日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(雑記)巡り廻った、その先を

こんにちは、長月です。
今日は2012年3月10日──言わずもがな、あの東日本大震災から明日で1年が経ちます。
正直言うとあっという間だった気がします。
このブログを開設したのは去年の四月末であり、以前から折に触れて自分も外野の人間なが
ら震災後の世の中を自分なりの眼で見渡した中で拙い雑記をしたためてきました。

失われた命はもう戻りません。
悲しみや苦悩に苛まれる被災者の方々の心中は、筆舌に尽くし難いものがあると思います。
それでも尚、一介の物書きとして、思考を回し続ける者として一面であっても語ることを許
されるのであれば。
……せめて、鎮魂と復興の祈りに代えて、もう一度想起したいと思うのです。


震災発生のまさにその瞬間、僕自身は自宅のトイレの中にいました。
そして何の気なく用を足して部屋に戻ってきてみれば──大袈裟でもなんでもなく、もうそ
の時を境に言わば世界が変わってしまっていたのです。
ニュースで映し出されるアナウンサーらの忙しない報道の読み上げ、断続的に鳴り始める地
震速報のアラーム、そして……あの大津波と、福島第一原発の事故発生。
大変なことになったと思いました。
そして自身、あの日のことを──阪神大震災の頃の、幼少時の自分を思い出していました。
天災は防ぎようがないもの。仕方ないもの。
そんな諦観は、遠巻きながらこの生の中繰り返される災禍の報せを前に脆くも崩れ去るほか
なかったのです。

それでも、そんな災厄が起こっても、変わらなかったものがあります。
それは──権力の側、昔風に言えば「お上」と総称されるような者達と僕ら庶民との今も尚
続く温度差、その変わらぬ溝に対する憤りや嘆きです。
ある御老人は言いました。今回の震災は『我欲に塗れた日本人への天罰』だと。
かねてより放言(不思議なことにそれらが往々にして保守的なご老人方には受けが良いよう
なのですが)が目に付く方ですが、流石に僕もこれには正直憤りを隠せませんでした。

……天罰? 貴方は本気でそんな事をのたまっているのか?

百歩譲って、現代人が我欲に塗れているとしましょう(おそらくは近代に向かう中での個人
主義や拝金主義的、自己責任的な風潮への反感の類を言いたかったのではと解釈しますが)
しかしそうだとしても、全く無関係な庶民がその「罰」を受ける謂れなどない筈です。
その論理(というのも馬鹿馬鹿しいですが)の通りなら、その天罰とやらは今この国を動か
している──いや、権力の椅子に仰け反っている連中へ落ちるべきではないのですか。
皆さんもご存知のように、震災直後からの連日の報道で政府の後手後手の対応や情報隠蔽、
不適切な言動には枚挙に暇がありません。
最早お粗末な政治家というのは風物詩(?)と化している面はありますが、巨大な災禍を前
にしてあまりにも人々との間の溝が大き過ぎる。

地震や津波が人命や財物を飲み込んでしまうかもしれないのに、備えを怠っていた。
(仕組み上、水の多い場所に建てといけないとはいえ)これほどの放射能汚染を起こしても
尚、その運用を何気に続けようとし、その向きに反抗する者がいれば「異端者」として放逐
さえしてしまう空気の醸成。
何よりも……そんな災いの「復興」を叫びながら、やっている事は増税へのごり押しという
人々への負担増ばかり。

……あまり怨嗟ばかりを並べても、どうせ詮無いことは分かってはいるつもりです。
それでもやはり、これだけの災厄が起きたにも関わらず、どうにも僕には権力の側と庶民の
側(特に被災された方々)との間に溝が依然として在り続けているように思えてならないの
です。いやむしろ、進まぬ復興や同時進行する差別といった「被害」は増してきているので
はないか?とすら感じてしまいます。

おそらくそれは“言葉が軽い”ように感じられてしまうからなのでしょう。
政治家が、人々の暮らしをフォローすべき存在の担い手が語る言の葉が、どうにもこうにも
上辺だけでリアルの効果を伴っていない。
「復興の為に全力を尽くします」と言われても──実際忙しなく働いていても──中々その
成果が救うべき、救わなければならない人々に届いてないような印象で。
そうなると邪推せざるをえない。
結局の所、庶民は選挙の「札」でしかなく、彼ら自身は痛くも痒くもない。
ただ災禍に見舞われ疲弊し、経済が滞れば税収(つまりは自分達の報酬)も落ち込む。
助ける素振りを、パフォーマンスを取っていなければ自分が危うい。
──彼らの為ではなく、自分のため。結局の所、偏狭な「保身」なのではないのかと。

しかし、同時にそれは僕個人にも跳ね返ってくることだと思うのです。
勿論僕は政治家ではない。何かしらの社会活動家でもない。ただこうして、衒学ぶったり思
考を捏ね回している素人の文字書きに過ぎない。
……だからこそ、このご時世の「お上」達への怨嗟は、跳ね返ってきた時まさに自身の高慢
というか“結局は自分も彼らの為に何もしてない”という負い目に着地してくるのです。

小説を書くこと。それを読んで貰うこと。
でも悲しみや苦悩に苛まれる彼らに、そもそも余暇的な金銭や戦隊の余裕も取れない人々に
僕のような物書きは何をできるのでしょう?
ただ傍観者でいればいいのでしょうか。こう「嗚呼、どうすればいいんだ!」と声を出して
いるような“偽善”ではなく、それくらいならまだ黙っていた方がいいのでしょうか。
巡り回る、取り留めないこの自我の思考。
それはきっと本質的に自分本位で、もしかしなくても誰かの苦悩には直接触れられないのか
もしれません。……それが、何とも負い目を抱かせてしまう。もっとすべきことがあるので
はないのかと自分を疑ってしまう。
ただ自分にできそうなことは、拙く文章を書くことくらい。
それもイメージを捏ね繰り回した、幻想に耽ったフィクションの世界。
どんなにその物語世界の中に想いを込めようとも、彼らのリアルに届かないのではないか?
そんな問いが僕の内側から湧いては霧散し、沸いては霧散してしまう。

届かなくてもいい。ただ、そっと──。
物語の、言の葉の力とは結局の所「間接的」なのかもしれませんね。
どんな想いを(真面目くさったり、或いは道化的を演じて)紡いでも、相手は受け流すかも
しれないし、斜め読みをして反感を買われるかもしれない。もしかしたら気付いてくれすら
しないのかもしれない。
だけどそれでも……僕らはきっと、紡ぐ事を止められない。
大切な誰かをあの日に失った人々が姿なき存在となった彼らに祈るように、僕らもまた具体
的な相手が見えなくても、己の中に抱いたものを紡ぎ続ける他ないのかもしれません。

想いは巡る。私の貴方の意識の中に。
季節は巡る。どんな災禍が訪れようとも。
だからきっと……たとえ記憶が風化していくとしても、僕らが受け継ぐしかないのだろうと
思うのです。閉ざされた彼らの分まで、その未来を誰かに手渡す為に。
もしそのお手伝いを、文章として形に残せるなら……僕ら物書きも意味はあるのかな。

目の前の現実は、辛くて厳しいものだけど。
せめて巡らせる僕らの想いだけは、繰り返し芽吹く時の流れのように前向きでありたい。

拙い文章で不快に感じられたかもしれません。
それでも、ご容赦下さりたく思います。
もうすぐ一年。
節目の日を目前に控えた今、たとえこの場からでも、幸あらんとぞ……祈りを。

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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

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