日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(企画)デコボコラバーズ!

【注】先日、物書きさん達との練習の場で自分が書いた短編(のプロローグ的な文章)です。
   「他の方の書いた文章にお題をつけるとしたら?」というイメージ訓練の一環でした。
   (※皆さんから出た案⇒「異性恐怖症克服同盟」「義妹なんか恐くない!」「通行禁止デリバリー」等)
   本文は追記部分からどうぞ↓


「春臣。大事な話がある」
 その日、夕食の席で親父はそう言ってきた。
 二人分のご飯をよそい、味噌汁を入れながら俺は頭に疑問符を浮かべて振り返る。
「何だよ……そんな改まって」
 使い古し随分と剥げてきたエプロンを着けた格好で、俺は内心おずおずといった感じで親
父の席に今夜の献立を置く。
 そっと椅子を引いて、父子二人だけの──しかし自分達にとっては少々珍しい光景。
「そう身構えなくていい。とりあえず食べながら聞いてくれ」
「あ、ああ……」
 相変わらずの生真面目な顔のまま、ぽんと手を合わせて先ずはいただきますの挨拶を。
 俺は一応はむっと白米を口に運びつつも、一体何なのだろうと訝しむ。
 そもそも、この家は自分と親父しかいない。
 俺自身は間接的に耳に挟んだ程度でしかないが、俺が生まれて程なくして母親は家を出て
行ってしまったのだそうだ。要するに世に言う父子家庭という奴である。
 まぁ無理もないのかもしれない。
 目の前にいるこの四十半ばの男は、世間的にこそ大企業・獅藤製薬を一代で大きくした豪
腕で知られる社長だが、その息子である俺から見れば、父親としてはそんな世間の評価とは
比例しないと思う。
 堅物で生真面目で仕事一筋。
 確かにその頑張りのおかげで、俺は食うに困らず生活できている訳だが、未だにこの血の
繋がっている筈の父親にはどうにも苦手意識があってならない。
 そんな親父が今日は、珍しく定時に帰ってきて俺と夕食を共にしているのだ。……その時
点で俺は違和感を覚えてはいたのだけど。
「……」
 そんな俺の思考をぐるぐると回しているなど微塵も気にする様子もなく、親父は暫くの間
黙々と焼き鮭をメインにした和食メニューを口に運んでいた。
 様子を窺いつつ、俺ももきゅもきゅとあまり味を感じられない食事を喉に流し込む。
 一応、世間的には俺は“お坊ちゃん”という見方をされる。
 だが根っこが真面目に過ぎる親父という存在は、そんな周りの特別視を俺に向けようとは
しなかった。
『今の時代は男も家事ができなければ駄目だ。俺が家を空けている間は、ちゃんと自分で毎
食用意しろ。……いいな?』
 と、いう感じのことを何度となく言われて。
 その結果──まぁ今では俺自身結構楽しんでいるのだが──料理を始め、一通りの家事は
こなせる男に、気付けば俺は仕上がっている。
(でもまぁ。それも結局“節約”なんだろうなあ……)
 だがと、味噌汁を啜りながら思う。
 その言動は立派な父……かもしれないが、要はお手伝いを雇う金銭をケチっているだけで
はないのか? そういう考え方もできる。
 普段からガチガチなまでに論理的な頭で回っているであろう親父だ。充分にあり得る。
「……春臣」
 しかし、そんな俺の父親像は──結論から言うと間違っていたのだ。
 どれだけ二人だけの食卓を囲んでいただろう。その時はやって来た。
 つぅっと、顔を上げて俺を見てくる親父の威圧感付きの眼。
「な、何だよ……」
 正直言って、逃げたかった。
 何だよ? 俺が何か悪いことをしたのか?
 そりゃあこの身の上と“アレ”という組み合わせの所為で、色々面倒なことはもう茶飯事
になってはいるけれど……。
「お前に、紹介したい女性(ひと)がいる」
「…………。は?」
 箸に挟んでいた豆腐がくちゃっと崩れて味噌汁の中に再ダイブしていた。
 紹介したい、人? 俺の頭の中は急に沸いた動揺やら不安でぐちゃぐちゃになる。
「と言ってももう連れてきているんだがな。……待たせてすまない。入ってくれ」
「は~い」「お、お邪魔します」
(……ん?)
 そんな中で、親父がキッチンと廊下を隔てるドア越しに呼び掛けている。
 そして俺は、その返ってきた二人分の声に、フッと引っ掛かるものを感じて──。
「ぁ……」
 そこに居たのは、一組の母娘(おやこ)。
 のんびりとした柔和な笑顔が魅力的な母親の女性と、その横でおずおずと恥ずかしそうに
している、清楚可憐という表現をそのまま現実に持ってきたかのような、俺と同い年くらい
の小柄な女の子。
「紹介しよう。吉野桐子さんと、桜ちゃんだ。……近い内に、お前にとっては義母(はは)
と義妹(いもうと)になる、したいと思っている人達だ」
「…………」
 俺は、あんぐりと口を開けて言葉なんて出なかった。
 頭の中では状況──『親父が再婚話を持ってきた』を告げるアラームがひっきりなしに鳴
り響いている。
「あ、あのっ! は、春臣さん。お、お久しぶりです……」
「えっ? あ、ああ。おう……久し、ぶりだな……」
「? 何だ。知り合いだったのか?」
「ああ……。知り合いっつーか、まぁ……顔見知り、だよ」
 だがそれよりも、俺を何度もガッツンガツンと揺り動かしていたのはそれ以外のことで。
(何でまた、よりにもよって……!?)
 一つはこの目の前の子とは、つい先日、ある事件を切欠に知り合っていたことで。
「……。驚くのも無理はない、か」
 間を挟むように、予想通りかといった感じで親父は言う。
「だがな春臣。今回俺が桐子さんと出会ったのも、何かの縁じゃないかと考えているんだ。
お前だってこのまま“アレ”を抱えたままこの先暮らしていくのは、辛いだろう?」
「そ、そりゃあそうだけど……」
 淡々と、しかしその声色は真面目──再婚話も当人にとっては本気であるらしい。
 でも、俺はそんなすぐに頷ける筈もなくて。
「い、いくらなんでも無茶だって!」
 俺はもう一つの──いや、最も厄介な問題に焦ってその場から立ち上がっていた。
「親父だって知ってんだろ? 俺が、筋金入りの女性恐怖症(おんながだいのにがて)だっ
てさ……!?」
                                  (続……く?)


(……。やっぱり自分の文体でラノベ調は無理があるようですね<(^q^)>)
 
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  1. 2012/03/17(土) 01:15:00|
  2. その他参加物
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

え、いいんじゃないですか?
けっこー好きですよ、この話☆
是非続き書いていただきたいです(^_^)
  1. 2012/03/17(土) 04:17:37 |
  2. URL |
  3. あすか まな #-
  4. [ 編集 ]

そう言って貰えると恐縮……なのですけど、どうにも他の物書きさんからは
「やっぱ文章が純文学っぽい」みたいな感想を頂いているケースが多いのですよねぇf(^_^;)

同時にそれは僕の物書きとしての悩みの種でもありまして……。
文章の硬さと題材の幻想趣味のアンバランスさ。それが故の読者からしてみる敷居の高さや
フォーカスのニッチさに繋がっているというか(苦笑)
妄想では多分に幻想的な要素が付き易く、かといってそれらを排除してリアルな人間を描く路線
にゆこう とするには対人経験値が足りなさ過ぎる(結構イメージで補っている部分が大きいので)
いやはや、尽きることのない精進でありますφ(=_=;)
  1. 2012/03/17(土) 16:03:20 |
  2. URL |
  3. 長月 #oOZ748FU
  4. [ 編集 ]

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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
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