日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(書棚)感想:川原礫『ソードアート・オンライン-アインクラッド-』

書名:ソードアート・オンライン-アインクラッド-
著者:川原礫
出版:電撃文庫(2009年)
分類:ライトノベル

これは、ゲームであっても遊びではない。
告げられたのは、クリアするまで脱出不能のデスゲーム。
完全なる仮想空間に閉じ込められた人々の物語が、始まる。


いいのかい? アニメ放映にホイホイされちゃって……<◎>益<◎>
先日に引き続き、今回の読書感想は現在アニメも放送中のソードアート・オインラン、その
初巻の感想となります。普段は“流行に乗らないのが流行り”の僕ですが、今回は何を思っ
たのか試しにと一巻目を手に取ってみたという訳です。

尚、最初に明言しておきます。──今回は辛口になっております。ご注意下さい。

大まかな粗筋は以下の通りです。
時は2022年。仮想世界(バーチャル・リアリティ)への完全ダイブが可能になった近未来。
その技術の立役者的ハード機「ナーヴギア」及び同機初となるMORPG「ソードアート・オン
ライン(以下SAO)」のプレイヤーとしてサービス開始を満喫していた主人公・キリト。
しかし気付く違和感──“ログアウトボタンの不在”。
そしてGM(ゲームマスター)から告げられたのは、全百層に渡る迷宮をクリアするまで自分
達は意識だけをこの仮想世界に囚われたまま出られないこと、そして何よりこのゲーム内で
の死=現実での死(頭に嵌めたナーヴギアが脳味噌を焼き殺す)であること。
そしてそれから二年。攻略は七十四層。
当初は混乱の極みにあったプレイヤー達も、本編開始時には殆どがこの仮想世界に慣れ──
そして少なからぬ者が死亡(だつらく)して──徐々に囚われからの脱出も遅々。
それでもソロプレイヤーとして、キリトは日々黙々と迷宮攻略に挑む。
二年の中で知り合った同じプレイヤーの少女・アスナや知人友人、そしてキリトに深いトラ
ウマを残した過去の出来事。
積み重なった仮初の記憶の先で成すものは?──といった内容。

本作は今や巷のネット小説の大分野となっている「オンラインゲーム小説」の一つです。
著者の川原氏も元は同作を自身のサイトで公開していたようですね。
ですので、だから仕方ないのか、エピソードの時系列や整合性に纏まりが欠ける……それが
僕の抱いた最初の印象でした。
(元より僕は個人的にもオンゲにはあまりいい思い出がないんですよね……。まぁそれは完
全に私情ですし、人付き合いが苦手な自分の至らなさが招いたトラブルだった訳ですが)
あと物語上、黒幕の真意も結局消化不良なままでしたね。そういうキャラなのかな……?

文体それ自体は及第点であると思います。少々文節ごとの長さの緩急が開き過ぎかなぁとは
思いますが、そこそこ読書する人間には許容範囲だと思います。
ただ……どうにも引っ掛かるのは、先も言った整合性についての足りなさなんですよね。
多少ネタバレになりますが、作中でキリトとアスナは想いを交わし、ゲームシステム内にお
いて「結婚」するに至ります(システム上の変化はアイテムやデータの共有化)。つまりは
それだけ強く恋愛をしたという展開の筈なのですが、いまいちそこへ至る互いの好感度推移
が突拍子もないというか……。物語自体も半ばから終盤への駆け足が目に付きましたし。
作中で何故お互いが好きになったのか、その理由は明かされはしますが、弱い。
紙面全体の分量は割合多いのに、中核人物である彼ら二人の内面の変遷にはもっと筆を割い
て欲しかったなぁというのが僕の正直な感想です。文章媒体はキャラクタ達の心の在り様を
も起こせるのが最大のメリットだと僕は考えているので、何というかその配分が惜しまれる
よなぁという印象でした。

一応、物書き仲間さんに「次巻から補完的エピソードが収録されているの?」と訊ねてみは
しました。何分サイトにネット公開しているものを出版化したものとなれば、編纂の段階で
取捨選択されていてもおかしくないからです。
でも、その仲間さん曰く「元からこんな感じ」だそうで……。それで以って、今回の書評の
方向性はある程度固まったと言えます。
面白いには面白い。だけど……物語の順序というか、整合性を継ぎ接ぎにしたような印象が
僕の評価に大きく影を落としたのは否めません。
キャラクタを愉しむ、という読み方もあるのでしょうが、僕個人はやはり物語をしっかり読
みたいと望むタイプであり、そこに込められた想いを読みたい人間ですので。世界観に愉悦
するのではなく、もっと人の心を掘り下げてほしかったなぁと思いますね。

とはいえ、自分もまたこうしてネットに小説ほか書き物をUPしている一人。
「○○まで読んでくれれば──」「外伝エピソードで膨らませて──」といったやり方は
必ずしも最善の、スマートな紡ぎ方ではないのだなぁと自戒が再び意識された思いです。

セカイを創り出すの難しさ。セカイを愉しむこと、共有することの両立。
そして何より心や世を描き出すことの重要性。
僭越ながら、いちネット小説書きとして襟を正す切欠になりそうな作品でありました。


<長月的評価>
文章:★★★☆☆(分量はやや多めながら読み易さはあり。文体の緩急が少し大きいか)
技巧:★★☆☆☆(大きな謎解き要素やどんでん返しは無い。良く言えば順当……?)
物語:★★☆☆☆(物語自体やキャラ同士の順序立て・整合性の不備を感じざるを得ない)

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  1. 2012/09/08(土) 01:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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