日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅱ〔22〕

 皇都を巡る戦闘勃発の報は、国内に詰めていたマスコミや各国の間者らによって瞬く間に
世界中に広まっていった。
 以前より、アズサ皇と反皇勢力(レジスタンス)との敵対自体は、知る人ぞ知る世界の紛
争の一つではあった。しかし……この争いはこれから先、世界中の不安の眼差しを一手に引
き受ける話題になるであろうことは間違いない。
『た、ただいま交戦が始まった模様です! たった今、両軍の衝突が始まりました! 皇都
近隣の方々は一刻も早い避難を──』
『こちら皇都トナン郊外です。つい先程、レジスタンス軍がソサウ城砦への攻撃を開始しま
した! 現在、城砦から皇国軍の砲撃も──』
『戦闘がついに始まってしまいました。二十年もの間、燻り続けてきた内紛が今まさに大き
な火の手を上げようとしています。本日は急遽予定を変更し特別編成でお送りします──』
 そして続々と始まる、メディアの報道合戦。
 報道スタジオの面々と現地レポーター達が忙しくなくやり取りを交わしている。
 遠巻きからの撮影でもありありと窺えた。
 緩やかな丘陵、四方を囲む堀に護られ築かれたソサウ城砦──その内側の王宮の頭部分。
 そこへワァッとなだれ込んで行く、大地を覆う軍勢の人だかりへと、城砦の上方から灼け
る閃光を伴った砲撃が撃ち込まれ出す。
 そんな遠くの、或いはさほど遠くもないこの国の戦を、人々は不安や戸惑いの中、ディス
プレイ越しに見つめていた。
 財友館や街の集会場、酒場など。
 彼らは室内に設置された大型端末(そもそもに、庶民はこうした通信ツールを個人で持っ
ていない場合が殆どだ)をぐるりと囲み、魔導と機巧技術の融合が生んだこれら通信技術を
利用して、画面の向こうの、同じくそれら技術をふんだんに用いた“殺し合い”に何とも言
えない表情(かお)を並べて震えていた。
 一方で貴族や各国の要人らの大多数は、刻々と送られてくる報告と併せて今後の自分達の
“損益”を頭の中で弾き出そうとしながら、事態の風向きをじっと傍観しようとしていた。
 或いは……そうせざるを得なかった。そういった釈明をするのかもしれない。

「……」
 そんな画面越しの世界の混乱ぶりを、彼女もまた見つめていた。
 シノブ・レノヴィン──もとい亡き先皇夫妻の娘、シノ・スメラギである。
 場所は大型飛行艇内の一室。彼女に宛がわれたVIPルームだった。
 今、シノブは皇国(トナン)に向かっている。
 争いの渦中にある彼の国を止めるべく、何よりも巻き込まれた息子とその仲間達を助け出
すべく、そのひた隠しにしてきた己の身分を明らかにし、こうしてアトス・レスズ共同軍の
一行に加わって一路雲上の旅人となっていたのだ。
(始まって、しまった……)
 今回最も保護すべき要人として、自分は両軍にこんな豪奢な部屋と外で警戒する警護の兵
を宛がわれいる。
 だが、それがシノブにとってはどうにも哀しかった。
 自分が逃げても争い続けていた皇国(そこく)。
 自分達親子を逃がしてくれなかった運命というもの。
 何よりも、再びそれらに抗おうと──争いの終止符と息子達の救出を望んでも、結局その
方法は同じく戦という形を採ってしまっている事実。
 だからこそ、自分だけがこんなVIPルームでぬくぬくと祖国へ向かっていることも、彼
女には拭い難いもどかしさを与えずにはいられなかった。
 ゴゥンゴゥンと飛行艇──軍用飛行艇の重低音なエンジンが遠くで鳴っている。
 しかしその音や振動すらも、この豪奢な部屋は遮ってしまっている。
 シノブは胸を掻き抱き、眉を下げた表情(かお)でそっと分厚い窓ガラスの外へと視線を
向け直した。
 目に映る景色は今乗っているこの艦と同じく、群れを成している飛行艇の群れ。そして眼
前と眼下に確かに流れてゆくマナの雲海。
 空は、平等だった。
 何があろうとも変わらずセカイに無数の魔流(ストリーム)を通じてマナを供給する。
 たとえこの雲の下、東の祖国で今大きな争いが起こっているとしても。
「…………」
 哀しかった。いや悔しかった。
 自分の所為で──あの日、目の前で起きた暴挙から逃げた、国の民を置き去りにして逃げ
たことで長く人々を苦しめてしまった。
 せめて伯母様が政治に手腕を振るって安定させてくれれば、それで皆が安心して暮らせる
のなら。そう言い聞かせた想いは所詮奇麗事に過ぎなかったのかもしれないと、後悔ばかり
が激しく胸の奥を責め立ててくるようで。
 止めたい。自分があの日逃げたが故に今も尚続くこの争いを。
 少なくとも、その思いだけは確かだった。
 息子達をも巻き込んでしまった、その自責の念故という面もあろう。
 しかし、もう顔を背けたままではいけないのだと思った。いられなかった。
 かつて自分は多くの民よりも、一人の夫(コーダス)を選んだ女ではある。
 でも、そんな自分でしかこの戦いを止められないというのなら、今度こそ自分は──。
(ジーク、リン、リュカちゃん、ダンさん、皆……)
 ぎゅっと薄く艶のある唇を横に結び、胸元を強く掻き抱いて。
(どうか……無事でいて)
 かつての姫君は、ある意味最悪の形でその帰郷を迎えようとしていた。


 Tale-22.ソサウ城砦攻防戦(前編)

 先手を打ったのは皇国軍だった。
 城砦外周からずらりと並び口を向けられた、無数の機械の大砲。
 それらに兵らが次々と長大な砲弾を装填し終わると、この南正門に攻め寄せようとしてく
るレジスタンス──紛う事なき生命(ヒト)の群れへと、将校らの合図と共にそれらが一斉
に撃ち出される。
「防御ッ!」
 しかし軍勢を率いるサジは、その動きを察知するとバッと手を挙げると叫んだ。
 瞬間、隊伍の中衛から後衛にかけて配置された魔導師らが重ね合わせ、ドーム状にこしら
えた障壁が一同を包んでいた。
 それとほぼタイミングを同じくして、雨霰と降り注いでは爆発をする砲弾。
 少なからず衝撃は術者たちにも伝わってきていた。だが導力の瞬発力で以って力を合わせ
たマナの盾は確かに皇国軍からの第一波の砲撃を防いでいたのである。
「散開ッ! フェーズ開始!」
 そして、これら砲撃の爆音が戦闘開始の合図となった。
 濛々と上がる土煙、そっと一時的に解かれる大規模の障壁。その中で、サジは再び軍勢に
指示を飛ばした。
 すると、それまで一箇所に集まり徒党を組んでいた面々が一斉にバラけ始める。
 刀や槍を引っ下げた前衛、長銃を構えた中衛、そして魔導師とみられるローブ姿の後衛。
 それらはそれぞれに役割分担された、多数の小隊という態だった。
「逃がすな! 撃てっ!」
 とはいえ、外周上の皇国兵もおいそれと見逃すことはしない。
 砲弾の再装填と併せ、銃剣を携えた兵士らが城砦の頭上からこの散開を始めるレジスタン
ス軍へと射撃を始めてゆく。
 だが、この追撃に関してはさほど命中率が良い訳ではなかった。
 相手が散開を始め、一箇所に固まらず城砦の左右へと広がり狙いを定め難くなったという
事もある。その点在化した方々から反撃──いや牽制的な銃弾が飛んで来て、あまり姿をみ
せて突っ立っていられないという状況の変遷もある。
 だがそれ以上に、各小隊に追随する魔導師達がその都度、障壁を張って防御を固めてくる
という戦法を採られ始めたという側面が大きかった。
「……うぉっ!?」
「くっ。ちょこまかと……」
 砲撃なら、まだ数人程度の障壁の束をぶち抜けたかもしれない。
「怯むな! 各自装備で応戦しろ!」
「砲科も装填を急げ! 数はこっちの方が上なんだ、引き寄せて確実に仕留めるんだ!」
 しかし、一旦大きく互いに距離を開けて走り回り始めた彼らに、機動力に欠ける砲撃で応
じるのには無理が出始めていたのである。

「……妙ね」
 城砦前の攻防を映像で見、随時の報告で耳にし、アズサはじっと目を細めて呟いていた。
 そんな皇の言葉に、同じくこの軍議の場に列席する上級将校らもぽつぽつと同意の首肯を
みせている。
「はい。彼らの兵力は城砦内のそれの半分にも届いていません」
「なのに、わざわざ目の前でそれを分散させているとなると……」
「ええ……」
 そして彼らの発言にアズサは頷きながら、そっと顎に手を当てて考え込んだ。
 少なくとも合理的ではないのだ。
 ただでさえ、レジスタンス軍の兵力はこちら側に比べて劣る。
 仮に砲撃で一網打尽にされるのを怖れて散開体勢を取ったにしても、それでは城砦を突破
するという目的(である筈)からは遠退くだけではないか。
 加えて今こちらは「防衛戦」を想定した配置──即ち、余剰兵力を城砦内に抱えた状態で
動いている。一度それらが解き放たれれば、自分達がその数に押されるであろうことぐらい
あの男には予想できている筈。
 なのに……実際は敢えて散開するという選択を、彼らは採っている。
「もしかしたら、奴は」
「ご、ご報告申し上げます!」
 そんな時だった。軍議を開いている王の間に、伝令の兵士が一人駆けて来た。
 期せずして皇の呟きを封じる格好になり、周囲の面々は眉根を寄せたが、アズサ本人はさ
して気に留める様子はない。ただついと顔を上げて「何かしら?」と報告を促してくる。
「せ、先刻より近隣守備隊詰め所との連絡が取れなくなっています。導話回線が何らかの原
因で遮断されてしまっているものかと思われます」
 場の将校達、そしてアズサがサッと一斉に怪訝の表情を漏らした。
「回線が? それは一箇所だけではないのだな?」
「は、はい。現在確認中ですが、最寄の主要砦全てと連絡が取れず……」
「……ふむ?」
 互いに、いや皇にちらと眼を向けて、アイコンタクトでの伺いを立てる。
 そして彼女が小さく強く頷いてみせると、将校の内の一人が指示を飛ばした。
「大方レジスタンス側の妨害策だろう。すぐに魔導師を集めて精霊伝令を飛ばせ。状況を報
告するように伝えろ」
「はっ!」
 ビシリと敬礼のポーズを取ってから、この兵士は再び慌てた様子で駆け出して行った。
 戦いにおいて情報は大きなアドバンテージ、なくてはならない生命線だ。
 それらが、しかも同時多発的に遮断されたとなれば、何らかの策略が働いた結果だと考え
るのが妥当だろう。
「……やはりと言うべきかしら。奴らは、真正面から攻めるつもりはないらしいわね」
 兵士の足音が遠退き、遠くで防戦の砲撃が散発的に耳に届く中で、アズサは改めて脳裏を
掠めた推測が間違っていなかったらしいと小さく頷き、深く眉根を寄せる。
「では、奴らは既に何かしらの策を?」
「時間稼ぎ、でしょうか。守備隊の砦から増援を向けられれば挟み撃ちになりますからな」
「その目的もあるでしょうね。兵力差、不足は否が応にも実感している筈。それにも関わら
ず、奴らは攻め上がって来た……。この城砦を攻略する、その策を持たずしてそんな判断を
下すほど、あの男(サジ・キサラギ)は馬鹿じゃない」
「……。随分と慎重だな」
 すると、それまでじっと黙り込んでいた人物がふとそんな言葉を漏らしてみせた。
 面々がはたと視線を向けた先。そこには柱に背を預け腕を組んでいたリオ──“剣聖”の
姿があった。
 心なし不快さを示す表情(かお)や、畏れで強張る表情(かお)が方々に入り混じる。
 それでもアズサだけは、実の姉だけは眉根を寄せたまま、動じた様子は見受けられない。
只々じっと、横目で自分を見てくるこの弟(すけっと)に暫し眼を遣ると言う。
「貴方も奴を甘くみない方がいいわ。何せ私を相手に、この二十年近い間、ずっと逃げ回っ
て来た男なんだから」
「だから今回も何かしら仕込んでいる筈だ、と」
「ええ。回線切断(じかんかせぎ)だってそう。そうした手を打ってまで待たなければなら
ないものがあるということは」
「……。増援か」
「でしょうね。敢えて散開しているのも、こちらの兵力密度を薄めておいた上で、その増援
と共に各個撃破する為の布石……と考えることもできる」
 そんなアズサの先読みに、将校らが少なからずざわめいていた。
「で、ではすぐに外周の兵力を再編成せねば……!」
「しかし防備を空ければ、それこそその穴を突かれてしまいますぞ?」
「落ち着きなさい。ここで慌てたら、それこそ奴らの思う壺よ。状況はこちらが有利である
ことに変わりないわ」
 それでも、アズサはピシャリとそう一言で面々を黙らせると、フッとリオから視線を外し
て再び考え込む。
 ──できる事ならば、リオを投入して一挙に殲滅させるという手も考えにはある。
 だが彼自身をあくまで秘密裏にしている以上、世界の注目が向いているこの戦場に出して
しまうのは拙かろう。
 だからこそ城砦にではなく、こうして近衛部門に配置させているのだ。
(始めから、無策で攻めて来るようなことはないだろうとは思っていたけれど……)
 正直言って、策を断定するにはまだ材料が少な過ぎた。
 勿論、向こうもこちらの読みを警戒して“奥の手”はギリギリまで隠しているであろうこ
とは推測できる。
 しかし少なくとも、このまま討ちあぐねて時間だけが経っていけば、奴らの待っている何
かしら──味方の増援、或いは奥の手的な策がエンドマークに至るのは確かなのだ。
「……潰すわよ。その策を出してくる前に」
 だからこそ。
 アズサは瞑っていた目を開け、ついっと顔を上げて将校達を見渡した。
「いくつか外に部隊を出しなさい。兵力(かず)は……相手の三倍もあれば充分でしょう。
散開する奴らを囲って狭めて、一気に叩き潰しなさい」
「はっ……!」
「仰せのままに」
 その勅命で以って、将校達は動いた。
 待機していた部下らを経由して、伝令がすぐさま城砦防衛の現場に伝わってゆく。
(……怖れなんてないわ。この国の皇は、この私なのよ)
 先刻の、弟の冷たい皮肉の眼差しを脳裏から振り払うように。
 この配下一同の様子を見遣りながら、アズサはこの絶対有利な筈の戦いに決着を望む。

 散開するという作戦は、やはり当たりだった。
 予想通り、皇国軍は城砦外周上からの砲撃・射撃で以って自分達を沈めようとしている。
「走り回れ! 止まったら的になっちまうぞ!」
 多数の小隊に分かれたレジスタンスの面々に叫びながらも、ダンもまた、ミアや同じ班の
面子と共に城砦前の緩やかな丘陵をジグザグと駆けてゆく。
「班の隊伍を乱すな! 障壁は城砦側に集中させて、導力は極力温存するんだ!」
 そして時に交わり、時に併走しながら、サジとリンファの班もまたそれに倣い、南正門の
左右へと散らばってゆく面々に随時指示を飛ばしている。
 散発的に銃弾が、長めのタイムラグを挟んで時折砲弾が飛んで来ては地面を抉っていた。
 しかしダン達は小回りの効くこの体勢を活かしてそれらを交わし、或いは術者の障壁で防
御すると、お返しとばかりに外周上の兵と銃撃を放ってゆく。
「……ッ! 危なっ」
「くそっ、チマチマと……!」
 皇国兵らも外周の塀に繰り返し身を隠し、タイミングを図って銃撃の応戦を続ける。
 故に、戦況は城砦の外周部上下を挟んだ銃撃戦となっていた。
「盟約の下、我に示せ──」
『硬石の盾(ストーンウォール)!』
 加えて見下ろせていた筈の地面に、次々と魔導によって巨大な石壁──その場ごしらえの
防御壁までもが造られてゆく。
「猪口才な……。砲撃、用意!」
 一方は多くの兵力を持つが、あくまで城砦の「防衛」として応戦しようとする皇国軍。
 一方は兵力でこそ劣るが、稼動域が限られているという彼らの状態を逆手に取って巧みに
その迎撃を交わしつつ、何度となくチクチクと射撃を加えるレジスタンス軍。
「てぇーッ!!」
 だがその最前線の“心理戦”は、確実に後者の側に傾きつつあったのだ。
(……よ~し。上手いことバラけて来てるな)
 次の瞬間、砲撃で砕け散る石壁達。
 それらを背後に再び駆け出しつつ、ダンはちらりと肩越しに城砦の様子を確認していた。
 確かに、自分達はただでさえ劣る兵力を散開させている。
 勿論、このまま逃げ続けるだけでは城砦を“攻略”することはできない。だが──。
(そろそろ、痺れを切らし来てもいい頃だと思うんだがなぁ……?)
 銃弾が飛んで来る。砲弾が飛んで来る。
 それらをジグザグに駆けながら交わし、或いは術者らの障壁で防御しながら、ダンはちら
と距離を置いた同じく一見逃げ回っているサジらに目配せを送った。
「……」
 すると彼から返ってきたのは、コクと小さく強い首肯。
 戦況を観察し、タイミングを図っていたことはこのリーダーも同じであったらしい。
「フェーズ2だ!」
 そしてサジが手信号と共にそう叫ぶと、この両班を中心に、城砦の左右翼に向けてバラけ
ていた小隊群の一部が南正門へと集まり始める。
「むっ……?」
「兵力を正面に回せ、来るぞ!」
 勿論、外周上の皇国軍がそれに気付かない訳がなかった。
 指揮を執る各配置の将官らが、仕掛けられたその変化に一瞬眉根を寄せるが、すぐに対応
して兵力を向けようとする。指示が飛び、銃剣を構えた兵士らが集まり出す。
 しかし、その動きはダン達に比べて鈍いと言わざるを得なかったと言えるだろう。
 それまで砦の両翼へと広がっていたレジスタンス軍。
 彼らのその陣形に対応すべく、外周上の兵らも自然と広がっていたのだ。
「おい、早くしろ!」
「隊伍を急げ!」
 しかし両者では圧倒的に違う部分がある。
 そう、稼動域──駆け回れる物理的なスペースの差だ。
 散開したレジスタンス軍の全てが集まり出した訳ではないということもあり、皇国兵らも
全てが動く訳には、防衛の穴を開ける訳にはいかなかった。
 それでも城砦の外周上では、動き回る為の動線がどうしても限られてくる。迎撃の為に砲
台を設置して場所を取っていたことも、その意味ではネガティブに働いていた。
『硬石の盾(ストーンウォール)!』
 再び中空──外周上から掃射される銃撃。
 しかしその攻撃も、再び魔導で生成された石壁や障壁によって防がれ、加えて真正面にそ
の防御壁が林立したことで、一瞬間、皇国軍からダン達の姿が遮断される格好となる。
「くそっ、またか!」
「これじゃあ埒が明かない……」
 だからこそ、期を同じくして上層部から下された判断は、良い意味でも悪い意味でも彼ら
の転機となった。
「伝令~ッ! 軍議からの決定が下りたぞ。部隊を派遣し、直接敵(レジスタンス)に斬り
込めとのお達しだ!」
 まさに痺れが切れる寸前での許可。
 渡りに船といった如く、前線の兵士・将校らはその旨を受けるとすぐに動き出した。
 中隊クラスが三班、待ち侘びたかのように城砦内部から隊伍を整えて閉ざした門の前に並
び始める。
「砲撃の後に開門する。総員、両翼に開きながら敵軍を囲い込め!」
 一斉に兵士らは銃剣を構えて踏み出す準備をした。それとほぼ同時に頭上の外周部からの
砲撃が飛び、再び造られていた石の防御壁を粉砕してゆく。
「突撃ィ!!」
 そして正門が開いた。上げられていた橋が下り、堀と城砦の間を渡す。
 南正門に集まったダン達の兵力よりもずっと多い、およそ八百人規模の群れ。
 その直接の迎撃班がわぁっと、眼前の防壁を撃ち砕かれたダン達に襲い掛かろうとする。
「──掛かったな」
 だが、ダン達は哂っていた。
 土埃が立ちこめる中、各々に得物をしっかりと構え、突撃せんとする彼らを見遣りながら
ほくそ笑んでいた。
 瞬間、世界がスローモーションになる。戦況が、この瞬間変わろうとしている。
「今だッ! 先生さん!」 
 ダンが叫んだ。その声に突撃しようとしていた兵士らの少なからずが眉を顰める。
 しかし……もう遅かったのだ。
 次の瞬間、現れたのはリュカとレナ、ステラ、サフレにマルタ。場所はちょうど兵士達が
躍り出て来ていた跳ね橋の先、その側面。
 彼女達はそこに“突然現れて”いた。──あたかもじっと姿を隠していたかのように。
『なっ……!?』
 魔導に知識のある者ならば分かっただろう。
 藍色の魔法陣と共に突然現れてみせたその芸当。
 それが紛れもなく、空間結界から出てきた瞬間だということを。
 十中八九、戦闘が始まった頃からこっそりと門が開かれる時(このしゅんかん)を待って
いたのであろうことを。
「しまっ……」
 当然、兵士達はスローモーションのような世界の中で顔を引き攣らせていた。
 正面にはダンやサジ達、集結し始めたレジスタンスの軍勢。その虚を突く形で現れたこの
奇襲班。加えて、今自分達は左右に広がった──彼女達から見れば一直線上の陣形を取って
しまっている。
「貫け──」「盟約の下、我に示せ──」
 サフレが槍を突き出そうと、ステラが詠唱を完成させようとしていた。
 そして兵士らはその先制攻撃を防ぐ術はなく。
「一繋ぎの槍(パイルドランス)!」
「陰影の眷属(シャドウサヴァント)!」
 次の瞬間、悲鳴と共に彼らはその餌食となった。
 サフレが突き出した槍は唸りを上げて延びると、直線的になっていた眼前の兵士達を一気
に弾き飛ばし、ステラが発動させた冥魔導は彼らだけでなく、外周上で目を見開く面々をも
巻き込みその混乱に拍車を掛ける。
「くぅ……っ!」
「小癪な真似を……!」
 攻勢の為の一手の筈が、痛手にすり替えられていた。
 それでも、何とか致命打を受けずに済んだ兵士らはそれぞれにリュカ達へと反撃の銃口を
向けようとする。
「無駄だ」
 しかし、その乱射もまた痛手に替わることになる。
 彼らが引き金を引く、その寸前でサフレはリュカ達の前に一歩躍り出ると、首に巻いたス
カーフ──反射の魔導具・楯なる外衣(リフレスカーフ)を拡げ、バサリと巨大化したその
布地で彼らからの銃撃をことごとく弾き返してみせたのだ。
 当然ながら、その流れ弾は兵士達にも少なからず飛んでいき、
「冷静さを失った攻撃など……僕には通じない」
 新たに倒れる兵士達の悲鳴と共に、その数をかさ上げする結果を引き寄せる。
「レナちゃん、今の内に」
「は、はい。……征天使(ジャスティス)っ!」
 そしてこの隙を突き、今度はリュカに促されたレナが魔導具を発動させた。
 金色の魔法陣から現れたのは、剣と盾、鎧に身を固めた巨大な天使型の使い魔。
 すっかり隊伍を崩され出撃の出鼻を挫かれた彼らは勿論、城砦の外周の兵達もまた、その
巨体を思わず見上げて唖然と目を見開いている。
「さ……下がって下さーい!」
 声自体は気弱な叫び声。
 だが次の瞬間、バッとレナが横手を振り突撃の指示を与えると、この鎧天使は構えた剣を
振りかざして、目の前の開け放たれた城砦の門を轟音と共に粉砕したのである。
『──……ッ!?』
 大地が、いや城砦全体がその衝撃で大きく揺れていた。
 思わず近くの塀などにしがみつく兵士達。
 そしておずおずとこの鎧天使が振りかざした斬撃の先に目を凝らすと、そこには無残にも
破壊された南正門──その鋼鉄製である筈の扉の残骸が、無数の巨大な金属塊となって地面
に転がっているのが見えて。
「も、門が破られた……!?」
「ま……まだだ! まだ外門が壊されただけだ!」
「急げっ! 早く内門を閉じ──」
 再び兵士達は慌てた。
 ようやく敵軍が何をしでかしたのかを把握し、急いで戦法の舵をもう一度「防衛」に切り
直そうとする。
 だが、焦りは更なる粗を生むものだと、彼らは文字通り身体に叩き込まれることになる。
 破壊された城門、防衛の要を破られかけていることに気を取られ過ぎた余り、出撃しよう
としていた兵士達も、外周に配置されていた兵士達も、土煙と石壁の残骸を隠れ蓑にして迫
ってくるレジスタンスの軍勢に気付くのが遅れてしまったのだ。
「ぼさっと、してんなよッ!」
 しかし気付いた時には既に遅く、ダンの斬り込み隊長的な一撃で兵士が数人まとめて薙ぎ
倒されるのを合図として、レジスタンス軍はこのだだ開きになった城門内へと一挙に押し寄
せ始める。
「くそっ……! 何としてでも食い止めろ、これ以上侵入を許すな!」
 そう。サジ達は、始めから馬鹿正直に“攻略”するつもりなどなかったのだ。
 押して駄目なら引いてみる、とはよく云ったもので。
 採ったのはわざと相手を焦らし、向こうから門を開けてくるのを待つという戦法。
「ダン殿、今の内に!」
「ああ……。分かってる!」
 そして何よりも、この城砦を突破し王宮に到達するのは、たとえそれが限られたメンバー
であっても構わないという『戦う為の戦い』ではなく『戦いを終わらせる為の戦い』を徹底
するその強い覚悟で……。
「レナ、もう一発頼むぜ!」
「フォローは、ボク達に任せて」
「う、うん……」
 ダン達一中隊はサジとリンファの班、城門破壊に貢献してくれたリュカ達と合流し、外門
を突破して更に二重三重と設けられた内門を目指す。
(やっぱり、私には……慣れないよ)
 ハの字に垂れた眉のまま、スーッと深く一度深呼吸。
 左右上下から食い止めようと沸いてくる兵士達をダン達が迎撃し、守ってくれる中、レナ
が再び使い魔の使役に意識を集中させた。
 するとこの鎧天使が城砦を飛び越え、風圧で外周の兵達を弾き飛ばしてやって来ると、緊
張やら怖さで目を瞑ったまま振りかざす彼女(あるじ)の手の合図と共に、内門もまた纏め
て叩き斬る事に成功する。
 二度三度と、また轟音が鳴り響いた。剣撃の余波で、周囲の兵士達が吹き飛ばされる。
「……っ。開きました!」
「よくやった! 行くぞ!」
 少なからずの疲労の息遣いと共に言ってきたレナに、ダンは肩越しで振り向き進軍を皆に
促した。
 レナは一先ず征天使(ジャスティス)の召喚を解き、そんな彼女を両側からそっとリュカ
とステラが支えると共に駆け出してゆく。そんな面々を護るようして、術者らの張る障壁が
方々から飛んで来る皇国兵からの銃撃を防いでいる。
 一同はダンを先頭に内門を抜けようとしていた。だが──。
「ッ!?」
 次の瞬間、サジははたと背後から迫ってきた殺気を感じると、振り返りざまに槍の腹でそ
の一撃を防いでいた。
 バチバチと、その威力を物語る火花が目の前で散ってゆく。
「……」
 その強襲の主は、一人の女性将校だった。
 何かを握っているらしいが、目に見えないその得物。
 そして何よりも、その一撃を辛くも受け止めたサジに向けられた苛烈なまでの敵意の眼。
「隊長っ!?」
「来るな、リンファ! お前は……ダン殿達と先に行け!」
「し、しかし……」
 思わずその剣戟の音にリンファが、少し先を行こうとしたダン達もが振り返っていた。
 だが当のサジは加勢に加わろうとするこの元同僚──部下を言葉で制し、そう肩越しに叫
んで彼女を先に行かせようとする。
「この戦の目的を忘れるな! 元より私達は“彼ら”の到着まで時間を稼がなければならな
いんだからな」
「……。分かり、ました」
 リンファは躊躇っていたが、それでもサジの言葉を受けぎゅっと唇を結ぶと小さく頷いて
いた。去り際に「御武運を」と一言を残すと再びダン達と合流し、レナのお蔭でぶち抜かれ
た内門を抜けてそのまま城下方面へと走り去ってゆく。
「ふっ……!」
 その遠くなる後ろ姿、気配をしっかり確認してから、サジは先程からの鍔迫り合いを打ち
切らせた。
 ぐっと力を込めて、押してくる威力──間違いなく刀剣の感触を弾き返すと、お互いに大
きく飛び退いて間合いを取り直す。
「……。久しぶりだな、ユイ」
「罪人風情が気安く呼ぶな」
 対峙するのは、不可視の刀を構える女性将校・ユイ。ジークと王宮内で一戦を交えた、小
隊を率いる皇国軍の尉官だった。
 何とか先の城門破壊の中でも生き残ったらしい部下達もその背後に引き連れ、彼女はサジ
が自身に向けて発したその第一声に、そんな強い拒絶感を以って応じる。
『……』
 まだ自分達の周囲で戦闘は続いていた。
 だが不思議と、それらの轟音や剣戟は何処か遠くに感じられるような気がして。
「……サジ・キサラギ」
 だがやがて、たっぷりの沈黙の後、ユイはその見えざる剣先を向けてくると、
「貴様を、国家反逆の罪にて──討つ」
 この目の前の仇敵(じっぷ)に向かって、そう言い放ったのだった。


 爆音が、時間と共に大きく連続して聞こえるようになっている気がする。
 慌てて報せに来た者達によれば、先刻ソサウ城砦を挟んで皇国軍とレジスタンスが戦闘を
おっ始めたらしい。
 身を寄せていたスラム街の人々と共に、ジークは遠くから聞こえてくるその戦の音を睨み
付けるようにしながら、じっとベッドの上で眉を顰めていた。
「まさか、都(ここ)にまで攻めてくるなんてなぁ」
「大丈夫……だよな? 軍隊がいるんだし」
 周りでは、やはり皆が心配そうにしている。
 しかし、この違和感は何なのだろう?
 不安そうな様は多分気のせいではないと思う。なのに彼は、皆何処か“他人事”であるか
のような距離感で話しているようで……。
「……お前らは、逃げないのか?」
 だからこそ、ジークは思わず口を開いていた。
 彼ら城下の市民を思えば、このまま戦闘が中断なりをしてくれればいいのかもしれない。
 だが個人的な事情を踏まえれば、そうも言っていられないとも分かってはいた。
 十中八九、このレジスタンスの攻勢──共闘しているであろうダン達の起こした行動は、
自分を助け出すという目的を少なからず含んでいるのだろうと予想できたから。
「逃げるって……何処にだよ?」
 なのに。彼らは至極それが当たり前であるかのように答えていた。
「ここが何処かだか分かって言ってんのか? 他に行く所なんてねぇよ」
「な、何言ってんだ! すぐ近くで戦争が始まってんだぞ?」
「……何処に行ったって同じだよ。戦は場所を選らばねぇし、何処に行こうが巻き込まれる
時は巻き込まれるさ」
「そもそも、俺達に“他の居場所”なんてとうになくなってる」
「家族揃ってここに流れ着いたって奴も、結構いるからなぁ」
「……」
 それは、きっと深い諦観だった。
 強烈に変わりゆくこの国に追いつけず、置き去りにされてきた者達の嘆き。それらが彼ら
の心身に染み付いた様。
 ジークは眉根を寄せたが、二の句を継ぐことはできなかった。
 彼らは怠惰だった、努力を怠ったと責めれば済むのだろうか? そうは思えなかった。
 そもそもどちらが“正しい”かなど自分が決めていい訳でもない。
 だがそれでも、彼らをこうして諦めの中に突き落としたものを──この国が続けてきた争
いは、やはり許せないと思う。
(やっぱり……止めねぇと。こんな戦いなんて……)
 自嘲するように微笑んで(わらって)いる彼らを眺めながら、ジークはギリッと歯を食い
しばっていた。
 まだ正直、身体は本調子ではない。
 それでも今動かずして……何の為に、自分は王座(あそこ)への突撃を試みたのか。
「あ、兄ちゃん?」
「何処に行くつもりだよ?」
 だからこそ、ジークは次の瞬間には身体に鞭打ってベッドから這い出していた。壁に掛け
られていた上着に袖を通し、仮の二刀も腰に差し直す。
「……様子を見てくるんだよ。いいか? お前らも死にたくなきゃ逃げろ。俺と逃げてきた
連中もいるし、一緒に避難するんだ」
 慌てて住人達が引きとめようとしたがジークは聞く耳を持たなかった。
 伸ばしてくる制止の手を軽く振り払い、まだふらつく身体を引き摺ってジークはあばら屋
の出口へと歩いてゆく。
「馬鹿言いなさんな。怪我人を一人で行かせられるもんかね。……無茶だってのは、あんた
もよく分かってるんだろう?」
「分かっててもだ。俺はまだ諦めねえ。仲間(みんな)が、必死こいて戦ってんだよ」
 老婆もまた、一人の医者としてこの怪我人を引きとめようとしていた。
 それでも、ジークは足を止めない。肩越しに彼女に振り返ると、その強い眼──嘆きを憤
りに替えたかのような意思の眼差しを、場にいる面々を突き刺すかのようにみせる。
『…………』
 暫しの間、ジークと老婆はその立ち位置のまま睨み合うようになっていた。
 その静かな威圧感に、周りの住人達は困惑するばかりで介入できないでいる。
「……そういう負けん気は、血なのかねぇ」
 誰にともないといった感じの嘆息。
 だがやがて、先に折れたように呟いたのは、老婆の方だった。
 ジークは一瞬怪訝に目を細めたが、すぐに彼女が引き止めることを諦めたと分かり、今は
余分な思考は余所に置いておこうと意識から締め出す。
「そこまで言うなら、もう止めないさ。だが……どうなっても知らないよ?」
「お、御婆!?」
「いいのかよ……? まだ、兄ちゃんは」
「ああ。ま、治す気のない患者を視るほどあたしは人が良くないんでね」
 そこでようやく住人達が戸惑いを口にし始めていたが、そこは人々の信用を得ている御婆
の一声だったのだろう。言葉の表面こそ突き放すようなものだったが、その真意は自分を送
り出すと決めた、自身への言い訳に近かったのだと思う。
「……ありがとよ」
「礼なんざ要らないよ。さっさと行きな。……守りたいものがあるんだろう?」
 ジークはそっと視線を逸らし前に向き直りながら、そう呟くように言っていた。
 それでも彼女は同じく憎まれ口を。もうお互いに目を合わせ直すことはしなかったが、確
かに出てゆく者と送り出す者がそこにはあって。
「……」
 身体を引き摺りがちにしながらも、ジークはその場を後にして行った。
 足音が遠退いてゆき、老婆と心配の気色でお互いの顔をちらちらと見合わせる住人達がこ
のあばら屋に残される格好になる。
(さて……。皇子(あんた)のその意志が吉と出るか、凶と出るか……)

 予想していた通りというべきか。
 スラム街と一般市街地、そして富裕層の暮らす区域を隔てる壁を越えてゆくと、その先に
は、目前に迫る戦火から逃れようと城門に殺到している人々の姿があった。
 既にスラム街の位置については住人達から聞かされている。皇都の東の外れだった。
 だとすれば、今自分が身を潜めて様子を窺っているあの大きな城門は、皇都の東の玄関と
いった所だろう。遠くには王宮らしき建物がそびえているのも見える。
(ここを越えられれば、王宮にもぐっと近づけると思うんだが……)
 しかしジークは、中々そこから先に進むことができないでいた。
「通せよ! 何で開けないんだ!」
「レジスタンスが攻めて来ているんだぞ、俺達を見殺しにする気か!?」
 何もそれは、自身が手負いの身体だからではない。
 視線の向こう側で、手持ちの財産をまとめて逃げ出そうとする人々と、そんな彼らを閉ざ
された城門の前で阻止する兵士達との押し問答が繰り広げれていたからだった。
「だ、大丈夫。城砦の内側にいれば安全だ」
「だからパニックを起こさず、各自避難所へ──」
「そんな保障、信用できるか!」
「俺は聞いたぞ? 何でもさっき、デカブツが南門を破ったって話じゃないか!」
 何とか殺到する市民を避難所へと誘導しようとする兵士達。
 だがそんな苦心は、群集の中から叫んだ一人の言葉によって脆くも崩れ去っていた。
 大きくざわつき、混乱の度合いを一層増す人々の怒声。
 彼らは真偽を確かめる余裕もなく、不安を煽られたそのままの勢いで、遂に最前列では兵
士らにむんずと掴み掛かる者達まで出始める。
「つべこべ言わず門を開けろッ!」
「軍隊は俺達を見殺しにするのかッ!?」
「お、落ち着けって! お、俺達にそこまでの権限はないんだよ!」
「それこそ勝手に城門(ここ)を開けてレジスタンス軍が入り込んできたら、本当にどうな
るか分からなくなるだろうが!」
 もう話し合いという状況ではなくなっていた。
 他にも南門が突破されたとの報を聞きつけたのだろうか、気付けば城門前に押し掛ける人
の群れはどんどん膨れ上がっているようにも見える。
「……」
 物陰に身を隠したまま眉を顰め、ジークは内心決めかねていた。
 再び王宮に潜入し、アズサ皇を──この争いを止める。
 その合目的さからすれば、この人だかりを利用して兵士らの眼をかわすべきだろう。
 しかし、実際のジークはその決断にまで至れなかった。
 目の前で、視線の先で人々が叫んでいる。助けを求めている。
 たとえそれが保身であろうとも、現実に迫る戦火から逃げようとするその姿に、果たして
罪があると断じれるのか。
「──……チッ!」
 そして次の瞬間、ジークは小さく舌打ちをしながらその場から駆け出していた。
 人ごみの中を縫って王宮を目指すのではなく、市民と兵士らが押し問答をしているその向
こう側に対面するように。
「入り込んでいる奴なら……ここにいるぜ?」
 ダンッと踏み締めて、彼らに一声。
 市民も兵士達も、突然現れたこの青年に目を瞬いていたが、ややあって兵士の一人が思い
出したように仲間達を小突き出す。
「おい。もしかしてあいつ、例の手配犯じゃないか? 陛下の勅令の……」
「えっ? ……あ。ほ、本当だ!」
 言われて、内一人が懐から以前ジークを名指していたあの手配書を取り出して本人だと確
認すると、にわかに兵士達の注意がこちらに向いてきた。
 少なからず慌てて肩に下げていた銃剣を構え直し、彼らは確保に走ろうとする。
「……」
 だがそのタイミングよりも一足早く、ジークは踵を返すと再び物陰の向こう、路地裏の方
へと走り去っていた。
 追ってくる兵士達に表情を歪めながら、それでも口元には「してやったり」の弧。
 そのまま肩越しに、ジークは呆気に取られていた市民達に向かって叫ぶ。
「お前ら、今の内に早く逃げろ!」
 そこでようやく、彼の意図に気付いた市民達が我に返って動き出した。
 ジークに向けられた注意で手薄になった兵士達に、彼らは数の利に任せて力ずくで閉ざさ
れた門を破りに掛かる。
「おわっ!?」
「や、やめ……」
「うるせぇ! 道を開けろォ!」
 そしてどうっと、押し寄せた人々によって東門は遂に開かれたのだった。
 散々に押し飛ばされ蹴飛ばされ、阻止できない兵士達の周りを避難の市民達が我先にと駆
け抜けてゆく。
「──……はぁ、はぁっ」
 その一方で、ジークはそれから暫く銃剣を手に追ってくる兵士達を撒くことに集中する羽
目になった。
 皇都の地理に明るい訳でもないのに、ひたすら路地裏を伝っては彼らの気配のしない方へ
しない方へと身体を引き摺ってゆく。
(……何とか、上手くいったか?)
 路地裏の一角でぐたりと背を預けて辺りの様子を窺う。
 相変わらず遠くで交戦の爆音が響いているが、それとは対照的にこの市街地にはまるで人
の気配が感じられない。
 先程の市民達のように我先にと逃げた跡なのか、或いは家や避難所にに篭るなりして戦い
が終わるのを待っているのか。
「……。何やってんだよ、俺は」
 そんな思考を、バクバクと鼓動を速くし悲鳴を上げる身体で行いながら、ジークははたと
我に返ったように掌で自身の顔を覆うとそう独り己を哂っていた。
「見つけたぞ! こっちだ!」
 だが、そんな息継ぎすらも束の間で。
 次の瞬間には路地の向こう側から数人、兵士達が自分を見つけて声を上げてくる。
 舌打ちをして再び身体に鞭打ち走り出す。直後にチュインと数発の銃弾が壁を掠めて建材
を削る。ジークは走った。もう一度彼らを振り切るべく走った。
「……うっ!?」
 しかし地の利は兵士達(むこうがわ)にある。
 やがてジークは、気付けば通りの先にある広場へと追い詰められていた。
 人気のなくなった、本来は市民で賑わっていたであろうこの石畳の場。そこに一人ぽつん
と弾き出されたかのような彼に、あちこちの路地から追跡の兵士達が姿を見せてくる。
(流石に、無茶だったって事か……でも)
 じりじりと、兵士達は銃口を向けつつ包囲を狭めてきた。
 逃げ場らしい逃げ場も見当たらない。すっかり見渡しがよくなってしまっている。
 それでも、ジークは投降するつもりなど更々なかった。
 身体は相も変わらず悲鳴を上げている。しかし手はそっと腰に二刀に伸びてゆく。
 諦めるものか。俺は母さんを、皆を──。
「……?」
 ちょうど、その時だった。
 ふと兵士の一人が背後からの気配を感じて振り返ったその瞬間、飛んできた何かに胸元を
ざっくりと切り裂かれ、その場に鮮血を撒き散らして倒れた。
 思わず他の兵士達もその一撃──奇襲に注意が向いてしまっていた。
「余所見、だよ」
 だからこそ彼らは、何処からともなく飛来してきた影の軍勢に対応する身構えを失ってい
たのである。
 それまで一対多数でジークを取り囲んでいた兵士達が、無数の影に襲われ逃げ惑う。
「ボク達の仲間に」
「何やってんだよ!」
 そしてそんな彼らを仕留めていったのは、獣人父娘(おやこ)の拳と戦斧。
 ジークが目を見開くその眼前で、彼ら──ダン達が次々と兵士達の懐に飛び込んでは問答
無用で打ち倒してゆく。
「お前ら、一体何処──かがはっ!?」
 最後に戸惑いを漏らす兵士を、リンファの一閃が斬り伏せていた。チンと長太刀を払い、
そっと鞘に収めてその黒髪を揺らす。
 どうっと倒れて動かなくなった追っ手の兵士達。
 代わりに姿を見せたのは、見間違う筈もないダン達とレジスタンスの面々。仲間達。
「……よう。待たせたな」
 そして一通り邪魔者を片付けたのを確認すると、彼らはそれぞれに不敵な笑みや愛しさの
眼を、そう目を瞬いているジークに向けて……。

「副団長。皆……」
 少々呆気に取られていたももの、ジークはややあって苦笑いを多分に含めながらもホッと
胸を撫で下ろしていた。
 とりあえず、助かった……。
 そう全身を奔っていったのは、理屈云々以前の懐かしさすらある安心感。
「大丈夫、ジーク?」
「お怪我はありませんでしたか?」
「ん? あ、あぁ……」
 そんな遠くに持っていかれ掛けた意識を、心底心配そうな様子のステラとレナの呼び声が
繋ぎ止めてくれる。
 ジークは思わず苦笑いで頷くくらいしかできなかった。
 確かに“この追いかけっこでは怪我はしていない”のだが。
「……」
 だがそんな友人らを横目に、ミアはじっと目を細めていた。
 そしてちらと父(ダン)と顔を見合わせ互いに頷き合うと、何を思ったかずいとジークの
目の前まで近付いて行き。
「へっ──?」
 頭に疑問符を浮かべた彼の隙を突いて、一気にその服を裾を持ち上げる。
「おぉっ」「ひゃわっ、ミアちゃん!?」
 当然、一同の目の前には不意にジークの半裸が晒されることになる訳で。
 ステラは頬を赤くして目を見開き、レナは真っ赤にした顔を両手で覆い隠し(しかし指の
間からしっかりと覗き見ていたりする)て、友人の突然の行動に戸惑う。
 しかし、ミアは何も考えなしにこんな事をした訳ではなかった。
 服を捲られたジークの身体。
 そこには、ユイとの交戦で負った大怪我の跡が今も痛々しく残っていて……。
「嘘は、駄目」
「ったく、大ありじゃねぇかよ。どうにも動きが鈍いなとは思ったが……」
「……まぁちょっと、脱出する時にゴタゴタがあって」
 ミアやダン、仲間達からの視線を受けて、ジークはバツが悪そうに視線を逸らしていた。
 彼女がどいてくれるのを待ち、隠し直すように捲られた服を元に戻すと、ぶつぶつと言い
訳がましくそんな呟きを皆に返す。
「ふむ……。相打ち上等とは関心しないな」
「本当に。相変わらず無茶するんだから……」
「? 何でその事──」
「ま、積もる話は追々だ。それよりレナ、先生さん。何とか魔導で治してやれないか?」
 すると仲間達から返ってきたのは、そんなやんわりとした叱りや安堵のような声。
 ジークはそうした反応に思わず眉根を寄せたが、次の瞬間には時間が惜しいと言わんばか
りにダン遮られ、そうレナとリュカに問い──懇願が投げ掛けられる。
「そうですね。さっきの感じだと傷自体は塞がっていたみたいですから……」
「だ、だったら、私に任せて下さいっ」
 逸早く応えたのは、レナだった。
 リュカや面々が視線を向ける傍らで、一度大きく深呼吸をした彼女は指に嵌めた魔導具に
そっとマナを込める。
「──お願い、愛天使(ラヴィリエル)!」
 次の瞬間、中空にかざされた掌を中心として展開される金色の魔法陣。
 そこから同色の輝きを纏って現れたのは、巨大な天使型の使い魔だった。
 しかしその姿は、既に目にしてきた征天使(ジャスティス)とはまた違うらしい。
 背中の六枚の翼は同じだが、鎧ではなく純白のローブ姿。長く腰まで伸びる金髪が表情を
隠しおり、頭には茨の冠が添えられている。
 何よりも目に留まったのは、この天使が両手に抱える金色の三柱円架──先端の真球を下
向きな半弦と三本の直線が支える形の豪奢な杖で……。
「えっ。何を」
 するとどうだろう。ジークがこの法衣天使を見上げていると、ぐにゃりと熱で溶けるかの
ようにその杖が光を纏って変形し始めたのだ。
 そしてそのまま、変化を続ける錫杖は無数の輝く鎖となり、ジークに向かって一斉にその
刃先を飛ばしてくる。
 ジークは思わず逃げかけたが、話の流れからしてレナが自分に攻撃する訳でもない。
 結局そのままジークは飛んで来る鎖を受け入れていた。
 ……そして何故か、輝く鎖は彼の身体を傷付けるどころか、溶けるように体表面に波紋を
残して深く“沈んで”ゆく。
「大丈夫ですよ。ちょっとじっとしていて下さいね?」
 レナが微笑んでいた。
 だからなのか、それともふと脳裏を掠めた違和感なのか、ジークは返事もできずにただ成
されるがままになっている。
 そして変化は、それからすぐにやって来た。
 じわじわと、だが確実に、ずっと身体が上げていた悲鳴が──ダメージが和らぎ遠退いて
いくのを感じたからからだった。
 それはまるで、痛み自体をこの輝く鎖を経由して抜き取って貰っているかのようで。
「……はい。これで大丈夫な筈、です。どう……ですか?」
「あ、ああ……。すげぇ楽になった。なった、けど」
 やがて輝く鎖が抜けてゆき、再び法衣天使の手に錫杖として収まり直っていく。
 レナがこれで治療完了と言わんばかりに微笑み掛けてくると、ジークは戸惑いながらも確
かなその治癒能力に太鼓判を押していた。
 ──レナ。お前まさか、このデカブツを使うとお前にも反動が来るんじゃ……?
 しかしどうしても心からは笑えなかった。
 何故なら目の前の彼女が、明らかに先程よりも辛そうに笑顔を繕って立っていたから。
 ちらっと、彼女の親友(ミア)や魔導の専門家(リュカ)を見遣ってみる。
 するとどうやら彼女達も同じような見立て、既知であったようで、レナに気付かれない程
度の小さな首肯だけを返してくる。
「……ありがとよ、助かった」
「はい」
 だから、ジークは喉まで出かけた言葉をぐっと呑み込み、礼だけをレナに述べていた。
 にこりと。穏やかに優しい彼女の微笑み。
 だがそれは、ステラやマルタがそっと傍らでいつでも支えられるよう控えながらの、脆さ
に類する印象を拭い切れない彼女の献身であるように、ジークには思えてならなくて……。
「……すまねぇ。迷惑を掛けた」
「ふん。分かってりゃあいい」
 すると、そうして改めて呟いたジークの頭に、ダンがぼふっと自身の掌を乗せてきた。
 わしゃっと少々力強過ぎる握力で以って、あたかも“子供”をあやすような撫で回しで彼
は言う。
「一人で抱え込むな。その為の、仲間(クラン)だろ」
「……」
 ダンはジークに目を合わせている訳ではなかった。視線自体は、遠く向こうの王宮へと向
けられている。
 ジークは俯き加減に小さく、ほんの僅かにだが頷いていた。
 結局皆の手を煩わせてしまった。その妙な悔しさやら、ちりちりと熱を持ったくすぐった
さやら。色んな感情が胸の中を掻き乱しては走り去ってゆく。
「……そうだ。サフレ」
「ん?」
 そしてそのもやもやを誤魔化すかのように、ジークはふと思い出して上着のポケットを探
ると、サフレに向けてひょいっと指輪を投げ返す。
 彼から借り受けていた、召喚系・石鱗の怪蛇(ファヴニール)の魔導具だ。
「返しとくよ。こいつのおかげで牢屋からも出られた」
「……そう、か」
 こういう無茶の為に渡した訳ではないんだがな……。
 彼のそんな呟きも聞こえてきたが、ジークはさっくりと無視することにした。
 それよりも、今は。
「やっぱ、レジスタンスと一緒に攻めて来たんスね」
「ああ。今サジさん達が追っ手を食い止めてくれてる。俺達はこのまま王宮にぶっ込むぞ。
六華とアズサ皇を押さえる。この争いを……止ねぇとな」
「……ええ」
 正直、ジークは仲間達が彼らと組んで戦い始めたことに不満だったが、単身乗り込むとい
う目論みに失敗した自分が言える立場でもないのだろう。
 何よりも既に戦いは始まってしまっている。……後戻りは、できる筈もない。
「だけど、どうするんです? 俺が言うのもなんですけど、この人数で攻めて行ったとして
も落とせるとは……」
 だからこそ、ジークはこれから先の事について言葉を投げ掛けていた。
 牢屋からの寄せ集めとある種戦闘のプロ達とでは質は違うだろうが、今この場にいる十数
名程度の兵力で王宮を攻略するには、どだい無理があるように──自分が一度挑戦したから
こそ──思える。
「まぁな」
 しかしダンら仲間達は、表情こそは気を引き締めつつも、何処か余裕を持っているかのよ
うな素振りだった。
「だけど、俺達は何の考えもなしに王都攻め(ドンパチ)を仕掛けたんじゃないんだぜ?」
 そしてジークの頭に乗せていた掌を退け、ダンは皆を代表するかのようにそうニッと口元
に弧を描く。

 もう何度目かも分からない、見えざる斬撃が襲ってきた。
「……ッ!」
 握り締めた槍を斜めに構え、ぐっと両脚を踏ん張ると、サジは振り下ろされるその一撃を
激しく散る火花や金属音と共に受け止める。
 ダン達を先行させてからの後、レジスタンス軍は一度は破った城門を中心として一進一退
の乱戦を続けていた。
 少人数とはいえ、城砦の守りを突破された焦り。
 ここぞと振り向けてくる物理的な兵力差というもの。
 一度は策に引っ掛かった皇国兵達だったが、今や彼らは文字通りの死に物狂いなさまで、
この城攻めの軍勢に猛攻を繰り返している。
「はあぁぁぁッ!」
 ユイもまた、そんな内の一人だった。いや……とりわけ目を血走らせていた。
 彼女は魔導具により不可視の剣と化したその得物を振るい、元皇国近衛隊長たるサジを、
一見して防戦一方にせしめている。
「ぬぅっ……!」
 厳密には槍と剣、そのリーチの差。それがこの間合いの見えない剣に対して牽制を与える
事ができているということだった。
 大は小を兼ねると云う。
 彼女の得物が見えないのなら、極力自分の懐に近付かせないようにすればいい。
 リーチを活かしてその踏み込みを抑える。故に防戦と傍目には映る。
(ユイ……)
 だが、そんな実践上の駆け引きだけが理由ではない。
 むしろ、こちらが理由だった。
 サジにとって、その槍を振るうに躊躇する原因だった。
 言うまでもないだろう。今戦っている自分達は……血の繋がった父娘(おやこ)なのだ。
 できる事なら戦いたくない。こんな形で再会したくは、なかった。
 そう言ってしまうと、身勝手な父だと更に罵られるのであろうが……。
「……」
 ちらりと横目に周囲を窺ってみる。
 仲間達と娘の隊士らは、先程から激しく得物を交えて鍔迫り合いを繰り返している。
 しかし……その周りで加勢に入れる筈の他の皇国兵らは、しんと静まり返ったように無言
で、この自分達の戦いを傍観していたのだ。
 理由は、多分間違いないだろうと思う。
 ──このまま“反逆者”同士で潰し合えばいい。
 そんな、彼女ら小隊を見下す差別意識。
 実際、多数で囲まれ撃ち掛けられれば一溜まりもなく、こうして彼らが戦闘に加わってい
ない状況は、攻略側としては歓迎すべきなのかもしれない。
 だがその動機が彼女(むすめ)達への侮蔑から来ているものである以上、やはり手放しで
喜べる筈もない。
「……っ。止めるんだ、ユイ! 私はお前と戦う理由など……」
「黙れ! 裏切り者がいけしゃあしゃあと!」
 ギリッ奥歯を噛んで悔しさを抑え込み、サジは堪らず叫ぶ。
 だが娘(ユイ)にその言葉は届かなかった。むしろ彼女を一層憎悪と共に激昂させるだけ
で、再びだんっと踏み込んでの斬撃が飛んでくる。
「お前は先皇の忠誠心だと言って、人々や──私や母さんを散々に振り回してきた!」
 左からの横薙ぎ。それを槍の腹で防いでいなしたと思えば、今度は反動を利用して右から
もう一発。慌てて持ち手と穂先・石突を入れ換えてその衝撃に顔を歪める。
 ぐっと再度力を込めて石突を弾き引き離そうとするが、彼女はひらりと半身を返しながら
跳躍すると、今度は中空からの袈裟切りを振り下ろしてくる。
「……そうだ。あの青年だって。貴様は、身代わりまでこしらえて……ッ!」
 咄嗟に槍を水平に構え直し、直後激しく互いの得物が火花を散らした。
 ち、違う。あの方は──。
 サジは叫ぼうとしたが、その声も思いも、全てはぐぐっと見えざる剣圧を強めてくる目の
前の実娘によって遮られていた。
『結局てめぇらは、母さんを自分達の“言い訳”に使ってきただけじゃねぇか!!』
 いつかの、皇子(かれ)の言葉が脳裏に蘇る。
 私は……間違っていたのか? 主への忠節を尽くすこと。簒奪された玉座を清めること。
それは“正しい”と、ずっと自分に言い聞かせていた筈なのに。
(……殿下。私は──)
 眉間に皺を寄せ、サジは短く気合の声を上げると石突を振り出していた。
 ぐらりと剣と共に前のめりになっていたユイが弾かれ、その足が地面に着くか否かの頃合
にぶんと振り替えた穂先を大振りのモーションで振り下ろす。
 しかしユイは、冷静にその一撃をかわしていた。
 着地したそのままの足で、剣を盾のように構えつつ大きくバックステップ。彼の槍が空を
描く中で彼女はトンと降り立つと、再び正眼の構えで不可視の得物を握り直す。
「サジさん!」
「……大丈夫だ」
 横薙ぎの時の剣圧からか、ふと気付くとサジの左頬にはざっくりと赤い筋が走っていた。
 その一部始終を目にしていたレジスタンスの仲間らが交戦の合間を縫って叫んでいたが、
当のサジ本人は短くそう答えるだけで気にも留めず、ぎゅんと槍を手元で回すと小脇に抱え
直している。
 暫しの間、この父娘(ふたり)は互いに見つめ合っていた。或いは、睨んでいた。
 一方は忠節が故に少なからずの辛酸を舐め、一方は忠節が故に娘の信頼すら失っていて。
「……そうだな」
 そしてぽつりと、眉間に皺を寄せたまま、
「私もお前も、誰かを“信奉”するあまり争いを生み続けてきたのかもしれない」
 サジは何処か遠くに置いてきた何かを彼女に見るように、そう小さく言葉を漏らす。
「そろそろ終わりにしないか。あの方達も、それを望んでおられる」
「? 何を──」
 奴の雰囲気が変わった?
 ユイは正眼の構えこそ崩さなかったものの、彼のそのフッと溶け変わるような様子に思わ
ず怪訝の表情(かお)をみせる。
 ちょうど、そんな時だった。
 不意に自分達を大きな影が差していた。
 聞こえてくるのは、上空からの無数のエンジン音。
 ユイも、他の皇国兵らも、そして交戦を続けていたレジスタンス軍の面々も、つられるよ
うににわかに暗くなった空を見上げる。
 そこに在ったのは、この南正門上空を抜け、王宮へ向けて飛んでゆく無数の軍用飛行艇。
 ──アトス連邦朝とレスズ都市連合。その共同軍の一行だった。


「報告致します! アトス・レスズ両軍が到着しました。直ちに加勢すべく皇都近隣への停
泊を希望するとのことです!」
 王の間にそんな伝令が入ったのは、サジらがはたと空を見上げたその少し前に遡る。
 報告を受けた時、場の上級将校らは少なからず色めき立っていた。
 この時既に、城砦の南正門が破られたとの情報が伝わっていたからである。
 現状、兵らは防衛線の維持を続けているが、それに先んじて少数名ながら城下へ侵入した
手勢がいるとも聞く。
 当然、その対応の為に余剰兵力を向けさせているが、物理的に城門が破壊されてしまった
となれば今後その数が増えるとも限らない。
 そうした状況での両国共同軍──援軍の到着は、余裕ぶっていた体面に傷がつくことにな
るとはいえ、正直歓迎すべきタイミングであったと言えよう。
「……此度の援軍、感謝致します。我が都のすぐ北に隣接した発着場がありますので、先ず
はそこに陣を敷いて下さい」
『了解致しました』『誘導、有難う御座います』
 ややあって通信回線がコールされ、一同が囲む足元の機器からホログラムが光り出した。
 その中に映し出されたのは、誘導指示を請う両軍将校からの映像と音声。
 面々が自分を見遣ってくる中、アズサは一度深く頷くと、そう淡々ながらも丁寧な口調で
返答をした。それに併せて、各部下達も彼らを出迎えるべく迅速に行動を開始する。
(これで、邪魔者(レジスタンス)連中も一気に始末できる……)
 中継映像の向こうで、両軍の飛行艇が次々に王宮内北の発着場(ポート)に着地してゆく
のが見える。その様を眺めながら、アズサは内心ほくそ笑んでいた。
 先の策(さそい)には、悔しいが引っ掛かってしまった。
 だがここで焦りを傾けてはならない。依然、世界が認める“正義”はこちらにあるのだ。
 それだけは、絶対に──。
『なっ……!? い、一体何のつも──がはっ!』
 しかし、違ったのである。
 突如として映像の向こうで戸惑い、そして昏倒させられる鈍い音が響いた。
 ハッと我に返り、アズサ達王の間の面々が思わず目を凝らす。
 ──そこには、飛行艇から降りてきたアトス・レスズ両軍の兵士らが、降り立つまま一気
になだれ込むようにして出迎えの皇国兵達に襲い掛かっている光景が映っていたのである。
「な……何? どうしたの!?」
 アズサはガタッと玉座から立ち上がって叫んでいた。
 その間にも、映像の向こうでは場の圧倒的大多数の援軍──だった筈の両国の軍勢が次々
と発着場を始めとして周囲を制圧してゆく。
 銃声は、聞こえなかった。
 ここからではちゃんと確認できないが、どうやらあくまで兵達を行動不能にするという趣
旨で相手方は動いているらしい。
『た、大変ですっ! か、管制塔にも彼らが』
 するとそう叫びかけて映像の一つが砂嵐になった。
 いや、それだけではない。向こうとのやり取りのため中空に展開していた映像達が、戸惑
う暇すら許さずに次から次へとダウンし始めていたのだ。
「──……ふむ」
 反応を失った発着場の管制塔。
 その窓ガラスを突き破って、複数のマナの矢が管制官らを射抜いていた。
 機器やデスクの上に書類が散らばり、白い目を剥いて気絶した彼らの胸元からやがてスッ
と輝く矢が効力を失って消え去ってゆく。それとほぼ同時に、共同軍の兵士らが突入してく
るのが見える。
「あっちは、もう制圧できるね」
 そんな、凄まじく遠い距離にある筈の様子を、一隻の飛行艇の甲板から易々と視認して呟
く者がいた。
 色白の肌に尖った耳。全体的に柔らかい物腰を印象付ける、妖精族(エルフ)としては珍
しい部類に入るであろう青年。
 その姿は他ならぬ、冒険者クラン・ブルートバード随一の射手、シフォン・ユーティリア
その人であった。
 ルーンを刻んだ不思議な金属質の長弓。
 その得物を片手にふぅと小さく一息をつくと、
「そっちはどうだい? イセルナ、ハロルド」
 彼は、傍らを漂う精霊達を媒介にして仲間達に呼び掛ける。
「──ちょうど奥よ。今ちょうど、片がついた所」
「発着場近辺はもう大丈夫だろう。今度は城砦の方を頼むよ」
 コンタクトの先は、発着場内の兵舎の中。
 応えたのは、そこに突入していたイセルナとハロルド、そしてブルートバードの面々や共
同軍の兵士達だった。
 宙に浮いているブルートや漂う精霊らを媒介にして、彼女達は至ってゆったりと、しかし
表情は真剣そのものに目の前の光景──冷気で凍らされて一網打尽に動けなくなった皇国兵
らを見渡している。
「了解。じゃあ……もう一仕事といきますか」
 精霊伝いの会話を一旦打ち切ると、シフォンは弓を構え直し、別の方向に静かに目を凝ら
し始めた。
 遥か遠くに見えるのは、ソサウ城砦の西砦本丸。更に振り向けば、東砦本丸。
 常人なら霞んで見えるか見えないか程度の遠景でしかないが、この腕利きの射手にとって
はこなれた“間合い”であった。
 じっと目を凝らし、同時に矢を握る側の中指に嵌めた魔導具の指輪が力を帯び始める。
 次の瞬間、その手先に形成されたのはアイスグリーンの光をしたマナの矢だった。
「……」
 シフォンの瞳の中には、砦内でこの襲撃に慌てふためている皇国兵らの姿が見える。
 シフォンが握るマナの矢は、彼の手の中でより強く大きく輝き、無数の矢へと分裂する。
「──流星、掃射」
 そして放たれた矢は、確かに星々のように光る軌跡を描きながら飛んでいった。
 直前、その光が視覚に届く寸前まで兵達は気付かない。気付いた時には既に雨の如きマナ
の矢は窓や塀を貫き飛び越え、寸分狂わぬ狙いの下、彼らに命中して昏倒させてゆく。
「こ、今度は何だ!?」
「矢……矢です! 誰かがこちらに射掛けてぐぁッ!?」
「……ッう! くそっ、矢だと? そんな馬鹿な」
 西砦に続き、東砦も同じように。
 皇国兵らは大いに混乱に拍車を掛けられる格好となった。
 戸惑う中でも次々と倒れてゆく同僚達。その中でも何とか我先に逃げ出した者には、よう
やくこの突然の射撃が放たれている大元を、その輝きの集まりで以って知るのだが。
「……嘘、だろ?」
「本当にあんな距離から? 大砲でだって届かないぞ……」
「……マナだ。誰かは知らないが、ストリームに乗せて飛距離を伸ばしてるんだ……」
「に、逃げろぉ! ぼさっとしてたら俺達も的になるぞッ!」
 同時に、彼の者が放つその射的の正確無比ぶりに大いに驚愕することになる。
 皇国兵の一人が叫んでいた。
 しかし、何も彼らに奇襲を掛けていたのはシフォンだけではなく。
 射掛けられすっかり乱れた守備の隙を突き、次の瞬間にはとうとう発着場から城砦内に入
り込んでいた共同軍の一斉突入を受けてしまう。
「──……一体、何が……?」
 そんな様を、アズサら王の間の面々は呆然として目に映していた。
 この予想外の事態に、配下の者達も指示に困っていた。それでも、次々と制圧されてゆく
都の防衛線に比例するように慌てふためく報告の連続は絶えることはない。
「き、緊急事態ですッ!!」
 そして、更なる一打がやって来た。
 大慌てでやって来た兵士が数人、動揺の余り血走った眼で王の間に駆け込んで来て言う。
「精霊伝令より報告! 皇都近隣の砦・守備隊はほぼ壊滅状態、強襲を受け機能不全に陥っ
ています!」
「目撃情報によると、襲撃者は“七星”とその傘下の傭兵達──現在、皇都(こちら)に向
けて進軍中とのことです!」
 アズサ達はもう、驚愕が過ぎて丸くした目を引っ込めることもできない程に大きな衝撃を
受けていた。
 七星──七星連合(レギオン)の頭目衆。つまりは都市連合の回し者か。
 正直、信じたくはなかった。
 しかしそうだとすれば……この奇襲は、まさか──。
『トナン皇国、及び全世界の人々に告ぐ』
 すると、はたと聞こえてきたのは、まだ生きていた──共同軍から掛けられていた通信映
像からの声。
 問い詰めようにも人の姿は映っていないようだった。
 代わりにその黒画面にザザッと時折砂嵐が走り、次の瞬間、あるものが流れ始める。
『これから流す全てを、しっかりとその目に焼付けておいて欲しい。これは勇気ある有志に
より提供された、皇国(このくに)にまつわる真実の記録である──』

 その日、アトス・レスズ共同軍は世界に向けてとあるアーカイブを公開した。
 曰くトナン皇国の真実。それらは大量の映像・音声記録から成っていた。
 一つは、二十年前にこの国で起こったクーデターのあらまし。そしてその謀反の戦火から
命辛々逃れた先の皇女シノ・スメラギの存命と彼女に託された王器・護皇六華の存在。
 一つは、それら──彼女の血族抹殺と六華奪還に執着してきたアズサ皇の姿で。
『どうして六華が三本だけなの? 任せておけと言ったのは貴方達でしょう?』
『……決まっているわ。当然、始末する。そして残りの六華もこの手にする』
『今度こそ、私が真の皇であることを証明してみせる!』
 何よりも人々を驚かせたのは、そんな彼女の皇への執着が故に“結社”と手を結んだ、そ
の決定的証拠の数々で。
 隠し撮りされたと思われるその映像は、人気のない暗がりの中、アズサ皇と怪しげな黒衣
の兵士──知る人ぞ知る結社“楽園(エデン)の眼”の手勢を従える使徒達との密会を幾度
となく収めているものだった。
『我々は彼女に騙されていたのです。かの“結社”と手を結んでいるのはレジスタンスでは
ない……。他ならぬアズサ皇自身なのです』
 公開される情報と共に、ナレーションの声はそう強く呼び掛けていた。
 大小様々な端末画面の向こうで皇国兵が、王の間の将校達が、世界各地の人々がこの眼前
の証拠映像に目を見開き、固まっている。
『ここに、我々アトス連邦調・レスズ都市連合共同軍は表明します。……二十年前、世界が
見捨てるも同然にしたこの国を今度こそ救うのだと。かの“結社”から救うのだと』
『アズサ皇及びトナン皇国軍総員に告ぐ。直ちに降伏せよ。此度の我々の参戦は決して貴方
達を討ち取る為ではない、救い出す為なのだ』
 語られるのは、皇国軍へと向けた降伏要請。
 つまり、両軍は始めからこの証拠の山(シナリオ)を予め用意した上で、皇国に乗り込ん
できたのだと分かる。
 援軍と──見せかけた、同国への包囲網。
 全ては劣勢に陥ったレジスタンスらの立場を一挙にひっくり返し、戦いの“大義”を自分
達の側へと引き寄せる策略だったのである。
『──……えっと。皆さん聞こえますでしょうか? 初めまして。シノ・スメラギです』
 とはいえ、いきなり過ぎて信じられない者も少なくなかったかもしれない。
 それでもこれら苦節の当人が公に姿を見せたことで、その信憑性は高まったと言っていい
だろうと思われた。
 画面上に流されていたアーカイブ。
 それらが一通り終わると、次に切り替わった画面、記者会見のようなテーブルに着いてい
たのは、礼装用ヤクランに身を包んだシノブこと先の皇女シノその人。
 映像機(テレビカメラのようなもの)で映されているらしい彼女は、傍目から見ても緊張
しているようだった。
 期せずして、本人の意図することなく“逃亡生活の末に一人の母として暮らしていた姿”
が人々の印象に焼付けられる。
 ごくりと、大きく息を呑んで、真摯な瞳が画面の向こうの人々を捉えている。
『……先ずは皆さんに深くお詫びを申し上げます。仕方なかったとはいえ、私は今までずっ
と故郷から逃げてきました。旅の先で出会った主人や仲間、子供達、村の皆さんが向けて下
さる厚意に甘えて……今日までずっと、庶民を装ってきました』
 艶やかな黒髪、紛れもない女傑族(アマゾネス)の頭を垂れて開口一番、彼女は深く深く
世界の人々に謝罪をしていた。
『だけど、もう逃げる訳にはいきません。皇が誰であるかよりも、その国に暮らす人々が幸
せでいられるなら、私は一人の母のままでも良かった。でも……こうしてこの故郷は悲しい
争いを続けてしまっています。加えて息子達まで巻き込まれてしまって……』
 目にはたちまち溢れる涙。自分の想いが届かなかった、消極的だった自分への悔しさ。
 シノブはぎゅっと胸元を掻き抱いていた。
 皇国兵も、将校達も、世界中の人々も──そして無言で映像を見上げているアズサ皇も。
 皆は確かに聞いたのだ。次の瞬間、彼女から吐露された懇願を。
『伯母様、皆さん、お願いです。もう戦わないで下さい。この争いを……止めて下さい!』
 二十年前、実の伯母によって肉親を失った筈の当人からの、そんな心からの叫びを。

「──ジーク。君は決して独りなんかじゃないんだ」
 唖然と。リュカが持ち込んで来ていた携行端末を仲間達と囲い、これらの証拠映像を観て
いたジークに、ふとリンファはそう静かに優しく語り掛けていた。
 その声にようやく我に返り、皇子(ジーク)は彼女へとおもむろに顔を上げる。
「君達一家を、ずっと見守ってくれていたんだ。婿殿は勿論、その相棒であるセド──エイ
ルフィード伯やサウル殿──フォンテイン侯、アイナの夫婦。ハルトにサラ、クラウス殿、
それに……私もね。かつて殿下に救いの手を差し伸べてくれた者達は、ずっと悔やんでいた
んだ。あの日、謀反を跳ね返し、殿下を故郷(くに)へ帰してやれなかったことに」
 それはきっと、静かな告白で。
 二十年前から今に至る軌跡。それが今日までかつての仲間(とも)達を中心に連綿と続い
てきたということを。
「……それでも、殿下は徒に王位に就くことは望まなかった。民がどんな王の下であれ、幸
せに暮らせるのならば、自分はこのままいち降嫁の母として一生を終えても構わない。そう
常々仰っていた」
 その話は、ジークもアルスやエトナと共に聞かされたことだった。
 だからこそ自分は、そんな母の想いを無碍にしてまで戦い続けるレジスタンス──サジ達
を受け入れられなくて。
「でも、ついさっき母さんは……」
「ああ……。それでも大事な息子にまで危害が及ぶのなら、もう一度闘う。そう決めたんだ
そうだ。エイルフィード伯と一緒にイセルナ達に会いに来た席で、そう言ったんだとよ」
「……ッ」
 それは、母にとってどんなに苦悩の末の決意だっただろう。
 全く同じ心地を背負ってはあげられない。しかしその辛さはジークにも痛い程分かった。
想像するに余りあった。
「そうして、シノブさんとかつての仲間達(みなさん)は動き出したの。それまでずっと、
いつか彼女を国に帰してあげられるようにと密かに監視し続けていた、トナンとアズサ皇に
ついての大量の情報を武器にね」
「加えて、サウル殿はかねてよりリオ様との繋がりも持っていた。国を出奔して以来、リオ
様もご自身なりに六華の行方を捜していたらしい。その旅路の中での出会いだったそうだ」
「……」
 目を瞬き仲間達を見る。
 その視界の中で、サフレだけが何処か不機嫌そうに見える。
「リオって……“剣聖”のことだよな? そっか、それであの時俺達を……」
「? 何だよ、本人から聞いてなかったのか?」
「聞くもなにも。王宮の中で脱出口を教えてくれただけッスけど……?」
「あ? いや、そうじゃなくってよぉ……」
「……剣聖リオの本名はリオ・スメラギ。アズサ皇の実の弟」
「つまり、ジークさんにとっては母方の大叔父様、ということになりますね」
「はぁっ!?」
 流石にジークはつい大声を出して驚いてしまっていた。
 あの寡黙な剣豪が本当に“味方”で、よもやこの国の皇族──自分の血縁者だったとは。
 リュカからリンファ、マーフィ父娘からレナと、さながらリレーの如く告げられる真実。
「私達も一度、リオ様と出くわしたことがあるんだ。そしてその時、こっそりと耳打ちされ
た言葉を信じてみれば……そこにはリオ様に従う者達がいた。リオ様が“充分に証拠が集ま
った。時は満ちた”と、その旨を私に伝えようとしてくれたんだ」
 ということは、今現在進行中で流れるこの映像──証拠の多くはかの剣聖が秘密裏に集め
てきたものということになる。
 なるほど。敢えて敵(あいて)の懐に潜入していた。だから一匹狼で有名な筈の彼が王宮
に出入りしていたのだろう。
「……そっか。皆が、母さんの為に」
 何とも心強いことか。
 しかし同時に、ジークの心の中にはもやもやと無視し難い感情が渦巻いてゆく。
 それは──偽ることのできない己の拙さだった。
 ずっと見守られ、こうして救いの手を惜しまれずにいるというのに、自分はただ一人で全
てを終わらせようと息を巻いた。そして……失敗した。
「……。誰かを頼ることは、恥ずかしいことじゃない」
 そんな曇る戦友(とも)の心情を察したのだろうか。
 ふとミアが、そうぽつりと言葉を漏らした。
「お父さんも言った。ボク達クランは、こういう時の為にあるんだって」
「そ、そうですよ。私は皆さんみたいに戦えません。でも……大切な人の怪我を治す事なら
できます」
「私も、できることと言えばマスターのお世話やハープの演奏ぐらいですからね~」
「……逆に僕は戦ってばかりだな。君と、似ているのかもしれない」
 仲間達が追随して口にする。
 そこに後ろめたさはない。あるのは、強くジークに印象付けられるのは、お互いを信じて
いるということ。
「そういうこった。それぞれができる事を精一杯やる。んで、お互いにその仕事を信じて前
に進む。それでいいじゃねぇか。一より十、十より百、百より千。戦いは数だろ?」
「勿論、知略もね。こうしてアズサ皇への“逆転”を打つことは皆さんの悲願だった訳だけ
ど、この作戦をここまで綿密に詰めてくれたのはアルスのお蔭なんだから」
「え? アルスが……?」
「うん。今、イセルナさん達と一緒に共同軍にいる。最初はボク達が心配で飛び出してきた
そうなんだけど、その途中でサウルさんの所に流れ着いたらしくて」
「……。あの、馬鹿ちん……」
 思わずジークは頭を抱えて、ガシガシと髪を掻き毟っていた。
 団長達が加勢してくれているのはともかく、無茶をしやがる……。
「ま、結果オーライって奴だ。少なくとも運はこっちに向いて来てるぜ?」
 するとダンが再びその大きな掌でジークの頭を包んだ。
 わしゃわしゃと、このむくれかけた、無鉄砲だが放っておけない団員(むすこ)の髪を掻
き雑ぜてやる。
「……さぁ行こうか。俺達の手で、この争いを終わらせるぞ」
 しかしフッと、次の瞬間にはその表情は、再び真剣な、クランを率いる経験豊かな戦士と
してのそれになっていて。
「ええ……。勿論です」
 そっと離された手とその横顔を見上げ、ジークは深く頷いた。
 仲間達も、ついて来ているレジスタンスのメンバーらも、同じく彼の者をぐるりと護るよ
うにして立っている。
「アズサ皇をとっ捕まえて六華を取り戻します。……これ以上、母さんや皆を泣かせる訳に
はいかねぇッスから」

 そして──。
 時を前後し、ある意味今回の作戦のキーマンとも言える一行が、この混戦続く城砦の眼前
へと到着を果たしていた。
「ふむ……。思いの外善戦しているようだの」
「ですが、兵力差は明らかです。切欠一つで崩れますよ」
「ええ。早速私達も“仕事”に掛からないと」
「だぁな。正直裏方は性に合わないんだが……仕方ねぇ、これも依頼の内だ」
 姿を見せたのは、七星に名を連ねる四人。
 バークス、セイオン、シャルロット、グラムベルと彼らに従う傘下の傭兵達の大軍勢。
 その近付いて来た大群を目にし、それまで交戦を続けていたレジスタンス軍と皇国軍がは
たと戦の手を止めてこちらを見遣っているのが分かった。
 一方は待ちかねたと言わんばかりの安堵を。一方は畏れを多分に含んだ驚きを。
 フッと一見すると微笑のままの表情で、バークスは他の七星や傘下の兵達に合図する。
「では始めようかの。打ち合わせ通り、三方から進入するぞ」
 その一声で七星軍は大きく動いた。
 三方。西城門へ向かってゆくのはグラムベルを中心とした軍勢。東城門へ向かってゆくの
はシャルロットを中心とした軍勢。そしてその場、南正門にはバークスとセイオンの軍勢が
それぞれ展開する。
「──レジスタンス、おめーらは下がってろ。城門は俺達がぶち破ってやっからよぉ!」
 西城門では、皇都の内外を隔てる堀を墳魔導──大地の隆起で埋めて足場とし、レジスタ
ンスの小軍勢が防衛線を重ねる皇国軍に苦戦を強いられていた。
 グラムベルの手勢はその横っ腹から駆けつけると、そのまま両者を引き離すように猛然と
して一斉に突撃を始める。
「ぐぁっ!?」「まさか……“獅子王”の!?」
 途端、千切っては投げられるかのように、防御に出て来ていた皇国側の軍勢が崩れた。
 その明らかに次元の違う威力の群れ。その大き過ぎる力量差を否が応にも文字通り叩き込
まれる格好となり、彼らの表情(かお)は一様に引き攣っていた。
 多くの場合、軍の大将というものはその中列以降で指示を飛ばしているものなのだが、こ
の荒ぶる獅子の獣人はその例には当て嵌まらないらしい。
 隆々とした体躯、四肢。
 右手には鎖鉄球を繋げ振り回す手斧を、左手には分厚い鋼の丸盾を構え、グラムベルは自
身の軍勢の最前列でその強烈な一撃で以って彼ら皇国兵らを一薙ぎにし、鋭い犬歯をみせて
吼えている。
「頭、今回はあくまで……」
「ああ。分かって──」
 そんな中だった。突然、彼の横っ面にバチンッと何かがぶつかったのは。
 場の面々が一斉にその方向を、射出された物の出元を向いた。
「……ぁ、あ、ぅぁ……」
 もうっと硝煙を上げる長銃をガチガチと震える手で握り、全身を畏れで染め上げていたの
は、一人のまだ年若い皇国兵だった。
 面々はその瞬間を見ていなかったが、おそらく恐怖の中で錯乱して引き金をひいてしまっ
たのだろう。他の皇国兵達も、レジスタンスの軍勢も、恐る恐るとその撃たれた筈のグラム
ベルへと再び視線を向け直してみる。
「……痛ってーな、オイ」
 しかし、当の本人には全くと言っていいほどダメージは無かった。それらしい怪我すらも
無かったのだ。
 銃撃の威力で少々首を曲げていたものの、すぐにゆらりと顔を向け直し、それだけ人が殺
せそうな眼でこの青年兵を睨み返す。
 よく目を凝らせば、彼の身体の周りをぼんやりとマナの光が覆っていた。
 即ち、錬氣。つまり彼は、まるで鎧のようにマナを全身に張り巡らせることで、銃撃すら
もものともしない術を呼吸するが如く行っていたのである。
「ま、命拾いしたな。今回の依頼内容じゃなけりゃあ、とっくにてめぇの頭は吹っ飛んでる
頃ろうからなぁ?」
 ドスンと、手斧の柄先に繋がっている鉄球が地面に落ちた。
 まるでその衝撃、地面を窪ませたその重量に脅えるように皇国兵達は身を竦ませる。
「さて……。死にたくなきゃさっさと道を開けな。俺はシャルロットやセイオンみたく甘く
はねぇんだからよ」

 一方、東城門は既に半開き状態だった。
 加えてそこから、散発的に家財を抱えた市民らしき人々が飛び出してくるのも見える。
「長。これは一体……?」
「断定はできないけど……既に内側から開門されているみたいね。こうして戦になって、彼
らも不安で仕方なかったんでしょう」
 やって来たシャルロットの軍勢は少なからず怪訝な反応を漏らしていたが、彼女はあくま
でお淑やかに唇をそっと撫でて呟いている。
「く、くそっ……」「待て、勝手な行動をするんじゃない!」
 すると今度は、軍服姿の一団がこの市民達を追い掛けるように現れた。
 混乱の中押し寄せたとみえる市民達に比べれば少数だったが、武装している一個部隊では
その危険性の有無は雲泥の差の筈だ。
 そしてその懸念が過ぎったのとほぼ同じく、制止の声を聞かぬ兵士の何人かが遂に目を血
走らせて手にする銃剣を構え出したのだ。
 銃口と目を凝らす先に、我先にと都の外に広がる緩やかな丘陵を目指して下ろされた跳ね
橋を駆けてゆく人々の姿が映る。
『──ッ!?』
 そんな兵士達を遮るように、彼らの足元へ無数の投擲槍や矢が刺さったのはほぼ同時の事
だった。
 思わず驚き、はたと顔を上げる皇国兵達。
 そんな彼らと人々を結ぶ直線上に割って入るかのようにシャルロットらは立ちはだかる。
「貴様らは……」
「初めまして、でいいのかしら。トナンの兵士さん達? 私の名前はシャルロット・ブルー
ネル。七星連合(レギオン)で看板役の一人をを務めています」
 その名乗りを受け、兵士達は、背後の市民達は目を見開いていた。
 まさか七星? シャルロット──“海皇”の? そんなざわつきの声が聞こえてくる。
「そんなに脅えないで? 私達は貴方達を助けに来たのよ」
「さぁ、ここは我々に任せて早く行くといい」
「最寄の守備隊砦に避難しなさい。既に私達の仲間が各所を制圧している。長の名と事情を
話せば保護してくれる筈だ」
 肩越しに優しく微笑む魚人の美女と、その配下の各種水棲種族を中心とした面々。
 人々は少々呆気に取られていたが、彼女達に敵意が無いことや現に皇国兵から庇って貰っ
ているこの状況を察すると次々に頷き、緊張しながらも礼を述べると再び避難の為に駆け出
して行った。
 そんな後姿を見送って、シャルロット達は改めて皇国兵らと対峙する。
「チィ……。七星がこっちにも回ってくるとは」
「おい、兵を回すように伝えて来るんだ! 門も急いで閉じろ!」
「お、臆するな! 相手は大半が魚人みたいだ、陸の上じゃあ本領は発揮できない筈……」
「そうね。確かに私達のホームグラウンドは海だけど──」
 それでも、彼らは立ち向かおうとした。
 兵の内の一人が叫んだように、たとえ相手が世界最強の海の傭兵団とはいえここは陸上。
何とかなると、自分達の武芸に慢心していたのかもしれない。
「じゃあ“呼べばいい”じゃない?」
 だが……そんな楽観視はすぐに粉微塵にされることになった。
 兵士達が銃剣を構え直そうとするその直前、シャルロットははたと懐からコバルトブルー
の宝玉を一つ取り出すと、そうにこっと小首を傾げて言ったのだ。
「──海皇珠(トリトンスフィア)」
 その瞬間、海の色の光が弾けた。
 それと同時にこの宝珠の中から怒涛の勢いで溢れ出したのは……膨大な水。いや、まるで
呼び出された“海”そのものであった。
 しかもそれはただの水ではない。それ自体が魔力を宿しているかのように、彼女の掲げる
宝珠を中心にして生きているかのように蠢き、巨大ながらも一塊の水として存在している。
 高く高く見上げるほど現出されたこの“海”に、皇国兵らは一様に唖然としていた。
 そんな魔力を湛える水の中を、文字通り水を得た魚のように、シャルロット以下魚人の傭
兵達は自在に泳ぎ回りながら、一斉に投擲槍や手斧といった武器を構え出す。
「……さて。じゃあ早速“お掃除”といきましょうか」
 そしてシャルロットもまた、魔導具の指輪から三叉の槍を取り出し、くるくると掌で回し
て握り直すと、蠢く水の天辺で足首だけを浸し立つ姿で、そう艶やかな微笑みを浮かべる。

「ふ~む? どうしたもんかのう……」
 そして南正門前に残ったバークスとセイオンは、ガチガチと震えながらもその場を動こう
としない皇国兵らを前にぼんやりと立っていた。
 彼らが怯えているのは、無理もない。
 エドモンド・バークスこと“仏”のバークス。現在の七星筆頭にして、世界最強の傭兵。
 それだけでも悪党という悪党が素足で逃げ出す程であるのに、加えてグラムベルやシャル
ロット、そしてセイオンという同じく七星の一員にして世界最強の陸・海・空の傭兵団まで
もが一堂に会しているのだ。
 なのに、上層部──アズサ皇からの指示は未だ来ない。
 上も混乱しているのだろうが、峻烈なかの皇の日頃を思えば、このまま逃げてしまっても
厳罰が待っていることが予想される。
 前門の虎、後門の狼とでもいうべきなのだろうか。
 だからこそ、いやこんな状況だからこそ、皇国兵達は冷静な判断を欠いてしまっていた。
 恐怖で凝り固まってしまったが故の、持ち場への拘泥。消極的な逃避の表れ。
『今回、お主らには皇都市民の救出活動を最優先にして貰う。先方の意向は、あくまで戦い
を極力犠牲少なく終結させること。城砦の掌握はともかく、無闇な戦闘行為はくれぐれも自
重するようにな──』
 故に、事前に今回の作戦のあらましを聞かされていたバークス達は下手に彼らを叩く訳に
もいかず、どうにも睨み合うような格好となっていたのである。
「道を空ければこれ以上危害は加えない!」
「悪い事は言わない。投降するんだ!」
 何度となく一行は皇国兵らに呼び掛けていたが、彼らは動くことはなかった。
 やはり怖いのだろう。自分が動けば、この均衡が崩れてしまう。そしてあの後何が起こる
か分からないと、背筋が凍る思いに強く釘を刺されて。
「……参りましたね。穏便に解決しようとしているのに」
 バークスに肩を並べ、手勢を率いていたセイオンが眉根を寄せたままごちた。
 そうは言いつつも、腰の剣には既に片手を掛けている。
 応じなければ少々強引にでも進入路を拓くしかない。そう物語っているように。
「……。仕方ないのう」
 すると、まるでその言葉の中の意図に頷いたかのように、バークスがのそりと動いた。
 肩に乗せていた身長大の長矛──しかも彼自身が巨人族(トロル)であるため、その全長
は常人のそれを遥かに超えている代物だ──を静かに持ち上げると、彼は一人ゆっくりと隊
伍の最前列から離れ、城門の前へと近付いてゆく。
「お、おやっさん!?」
「一人で大丈夫ですか~い?」
「ああ……大丈夫だよ。お前さんらも、ちーぃと下がってな」
 配下の傭兵達が少々慌てて呼び掛けてくる中、バークスはあくまで穏やかに答えていた。
 皇国兵らも、何をする気だとすっかり怯えたまま一層その場に固まってしまっている。
「……」
 スーッと。次の瞬間、バークスは大きく深呼吸をしていた。
 同時に見せた構えは長矛を地面に対し水平に、逆手に握り直した、刀剣で言う抜刀術のそ
れに近い。
 セイオンが、傭兵達が静かに目を見開いた。
 皇国兵らの中にも、特に経験の豊富な年長の将校を中心に、ざわっと動揺が走り出すのが
遠巻きながらに確認できる。
「ま、まさか……」
「……ッ。マズい……!」
「さて……。悪いが少々強引にでも道を作らせて貰うぞい? 怪我をしたくなければ早ぅそ
こから逃げるとええ」
 空気が揺れていた。気のせいか、長矛の周りに風が集まっているようにも見える。
『──!』
 その刹那だった。
 彼の巨体からは想像できない速さで斜め上に振り抜かれた長矛。その描く軌跡とその視線
の先にあった城砦の壁が──“切れて”いた。
 あれほどレジスタンスの兵達が攻めあぐねていた筈の堅固な城壁が、まるで洋菓子にナイ
フを入れたかのように、サックリと斜め真っ二つに斬り裂かれていたのだ。
「な……っ!?」
「く、崩れるぞぉ! 退避、退避ぃ!!」
 そしてそれまでの静寂を一気に巻き返すように、城壁はその一閃の下に轟音を立てて崩れ
出した。そこでようやく思考を取り戻し、慌てて皇国兵らが我先にへと逃げ惑い始める。
「ひゅ~……。やっぱいつ見てもすげぇな」
「ああ。おやっさんの十八番──“空断(からだち)”」
 それは、界の先天属性を備えるバークスが故の奥義。
 物理的にではなく、空間ごと視界に捉えたものを切り裂く、彼の代名詞とも言える技。
 配下の傭兵達も驚き、そして惜しみない賛辞を送りつつ、ガチャリと一斉に得物を構え始
めた。そしてバークスが、セイオンが、彼ら一同に振り返って告げる。
「さて待たせたのう。道は出来た。行くぞ?」
「打ち合わせ通り、対城砦班と救出班に分かれる。掛かれ!」

「──報告致します! つい先刻、七星の軍勢が攻撃を始めてきました! 確認できている
限りでは西城門に“獅子王”グラムベル、東城門に“海皇”シャルロット、そして南正門に
“仏”のバークスと“青龍公”セイオン! 特に正門は“仏”自らが城壁を破壊した模様。
各軍勢、現在進行形で侵入してきていますっ!」
 何度も報告の者が王の間に駆け込んでくる。
 しかし肝心の将校・重臣達は只々呆然とするばかり。
「…………」
 アズサもまた、玉座から立ち上がったその格好のまま、石になってしまったかのように生
き残った中空の映像を見遣ったまま微動だにしなくなっている。
 酷く嫌な風が吹いていた。見上げた後姿。しかしその表情はゆらゆらと揺らめく髪に遮ら
れて確かめることはできない。只々、かの皇は立ち尽くしているように見えた。
 その間も、援軍と思っていた筈の軍勢は敵となり、四方八方からこの玉座を狙っている。
絶対と信じて疑うことのなかった“数の利”が覆されてしまっている。
 そう。まさに今この時この瞬間。
 二十年越しの逆転劇(リベンジ)が──始まったのだ。

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  1. 2012/04/23(月) 21:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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