは神でも気取ってんのか?」
「……。神とて万能ではないよ」
 レジーナが、ミアが、そして苛立ちを嘲笑に込めるようにしてダンがごちた。
 周りの獄卒らもいきなりの、あまりのスケールの大きな話に唖然とし、ついていけない。
ただ唯一静かに眉根を寄せて立っているウゲツをちらと見遣り、クロムはフッと何故か自嘲
っぽく笑う。
「……コレマデノ歴史ヲ、否定シヨウトイウノデスカ」
「そういう事だろうな。魔導解放は、それ以降の現在までの歩みは間違っていたと、そんな
思想なんだよ。少なくとも、組織の上層部はね」
 彼は言う。この事実を知っているのは使徒を中心とした限られた者達のみだと。大多数の
構成員は、組織が標榜する“在るべき姿”を文字通りそのまま──各々の理想として解釈し
て軍門に加わっているだけな筈だと。
 ジーク達は強く強く拳に力を込めた。憤りすらした。
 間違いなく奴らは“テロ”組織だ。
 その思想の為に、無茶苦茶な理想の為に、数え切れない程の人々を巻き込み続ける……。
「──そうだな。私は夢を見ていたのかもしれない。あまりにも大き過ぎる夢だ。だから、
今更ではあるが、信じてみようと思い直したんだ。ヒトを、ジーク。君達を」
 なのに、対するクロムは微笑(わら)っている。申し訳なさを滲ませながらも、そう酷く
優しい微笑みがジーク達の動揺を誘う。
「私達はヒトなんだ。“全ては救えない”んだ。出来るとすればもっと身近な、大切な人を
守ることくらいなんだよ。自分と、余裕があれば少し隣の誰かを──信仰とは本来、そうし
た小さな安寧だけでも守りたいという願いだった筈だ。そうした人々が互いに輪を作る営み
であった筈だ。……そう、言われた筈だったのな」
「クロム……」
 だからその動揺も、実は決して悪いものではないと気付く。
 彼は詳しくを語らない。おそらく訊いても素直には話してくれないだろう。
 それでもよかった。ただこの“結社”の魔人(メア)という、今や世間一般に恐ろしい怪
物のように語られている人物にも、きちんと血が通っている──。それが分かったような気
がして、ジークはふいっと嬉しくなった。
「……止めるさ。一緒に止めよう。奴らの本拠地(アジト)ってのは、何処にあるんだ?」
「“摂理宮”だ。皆にはそう呼ばれている。だがあれは世界樹(ユグドラシィル)の内部に
在り、常に移動を繰り返す要塞でもある。捕捉するのは至難の業だろう」
「……そっか」
「それに。今の君達では彼らには勝てない。断言する」
 ぴっ。枷を嵌められたままの手を、指を軽く一本立て、クロムが言った。思わずジーク達
に反発心にも似た緊張が走る。
 二つ、三つ、四つ、五つ。彼は順繰りに指を立てていった。それはもう一つ、彼が一行に
贈る重要な情報でもあった。
「“楽園(エデン)の眼”は、教主を頂点に使徒・信徒・信者という明確なヒエラルキーを
持つ。更に言えば、どうやら教主の周りにはスポンサーのような──或いは同格かそれ以上
の存在が何人かいると思われる」
「マジかよ……」
「それって」
「すまないが詳しい事は私にも分からん。私自身、中々接触の機会がなかったからな。だが
もっと上位の使徒──古参の使徒なら聞き出せるかもしれない。ただそれは非常に困難を極
めると肝に銘じておいてくれ」
 今度は一つ一つ、立てた指を折っていった。
 クロムはジーク達が注目する中、先程までの微笑をすっかり打ち消し険しい表情になる。
「ジーヴァ、ヴァハロ、ルギス、フェニリア、セシル及び持ち霊のヒルダ。この五人はこと
戦闘能力においても、組織内においても群を抜いた力を持つ。決して無策ではぶつかるな。
奴らの持つ“色”に有効な力をぶつけるんだ」
 色? マルタやレジーナが小首を傾げてこそいたが、ジーク達は「ああ」と力強くこの助
言に頷いていた。
 名前なら直接ないし間接的に聞いた事がある。実際にぶつかった相手もいる。
 そうか。奴らはそんなに遠い──でも何時襲ってくるか分からない相手だったのか……。
「話してくれてありがとな。すまない。あれだけ、これだけ力を貸してくれてるってのに、
こんな牢屋の中にぶち込んじまって……」
 いいのさ。これも報いだとクロムは言った。
 その囚人服は幾度となく獄卒・看守らに暴力を振るわれてあちこちが千切れ破れ、血汚れ
が残っているというのに、当の彼はじっと物静かな微笑を湛えている。
 ジーク達は苦笑した。或いはレジーナなどは心の整理がつかずにじっと眉を顰めていた。
 カツン。そんな一同の後ろからゆっくりとウゲツが近付いて来る。
 その表情はやはり微笑。腰の刀を揺らし、静かに手をそこへ伸ばし──。
「だがまぁ」
 しかしその時だった。ジークが軽く息を吐いたその刹那、彼はだんっと右脚を後ろに踏み
込んで素早く剣を抜くと、近づいて来ていたウゲツの喉元へと切っ先を向けたのである。
 彼だけではない。ダン以下仲間達全員が、斧に槍に拳銃に、各々の得物をウゲツに向けて
一斉に戦闘体勢を取っている。
「……先ずは、この偽者をどうにかしないとな」
 微笑のまま影を落とすウゲツ。にわかに色めき立ち、武器を取る手にも迷う獄卒達。
 ジークは一度キッと彼を睨み付けると次の瞬間、にぃと不敵に笑って言った。


 時を前後して。
 長丁場の会議を終えたケヴィンは、ようやく解放されて人心地をつきながら会議室を後に
していた。
 ぐぐっと両肩のストレッチをしつつ、その後ろに会議に同席していた部下達数名が従う。
 部屋を出て構内を歩いた。カツンカツン。階層が浅い管理者区域という事もあり、辺りは
冷え冷えとした静けさに包まれている。
「……ふぅ」
 この身は獣人の巨体だが、立場上自分は板ばさみになる事も珍しくない。
 ケヴィンは先程までの会議のさまを思い出していた。あの場に(映像越しで)出席してい
たのは、王貴統務院・正義の冠(クラウンズ)──各国を治める王達である。
 今回の議題は他ならぬ、先の戦いで捕らえた“結社”達の処遇だった。
 大都消失事件。近年稀に見るあの巨大な戦いの中で、連合軍は多くの敵兵を捕らえる事に
成功した。それは下級兵たる“信者”級に始まり、各部隊長に相当する“信徒”級、果ては
幹部たる“使徒”──魔人(メア)のエージェント。あの鉱人(ミネル)の武僧まで。
 何分、多過ぎたのだ。
 先の戦いにおいて、統務院はあまりにも多くの捕虜を囲い過ぎた。それが今、数千人にも
及ぶ“世界の敵”をどう捌くかという実務上の問題として大きく圧し掛かっている。
 彼らは罪を犯してきた。何は無くとも、彼らは然るべき償いを為すべきだと自分は思う。
 ……だが、それはあくまで彼らが等しく公正に、法に基づき裁かれたという大前提がある
からだ。しかし会議での王達、政府高官らの発言を観るに、その期待は難しいと思われる。

『一人残らず処刑するべきだ! 我々世界の秩序に楯突くとどうなるか、改めて全ての民に
示す必要がある!』
『数千人規模を……ですか? 危険です。報じられ方によっては我々による虐殺と受け止め
られる可能性がある』
『それに、大々的に彼らの死を演出すればするほど“結社”にとっては聖戦(ほうふく)の
大義名分を与えてしまうのではないか? 今までだって、奴らはそうして幾度も傘下の生命
を駒として使ってきたろう?』
『ここは一度慎重になるべきです。冷静に法に則り、粛々と刑を課していくべきでしょう』
『だからといって、徒に時間を掛けていては舐められてしまうぞ? そもそも彼ら一人一人
の罪状をどうやって確定する? 皆が皆、素直に自白するとは到底思えんが……』
『ふん。多少重く盛っても構わんではないか。奴らは散々世界中を荒らしてきたのだぞ? 
今回に至っては大都(バベルロート)を占拠だ! ……民は詳しい罪状など求めておらぬ。
刎ねてしもうて、よいと思うがな』
『それは……』『いえ。それはいくら何でも乱暴です!』
『ではどうすればいいんだ!? 千人だぞ? 野に放てるか? できないだろう。なら消す
しかあるまい。世界の敵たる烙印は無くならんよ。一度に処刑するのが拙いと言うなら何度
かに分ければよかろう? 例えば出身別。その別によって各国がそれぞれ彼らを処する』
『おお。それなら領民らの溜飲も下がる』
『いやいや、待て! こちらの管轄でやるのか!? 今回の一件は統務院の連名でという合
意だった筈だ。そんな負担、負いきれないぞ』
『ではどうしろというんだ? 処す(やる)のか、処さ(やら)ないのか?』
『処す(やる)に決まっているだろう。罪人は何も“結社”関係だけじゃない。彼らを如何
やって“処分して(さばいて)”ゆくかの話だぞ』

 そこに法治という言葉はなりを潜めていた。建前の理性よりも、彼らの多くが如何に先の
戦いの“成果”を見出すかという、腹の探り合いとリスクの押し付け合いばかりがそこには
あった。
 確かにいち監獄の責任者として、実際に収監されている囚人達を如何するかは猶予を待た
ない問題ではある。ぶち込んでもぶち込んでも、罪人は次から次に現れる。何処かで彼らに
“ピリオド”を打たなければ、今ある収容能力はいずれパンクしてしまうだろう。
 ……ウゲツが、あの武僧の檻の前で佇んでいた時の事を思い出した。
 自分はあまり情を掛けるなと言った。実際、その所為で心を病んでしまった者達を自分は
何人も見ている。知っている。
 だが正直言って、あいつの心持ちの方がよっぽど正義だと、私は思う。ただ機械的に、罪
を犯した肉塊だと云って処分する。それは本当に、自分達が望んだことなのか……。
 結局会議はハウゼン王とファルケン王、ウォルター議長にロゼッタ大統領という四大盟主
の仲裁・誘導によって一先ず終了した。
 改めて今回の件は統務院が責任を持って──この世界全体の問題として事後処理に当たる
という旨と、出来る限り捕虜達一人一人の罪状を把握するよう各機関が努める旨。その二つ
が確認された。
 これもひとえに経験豊富で穏健派なハウゼン王あっての結果だろう。尤もファルケン王や
ウォルター議長らによって、処刑ありきの路線は堅持されたが。
 やはりあの武僧は刎ねられる運命にあるようだ。
 だがまだ彼は口を割らない。ジーク皇子によって、状況が好転してくれればいいが……。
「──あ。御勤め、ご苦労さまです!」
 そうして暫く構内を歩いている途中のことだった。ふと通路の向こう側から二人の獄卒が
通り掛かり、そう慌ててこちらに敬礼をしてくる。
「うむ。異常はないか?」
「はっ! 異常ありません!」
 そうか……。ケヴィンは小さく頷いた。
 そしてそのまま彼らの横を通り過ぎようとし──だがはたと思い出したように足を止める
と、彼らに問う。
「そういえばジーク皇子達はもう来ているのだろう? ウゲツはちゃんと案内したか?」
「? ええ。そうですけど……」
「ご一緒では、なかったんですか?」
 だが次の瞬間だった。何と無く気になって訊いたその言葉に、この獄卒コンビは目を瞬き
ながらそう頭に疑問符を浮かべていたのだった。
 更にもう一人の方が訊ね返してきた一言(ワンフレーズ)。
 ケヴィンは、どうも要領を得ずに深く眉根を寄せる。
「何の話だ?」
「へっ? だって……なあ?」
「ええ。半刻くらい前でしたかね? 遠巻きからではありましたが、お二人が連れ立って歩
いている所を見かけたので……。てっきり自分達は、会議が間に合って、お二人で皇子を迎
えに行かれたのだとばかり」
『──』
 ケヴィンは、背筋がぞぞっと激しく凍り付くような感覚に襲われた。
 そんな筈はない。自分はついさっきまで、会議室に缶詰になっていたのだ。それは後ろの
部下達もいて間違いない。半刻前? 会議は手元の時計でもざっと三大刻(ディクロ)近く
は掛かっていた筈……。
(……まさか)
 同じく異変に気付いたのだろう。振り返った先の部下達も、目を丸くして互いの顔を見合
わせていた。少なくとも自分はその時間にウゲツとは会っていない。だがこの二人が嘘をつ
いているようには見えない。そもそもつく理由がない。
 つまり自分にそっくりな誰か。或いはウゲツもまた同じように。
 ──侵入者。
 そんな言葉が、ケヴィンの脳裏で激しく赤色灯を打ち鳴らす。
「お前達、至急兵を集めろ! 監視室に向かう!」
 顔を引き攣らせ、小さく舌を打ち、彼は大声で部下達に指示を飛ばした。
 い、いきなり何で……? 会議同伴ではない二人を除き、彼らはその一声によって慌てて
署内各所へと連絡を取り始める。
「……我々ではない誰かが、この監獄(しま)にいる」

「偽、者……?」
「なっ、何を言ってるんですか!?」
 色めき立っていた獄卒らも、目の前で副署長(じょうし)が武器を向けられているのを目
の当たりにしてようやくそんな言葉を吐き出した。即反撃ではなく、説得で。彼らは一斉に
ウゲツに刃を向けたジーク達を制止しようとしていた。
「そ、そうですよ。いきなり何なんですか? そもそも初対面の私に偽者も何も──」
「普通ならな。だが、それはお前が本物のウゲツである場合だろ?」
 ジャキ。剣先を心持ち手元で返しつつ、ジークが苦笑して反論するウゲツを遮った。
 仲間達も。一同は向けた得物を収める気配はない。
「……予想はしてたんだ。クロムは“結社”を裏切った。てめぇらは焦った筈だ。どこまで
こいつが知ってるかまでは分かんねぇけど、少なくとも幹部クラスだろ? 組織の情報が俺
達に漏れる事は避けたい筈だ。そうなりゃ……口封じ(しまつ)するしかねぇよな? 加え
て此処には俺達が来る。てめぇらにとっちゃ、一石二鳥のチャンスでもある訳だ」
 ゆっくり、ウゲツは首を横に振っていた。
 しかし、その表情は影を帯びたまま険しい。獄卒達は何度も何度も見比べていた。ジーク
達と彼の表情(かお)をさまを、何度も視線で往復させている。
「じゃあ訊くがよ。お前、昇降機ん中で言ったよな? “大都(バベルロート)の折、彼と
何かあったのですか?”ってよ。……おかしいなあ。確かにクロムはあの戦いで拘束されは
したさ。だが統務院の発表じゃあ、あいつは敗れて捕まったって事になってる。なのにお前
さんのその言い方じゃあ、まるでそうじゃないみてぇだ。実際あの戦いに居合わせでもしな
い限り、知りようもない筈の、な」
「……」
 ダンがジークの言葉を継ぎ、途端にウゲツの顔色が更に険しくなった。
 唇を結び、何も言い返さない。それをニヤリと見返し、更に仲間達が彼を追求しに掛かり
だす。
「そもそも僕らが此処に来た理由は、彼がお前達に口を割らなかったからだ。ならばやはり
皆の認識は統務院の──公的な発表の通りの筈。いくら副署長でも、統務院(かれら)に都
合の悪い情報を知らされているとは考え難い」
「貴方が何故クロムがジークに拘るのかと訊いたのも、本当は単純な好奇心からではないの
でしょう? 彼が“結社”を裏切った。その詳しい理由を探る為じゃなくて?」
「処刑云々もだね。君は敢えて部下達の口から話すように仕向けた。それはもしかしなくて
も、君自身──“結社”自身の推測を確かめようとしたからじゃないかな?」
 サフレにリュカ、エリウッド。ジーク達一行は、ウゲツの紡いだ言葉から次々に不審な点
を暴き出していった。
 獄卒らが目を瞬いている。動揺している。
 そう……なのですか? 信じられないといった様子で、しかし強い説得力を感じて、彼ら
は無言になってしまったウゲツに視線を向けてはそう追い縋る。
「何より──“同じ手”は通用しねぇぜ? アルスや母さん達から聞いてる。お前らの中に
他人に化ける魔人(メア)がいるって話はな。大方クロムも俺達と同じことを考えてたんだ
ろうよ。最初に“結社”の目的から話し始めたのだって、もし邪魔されて肝心な話を伝えそ
びれちまうのを防ぐ為だとしたら……。違うか?」
 ちらとジークが肩越しに牢屋の中のクロムに問い掛け、彼は小さく、そして僅かだが口元
に弧を描くと頷いた。
 疑いが確信に変わっていた。最初に刃を向けたジーク達だけではない。最初、この事態に
どうすべきか決めあぐねていた獄卒達も、今やあちらこちらで銃を握り直そうか向け直そう
かとする──この瓜二つのウゲツを誰何しようとする気配が広まりつつある。
「……ふっ」
 だが、嗤っていた。
 当の肝心のウゲツ──を語る何者かは、そんなジーク達の詰問に対して徐々に哄笑を漏ら
し始めたのである。ジーク達の顰める表情が一層険しくなる。普段は、本物のウゲツならば
絶対に見せない態度に、獄卒らがじりじりっと後退し始めている。
「中々頭が回るじゃないか。二度目とはいえ、俺の術も中々どうして耄碌するか」
 刹那、ウゲツ──の偽者は背中にオーラを纏った真っ黒の翼を出現させていた。
 ひぃっ!? 獄卒達の何人かが腰を抜かす。ダンやエリウッドなどの陰に隠れてしがみ付
いてくる。
 ぐるりと黒い翼が一度、彼を包み込んだ。
 ドクン……。その衣はまるで羽化直前の繭のように数拍脈動すると、再び勢いよく開く。
 振りまかれた黒い羽根。するとどうだろう。そこにはもうウゲツの姿はなく、代わりに鴉
系の鳥翼族(ウィング・レイス)──“結社”の魔人(メア)の一人、ヘルゼルの姿が在っ
たのである。
「……やっと正体を現しやがったな」
「そ、そんな……」
「じゃ、じゃあ本物の副署長は……?」
 慄き戸惑う獄卒らを左右後方に、ジーク達は改めて得物を構えた。
 出発前に予想を立てた通り。ドンピシャ。だが相手は“使徒”だ。何も無く逃がすつもり
は毛頭ないが、何処まで戦えるか……。
「やれやれ。随分と血気盛んじゃないか。まぁ、その意気込みだけは認めてやるよ」
 でも……。ヘルゼルは言った。口角を吊り上げて笑っていた。
 牢の中でクロムも身構えている。そして──はたと何かに気付き始める。
「俺達が狙っているのは何もそこの裏切り者だけじゃない。この島に収監された部下達──
その全員の命さ」

 監獄内中層。
 時を前後してそこは今、歓喜と悲鳴が入り混じる空間になろうとしていた。
「ああ! 貴方がたは……!」
「使徒様! 嗚呼、自分達を助けに来てくださったのですか!?」
 おおお。牢に閉じ込められた囚人──先の戦いで捕まり、収監された“結社”の構成員達
が、この時やって来たとある人物らの姿を見てぱぁっと希望の笑顔を零していた。
 鉄格子を握ってずいと迫る。
 その向こう側、牢の外、通路にはヘイトと……セシル及びヒルダの姿がある。
「あんまり騒ぐな。巡回の兵が気付いたらまた面倒になる」
「ヘイト。そっちは頼む。俺達はこちら側を」
「ああ」
 足元に転がる警備の獄卒達。
 言ってヘイトはオーラを込め、片腕に巻きつくように一本の魔流(ストリーム)の触手を
這わせた。するする。それはまるで彼の手足のように緻密に動き、牢の鍵を開け、次々に中
に囚われていた彼らを解放する。
「やった! 自由だ!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
「闘える……。これで、また俺達は闘えるっ!」
「……ああ。その事なんだがよ」
 しかしそれはぬか喜びだったのだ。
 歓声を上げる面々。そんな構成員達に、次の瞬間ヘイトはその魔流(ストリーム)の触手
を操り、何人をも一気に刺し貫いたのである。
「なっ!?」
「し、使徒様、何で──」
「見ての通りさ。口封じだよ。奴らに捕まって、お前らはどれだけ喋ったのか分からない。
だから全員始末するのさ。弱い駒は……要らないんだよ」
 止め──。逃げ出す彼らを、ヘイトの魔流(ストリーム)の錨が貫いた。粉砕した。
 更にその攻撃は一本から数十本へと次々に増えていく。大きく身体をぶち抜かれ、血飛沫
を撒き散らし、最初歓喜していた元構成員たちは次々に断末魔の悲鳴を上げてはどうっと冷
たい床に倒れていく。
「ひっ……! や、止め……っ」
「く、来るなあ!!」
「五月蝿ぇよ雑兵風情が。さっさと死ね」
 そして通路を挟んだ反対側の牢でも、セシルとヒルダが瘴気と化すオーラで易々と鉄格子
を壁を溶かし、中の元構成員らに迫っていた。
 向こうの、ヘイトによって虐殺されていく仲間達が見えている。
 彼らは泣きじゃくりながら後退りし、抵抗したが、そんな微力なものは虚しく、ただ次々
とセシルの剣一閃やヒルダの牙によって絶命していく。
『──ヘイト、セシル。聞こえるか?』
 そんな時だった。ふとヘイトの端末に着信が入り、彼が音量を解放しつつ応対する。
『俺だ。クロムのいる所まで来たが、レノヴィン達に変身がバレちまった。そっちを片付け
たら加勢に来てくれ』
 同じくこのギルニロックに潜入していたヘルゼルからだった。
 ヘイトが、セシルとヒルダがその声を聞いて互いに顔を見合わせる。そしてその足元には
無数の死骸となった元構成員達が転がっている。

 黒い靄を伴い、ヘイトとセシル、ヒルダが場に転移して来た。ジーク達はもう何度も見て
来てすぐさま警戒を強める冷静さを持っているが、責任者であったウゲツを目の前で失い、
自分達だけになった獄卒らはこの状況に更に狼狽している。
「ま、まさか魔人(メア)!?」
「いきなり現れたぞ。ど、どうやってこの監獄に侵入を……??」
 激しくざわついている彼ら。ゆたり不敵にヘルゼルと合流する三人。
 そんな彼ら、この場地下封印房で起こっているさまを、牢の中はクロムは深く顰めた眼で
見ている。
「……」
 ぎゅっと。
 密かに囚人服の上から、その下、自身の右腕に刻まれた闇色の刺青に目を落としている。
「よう、クロム。本当にレノヴィン達を呼んだんだな。大方余計な“犠牲”を出すまいと考
えたんだろうが……甘かったな」
「心配する事はないさ。皆まとめて始末してやるからよ!」
 三人(と一体)に増えた使徒。
 そんな怯える獄卒らを、牢の中のクロムを庇うように、ジーク達九人は一斉に動いた。


 部下達を率いて監視室に突入したケヴィンを待っていたのは、他ならぬ同僚達との戦いだ
った。部屋に入ったその直後、署内各所をその映像機でチェックしていた筈の看守らが、虚
ろな瞳のまま錆び付いた人形にように振り返ると一斉に襲い掛かってきたのである。
「や、止めろ! 俺達が分からないのか!?」
「皆普通じゃない……。何だ? 一体何がどうなってる!?」
 半ば不意を突かれた格好だった。合流し連れて来た獄卒らが次々と彼らに組み伏せられる
中、ケヴィンと一部の部下達だけは何とかこれをかわし、逆に一先ずこれを取り押さえる事
に成功する。
「? これは……魔流(ストリーム)?」
 どうっ。襲い掛かる看守の一人をいなし、足払いと両腕を取って固めながら、ケヴィンは
その背中にゆらゆらと帯状の魔力(マナ)──魔流(ストリーム)が差し込まれているのを
視た。
 目を凝らして場の面々を見る。
 すると案の定、様子のおかしい看守達のその背中や頭全てに、この不自然な帯が刺さって
いるではないか。
「刃物や弾は使うな、気絶させろ! 皆操られているようだ。身体から伸びるストリームを
切り離せ!」
 叫んでケヴィンは、オーラを込めた手刀で自分が押さえたこの看守のそれを切った。
 するとフッと、この部下は突然力なく倒れ込み、それまでの不気味な気配も消えて気を失
ってしまう。
 彼のやってみせたこのさまを見て、部下達も急ぎこれに倣った。
 思わず腰から抜いてしまった剣や拳銃をしまいつつ、襲ってくる看守達を代わりに警棒や
徒手拳闘などで殴り倒す。そして隙が出来た所を、錬氣を込めた一撃で断ち切る。
「署長、全員沈黙させました!」
「……これは一体、何なのでしょう?」
「分からん。だが少なくとも、監視室(ここ)の皆に細工をした何者かがいるのは間違いな
いだろう。道理で“異常なし”な筈だ」
 看守達を一角にまとめて壁にもたれさせ、ケヴィン達は監視画面と制御卓(コンソール)
の前に立った。
 このギルニロック全域、その各所をリアルタイムで撮影し、不審者など異常の有無を監視
する為に設置されている幾つもの映像機。その様子を映しずらりと並ぶ映像器。
 その内の一つ、監獄の最下層・地下封印房のそれを見た瞬間、ケヴィン達は戦慄した。今
まさに魔人(メア)クロムの前で、ジーク皇子達と獄卒らが、三人と一体の侵入者と戦って
いたのだ。
「これは……」
「まさか“結社”の魔人(メア)!?」
「ウゲツさんは? 副署長は何処だ……?」
「……っ」
 危惧した事がやはり現実になってしまっていた。ケヴィンは映像器越しに唇を噛んだ。
 やはりあの時部下二人が見た私達とは偽者だったのだろう。だとすれば今本物のウゲツは
何処かに囚われているか──最悪の場合、もう殺されてしまっている可能性が高い。
 あの武僧を口封じに来たか。そしてジーク皇子達も諸共。
 ケヴィンの頭脳が急ピッチで回転する。侵入者を許してしまった。彼の収監を担当する事
になり平時よりも強化された警備であるにも拘わらず。
 敵は計画的に侵入した。今この場の状態、その理由を推測すれば分かる。
 詳しくは分からないが洗脳術の使い手が奴らの中にいるのだろう。おそらくその者が比較
的早い段階でこの監視室を掌握、看守達を操り「異常なし」の嘘を報告させ続けた。更に前
後して自分やウゲツの偽者が潜入、おそらくウゲツを排除し、ジーク皇子達を出迎え一挙に
始末するタイミングを狙っていたと考えられる。
(……抜かった。敵を、甘く見ていた)
 だがそもそも、各監獄島の位置など詳しい情報は統務院によって極秘扱いにされている。
仮にクロム(かれ)の収監を知り得たとしても、実際にここまでやって来れる方法などそう
そう無い筈だが……。
「署長」
 定期船への密航? 或いは、書類でだけは目を通した事のある奴らの空間転移?
 思いつく限りの可能性を頭の中で挙げてみたが、どれもケヴィンには現実的とは思えなか
った。するとそうじっと眉を潜めていた中で、はたと部下達の自分を呼ぶ声が聞こえる。
「署長。ご指示を」
 ハッと我に返った。部下達が真っ直ぐに自分を見ていた。
 皇子達を、あの囚人を暗殺の魔の手から守るのか? 副署長を捜すのか?
 そうだ。うじうじしている場合じゃない……。ケヴィンはきゅっと唇を結んで頷くと、す
ぐさま彼らに指示を飛ばす。
「二班に──三分の二と三分の一に分かれてくれ。一方は私と共に封印房へ、もう一方は急
ぎウゲツの捜索に当たるんだ。最低限の警備要員は残し、手の空いている兵にも併せて合流
するよう、署内全域に呼び掛けろ」
 はっ! 部下達がびしりと敬礼し、一斉に動き始めた。制御卓(コンソール)から各地の
兵らに放送を流す者、気絶した看守達を叩き起こす者、武装と班分けに走る者、辺りはにわ
かに慌しくなる。
「行くぞ!」
 ウゲツ、無事でいてくれよ……?
 突入班を引き連れ、帽子を深く被り直し、ケヴィンは翻る軍服と共に踵を返した。

「おぉぉぉぉーーッ!!」
 全身にオーラを滾らせ、ヘルゼルが瞬く間に巨大な合成獣(キマイラ)に化け変じた。
 獅子と山羊、鷲という三つの顔と、四肢・毒蛇の尾・翼。天井ギリギリにその背を曲げな
がら彼はジーク達を睥睨し、その両脇をセシルとヒルダ、ヘイトがクロムの牢を目指し駆け
抜ける。
「させるかよ!」
「ジーク、君はクロムを守れ。僕らはあのデカブツを止める」
 合成獣(ヘルゼル)の獅子の前脚が振るわれた。そこにサフレが、ミアが前に出ると槍先
を射出し、渾身の拳をぶつけるが……何故かその攻撃は手応えもなく巨脚の軌道をなぞる。
 目を見開く二人。だがヘルゼルはそんな彼らを不敵に見下し、更に二撃目・三撃目とその
巨体を振るい始める。
「堅く結べ、緑柳!」
 瘴気のオーラを纏って突撃してくるセシルとヒルダを、ジークは懐から抜き放った防御の
六華で辛うじて防いでいた。クロムの牢に立ちはだかるように、ジークは彼らの間に割って
仁王立つ。
「……団長から聞いてるぜ。お前が瘴気使いの魔人(メア)だな?」
「ふん……」
 多角形にドーム状の結界を作る緑色の光。ギチギチと互いの力がしのぎを削る。
 だがそれすらも、セシルは叩き付けた剣先から伝わせる瘴気でじわじわと溶かしていた。
 気を抜けば一気に崩される……。防いでみせたのも束の間、魔力(マナ)を込めるジーク
の表情が次第に苦しいものになっていく。
「死ねぇ! クロム!!」
 そしてその横っ腹を縫うように、ヘイトが両手から何本もの魔流(ストリーム)の錨を引
っ下げながら突撃しようとしていた。
 ジークが、獄卒らを逃がそうとしていた他の仲間達が、手の回らぬその身を一瞬悔いたよ
うにハッと見遣る。
「──どっ、せいッ!」
 しかし間一髪、その凶刃は防がれた。
 炎と化したオーラを纏うダンの振り抜いた斧に叩き切られ、その瞳にオーラを集中させた
エリウッドの正確無比な銃弾に射抜かれ、魔流(ストリーム)の錨が空中分解したのだ。
「そうはさせねぇぜ? 坊主」
「殺させない。少なくともお前達には……」
 ジークらが安堵し、直後またそれぞれに迎撃と避難誘導に努める。
 ダンがオーラの炎を揺らして嗤っていた。エリウッドがその横でガバメントの銃口を真っ
直ぐヘイトの額に合わせていた。レジーナが、皆と獄卒達を逃がそうと迂回しながら、複雑
な表情でこれを見ている。
「ちっ……。邪魔すんじゃねぇよ。てめぇらも纏めてぶち殺すぞ」

(どうも妙ね……)
 三手に分かれたジーク達を遠巻きに、リュカはその様子を訝しげに観ていた。
 ヘルゼルである。巨大な合成獣(キマイラ)に変じた彼の攻撃に、彼女は不審な点を見つ
けていたのだ。
 おかしい。あれだけの巨体に変身したのに、その利点をあまり活かしていない。
 ここは空間が限られている地下牢だ。ならばその巨体で一気に二人を押し潰してしまえば
済むものを、奴は腕(厳密には脚)や尾を薙ぎ払って攻撃するだけで、小回りの利くサフレ
やミアを捉え切れていない。
 二人は先程からずっと、手応えの無い刺突や魔導具、拳や蹴りを打ち込み続けている。
 マルタは少し離れた場所から、必死に戦歌(マーチ)を奏でて二人の身体能力を強化し、
サポートを続けている。
「リュカさん?」
 ふとレジーナが呼び掛けてきた。怯えている事は自覚せど、このまま現場を放棄して逃げ
る事にも躊躇いを感じて避難が疎らになり、遅れる獄卒らを促すオズからも。
 リュカは少し苦笑いを零した。『そこの連中を逃がしてくれ!』そう言って地面を蹴った
ジークをダン達を一瞥し、改めて思考を落ち着かせる。
「──サフレ君、ミアちゃん、マルタちゃん! そいつの変身は幻よ! 幻術だわ! その
巨体で床が軋みも壊れもしてない事自体、不自然なの!」
『えっ?』
「で、でも! マスターもミアさんも、頬や腕に擦り傷が……」
「身体が錯覚してるのよ。高度な幻術は、時に偽物だけで人を殺すことだって出来る!」
 何度目かの攻撃をかわしながら、サフレ達が驚いたようにこちらを見遣っていた。
 頭上で、合成獣(キマイラ)の姿なヘルゼルが不興とした表情で見下ろしている。リュカ
は両拳を胸元に添えて断言した。
 そもそも奴はウゲツに“化けて”いたのだ。
 物理的な変装ではない。呪文も唱えていなかった。となれば、相手の「認識」を逆手に取
る類の能力でなければ説明がつかない。
「そうか。道理でダメージが通らない筈だ」
「ありがとう、リュカさん。……嫌な相手」
「……だがどうする? 俺の幻はお前の言うように人を殺せるぞ? どれだけ偽物だと上っ
面の意識で念じても、心身の深みがそうと思わなければ──」
 しかしその時だった。それでも防げはしないと不敵に笑うその額を、刹那一条のレーザー
が撃ち抜いたのだ。
 ヘルゼルを通り抜け、天井に当たって爆発するエネルギー。
 少なからず崩れ落ちてきた瓦礫に慌てて皆が避ける中、そのレーザーを撃った張本人、機
械の掌から覗いた小さな穴を掲げて、オズが茜色のランプ眼を光らせている。
「観測(サーチ)モード・オン……。ソレナラバ私ガオ相手致シマショウ。機械ノ私ナラバ
ソノヨウナ誤魔化シハ通用シマセン」
 舌打ち。
 巨大な怪物(まぼろし)を纏うヘルゼルと、オズが睨み合う。

『大方余計な“犠牲”を出すまいと考えたんだろうが……甘かったな』

 セシルがそう自分を嘲笑うように言った時、クロムは何一つ反論出来なかった。
 その通りだ。そして頑なに「最小」を狙い続けた結果、今まさに事態は裏目に出てしまっ
ている。
 迫るかつての同志らを見て、彼は密かに自らの右腕に視線を落としていた。
 痛み汚れた囚人服の下。その褐色の肌には一見何の言語とも判らぬ文様が集まった、闇色
の刺青が刻まれていた。
 証である。これは結社“楽園(エデン)の眼”に加わり、その幹部エージェントたる使徒
にのみ許された魔導の発動媒体──ルーンなのだ。
 “結社”は世界樹(ユグドラシィル)の内奥にその本拠地・摂理宮を構えている。
 これはそこへ帰還する、或いは各地へ飛ぶ為のいわば空間転移の魔導具なのだ。名実共に
世界の中心である世界樹(ユグドラシィル)を基点とし、複数の座標軸を宛がう事で、自分
達はこの広大な世界のありとあらゆる場所へと飛んでいける。或いは覗き見る事が出来る。
 俗世の人間達が自分達を神出鬼没と呼ぶカラクリはそこなのだ。尤も覗き見る場合は観察
者の消耗が激しく、一度に何ヶ所も把握は出来ない。そもそもこの観察が許されているのは
“教主”を始めとした、ごく一部の者だけなのだが……。
 だが今は、この刺青も自分の魔力(マナ)に反応しない。それは即ち“結社”から既に見
限られたという事だ。
 もう後戻りはできない。自分は造反者。そして……罪人なのだ。
「──接続開始(コネクト)っ!」
 サフレ達と替わったオズ、そしてリュカから魔流(ストリーム)を受け、ジークが奥の手
を使っていた。
 跳ね上がるオーラの量。全身に漲る力。
 だがそれでも対するセシルは小さく目を開く程度で、殆ど動じた様子はない。
 ジークが激しく地面を蹴って襲い掛かった。瘴気のオーラを纏う彼に、左手で握った白菊
でそれを打ち消しながら、内包された彼本体を狙う。
 しかし届かない。白菊という得物では小さ過ぎたのだ。
 こちらは点を中心に潰していく。だが敵は範囲と奥行きをもってオーラを瘴気に変える。
これでは、数秒だけならばオーラを剥ぐことが出来ても、すぐに無傷な部分がそれを覆い隠
してしまう。
 ジークは接近しては退き直すを繰り返すしかなかった。かわすばかりにならざるを得なか
った。強化された身体能力・反応速度で以ってようやく、霞む程に鋭いセシルからの剣撃、
ヒルダからの追撃から身を守る事が出来るといった状態だった。
「無駄な足掻きを……。クロムはどうせ死ぬ。俺達に殺されるか、統務院が首を刎ねるか、
その違いだけだ。何故庇う? 敵だった男を。そこまで命を張る価値があるのか?」
 息も切らさず、左右上下から次々とセシルの剣が迫る。
 かわしたり受け流したりが精一杯のジークに対し、彼は一歩一歩押し進みながら言った。
その向こう側でダンとエリウッド、ミアを加えた三人に阻まれているヘイトが叫ぶ。
「そうだよ! さっさと殺されとけ! そいつは……“敵”だろうがっ!!」
 烈火を纏ったダンの斧と魔流(ストリーム)の錨が克ち合い、二人が何度目ともなく弾か
れ合っていた。
 連撃が止まらない。だがジークは、それらに押されながらもぎりっと歯を食い縛って踏み
留まり、爆ぜる。
「うるせえ! だから……だからてめぇらは共感され(みとめられ)ねぇんだよ! そう簡
単に切り捨てちまうから、お前達は世界の敵になっちまうんだ!」
 鬼気か。刹那、左手の白菊と右手の紅梅が間髪入れぬ連撃を刻んでセシルの剣を弾いた。
 思わず彼が目を見開く。その見下ろした視線に、見遣ったヘイトに、ジークは猛然と斬り
掛かりながら言う。
「俺達はひたすら戦ってきた。“敵”から皆を守れば、皆幸せになれると信じてた! でも
実際はどうだ? 戦いは終わりやしねぇ。次から次に出来てきやがる。何度も自分を呪って
きたよ。俺はむしろあちこちで憎しみを作って回ってきたんじゃねぇかってな!」
「ジーク……」
「マスター」「ジークさん……」
「……。ふん」
「それでも、現れてくれた。俺と出会って、もう一度人を信じてみたいなんて言ってくれる
奴が現れたんだ! 嬉しかった。救われた気がした……。俺の戦いは、全くの無意味じゃな
かったんだ!」
「──」
 仲間達が目を細めていた。
 声色を落とし、泣き出そうになり、或いは「全く、お前らしいな」と切ない苦笑いを零す
者達もいた。
 セシルらは哂っていた。くだらないと。
 だがクロムは絶句していた。牢の中で。
 救われたのは、目を覚まさせられたのは、自分ばかりではなかった。あの少年とて悩み、
戦い続けてきたのだ。齢二十に届くか届かないかの青年には、きっと重過ぎる筈の運命を背
負ったままで。
「……確かにこいつは数え切れない罪を犯してきた。でも俺は、やっぱりこいつをこのまま
死なせたくない! 俺は連れ出す、こいつを外に連れ出す! 生きて生きて生きまくって、
何度も死にたくなるくらい後悔させて、最期の最期まで生かし続ける。それが俺なりの……
こいつに背負わせてやれる償いだ!」
 激しく立ち回り続けた中、一瞬の隙間を白菊が縫い、ジークの剣が初めてセシルの間合い
にまで届いた。
 剣と剣がぶつかる。激しい金属音が響き渡る。すぐにセシルは瘴気のオーラで押し包み直
し距離を取ったが、内心深く眉を潜めるほど驚きはしたらしい。
「ジーク君……」
 交替したサフレ・マルタ及びリュカの騎士団(シュヴァリエル)らと共に場を迂回しなが
ら、来た道──昇降機のある場所へと続く通路を目指して獄卒達を押していたレジーナは、
思わず立ち止まってぐらぐらと瞳を揺らしていた。
「──。皇子……」
 そして時を同じく、この一部始終が流れていた監視室でもジークの叫びは響き渡り、急ぎ
部屋を飛び出そうとしていたケヴィンらを思わず降り返らせる程に驚愕させる。
「馬鹿馬鹿しい……。クロムの話を聞いていなかったのか? ヒトはどうでもいいんだよ。
俺達はあくまでこの世界を救う為に闘っている。連中が設定する罪やら償いやらなど知った
ことか」
「そうさ、ぶっ壊すんだよ! こんなクソみたいな人の世(せかい)なんざ!」
 セシルのやはり鼻で笑う態度に、ヘイトが激昂しながら同調していた。
 ちらりと彼の方を一瞥するセシル。だがその視線は次の瞬間には牢の中のクロムへと向か
い、改めてこの裏切り者に訊ねを投げ掛ける。
「……本当に加担するのか? お前は見たんだろう? どちらが真の“救済”か。あんなに
も拘っていたのはお前自身じゃないか」
 だが対するクロムは答えなかった。じっと右腕に視線を落とし、ただ無言の肯定──もう
後には引けない己の状況に身を硬くするのみだった。
「そうか……。残念だ」
 ジークが相対して剣を構えている。セシルはふぅと小さく嘆息をついた。
「教主様とあの方からの伝言だ。『残念だよ。君なら僕らのことを分かってくれるかもしれ
ないと思っていたのに』──だとさ!」
 そして言い切るや否や、彼は再び地面を蹴った。瘴気のオーラを大量に纏い、異形たる相
棒ヒルダを携え、この裏切り者を庇うように立ち続けるジークに今度こそ終止符を打つべく
袈裟懸けの斬撃を放つ。
「──」
 だがジークはこれをかわしていた。寸前、クロムの牢に届くギリギリまでセシルの剣を引
きつけ、半身を返しながら大きく身を反ってこの瘴気の剣をかわしたのだ。
「ッ!? しまっ」
「てめぇこそ、クロムの話を聞いてなかったのか? お前とは、無策では当たるなってよ」
 不敵に笑って言うジーク。セシルは直後その失策を悟った。
 瘴気なのだ。彼の剣はあらゆるものを朽ちさせる瘴気を纏っているのだ。
 それは即ち、クロムを捕らえている目の前の鉄格子とて同じで──。
「今だ、クロム!」
 そしてジークが叫んだ。目を凝らさねば薄暗い、牢の中のクロムがキッと顔を上げる。
 瘴気の液が中にまで飛び散っていた。床を点々と、じゅくじゅくと溶かしている。
 クロムはそこに枷を押し当て、両腕そして両脚と瞬く間にその拘束を解くと、鉄格子の眼
前で急ブレーキを掛けながら慌てた顔のセシルを睨む。
「部分解放──石修羅(いしゅら)!」
 次の瞬間だった。大きく振りかぶった右腕が急激に硬質化し、その拳は牢を突き破りなが
らさながら巨人のような岩石の腕になる。更に彼はこれに自身の《鋼》を加えて全体を黒鉄
色に変えると、そのまま全力を込めて目の前の“敵”に打ち出した。
「ぐぅ……ッ!?」
 鉄格子を粉々に突き破って、クロムの巨大な拳がセシルを殴り飛ばした。流石に彼も、こ
の強烈な一撃をいなし切るのは難しかったのか、咄嗟にありったけのオーラを以ってこれを
防御するしかない。
 大きく大きく、後ろに弾き出されていた。衝撃で少なからぬ瘴気が飛び散り、思わず剣の
腹で防御した格好のまま、ズサザザッと石畳の上を滑って止まる。
 忌々しい。さもそんな感情で面持ちで、セシルが顔を上げた。再びオーラが瘴気となって
彼を取り囲んでいく。一方でクロムはゆっくりと牢から歩み出つつ、彼のオーラに直撃した
石修羅(いしゅら)の腕を早々に自身から切り離し、その朽ちて崩れていくさまをぼうっと
眺めている。
「す、凄ぇ……」
「ああ……」
「っていうか、これ拙いんじゃないか? あいつ封印枷も無しで出て来ちまったぞ?」
 思わず足を止めてあんぐりと口を開けた獄卒達は勿論、場に居た全ての面々が驚愕のまま
固まっていた。
 ヘイトやヘルゼルは取った間合いのまま視線が釘付けになっているし、ダン以下仲間達も
突然の出来事に唖然としている。その中でも唯一大丈夫──むしろ内心ハイになっていたの
は、他ならぬ反り返って回避した後、地面を転がりつつ起き上がったジークくらいだろう。
「セシル何やってる!? ちんたらするな!」
 だがそんな沈黙をヘイトが破った。それまで戦っていたダンやミア、エリウッドから再び
飛び退き、クロムと直線状に相対するセシルの前に躍り出たのだ。
 ヘイトは怒り狂っていた。自由になったクロムを、まるで仇のように猛烈な憎悪の眼で睨
み付けている。
「僕が殺る! あいつは……“敵”だぁぁぁッ!!」
 ──しかし、その叫びは現実のものとはならなかった。
 次の瞬間だった。彼に代わりクロムに襲い掛かろうとしたヘイトを、突然セシルが背後か
らざっくりとその剣で刺し貫いたのだから。
「えっ!?」
「仲間を、刺した?」
「……」
 今度はジーク達がより一層驚かされる番だった。
 すぐには理解出来なかった。だが間違いなく、ヘイトの身体の真ん中を、セシルの瘴気を
帯びた剣が串刺しにしている。クロムが、牢を出たその場で眉を寄せ、立ち止まっている。
「おま、え……」
 かはっ。ヘイトが血を吐きながら振り返っていた。
 引き攣った顔、大きく揺らぐその瞳。
 だが当のセシルは、ヒルダは、はたまたヘルゼルまでもがこの事態に平然としている。
「──大丈夫。その必要はないさ」
 血走った眼で見つめくるヘイトに、セシルはそう剣を握ったままで応えたのだった。

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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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