日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅱ〔23〕

 私達の祖国は、かの志士十二聖の一人“剣帝シキ”を先祖にもっている。
 即断即決の偉丈夫にして、無類の戦好きであった当代最強──いや最狂の剣豪皇。
 故に、彼の者を輩出した我々女傑族(アマゾネス)は、古くより広く武芸に長けた黒髪・
黒瞳の民として認識されていた。
 だが私は、そうした認知が何も武芸の優秀さ“だけ”に起因しているとは考えない。
 冷静になってみれば当然の事だ。私達は古くより積極的に戦場(いくさば)に赴いてはそ
の武芸を売り込み、戦うことで稼ぎを得てきたではないか。
 我々が──その大半が女性で占められるという種族の特性もあって──こうした各地への
“出稼ぎ”を「伴侶探しも兼ねているらしい」と揶揄されるのも、そうした歴史的な経緯が
大きい筈なのだ。つまり、武芸を知らしめる場を常に開拓してきたという歴史である。
 しかし、そこまでして先人が駆り立てられたのは単に功名心だけだとは考えない。
 生計の為だ。我々は武芸こそ長けていたものの、国家としては弱小であった。
 故に稼がねばならない。内に産業が育っていない、育てていない以上、糧(パイ)は外に
求める他あるまい。……何という事はない。ただ豊かになりたかっただけなのだ。
 なのに──今日の我が国の有り様はどうだ?
 冷静な、現実的な先人の苦労を省みることもなく、ただ積み上げられてきた武名の上に胡
坐をかいては伝統だの格式だのといった腹の膨れぬ奇麗事ばかりを戦わせている。
 ずっと私は、違和感を拭えなかった。
 幼き日より勉学に勤しむほど、皇族としての立ち振る舞いを指南されるほど、私の中では
その違和感──この無価値な装飾への強い反感が高まっていた。
 弟のように、多くの一族の中にあってさほど武芸に才能を見出せなかったからという個人
的な理由もある(ただそれは何も私だけに限った事ではない。双子の妹もそうだ)。
 しかしだからこそ、私は当時から強くこの胡坐をかいた大人達を疎み、そしてこの国の将
来を憂いていた。
 旧態依然の柵に囚われたこの国を救う。
 先人達が苦心した歴史を繰り返すことなく、この国をきっと“強き国”にしてみせる。
 それが、成長してゆく中で私の中に芽吹いた、皇族としての使命感だった。
 ただ漫然と血筋だけを続けさせるなど……私にはどうしても許せなかったのだ。

「──扉が破れました!」
「突入しなさい。いよいよ、大詰めよ」
 あの日、私は同じく凝り固まった祖国を憂いた有志らと共に王宮に攻め入っていた。
 目指すのは玉座。勿論、相手側──当時の皇とその取り巻きは強く抵抗した。
 だがそれだけで挫けるほど私達は柔ではない。
 策は存分に練っていた。こちら側に付く者達は貴賎に関わらず、その能力に応じて仕事を
与えた。正直、私が思っていた以上に彼らは働いた。
 ことこの武芸の国において、安穏と日々を享受すること自体、彼らには少なからず窮屈で
あったのかもしれない。
 迎え撃ってくる王宮内の警備兵らを片っ端から殲滅して、私達は王の間に続く扉を力ずく
でぶち破った。
 突破用の大きな丸太を抱えた有志らが何度も叩き付け、粉々になった封鎖の先を勢いのま
ま猛進する。あちこちに火の手が上がっていた。今頃旧態依然たる者どもは、存分に同志達
の刀の錆となっていることだろう。
「……ッ!」
 まだ、室内には四・五人ほどの警備兵──いや近衛兵が残っているようだった。
 リーダー格は、ゴテゴテした布巻きの槍を構えた中年男性。
 確か近衛隊長のサジ・キサラギだったか。私は向けられたその焦りや戸惑いの眼を軽く受
け流すと、そうサッと記憶を辿って把握する。残りの面々は……やはり同じく隊士だ。
「義姉(あね)上……」
「姉、さん……」
 そんな残り僅かの隊士らに庇われるように玉座の前に立っていたのは、皇夫妻──妹とそ
の婿養子だった。
 周囲は既に灼けるように赤くなっている。
 攻め寄せる熱で空気は揺らぎ、気のせいか、いや事実として奴らの姿はぼんやりと視界に
映っている。
「逃げなかったのね。まぁ好都合だけど」
 私はしっかりと銃剣を構えた面々と共に、一歩また一歩と妹達に近づいて行った。
 それでもキサラギ達の、文字通りの人垣である程度の間合いまで来ると、私達は自然とお
互いに対峙する格好となる。
「どうして、こんな真似を……」
 馬鹿馬鹿しくも問うてきた。今更かと、私は鼻で哂っていた。
 こんな時になっても、あの緩やかな衰退をとこしえの平和だと信じている馬鹿がいた。
「分からない? 全てはこの国を“強き国”にする為よ。貴女達じゃあ……生温過ぎるの」
 言って、私はヒュッと立てた親指の先で自身の首筋を横撫でするポーズを取った。
 妹と義弟は顔をくしゃりと、泣きそうに顰めて──。
「がっ!?」
 次の瞬間、隊士の一人が皇(おとうと)を振り向きざまに貫いていた。
 しっかりと、事前の指示の通りに心の臓を確実に貫いて一刺し。
 背中から彼の血で染まった太刀が飛び出し、ややあって引き抜かれる。
 キサラギ達も、突然の事に目を丸くしていた。
 無理もない。皇を護る役職にある者が、いざというこの場で直接刃を向けたのだ。
「ぁ……?」
 どうっと、皇は──いや前の皇はこうして倒れた。
 力なく仰向けに倒れた身体。その礼装用ヤクランからは、周りの熱に混じってしまうかの
ような赤が急速に広がって池を作ってゆく。
「くっ、お前──!」
 最初に動いたのは、目が点になって呆然としていた妹ではなく、キサラギだった。
 一瞬で沸騰した怒りのまま、奴は槍を握り締めてこの隊士──いや、彼らにとってはもう
裏切り者──を取り押さえようとする。
 だが、複数の銃声。
 キサラギが飛び込むよりも早く、私の左右に控えていた者達が次の瞬間、銃撃をこの凶刃
を向けた元・隊士に撃ち込んでいたのだ。
 当然、蜂の巣にされた彼は、私達に背を向けていた足運びの上での遅れもありかわすこと
などできる筈もなく、義弟に引き続いて倒れ伏し、血の海を作り始める。
「……。アズサ、殿? まさか貴女は」
「当然でしょう? 金に釣られた人間が次に誰かに同じように釣られない保証なんてない。
それに、元から実行者を生かしておくつもりなどなかったもの」
「貴女と、いう人は……ッ」
 キサラギは強く奥歯を噛み締めていた。
 可笑しな話だ。仮にもこれが“謀反”というものであることぐらい、私達も分かっている
のだ。そこに余計な情など掛けてどうする。……この進撃は、あくまで目的を達成する為の
手段でしかないというのに。
「どう、して……」
 そこでようやく、妹は事態を飲み込め始めたようだった。
 わなわなと身体中を震わせ、おずおずと夫の亡骸へと屈んで涙を流す。
 この天然娘も、夫の死というものくらいは理解できたらしい。
「どうして。どうしてなの、姉さん……。どうしてこんなことっ!」
 またそうやって同じことを訊く。時間の無駄だと、分からないのか。
 私の中にあるのは、もう憎悪だけだった。
 そう──憎悪だ。
 何故私にではなく、この武芸にも学問にも長じぬ凡人を父は跡継ぎに選んだのか。
 所詮は愛嬌だというのか。皇など、今や飾りでしかないのだと、そう言いたかったのか。
「馬鹿ね。さっきも言ったのに」
 パチンと、私は指を鳴らして次の段階への指示を出した。
 瞬間、わっと左右背後に控えていた有志たちが制圧に掛かる。
 近衛隊長(キサラギ)がいるとはいえ、向こうはたったのあと四人。
 五百人強の手勢を連れてきた私を、私達の“改革”を、もう奴らには止められない。
「私達はこの国を変えるの。価値のない拘りなんて捨てて、強い国に生まれ変わらせるの」
 彼らが残党の始末をする間に、私は三人ほどを伴って妹の傍へと歩いて行った。
「そんな……そんな事の為にシュウエイを? 皆を? そんなの、間違ってるわ……!」
「……」
 涙腺を緩め、泣き腫らしたその顔。その様を見るだけで憎々しさがこみ上げてくる。
 何も努力せず、ただ蝶よ花よと育てられただけの箱入り娘に──。
「黙れ。この役立たずが」
 私は懐から銃を取り出していた。
 西方──機巧技術の最先端から取り入れた拳銃という代物だ。同志達ほどではないが、こ
の至近距離なら私でも間違いなく撃ち抜ける。
 小さく舌打ちをしたのは、殆ど生理的は反応だったと記憶している。
 そして同時に銃口を、ピタリと床にへたり込んでいた妹(アカネ)の額に押し当てて。
「よーく自分の胸に手を当てて考えてみるがいいわ。あの世(むこう)でね──」
 答えてやるものか。そんな義理なんてない。
 私は貴女達を越えてゆく。私達がこの腐った国を立て直すの。
 嫌とは言わせないわ。
 どれだけ、あんた達抵抗勢力(じゃまもの)が喚き散らそうとも。
 国を豊かさに導けない皇など──要らないのだから。


 Tale-23.ソサウ城砦攻防戦(後編)

『伯母様、皆さん、お願いです。もう戦わないで下さい。この争いを……止めて下さい!』
 生き残った中空の端末画面(ディスプレイ)から、そう彼女の訴えが響いていた。
 シノブ・レノヴィンことシノ・スメラギ。先皇夫妻の娘であり、長らく所在不明──もう
亡き者だとばかり思われていた人物。
 しかし彼女は生きていた。そして戻ってきた。
 かつての仲間(とも)に護られ、大国の軍勢や七星を引き連れ、大切な者達を救う為に。
 ──“結社”と繋がっているのは、アズサ皇である。
 彼女達の訴えと、動かぬ証拠を目に焼き付け、人々は唖然とその像を見上げていた。
 そしてそれは何も、世界各地の人々という雑多な外部者達だけに限らない。
 他ならぬ当人であるアズサ皇、その下で働いていた者達の動揺は、他のそれよりもきっと
強烈であったことは想像に難くない。
「陛、下……」
「これは、一体?」
 王の間の臣下・将校らは恐る恐るその彼女当人に振り返ろうとしていた。
 仕えている主こそが“悪”だと彼らは証拠を突きつけている。だとすれば、我々は──。
「……」
 アズサは、すぐに言葉を発しなかった。
 ただ中空のディスプレイ、そこに映り人々に訴えている先皇女シノをじっと見上げたまま
で、何処となく覇気で揺らめく髪に自身の表情を隠していたのだ。
「断固、拒否する」
 だがゆらりと、端末の元装置の前にいた役人へと歩を進めると、彼女は怯える彼など視界
にないと言わんばかりに手を伸ばして数回制御卓(コンソール)を叩き、こちら側の映像を
オンにすると、そう搾り出すように、しかし苛烈な返答を出したのである。
『伯母、様』
「黙れッ! やはりお前は、あの時一緒に消えてしまえばよかった……!」
 くしゃりと。シノは哀しみで顔を顰めていた。
 だが対するアズサは微塵の容赦もない。
 次の瞬間、彼女はバッと顔を上げると、もう隠すことは意味を成さぬと判断した憎悪を剥
き出しにして、画面の向こうの遺児へと怨嗟の言葉を吐き出していた。
「今更、この期に及んで王座に返り咲こうというの? 二十年前、統務院は確かに私をこの
国の皇だと認めたじゃない!」
 気の強い性格であることは臣下達も重々承知だった。
 それでも、今この場の彼女の激情は平素のそれを遥かに上回っている。
 彼らも、画面の向こうのシノや共同軍の面々も、思わずそんな彼女の苛烈さに困惑し、或
いは眉を潜めて押し黙っていた。
「私の何が不満だというの? 私は皇としてこの国を“強く”してきた。その能力も実績も
ある。ただのうのうと富を食い潰す王侯貴族(くさったれんちゅう)とは違うわ。私がこの
国を豊かさに導いてきた。トナンの皇は私──。私こそ、六華にふさわしいのよ!」
 長らく祖国から距離を置いていたシノは勿論、二十年前、実際に彼女の謀反を追認してし
まった画面の向こうの要人達はそこに言い返す言葉を持てなかった。
 一度は、彼女のクーデターを“認めて”しまったのだ。
 それをまた彼ら共同軍は今になってぶり返そうとしている。その指摘は免れようがない。
 実際、彼女の主張するように、皇国(トナン)は彼女の手腕で──。
『……本当に、てめぇの領民はそういう“強さ”を望んでたのかよ?』
 だが反論としての一言は、ややあって響いてきた。
 画面の中のシノが少し戸惑い気味に、映像機(カメラ)目線を外して傍らを見ている。
『確かに、私達は一度トナンを“見捨てた”のだろうな。……だからこそ、今度こそは何と
しても救いたかった。それが我々なりの償いになると、そう考えている』
 次の瞬間、シノの傍らから姿を見せたのは礼装に身を包んだ二人の貴族──セドとサウル
だった。
 二人はそれぞれに厳粛な面持ちと声色で画面の向こう、アズサやその臣下達、世界の人々
に向けて語り掛け、彼女を護るようにそっと左右に控え立つ。
「──……」
 彼が動いたのは、ちょうどそんな時だった。
 まるで予め打ち合わせていたかのように、そして何よりも一瞬の早業で忍び寄ると、リオ
は抜き放った漆黒の長太刀をアズサの背後からその首筋にピタリと突きつけたのである。
「リ、リオ様?」「何を……!?」
 当然の事ながら、場の臣下達は慌てていた。
 しかし相手はかの“剣聖”であり皇弟。何よりも皇(アズサ)の生死がこの突きつけられ
た黒刃の動き一つで決してしまう以上、将校らが下手に押さえに掛かるのも躊躇われる。
「降伏しろ、姉者。それで全て終わる」
 ざわついた周囲を歯牙にかけることもなく、しかし眼はじっと注意深く姉(アズサ)を見
据えたままで、リオは言った。
 そんな彼の一言で、この向けられた刃の意味を悟ったのだろう。
 ゆらりと。アズサはぎらついた眼で肩越しに振り向くと、
「お前が……お前が裏切り者か!!」
 再び苛烈な憎悪のままに、叫んだのだ。
 ビリビリと、王の間全体がその怨嗟で震えたような気がした。
 臣下達もまるで自分が叱られたかのように竦み上がっている。
 しかし、当のリオが怯むことはない。
 ただ少し、ほんの少しだけ、寡黙で真剣な表情が作る眉間の皺を深めて、
「俺は、傭兵だ。此処で契約を破棄させて貰う。それだけの事だ」
 ディスプレイの光を黒刃に反射させながら、そう遠回しの肯定を紡ぐだけで。
「……身分は捨てた。だが俺は、祖国(くに)まで捨てたつもりはないんでな」
 サウルが口にした“償い”という言葉。
 その弁を借りるなら、これこそが彼なりの償いだったのかもしれない。
 かつて身分を捨てて放浪の身となっても──人々から“剣聖”の異名で称えられるように
なっても、ずっと心の中ではあの日この国で起こった姉妹同士の(一方的な)争いに対する
悔しさや虚しさがあったのだろう。
「降伏してくれ、姉者」
 もう一度、リオは言った。今度は命令ではなく懇願の色が強くなっていた。
 これも共同軍──セドとサウルらの計算だったのだ。
 期せずして自分達の側についてくれた“剣聖”という存在を「保険」として待機させる。
 どんな争いも、その総大将さえ押さえてしまえば、きっと終わらせることができる。
 そう、踏んでいたのに。
「……ふっ」
 なのに、アズサは笑っていた。いや──哂っていた。
 皇の覇気はまだ漂っていた。
 それでも表情は揺らめく髪の下に隠れていて、思わずリオは彼女が嵌めていた“指輪”に
伸ばそうとした手を途中で止めてしまう。
「結局、二十年前(あのころ)と同じか……」
 別の戸惑いが、いや怯えが場の面々を支配し始めていた。
 この感じは……覇気では、ない。
「そうよねぇ。所詮“正義”なんてものは態良い言い訳(こんなもの)よねえ!」
 くわっと、アズサは再び憎悪の眼を見開いた。
 再び。いや直感からしても間違いなく、先程よりもずっと──狂ったように強く。
 彼女は高らかに笑っていた。自身を哂っていた。
 今まで積み重ねてきた改革の日々。祖国を“強き国”に作り変えることが使命なのだと、
ずっと言い聞かせてきた唱えてきた自身が崩壊していく音が聞こえた。
 こんなに理想を描いても、国の未来を憂いても、結局自分はセカイの都合のままに振り回
される──。
「ジーヴァぁぁぁ!!」
 次の瞬間だった。
 哂っていた口元を引き締め、はたと息を深く吸うと、アズサは叫んだのだ。
 そしてその呼び掛けに応じるように突如姿を見せたのは、白髪の剣士・ジーヴァ。
 彼は突如としてどす黒い靄に包まれながらリオの背後中空より現れると、その重力加速の
ままに腰の剣を抜刀、反射的に振り返ったリオの黒刃と激しく火花を散らしながら衝撃波を
撒き散らし始める。
 次いで同様に現れたのは、緋色のローブの女、着流しの男、眼鏡と白衣の男。青紫のマン
トを翻す青年に、荒々しい大男と継ぎ接ぎだらけのパペットを抱えた少女。
 それは陰よりアズサ皇に忍び寄ってきた“結社”のエージェント──“使徒”達の出現に
他ならなかった。
 加えてそんな彼らの出現に呼応するように、王の間の四方八方から無数の黒衣の傀儡兵達
がずらりと並び現れると、ローブの女・フェニリアの合図と共に次々とこの場に居合わせた
臣下・将校らに襲い掛かり始めたのである。
「くぅっ……!」
 ジーヴァからの剣圧を半身を捻りながらいなし、横っ飛ぶ。
 リオが、画面の向こうの人々がその目に焼き付けることとなったのは、間違いなく城砦の
それよりも容赦のない殺戮模様だった。
 畏れ逃げ惑う文官、剣を抜いて何とか応戦しようとする武官。
 だがそんな抵抗など一切無意味だと言わんばかりに、黒衣の兵らは文字通り黒山の人だか
りの如く彼らに群がり、飛び散る鮮血と共に次々に彼らの息の根を絶ってゆく。
『…………』
 シノが、セドがサウルが、画面の向こうの世界中の人々が、絶句していた。
 玉座の眼下で繰り広げられるは殺戮の宴。
 飛び散り拡がってゆく血色の海と、その藻屑なる犠牲者らの躯。
 フェニリアら“結社”の使徒が、リオを近付かせぬよう鈍色の長剣を手に下げたジーヴァ
が、両肩をわななかせているアズサの周りを囲むように立ちはだかる。
「はははっ!」
 アズサはそんな鮮血の中で笑っていた。
 今度こそ、その眼には剥き出しの狂気が宿り──いよいよ自棄になって、叫ぶ。
「私を止めたいのなら殺せ(たたかえ)ッ! 殺して(たたかって)みせろ! そんな御都
合だらけ和平(りそうろん)など、全て血に染めてやる……!!」


 直後、王の間を捉えていた映像が途絶えた。おそらく制御機器がやられたのだろう。
 暫くの間、優勢・攻勢の側にいた筈の共同軍そして七星らは、各々に眉を顰めては激しい
戸惑いを隠せないでいた。
「陛下……本当に……」
「お、おい。どうするんだよ……」
 一方の皇国兵らも、同じく戸惑い、共同軍と向かい合ったまま動くに動けずにいた。
 最早この戦いの大義──“結社”と繋がっているレジスタンスを討つという態は、先刻の
証拠映像の数々で論破されてしまっており、尚且つアズサ皇のあの反応は、彼女が皆を騙し
ていたとを認めたに等しい。
「……発狂ときたか。ま、このままあっさり終わるようなタマとも思っちゃいないが……」
 どんな強靭な軍勢も、その大将が崩れてしまえば統制は乱れる。
 城砦各方面の制圧に掛かっていたグラムベルら七星達も、そんな躊躇う皇国軍らを相手に
一旦戦いの手を止めると、暫し様子を窺う体勢を取っていた。
「か、頭! あれ!」
 しかし“結社”があのように表に出てきた時点で、何も起こらない筈がなかったのだ。
 部下らが逸早く更なる異変に気付き、指差したのは……皇国兵らの背後。
 ちょうど彼らの虚を突くように、どす黒い靄と共に黒衣のオートマタ──“結社”の量産
兵が次々と姿を見せたのである。
「奴ラト、戦エ」
「サモナクバ、殺ス」
 ギラリと鋭い鉤爪手甲をみせびらかすように。
 じりじりと、現れた傀儡兵達はそう口々に不気味で無感情な声で呟きながら、皇国兵らに
迫ってくる。
「ひ……っ!」
 前方には共同軍──特に七星らの軍勢。後方からは“結社”の黒い影。
 しかし前者が積極的な交戦を念頭に置いていないと知れていた分、彼らの反応はある種余
計に傾斜を急にしたものと思われた。
 全身を強張らせ、振り返ってこちらに見せた表情(かお)と構え直す銃剣の金属音。
 次の瞬間、皇国兵らはワァッと隊伍も何もなく一斉に──黒衣の兵らに脅されるがままに
襲い掛かってきたのだった。
 咄嗟に前衛陣が得物でその突撃を受け止め、飛んでくる銃弾が障壁で弾かれる。
「チッ……こっちは自棄っぱちってか?」
 再び、交戦が始まってしまった。本来もう要らぬ筈の戦闘が。
「俺は優しくないと、言ってるだろうがよッ!」
 前線で数十人分の刺突を盾で防ぎながら、グラムベルは部下達と共に大きく手斧を振り上
げて鎖鉄球をおまけに一閃、皇国兵らを弾き飛ばして叫ぶ。

「長、これは……」
「……ええ。どうやら、ついに“結社”が本性を現したみたいね」
 そんな交戦再開は、反対方向の東砦でも進行していた。
 海皇珠(トリトンスフィア)から流れ続ける魔力ある大水の上を中を駆けながら、シャル
ロット達もまた、この存外の抵抗に苦心を強いられる。
 銃剣を銃弾を受け止めいなす、魔力の水。
 そんな触手のごとき無数の波の中にあって、シャルロットは自分達への攻撃に臆する皇国
兵を容赦なく──宣言通りに殺して(しまつして)ゆく傀儡兵らを見た。
「皆、奴らの策に乗っちゃ駄目。皇国兵と奴らとを引き離すのよ!」
 本気だ。奴らは皇国兵(かれら)を捨て駒にしようとしている。
 シャルロットはきゅっと唇を結んで密かに悔しがった。
 そう指示を叫びながら大水を操り、皇国兵ではなく、彼らをけしかけている傀儡兵へと重
点的に攻撃の矛先を向けてゆく。
 水の触手が、脅す者と脅される者を分かとうとする。
 それでも黒衣を翻し、次々に皇国兵ごと蠢く水を刺し貫こうとする“結社”の手先達。
 させまいと仲間の魚人らが槍や矛で迎撃・保護しようとするが、少なからず手遅れになっ
た亡骸と血色の混じる水が徐々に増えていくのが分かった。
「恐れないで! 貴方達も私達が保護します。だから……っ」
 ごぽっと。目に付く限りの皇国兵らを水の触手の奥へと誘い、シャルロットは自ら率先し
て三叉の槍を振るい傀儡兵達を貫いては、
「もうこれ以上、必要のない戦いに駆られないで……!」
 一体一体確実に、その活動能力(いきのね)を止めてゆきながら呼び掛ける。

「……これは、面倒なことになったのう」
 南砦内を抜けようとしていたバークス・セイオンの両軍勢も、わらわらと文字通り背中を
押され、恐々として向かってくる皇国兵らに正直歯痒さを禁じえなかった。
 次々と飛んでくる銃弾は魔導部隊らの障壁が、身に纏った錬氣が弾く。
 四方八方から無謀にも突撃してくる兵に対しては、極力手加減をした一撃で黙らせる。
 真横から向かってきた兵を拳一発で遠くの壁まで吹き飛ばしながら、バークスはそれでも
一見のんびりとした様子で呟いていた。
「一筋縄で落ちる相手とは思っていませんでしたが、ここで“結社”とは……」
 隊伍で固められるより、むしろ無秩序に群がれる方が進行しにくい。
 並ぶセイオンは対照的にぐっと眉根を寄せた表情(かお)で、時折長剣を振るっては自棄
糞になって向かってくる皇国兵らを次々にいなしてみせている。
 ──今回の作戦の趣旨はこうだ。
 此度の内戦を“極力犠牲を出さぬようにして終わらせる”こと。
 その目的が為に遠回しにアズサ皇とトナン政府を騙して友軍を装い、オセロの白黒が反転
するが如く、一気に数で囲み制圧、彼女を押さえて戦闘を終了させる……というものだった
のだが。
「王の間(あっち)には“剣聖”がおる故、余程の事でもない限りアズサ皇を押さえること
自体はまだ可能ではあろうが……巧く火に油を注がれたもんだわい」
「……ええ」
 互いに顔を見合わせる。おそらく東西の“獅子王”と“海皇”も同じ疑問を抱き始めてい
る筈だと、セイオンは思った。
 あのアズサ皇の反応は、自棄以外の何者でもない。
 たがそれ自体は今重要な事ではない。
 妙だと思ったのは、その自棄に“結社”達が追従しているというこの状況だ。
「王宮が落ちるのはもう時間の問題でしょう。なのに奴らはこんな抵抗を敢えて支持した。
つまりは」
「……時間稼ぎ、じゃの」
 フッと真剣な眼を垣間見せ言葉を継いだバークスに、セイオンは静かに深く頷いた。
 まさかアズサ皇の狂気(ぜつぼう)に賛同したという訳ではなかろう。
 なのに奴らは、表沙汰に自分達の兵を動員してきた。
 つまりこの対応には、何か“ちゃんとした”目的がある筈──。
「どうやら、急いだ方がよさそうじゃな」
「はい。砦よりも王宮への進入を優先すべきかと思います」
 大矛と長剣。二人の振り下ろした一撃が、はたと前方に路を開いていた。
 皇国兵も傀儡兵もまとめて剣圧で吹き飛ばされ、二人を筆頭に軍勢は一気に砦の南門部分
への合流を果たす。
「総員に伝達! 対城砦班の三分の一を救出班──王宮方面に回す。隊番号の大きい順に該
当各隊はついて来い!」
 セイオンがそう再編の指示を飛ばし、すぐさまその命令が場を駆け巡っていった。
 もっと包囲網を狭める必要がある。いや……すぐにでもアズサ皇を、彼女を取り巻き蝕ん
だ“結社”のメンバーどもを押さえなければならない。
 一直線にぶち抜かれた南正門と再度相見え、セイオン達はその先にある王宮を目指す。

「──殿下を守れ! 陣形を崩すな!」
 そして、これら黒き影とその凶刃に脅された皇国兵らの魔手は、共同軍本隊が陣を張る王
宮北部にも押し寄せていた。
 ポートに鎮座した多数の飛行艇。それらを護るように二重三重に防衛線を形作る共同軍。
 四方八方から押されるように、ガチガチと震えながら攻撃を仕掛けてくる皇国兵たち。
 “極力犠牲を出さずに終結させる”。
 そのつもりでプランを組んで来た共同軍一行にとって、この眼前の光景はまさに、そんな
自分達の想いを踏みにじらんとする意図を感じ取らざるを得ず──。
「伯母様……」
『……』
 すっかり砂嵐になってしまった中空のディスプレイを見つめたまま、シノは時折ぽつりと
哀しげに、小さくなって呟いていた。
 つぅっと、頬を伝っているのは一条の涙。覚悟していたそれよりも遥かに苛烈な拒絶に、
酷く打ちのめされている心の内。
 故にセドもサウルも、共同軍の将校らも、アルス達クラン・ブルートバードの面々も、す
ぐには彼女に語り掛ける言葉を持てなかった。
 外からは皇国兵──もとい“結社”のオートマタ兵達に応戦する剣戟や銃撃の音が、何度
となく重なっては響いてきている。
 やがて、サウルが大きく深呼吸をした。
「総員に伝達。皇国兵ではなく“結社”──黒衣のオートマタ兵への攻撃を優先せよ。指針
の通り、必要のない犠牲は極力出すな。それともう一つ。城砦各方面の七星らに早急な救出
活動を要請されたし。……これより我々は、速やかに玉座への到達を図るものとする」
 室内の通信をオンにし、彼はそうこの局面に対する指示を出す。
「打って出るか?」
「うむ。このままでは双方の犠牲者が膨らむばかりだ。アズサ皇がああなった以上、長く放
っておく訳にもいくまい」
 振り向いたサウルに、セドが片眉を上げつつ問うていた。
 既に彼は礼装の上から複雑な文様を随所に織り込んだマントと手袋を装着し始めており、
何処となく魔導師然とした様子をみせている。
 サウルは一度深く頷いた。更にその眉間に寄せた皺に、力を込めるようにして言う。
「……何よりも気になるのは、あの“結社”の反応だ。まさか奴らにアズサ皇を庇い立てす
るような忠節があるとも思えない」
「だろうな。結局奴らの目的がはっきりしないままだが、間違いなくこれは時間稼ぎだぜ。
もたもたしてたら、何をするかは知らないが、奴らの思う壺だろうよ」
 二人、そしてそっと従うように将校達は、哀しみに眉を伏せるシノを見遣った。
 彼女が下してくれた決心の為にも、これまでの苦節の為にも、このまま奴らの思い通りに
はさせない……。
「私達も加勢します」
「そうだね。さっきダン達からジークを見つけたって連絡も貰ったし」
「……合流しよう。そして今度こそ、奴らを」
 イセルナ以下、最寄各方面を制圧後、一旦陣に戻って来ていたブルートバードの面々も彼
らへの同行を申し出ていた。
 ハロルドは薄眼鏡のブリッジを指で押さえ直しながら、シフォンは握ったままの長弓へ静
かに力を込め直して頷いている。団員らも、同じ気持ちでいっぱいだった。
「……アルス君。すまないけれど」
「はい……。分かってます」
 そして振り向いてくるイセルナに、アルスは傍らで浮かんでいるエトナと共に神妙な面持
ちで頷いていた。
 二人のすぐ隣には、涙で両の瞳が揺らめいているシノ──母の姿がある。
 事前に、そして今も有言無言のメッセージが身体中を突付き回っているのが分かった。
 ──自分では、皆の足手まといになる。
 兄達のことは勿論心配だった。
 でも先刻より繰り広げられているのは、正真正銘の戦争なのである。
 そこに魔導が使えるとはいえ、一介の学生が飛び込んで何になるのか……。
 いやそれよりも、今目の前で哀しく項垂れている母が心配だという気持ちが強かったのか
もしれない。
「……」
 何より、自分もまた内心激しく動揺して、今すぐまともに動ける状態ではなかった。
 セドさんやサウルさん達、母さんのかつての仲間達を中心として──何より母さんのこの
戦いを止めたい・終わらせたいという願いに沿って立てられた、今回の作戦(プラン)。
 そこに期せずして輝凪の街(フォンテイム)──フォンテイム候・サウルの下に流れ着い
た自分は、密かに進められていたそれらに志願して加わり、共に知恵を出し合った。
 なるべく“犠牲”を出さずに戦を終結に導く解。
 それは十中八九、相手の総大将を押さえることに他ならない。
 ただそれだけなら、アズサ皇の至近距離にリオ叔父さんがいる。
 当初の予定では援軍を装って王宮に入り、そのまま面会の際に彼と共に行動に移すという
青写真だった。──しかし、それだけでは不十分だと自分は意見した。
 国外の人間だからこそ、そしてリンファさんやリュカ先生が送ってくれた皇都での聞き込
みレポートに目を通したからこそ、自分にはある種の確信があった。
 “この国は、既に敵・味方が分かれてしまっている”のだと。
 アズサ皇の改革開放によって恩恵を得た者と、そうでない者。
 そこには明らかな溝が出来てしまっているのだと感じた。
 だからこそ──全ての兵士がそうではないとしても──こちら側に“反発”する、あくま
でアズサ皇に忠誠を示す可能性の高い兵達が独断で戦闘を続けてしまう可能性を思考の中で
否定できなかったのだ。……奇しくも、その好例がサジさん達レジスタンスなのだから。
 故にプランは「総大将とその軍勢の一斉制圧」へと修正された。
 皆を傷付けたくない。なのに、そんな皆の内面を信じないことでその実現を図る。
 議論を重ねたあの頃も、そして今でもずっと、心の中では矛盾が悲鳴を上げている。
 でもそれだけなら……まだ良かったのかもしれない。僕自身が、清濁を併せ呑めばいいだ
けなのだから。
 しかし、実際はそのプランは文字通り狂い始めている。
 アズサ皇(おばさん)も、皇国の兵隊さん達も。
 自分達が制圧の為に矢継ぎ早に配信した証拠の数々が、彼女を追い詰めてしまった。
 もう戦わなくてもいいのに。それでも、兵隊さん達は“結社”の手先に脅されている。
(……僕は、間違っていたんじゃないのか……?)
 テーブルの上で思考を重ねたものが、ことごとく変化球に翻弄されて崩れている。
 胸の奥が、ぎちぎちと痛んでいた。
 せめて頭脳で貢献できればと思ったあの頃の高慢、何よりもその捏ね回したプランが、今
こうして多くの人々を苦しみの中に投げ入れてしまっている。
(ごめんなさい……。皆……)
 戦争は、遊びなんかじゃない──。
 僕は、震えて俯く母さんの背中をそっと摩っていた。慈悲じゃなくて、きっと罪悪感。
 エトナも心配そうに、だけど掛ける言葉を見つけられず、戸惑ったままの表情で僕の隣に
浮かんでいる。
 イセルナさん達が、共同軍の皆さんが、次々にこの部屋を出入りしていた。
 すぐにでも王の間へ突入するつもりなのだ。この“結社”の妨害、時間稼ぎの網を縫って
目的を──アズサ皇の確保に向かう。
 リオ叔父さんがいるのしたって、相手はあの“結社”だ。
 あの“剣聖”であっても、奴らに対しどれだけ孤軍奮闘できるのか、正直分からない。
(そもそも何故奴らは伯母さんを……? 六華が目的なら、兄さんを捕らえた時点でさっさ
と姿を眩ませることだってできた筈なのに……)
 いや、もっと分からないのは“結社”の方だ。
 この抵抗策は何らかの時間稼ぎだとは推測がつく。でも彼らに一体何のメリットが──。
「ま、待って下さい。皆さん」
 そんな時だった。ふとシノが顔を上げて、出撃準備を整える面々に呼び掛けたのは。
 傍らのアルスとエトナは勿論、セドやサウル、イセルナ達も何事かと彼女へと振り返って
いた。視線が一斉に集まってくる。だがそのエネルギーに少々気後れしつつも、
「私も、一緒に行きます」
 彼女はそう確かに、皆に意思表明をする。
「む、無茶言うな! アズサ皇はあの様子(くるいよう)だぞ? 殺意剥き出しの相手の所
へホイホイ連れていく訳には──」
「分かってる。でもお願い、私も連れて行って! ちゃんと伯母様と話がしたいの。このま
まあの方とすれ違って終わったら、きっと駄目になる……」
 真っ先にセドが止めようとしたが、シノの決意は変わらなかった。
 我が侭だとは承知で。でも、このまま分かり合えずに終わらせたくない。
 そんな彼女の直向きな心が痛いほどに伝わってきた。
 思わずセドは言いかけた口を開けっ放しにして押し黙り、ポンと肩を叩いて小さく首を横
に振ってみせるサウルに躊躇いの眼を曝け出している。
「……僕からもお願いします」
「アルス?」
「そうだよっ。危ないって事は分かってる。だけどこのままでいいの? 話し合えなきゃ、
私達のやってる事は結局“戦争”なんだよ?」
 セド・サウルを中心とした共同軍のメンバーらが、末端の兵士達までもが、瞳の奥を揺ら
めかせてお互いを見合っていた。
 アルスも、エトナも、彼女の意思を汲み上げる決意をしていた。
 母(かのじょ)の為にも、そして一時は己の智に慢心した自分達を償う為にも、このまま
なし崩し的に戦闘を拡げさせてはいけないと思った。
「……シノ殿下。それが貴女のご意思なのですね?」
 すると、それまでじっと黙って様子を見ていたイセルナが問うた。
 その肩には、同じく返答を待っている梟型の持ち霊・ブルート。
 左右にハロルドとシフォン、団員らを従え準備を整えていた彼女達に、シノは数拍の間こ
そ要したものの、コクと一度強く頷いてみせる。
「分かりました。依頼主の要望とあらば、私達が責任を持って貴女をアズサ皇の下まで護衛
致します」
「……ったく、こんな時に“傭兵モード”かよ。あ~……分かった。分かったよ! お前ら
も一緒に連れて行く。最大限俺達が護る。だがよ、話が通じるかどうかはもう分かったもん
じゃねぇぞ? そこまでは俺達でも正直保障できねぇ」
「はい。……ありがとう、セド君」
 やがて、ガシガシと髪を掻き毟るセドを代表に、シノの申し出は受諾された。
 改めて深々と頭を下げる彼女とその息子、持ち霊。セドはその掻く指先を心なし強めつつ
目を逸らして嘆息をついていた。
「ならば、兵力はもっと集中させねばなるまいな。イセルナ殿。貴女方があの脅された軍勢
の突破口となり得るか?」
「……ええ。やってみせますわ」
「我らの冷気で奴らの動きを止める。それに乗じて一気に路を拓いてくれればいい」
 サウルが思案顔で顎を摩り、言い出しっぺなイセルナに問う。
 すると彼女は平素以上の上品を装って小首を傾げると、相棒(ブルート)と、左右に控え
る団員らと共に、自信──いや、決意に満ちた表情を。
「……。ま、こうなってくると多少ごり押しでもしなきゃ埒が明かねぇってもんだが」
 セドもまた、両手に着けた文様入りの手袋をギュッと握り締めていた。
 飛行艇の出入口を守る兵士らが、一同にビシリと敬礼を寄越してくれる。
 イセルナらブルートバードの面々、そしてセドら共同軍本隊(皇女護衛部隊)は、カツン
と一個の大群となってその出入り口に集結する。
「覚悟はいいな? 突っ切って、シノをアズサ皇に会わせるぞ!」
『応ッ!!』 
 バサリと、文様マントを翻して叫ぶ彼に呼応するようにして。
 安全の為に閉じられていた分厚い金属の扉が、外の光を取り込みながら大きく開いた。

 ──狂気は、一度伝染したら(はしりだしたら)止まらない。
 サジの脳裏にはたと、そんなフレーズが過ぎる。
 眼前、いやこの南門内部の周囲三六〇度で進行しているのは、生存本能に揺さ振られ突き
動かされ、戦い続ける皇国軍の兵士達。そして彼らのそんな鬼気迫る勢いに苦心を隠せず、
なし崩し的に応戦せざるを得なくなっている仲間達の姿だった。
(こんな、筈では……)
 自身にも向かってくる皇国兵らの突撃を槍の腹でいなしつつ、サジはぎゅっと唇を結びな
がらこの無理強いされた混戦を憂う。
 つい先程までは、まだ自分達父娘(おやこ)同士が潰し合うのを、彼らは待つように静観
していた。しかし今ではその背後から迫る黒衣の一団──確か交換した情報では“結社”の
使役するオートマタ兵らしい──により、彼らもまた戦うことを強いられていた。
 少なくとも、今この場で相手の残存兵力が全て動かれるのは拙い。
 それに……何よりも。
「はぁぁぁッ!」
「──ッ!?」
 瞬間、自分に向かって飛んでくる殺気と気合の声。
 同時、反射的に突き出した槍の腹が防いだ見えざる斬撃。
 それは間違いなく娘(ユイ)だった。全身に怒気をみなぎらせ、両手に握った見えざる太
刀を軋むほどに強く押し付けてくる。
 サジは思わず顔を顰めていた。踏ん張った両足が、そのあまりの気迫から来る威力に悲鳴
を上げているのが分かる。
 狂気──ではない。これは紛う事なき、怒りだ。
 歯を食い縛って、サジは掛けられる力を全身をバネのように利用すると彼女のからの一撃
を弾き返した。その動きに、彼女は勿論、サジ自身も大きくよろめき互いに後退りする。
「これが、お前達のやり方か」
「……?」
 ざりっと、土埃の舞う地面をすり足に、ユイは呟いていた。
 その姿勢は今にも飛び掛りそうに前屈気味になり、ゆらゆらと奥底からの怒気を反映する
ように、髪や軍服を揺らしてはその表情を隠している。
「お前は終わらせるといったな。確かに、これで陛下の信用は地に落ちることになる」
 握った剣に込める力を強くして。ギリッと歯を食い縛って。
「お前達は陛下を“狂わせた”訳だ。……心の側(うちがわ)から殺そうとした」
 ユイは叫んだ。同時にごうっと、体内のマナをそれまで以上のペースで一気に解放する。
「……流石は外道だよ。お前は私達を“二度も賊軍”にした訳だッ!!」
「ッ!? ま、待て。私は」
「黙れッ!!」
 その言葉に、サジはハッと目を見開いていた。
 違うんだ。そう応えようとする。でもその言葉は他ならぬ彼女の、マナを利用した爆発的
な推進力による突撃によって遮られていて。
「お前は、私達を二度も“裏切り者”にするというのかッ!!」
 涙を含んだ怒号。
 再び、両者の剣と槍は激しくぶつかっていた。
 先は悲鳴を上げたサジの両脚。
 それに加え、今度は突撃された勢いのままどんどん後ろに押されているのが分かった。
「また……、またお前は、私の“居場所”を奪うのか……!?」
 火花が眼前で激しく散っている。彼女の不可視の魔導が及ぶ部分が、その太刀だけにでは
なく──おそらくあまりの激昂で制御が乱れているのであろう──両手から肩、胸元、顔へ
と伝染し始めている。
(……!?)
 それでも、サジは確かに目に焼き付けていた。
 憎悪のままに剣を向けてくる彼女(むすめ)の頬に、ぼろぼろと大粒の涙が零れていた。
 身体が危険の赤信号を鳴らし続けている。
 だが、そんなシグナルすら感覚の遠くにあるかのようにサジには思えた。
 何も分かっていなかったのだ。私は、何一つこの子の……。
『──ッ!?』
 そんな時だった。両者の間に割って入るように、恐ろしく鋭い一閃が描かれたのは。
 咄嗟にサジも、ユイも、互いの鍔迫り合いを中断して大きくバックステップ。
 すると同時、そんな二人の間に身を滑り込ませたのは、長剣を振りぬいた一人の青年で。
「セイオン、殿……」
 思わず口にしていたのはサジの方だった。
 今回の作戦の打ち合わせの折、何度かディスプレイの向こうに姿を見せていたかの七星が
一角。人呼んで“青龍公”の異名持をつ、気高き竜族(ドラグネス)の貴公子──。
「随分と足止めを喰らっているようですね。お怪我は?」
「はい……。私なら、大丈夫です」
 サジに背を向けたまま、セイオンは肩越しにそう気遣いの言葉を掛けてくれた。
 とはいえ、その表情は生真面目な仏頂面であり、むしろ言葉の裏には「何故、貴方がまだ
ここにいるのです?」というメッセージが強く込められているように感じられる。
「ふむ? ブルートバードの片割れと一緒だと思うたのだが、姿が見えぬの」
 続いて現れたのは“仏”のバークス。壮年の巨人族(トロル)にして、世界最強の男。
「は、はい。ダン殿達にはこちらの手勢を幾らか加えた上で先に進んで貰っています。今頃
は城下への進入を果たしているかと」
「……なるほど。要はお主がその殿(しんがり)をやっとる訳だな」
 身体は勿論、その存在感も尋常ではないこの巨漢に、サジは少々まごつきながら答えた。
 目の前にはセイオン、傍らにはバークス。
 そんな中でも断続的に自棄っぱちに攻めて来る皇国兵を、彼らやその部下達は当て身など
でいなしながら次々と戦闘不能に“落として”いく。
「キサラギ殿、我々も加勢しましょうか? 貴方も本来なら突入班の要、その一人だ。ここ
で足止めを食らっているままではいけない」
 そしてセイオンは、そうサジに背を向けたまま言ってきた。
 ほんのりと蒼さを帯びた刀身を揺らし、視線の先で正眼の構えを取り直すユイをじっと鋭
い眼付きで見つめている。
「……いえ。御両人こそ先を急いで下さい」
 だが、サジは首を縦には振らなかった。
 数拍の間。しかし次の瞬間紡いだその返答は、確かに怪訝に肩越しから視線を向け直して
くる彼の向こう、娘(ユイ)の姿を捉えていて……。
「あの子は、私の娘なのです。だからこそ、私自身がけじめをつけなくてはなりません」
「……キサラギ殿」
「ん。よかろう」
 私情に流されるべきではありません。きっとそう窘めようとしたのだろう。
 だがセイオンのそんな言葉は、重なるように快活に放たれたバークスの承諾と共に霧散し
ていた。
 思わず若き竜の将は眉根を寄せていたが、対する世界最強の偉丈夫はサジのその返答で大
よその事情を察したらしい。カツンと地面に立てた大矛を片手に呵々と笑うと、その得物を
一度大きく振り回し(そしてついでに迫っていた皇国兵や傀儡兵も一緒くたに吹き飛ばし)
ながら大きく白い歯を見せて言う。
「すぐに追いついて来るがいい。儂らは先に城下にして“仕事”に掛かっておく」
「……はい。ありがとうございます」
 行くぞと一声を上げて、バークスは自らの手勢と共に駆け出していった。
 セイオンも内心はこの“非効率”を嘆いていたようだったが、結局それ以上の諌めを口に
することはなく、少しばかり遅れて彼の軍勢の再進行に倣ってゆく。
『……』
 猛者両軍の通り過ぎた跡は、皇国兵も傀儡兵もすっかり“掃除”されていた。
(ユイ……)
 そんな戦禍累々の中で。
 サジはぐるんと槍を中段で構え直すと、改めて娘(かのじょ)と一対一に向き合う。

「こん、のぉ……ッ!」
 何度目ともなく、ジークは二刀を振るっていた。
 回復した身体への安堵などすぐに吹き飛んでしまっていた。
 何故なら、アズサ皇がディスプレイの向こう側で怨嗟の叫びを放った直後、自分達のいる
この城下の広場にも“結社”の傀儡兵らに押されるようにして、四方八方から皇国兵が沸い
ては襲い掛かってきていたからだ。
「落ち着けっ、落ち着くんだ! アズサ皇(ほんにん)も認めただろ!? もう俺達が戦う
理由なんてねぇんだって!」
「ぬ、うぅ……っ」
「そんな事、言われたって……!」
 これが単に正当防衛であれば──。
 だがそう眉間に皺を寄せて仮定を紡いでも、目の前の現実は変わらなくて。
 ジークは数人掛りの銃剣を二刀で受け止めつつ叫んだが、皇国兵らもここであっさり退い
てしまえば背後の“結社”から生死を隔てる一刺しが来ると──既に少なからぬ、躊躇った
りし損じた仲間達がそうなってしまっていると──分かっているがために、中々こちらの言
葉を行動で以って聞き入れてくれる様子は見られない。
「……なら。寝てろ!」
 理性的判断力よりも、生存本能の衝動が彼らの天秤を傾かせている。
 ややあってジークは舌打ちをし彼らの刀身を弾き返すと、だんっと軸足を踏み込み、刀の
柄先を彼らの鳩尾や首筋に叩き込んでいた。
 白目を剥いて、ぐらりと昏倒してゆく皇国兵達。
 そしてすかさず、ジークはそんな倒れ伏す彼らを庇うように交差して前に躍り出ると、こ
の“失敗”に死の制裁を下さんと襲い掛かってくる傀儡兵へ、今度こそは容赦一切なしの横
薙ぎを放って斬り伏せる。
「ジーク、あまり前に出過ぎるなよ!」
「分かってますって!」
 アズサ皇の怨嗟、そして“結社”達の出現から、ジーク達は円の陣形を以ってこの襲撃に
対応していた。
 即ち四方八方から現れ──そして傀儡兵らに脅されるがまま──攻撃を仕掛けてくる皇国
兵達を、極力傷付けぬように当て身などで気絶させて後方に回し、同時に迫ってくる傀儡兵
らを自分達が身体を張って食い止め、迎撃するという戦法だ。
 加えて何よりも、ダウンないし説得に応じてジークら前衛メンバーの後方──円陣の中心
に回された皇国兵達は、リュカを始めとした後衛メンバーらの(重ね合わせた障壁という)
保護下に入る。
「だけど、こいつらを何とかしないと……犠牲ばかりが増えちまう!」
 それは身勝手な保身だと、皇国兵(かれら)を責める気にはなれなかった。
 代わりにジークの奥底から湧いてくるのは、ねちっこい嫌悪感だった。
 ここまで人を弄ぶ“結社”のやり口。単に抵抗された、仲間達が苦心して組み立ててきた
作戦を崩してくる、そんなタクティカルな事実よりも、ジークにとってはこの目の前で強い
られようとする“要らない筈の戦闘”に対する悔しさの方がずっと強かったのだ。
「とにかく、可能な限り彼らをこちら側に引っ張り込む。連中を叩くのはその次だ!」
 リンファが言った。激しく黒髪を揺らし、峰打ちを叩くその手を返した刃で、次々と流れ
るように傀儡兵を斬り伏せてゆく。
「──三猫(さんびょう)」
 一方で、ミアはサッと片手を添えた握り拳を引くと、そんな小さな呟きを一つ。
 その動作で一拍。次いで瞬間、爆発的に集中させたマナを拳に蓄えて二拍。
「必殺」
 そして三拍目。勢いよく突き出された彼女の拳を中心に、巨大な氣(マナ)の塊が傀儡兵
らを巻き込みながら飛び出していた。
 凝縮されたそのマナの塊は巨大な拳から、猫のような獣の顔面へと形を変え──あたかも
巨大な猫が獲物を丸呑みにするような光景を残して──ごっそりと倒すべき相手(てき)を
戦闘不能にする。
 そんな様を、直前後方に肘鉄で送られた皇国兵らも目を点にしながら見遣っていて……。
「マーフィさん! 数が、多過ぎます!」
「んな事ったぁ分かってる! でもやらなきゃあ皆オシャカだ!」
 それでも、兵力数の差はどだい如何ともし難かった。
 倒せども倒せども皇国兵は方々からやって来るし、何よりもそんな彼らを脅しながら背中
を押す傀儡兵らの数は膨らむばかり。
 同行していたレジスタンスメンバーらも、流石にこの数の劣勢に焦りを訴え始めている。
 炎のようなマナを全身に滾らせ、ダンは戦斧で傀儡兵らを薙ぎ倒しながらそう気炎を吐い
ていたが、彼もまた一人の歴戦の戦士である。彼らの言うように、内心ではその主張を否定
できない冷静な状況判断の眼もまた、同時に持ち合わせていた。
(マズイな……。切欠一つで押し切られるぞ)
(くそっ! 王宮はあの向こうに見えてるってのに……!)
 ダンが、ジークが、皆が、苦戦をその表情に漏らし始めていた。
 遠くに映るのはトナン王宮。その玉座こそ、自分達が目指すべき場所だというのに──。
「盟約の下、我に示せ──」
 ちょうどそんな時だった。
 ふと剣戟の合間から聞こえてきたのは、滑らかな詠唱の声と「オォン……」と空気を震わ
せる余波のような微音。ジーク達ははたと、一瞬だけその戦いの手を止めていて。
「冷氷の擲槍(アイスジャベリン)!」
 次の瞬間、円陣の左側面を射出された何かが、押し寄せる傀儡兵らを巻き込みながら飛ん
で行った。
 気付いた時には遠くでぶつかったとみえる轟音。
 ハッと眼前すれすれで通ったその跡をみるに、どうやら飛んでいったものは巨大な氷塊で
あったらしい。無数の分厚い氷の破片が、地面に散らばっているのが見える。
「何が……」
「起き、た……?」
 加えて、右側に至っては眼前の“空間そのものが切り抜かれた”ようになっており、周囲
の石畳や家屋が、傀儡兵らごと真っ二つに裂かれて倒れ、濛々と土埃を上げている。
「ふむ。間に合ったかの」
「……クラン・ブルートバード副代表ダン・マーフィとジーク・レノヴィン達だな? もう
大丈夫だ。後は私達が引き受ける」
 リンファやジークが、ダンやミアが、円陣を組んでいた面々全員が思わずそろ~っと視線
を遣った先には、七星セイオンとバークス、そして彼ら傘下の軍勢らが立っていた。
 どうやら先の一撃は、彼らの魔導と“空断”であったらしい。
「あ、ああ……。ありがとう、助かった……です」
 七星の加勢。ジーク達は安堵した。これほど心強い味方はそうそういないだろう。
 実際こうしている間にも、事前の指示を受けた傘下の軍勢らは幾つかの奔流の如くに分か
れると、その質・量共に秀でた兵力で以って一気に傀儡兵──この場の“結社”らを押し返
し始めている。
「おうおうおう? やってるねぇ!」
「……長。どうやら」
「ええ。ここが城下の中心域に当たるようね」
 加えて広場の左右──東西から、グラムベルとシャルロットの一団も姿を現してきた。
 勇猛果敢なる獣人の大兵団と、魔力に満たされた「海」を駆る魚人の騎士団。
「お前達も来たか。ふむ。ちょうどいい」
 これでこの場に集結した七星は四人になった。……いや、かの“剣聖”も含めれば五人。
 少々呆気に取られていたジークを一瞥し、セイオンは鎧の上の衣を翻した。
 既に先の二人によって下げられ守られた一行は息を呑み、目の前で繰り広げられている世
界最高レベルの戦闘力に只々感嘆の念を禁じ得ない。
「砦の制圧は分散させた隊に任せてあるな? 早速こちらは市民の救出に掛かろう。ただ見
ての通り“結社”の人形はごまんといる。バークス殿と“獅子王”が防衛を、私と“海皇”
で救出活動を担当するという形で……いいだろうか?」
「あぁそれでいいぜ。こちとらまだまだ暴れ足りねぇからよ」
「相変わらずの血の気ね……。でも妥当かしら。筆頭?」
「うむ。では早速、今回の“仕事”に移るとしよう」
 言って、やがて四人は配下と共に動き出していた。
 バークスとグラムベルの軍勢が再び押し寄せようとする傀儡兵らを鋭い斬り込みで弾き返
すと、セイオンとシャルロットはサッとジーク達の傍に近寄ってくる。
「これから我々は皇都市民の救出活動に移行する。既に王宮内へは共同軍本隊が突入を開始
している筈だ。君達は早く彼らと合流を果たし、アズサ皇の確保に当たってくれ」
「わ、分かった……。でもあいつらの先へどうやって──」
「大丈夫。路なら、作ってあげるから」
 流石は数多の戦場を駆けてきた猛者揃いといった所か。彼らからの言葉、指示は冷静で的
確だった。
 それでも残る皇国兵らを盾にしながら迫ってくる傀儡兵に、ジークが眉根を寄せて言葉を
濁していると、シャルロットは艶のある微笑みを寄越して掌の海皇珠(トリトンスフィア)
をスッと中空に向けるようにして掲げる。
 するとどうだろう。それまで個別の触手として傀儡兵らを撥ね退けていた魔力ある水の塊
が、その動きを合図とするようにして一挙に形を変えてみせたのである。
 それはまるで、蠢く水の遊歩道。
 王宮へと続く一本道。そこへ邪魔に入ろうとする一切の者を、魔力ある水全体がアーチ状
に変化して尽く阻んでいる。
「さぁ早く。城下の事は、私達に任せて?」
 促すようにシャルロットが言った。
 その言葉を受けジークは、促されるまま仲間達と共に駆け出そうとする。だが。
「……そうだ」
 ふとジークだけは、途中で足を止めていた。
 仲間達が訝しげに振り返っている。しかしそんな事を気にするよりもずっと、彼がはたと
思い出した光景は“切り捨てられない”もので……。
「七星! 皆を助けるってなら、あっち──スラムの連中も助けてくれ! あの壁の向こう
に集落が続いてる。俺はあそこの皆に匿って貰っていたんだ」
 仲間達が、七星らが少しばかり驚いたようにジークを見ていた。
 しかし当のジーク本人はそれを恥じることを知らない。いやむしろ、そんな意識など持ち
合わせる必要がないと、意識すらしていなかったのかもしれない。
「あいつら、皇都(ここ)で戦争が始まっても“どうせ行く所なんてない”とか言ってまる
で逃げようとしねぇ。一応出てく前に釘は刺したんだが……多分まだ居残ってる」
 手斧を傀儡兵らに叩きつけ、グラムベルが片眉を上げる。
 バークスが微笑のままゆっくりとジークの方を見遣り、シャルロットも海の宝珠を片手に
したまま静かに目を瞬いている。
「頼む、助けてやってくれ。……ああいう連中こそ、本当は俺達が真っ先に救わなくっちゃ
いけない人間の筈なんだ。簡単に死なせちゃ、駄目な奴らなんだよ」
「……了解した。至急人員を遣ろう。おい」
「は、はい!」「すぐに向かいます!」
 最初に動いたのはセイオンだった。
 眉根を寄せた生真面目な表情(かお)。そのままついっと視線を部下らに向け、その数班
かをその懇願に対応させる。
 彼らは駆け出すと、首元や胸元──体表面の“竜石”に指先を添えてそっと力を込めた。
 するとどうだろう。彼らは次の瞬間、背中に大きな竜の翼と強靭な尾を現出させ、小走り
の勢いのまま一気に文字通り空へと飛んで行ったのである。
 ──竜人態。竜族(ドラグネス)がその本来の力と姿の一部を解放することで得られる、
半人半竜の形態だ。
「さぁ、行け!」
 流石に驚いて空を見上げていたジーク──そして同じく、だが何処か心苦しそうに空を仰
いでいるリュカら仲間達に、セイオンは再度言う。
 ハッと我に返ってジークは再び仲間の下へと駆け出していった。不器用にカチコチの礼で
頭を下げると、そのまま彼らはどんどん水のアーチの遠景になっていく。
「……そういや、西側(こっち)も途中に似たような壁があったな」
「ふむ? そうだの。何もスラムは東区画だけに限らんのだろう。セイオンよ」
「ええ、分かっています。総員、地上からだけでなく空からも捜せ! 私達の受けた依頼は
皇都市民の救出──抜かりは作るな!」
『了解!』
 そして二度三度、また竜人態のドラグネス達が離陸していった。
 強靭なる身体とマナの雲海さえ越える飛翔能力。
 それこそが、かつて彼ら竜族(ドラグネス)という種族を空の──いや世界の覇者にした
原動力でもある。
「彼らの見送りは済んだ。こちらはこちらの仕事を全うするとしよう」
「言われずともな! さぁさぁ、死にたい奴から掛かって来な!」
「あまり遊び過ぎないでよ“獅子王”? 救出が済んだら私達も本隊に合流しないと」
「なぁに大丈夫さ。強き意志ある限り、ああいう者らはそう容易く潰えはせんよ」
「…………」
 他の七星と共に、セイオンは静かな思考の水面を脳裏に映していた。
 波紋が拡がってゆく。そっと横向きに構えた長剣の刃との遠近法で見える先には、彼らが
駆けて行ったトナン王宮がある。
(あれが、シノ殿下のご子息……か)
 去り際に見せたあの表情。貧しき人々を憂うその眼差し。
 私見だが、きっとあの青年は──。
「……。行くぞ!」
 しかしてそんな思考を振り払い、剣を握る手首を返せば体の向きと水平に。
 セイオンはそっと目を細めて号令を発すると、率いる配下の者らと共に、迫り来る傀儡兵
らの群れへと地面を蹴った。


 ──真に守るべきものは、きっと私のすぐ傍に在ったのだ。
 斬撃の一発一発を受け止めいなしながら、サジの脳裏にはそう遠くで呟くもう一人の自分
が映る。そんな頭の中で、俯き加減な自分と眼前現実に剣を振るってくる娘を重ね合わせ、
サジは槍を握る手にぎゅっと強い悔恨を込めていた。
 拘泥すべきだったのは、きっと「誰」が治めるかよりも「如何」治めるかということ。
 守備隊の砦で再開した時、皇子(かれ)は憤っていた。
 あの時は只々戸惑いにばかり心を囚われてしまっていたが、今ならあの方が──いや殿下
が自分に向けてきた意思、その意図する所が分かるような気がする。
 捉える眼が、違っていたのだろう。
 自分達かつての臣下は、国という大枠でしか人を見ていなかったのだ。
 しかし殿下は、ジーク様は違った。あの方達は市井に溶け込み、その人々の直の声を心身
に焼け付けながら、この二十年という歳月を過ごしてきた。
 故にその眼差しはもっときめ細かく、屋台骨(くに)ではない個人──そしてその最小限
の集まりである“家族”へと向いていて……。
(国が人を安寧にさせるのではない。先ず彼ら自身がそれらを求める“希望”を持たなくて
は……何も)
 皇への忠節が国を支える。それがひいては人々を支えることになる、と。
 だが長く私の骨身に染み込んだ道徳は、もしかせずとも“高慢”であったのだ。
 「支えてやる」ではなく「支えたい」と寄り添う。何よりもか弱き守るべき者達へ。それ
だけで、よかったのではないか。
「はぁぁぁァッ!」
「ぬぅ……っ!」
 こうして刃を交えている、自分達父娘(おやこ)も例外ではなかった筈なのではないか。
 皇(しゅくん)への忠節。
 その一言で自分は、最も近しい同胞(かぞく)への眼差しを彼の君に丸投げしていただけ
なのではないのか──?
(ユイ……、レイカ……)
 コマ送りになるようなセカイの中で、サジは心の内に妻子の名を呼んでいた。
 自身の槍と娘(かのじょ)の太刀。その両方が幾度となく衝突し、火花を散らしては互い
を持ち主ごと弾き飛ばす力のベクトル。
 頬を汗が伝っている。飛び退き間合いを取った身体がバクバクと心音を強く打っている。
 今からでも──やり直せるのだろうか? 拗れた糸を戻すことはできるのだろうか?
 もう、こんな戦いなどせずともに。
「……」
 思いながら願いながら、ぎゅんと槍を回して半身を前へ、握る得物は背けた側の腰元へ。
「サ、ジぃぃぃ!」
 対峙する娘(ユイ)を覆うマナがより一層強くなった。
 彼女自身の制御を超え、既に身体中までを不可視に変え始めていた魔導具。その効力はや
やあって、この時遂に彼女の姿を完全に見えなくしてしまっていた。
 強く激しく地面を蹴る音がした。ぐんと、怒気に任せた殺気が見えないその姿と共に迫っ
てくるのが辛うじて分かる。
「──ッ」
 気持ち大きめに身体をよじって回避を。だがそれでも彼女の完全な無色透明の強襲には対
応し切れず、サジの脇腹にはざくりと赤い斬撃跡。
「……ぬっ!?」
 しかし異変が起きていたのは何も彼一方ではなかった。
 切り結んだと同時、ユイにもまた起こる変化。
 ほんの数秒だけ、不可視が部分的に解け驚いた表情を見せる彼女のその脇腹にもまた、彼
が放った一薙ぎの跡が走っていたのである。
 そして何よりも……その傷口から“焼印”が押されるように、ジュッと熱を帯びた文様が
刻まれ始めていて。
 互いにふらついて一歩二歩。それでも気を確かに引き寄せ、踵を返して向き直る。
 サジの目には、再び不可視化に呑まれながらも薙ぎ払いの構えで地面を蹴るユイの姿が映
っていた。
 やはり目視では捕捉不能。だが彼は取り乱すことなく、
「……本当は、これを使いたくはなかったんだがな」
 そう呟くとその槍に大量のマナを込め……それまで柄全体にきつく巻かれていた文様付き
の厚布(ふういん)を解き放つ。
「──結べ、印導の槍(スティグマランス)ッ!」
 次の瞬間だった。
 戒めを解かれた朱塗りの槍は一層鮮やかに輝き出し、主に命じられ投擲されると、まるで
生きているかのように猛スピードで唸り、ユイへと襲い掛かったのである。
 見えない筈。その思考は片隅にこそあった。
 だがそれでも、サジの放った魔導の槍は標的を見落とさない。
 横薙ぎを振り出すそのワンテンポ前。
 そんな格好の時点で彼女を食い止めるように、朱色の槍先は確かに彼女を──つい先程、
奇妙な文様を焼き付けた脇腹を刺し貫いていたのだった。
「がッ……!?」
 ユイは目を見開き、思わず前屈姿勢になっていた。
 ボタボタと脇腹から流れ落ちる自身の血。そしてその刺突の衝撃により思わず太刀が手か
ら滑り落ちたことで、それまで隠れていた彼女の姿がスーッと露わになる。
「……。こんな隠し玉がっ、あった……なんて……」
 がくりと。
 槍に貫かれたまま膝を折った娘に、サジは哀しげに眉を潜めて歩み寄っていた。
 そっと、しかし確かにがしりと再び得物を握り直した彼は、虚ろな眼になり始めてた彼女
に向かって呟く。
「普段は、私自身この槍(もの)の力を解放する事は殆どしない。……何故だかはもう分か
るだろう? この印導の槍(スティグマランス)の特性は“二撃必中”──その身に一度刻
印が刻まれれば、放たれた槍先は寸分違わず“刺し貫いた結果”へと突き進むんだ」
 即ちそれは、使い方次第ではほぼ確実に相手の息の根を止めるのも可能だということ。
 そしてその力の大きさが故に、持ち主であるサジ自身も多用を控えている程の魔槍である
ということ。
 ユイが聞こえているのかいないのか、大きく肩で息をしている。
 勝敗は、彼が殺る気(やるき)になればとうに決着していたのである。
 だがそれでも、彼はギリギリまで使わなかった。使いたらがなかった。
 全ては彼自身がこの戦いの中で抱き膨らませてきた、自身を含めたこれまでの十数年への
疑心と贖罪の思いに他ならず……。
「──すまなかった」
 自身も血塗れになってしまう。だがもう、そんな事はどうでもよかった。
 そっと彼女の前に屈み込み、そして悔恨に表情を滲ませながら、サジはぎゅっと我が子を
抱き締める。
「すまなかった……ユイ」
 やがて涙が彼の頬に伝ってゆく。忠節の対象当人らから返されて以降、ずっと自身の中で
抱いてきた迷いの天秤が、今はっきりと逆側に振れていた。
 だがしかし。
 当の娘(かのじょ)の意識は、既に遠く途絶えていて──。

 アーチ状の水壁の下を駆け抜けきると、ややあって王宮本棟の正門が見えてきた。遥か後
方からは、重なり合って響く交戦の音が聞こえてくる。
 どうやら共同軍(みな)は、急ピッチで各所の制圧と市民救出を進めているらしい。
 そんな支援の気配に一層背中を押される思いがして、ジーク達はずらりと砲台を並べて待
ち構える皇国兵達──と彼らを脅している傀儡兵の一団──に真正面から突撃してゆく。
「う……撃てぇ!」
 ピタリと首筋に突きつけられた鉤爪に震えながら、隊長格の皇国兵が叫んだ。
 それを合図に、同じく無言の殺気を向けてくる傀儡兵らを背後に、皇国兵達は一斉に砲弾
を放ってくる。
 飛来する砲撃の一斉掃射。だが。
「盟約の下、我に示せ──伏さす風威(ダウンバースト)!」
 ジーク達にそれらが届くよりも早く、リュカが詠唱を完成させていた。
 前方にかざした掌を中心に展開される白色の魔法陣。それと同時に、飛んでくる砲弾は局
所的な吹き降ろしの風圧によって強制的に地面に着弾、爆発する。
 両者の間を隔てる空間に、爆発による土埃が濛々と舞った。
 手で庇を作って。思わず皇国兵らは身じろぎたじろぐ。
 どうやら直前で魔導によって叩き落された。それは何となく理解したのだが……。
「盟約の下、我に示せ──這寄の虚声(フェイオン)!」
 そんな爆風の視界の中、次いで聞こえたのはステラの完成させた詠唱だった。
 土煙の中、掌を中心に展開される灰色の魔法陣。そこからまるで稚魚の放流のように一斉
に飛び出していったのは、限りなく無色透明な人魂のようなもの達。
「? 何──」
 リュカの一撃で周りの風景の方が“濃かった”所為もあったのだろう。
 皇国兵らは、飛んできたその奇妙な存在に気付くのが大きく遅れてしまっていた。
 そしてようやく、それが第二波な魔導であると悟った時には、この人魂に身体を通り抜け
られ、彼らは次々にガクリとその場に倒れ出したのである。
「うぐっ。か、身体が……?」
「どうなって……? 力が、入らない……」
 灰色の魔法陣、即ち無を司る“虚”属性の魔導。
 ステラが放ったのはそんな系統の中でも“相手の活動力を抑え込む”術式だった。
 だからこそ、そんな魔導が直撃した皇国兵達は、意識こそあるが最早自分の意思で立ち上
がることすらできなくなっていて。
「そこで寝てるといいよ。私達の目的は、貴方達と戦うことじゃないんだから」
 勿論それは、彼らを無闇に戦わせないための選択だったが、同時にその背後で脅しを掛け
ていた傀儡兵らの動きを鈍らせるという目的も兼ねていたのである。
「皆、今だよ!」
 そして次の瞬間、ステラの合図で土煙の中からこちら側に飛び出してきたのは、マーフィ
父娘やジーク、リンファ達といった、一行の前衛メンバー。
「そこを──」
「退けぇぇぇッ!」
 戦斧や拳、太刀に銃剣。
 ジーク達は一斉に、この動きの鈍った傀儡兵らに攻撃を仕掛けていった。
 厳密にはヒトではなく、皇国兵ほど行動不能ではなかったが、この“結社”の量産兵らも
また大きく動きを抑え込まれている。
 かの組織の“人形”として、あくまで彼らは立ちはだかろうとしたが、後はもうジーク達
の猛攻の前に沈むしかなかった。
 そんな様を見て、力が抜けて倒れたままの皇国兵達も、ようやくホッと胸を撫で下ろして
いるようだった。レナらに「あとで医務班の方が来る筈ですから」と慰めを受け、やっとそ
こで先刻まで強いられていた戦意を解いてくれる。
「──さて……。皆、下がっていてくれ。門を破る」
 そうして一先ずこの暫く動けないだろう彼らを離れた場所に移し、再び閉ざされた正門の
前に集まり直すと、同じくこの入り口を見上げていたサフレがはたと言った。
 にわかにコゥッと彼の全身を、いや掌に滾り出すマナのオーラ。
 彼は魔導具の指輪を嵌めた片手をそっと門の方へとかざし、ジーク達面々が早足で自分の
後ろに回っていくのを確認すると、叫ぶ。
「出力最大……。迸る雷波(スパークウェイブ)ッ!」
 次の瞬間、展開された黄色の魔法陣から極太の電撃が放たれた。
 眩しいを通り越して痛いほどの閃光。そのエネルギー全てが、分厚い王宮内部へと続く扉
に大きな穴を開ける。
「……よし。行くぞ!」
 そしてダンのその一声を合図に、ジーク達はいよいよ王宮内へと進入を果たした
 扉の向こう側で待ち構えていたのか、既に吹き飛ばされた瓦礫の下敷きになっている者も
含め、入ってすぐのエントランスホールには“結社”の黒衣姿がずらりと並ぶ。
『……』
 ガチャリと得物を構え、両陣営は睨み合った。
 二刀を握り締めたジークもその例外ではなく、ぎりっと片方の奥歯を半ば無意識に噛み締
めると、視線を前にしたまま味方達に問う。
「……で? 肝心の玉座はどう行きゃいいんだ?」
「六階の奥です。エントランスの奥に大きな階段が見えるでしょう? あそこを上ってゆく
のが最短ルートになる筈です」
 この日(とき)の為に、レジスタンスの情報収集に抜かりはなかったらしい。
 曰くクーデターで一度は大部分は焼け落ちたそうだが、再建された現在もその内部構造は
さほど変わってはいないのだという。
「なるほどね。道理でこうわんさかと邪魔がいる訳だ……」
 反旗を翻したとはいえ、アズサ皇にとっても此処は生家だからか。それとも、新規に図面
を引く労力(コスト)を削りたかっただけなのか。
 そこまでは定かではないが、少なくとも彼女を押さえる為には、この進行方向真正面を塞
いでいる傀儡兵の群れを突破する必要があるらしい。
 傍の階段から中二階を迂回するべきか? いや、どのみち連中の視界に捉えられてしまう
以上同じことだ。ならば、やはり稼動域の広いエントランスを突っ切った方がいいだろう。
『…………』 
 城内での交戦か、断続的に遠くから爆音らしき物音がしている。
 幸い、目の前のこいつらは皇国兵の“人質”を伴っていない。
 自分達を弄ぶ余興(しょうわる)よりも、玉座に近づかせない守りを優先させているため
なのかもしれない。
 しかしそれは、むしろ好都合だ。
 ジーク達は、ぐぐっと今まさに傀儡兵らへ突撃しようとして──。
 すぐ頭上方向に爆音がしたのは、ちょうどそんな時だった。
 ジーク達も傀儡兵らも、両陣営がその方向──中二階の一角から勢いよく噴き出すような
爆風を見上げ、目の当たりにする。
「兄さん、皆!」
「アルス……? そっか、本隊(おまえら)か」
 濛々と上がる煙と、ダメージのまま手すりから落下してくる傀儡兵達。
 そんな“結社”への追撃に兵がワァッと飛び出してくる中、ジーク達はそこによく見知っ
た弟達の姿を見つけていた。
 傍らの階段から此方に降りて加勢してくれたのは、セドやサウル、シノらを伴う共同軍。
 中二階奥から回り込み、傀儡兵らの背後を突くように降りてきたのは、イセルナ達クラン
ブルートバードを中心とした分隊。
「よし……っ、そっちは無事だな? 連中を挟み撃ちにするぞ!」
「私達が動きを止めるから、その隙に叩いて!」
 故に、一気に兵力差を逆転したジーク達にとって、この場の“結社”の守りは多少の時間
稼ぎにしかならなかった。
 後方からはブルートの羽ばたきによる冷気とハロルドの聖魔導、シフォン達の一斉掃射。
 そうして凍り付けにされ、崩される傀儡兵らの路塞ぐ隊伍を、加勢を得たジーク達が間髪
入れずに猛然と突き破っていく。
 たとえ相手が“結社”であろうと、数の利は戦いにおいて大きな要素を占める。
 前後からの挟み撃ちに遭ったことで、この黒衣の一団もややあって長くはもたず、完全に
崩れ去っていた。
 大きなダメージによって活動力を失い、文字通り人形として倒れたままに。
 或いはジュワジュワと、霧散するマナと共に個体を維持できず消滅してゆく格好となり。
「──貴方達も無事だったみたいね。良かった」
「そっちもな。お互い、そう簡単にくたばるタマじゃねーよ」
 エントランスを隔てていた黒衣の壁を取り壊し、クランの団長と副団長、共同軍に加わる
面々は合流を果たすと束の間のやり取りを交わしていた。
 それはイセルナやダンといった、クランの主要メンバー同士のものであったり。
 或いはセドと将校らに囲まれ護られるように姿を見せた──そしてジーク達がその存外さ
に驚きを禁じ得なかった──シノの姿であったり。
 また或いはそんな彼女の生身の姿に、思わず感極まって泣き出してしまうレジスタンスの
面々であったり……。
「……」
 そんな中、ジークは密かに小休止だと息を整え直していた。
 思えばスラムから飛び出した後、ずっと駆けっ放しだった気がする。
 レナのお陰で怪我のダメージは感じなくなっていたが、同時に自分は仲間(みんな)の力
なしでは過去の因縁とも渡り合えないのかと、悔しさもまた脳裏に過ぎるのを感じる。
「に、兄さん……」
「ジーク」
 そうしてぼうっと、城内の地図を映した端末を片手に指示を飛ばすサウルを、サフレが何
処か不信な眼で見遣って(その彼にマルタが静かに寄り添って)いるのを視界に映している
と、ふと横から自分を呼ぶ声がした。
 共同軍の面々に囲まれた、弟(アルス)と母(シノ)、そしてエトナの姿だった。
 息子の無事を確認して一つの安堵を得たような母と、十中八九そんな安堵以上におっかな
びっくりな様子の弟と。
 特に長話をする訳でもなかった。だがそれでも、充分通じていたと思いたい。
「ごめんなさい。私の所為でこんな……」
「ご、ごめんなさい。勝手にホームを抜け出し──……?」
 だから、ジークはすぐに同じく言葉を多く返すことはしなかった。
 母には小さく首を横に振り、弟にはぽむっと頭を掌で覆って少々強めにわしゃわしゃと。
「いいんだ。もうお互い、知らない所で背負い込む(しょいこむ)のはやめにしようぜ」
「兄、さん……?」
「……そうね。ありがとう……」
 母は息子達に迷惑を掛けまいと、弟は自分達が心配で居ても立ってもいられなくて。
 俺達は、もっと仲間(ひと)を頼っていいのかもしれない。勝手に決めるべきじゃない。
 それを仮に“弱さ”だと哂うのなら、むしろそんな態度こそが弱さ──いや、何でも自分
の力でできるんだという高慢さに他ならぬのではないか。
『お帰りなさい。独りにして、ごめんね……?』
 一方でアルスもまた、兄の許しに思わず目を瞬かせると密かに驚いていた。
 脳裏に蘇っていたのは、流れ着いたフォンテイムを発ち、共同軍の一員として再びクラン
の皆と──同席していた母と再会した時の記憶。
 あの時母は確かにそう言って、目を潤ませながら、ぎゅっと自分を抱き締めてくれた。
 似ている。二人とも、同じように自分を許してくれている。
 僕が、この状況を作り出してしまった作戦立案者の一人だと、全く聞いていない筈もない
だろうに……。
「──さて。積もる話なら、アズサ皇を確保した後にするとしようぜ?」
 そうしていると、ややあってセドは大きく声を張り、集結したジーク達場の面々に呼び掛
けてくる。
 そう“戦い”はまだ続いているのだ。
 ディスプレイの向こうで怨嗟と共に通信を途絶えさせた、かの皇を押さえねばならない。
 黒衣の一団に代わりエントランスホールを埋め尽くした一行は、誰からともなくその目指
すべき場所──奥の王の間に直行する大階段へと一斉に視線を向ける。
「……六階、か」
 だがそんな中で、ジークはポリポリと頭を掻いて呟いていた。
 このまま順当に上って行ったとして、少なくともあと四回──王の間の出入口も含めると
すれば五回は、先程のように黒衣の兵士達から“歓迎”されると考えていい。
「どうした?」
「ん? ああ……ちょっとな」
 ダンやイセルナを始め、仲間達の少なからずがふっとこちらを向いてきている。
 ジークは思わず苦笑していた。頭に疑問符を浮かべる、そんな仲間達を見遣りながら。
「別によ、馬鹿正直に真正面から上ってかなくてもいいんじゃねぇのって思ったからさ?」
 そしてふと、まるで何かを思い出したかのように。
 ジークはニッと笑ってみせると、場の皆──特にサフレとレナに向かって口を開き出す。

 急速に陽が傾くかの皇を象徴するように、王の間は文字通りの荒れ模様を呈していた。
 辺り一帯、四方八方に飛び散った血の赤や肉塊の桃色、剥き出しになった骨の白。
 そんな生命を削って塗りたくった色彩の中に、かつての皇の臣下・将校達が二度と動かな
くなって倒れ込んでいる。
「──ッ」
 その屍の絨毯の上を、忙しない剣戟が奔っていた。
 一方は七星の一人“剣聖”リオ。
 一方はジーヴァ、フェイアン、バトナス、エクリレーヌら“結社”の使徒達。
 リオの黒刃に、ジーヴァが振り下ろす鈍色の刃がぶつかる。
 足元で転がる亡骸らを互いの剣圧吹き飛ばしながら、甲高い金属同士の悲鳴と火花が上が
っては散ってゆく。
 ふと、それまで押し返していた刃を引き、リオが半身を寄せた。
 その最小限の動き。しかしまるでその動線の隙間に吸い込まれるように、次の瞬間、多数
の冷気の蛇──側方からフェイアンが放ってきた攻撃が空を切る格好となる。
 逆の側方からは、片腕を魔獣化させたバトナスが迫っていた。
 しかしリオはそれもちらと一瞬間見遣るだけで、すぐに軌道修正して向かってくる蛇らと
共に、彼を円を描くような斬撃で以って弾き返してみせる。
 一見して軽く、だがその一撃に込められた力の大きさは推し量るべく程に強烈。
 牙を剥いた冷気の蛇らはことごとく切り裂かれ、腕を振り出す寸前だったバトナスも、急
遽防御の構えにならざるを得なかった絶妙の間合い。
 加えて並の攻撃では傷一つ付かない筈のその魔獣の豪腕に、瞬間ザクっと赤い筋が走った
ことからも、何気なく込めた一刃ですら、この“剣聖”に関しては油断など許されないこと
が如実に物語られていると言える。
「ぬぅ……っ」
「バトちゃん、下がって!」
 それでも使徒達は、簡単には引き下がらなかった。
 バトナスが負傷した──しかしすぐに魔人(メア)の不死性から自動的に治癒が始まる腕
を一瞥し、心持ち後退る一方で、エクリレーヌが言いながら大きく空いた方の手を掲げた。
 その間も再びジーヴァが、フェイアンがそれぞれ剣を振るってくるが、リオは瞬時にそれ
らの太刀筋が一本になる間合いを見出し踏み出すと、最低限の所作──太刀を持ち上げ横に
した防御の型だけでそれら一撃を防いでみせる。
「皆、あいつをやっつけて!」
 そんな使徒二人の背後から迫ってくるのは、エクリレーヌが召喚した魔獣達。
 だがリオはそんな相手の加勢にも一瞥を寄越すだけで、サッと楯代わりにしていた太刀の
腹を斜めにして二人の力のベクトルをずらしてやると、そのまま彼らと魔獣達、その一直線
上の軌道に向かって。
「──邪魔だ」
 ぐっと下段に引き絞った太刀を、込めた力の解放と共に振り抜き、まるで閃光のような剣
圧で以って目の前を薙ぎ払う。
 ジーヴァとフェイアンはその構えの時点で危険を察知し、飛び退いていた。
 故に、彼の一閃をまともに喰らって粉微塵となったのは魔獣達であった。
 放たれた一撃の直線上。亡骸や柱、高級石材の床すら、そこにあるもの全てを渦巻く剣圧
は巻き込み、寸前でバトナスに抱えられて離脱したエクリレーヌの立っていた場所、その背
後の壁をもぶち抜いて、轟音と共にまた一つ、王の間に戦いの激しさを物語る大穴が開く。
「……ったく、無茶苦茶だな。おい」
「ふむ。流石は現役の七星だねぇ。一筋縄では沈まない、か。こんな事ならもっと早い内に
始末しておくべきだったのかもしれないけれど」
「どのみち、今と似たような状況になると思うがな……。それに、実際に奴が仕掛けて来な
い以上、私達が優先すべきは任務だ。分かっているのだろう?」
「うぅ……。皆が、皆がぁ~……」
 濛々と上がる石埃の中、使徒達は互いにそんなやり取りを交わしながら、カツカツとすっ
かり荒れ果ててしまった王の間に立ち並んでいた。
 微笑みは崩さずとも剣呑な影を滲ませるフェイアンと、あくまで淡々と呟きながら鈍色の
長剣を携えているジーヴァ。バトナスは交戦によって一層ボロボロになった王の間を見渡し
ており、彼の小脇に抱えられたままのエクリレーヌは魔獣達(ともだち)を容赦なしに滅さ
れたことに涙目になってジダバタとしている。
(棚上げも甚だしいな……)
 そんな彼らに、リオは内心強い不快感を隠せなかった。
 自然と眉は顰められ、長太刀を握る手には一層力が篭もる。
 貴様らはその任務とやらの為に姉者を誑かし、尚且つその家臣らをも世の人々が視る前で
惨殺してみせたのだ。
 確かに元は彼女の強権故に病んだこの祖国(くに)だとしても、その闇に付け込んだ連中
の罪は──事実は変わらない。
(早く、姉者を……)
 奴らに自分の剣は通用しているらしい。だがこのまま足止めされている訳にもいかない。
 リオは再び得物を構え、今度こそ行く手を阻む使徒達(かれら)を越えようとする。
『──ッ?』
 異変を感じたのは、ちょうどそんな時だった。
 全身の感覚を奔ったのは、足元からぐんと迫ってくる気配。
 思わずリオは目を落とし、再び顔を上げた。
 一方で使徒達もまたこの事態の変化に気付いたようで、同じく怪訝な様子で以って床面に
視線を落としている。
「──……ぅ、おぉぉぉーッ!!」
 そして次の瞬間、彼らはやって来た。
 扉の向こうからではなく──階下から床を突き破って。
 轟音と共にぶち抜いた床の大穴から姿を見せたのは、全身が岩のような大蛇と六枚の翼を
持つ鎧天使だった。
 ガラガラと、無数の瓦礫が落ちてゆく音がする。
 そんな中でこの巨体二つは、自身らに乗せていた者達──ジークらと合流した共同軍本隊
を身を屈め、手を広げて床に降り立たせると一旦スゥッと還って(きえて)いった。
 ……よもや、こんな方法で加勢に来るなんて。
「無事か、叔父さん!」
 そうリオが内心呆気に取られて目を遣っていると、ふと向こうからジークが仲間達を伴っ
て駆けつけて来るのが見えた。
 エイルフィード伯やフォンテイン侯、勿論我が姪(シノ)も。
 この二十年近い彷徨の中で見知った顔も少なくない。
 先刻この場で姉が叫んだ怨嗟と直後の惨劇。大方、それらを画面越しに見て居ても立って
もいられなくなったのだろう。
 実際、共同軍にエスコートされて降り立ったシノは、あまりに変わり果てた王の間の惨状
を目の当たりにして絶句。ややもすればそのまま気絶しそうなほどに青ざめている。
「……リオでいい」
「えっ? あ、ああ……」
 傍までやって来たジークに、リオはそう短く答えていた。
 もう共同軍(どうし)によって、自分達の関係は聞かされているのだろう。
 そう思って、彼は再び黒刃を携えて向き直ろうとする。
「まさか床をぶち抜いてくるなんて……。スマートじゃないね」
「……でもあのお兄ちゃん、前にもお城に穴開けてたよね?」
 使徒達が、改めて立ちはだかっていた。
 リオがついと視線を上げる動作に、ジーク達もまた倣って──絶句する。
 斬り捨てられたのは、何も王の間に集まっていた家臣団や役人ばかりではなかったのだ。
 彼らを隔てた数段の向こう、玉座の奥に、ざっくりと胸元を斬られて衣服を鮮血に染めた
アズサ皇当人が倒れていたからである。
 加えてそんな彼女を傍らに放置したままで、フェニリアとルギスは何やら奥壁に仕掛けら
れたギミックを弄っているらしい。
「……ッ! てめぇら、一体何を……?」
「答える義務はないな」
 一斉に得物を構え直すジーク達。
 だがそれでも、並ぶ使徒達の中心に在るジーヴァの冷静さはぶれなかった。
 広間の後方では、騒ぎを聞きつけた扉の向こうの傀儡兵らが迫って来ており、既に共同軍
との交戦を始めている。
 ガコンと、不意に何かが解除されるような音がしたのは、ちょうどそんな時だった。
「……残念。一足遅かったみたいね」
 ルギスと共にちらりとこちらを見遣って、フェニリアが言った。
 同時に“解除”に向けて動き出した玉座奥の壁。
 その次々とスライド式に左右へ開いて格納されていく様子を見る限り、どうやらあそこは
多段重ねの扉で封印された隠し部屋であったらしい。
「兄さん、皆。あ、あれ!」
 そしてアルスが逸早く、そうした部屋が存在する意味を、皆に指差して示す。
 隠し部屋の更に奥。そこには緻密な細工で彫られた祭壇が設けられており、加えて二度の
強襲の末にジークの手から奪われた六華が、確かにその壇上に祭られていたのである。
「……やっぱ、玉座(こっち)にあったんだな」
 小さく舌打ちをしつつも、ポツリと一言。
 ならばこのまま取り戻すだけだ。
 そう言わんとするように、ジーク達は尚更にこの場を突破しようとする。
「──手間取らせるなよ。面倒臭ぇ」
 しかし、そんな駆け出す一歩すら、使徒達は与えなかった。
 不意に聞こえたのは、ボロボロになった柱の一つに背を預けていた着流しの男。
 ジーヴァ達が「計画通り」と言わんばかりに、彼がサッとジーク達に手をかざそうとする
のを段上から見下ろしている。
「……ッ。ジーク、貴方だけでも──!」
 そしてどんとジークがリュカに背中を押されたのと、彼女を含めた仲間達が忽然と姿を消
してしまったのは、殆ど同時の出来事だった。
「なっ……!?」
 思わずよろめきながら、ジークは振り返っていた。
 目に映ったのは、一瞬間だけ中空へと浮上しながら消えていった藍色の魔法陣。
 驚きは隠せなかった。だがこれには見覚えがある。そう──空間結界だ。
 仲間達は、あの一瞬のタイミングで以って一度に閉じ込められてしまったのである。
「……面倒臭せぇ。一人、取りこぼしちまった」
 一方では血塗りの荒れ果てた玉座に、ジークとリオが。
 一方では着流しの男・リュウゼンの創り出した、灰色の柱が無数に刺さり並ぶ空間結界の
中に仲間達が。
 バサリと着流しを翻して、リュウゼンは心底鬱陶しそうに呟いていた。
「おいジーヴァ。予定通り人形どもと何人かをこっちに入れ込むが?」
「ああ。そうしてくれ」
「なら僕達が行こう。元より仕留め損なった邪魔者だからね」
「だな。ちょっくらぶっ潰してくらぁ」「よ~し、頑張るぞ~!」
 次いで彼は段上のジーヴァに確認を取り、パチンと指鳴らしを一つ。
 するとフェイアン、バトナス、エクリレーヌの三人が、交戦していた傀儡兵・共同軍双方
を道連れにしながら一瞬間に灰色の空間の中へと飛んでゆく。
 目にも留まらぬ早業だった。
 数で押し掛けて来た筈なのに……あっという間に分断されてしまっていた。
「さて」
 ゆらりと。ジーヴァは鈍色の長剣を収めると、二人を一瞥して踵を返していた。
 背後左右にはフェニリアとルギス。更に背後には解除された扉達から一直線に隠された祭
壇とそこ祭られた護皇六華が見て取れる。
「フェニリア、暫く二人と遊んでやれ。私は“あれ”を鎮めなければならん」
「別にいいけれど……。それこそリュウゼンに頼めば」
「おいおい、無茶言うなよ。中に送った面子を剣聖(あいつ)の刀の錆にする気か?」
「……それに、そこの青年は良くも悪くも奴らの核となっている人物だ。敢えて引き離した
ままにしておけば、連中に対して心理的なアドバンテージにもなる」
「嗚呼、なるほど……。了解」
 すると入れ替わるように、今度は緋色のローブの女・フェニリアが段上に立った。
 柱に背を預け、気だるげに半眼をしたままリュウゼン。
 アズサ皇を担ぎ、奥の祭壇へと向かうジーヴァとルギス。
 そんな三者に、ジークはちらちらとと焦りを隠せない視線を泳がせており、一方でリオは
祭壇の方を見遣ったまま、じっと何かを考え込んでいるように見える。
「さぁ……。坊や達」
 すると刹那、焔が奔った。
 だがそれは、明らかに普通の炎ではない。
 まるで真紅の触手が如く、主の意思を微細に反映しているかのような、妖しく蠢く焔達。
「嬲って(あそんで)あげる」
 そんな魔性の火の中を、踊るように長髪を靡かせて。
 彼女はそうフッと、艶かしくも嗜虐的に笑ったのだった。

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  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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