日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)レディ・ルーン-Bonds of RU'MALE-〔3〕

 特別保安庁──通称「特保」。
 それは“血の遭遇”以降、紋女(ルーメル)に関する政策の実務執行を担うべく強力な権
限と共に創設された、内閣官房直属の特務機関である。
 いち行政機関としてその本庁は他の省庁同様、首都に置かれているものの、実質の本部は
各地に設けられた実働支局──特にその元締め的存在である星峰本局に在った。
「──以上が、今回宮座町で起きた紋女狩り(ハンター)達による騒ぎの経過報告となりま
す。今回身柄を確保できたホシの身元は、お手元の資料の十三頁より掲載しております」
 薄暗い会議室の空間の中に浮かび上がる複数のディスプレイ。
 そこにはビルの屋上と思しき場所から眩い発光が起こる様子や、その中で逃げ惑う武装し
た男達の姿の映像が映し出されていた。
 長方形に設置されたテーブルに腰掛け、そんな映像や他のデータを表示した画面、手元の
紙の資料を見比べながら、暫し出席者達はめいめいに状況の整理に努める。
「……この街にもハンターどもが出没するようになったか」
「此処だけではありませんよ。ここ数年、各地で彼らの活動が活発している模様ですし」
「全く……。目先の利益に躍らせれて国益(たいきょく)が見えていないのか。嘆かわしい
限りだな」
「無理もないでしょうな。彼の中には“血の遭遇”による被害者やその関係者も少なくない
ようですし。差し詰め自分達なりの復讐も兼ねているのでしょう」
「……愚かとか言いようが無いですね。ヒステリーな愚者ほど扱いに困る者はない……」
 席上での面々は皆、神妙な面持ちだった。
 集まっているのは全て局のリーダー級の者達ばかり。そんな彼らが一様に嘆くのは、今尚
続く紋女(ルーメル)に対する敵対感情の存在であるように見えた。
 ある者は国益の為、ある者は距離取った達観さを、またある者は個人的な嘲笑を含めて、
この度起こった事件の顛末の報告に目を通しながら各々に言葉を漏らしている。
「……ふぅむ」
 そんな中で、一人の男性がゆたりと口を開いた。
 するとそれまで点々とざわめいた声がピタリと止んでいた。同時に彼らの視線はその声の
主──テーブルの最上座に陣取るこの男へと向けられる。
「確かに、この所の反ルーメル勢力の台頭は目に余るねぇ。警戒レベルを今よりも高めに設
定するべき場面かな? レベルC+に再設定するとしよう」
 面々が同意の下に頷く。
 テーブルに両肘を着いて手を組んだまま、一見すると温厚そうな中年男性にしか見えない
この上座の男は何処かのらりくらりとした様子で呟いていた。
 だがその発言は単なる呟きでは澄まないようだった。ちらと彼が視線を向けると、傍に控
えていた秘書風の男性がサッと無線で何処かに指示を送り始めている。
「……ま、今最優先にするべき事は分かっているね? 確保した容疑者達からは可能な限り
情報を引き出し、裏づけを取ること。同時に逃げた連中の捜索・逮捕も併せて進めてくれ。
藤野、蒔田、それと竜崎、四條班。頼むよ」
「了解致しました」
「ええ。任せておいて下さい」
 男は微笑んでこそいたが、そこには穏やかさ以上のえもいわれぬ威圧感があった。
 ちらと幅の広い顔に奔った線目が開き、奥底の見えない眼差しが面々を捉える。
「……さて。それとあとはもう一つの案件だが。今回ハンター達が狙っていた当のルーメル
は逃走したのだったね?」
「はい。通報を受け、所轄警察が先遣として現場に急行しましたが、その時には既に現場か
ら姿を消していたようです」
「ふぅむ……」
 上座の男は少し思惟するように黙った。
 薄らと線目から開けた眼差しを目の前に展開する複数のディスプレイに向ける。画面に表
示された多くの資料、映像のデータ。そこには無数の光の球を従えたルーメルと、その傍ら
で驚きを宿して立っている少年の姿が映し出されている。
「しかし誓約者(リンカー)持ちとなると、少々面倒な事になるねぇ……」
 ぐっと背を伸ばし、男は誰とも無く言った。
 その口調こそはのんびりとしたものだったが、そこには暗に画面に映る彼女達に対する批
難の感情が篭っているようにも受け取れる。
「ルーメルの保護──これは我々にとって大きな使命の一つだ。こうして実際に脅威に曝さ
れた彼女を、このまま看過するわけにはいかないな」
 ちらと。男は席上の面々を見渡した。
 何処か緊張したように佇む彼ら。
 そんな面々を暫しの間見遣ってから、彼はその内の一人──生真面目そうなスーツ姿の女
性へと視線を移すと言った。
「門倉君、頼めるかな? このルーメルの調査と保護は、君達の班に任せよう」
 面々が同じく彼女を見た。
 一瞬重くしんと静まり返った場。
 その中で、改めて身を引き締めるようにビシッと背筋を伸ばすと、
「……了解致しました。お任せ下さい、局長」
 この女性エージェント・門倉はそう淀みなく答えていた。


 STORY-3「客人、来タル」

「──という訳で。僕、妃翠の誓約者(リンカー)になったんだ」
 ハンター達からの襲撃騒ぎも一息ついた休日明け。
 登校した陽は、屋上に集まってくれた翔ら友人三人に事の顛末を報告していた。
「……そうか。色々と大変だったんだな」
「悪ぃな。いざって時に力になってやれなくてよ」
「ううん、いいんだよ。元はと言えば僕の油断が招いた事なんだし。それに二人にまであん
な危ない目に遭わせるわけにはいかないよ」
「うーん。まぁ、その気持ちはありがてぇんだが……」
 淡々と仔細を頭の中で整理しているかのような憲人と、頭の後ろで手を組んだまま何処か
苦笑いを浮かべて呟いている翔。
 それでも陽は微笑んでいた。彼らの厚意が嬉しかった。そしてそれ以上に、大切な人達が
大事に至らずに済んだことに改めて強い安堵の念を覚える。
「……というか。陽、何であんた何時の間に妃翠さんを呼び捨てにしてるわけ?」
「ん? あぁ、それは本人の希望なんだよ。あの後『もう単なる他人じゃないんだから、私
の事は名前で呼んでね?』って。正直、まだ慣れてはいないんだけどね……」
「ふぅん……」
 そんな陽の微笑みの横顔を、翼だけはちょっとむくれ顔で見遣っていた。
 訊ねられた質問に、陽は気恥ずかしそうに頬をポリポリと掻きながら答える。
「ま、いいんじゃね? これからは妃翠さんも半分家族──居候みたいな事になるんだろ?
呼び捨ても時間が経てば慣れるって。それにしても陽が誓約者(リンカー)とはねえ……。
ほんとにあの時俺達が見たのと同じ半紋があるのな。痛いとか痒いとかはねぇの?」
 翼はそれでも何処かそっけない、若干不機嫌な様子だったが、陽は一瞬頭に疑問符を浮か
べるだけで特に気には止めなかった。代わりに翔が背後から近付いてくると、ついっと陽の
制服の襟首を捲り、その首筋に形成されている翠色の半紋──妃翠との誓約(リンク)の証
を物珍しそうに眺め出す。
「ううん全然。始めの内はちょっと熱を持ったかなって気はしたけど、今は言われなければ
在るのすら忘れちゃうぐらいかな」
「ふぅん……? そんなもんなのか」
 陽を挟んでその背後から、妙にむくれ面な姉をニヤニヤと見遣る翔。
 その意図が分かっているのかいないのか、翼は若干頬を赤く染めながらキッとそんな弟に
睨みを効かせていた。
 だがそんな双子(きょうだい)のやり取りを、のんびりと答え、肩越しに翔に振り向いて
いる陽本人は気付いている様子はない。
「しかし半紋の位置が首の後ろでよかったよな。これがデコにでもできた日にゃあ、隠すに
隠せないもんな」
「……。やっぱり、こういうのも隠さないといけないのかな?」
「……少なくとも自分から大っぴらにしない方が賢明だろうな。流石にそうしないと周りの
面々がどんな反応をしてくるか予想し切れん」
 そして翔が何気なしに言った言葉に、陽はフッと表情を暗くした。
 そんな友の横顔をじっと見遣りながら代わりに答えるように憲人が言う。
 確かに自分が誓約者(リンカー)──ルーメルと関わりのある人間だと分かれば、それを
よく思わない者が分かってしまう可能性はあるのだろう。
「そう、だね……」
 理屈は分からない訳ではないのだが、それでもやはり……。
 陽は一応小さく頷いたものの、その内心は何とも言えぬ複雑な想いを抱き始める。
「それによりも陽。身体に疲れや違和感はないのか?」
「? ううん、特には。何で?」
「……誓約者(リンカー)はパートナーのルーメルに自身のエーテルを分け与える存在だ。
常時そうである訳ではないが、当然その行為には自身の消耗を伴うからな」
「うーん……。消耗と言われても実感は無いかなぁ。実際、その分け与えるのだってあの時
ハンター達から逃げる為に妃翠が力を使った時ぐらいだし……」
「そうか……」
 陽の返答に、憲人はじっと考え込むように言葉少なげに佇んでいた。
「だが消耗具合には充分気を付けておけ。妃翠さんも、無用にお前のエーテルを採り過ぎる
事はしないとは思うが……」
「うん、分かった。ありがとね」
「……ああ」
 それは偏に友を気遣ってのことなのだろう。
 陽は素直にその心遣いに微笑んで小さく頷き、あくまで冷静を装ったままスッと目を瞑る
憲人を見遣った。
「ま、何にしろ無事でよかったよ。翼から電話が来た時はビックリしたんだぜ?」
 そんな陽の背後からそっと離れると、翔は再び両手を頭の後ろで組みながら言う。
「ほんと……大変だったんだから。あの後警察とか野次馬とかがわんさか来てさ。事情聴取
されたり、紗江と都に質問攻めに遭ったりして……誤魔化すのに苦労したのよ?」
「あはは……。みたいだね。ありがとね、フォローしてくれて」
「それはいいのよ、別に。下手に喋っちゃう訳にもいかないしさ。……それよりも私的には
これで妃翠さんが陽ん家に居付くことの方が──」
「うん? 僕ん家が何?」
「なっ、何でもないわよ……。その、本当に大丈夫なのかなって……。ほら、美月さんの件
があるしさ。大なり小なり文句は言われたんでしょう?」
「まぁね……。でもあの時はむしろ、僕が血塗れになるような目に遭った事に怒ってたよう
な気もするけど……」
 もごもごと尻すぼみになる翼に若干の怪訝を見せた後、陽はそう苦笑していた。
 確かに姉は今も妃翠──ルーメルには好意的ではない。だが本音を言えば、銃撃を受け血
にべっとりと染まった格好で帰って来た自分を心配を込めて叱ってくれたその姿に、何処か
ほっとしていた自分がいたのも事実だった。
 負けん気が強く、特に妃翠が来てからはしかめ面が多くなったような気がする姉。
 でも本当は見た目程冷たい人間ではないのだと分かる時、内心安堵の念が湧くのである。
「……そうか。しかし美月さんの件については、時間を掛けて慣れて貰う他ないだろうな」
「そうだね。まぁでも姉さんのルーメル嫌いは今に始まった事じゃないし。すぐにどうにか
なるとは僕も思ってないよ。妃翠には気まずい思いをさせちゃうかもだけど」
 多少表面的な気まずさはあるだろうが、それでも陽は自身はそれを言葉通りに深刻なもの
とは捉えきれずにいた。実の姉の事であり、その心情も分かっているつもりだからという部
分もあったのかもしれない。
 憲人達は各々に小さく頷いていた。問題がなくなった訳ではないが、それでも当面の懸案
であるハンター達という存在は遠退いている。一先ずは安心といった所だろう。
「……そろそろ戻ろう。ホームルームも始まる」
「そうだな」「えぇ」
 そして報告も一段落つき、陽達は教室に戻るべく屋上を立ち去ろうとした。
 翔に翼、そして陽と憲人。階下へと続く入口のドアを開けて四人が出て行こうとした、次
の瞬間のことだった。
「……陽」
「うん? 何?」
「……大変だろうが、諦めるな」
「?? うん……頑張る」
 傍を通り過ぎるタイミングで、憲人は陽にしか聞こえない程度の小声でそう言った。
 その言葉に頭に疑問符を浮かべながらも、陽は頷いてみせる。
「……」
 コクリと。憲人はその返答をちらと横目にして小さく頷き返しながら、翔らの後を追って
歩いていってしまう。
(何だろ……?)
 陽はいまいちその真意を量る事はできなかった。
 だがそれでも、陽は少し小首を傾げただけですぐに友人達の後を追うと、共に階段を下り
て行く。

 妃翠の件が一段落した事もあって、陽は久しぶりに授業に集中できたような気がした。
「──は~い。それじゃあ、ここまでね……」
 気付けば四限目の終了を告げるチャイムが鳴っていた。
 年を召した教師が教材などの荷物を小脇に抱えて教室を後にすると、途端にクラスの面々
が堰を切ったようにどっとざわつき出す。
「ふぃ~、終わったぁ。陽、憲人、飯にしようぜ」
「うん」「……ああ」
 翔の席を中心に、いつものように。
 陽と憲人、そして(自分の)弁当を片手にした翼と紗江・都の両名も加えていつもの面子
が自然と集まってくる。他のクラスメート達もそれぞれにグループになって集まったり、外
へ食べに出て行ったりといつもの昼食時を迎えようとしている。
 そしてそれは、鞄から弁当を取り出しながら、そんな光景を見て静かに微笑みを漏らして
いた陽も同じであったのだが……。
(……ん?)
 立ち上がり、皆の下へと向かおうとする動線。
 そんな最中で、陽の視界の片隅に一人の少女──凪の後姿が映っていた。
 ぽつんと、まるで他のクラスメート達から切り取られたように独り席に座ってごそごそと
教科書やノートを片付けている凪。それは特に変哲もないいつもの動作である筈なのだが、
気付けば陽はふと立ち止まるとそんな彼女の様子を見遣っていた。
(……水上、今日も独りで食べるつもりなのかな)
 制服のスカートのポケットから財布を取り出す凪を視界に映しつつ、陽はぼうっと思う。
 今日も彼女は独りだった。
 それは以前からの事だとはいえ、陽はその姿を気掛かりに思っていた。それでも中々、声
を掛けることができなかったのが実情だった。
 以前に書庫の中で聞かされた当人の苦悩と、単に聞いただけではそれに反するような、自
らを引き離すかのようなあの言葉。更にのちに妃翠の一件が加わった事もあり、ここ暫くは
まともに話してすらいない。
「……」
 それでも、多分。
 あの時彼女自身が語っていた通り、当人は今も躊躇しているのだろう。
 曰く“人間が分からない”だからだと。
 あの言葉の意味は今も分からないままだが、少なくとも彼女は一歩を踏み出したいと思っ
ているのだと陽は思った。……あの日、自分に胸の内を話してくれたという事を少々過大に
見積もったとしても。
「? どうしたよ、陽?」
「…………」
 いや、そんな勝手な推論以上に……。
 自分は、何時しか重ねていたのだ。独り佇む彼女の姿を、あの人達に。
 愛する夫を亡くしても悲しむ様を自分達──子供に見せることなく隠れて静かに泣いてい
た母と、それを自分よりも年上であるが故に感じ取り、何時しか抱え切れないほどにやり場
の無い怒りやもどかしさを背負って苦しんできた姉の姿に。
 なのに、自分は何もできなくて。ただ彼女達に優しさを甘受する事しかできなくて。
 ──もう……誰も悲しませたくない。
 それに気付いたのは、きっと妃翠の一件のお陰だった。
 今まではただ漠然と“放っておけなかった”だけだった。だけど、今なら僕はちゃんとし
た理由で胸を張る事ができると思う。
 ……結局は自分本位の動機だと哂われるのかもしれないけれど。
「水上」
 足取りを止めていた様子に小さな怪訝を見せた翔には振り返らず、陽はキュッと床の上で
踵を返すと、おもむろに凪の下へと歩み寄っていた。凪はちらとその接近に気付き、僅かに
視線を向けてきたが、その表情はあくまで淡々としているように見える。
「ねぇ、水上も一緒にお昼食べない? その……いつも独りみたいだしさ。どうせなら皆で
食べた方が美味しいと思うんだけど……どう?」
 あまり堅苦しくならないように、自然に。
 陽は斜め後ろの角度から彼女の傍に立つと、そう若干緊張気味に誘いを掛けていた。
「皆も、いいかな?」
「え? あ、おう。別に構わないぜ。なあ?」
「う、うん……そうね」
「あたし達はオッケーだよん? おいでよ、凪っち~」
 同時に翔達の方に振り向いて了承を取る。
 話を振られて一瞬ぎこちなくなったものの、幸い皆は特に嫌がる様子を示してくる素振り
はないようだった。
「…………」
 ちらと承諾する面々を見遣ると、凪はじっと陽の顔を見上げていた。
 相変わらず前髪に隠れて窺うのが難しい表情。
 どうしよう。やっぱりお節介に感じてしまっているのだろうか……?
 陽がその黙した視線に不安がぶり返し始めた、そんな時だった。
「……昼食を、買って来ないと」
 不意にガタリと椅子を引いて、財布を片手に凪が立ち上がった。
 ふわっと靡き、立ち去ろうとする動きに合わせて空を切るミドルショートの髪先。
 陽は、そして翔達や途中からやり取りを見守っていたクラスメート達は、その反応を見て
総じて「駄目だったか」と思ったのだが、
「……先に食べてて。後で追いつく」
 去り際に彼女が肩越しに陽へそう言い残した事で、その予想はいい意味で裏切られる事と
なった。
「う、うんっ。待ってるね」
 一瞬、思わずポカンとしてしまう陽達。
 だが誘いが功を奏したと分かるや否や陽はふっと笑顔を浮かべると、一人静かに購買へと
向かっていく彼女の背中に向かって小さく手を振っていた。

『…………』
 それから数分の後。
 陽達いつものメンバーの昼食の席に、凪が新たに加わっていた。
 驚きや緊張、様子見、或いは好奇心の類。
 翔達、そして他のクラスメートの面々はそれぞれにこのいつもとは違った光景にちらちら
と眼差しを遣っては何処か漫ろになっていた。その所為なのか、教室全体の空気も何処か妙
に緊張したような、少なくない戸惑いを含んだものへと変わっている。
「水上ってお昼はいつも購買で済ませてるの? それだけじゃ足りなくない?」
「……大丈夫。ボクは食が細いから」
「う~ん。だとしてもちゃんと食べないと身体に悪いと思うんだけどなぁ……。せめてお弁
当にすれば量は少なくても色々と摂れるんじゃない?」
「……料理はあんまり」
「あ、いや、別に水上じゃなくてもいいじゃない。親御さんに頼むとかさ」
「……お母さんに負担を掛けたくないから」
「? 水上ん家って共働きなの?」
「ううん……。お母さんは主婦。だけど、時々お父さんの仕事を手伝ってる。事務とか」
「手伝う? それって……」
「……つまり自営業。お父さんは古物商をやっているから。主に美術品や工芸品。小さいけ
れど店も持ってる」
「へぇ~、そうなんだ。アンティークショップかぁ」
「……そんな大層なものじゃない。昔ながらの骨董屋……」
 しかしそんな面々の眼差しが向けられた当人──凪と陽はというと、席を隣同士にして雑
談を交えての昼食を続けていた。
 ただ実質には陽が話を振り、それに凪が訥々と答えるという形。
 穏やかに微笑んでいる陽を時折横目で見遣りながら、凪は何処か緊張したようにいつもよ
りも表情を若干硬くしていた。ちまちまとミニサイズのBLTサンドを齧っては、その咀嚼
を助けるように紙パックのコーヒー牛乳を啜っている。
(ちょ、ちょっと……。何気に水上さん、陽の隣……)
(隣なら憲人だってそうじゃんよ。にしても珍しい光景だわな)
(だよねぇ。……こりゃあもしかすると。ふふっ、これは面白くなってきたわね♪)
(骨董屋さんかぁ。お店って何処なんだろう……?)
(……)
 同じく翔達も、そんな二人をちらちらと見遣りながら小声でやり取りを交わしていた。
 ある者は不意に湧いてきた対抗心にも似た感情を、またある者は物珍しげに、そして面々
の内の一人──憲人だけはじっと黙り込んだまま陽と凪に注意を払うように。
 五者五様の反応が、ぐるりと囲んで互いにくっ付けたテーブルの上を交錯する。
「そっか。じゃあ水上ん家は実質共働きなんだね」
「うん……」
 ぱくりと焼き魚の切り身を一口。
 陽が微笑むと、凪は小さくコクと頷いていた。
「……真崎は」
「うん?」
「真崎の家は、宿だと聞いた」
「そうだよ。母さんが民宿をやってるんだ。そんな大きい宿でもないんだけどね。だけど、
そのおかげでお弁当のおかずには困らないかな。今日のだって、今朝お客さんに出したご飯
の材料を使い回してあるから」
「……」
 言いながら美味しそうに弁当を頬張る陽を、凪は横目で静かに見つめていた。
 数拍の間。彼女はその視線を固定した後、
「……真崎は、料理はできた方がいいと思う?」
 若干、何処か視線を落とすようにして言う。
「そりゃあできないよりはいいとは思うけど……? まぁ、僕もあまりできないけどさ」
「…………そう」
 陽が一抹の怪訝と共に答えると、凪の表情はより曇り気味になったように思えた。
 ストローに口をつけてコーヒー牛乳を静かに啜る彼女を、陽は何なのだろうと思いながら
見つめて自身もまたお茶で喉を潤す。そこで一旦、ふっと会話が途絶えた。
「うーん……。だったらこの機会に習ってみればいいんじゃない? ね、翼、藍川?」
「えっ?」「ふぇっ!?」
 そしてその隙間を縫い直すように、水筒のコップから口を離した陽が放った言葉に今度は
翼と藍川がビクリと反応した。
「ほら、二人ともお昼は自分で作ってるじゃない?」
「う、うん。それはそうだけど……」
「だからさ、暇があれば水上に教えて上げてくれないかなって」
 急に話を振ってきた所為もあるのだろう。小さく頷きつつも、二人は思わず言葉を詰まら
せていた。ちらと翔や憲人が陽を、凪を見遣る。いつものように穏やかな表情(かお)をし
ている陽とその横顔を一瞥し、何事かを考えているのか黙っている凪。
 ──ちょっとでも、水上が皆と接点を持ってくれれば……ね?
 にこりと。ふっと仲間達の反応に苦笑する陽はまるでそう語ってかのいるように思えた。
「う、うん……分かった。いいよ、私達でよければ」
「まぁ……別に断る理由なんてないけどさ。でも私の料理の腕って言ってもそんなに自慢で
きるもんじゃないわよ? というか、腕前だけならおばさんの方が遥かに上じゃない。何せ
ある意味今でも現役のプロなわけだし」
「それはそうかもしれないけどね。でも、母さんは普段宿の切り盛りで忙しいから……」
 そんな陽の意図を、アイコンタクトを汲んで、二人は互いに顔を見合わると少々ぎこちな
さを残しながらも快諾する事にした。
 談笑をしているのは、ただ自分達よりも面識があるからというだけではない。
 陽は、独りな凪を何とか皆の輪の中に入れてあげようとしているのだ──。
「……そういえばさ、真崎。宿で思い出したんだけど、あの件は結局どうなったの?」
「? あの件……?」
「ほらぁ、この前の休みに宿のお客さん──確か妃翠さんって言ったっけ? あのお姉さん
と一緒に変な奴らに襲われたでしょ? あたしらはあの後放置されたまんまだったしさぁ。
まぁ、こうして此処にいるって事は無事に済んだんだろうけど」
 だがそんなやり取りも、紗江のふと思い出したように発した一言で思わぬ方向へと舵を切
り始めようとする。
「あ、それは私も気になってた。ねぇ真崎君、あれって一体何だったの?」
「えっ……。あ、うん、それは……」
 表面上は穏やかな苦笑で覆い隠しつつも、陽は内心焦っていた。
「……あの騒ぎは、真崎だったの?」
「まぁ……そうなるのかな。って、水上も知ってたんだ?」
「うん。新聞で読んだから」
「そ、そっか……」
 加えて凪もこの話題に関心を示したのか、若干睨むようなぐらいの凝視の眼差しでこちら
を向いて訊ねてくる。どうやら先日のハンター達との一件は、自分が思っていた以上の騒ぎ
となっていたらしかった。
(うーん。さて、どうやって誤魔化そうか……?)
 とはいえ、まさか本当の所を話してしまう訳にはいかなかった。
 陽自身は誓約者(リンカー)である事に負い目などを感じてはいなかったが、現実はそう
ではない。憲人からの忠告も然ることながら、現にハンターというこの身で遭遇・対峙した
“敵意”の存在もある。迂闊に話してしまえばデメリットを被るのは何も自分だけでは済ま
ない事くらいは、漠然とながらでもイメージできた。
 こちらの返答を待つ紗江や都、凪の眼差しと動揺を装う平静の裏に隠しつつ事態を見守る
翔や翼、憲人の表情。大まかに二種類に分かれた反応と視線がざっと陽に向いている。
 それっぽい話を織り交ぜて何とかやり過ごそうか……。
 そう陽が若干の緊張を感じながら思い立とうとしていた、その時だった。
「……むしろこちらが何だったのかと聞きたいぐらいなんだがな」
「そうそう。俺らも陽から話は聞いてるんだけどさ。結局、犯人連中とは面識なんてなかっ
たんだろ?」
「う、うん。そうだね……」
 フッと会話の間に入り込むように憲人がそっと口を開いた。
 続けて翔も合いの手を入れるようにそう言い、視線を遣った陽に一瞬片目を瞑ってアイコ
ンタクトをしてくれる。
「そっかぁ。じゃあ通り魔か何かだったのかな?」
「なのかな? 星峰も物騒になったものだよね……」
「……」
 これは間違いなく彼らからのフォロー。正直言って陽は助かったと思った。
 内心でホッと胸を撫で下ろす。紗江も都も、そして押し黙っていた凪も一応は納得してく
れているように見える。ちらりと翼が僅かに苦笑を漏らしてこちらを見遣っていた。陽はこ
の友らに眼で礼を返すと、彼女達の呟きにコクコクと相槌を打つ。
「まぁいいじゃんか。陽も無事だったんだしよ。……ところで水上」
「……?」
「お前って一年の頃から陽と委員仲間なんだよな。教えてくれよ、委員やってる時の陽って
どんな感じなんだ? つーか前に一緒に書庫整理にも出てたよな?」
「あ、それなら私も知りたいな~。ねぇねぇそこん所どうなの、凪っち?」
「どうって、別に……」
 どうなる事かと思ったが結果としてはこれで良かったのかもしれない。
 例の一件の話題の後、気付けば凪は面々と色々と雑談を始めていた。
 話し掛けているのは主に翔と紗江、社交的な正確な二人だった。凪が以前より孤立しがち
だった事を気に掛けていたのは何も自分だけではなかったのかもしれない。これを切欠にと
ばかりにぐいと彼女を皆の輪の中に引っ張ってゆくかのような二人を見遣りながら、陽はそ
うぼんやりと思いながら思わずにこやかに頬を緩ませていた。
(これで良かった、のかな……うん)
 心持ち緊張、戸惑いながらもごもごと受け答えをする凪の横顔を見ながら脳裏に蘇るのは
もっと自分達が幼い頃、まだ憲人と出会って間もない頃の自分達の姿だった。
 独特の雰囲気で周りから浮いていた憲人。そんな彼に、陽は翔と一緒になって関わり合お
うとした。寂しく佇む彼を放っておけなかった。……尤も当時の件に関してはむしろ翔が事
を先導し、陽自身はそれに付き従っていたとも言えなくも無かったのだが。
 そして気付けば彼は皆の輪の中にいた。
 皆に“和尚”の愛称で呼ばれ頼られる存在になっていた。
 何よりも以後、今までずっと自分達と何かと行動を共にする親友になっていた。
(やっぱり……哀しんでいる顔より、笑っている方がいいよね)
 相手にとってはありがた迷惑かもしれないけれど、きっと皆が笑って暮らせる方が自分も
皆も幸せだと思うから。
 何とか皆に馴染み始めた凪を見て、陽はフッと優しい微笑みを浮かべる。
「…………」
 かつてその願いに救われたと語った憲人(とも)が、自分の横顔を静かに凝視している事
に気付くこともなく。

 ──星峰の街は茜色に染まり始めていた。
 街の中心部と接続する駅前は帰路に就こうとする人々で込み合い始めていた。夕焼けの空
には点々と鳥の影が黒く映り、辺りの光景を何処か物寂しく変えているようにも思える。
(……ふぅ)
 そんな往来の中に、美月は肩に鞄を引っ掛けつつ降り立っていた。
 今日の予定の講義は全て済んだ。バイトも今日はシフトが入っていない。あとは家に帰り
明日に備えて暫しの休息を取るだけである。
 しかし美月は、すぐには帰宅しようという気にはなれなかった。
 その理由はただ一つ──我が家に妃翠が、紋女(ルーメル)が居るという点に尽きる。
 分かってはいる。彼女に反発を向けた所で何も変わらない事くらい、父が帰ってくる訳で
もない事くらい。
 それでも……赦せないという感情が自分を駆り立ててしまう。
 生まれる前の話である弟はともかくとしても、母のあの寛容に過ぎる姿には何処かチクチ
クと胸が痛む心地がしてならない。父を喪って誰よりも哀しんでいるのは間違いなく母自身
である筈なのに。
 加えて、先日弟が妃翠(かのじょ)の誓約者(リンカー)になってしまった。
 ハンター連中からの襲撃に対抗したという事情はあったにせよ、正直驚きと憤りを隠せな
かった。……リンカーになった事に、ではない。不甲斐なかったのだろう。また大切な家族
が危険に曝されたというのに、自分は今回もまた何もしてやれなかったのだから……。
「……」
 静かに嘆くようなため息を一つ。
 美月は少なからぬ陰鬱を抱えて再び夕焼けの空を仰いだ。
 不器用だという自覚はある。紋女(ルーメル)に対する態度も、少々人の良すぎる母や弟
への態度にしろ。だからといって後戻りはできない。それは今まで律してきた時間を無駄に
してしまう事だから。
 二人がのんびりと半ば“諦めている”分、自分が頑張らなければ……。
(帰ろう……)
 そして鞄の紐をきゅっと握り直し、往来の中へと一歩を踏み出そうとしたのだが。
「やっほ~彼~女っ」
「ねぇねぇ、今暇? 俺達と遊ばない?」
 不意に往来の中から数名の男達が近付いてきたかと思うと、美月を取り囲むようにしてそ
う軽々しく声を掛けてきたのだった。
「……急いでるから」
 このナンパ野郎どもが。
 美月は生理的にムッとしながらも、ぶっきらぼうにそれだけを答えると足早に男達の間を
通り抜けようと試みる。
「え~、いいじゃんよ~」
「そうそう。夜はこれからなんだぜ?」
 だが男達はそれで易々とは引き下がってくれなかった。
 おそらくは迷惑になっているという自覚も無いのだろう。美月の露骨な不機嫌顔に対して
も、浮かべるその表情は一様に下心の垣間見えるヘラヘラとしたものだった。
(全く。チャラ男どもが……)
 気付けば、密着せんとでもするかのように男達は美月を取り囲み間合いを詰めようとして
いた。不愉快だった。ただでさえここ暫くは自分でも分かる程に虫の居所が悪いのに……。
 ぎゅっと、美月は半ば無意識にポケットの中に入れていた右拳が握り締める。
 幼い頃から武道を嗜んできたのは何も、こんな三下を相手にする為ではないのだが。
 不本意ではあるが、仕方がない。軽く追い払ってしまおう……。
 そう美月が、周りを取り囲む男達との間合いや位置関係を流し目で確認しながら思い始め
ていた、ちょうどそんな時だった。
「……おい」
「んあ? 何だよ、邪魔すん──」
 背後からの一瞬の呼び掛け。
 邪魔が入ったと、男の一人がちらりと苛立ちを覗かせて振り向こうとした次の瞬間、この
男の姿が突然、悲鳴にしては短すぎるくぐもった声と共に面々の視界から消えた。
 いや……消えたのではない。目にも留まらぬ速さで地面に叩き付けられていたのだ。
 だが美月も他の男達も、この男がアスファルトの地面にヒビを入れて突っ伏している姿を
目の当たりにするまではそうだと理解する事すらできなかったのである。
「あ、やば……。加減ミスったかな」
 白目を剥いて完全に気絶している男の顔面をがっしりと掌に捉えたまま。
 突如彼を叩き付けたこの張本人は、実に軽い感じでそう小さく呟いていた。
 そっと手を離すと、僅かに男はピクピクと痙攣しているのが見えた。どうやら即死だけは
免れたらしい。それでもその衝撃の大きさは傍目からも明らかであり、美月も他の男達もた
だ唖然として足元の犠牲者を見遣るだけしかできない。
「……」
「ひぃっ!?」
「に、逃げろぉ!」
 そして双方の視線がぶつかり、この張本人が軽く睨みを効かせてくると、他の男達は一様
に顔面蒼白となり倒れ伏したこの仲間を見捨てたまま散り散りになって逃げ去っていった。
 ぽつんとその場に残される美月。もう一度、完全に昏倒した犠牲者を見下ろしてみる。
「ふぅ……。やれやれ、何処に行ってもこういう輩はいるもんだね」
 そっと倒れた男の前から立ち上がり、そうこの張本人は呟いていた。
 美月は半ば無意識にその彼──いや彼女の方へと目を遣る。
 一瞬の一撃ですぐには気付けなかったが、目の前にいるのは一人の女性だった。
 大雑把に後ろで結んだ淡い金髪、着古した感じの革のロングコート。引き締まった両脚と
腰には、何故か頑丈そうな革ベルトが複数枚巻かれているのが見て取れる。
 年格好は自分よりも数歳程度上といった所か。背丈も女性にしては高めであり、端整な顔
立ちも相まって可憐というよりは凛々しい、或いは格好いいという表現が良く似合う女性だ
なと美月は思った。
「…………」
 しかし同時に、美月は背筋に嫌な予感を、冷や汗が流れるのを感じていた。
 そもそも片腕一本で男一人をアスファルトにめり込ませる事のできる人間など、存在する
とは思えない。言葉尻からどうやら力加減はしたらしいが、それでもあの瞬間の膂力は相当
なものであった事は間違いないだろう。
 人間ではあり得ないパワー。だが、自分はそれを可能にする存在を知っている──。
(ここに居ちゃ、マズイ……)
 そう思うと、美月は本能的にゆっくりとその場から後退りを始めていた。
 周囲の往来もこの突然起きた騒ぎに気付いたようで、徐々にざわめきを大きくしている。
「……おい。そこのあんた」
 だが、その逃走の試みは呆気なく失敗に終わったようだった。
 ロングコートをはためかせ、金髪の女性はちらと距離を取ろうとしていた美月の方を見遣
ってくる。美月もまたぎこちない表情で固まったまま、彼女を見返す。
「何してんだい? この街の人間は他人(ひと)に助けられても礼の一つも言わないのが流
儀だったりするのかい?」
「うぅ。あ、いえ……」
「まぁいいんだけどね。あたしも助けたのは気まぐれだったんだし」
 その気まぐれで大の男一人が白目を剥いて昏倒していては迷惑この上ないのだが……。
 何と返事を返していいものか言葉に窮し美月がぎこちない苦笑いを浮かべていると、この
女性は自分を見遣ってくる周りのざわつきなど意にも介さず、そのままテクテクとこちらに
向かって歩み寄って来た。
「そんなに緊張しなくていいって。何も捕って食おうって訳じゃないんだ。ちょいと聞きた
い事があってさ」
「聞きたい事……ですか」
 あくまで竹を割ったようにさっぱりとして、金髪の彼女は言う。
 流石にこのまま逃げ出してしまう訳にもいかず、美月はひしひしと身を撃つ嫌な予感に陰
鬱な気分を覚えながらもその用件に応えようとする。
「あぁ。人を探してるんだ。この街にいる筈なんだけど。年格好はあたしくらい……いや、
見た目ほわほわしてるからもっと下に見られてるかもしれないな。背丈はあんたと同じ位か
少し低めって所。髪は腰まで伸びた亜麻色、あと薄緑のローブをお気に入りで着てたっけ。
名前は妃翠って言うんだけど……って、どうした?」
「……」
 色々と、予感が的中してしまっていた。
 つらつらと尋ね人の特徴を話す彼女の言葉に比例するように、美月の表情はどんどん曇天
のように重く曇ったようなものになる。
 どうやら間違いない。多分、この女性(ひと)も──。
「……知ってますよ。というか、現在進行中で家に居候してます……」
 ここで適当に誤魔化して逃げる事もできたのかもしれないが、美月自身の根っこの真面目
さがそうはさせなかった。そもそもこの場を凌いでも、いずれ彼女が家を突き止めてしまえ
ば同じ事でもある。
「本当か!? 良かったあ、幸先いいねぇ。探す手間が省けたよ」
「そうですか……」
 金髪の彼女は凛々しさの中に何処か純粋な嬉々を見せて笑う。
 だが対する美月の方はというと、つい~っと視線を逸らして深いため息を一つ。
 貧乏くじ。そんな言葉が脳裏に過ぎる。
 どうにも陽が妃翠(かのじょ)を連れて来てからというもの、自分の周りでは厄介事ばか
りが起きているような気がするのだが……。
「…………まぁ、彼女に用があるなら一緒にどうぞ。私もこれから家に帰る所ですから」
 もう一度深く嘆くようにため息をついてから。
 美月は心底気の進まない様子で彼女に振り向きつつ、そう告げる。

「ただいま~……」
 既に学校から帰宅していた陽は、台所で牛乳を取り出している最中に玄関から聞き慣れた
姉の声を耳にしていた。
「あ、姉さんおかえり~」
 うん? 何だか声色が重苦しいような……?
 陽は一瞬そう感じ取ったが、冷蔵庫から取り出した牛乳パックは一旦テーブルの上へ。足
はそのまま玄関への出迎えに向かっていた。
「うん……。ただいま」
「ん? 姉さんって事は、あんたの弟か?」
「えぇ。弟の陽です」
「……??」
 だがこの日ばかりは陽も一抹の驚きを隠せなかった。
 外向けの服装の姉に加え、玄関先に立っていたのは見知らぬ金髪の女性。口調もさばさば
としていて綺麗と言うよりは格好いいという表現が似合う女性だった。
「あの、姉さん。この人は一体……?」
「うん……。まぁ色々あってね……」
 陽は当然のようにその見知らぬ女性について尋ねたが、美月の反応は鈍い。その間もこの
金髪の女性は玄関先から見える室内をちらちらと見渡している。
 一体何があったというのだろう? 
 陽がじれったく思い改めて問い掛けようとした、その時だった。
「──ヨウちゃん?」
 ふと背後から聞こえた妃翠の声。
 陽達が視線を向けると、ちょうど通り掛かったのだろうか、彼女がこちらを覗き込んでい
る姿が見て取れた。驚きの……いや、じわりと喜色が混じり始めた表情(かお)。
「わぁっ、ヨウちゃんだ~!」
 そしてその喜色が満開になった瞬間、妃翠はいきなりバッと飛び出して来た。
 廊下を駆けてそのまま身を投げるように床を蹴ると、陽と美月の間を抜けてこの金髪の女
性の胸へと目掛けてダイブする。
「やっほ。久しぶりだな、スイ」
「本当に久しぶりだよ~……。でもいきなりどうしたの?」
「ま、色々あってね。お前が星峰(こっち)にいるって聞いたから顔を見に来たんだよ」
 陽と美月は思わず呆気に取られていたが、当の金髪の彼女は慣れた様子で妃翠のダイブを
軽々と受け止めていた。一度ぎゅっと互いに抱擁を交わしてから、二人は傍から見ても親し
げに言葉を交わし始める。
「あの……妃翠? その人は一体……?」
「えっ? あぁ、そうね。ヨウちゃん」
「そうだな。一応自己紹介をしておいた方がいいか……」
 だがこのまま放置しておく訳にもいかない。
 二人のそんな仲睦まじい様子にたじろぎつつも、陽はおずおずとそう尋ねてみる。
 すると妃翠、そしてこの金髪の女性は一度お互いの顔を見合わせてから言ったのだった。
「あたしは耀金(ヨウキン)」
「私の、昔からのとっても大切なお友達よ♪」


「──はい。どうぞ~」
「あ、どうも……」
 耀金の前にお茶が入った湯呑みが置かれる。
 マイペースに微笑んでいる珠乃。そんな彼女が湯飲みを置いてそっと身を引くその横顔を
耀金は何故か一抹の怪訝を以って見遣っている。
 立ち話も何だからと、陽はこの金髪の客人・耀金を客間へと通していた。
 畳敷きの和室に胡坐を掻いて座る彼女とその隣に寄り添う妃翠。その向かいには陽が相対
しており、そんな面々を捉えるように美月が斜めの席に陣取っている。
「ふふ。でもびっくりしたわ。誰が来たのかと思えば、妃翠ちゃんのお友達だなんて」
「……宿の方は大丈夫なの、母さん?」
「ええ。お客さんが何か呼び出しをしてくれば席を外さないといけないけどね」
 緊張と、或いは様子見の眼差し。
 彼女にどう接するべきか。まだ距離を取りあぐねている陽と美月の間に静かに収まるよう
に、そっと珠乃は空になったお盆を片手に陽の隣に座る。
 宿の女将としての和服姿の母。こんな時でもほっこりのんびりとしている彼女に、美月は
そう言葉を振ってみせるが、彼女はこのまま席に加わるつもりのようだった。彼女からは、
妃翠を訪ねてきたという耀金(かのじょ)に嬉々と興味の眼差しが向けられている。
(…………。妃翠の親友、か……)
 そして陽もまた、ぼんやりと向かいに座るルーメルの二人を見遣っていた。
 途中で様子を見に来た珠乃も加え、大体の事情は話して貰っていた。ちょうど駅前で帰路
に就こうとしていた美月に我が家──正確には妃翠の居所を訊ねたのだそうだ。
 ルーメル嫌いの筈の姉が、よくまぁ正直に家に案内したなものだなと思う。
 いや……たとえ感情がそうでも、訊ねる声に嘘を返さなかった根っこの真面目さは姉らし
いと言えばらしいのかもしれないが。
「それでね、それでね? 陽君が私の誓約者(リンカー)になってくれたの」
 一方で耀金の隣に座る妃翠は、自分が星峰に来てから今まで経緯を話して聞かせていた。
 ただそれは報告というよりは久々に再会した親友との語らいに近いようにも見える。
「……そっか。色々大変だったみたいだね」
 時折、静かに茶を啜りながら。
 それでも対する耀金の表情はお世辞にも嬉々としたものとは言えなかった。僅かにだが眉
間に皺を寄せつつ、何かをじっと考え込むように。彼女はじっと、にこにこと微笑みながら
語るこの目の前の親友(とも)の言葉に耳を傾けている。
「まぁ、無事そうでよかったよ。ハンターどもから狙われてるって聞いたから飛んで来たん
だが……どうやらあたしの出る幕はなかったみたいだね」
 コトンと静かに湯飲みを置く音。
 一通り妃翠の話を聞いた後、耀金は小さくそう息をつくとついっと視線を動かした。
 そしてその眼差しは自分達を見遣っている真崎家の面々──いや、陽へと向けられる。
「……それにしても。少年、あんたがスイの誓約者(リンカー)だとはね。ふぅむ……何と
いうか、いまいちパッとしない面にしか見えないんだけどなあ」
 ──グサッ。
 すると不意に躊躇なさげに胸に槍が飛んできた。
 陽は思わず耀金のその一言に、ダメージを受けたかのようにぐらつく。
 それは……地味に自分でも気にしている所なんですが。
「ま、それは我が弟ながら認めざるを得ないですよねぇ……。ぶっちゃけ漢らしく無いって
いうか、なよなよしてるんですよね。折に触れて鍛えてやってはいるんですけど」
 ──グサッ、ザクッ、ドスッ。
 そうしていると、今度は美月が追い討ちを掛けるように小さく相槌を打って言う。
 それは何だか、まるで止めを刺されたかのようで……。
「ふぐぅ……」
 陽はふらふらと身体を揺らすと、若干涙目になってぐったりとその場で頭を垂れていた。
「ま、まぁ陽君……そんなに落ち込まないで、ね? 私を助けてくれた時は頼りになったん
だもの……。あの時、陽君はハンター達に──」
「うわわわっ!?」
 そんな陽に、妃翠は慰めてくれるように苦笑混じりに微笑みかけてくれていた。
 だが次の瞬間ふと思い返すように口を開き出す彼女に、陽は反射的にバッと顔を上げると
慌てふためくようにテーブルに身を乗り出してその言葉を止めようとする。
「……陽君?」
「ま、まぁいいじゃない。もう終わった事だよ。妃翠がこうして無事なんだからそれでさ」
「? ええ……」
 妃翠本人は自分の事のように喜んでくれているのかもしれない。
 しかしあの時、自分が感情に身を任せてしまったからこそ一度死にそうな目に遭ったとも
言える。今思い返せばあまり賞賛できるような行動ではなかったのではないか? 陽自身は
内心そんな、気恥ずかしさを伴うような少なからぬ後悔の念を抱いていたのだった。
「ふーん……? ま、スイの選んだ相手だ。何かしら持っているものがあるんだろうが」
「ふふっ。そうなのかもしれないわね。……ねぇヨウちゃん。どうせならヨウちゃんも陽君
と誓約(リンク)しちゃう?」
『えっ?』「…………」
 すると妃翠は、今度は気持ち引き気味の耀金に満面の微笑みでそんな提案をしていた。
 当の陽を始めとして、計ったように面々の驚きの声が重なる。
「で、でも、そもそも誓約者(リンカー)って掛け持ちできるものなの?」
「ええ。基本的に人数の制限みたいなものはないわよ? ある程度縁が出来ていて、お互い
に認め合えばそれで充分。ただ、エーテルを分け与える相手が増えるわけだからその分負担
は大きくなっちゃうんだけどね」
「ふ~ん……。そうなんだ」
「そうなんだって……陽あんた、現在進行中で勉強中でしょうに」
「そうだけど……。國定先生、そこまで話してたっけかなぁ?」
「ふふ。そういう訳だからヨウちゃんが加わっても大丈夫よ。ね、どうかなヨウちゃん?」
「……いや、遠慮しとくよ。あたしは別に他人のツレに割って入る趣味は無いんでね」
 だが、対する耀金だけはひどく冷静だった。
 彼女は少しだけ眉根を上げ、微笑む友を見遣ってみせると、そうぶっきらぼうに答える。
「でも、来れるのが早くて良かったよ。今なら……まだ十分に間に合う筈だ」
「??」「何を、言ってるの……?」
「…………。スイ、少年。お前らの誓約(リンク)を解け」
 そして、次の瞬間にその一言を放った彼女の表情には、つい先程まで友に見せていた穏や
かさは最早残っていなかったのである。
「と、解け言われても……。僕はどうすればいいのか分からないし……」
「ヨウちゃん、どうして……?」
 陽と妃翠は互いの顔を見合わせる事もできず、ただ驚きの眼差しで相対する真剣な面持ち
の耀金を見返すしかなかった。
 急にやって来た緊迫と若干のざわつき。珠乃は口元に手を当てて静かに目を瞬かせ、美月
も眉間に皺を寄せると、じっとその意図を測るかのように彼女の横顔を凝視する。
「……あたしが今まで何の目的も無しにあちこち行ってたと思うかい? スイだって少なか
らずそうじゃないのか? あの日からずっと……紋女(あたしたち)と人間がお互いをどう
見ているのか、どう思っているのか……そういった諸々の事をこの眼で確かめる為だよ」
 耀金の面持ちは変わらなかった。
 戸惑う面々──いや、妃翠(とも)の顔をじっと真剣に見つめながら彼女は語る。
「……お前のリンカーや女将は迎え入れてくれているかもしれない。だけどそれは所詮“特
異ケース”でしかないんだ。薄々分かってるとは思うけどね。現実問題、この国──世の中
にはあたし達を敵視する連中は少なくない。お前だって、今回ハンターに目をつけられた事
も初めてって訳じゃないんだろう?」
「うん。でも……」
「あたしだって無理強いはしたくはないさ。だけど分かってくれ。このまま親友(ダチ)を
人間の屯する場所に捨て置くなんて真似、したくないんだよ……」
 それは大切な友を心配する一心の言葉であった。
 そして同時にそこには彼女の、人間に対する一抹の不信感も同居しているように思える。
「スイ、あたしと一緒に来ないか? 星峰(ここ)じゃなくっても、安全な場所は幾つか見
繕ってるんだ。ハンター連中の手も及んでいない同胞達の隠れ里がこの国には点在してる。
今のあたしなら、お前一人分の空きくらいなら用意してやれる」
「──ッ!?」
 その言葉に、妃翠は泣き出しそうにくしゃっとしかめた顔を上げた。
 動揺を隠せないようにして、陽ら真崎家の面々に向けられる視線。その揺れ動く迷いを思
うと、陽はそれが自分の事であるかのように胸の奥がチクリと痛くなる。
「……いいんじゃない?」
 しんと降り始めた暫しの沈黙。
 それを破ったのは、重みのある声色でそう一言口を開いた美月だった。
「姉、さん……?」
「……勘違いしないでよ? 別に妃翠さんが出て行くなら何でもいいなんて思ってないんだ
からね? 耀金さんが言うように本当に紋女(ルーメル)にとって安全な場所があるなら、
そこに移る事自体は別におかしい選択肢じゃないでしょって話よ。陽だって、妃翠さんには
安心して暮らして欲しいでしょ?」
「それは、そうだけど……」
 陽は思わず口篭もっていた。
 確かに姉の言う事は間違ってはいない。妃翠の今後の安全を願うならば、耀金の提案は決
して無茶なものではない筈だ。
 なのに……どうしてだろう? 素直に受け入れられない自分がいる。
 見た事もないその隠れ里という場所が本当安全なのかと怪しんでいるから?
 結局それが、人間と紋女(ルーメル)をお互いに隔離するだけのものだから?
 それとも、僕は──。
「陽」
 そうして押し黙っていると、それまでじっと黙っていた珠乃が口を開く。
 静かだがよく通る声。陽や美月、そして妃翠らも無意識に反射的に彼女のその声色と静か
な微笑に目を遣っていた。
「あなたは、どうしたいの?」
「えっ……?」
 穏やかな声色と短い驚き。
 母は、ああしろこうしろとは言わなかった。
「あなたと妃翠ちゃんの事だもの。私達は二人の意思を尊重するわ」
 代わりにそれだけを言うと「ねっ?」と彼女は美月に微笑みかける。
 その振りに美月は一瞬逡巡を見せたが、不承不承ながらも結局はコクリと小さく頷き、母
のその方針に同意を示してくれる。
『……』
 沈黙と共に、スッと自然に陽と妃翠の視線が交わっていた。
 不思議と言葉は要らなかった。
 目を見れば分かるような気がして。繋がっているような……気がして。
「──ごめんなさい。ヨウちゃん」
 そして次の瞬間、妃翠は耀金に向き直ってそう返事を返していた。
「私はここに残るわ。だから隠れ里に空きがあるのなら、他の困っている子達の為に使って
あげて? 私の事なら大丈夫。陽君や……皆がいるから」
「…………。そっか」
 そんな友の返答と決心を込めた表情を見つめて数秒。
 耀金はくしゃっと自身の髪を掻きながら、深く一息をついて呟いていた。
 しかしそこには断れた事への怒りや不機嫌などを見出す事はできなかった。
 辛うじて垣間見えるのは、一抹の安堵のようなものが混じる苦笑。
「まぁ……そんな事だろうなとは思ってたよ。昔からそうだ。……スイはお人好し過ぎる」
 若干呆れを込めて言われ、妃翠は静かに苦笑を返す。だがもう場には先程までの張り詰め
た緊張感は薄れ、感じ取れなくなっていた。
 フッと陽達の中にやって来る安堵のような感覚。
 陽は小さく頷く妃翠と顔を見合わせ、同じく微笑んで頷き返してみせる。
「それに、誓約(リンク)ってのは当事者同士の合意と縁で出来てる。元より第三者のあた
しがどう難癖をつけようが、当の本人達にその気がなきゃどうにもできないしね」
 もう一度苦笑して、耀金はくいっと残っていた茶を飲み干した。
 そして真崎家の面々──いや友のリンカーである陽をちらりと見遣ると、
「……まぁ、それでももし気が変わったら言ってくれ。暫くは星峰(ここ)に留まるつもり
だからさ。同胞を迎え入れる準備は……いつでもできてるよ」
 おもむろにそう言い残しながら立ち上がり、コートを翻して踵を返す。
「ヨウちゃん……」
「あ、えっと。お帰りですか」
「ああ。あんまり長居しても迷惑だろう?」
「そ、そんな事は……」
 思わず声を掛ける妃翠と陽に、耀金は肩越しに顔を向けるとそう自嘲めいて言った。
 別に厄介者だなんて思ってないのに……。
 やはり彼女の厚意を断ったのは、不味かったのだろうか?
 一抹のばつの悪さ。陽が内心にそんな後悔の念を抱き始めていた、そんな時だった。
「……ねぇ、耀金ちゃん」
「はぃ?」
 ほんわりとした珠乃の声。
 妃翠以外にそんな呼ばれ方をされるのは慣れていないのか、耀金は思わず心持ち素っ頓狂
な声を出してしまっていた。
「帰るって、宿はもう決まってるのかしら?」
「……いえ。路銀が勿体無いですし、いつも通り野宿で済ますつもりですが」
「だったら家に居るといいわよ。ねっ?」
『えっ?』
 珠乃以外の四人の声が綺麗に重なった。
 驚きと若干の嬉々と。立ちぼうけな耀金を含めた面々の視線が一挙に珠乃へと注がれる。
「か、母さん。何でまたいきなり……」
「え~? だって妃翠ちゃんのお友達なんでしょ? このままおもてなしもしないで帰しち
ゃうなんて……」
「……そのお気遣いだけで充分です。先程も言いましたが、路銀もあまりありませんし」
「ふふっ。何言ってるの? 妃翠ちゃんのお友達なんですもの、宿代なんて取らないわよ。
ん~、でも今から部屋を用意するのはちょっと急ねぇ。妃翠ちゃんと同室でいいかしら?」
 耀金と、ついでに美月が辞退や抗議をちらつかせたが、既に彼女の頭の中では耀金を歓待
するプランが膨らみ始めているようだった。
「……ハァ。全く、こういう事ばっかりやってるから宿の収益があがらないんじゃ……」
「あ、ははは……」
 母のマイペースぶりは今に始まった事ではないものの、美月は思わずそう愚痴っぽく呟く
と大きくため息をついていた。
 陽はそんな姉を苦笑いで見遣ってから、ふと妃翠と耀金に視線を移す。
「……なぁ、スイ。女将は普段からあんな調子なのか?」
「そうねぇ……。確かにのんびり屋さんではあるかも。でもいい人でしょう?」
「お前が言うなっての。……まぁいいや。仕方ない、世話になるとしますか……」
「本当? やったぁ♪」
 最初は戸惑っていたものの、親友とこのまま再び別れずにいられるのが嬉しかったのか、
妃翠は優しい嬉々とした笑みを零していた。そんな彼女の様子もあってか、耀金もそれ以上
の言葉を引っ込めるのが見て取れる。
(……これで、いいんだよね?)
 一先ずの安堵と、眩しく見える妃翠(パートナー)の笑顔。
 そんな横顔を見つめながら、陽もまた静かに微笑を浮かべていたのだった。

「こっちだよ~。ヨウちゃん」
 それから一旦その場は解散となった。
 暮れてゆく時間、各々に日常に戻っていく真崎家。その中で妃翠は誓約(リンク)の一件
を機に設えて貰っていた自身の部屋に耀金を案内していた。
 中は数畳の小振りな和室だった。まだ整えられてからあまり日が経っていない事もあろう
のだろう。内装は皆無で、置かれているのも木製の丸テーブルに箪笥や収納棚などの最低限
なものだけの質素さ。それでも丁寧に掃除され、手入れされた室内は彼女の為にこの部屋を
用意した家人──珠乃達の温かみの感情を反映しているかのようにも見える。
「へぇ……。これがスイの部屋か」
「うん。陽君と誓約(リンク)した一件の後、珠乃さん達が物置だったこの部屋を綺麗に掃
除して使えるようにしてくれたの。私は別にそれまでの客間でもよかったんだけどね」
 コートのポケットに片手を突っ込んだまま、耀金はざっと室内を見渡していた。
 その横で、妃翠は照れたように苦笑を零しながら押入れを開けると、自分と彼女、二人分
の座布団を取り出す。
「……やっぱりあれか。お前は、此処に居るつもりなんだな」
 その言葉に耀金は若干遠慮気味にぽつりと呟いた。
 トスンと座布団が床に落ち着く音がした。継いでそっと妃翠の衣服が擦れる僅かな音が部
屋の中に響いて消える。
「……ヨウちゃんはやっぱり、私がこのまま残るのは……嫌?」
 微笑はそっと鳴りを潜め、妃翠は床の上に正座する格好のまま不安そうな表情でこの友を
見上げていた。
 心配してくれる気持ちは痛いほど分かっている。だけど、私も離れたくない──。
 そんな言葉を発するように静かに揺れる瞳を耀金は直視できないでいた。
 ちらと横目で捉えてこそはいても半身は捻られたまま、ただその場に立ってあさっての方
向を向き、押し黙っている。
「……。そんな事はないって言えば、嘘になるだろうな」
 やがてぱくぱくと僅かに動かした口元からやっと零れたのは、そんな表現だった。
 その曖昧な肯定に「そう……」と妃翠は言葉少なげに息を漏らす。
「やっぱりヨウちゃんは今もあの事を──」
「当然だろっ!!」
 だが次の瞬間、妃翠が口に仕掛けたその言葉の意味に、耀金は弾かれたように声を荒げて
いた。心持ち驚いたように目を丸くする妃翠の視線と、バッと身を返して見下ろしてきた耀
金のそれとが交差する。
 一瞬部屋の中の空気が振るえ、ややあって止んだ。
 流れた沈黙は何処がばつの悪い雰囲気を生んだ。じっと哀しむように何とか微笑を回復さ
せようとする妃翠の表情に冷静さを取り戻したのか、やがて耀金は眉間に皺を寄せた怒りの
気色をそっと引っ込めていった。
「……悪い。つい……」
「ううん……気にしないで。私だって、悔しい気持ちは同じだもの」
 ポリポリと頬を掻き、深くため息をついて改めてそっと呼吸を整える。
 本来は位置的に陽だまりが注ぐであろう部屋の窓。だがその陽も沈んでしまったこの時間
帯となってはその温もりを受ける事はできない。
 当たり前の事ではあったが、この時ばかりはそれが何処となく物寂しく思える。
「正直、驚いてたんだよ。お前がリンカーを作ったって聞いた時はさ」
「えっ?」
「……。今の共同体(コミューン)はあの頃の、あたし達の知ってるコミューンじゃない。
政府(れんちゅう)は肝心な事を今も必死に封殺したまま、実質今のコミューンを自分達の
傀儡組織に仕立て上げて、それでいてあたしらとの共存共栄を謳ってやがるんだ。……許せ
る訳がないだろ?」
「……ええ」
 同意を求めるようにそう力を込めて語る耀金。
 妃翠も形の上では首肯を見せていたが、その表情はあまり宜しくはなかった。
 だが相対する友のそんな反応も、抱いているであろう心情も彼女にはある程度予想できて
いたらしく、
「だから驚いたんだ。お前が誓約(リンク)を──それもあの日の遺族の一人と交わした。
捉えようによっちゃ、それはお前が人間(むこう)を赦したって事にもなるんだ。……頭の
いいお前の事だ、分かってないなんて事は無い筈だぜ?」
 棘のある私情は押し込め、今度は別の角度からそう言葉を続けた。
「…………」
 妃翠は静かに心持ち俯き加減になり、押し黙っていた。
 だがそれは限りなく無言の肯定に近い。友の言葉が頭の中を、ひいては存在全ての中を弾
け渡るような感覚が巡ってゆく。
 そしてその沈黙から──どれだけ間をおいてからだっただろうか。
「……陽君達の事、知っていたのね」
 結局、妃翠は突かれた部分はいなすようにし、ただそれだけを哀しげな笑みで言った。
「ああ。ここに来る道すがらにな。案内してくれた少年の姉──確か美月といったか、彼女
があたしの事をルーメルか?って聞いてきてさ。それに答えてる時にそれとなく探りを入れ
てみたんだよ。亡くした女将本人もいたし無粋だとも思ったから、さっきの場で敢えてこっ
ちから話題に上げるような真似はしなかったが……」
「そうね。……ありがとう」
「気にすんな。礼を言われる事なんてねぇよ」
 そして再び、二人は暫し黙り込んだ。
 次の言葉がすぐに出て来なかった。
 相手(とも)が何を伝えたいのか? 分かるようで、分からないようで何処か怖くて。
「…………いいのかよ? はっきり言って茨の道だぞ? 今はまだいいかもしれない。だが
お前らみたいなのを“許せない”連中ってのは世の中にゴロゴロいる。“敵”同士がいがみ
合ってるど真ん中で平和主義やら公平中立やら──仲良しこよしなんてのを馬鹿正直にやっ
てみろ。結局どっちからも袋叩きに遭って潰されるのがオチだ」
 妃翠が俯き視線を外しているのを確認してから、やがて耀金は敢えてそう言い放った。
「あたし自身は別に叩く連中を擁護するつもりはないんだがな。だけど世の中、そう皆が皆
仲良しこよしって訳にはいかねぇんだよ。……ま、その片棒に乗っかってる一人が言った所
で説得力は無いんだろうけどさ」
「ヨウちゃん……」
 しかしその一見冷淡な声色も、次の瞬間にはフッと耀金自身が霞めてしまう。
 ゆっくりと顔を上げて、妃翠はそんな友の横顔を見た。
 頭では分かっている。だけど……もう赦せない。いや赦してはいけないという自分に追い
詰められているのだと思う。
 だって貴方は、私とは違ってあの日の仲間達の無念を背負っている筈だから……。
「…………」
 妃翠は暫くじっと彼女の横顔を見つめていた。
 しかしその眼差しは、自身の選択を批判された立腹などではない。むしろ敢えて表現する
ならばきっとそれは──。
「……ヨウちゃん」
 己を粉にしてでも深く相手に寄り添おうとする慈しみのそれ。
「ス、イ……?」
 耀金は少なからぬ驚きの眼でこの友に振り向き、見下ろす。
 正座の膝先をこちらに向け、居住いを正した妃翠。その瞳には優しい色が同居する。
「ヨウちゃんは“マザー”の言葉、覚えてるよね?」
「当然だ。忘れる訳、ないじゃないか……」
 ぽつりと確認するような一言。
 耀金はほんの一瞬だけ眉根を寄せたが、すぐにコクと頷いて答えた。
「……実はね。星太郎さん──あの日、犠牲者の一人になった珠乃さんのご主人がね、亡く
なる前に珠乃さん達に言い遺したそうなの。『彼女達を憎まないでくれ』って……」
 すると妃翠からその言葉を耳にした瞬間、耀金の様子が明らかに変わった。
 それまでなるべく私情を抑えようとしていたその表情に、はっきりと強烈な驚きの気色が
現れる。そんな驚愕に固まる友にもう一度フッと微笑み掛けて、妃翠は言った。
「びっくりしたでしょう? 私もよ。珠乃さんからこの話を聞いた時はね。……“マザー”
だけじゃなかった。人間(こっち)にもいたの。私達が共存する未来を信じて、模索しよう
と考えていた人が……」
「……あぁ」
「そんな遺言があったからなのかもしれないけど……。この家の人達は、本来仇である筈の
私を受け入れてくれたわ。人間だからとか、ルーメルだからとか、そういう区分けを持たず
にただ困っていた私を助けてくれた。陽君もそう。一度だけじゃなく二度までも──それも
自身が危ない目に遭ってまで守ろうとしてくれた。……嬉しかった。こんな私でも赦して貰
えたような気がして」
 ほうっと。そう呟く彼女の頬は僅かにだが赤くなっていた。
「……私は、守りたい。マザーと同じ志を伝えようとした彼の家族達を。陽君に助けて貰っ
た恩返しというのもあるけど、それと同じくらいにそうしたいの。それが……私がここに残
る理由なんだろうなって思う」
 感激か、或いはもっと別の感情か。
 薄く目を瞑り、妃翠はそっと自身の胸元に手を当てる。
「……今すぐになんて事は言わない。だけどヨウちゃんも、何時かは落ち着ける“場所”を
見つけて欲しいな。そうすればきっと何時かは皆、きっと……」
「…………」
 そう静かに言葉を紡ぎ、そっと目を開いた穏やかな苦笑。
 反応を何処かおっかなびっくりに窺っているかのように見える友を、耀金は暫しじっと何
とも言えぬ、不機嫌でも同意でもない複雑な表情で見つめていた。
「……やれやれ。分かったよ、もうお前の誓約(リンク)に文句はつけないさ」
「うっ。べ、別に私は文句なんて」
「言ってるようなもんだろ? ま、いいけどさ。元よりお前自身が決める事なんだ……」
 だが、やがて口を開いた耀金の表情はそれよりも気のせいか幾分砕けていた。
 ぷくっと膨れてみせる妃翠に、からかい染みた笑みさえ投げかけている。
(……そうだよな。あたしらルーメルにとって、誓約(リンク)は他人(ひと)に何か言わ
れてホイホイ解いちまう程、軽々しいものなんかじゃない)
 しかしその心の中は全く違う思考が支配していた。
 友の意思は固い。傷を抱いた者が故に結ばれた絆が、彼女達の間には出来上がっている。
 当事者同士の意思が揃わなければ誓約(リンク)は成立し得ない。だから──。
「妃翠、耀金さん?」
 ちょうど、そんな時だった。
 ふと部屋のドアをノックする音。次いで聞こえてきたのはちょっとばかり遠慮がちな声色
で呼び掛けて来る陽の声だった。
「あ、は~い。どうぞ」
 妃翠がほんわかとした様子で彼を促した。すると「失礼しま~す……」とそっとドアを開
けて陽が中に入ってくる。その両手には小振りなお盆が載せられていた。
「えっと、これお茶とお菓子です。さっきはドタバタしててろくな物が出せなかったので」
「んん? いいんだけどね。別にそんな事気にしなくても」
 視線を向けた耀金が飾り気なくそう言うと、陽は若干緊張気味に苦笑して言った。
 まだ彼女に慣れていないのだろうか。いや……もしかすると気の強い感じの女性という相
手自体が──姉という好例もあって──苦手なのかもしれない。
 耀金と妃翠は改めて丸テーブルの席に着き、陽に茶を淹れて貰った。
 陶器の急須から温かい湯気の出る茶が二人の湯のみに注がれ、目の前に置かれる。更にお
盆から小さな丸籠──和紙のような包装で包まれた煎餅や饅頭も一緒に出された。
「今、晩ご飯の準備をしている所ですからお腹の虫抑えにでもどうぞ。用意が済んだらまた
呼びに来ますので。……今夜はご馳走ですよ?」
「あん?」
 最後のワンフレーズの意味を、耀金は一瞬理解できなかった。
 給仕を済ませて立ち上がりながらそう微笑む陽に、彼女は半ば反射的に怪訝を見せる。
「ヨウちゃんの歓迎会ね。ふふっ、珠乃さんらしい」
「……別にそこまでして貰わなくてもいいんだがなぁ」
「いいじゃない。暫くはいるつもりなんでしょう? それに私も、最初にここへ来た時には
同じようにご馳走を振舞ってくれたもの」
「ふぅん……。何か悪い気がしなくもないんだが……」
「気にしないで下さい。母さんは料理──接待するのが好きですし、ある意味それが仕事で
もありますから」
 遠慮、というよりは戸惑いに近い反応を見せるものの、陽は穏やかだった。
 結局空になったお盆を小脇に抱えて「じゃあ後で」と彼は部屋を後にしていってしまう。
 再び室内は妃翠と耀金の二人っきりになった。
 ゆっくりと二人分のお茶の湯気が天井へと昇っていく。暫し彼の立ち去ったドアの方を見
遣ったままの友を見、くすりと小さく笑って妃翠は言った。
「……いい子でしょ?」
「……。かもな」
 やり取りは短かったが、それ以上の言葉は余分にも思えた。
 そっと湯飲みを握り、静かに淹れ立てのお茶を啜り出す妃翠。耀金もゆっくりと視線を丸
テーブル上の自分の湯のみに落とし直し、ぼうっと思う。
(こいつは、思ったより面倒な事になるかもしれないな……)
 友に悟られぬように大まかに掴んでみた、彼女の盟友(パートナー)たる者への感触。
 そして、そんな事は知らずにまったりとしているこの友の表情をちらりと一瞥して。
「…………」
 耀金は密かに眉根を寄せると、自分もまたくいと茶を口にし喉を潤し直す。

 案の定、その日の夕食は耀金の歓迎会となった。
 食卓の上に所狭しと並べられた珠乃の手料理の数々。それは妃翠が真崎家にやって来た時
と同じ──いや、それ以上かもしれない歓待の印でもあった。
 優しい微笑みと共に給仕もこなす珠乃。
 そんな母を二人の子供達──陽は穏やかに、美月は今回自分が連れてきたタネという事も
あり、渋々ながらも以前よりは心持ち寄り添い気味に見守っている。
 ニコニコと昔話に花を咲かせる妃翠。そんな友を時折気恥ずかしそうに抑えつつ、耀金も
また目の前の料理を突付く。
 賑やかな、和やかな一時だった。
 いつもは質素に、多くても母と姉と自分の三人だけだった食卓。
 気付けばこんなに明るくなった。そう思うと、陽の顔に思わず笑みが零れる。
(──……んぅ?)
 それから、すっかり夜は更けて。
 ふと陽が読んでいた本の活字から顔を上げると、机の上の目覚まし時計の針は今にも日付
を跨ごうとしている所だった。
「……もうこんな時間か」
 読みかけの頁に栞を挟んでパタンと本を閉じ、机上の小さな本棚にそっと納める。
 家の中は時間帯もあってしんと静けさを纏っていた。外はすっかり夜闇で差し込んでくる
ような光は既にない。ただ部屋の照明だけが静かに自分の周囲を照らしているだけだ。
(うーん。そろそろ寝ようかな……?)
 寝巻き代わりの軽装姿。のそっと椅子から立ち上がると、陽は一度ぐぐっと身体を伸ばし
て凝りを解した。血流が巡り直っていくような気がした。そしてその足でベッドに向かいな
がら部屋の照明を落とすと、布団の中に潜り込んで静かに目を閉じる。
(おやすみなさい……)
 明日もきっといい日でありますように……。
 漠然とだが、そんな事を頭の片隅で思いながら。
『…………』
 やがて──その眠りに迫る足音があった。
 気付かれぬようにそっと階段を上り、彼の眠り込んでいる自室のドアノブにその人影は静
かに手を掛ける。カチリと僅かな音だけを残して、そっとドアが開く。
(……真崎、陽)
 部屋の中へ廊下から差し込む照明の光。
 その逆光の中で、薄く半開きになったドアに身を隠すようにして耀金が立っていた。
 淡い金髪が光と闇のコントラストの中に溶け込むように。
 ぐっすりと眠りこけ、時折むにゃむにゃと寝返りを打つ陽の寝姿を彼女は黙したままじっ
と遠目に見下ろしている。
(できる事なら、こういう真似はしたくなかったんだけどな……)
 それはこの少年に……ではない。妃翠(とも)への申し訳なさだ。
 誓約(リンク)を結んでまだ間もないのなら、まだ充分に間に合うと考えていた。
 所詮は成り行き。軽く脅せば逃げ腰になって解くだろうと高を括っていたとも言える。
 だがこの少年は逃げなかった。スイも自分の提案を──尤もお人好しな彼女の事、全くの
予想外という訳ではなかったが──拒んだ。……加えて、自分が友の前で非情になり切れな
かった部分もあったのだろう。
 もっと強く迫るべきだったか? いや、おそらくはより頑なな反応になってしまっていた
かもしれない。自分が星峰に飛んで来るよりも早く、スイ達は縁を結んでいた。
 誓約(リンク)はただの需給関係ではない。パートナーという名の絆、縁なのだ。
 当事者同士の意思が揃わなければリンクは成立し得ない。だから──。
「……」
 暫し押し黙っていた耀金が、そっと腰の革ベルトに手を掛けた。
 そこには多数の金属棒が挿してあった。それはさながら機関銃の弾倉のようだった。彼女
はそこから一本、金属棒を抜き取るとぎゅっと掌に握り締めると、ぽつりと吐息のように小
さな声で呟く。
「──『錬装(トランズ)』」
 するとどうだろう。次の瞬間、彼女の掌から放電のような金色の奔流が迸った。
 更にバチバチと控えめに鳴る音と共に、握られていた金属棒が瞬く間にその形を──鋭利
な一本のナイフへと形を変えたのである。
 金色の奔流が止み、再び辺りはしんとなった。
 その間、僅か数刹那。その為か、陽はまだぐっすりと眠ったままだった。
 その様子を改めて確認してから、耀金はスッと静かに眉間に皺を寄せる。
 ──当事者同士の意思が揃わなければリンクは成立し得ない。
 だから第三者である自分がどれだけその解除を迫っても、当人達にその意思が無ければ意
味を成さない。解かせる事はできないのだ。
 ならば……どうするか? 残された可能性、方法はただ一つしかない。
 即ち、誓約者(リンカー)若しくはそのパートナーたる紋女(ルーメル)の死である。
(すまないな、少年。でも……君が悪いんだ)
 鈍く刃先を光らせる“錬装”されたナイフを握り締め、耀金はそっと一歩、また一歩と陽
の背後へと忍び寄っていった。
 このまま君という人間と一緒にいれば、スイは間違いなく茨の道を余儀なくされる。
 君達一家は『恨まない』と言う。だがそれは……特殊過ぎる。あの日の“遺族”である事
が更にその違和感を強くしているというのに。
 世界は──ヒトの感情はそんなにすぐには収まらない。きっと、禍根は残り続ける。
 自分はいい。だけどせめて友だけは、あの優し過ぎるあいつだけは……可能な限り穏やか
な日々を送って欲しいと思うから。
 自分勝手な願望なのは、あたし自身もよく分かっているつもりだ。
 こんな事を──ここでこの少年の命を奪う事を、スイは望まないだろう。もう二度と彼女
と顔を会わせる事もできなくなるだろうと思う。
 それでも、構わない。
 それでも……あたしは一抹の期待と共に手を下す。そして今夜中にも此処を出て行こう。
(スイ、目を覚ましてくれ……)
 紋女(あたしたち)と人間(やつら)は所詮違う生き物、敵同士なんだよ──。
「ヨウちゃ~ん、何処~?」 
「ッ!?」
 陽の首筋に振り下ろされようとしたナイフ。
 だがそれを握る手は、次の瞬間部屋の外から聞こえてきた妃翠の声で止まっていた。
 耀金は反射的に手を止め、外の気配を探った。同時にコートの中にナイフを隠し、再び金
色の奔流と共に元の金属棒に構成し直す。
「…………どうしたのさ?」
 妃翠は、階下の廊下を歩きながら自分の姿を探しているようだった。
 耀金は部屋の物陰からそんな彼女の様子を確認すると、物音一つ立てぬ身のこなしで軽く
飛び降り、さも今出てきたかのようにその背後に立つ。
「あ、いたいた~。あのね、珠乃さんがお風呂空いたから入っちゃって~って」
「風呂? それならもうシャワーで適当に済ませたが……」
「もうっ……そういう事じゃなくて。久しぶりに一緒に入ろうって言ってるの」
 すると妃翠はニコニコと微笑みながら振り返って言った。
 それに耀金がまだ硬さの残る表情で答えても、当の彼女はわざと甘えるようにむくれてみ
せ、両手に抱えた替えの服をくいっと示す。
「ヨウちゃんの分の服も持ってきたんだよ? 一緒に流し合いっこしようよ♪」
「え。いや、おい、ちょっと待──」
「ほらほら~。レッツゴー~!」
 流石にもうそんな歳じゃないだろうに。
 そんな事を訴えようとした照れ顔の耀金だったが、そうした言葉が出るよりも早く妃翠は
彼女を背中に回って押し始めていた。そのまま耀金は、楽しそうに笑う妃翠に(宿用の)浴
場へと連行されていく。
(参ったな……)
 背中を押され進まされながら、耀金は静かに苦笑していた。
 だがその表情も数秒。次の瞬間にはスッと真剣な気色になり、背後の友に気付かれぬよう
にちらとその視線が閉じられた陽の自室へと向けられる。
(…………。命拾いしたな、少年)
 一刹那の研ぎ澄まされた殺気を残して。
 耀金は、嬉々とする友に背中を押されながらその場を後にしていった。

「毎度ぉ、桐谷農園で~す!」
 その日は顔馴染みの来客が訪ねて来ていた。
「は~い。ちょっと待ってて下さいね~」
 大きな声量の聞き慣れた声。
 女将の和服姿な珠乃はそうのんびりとした調子で応えると、ぱたぱたと宿の廊下を小走り
で駆け抜け玄関へと向かう。
「……こんにちは、珠乃さん」
「はい、こんにちは~。桐谷さん」
 夕陽を背に軒先に立っていたのは、土の跡と匂いのする作業着を着古した一人の中年男性
だった。ほどよく日に焼けた肌に、見るからに力仕事を嗜んでいると見える恰幅の良さ。
 彼の名は桐谷昇(のぼる)。
 翼・翔姉弟の父親であり、星峰きっての農場主でもある。
 それ故に『民宿・まさき』を営む珠乃にとって、彼はいつも良質の食材を卸してくれる昔
からの大切な取引先の一人であり、陽と桐谷姉弟が幼馴染であるのもそういった事情が大き
く関係していたりする。
「ご注文の品、届けに来ましたよ」
「あらあらそうですか。ありがとうございます」
「……ぁ、いやいや。こちらもいつも贔屓にして貰ってますからね。じゃ、サインを……」
 穏やかな珠乃の微笑み。
 そんな笑顔に昇の頬も思わず緩む。
 しかし次の瞬間にはハッと我に返ったのか、昇はコホンとわざとらしく小さな咳払いをす
ると、小脇に抱えていたセカンドバックから伝票用紙を取り出してそう促してくる。
「……あ。昇おじさん」
 そうしていると、ふとリビングから陽が顔を出してきた。
「おう、こんにちは陽君」
「こんにちは。配達、ですか?」
「ああ。珠乃さんから発注があったんでね。まぁ他にも配達先はあるんだが」
 伝票にサインをしている母の背後へ歩み寄ってくる陽に、昇は慣れ親しんだ様子でそう言
葉を返していた。
 そうですかと微笑む陽の表情。
 それを見る度に、昇はこの陽だまりのような穏やかな感じは母から子へと確かに受け継が
れているのだなと感じる。
「あぁ陽、ちょうどよかったわ。ちょっと搬入口を開けて来てくれないかしら?」
「え? うん、分かった」
 するとサインを済ませた珠乃を後ろの陽を振り返って言った。
 コクと頷いた息子に、彼女は帯の中から宿の管理用らしい鍵の束を取り出して手渡す。
 陽はそれらを受け取ると、改めて昇に軽く会釈を残し一旦その場を立ち去って行った。
 その足で向かったのは、自室。陽は箪笥に引っ掛けてあった上着を一枚手に取ると、サッ
と羽織りながら再び階段を降りていった。玄関先ではまだ母と昇が何やら話し込んでいるよ
うだった。大方、今後の発注予定についてや世間話でもしているのだろう。
 陽はそんな二人にちらりと一瞥を遣りつつもその背後を通り過ぎ、住居部分から廊下続き
になっている民宿スペースへと向かう。
「……んしょっ、と」
 民宿と住居スペースを繋ぐ動線、その奥まった位置に搬入口は位置している。
 ちょうど中庭の裏手側。多くの場合ここで取引のある業者などから食材などの物資を受け
取るようになっている。室内は二重構造になっており、一方は更に一枚扉を隔てて外へ、も
う一方は民宿部分の厨房へと続いている。
 それ故、室内は物資保存などの為に空調が効いており──有体に言うと少々寒い。
 陽は上着のファスナーを閉じると、慣れた手付きで外へと続く扉の鍵を開けていく。
「お? 陽か。サンキュー」
「あ、翔。……もしかして配達の手伝い?」
「ああ。明日から連休だからな。客足に備えてあちこち発注してくる所が増えるんだよ」
「そっか……。それで今日は寄り道せずに真っ直ぐ帰るって言ったんだね」
「そーゆーこと。ほれ、どんどん入れてくから整理頼むわ」
「うん。分かった」
 そうして厳重に複数取り付けられた鍵を解除して扉を開け放つと、ちょうど父と同じく作
業着姿の翔が歩いてくるのが見えた。
 両手には発泡スチロールの箱に山盛りに詰められた野菜などの新鮮な食材。
 陽はそう二言三言と言葉を交わしつつ彼を中へ迎え入れると、共に搬入口内の空きスペー
スにそれらの箱を仮置きしていく。
 暫くの間、陽達は搬入作業に集中していた。
 垣根の向こうから覗く貨物車の辺りからチラチラと昇の姿も窺え、時折翔と入れ代わり立
ち代わっては食材を詰めた箱を運んで来てくれる。
 そのお陰で、搬入作業はものの数分ほどで済ませることができた。
「あいよっと……。これで最後だ」
「は~い、ご苦労様」
 翔から最後の一箱を受け取り、陽はそれを空きスペースに置く。
 気付けば目の前には箱詰めされた野菜などの食材が所狭しと並んでいた。ふぅと穏やかな
表情で一息をつく陽。そんな友の様子を、翔は静かに見遣って微笑んでいる。
 ちょうど、そんな時だった。
「お~い、少年」
 ふと聞こえてきた声。
 陽達が振り向くと、そこには廊下側から顔を出して立っている耀金の姿があった。
「えっと、何ですか……?」
「女将から伝言を頼まれたんだよ。このメモに書いてある食材を厨房の方に保管しておいて
くれってさ」
「あ、はい。分かりました……」
 陽がとてとてと駆け寄っていくと、彼女はそう言って手にしていた紙切れを差し出して来
た。受け取り見てみると、確かにそこには母の筆跡で書かれたメモがあった。おそらくは今
夜の調理にでも使うのだろう。幾つかの食材と個数がリストアップされている。
「じゃ、あたしはこれで。確かに渡したよ」
 そして陽がメモに目を落としていると、耀金はサッと踵を返してその場を後にしていって
しまった。一瞬ぼけっとこちらを見ていた翔に一瞥を寄越したようだったが、特に関心を持
つような事もなく、ばさりとコートの裾も翻って遠退いていく。
「…………。誰だ? あのカッコいいねーちゃん」
 ぼうっとしたまま数秒。
 最初に翔がこちらを見て口にしたのはそんな一言だった。
「え? あ、そっか。翔は会うのは初めてだっけ……。耀金さんだよ」
「耀金? あぁ、この前話してた例の。確か妃翠さんを訪ねて来た友達だっていう……」
「そうそう。それ」
 メモを片手にもう一度食材の箱の山の前に向かう陽。質問に答える友に翔は思い出したよ
うに呟いていた。
 ちらりと、もう姿の見えない廊下をもう一度だけ見遣って。
 翔は箱の山の前に屈み込んだ陽の傍らに立つ。
「俺も手伝うよ」
「うん。ありがと」
 メモを片手に、陽は箱の中から食材をピックアップしていった。
 ただ母の料理に使うものだ、できるだけ状態のいいものを選ぶに限る。……尤も桐谷農園
で採れる食材はどれも申し分ないのだが。だからこそ元・プロである母も長く取引関係を続
けているのだろう。そう素人ながらも陽は思う。
「……にしてもよぉ」
「ん?」
 そうして取りあえず二人で空箱の中へ指定のあった食材を移していると、ふと翔が何処か
しみじみとした様子を口を開いた。
「いやさ。思えばここ数週間で随分変わったよな~って。あの日、俺達が妃翠さんを助けて
此処に連れて来なかったら、あのねーちゃん──耀金さんとも会う事は無かった訳だろ? 
紋女(ルーメル)だぜ? しかも二人だ。前までは考えられなかった話だろ? お前ら一家
は何のかんので“遺族”な訳だしさ、俺達も中々ルーメル関係の話題はタブーみたいな所が
あったからさ……。本当、奇妙な巡り合わせだな~……なんてさ」
「……そうだね」
 翔はあくまで軽い調子を演じてみせているように思えた。
 ゴツゴツとした、それでいて活きのいい感じのジャガイモを片手に、陽は少し間を置いて
から静かに頷いて同意を示していた。
 確かに、奇妙な組み合わせなのかもしれない。
 ルーメルによって大黒柱を失った一家と、間違いなくその“加害側”のカテゴリに属する
存在が一つ屋根の下で暮らすこの状況。それは傍から見れば……変なのかもしれない。
『…………いいのかよ? はっきり言って茨の道だぞ?』
 最初の夕方、妃翠の部屋越しに聞こえてきた耀金の言葉。
 分かっているつもりではいた。でも、ああして第三者から向けられた時は……正直、胸が
痛む思いがした。
 だけど、それでも妃翠は共に居たいと言ってくれていた。
 自分達の思い上がりではないか? そう勘繰ってしまう事も少なくなかった。でもあの時
時答えていた彼女の言葉で、自分達が改めて受け入れて貰えていたと知った。
「でもさ、確か話じゃあの耀金さんって妃翠さんを連れ戻しに来たんじゃなかったか? 今
もこうしているって事はまだ……?」
「どうなのかな。まだ知らない所で説得はしているのかもしれないけど……。でも、最初に
隠れ里の話が上った時に、妃翠ははっきりと此処に残りたいって言ってくれたから……」
 若干の苦笑混じりに声を漏らす友をそっと窺いながらも、翔はそう訊いてきた。
 どうなのだろう? それは陽の正直な感想でもあった。
 暫くは星峰に留まるつもりだと言っていた耀金。それは言葉通りの意味なのか、それとも
まだ妃翠の事をまだ諦めていないのか……。
「──お前はどうなんだよ?」
「えっ?」
 ぼんやりと思考が巡る。
 だがそれらは、次の瞬間翔が放った一言で霧散していってしまった。
「お前は、どうしたいんだよ?」
 一抹の驚きで目を丸くする陽を、翔はじっと横目で見つめていた。
 ポンポンとキャベツを僅かに浮かしてはキャッチしながら、数秒……数十秒。
 陽はそれでもすぐには答える言葉が見つからず、ただ穏やかだか強いこの友の瞳を見返す
しかなかった。
「……。な~にぼうっとしてんだよ? 紛れも無くこれはお前と妃翠さんの問題だろ? 当
事者のお前がどうしたいって意思表示しなくてどうするんだよ」
「翔……」
 それは丸投げなどではないと、陽にはすぐに分かった。
 きっと、それは彼なりの励ましだったのだろう。
「まぁ俺は馬鹿だからさ、難しい事はよく分からねーけど。憲人みたいに、今の政府がどう
の特保がどうのってのには疎いし。……でもさ、やっぱし人間理屈ばっかりだと疲れるもん
だろ? せめて自分にとって大事なことくらいは──」
 改めて陽に向き直り、ニッと笑う翔。
「自分のハートで決めなきゃ、後悔するだけだぜ?」
 そして躊躇する事なく、彼はぽんっと軽く自分の胸を叩きながらそう言ったのだった。
 陽は暫くポカンと口を半開きにしていてこの友を視界に映していた。
 言葉は聞こえていた。それでも、すぐにそのココロが身体に染み込むには少々のタイムラ
グが必要だった。
「……。そう、かな」
「おうよ。男ならバーンと腹括れって。いざとなりゃ、俺らもできる限り手を貸すんだし」
 素直に嬉しかった。
 全く、この幼馴染は何も考えていない。だけど……だからこそ想いはストレートだった。
「……ありがとうね、翔」
「ははっ、気にするなって。別に俺は何もしてねぇよ。むしろ妃翠さんに色々世話してきた
のはお前自身なんだ。これからもそうしてりゃいいだろって話なだけだよ」
 俯き加減に陽は言ったが、翔はいつも通りの自然体だった。
 にこにこと笑いながら、作業の手の止まりかけていた陽を促してくれる。
「お~い、翔。何してるんだ? 次の配達に行くぞ~!」
 そうしていると垣根の向こうから昇が顔を出して呼び掛けてきた。
 その声に再開していた作業の手を止め、翔は立ち上がる。
「お~う、分かったよ。今行く~! ……悪ぃな、陽。そろそろ行くわ」
「うん、大丈夫だよ。行ってらっしゃい。それと……ありがとね」
 自然と見上げる格好になった陽は振り返った友に頷き、そう言って送り出していた。
 対する翔は肩越しに顔を向けると、ニッと笑って見せる。そしてそのままゆったりとした
足取りで、父の待つ貨物車の方へと向かっていく。
(……本当に、ありがとうね)
 やがて垣根や家屋の影に隠れて見えなくなるその後ろ姿を、静かに陽に見送られながら。

 ──しかし、その日の来客はそれだけでは終わらなかった。
「んん? は~い……どちら様ですか?」
 桐谷親子が納品を済ませてから時刻は進み、辺りはすっかり夜になっていた。
 そんな時間にふと来客を告げるチャイムが鳴ったのだ。
 ちょうどリビングで寛いでいた陽は、面倒臭そうに応対すべく出て行く美月の後ろ姿を見
遣りながら、この来訪に一抹の怪訝を抱いていた。
(……誰だろう? こんな時間になんて……)
 テレビの音声がバックミュージックになるように遠くに聞こえるような気がする。
 だが、そんな脳裏の疑問はすぐにその身を以って解決される事になった。
「陽。……ちょっと」
 暫くして美月が戻ってきた。
 しかしどうにも様子がおかしい。まるで訪ねて来たらしい相手を警戒し続けているかのよ
うにちらちらと玄関先を気にしながら、半ドアの状態でこちらに手招きをしてくる。
「? どうしたの?」
 不審に思いながらも陽は立ち上がって近寄っていった。
 やはりおかしい。いつも強気な筈の姉が明らかに困惑の気色を漏らしている。
「……あんたに客よ」
「僕に?」
 少しの逡巡の後、美月は言った。
 そして頭に疑問符を浮かべる陽に、ついて来いと言わんばかりに促し、ふいっとまた玄関
先へと戻って行ってしまう。
 何がどうなっているのやら。
 陽は状況がいまいち理解できていなかったが、仕方なくそのまま後をついて廊下に出た。
『…………』
 来客は三人組だった。
 一人は中央に立つ、リーダー格らしき気の強そうな小柄な女性。その左右をスーツ姿の眼
鏡の男性と、何やら長い布包みを背負った白髪の女性が固めている。
「……真崎陽君ね?」
「え? あ、はい。そうですけど……」
 応対すると、開口一番リーダー格らしきこの女性が確認するように言った。
 何故僕の名前を? そんな疑問が出そうになる。だが彼女はもごもごしていた隙を見逃す
事はなく、続いてピシャリと言い放ったのだった。
「そう。貴方が紋女(ルーメル)・妃翠の誓約者(リンカー)──間違いないわね?」
 その台詞に、流石の陽も目を丸くして凍り付いていた。
 何故その事を知っているのだろう? 彼女についての事は憲人の助言もあってまだ周囲に
は明かしていない。事情を知っているのは家族を含めたごく限られた面々しかいない筈だ。
「……そんなに驚く事はないわ。もう貴方達の事は調査済みだから」
 言葉の出ない陽、そして眉間に皺を寄せて自分達を凝視している美月をちらと見遣って、
この女性はさらりと言った。
 物腰は丁寧。だがそこから漏れるのは──何処か底の知れない威圧感のようなもの。
「さっき出したから二度手間になるけど……。まぁいいわ、自己紹介をしておきましょう」
 一瞬スッと鋭くなった眼光。
 そして彼女はこの姉弟を再度試すように見遣ると、おもむろにスーツの内ポケットに手を
伸ばし、写真付きの手帳を開いてみせると言ったのだった。
「私は門倉恵美。特別保安庁星峰実働局・門倉班班長よ」

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  1. 2011/04/28(木) 20:30:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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