日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅱ〔18〕

 その日、世界が震えた。
 実際“結社”の凶行は何も今に始まった事ではなかったが、それでも自分達の「信仰」で
以ってすれば数多の犠牲をも厭わないその思想──からくる行動能力は、何度ともなく人々
を震え上がらせるには十二分過ぎたと言える。
 特に皇国(トナン)を内包する東方の盟主『レスズ都市連合』や、爆破された飛行艇が離
陸をした空港(ポート)の出元である北方の大国『アトス連邦朝』の被った物質的・精神的
ダメージは大きく、事件の後暫くはメディアや市井間で“結社”に対する報道合戦が繰り広
げられることとなった。
 だがそれでも……事態はすぐには動かなかった。
 西方の軍事大国『ヴァルドー王国』はかねてより“結社”よりセカイ開拓の有力パトロン
としてマークされており、既に領外への戦線を広げるだけの余裕はなく。
 南方の豊穣大国『サムトリア共和国』は指導者が代わって間もなかったが故──未だ内政
の地盤固めが不十分で他国への干渉をできるだけの余裕はなく。
 世界最大の信徒勢力たる『クリシェンヌ教団』も、遺憾の意を示しはしたが武力介入など
は取る筈もなく。
 反開拓派の諸勢力『リストン保守同盟』に至っては、今回の凶行を革新化の進むトナンへ
の牽制になると歓迎する声すら上がるような状態で──。

「……どうにもきな臭い感じになってきたわね」
 ホームのロビーに皆を集めて、イセルナは心苦しさを隠せないしかめ面で呟いていた。
 先刻、アルス達が表通りで貰ってきた号外の紙面。そこに書かれた、皇国(トナン)行き
の飛行艇が“結社”によって爆破テロに遭ったという旨の速報。
 誰が強制する訳でもなく、面々は重苦しい空気の中にあった。
「これは、どういうつもりなのかしらね……」
 数日前にダンから直接、向こうに着いたとの連絡があった。
 途中の導きの塔にて“結社”の妨害にあった──面子を寸断されたことから考えても、奴
らが直接ジーク達を狙った訳ではない筈だ。
「……おそらくは」
「揺さ振り、だろうね」
 呟きかけた推測を、シフォンとハロルドが継いで言葉にしてくれる。
 イセルナ達は十中八九そうだろうと、黙したまま頷いていた。
 ──奴らには、この街(アウツベルツ)を襲ってきた先例がある。奴らなら、自分達の目
的の為なら何だってやってのける。
 ある意味最も敵に回すべきではない、予想の付かない相手だ。
「このニュース、やっぱりシノブさんにも……?」
「だろうなぁ。今夜はともかく、何日かすれば伝わっちまうと思う」
「……」
 いや、それ自体は──ジークやアルス達には堪えない筈はないのだが──言っては何だが
随分と慣れてきている。
 少なくとも自分はこのクランの代表を務めている。皆を徒に不安にする訳にはいかない。
 だからこそなのかもしれないが、イセルナの胸中はむしろ別の方面に傾いていた。
 即ち、シノブの苦悩に対する心痛に。
 団員達がひそひそと心配げに語るように、彼女は今、非常に不安になっている筈だ。
 先日ダン達がトナンに着いたことは導話で伝えたので、今回のテロにジーク達が巻き込ま
れた訳ではないと気付けているだろう。それでも祖国へ向かおうとした人々が犠牲になって
しまった事実を重く圧し掛かるように感じているといった姿は容易に想像できる。
 何せ、あのジークとアルスの母親なのだ。
 数日だけとはいえ、実際に会った彼女は間違いなく……己を殺してでも誰かを助けたいと
願っている、そんな類の人間だと思うから。
(……やっぱり、そう円満には解決できないのかしらね)
 予想は、覚悟はしていたけれど、やはり気が塞ぐ思いは拭えない。
 だからこそ、これだけ多くの人々を苦しめる“結社”への憤りも鋭角を描くように比例し
てくる。当然の感情なのだろうが、一方でそれすらも奴らの策略に乗ってしまっているかの
ようで正直おもしろくはない。
 夜の街は、一見すると普段と変わらないように見えた。
 日没に替わって、点々と灯る家々の照明が街の姿をほんのりと浮かび上がらせている。
「とにかく、情報収集を始めましょう。少なくともダン達にも奴らからの圧力が掛かってい
る可能性があるわ。それと……ハロルド」
「何かな?」
「皆を代表して件の空港(ポート)へ献花をお願いできるかしら? 犠牲者と遺族の皆さん
に聖職者(あなた)の祈りを。……私達の所為で、犠牲になったようなものだから」
「……分かった。私のような不良神官(はぐれもの)で良いのなら」
 そう、自分を責めるな。
 少し間を置いて頷いたハロルドや、周りの団員らもそんなニュアンスの返答と優しい眼を
送ってくれる。
 団員らは、ややあって動き出した。
 夜は深くなり始めているが、もう事態は待ってくれそうにはない。
 ただ仲間の帰還を待つのではなく、自分達もできうる事を惜しまず採るべきだとイセルナ
達は強く思う。
「…………」
 そう、にわかに場がざわつく中。
 アルスが独り、ふらふらと部屋へと向かっていることに、誰一人気付く事もなく。


 Tale-18.権謀と正義の贄

「サジ、隊長……?」
 背後からの声に驚きと戸惑い半々で振り返ると、リンファはじわりと目を丸くしていた。
 先程とは別な緊張感が、場を通り過ぎてゆく。
「あぁ、そうでした。リンファさんは元近衛隊の人ですから……」
「……そう言えば。そうか、かつての上司と部下になる訳か」
 ぽんと手を叩き、少々場にそぐわないのんびりとした声でマルタが口を開いていた。
 サフレも小さく頷く中、ジーク達もレジスタンスの面々も、暫しこの二人の再会を傍観す
るような格好になる。
「どうして、貴方がここに?」
「それはこちらの台詞だよ。音沙汰も無くてっきりアズサ殿の追っ手にやられてしまったの
かとばかり思っていたというのに……。だが、そうではないのだな? 先程彼──ジーク様
より直接お聞きした。殿下は、生きておられるのだな?」
 改めて確認するように訊ねてくるサジをじっと見つめてから、リンファはちらりと横目で
以って、どうにも不機嫌に彼から目を逸らしたままのジークを見遣った。
「……しつこかったんでな」
「そう、か」
 壁際に背を預けた彼のその短い言葉で、リンファら仲間達も駆けつけるまでに此処で何が
起こっていたのかを少しずつ把握し始めていた。
 何も、ジークらを捜していたのは自分達だけではなかったらしい。
「サジさん、お知り合いなんですか?」
「さっきサジさんを隊長と呼んでたってことは……」
「おいおい。どうなってんだ? リン、説明しろよ」
「……ちょっぴり、カオス気味」
 ざわり。ざわざわと。
 するとそれまで戸惑いで言葉の出なかった両陣営の面々がようやく口を開き始める。
「ん? ああ」
「そうだな。紹介をしないといけないか」
 そして皆のそうした反応を見て、サジとリンファは再度お互いの顔を見遣り合うと、
「彼女はホウ・リンファ。近衛隊の頃の部下の一人でな、殿下の御側役も任されていた。人
柄は真面目だし、剣の腕も確かだ。私が保証する」
「彼はサジ・キサラギ。私が親衛隊にいた頃の隊長だよ。……まさかレジスタンスに加わっ
ているとは思わなかったが」
 そうそれぞれに、自身の仲間達へとかつての同志を紹介する。

 その後、リンファによってサジ達レジスタンスの面々に改めてこれまでの経緯が語られる
こととなった。
 かつて陥落した皇都から逃亡したシノブ──シノ・スメラギと自分、そんな敗残者へと手
を差し伸べてくれた者達(なかま)の存在とその後から現在(いま)への軌跡。
 ジークとアルス、二人の息子に託した護皇六華と皆が「平穏」に暮らせますようにと願っ
た一人の母としての、敗れた皇族(がわ)として苦渋の末に引いたシノブのその身。
 何よりも、そんな主の願いすらも蹂躙しようとする“結社”と今、六華奪還を巡り対立関
係にあること。
 ジークが先に語った内容を補完するように、リンファはじっくりとその古傷を見返すかの
ようにして記憶を場に紡ぎ直す。
「──申し訳ありません。もっと私も、散り散りになった皆を捜すべきでした」
「いや、気に病まなくていい。私の方もこの立場が故に名前を表に出せなった経緯がある。
それよりもすまかった。お前はずっと一人──いや、今は今の仲間達がいるのか……。何に
せよ、ありがとう。ずっと殿下を、ジーク様とアルス様を守ってくれていたんだな」
 悔恨と共に深々と頭を下げてきた彼女に。
 サジはフッと不器用な微笑みを寄越しこそしたが、責めることはしなかった。
 むしろ返ってきたのは、謝辞のそれで。
 上司と部下。上下関係はあっても、かつては同じく先皇一家に身近で仕え、深い親愛の情
と忠誠を抱いてきた者同士であるが故のやり取りで。
「……。勿体無いお言葉です。ただ殿下達への忠節を貫いてきた、それだけの事ですから」
 そんな彼の赦しの言葉に、リンファはじっと頭を垂れたまま、内心の安堵の念を繕い、覆
い隠すかのように謙遜の弁を口にしていた。
「さて、と……。感動の再会はそろそろその辺りにしておこうぜ、リン? まぁ確かに、騒
ぎを聞いて駆けつけてみれば一石二鳥な結果になりそうだがよ」
「……一石、二鳥?」
 やがてダンが話題を切り替えるように口を挟むと、ジークは眉根を寄せて目を遣った。
 この砦を落としてみせた──敢えて騒ぎを起こしてお互いに合流できるようにする、その
自分達の目的以外に、彼は一体何を意図していたというのか。
「六華の件だよ。ここに来る前に皇都の宿で話し合っていた事なんだがな。ちょうどレジス
タンスに接触してみようって話になってたんだ」
 その返答に、ジークの眉間の皺が更に深くなっていた。
 背後・傍らには、頭に疑問符を浮かべるレナやマルタ、静かに目を細めてその意味を咀嚼
し始めているサフレの姿がある。
「考えてもみな? 現状、六華を手に入れて一番得をするのはアズサ皇だ。実際、ジークの
事を知った途端、触れを出して捕まえようとしてるしな」
「最初、皇都に着いた時は、何とか王宮関係者と接触して六華の情報を探れないかと考えて
いたのだけど、こうなっちゃったからもうそれは難しそうだし……。何よりリンファさんの
気持ちを考えると、アズサ皇に擦り寄るような真似は採れなかったのよ」
「……。敵の敵は味方、という事ですか」
「ま、ざっくり言えばそんな所だな。まさかリンの知り合いがそのリーダーをやってるとは
思ってなかったんだが」
 サフレの呟くような確認にダンは苦笑気味に眉根を上げていた。
 そしてダン達一行の視線は、自然とそのレジスタンス──サジ達へと向けられる。
 静かにざわついた後、彼らから返されたのは戸惑いだった。
 そんな仲間達を代表するように、ややあってざわつきを制止してつつサジは答える。
「なるほど。しかし生憎、六華の情報という点では期待には添えない。かく言う私達もつい
先程ジーク様によって知りえたばかりだからな」
「……そうか」
 当てが外れたか。
 そうダンやリュカは神妙な面持ちになったのだが。
「ダンさん」
 絡まったかに見える様相(いと)は、再会を果たしたジーク達のように少しずつ、しかし
確実に核心へと迫ろうとしていく。
「迂遠になりますが、こちらでも幾つか判明したことがあります」
「? 何だ、言ってくれ」
「……既にジーク達には道中で話しているのですが、アズサ皇と“結社”は裏で繋がってい
る可能性があります。ダンさんもさっき言ったように、六華を手にして一番得をするのは彼
女です。にも拘わらず、その一番でない“結社”もまた六華を執拗に狙ってきた事実があり
ます。もし六華自体に奴らの目的がない──奴らにとって六華が“目的”ではなく何かしら
の“手段”であるならば、一見相反する勢力同士でも互いの目的の為に利用し合っている、
形式上の共闘関係があってもおかしくはない」
「お、おいサフレ。だけどそりゃあ、お前も推測だって……」
「ああ。だが、今までの状況がその線を濃厚にしている。ついさっきも地下牢で“結社”の
傀儡兵達とやり合っただろう? あれはおそらく君の始末と残りの六華の回収。加えてあそ
こに閉じ込めておいた兵士達を口封じに抹殺する為に寄越されたのだと、僕は思う」
 理路整然としたサフレの言葉。
 その一方でジークはハッと目を見開くと、次の瞬間には憤りで顔を歪めていた。
 胸元へ挙げかけた手がだらんと下がり、握られた拳へと半ば無意識に力が入る。
「オートマタ兵と? だ、大丈夫なの?」
「当たり前だろ。そうじゃなきゃ、ここにはいねぇって」
「違いますよ、ジークさん。その危ない所をサジさん達に助けて貰ったんじゃないですか」
「……別に助けろなんざ言ってねぇし、頼んでもいねえよ」
 レナがおずおずと諫めるように言ったが、ジークはサジの顔すら見返さなかった。
 それだけで、ジークが彼らに良い印象を持っていない事が面々に筒抜けになる。
(ジークさん……)
 シノブさんの事もあるし、気持ちは分からなくはない。それでも……。
 何だか自分まで心苦しくなったようで、レナは哀しい顔を浮かべ、マルタも心配そうにそ
の横顔を見遣っている。
「……。ともかく、今回の襲撃も加えて僕は確証に近いものを持っています。少なくともア
ズサ皇個人と“結社”には繋がりがある。そうでなければいくら自国の領土とはいえ、僕達
がこの国に入ってきたこと、六華を握っていることを彼女がこうも早い段階で知り得ている
説明がつきません」
「確かに。それに、付け加えるなら私達からも一つ情報がある。奴らだとの確認は取れてい
ないが、どうやら以前より王宮に怪しい者達が出入りしているらしいんだ」
「リンファさんが皇都の下町で仕入れた話よ。私も一緒だったわ」
「……なるほど。確かに一層きな臭くなってきてるのは間違いない、か。それに随分とお前
らも無茶してくれたしな? こいつは厄介極まりねえ」
「心配を掛けてしまってすみません。ですが、早く合流しなければ状況は不利になる一方だ
と思いましたので……」
 いいんだよ。済んだ事だ気にするな。
 サフレが大真面目に釈明するのを、ダンは寛大な苦笑で以って応えていた。
 バラバラだったパズルのピースが少しずつ形を成し始めているような気がする。ダン達は
互いに不安や戸惑い、或いは思案の表情(かお)を見合わせると、改めてサジらレジスタン
スの面々へと向き直る。
「ま、俺達の中ではこういうまとめになってる。現地人(あんたら)の見立てはどうだ?」
「……そうだな。私達もアズサ殿が怪しいと思う。ただでさえ民を置き去りにした政を執っ
ているというのに、加えて“結社”と手を組んでまでも王器を手にして自身を正当化しよう
など……もし本当なら、私達としても見過ごす訳にはいかないな」
「おうよ。だったら──」
 同志達をざっと見遣ってから頷くサジ。
 そんな彼の返答にしたり顔で頷き返すと、ダンは数歩前に出てサッと手を差し出した。
「ここは一つ、手を組まないか? 俺達は六華を取り戻したい。そっちは元近衛隊長を擁い
てる、この国に精通した人間の集まりだ。お互いアズサ皇に切り込んでいけはしないか?」
 それは、共闘の呼びかけだった。
 アズサ皇と“結社”が裏で結びついているのなら、その勢力に大きさで襲い掛かってくる
のなら、自分達もまたここで手を組むのが上策ではないか? そんな誘い。
 サジが再び仲間達を見渡す。返ってくるのは、殆ど同意に等しい委任の眼差し。
 そしてコクリと頷き、彼がダンの差し出す手に応えようとする。
「……俺は反対だ」
 ジークが口を開いたのは、そんな時だった。
「こいつらは、母さんを言い訳にずっと喧嘩を続けてきた連中なんだぞ? 確かにアズサ皇
の政治が庶民に優しくないってのは俺も国に来てから見てきた。だがよ、じゃあだからって
力ずくで国ん中で戦争を起こさなきゃいけねぇのか? もっと方法はあったんじゃねぇのか
よ? 結局、こいつらは母さんの事なんざ、微塵も……」
「ジークさん……」
「確かに、シノブさんは王位を欲しがっている訳じゃないけれど……」
 一度だけ、一度だけ睨み付けるようにサジらを見て、再び逸らした視線で呟かれる唯一反
対の弁。いや母への忠義を理由に、その当人の意思を踏み躙ってきたことへの憤り。
 以前サンフェルノを訪れ、彼女を知っていたからこそ、仲間達もまたすぐさまに反論めい
た言葉を返せなかった。
 憐憫、同情、理性との葛藤、青いと思いつつも突き放し切れない理解の存在。
 暫くの間、ジーク一行、レジスタンス共に二の句を継ぐ者が出なかった。握り合われよう
とした両者の手は宙ぶらりんのまま、ただこの国の王座に関わる争いに一番ナイーブであろ
うジーク──先皇女シノの子息へと纏め切れない心苦しさが折り重なって向けられて。
「……。お父さん」
 だがそんな沈黙はいつまでも続かない。許されなかった。
 猫耳をピクンと立て、仲間達と共に押し黙っていたミアがふとそう呟いて父を見上げる。
「遠くから足音がする。たくさん。多分……増援」
「……チッ。忙しない連中だぜ」
 同じく獣人の父・ダンもまた改めて耳を澄ませると、同じく忍び寄る軍靴の響きを聴覚で
感じ取り、小さく舌打ちをする。
 どうやら随分と余裕(じかん)を喰ってしまったらしい。
 ダン達も、レジスタンスの面々も、そして壁に背を預け仏頂面のままなジークも誰からと
もなく顔を見合わせる。
「これ以上の長居は危険、か……。ジーク様、皆さん、私達について来て下さい。一旦退き
ましょう。我々のアジトへとご案内致します」

 今度のアジトは、森の中だった。
 砦を急ぎ発ち、街道からたっぷりと外れた山野の中を暫く進むとそれは見えた。
 一見すると古くに建てられた教会──皇国(トナン)にしては珍しい──であるらしい。
 外見こそ廃墟数歩手前だったが、サジ達がアジトに利用しているだけあって、いざ中に入
ってみればアジトの機能を果たせるほどには内装の工事が施されていた。
 既に内部では少なからぬレジスタンスのメンバーが活動しており、サジからの直々の事情
説明が済むと、ジーク達は大仰なまでの敬礼で以って迎えられることとなった。
「…………」
 一時(ひととき)の休息。
 ジークは独り宛がわれた部屋で、晴れない内心のもどかしさと向き合っていた。
 中古のベッドの上に座り、背を預けるのは急ごしらえの薄い壁紙。
 それでもレジスタンスの面々は最初、何とか自分に宛がうこの部屋を綺麗にしようとドタ
バタしていた。
 大方、自分が皇子だと知ったからなのだろうが……正直そんな気遣いは要らなかったし、
実際に言ってもおいた。長らくいち冒険者として生活してきたこともあって、粗末さという
ものには慣れっこなのだ。むしろ変に着飾られた方が落ち着かない。
「──じゃあ、ついこの前のテロで?」
「ええ。国内はともかく、諸外国からの支援が鈍り始めていましてね──」
 それでも、そんな「普通」を願ってみても、事態はまるで自分を嘲笑うかのようで。
 壁の向こうでサジらとダン達のやり取りが耳に届いてくる。
 結局、彼らレジスタンスとの共闘関係は結ばれることになった。
 気持ち分からなくもない。でも六華奪還(もくてき)の為には出来うる手は全て採るくら
いのつもりでなければ“結社”の、アズサ皇の魔手は撥ね退けられない──そんなダンを始
めとした、仲間達との多数決的な決着だった。
(ったく。どいつもこいつも……)
 両腕を頭の後ろでクッションし、ジークは何度目とも分からぬ嘆息をつく。
 ただ自分は、六華を取り返しに来ただけだ。
 王座だの皇子だのということには、悪いが興味はないし、何よりもそれを目的にこの国を
掻き回すような真似は母の意思にも逆行する。
 それなのに……状況はどんどん王座を巡る争いに切り込んでいくかのように思えてならな
かった。
『もしこの国の人々が君達の素性を知ってしまえばきっとそうした距離感自体が認められな
くなるだろう。権力というのは良くも悪くも人の心理に大きな影響及ぼすものなんだ』
 沸々と尽きない嘆きや憤り。
 しかし同時に脳裏を過ぎったのは、以前サフレが語っていた言葉で。
 あの時は言葉の表面だけでいまいちピンと来なかったが、今ならば彼の語ったその真意が
分かるような気がする。
(あいつは、俺がこんな血筋だからこうなるって予想してたのか……?)
 そして理解が及び、ようやくジークは意識の別方向から頬を叩かれる心地になった。
 つまりあいつはこう言いたかったのではないか。
 ──君が皇子であることを拒んでも、周りがそれを許さない筈だと。
 どれだけ一介の冒険者であろうとしても……他の人間は一度知ってしまえば、皇子として
しか自分を見ない。彼なりの、権力の厄介さを説いた言葉だったのだろう。
「~~ッ」
 そこでジークの思考能力は一旦限界を迎えた。
 事実として自分が皇子であることと、自分がこう在りたいと望む姿との乖離。
 ガシガシと頭を掻きながら、ジークは頭を抱えつつベッドの上へと横倒しに身を投げ出し
ていた。ボフンと軋みながらも、ベッド全体がその身を何とか受け止めようと軽く跳ねる。
(こん畜生が……。一体俺にどうしろってんだよ……)
 頭の中の、胸の奥のもやもやが、晴れる気がしない。
 結局、自分もまた母さんと同様に皇だの何だのに翻弄されなきゃいけないのか……?
「ジーク? 入るわよ?」
 リュカが部屋の入り口からこちらを覗き込んできたのは、ちょうどそんな時だった。
「ん? ああ……」
 しかめ面を心なしにだが引っ込めようと努め、ジークはのそりと起き上がると入ってくる
彼女を迎えた。
 するとリュカ以外にも、彼女の後ろに隠れるようにおずおずとレナとステラが顔を出す。
 ベッドの上に胡坐を掻いたまま、ジークは後頭部を掻きつつ言った。
「どうしたよ? レジスタンスとの作戦会議はいいのか? まだやってるぽいけど」
「ええ。どういう形になるかは詰めないといけないけど、その辺の事はダンさん達──プロ
に任せないと私じゃどうしようもないし」
「それよりもジークさん……。大丈夫、ですか?」
「ずっと機嫌、悪そうだったしさ?」
「……。確かにいい気はしてねぇな。気に障るよな、悪ぃ」
「い、いいえ……そんな事は」
 先程の思考もあって、ジークは流石にへそを曲げたままの態度を取れなかった。
 一応、でもやっぱり不器用に、心配してくれている彼女達に侘びを入れる。
「やっぱりジークはさ、レジスタンスの人達の力を借りるのは嫌?」
「……まぁな。砦じゃあつい熱くなっちまったけど、やっぱり母さんの意思を無視してる癖
にその名前を出して正当化しようとしてるのは……認められねぇよ」
 ステラの上目遣いで探るような質問に、ジークは目を細めていた。
 この気持ちに偽りはない。自分達が皇族だろうが何だろうが、きっと他に皆を救える方法
はある筈だ。
「自分達が政争の具にされるのが嫌だって気持ちは確かに分からなくないわ。私だって普段
のシノブさんはよく知っているつもりだし……。でもね、ジーク? もう協力者なしに六華
奪還は──王宮への接触は難しいのも事実なのよ?」
「そりゃあ、そうかもしれねぇけど……」
 それでも今度は、リュカが入れ替わるように諭してくる。
 だがそれは認めつつも、ジークはやはり感情として受け入れ切れない部分があった。
「……貴方はアウルベ伯に言っていたわよね? 人を動かしてたくさんの人を助けえるから
こそ、王侯貴族は偉ぶれるんだって」
 逸らし気味になった視線。黙り込む四人。
 するとリュカは暫しじっとジークのその横顔を見つめると、ふとそんな過去の言葉を取り
出してくる。
 ちらと、逸らしていた目を彼女に向ける。
 ちょっとした既視感(デジャヴ)のような。だけど確かにあの時、胸の奥から導話越しに
叫んでいた(とおぼろげな記憶のある)自分の言葉。
「貴方が嫌でも、貴方がトナンの皇子なのはどうあっても否定できないわ。それを知って周
りの人達がざわついてしまうのも」
 向け直したジークの視線を逃がさぬように、リュカの瞳が強くなったような気がした。
 そんな彼女の後ろでは、レナとステラが憂いの類の顔色を浮かべているのが見える。
「ここに来るまでの道中で、貴方は見なかった? アズサ皇の治世で確かに国は強くなった
みたいよね。でもその一方で、その恩恵に預かれなかった人々が少なからず苦しんでいる現
実もある。貴方はそんな人々を何とかしようとは……思わなかった?」
「……」
 それは、以前サジに問われた言葉の焼き直しにも思えた。
 だがすぐに、彼女の意図が彼のそれとは違っていることにはすぐに気付くことができた。
 アズサ皇の圧政から人々を解放する“聖戦”ではなく、己の感情の「中」に篭ってしまう
のではなく、むしろその想いを「外」に反映させて現実の益を成すべできはないか……? 
 そんな姉のような存在からの、そんな冷静な眼(いけん)であって。
「……俺は」
 唇をギリッと噛み締めつつ、ジークはか細く呟いていた。
 誰を救うか? 何を成すか?
 何よりその為に──何を選び、選ばないのか。
「俺は……王の器なんかじゃねぇよ」
 決められる訳がなかった。どれかだけを、選べなかった。
 ただ呟けたのは、そんな皇族の血(おもに)に対する覚悟不足の吐露だけで──。

「何てことをしてくれたのッ!?」
 時を前後して、暗闇の王座の中で怒号が響いていた。
 座していたのはアズサ皇。
 強気な表情(かお)は怒りで更に苛烈の色を濃くし、暗闇の中、目前に立つ“結社”の雇
われの刺客達を睨み付けていた。
「五月蝿ぇなぁ……。お前、勘違いし過ぎだっての。大体──」
「リュウゼン。支障を来たす発言は控えなさい」
「……へいへい」
 中央にジーヴァ、その左右にリュウゼンとフェニリアが立っている。
 着流しの懐を気だるげに掻いてそっぽを向くリュウゼンに、フェニリアが向き直る事もせ
ずその発言を制止する。
 だが王座から立ち上がり掛けたアズサの怒りは、そう簡単には収まらなかった。
 引き攣ったように歪め、奥歯を噛み締めた唇。表情(かお)。
 ──無理もなかった。
 自分の与り知らぬ所で、彼らがこの国に渡ろうとしていた飛行艇を爆破したのだから。
 レノヴィンらには既に国内への潜入を許してしまっている。今更飛行艇を落とすことに何
の意味があるというのか。
 彼らへの揺さ振り? だとしても、みすみす結社(じぶんたち)の存在を知らせるような
行動を取る必要性がいまいち見えてこない。
 だがそんな憤りに、ジーヴァは冷淡に僅かな嘲笑をみせていた。
「……今更“犠牲”を疎むか。私達はアシストしてやったつもりなのだがな?」
「何を訳の分からない事を……。冗談をいなすほど私は暇じゃないのよ」
 暗がりの中、アズサ皇と“使徒”達、両者の眼光が火花を散らしていた。
 深夜の不気味に静かな王の間に、彼女が叫んだ怒りはとうに吸い込まれ消え去っている。
「邪魔者(てき)の動向は掴めている」
 やがて先に口を開いたのはジーヴァだった。
 暗闇の中で、徒(ともがら)らが静かに目を光らせている。
 一度は漏らした僅かな笑い。
 しかし彼はその口元に描いた小さな弧をそっと収めると、
「もう一芝居打って貰うぞ、トナン皇?」
 ついっと、逆にアズサを見下ろすように顎を引いてそう言ったのだった。


 顕界(ミドガルド)において、東方諸国の気質は一言で表すと「独立独歩」だ。
 四大ストリームの一つ、水門の力を強く宿す“青の支樹(アキュ・ストリーム)”の影響
もあり、この一帯は古くから豊かな水資源に恵まれた交易の土地として栄えてきた。
 故に、群雄割拠的な都市国家の乱立は必然の流れだったとも言える。
 自国により有利な交易のために、或いは他国からの侵略を撥ね退けるために。
 各都市国家が──歴史の中で互いに合併や離散を繰り返しても──それぞれに自国の力を
付けようと競い合ってきた結果だからだ。
 そんな癖の強い諸勢力が集まっているのが、この地の盟主・レスズ都市連合である。
「──おい。あれ見てみろよ」
「んぅ……?」 
 本拠地は東方随一の都市・水都フォンレーテ。
 その名に違わず無数の水路が張り巡らされ、巨大商業ギルド・全陸財友会の本部を中心に
広がってる顕界最大の交易都市としても有名だ。
「どいたどいたー! 道を空けろー!」
 そして加えてもう一つ、大きな存在がこの街には在る。
 所狭しと大通りを行き交う人々が気付いたのとほぼ時を同じくして、この日その中核たる
者達が集まろうとしていた。商人達の街の喧騒に負けないように張り上げた声で、数人の先
払い役の冒険者らが道向こうから駆けてくる。
「……あれって確か」
「ああ。間違いねぇ、七星(しちせい)だ。しかも二人も……」
 世の冒険者らを束ねる、冒険者ギルド・七星連合(レギオン)。
 その本部もまた、このフォンレーテの街に構えられているのだ。
 交易上の要衝であるが故に、過去何度となく諸外国に狙われた来たこの街。だがその長き
に渡る攻防は、財友会がレギオン本部をこの地に招聘する──強大な武力という名の抑止力
を備えることによって終息をみた。
 一方はその資金力を。一方はその武力を。
 そんな利害の一致もあり、以降今日に至るまで両組織は蜜月の関係を続けている。
「“仏”のバークスと“青龍公”セイオンか……。今日ってレギオンの定例会だっけ?」
「いや、多分違うと思うけど。やっぱあれかなぁ? 例の飛行艇の──」
「セイオン様!? 何処何処?」
「キャー! セイオン様ー!」「こっち向いて下さ~い!」
 そんなレギオンの看板役を務める大物冒険者らを、人は通称・七星と呼ぶ。
 組織名の由来も此処から来ており、大きな事案には彼ら七人を筆頭にして傘下の冒険者達
を指揮するという構図だ。
「相変わらず女性には大人気だのう。流石は“勇者の末裔”だ」
「……冗談はその作り笑いだけにしておいて下さい」
 クラン自前の大型馬車に乗って、そんな七星に籍を置く二人とその傘下のクランの面々は
さながら行軍のように街の大通りを進んでいた。
 一人は穏やかな微笑を湛える巨人族(トロル)の壮年男性・バークス。
 一人はそんな七星筆頭に生真面目な呟きを返す竜族(ドラグネス)の青年・セイオン。
「ふふっ。その真面目な所は相変わらずだな」
「これが私の普通ですから。むしろ貴方が大らか過ぎるくらいです」
 群集の中から聞こえてくる黄色い声は、全てこの眉目秀麗な青年に注がれている。
 しかし当のセイオン本人はまるで関心がないといった様子で、変わらず“仏の微笑”を向
ける、バークスの茶化す言葉すらも面倒臭そうにいなすばかりだった。
「……。相変わらず、やたらに人が多いですね」
「そうだの。大方は興味本位の者達なのだろうが、これではあまり馬車で来た意味はなかっ
たやもしれんな」
「ですね。毎回飽きもせずよく顔を出しに来るものです」
「はは、そう言ってやるな。これも儂らに対する有名税という奴だろうよ」
「……ええ」
 大きく切り取られた左右の窓から、セイオンはじっと眼下の往来の人々を見遣った。
 あれこれとこちらを見上げ、噂し合っているらしい野次馬。
 相変わらずかしかましく重なり聞こえる女性達の黄色い声。
 まさか、彼らも何一つ知らない訳ではないだろうに……。
「もう少し、彼らに退いて貰いましょうか」
 しかし眉を顰め、思案に沈みかけたその意識を引き揚げ直すように。
 彼はそう呟いてから部下に伝令を飛ばすと、先払い役の者達にこの野次馬の群れをずいと
大通りの左右へと押し分けさせる。

「──エドモンド・バークス様、ディノグラード・F・セイオン様、御到着です!」
 レギオン本部の正面入口へ到着すると、二人は大人数な職員らの出迎えを受けた。
 そのまま本部前の広場に各々傘下の部下達を待機させ、二人は案内役の者らに誘導される
形で施設内の一角にある大会議場へと足を運ぶ。
「よう。待ってたぜ?」
「ちょうど十小刻(=十分)前……相変わらずの正確さね、セイオン君? それと筆頭も」
 やたらめったらに広い会議室には、その床面積に見合うだけの人数はいなかった。
 代わりに在ったのは、生半可な力の持ち主では正気でいられないであろう、複数の覇気で
あって。
「“獅子王”に“海皇”か。お主らだけか?」
「ああ。シャルロットが最初で次が俺みたいだぜ? 他に来たら表が五月蝿くなって俺達も
気付いてる筈だしな」
「……今回も全員出席との明記があった筈だが。それにしても珍しいな、グラムベル。君の
縄張りは西方だろう? シャルロット殿は東方(こちら)の方だから分かるとしても随分と
早いじゃないか」
「なぁに、たまたまっつーか簡単な話だよ。西(あっち)は知っての通り“保守派”との衝
突で忙しなくてな。冒険者(おれたち)は軍隊の補充要員みたくなってんだよ。そういう仕
事なら下にいる連中が回してるし、俺自身はもっと自由に暴れたいってのもある」
「要するに、暇だったと」
「そーいう事。言っちゃあ悪いが、こっちもきな臭くなってるみたいだしな?」
 獅子(ライオン)系獣人の大男──“獅子王”アントニオ・グラムベル。
 シャチ系魚人族(セーレン)の女性──“海皇”シャルロット・ブルーネル。
 既に会議の場にはこの二名の七星が到着し、待機していた。
 バークスが室内を見回し、残りのメンバーの姿が見えないことを確認している横で、セイ
オンはグラムベルの血気盛んで不敵な笑みに淡々とした眼を遣っている。
 この場にいる面々は、とうに勘付いていた。
 定例会でもないこの時期に──そもそも定例会でも全員が揃う事は稀なのだが──自分達
七星へ召集通知が届いたのは、十中八九、先日皇国(トナン)行きの飛行艇が“結社”によ
り爆破されたテロの件だろう。
 事件後、すぐに奴らは犯行声明を世界に向けて発している。
 曰く『セカイの開拓(はかい)に邁進する者らへとの罰』だと。
 間違いなく、現在進行中で世界中の国々が対応に苦慮しているのが容易に予想できる。
 それでも目立った手を打てないでいるのはひとえに国よってそれぞれ違う内情と、加えて
お互いの利害対立といった要因が根本にある。
「……」
 セイオンはちらと、グラムベルの奥向かいに座るシャルロットを見た。
 長艶やかな海の深青の髪。耳のある位置から覗く鰭のような突起──魚人の特徴の一つ。
 彼女は平静のままにその小さな貝殻のピアスを付けた耳元を触っていたが、彼の戦を愉し
むような言動に与している訳はないだろうと思った。
 確かに自分達は戦いが生業ではある。しかしだからと言って──。
「……“万装”と“黒姫”──南方組は欠席か。こんな時だというのに」
「あとは“剣聖”だが……シャルロットよ。あやつは今何処におるんだ? 儂らの中で一番
付き合いの濃いのはお主じゃろう?」
「ええ。でも、あの人は昔から一所に落ち着くような人じゃないですから」
 バークスが問うていたが、対するシャルロットもそう答えて苦笑を返すだけだった。
 七人中四人。がらんとした大会議室。
「全く、最近のモンは身勝手なものだな。組織の一員という自覚が足りんわい」
 隣室のドアが開いたのは、そんな時だった。
 四人が視線を向けると、そこから姿を見せたのは一人の初老の男性だった。
 その背後には彼が伴霊族(ルソナ)である証ともなる山羊頭な人型の持ち霊と、数名の職
員らが従ってくるのが見える。
 七星と並ぶレギオンのリーダー格、ヨゼフ・ライネルト事務総長だ。
「まぁそう愚痴るなよ、爺さん。普段からこんなもんだろ? むしろ半分いるんだぜ?」
「欠席の常連がよく言うわい。……まぁいい、予定より少し早いが始めるとしよう」
 言われて、それまで何となく立ったままのセイオンとバクースも空いた席に着き、臨時の
集会は始まった。机上で両手を組んだヨゼフの目配せを受け、書類を抱えた職員らが颯爽と
四人の前に分厚いそれらを配って回る。
「聞きながらでいい。一通り目を通しておいてくれ。今回、お前達を呼び出した理由だが」
「分かってんよ。この前の“結社”のテロだろ?」
 各々が閉じられた資料を捲り出す中、ヨゼフの切り出す言葉に早速グラムベルの大雑把な
声が入り込んできた。
 しかしそれは何時もの光景で。
 この事務総長は眉根を一瞬寄せただけで、そのまま話を続ける。
「分かっているのなら細かい事情は要らぬな? その詳しい調査結果がそこに書いてある。
先日皇国(トナン)行きの飛行艇が“結社”に爆破された件だ。トナンは加盟こそしていな
いが、レスズ都市連合の勢力圏内だ。彼らと連携関係にある我々としても、何も手を打たな
いという訳にはいかないからの」
「……では“結社”と戦う為に私達を?」
「やっぱりか! いいぜ、俺はそのつもりで来たんだしな。相手に不足は」
「落ち着かんか。誰が戦うと言った? むしろ私はお前達に釘を刺す為に呼んだんだぞ」
 その言葉にグラムベルを始め、この場に集まった四人の七星らは思わず互いの顔を見合わ
せていた。
 戦わない? 面々の頭に疑問符が浮かぶ。
 怪訝、戸惑い、或いは不満げなそれ。
「……それは、戦うなという類の大口の依頼や圧力があったと取って宜しいかの?」
 一斉にヨゼフに視線が向けられる中、バークスは一見微笑のままそう問い掛ける。
「大まかにはそうだが厳密には違うな。今後戦わないという保障はない……というべきか」
「ふぅん……? 何処からだよ? まぁ予想は付くけどさ」
「無論、都市連合からだ。あちらがまだ東の盟主としての態度を表明していない──決めか
ねている最中でな。それまでに我々が、或いは個々に依頼を受けて件の紛争に関わられると
色々と都合が悪いという話さ」
「なるほど」
 バークスは短く頷いたが、彼を含めて四人は良い印象を持たなかったようだった。
 視線を手元の資料に戻して、その後の話に耳を傾けながら熟考し始めるシャルロット。
 片手間に資料を開きつつ、ヨゼフから質疑応答を引き出そうとしているセイオン。
 黙したまま、一旦事務局長──組織としてのレギオンの対応を見極めようとしているかの
よう見えるバークス。
 そして意気込んでやって来たのに“お預け”を喰らい、面白くなさそうなグラムベル。
「要するに、だな」
 ──あくまで自分達は冒険者だ。雇われて初めて動ける立ち位置に在る。
 だからこそ個別の判断で、これから少なからずトナン近隣で起こるであろう争いに加わる
ことは盟友的関係にある都市連合の枷になりかねない。
 とりわけ七星は、何かしらの動きをみせることそれ自体が軍事的な情勢に少なからぬ影響
を与えてしまう。
 七星という看板効果の、自身の力量の大きさを見誤るな──。
「まだトナンへは手出しするな。暫くは状況の推移を見守っていろ。傘下の者達にもそう周
知徹底させておいてくれ。……今回呼び出したのは、その為だ」
 組織としての七星連合(レギオン)の態度は、そんな内容だった。
「……了解した。伝達しよう」
「都市連合──財友会さまのご意向ってか? レギオンも随分と引け腰になったもんだぜ」
 淡々と承諾するセイオンに、蜜月関係が故の保身を鼻で笑ってみせるグラムベル。
 一見すると対照的な反応だったが、彼ら四人の抱いた内心は実は似通っていた。
 たとえ“結社”が今回の犯人であっても、諸国にすればトナンはかつて起きたクーデター
を我が身可愛さに追認した地。そこへ軍勢を──そうでもなくとも何かしらの介入・援助を
する事に引け目があるのだ。
 何よりも下手な介入で“結社”の遠慮を知らない矛先が自国に向けば、それこそ足元から
権力を揺るがされかねない。だからこそ、余計に対応が決められない。
(……結局、保身か)
 四人は誰からともなく互いの顔を見合わせていた。
 おそらく脳裏に過ぎらせた思いは同じだろう。
 ただ冒険者としての自分達は人々の為に在ると、在りたいと思っている。
 しかし王侯貴族や富裕層(おかみれんちゅう)はそもそも真逆に近く、そんな気概など皆
無なのだと。
 この資料一つにしても、端末データではなく紙媒体にしたのは、余計な情報が外に漏れる
事を厭う保身の念が要請したものだと容易に推測できる。
「とはいえ、事態は予断を許さない。暫くお前達にはフォンレーテに滞在して貰う。その間
の費用は都市連合から出る手筈だ。抜かりなく待機をしておいてくれ」
「う~い。流石は天下の都市連合さんだ、太っ腹だねぇ……?」
「よかろう。儂らは束の間の休息とでも洒落込んでおく」
 雇われる者。雇うもの。管理せんとする者。
 お互いの思惑は行き違い、絡まり合い、交易の都で静かに機を見る選択をする。

 北方の小村に、一台の鋼車が停まった。
 ドアを開けて姿を見せたのは、一人の軽礼装の男性と彼に付き従う執事風の男だった。
 エイルフィード伯セドと、その側近である執事長アラドルンである。
 周りは冷やっこさを纏う緑と土の道ばかり。正直彼らの登場はそんな風景には馴染まない
とみえる。
 だが二人はそんな事などは気にする様子もなく、自然に近いままの道を踏み締めてゆく。
「……お?」
 当然、真正面から小村──サンフェルノへと足を踏み入れれば、村人らが気付かない筈な
どなくて。
 畑で農作業をしていた者。のんびりと木陰で休んでいた者。井戸端会議をしていた者。
 数名の村人らが、はたと姿を見せたセドとアラドルンに何の気なしに視線を寄越す。
「こんにちは。皆さん」
「お……? おぉ、セド君か! 久しぶりだなあ」
「いやいや、もう今は伯爵様だったな」
「なぁに。わざわざこんな遠い所までようこそご苦労さんだよ」
 セドがコーダス──村の同胞の親友である事は村人達にとっては周知の事実である。
 だからこそ、彼らが今は伯爵家を継いでいる正真正銘の貴族だと分かっていながらも若き
頃からの付き合いのままで集まり接してくることに、セドは正直安らぎを覚えたし、窘める
気も起こる筈がなかった。
「それで、今日は何でまた? やっぱシノブさんにかい?」
「ええ。シノブ──シノ殿下にお話がありまして」
 しかしフッと懐かしさで緩んだ彼らの言葉に一滴の冷水を垂らすように、セドは静かにか
つての仲間の名を敢えてそう呼び直して答えた。
 すると村人達は一斉にピクリと震え、押し黙る。
 ジーク達の帰省と襲撃騒ぎ以来、彼らもまた知っている。
 つまり、今回の彼が顔を出して来た目的は──。
「……そうか」
「彼女なら、家──診療所じゃないかね? 今日も普段通りに」
「いや、多分この時間帯なら墓地の方じゃないかねぇ。いつものお祈りで、さ」
「ああ……そうか。例の件もあるしな……」
 おもむろに心苦しそうになる村人達。曇る表情。
 やはりというべきか当然というべきか、この村にも彼女達にも例のテロ事件の報は伝わっ
て来ているようだ。
「……。分かりました、ありがとうございます」
 そんな彼らを暫し見遣ってから、セドは丁寧に再度会釈をするとアラドルンを伴って村の
より奥へと歩いてゆく。
 村の共同墓地はこの日も静かだった。いや、物寂しかったというべきか。
 こんもりと小高く整えられた村外れの丘の上、点々と建てられた墓標の一角に、セド達は
目的の彼女を──かつての姫君を見つけていた。
 そっと、独り祈りを捧げ目を瞑ったままの彼女の傍へと二人は近付いてゆく。
「……?」
 ぱさりと。アランドルから受け取った献花用の花束を墓前に供えて。
「あ。セド君、アランさんも……」
「……よう」
「お久しぶりで御座います。シノブ様」
 その気配と物音に気付き瞼を開いてこちらを見てきたシノブに、セドは静かに簡素な挨拶
だけを返すと、フッと今度は彼女と入れ替わるように墓前に──いなくなってしまった友に
暫し黙祷を捧げ始めた。アラドルンもシノブに恭しい一礼を寄越すと、主のそれに従う。
「セド君……」
 やがて、セドはアランはそっと目を開いた。
 かつての仲間達が、愛する人の墓前に参ってくれている。
 だがシノブはそれ以上に漠然とした不安──怖れを感じている自分に気付き始めていた。
 エイルフィード家の爵位を継いでから多忙になったセド。それでも命日や何周忌といった
節目の日には、たとえ執務に代理を出してでも献花に訪れてくれている。
 しかし、今日はそういった類の日ではない。
 だからこそ否が応に分かってしまう。彼らはきっとあの事を、私のこれまでを──。
「……村の皆も知ってたようだし、お前も聞いてるよな? この前のテロの件」
「ええ……。新聞でも読んだし、イセルナさんからも導話があったわ。ジーク達は導きの塔
を使ってトナンに向かったから、あのテロには巻き込まれてはいないって」
「ん……。そっか」
 ごそりと、屈み込んだままの姿勢を微調整してセドは小さく呟いていた。
 不安げにそんな彼らの横顔を、シノブはおずおずと見遣っている。
 しかし対するセドは、敢えてそんな視線に向き合わない──向き合えないかのように墓前
へ目を落としたままだった。
「おかしいとは思わないか?」
 そして曖昧な呟きからたっぷりとを置き、彼は此度の目的(かくしん)に触れ始める。
「おかしい?」
「ああ。もっと厳密に言えば出来過ぎてるっていうかさ……。ジーク達がトナンに渡ってか
らのあの爆破テロだ。相手はあの“結社”だぜ? まさか仕留めるタイミングを図り損ねた
なんて下手を打つとは考え難い。でも実際はああやってまだデカい犠牲を出してみせてる。
だとしたら、奴らの意図はもっと別にあると考えた方が辻褄が合う」
「揺さ振り……かしら。イセルナさんもそう話していたし」
「それもあるだろうけどな。でもよ、それでも結局、分からない事が多過ぎるんだ」
 数度髪の毛をポリポリと掻きながら。
 セドはそこでようやく、落としていた視線をシノブに向ける。
「……これは俺ん所の密偵達からの報告なんだがな。アズサ皇がジークを国家反逆者として
賞金首にしたみたいなんだ」
 そして発せられた言葉に、シノブを目を見開き絶句していた。
 何故? そんな疑問と戸惑いが彼女の表情からはありありと窺える。
 セドは彼女に眉根を寄せて苦笑してみせると、続けた。
「そりゃあ俺も最初は訳が分からなかった。お前達親子の消息は俺達が必死になってぼかし
て隠してきた筈だからな。いくらジーク達が自国の領内に足を踏み入れてるからっつっても
それですぐにクーデターの時に逃げられたお前の息子だと気付くとは考え難い」
「……ええ。で、でも」
「ああ。実際は賞金首にして触れを出してる。少なくともジークの身辺を洗って──知って
いるからこその行動の筈だ。だとすれば、ここである可能性が繋がる。濃厚になってくる」
 ピシリと、立てる指を一本。
 彼女に再注目させるようにセドは前置きよろしく口にする。
 背後ではアラドルンがいつの間にか立ち上がっており、それとなくこの場に他の村人が近
付いていないか、警戒するように静かに辺りに目を配っているように見える。
「ここで状況を整理し直すんだ。一つ、現実的に考えて六華を手にして一番得をするのは誰
になる? 俺達以外でだ」
「……伯母様。アズサ皇、よね?」
「ああ。本人にとっちゃクーデターで勝ち取った権力だからな。お前と同じくゴタゴタの中
で──実際は先皇夫妻からお前に託された訳だが──行方知れずになった王器を欲しがって
るのは、あいつを他に置いていないと考えていい。じゃあ二つ目だ。その六華の存在を嗅ぎ
付けてこれまで何度となくジーク達を、挙句はこの村すら襲ってきたのは誰だ?」
 そしてそこまで言われて、ようやくシノブは彼の言わんとしている事に気付いたらしい。
 初め言葉が出ず、ハッと口元に手を当てて両の瞳をぐらぐらと揺るがせる。
「……。つまりセド君は、伯母様と“結社”が手を結んでいると言いたいの?」
「そういうこった。まぁ手を結んでいるというよりは、奴らに何か別の目的があって、その
情報やらを餌にアズサ皇に近付いたと考えるべきなんだろうな。ジーク達のことを知ってい
るのもそれで辻褄が合うし、何より“結社”の目的が六華自体じゃないと考えて不具合の無
い仮定への状況証拠にもなるからな」
「……」
 シノブは不安げな瞳をいっぱいに潤ませ、心なし俯き加減になった。
 結局の所“結社”側の本当の目的は判然とはしない──少なくともその為に伯母様の欲望
を煽っているらしい──が、少なくともこの今という瞬間も、息子達は彼女にその身を、命
を狙われていることだけは確かになるのだから。
 何処かで分かっていた筈ではあった。
 息子達が皇国(そこく)へ行ってみると聞いた時から、安寧な旅路にはならないだろうと
の覚悟はしていた。だからこそ、こうして毎日のように夫と共に無事を祈っていた。
 なのに。なのに伯母様は……。
「……なぁ、シノブ」
 内心で激しく動揺する彼女に、セドはじっと見つめる眼ではたと呟き語り掛けていた。
 不安が隠せなくなった表情(かお)を上げ、押し潰されてしまいそうなその憂い模様。
 セドは一度大きく深呼吸をすると、
「お前は、これからも故郷(くに)をこのままにしておいていいと思うか?」
 長らく溜め込んでいたものを吐き出すように彼女へ問い掛けを放つ。
「セド、君……?」
 それは遠回しながらの復権を訊ねるものに他ならなかった。
 横に振ろうとする首が、動きが一瞬だけ、束の間だけぎこちなく止まる。
 それでもシノブは何とか、セドの出してこようとする提案に否を示そうとする。
「分かってるよ。だから俺達も今までずっとお前達を見守ってきた。これからもそれが続け
られるなら構わないと思ってる。……でもよ、アズサ皇(あっち)はそんな事は微塵も思っ
てねぇんだ。見つけたなら、消す。お前達が“敵”だと思い込んでる。悔しいが“結社”の
所為でそれが今現実になろうとしてる。このままじゃあ、お前の子供や仲間達がその魔の手
に掛かる可能性が高いんだよ」
 心臓がドクドクと鼓動を早めているのが分かる。
 興奮ではない。緊張だ。今にもこの血の送り主を握り潰されそうな程の不安だ。
 シノブはすぐさま反応できない。頷くことができない。
 それでも……セドは、背後で二人を周囲から隠すように立つアラドルンは、じっとこのか
つての東方の姫君の面持ちから目を逸らさない。
「俺達は、覚悟はできてる。むしろその為に爵位も継いだんだ。地道にあちこちに確かで力
になってくれる人脈を作ってきたつもりだ。全部、お前達の為なんだよ。いや……俺自身の
為でもあるんだ。あの日に救えなかった分も含めて、今度こそ、取り零さないように」
「…………」
 シノブは揺れ動いていた。
 目の前の、各地にいるであろう仲間達の協力者達の厚意は正直に嬉しかった。
 だけど、それでも。
 彼らを駆ってまで自分はあの場所に戻って良いのか……?
「一度逃げ出した私に、そんな資格なんて……」
 だからこそ、彼女はそうすぐには吹っ切れなくて。
 消えることのない自責の念や恐ればかりが、膨らんでは心を暗く圧迫する。

「──これは……一体どういう事だ?」
 一方、レジスタンスのアジトの眼下、森の外郭を囲むようにして取り囲む勢力があった。
 地を覆う軍靴の群れ。それは間違いなくトナン皇国の国軍で。
 外の異様な光景に気付いたサジやレジスタンスのメンバー、そしてジーク達はアジト内の
異質から迫り来るその大軍に戸惑いを驚きを隠せない。
「勘付かれたってことか? にしたってこれは数が多過ぎるじゃ……」
「サジさん!」
 すると別室から他のレジスタンスメンバーが数人、血相を変えて飛び込んできた。
 内何人かは魔導と機巧技術の融合物、携行型の端末機器を手にしている。
「どうした? 別方向からも軍勢が?」
「いえ……そうではないんですが」
 サジらが振り向き、彼が神妙な顔で訊ねると、
「今、国営放送でアズサ殿が。こっ、国内外に向けてとんでもない事を」
「……!? 分かった、こっちにも映像を繋いでくれ」
「は、はい!」
 この技師系メンバーらはおろおろと断片的な返答を漏らしながらも、サジの指示を受けて
すぐさま配線を繋ぎ、現在進行中で流されている映像を一同の前にディスプレイする。
『──これは、我々にとって非常に大きな戦いとなるでしょう』
 そして、中空に展開された画面に映し出されたのは。
 凛々しく何より鋭い眼付きで、記者会見の壇上で語るアズサ皇の姿で──。


 突然トナン皇アズサが直々の会見を開いたのは、その日の夕刻だった。
 会場となった王宮の一室には報せを受けて集まった国内外の記者達が群れを成している。
 彼らは一様に、何が語られるのかの事前情報もなく忙しなかったが、それでも一応の目星
だけは付けていた。
 言わずもがな、先日のトナン行き飛行艇への爆破テロの一件である。
「陛下のご到着だ。一同、粗相の無いように!」
 やがて進行役らしき王宮の官吏がひそひそざわざわとする記者達を黙らせるように強い口
調で言い放つ。場が弾かれたようにしんとなった。緊張が否が応なく覆ってゆく。
「……」
 壇上の幕袖からアズサが姿を現した。
 背筋を伸ばした凛とした佇まい。
 そこには、自国民が犠牲になって泣き咽ぶような弱音の気色は微塵もない。
 颯爽と演壇に立って正面の記者達に向き合うと、トンと組んだ両手を卓上に置く。ちらと
目配せが飛び、官吏が会見の始まりを一同に告げる。
「へ、陛下! 今回は一体」
「その為に呼んだのよ。黙って聞きなさい」
 相変わらずの威圧感だった。
 思わずフライング気味に口を開きかけた若手記者を、アズサはその眼光と一言で押し止め
ると早速語り始めた。
「……今回の発表は他でもないわ。知っての通り、我が国へ向かう筈だった飛行艇が爆破さ
れたわ。犯人は結社“楽園(エデン)の眼”。長らく世界中で暴れ回っている保守過激派の
組織──既に出ている犯行声明は報道関係各社(あなたたち)からも報じられている所ね」
 やはりか。記者達は誰からともなくお互いに顔を見合わせていた。
 ならば皇はこの件に関し、何を語るのか?
 手元のペンやメモを、写姿器(ストロボカメラのようなもの)を握る面々の手に無意識に
力が入る。
「今回、彼らは二つの過ちを犯した」
 そんな面々をじっと見据えながら、彼女はそう静かに前置きを紡いだ。
「一つは、何よりも我が国への飛行艇を落としてきたという愚策。諸国によって対応が違う
としてもこの私が皇である以上、このままやられっ放しにはさせない。そしてもう一つは、
この“結社”が長らくこの国を混乱させ続けている反政府勢力(レジスタンス)を支援して
いるという事実──」
 その言葉に、記者達が思わず大きくざわついた。
 初耳だ。本当なのか? そんな声が方々から漏れてくる。
 一旦官吏がその動揺を大きく手を打つことで鎮めると、アズサはその双眸に苛烈な強気を
込めて続けた。
「本日十六大刻(ディグロ)・三十小刻(スィクロ)(=十六時三十分)付で、トナン皇国
軍の総力を以って今回の首謀者“結社”と奴らと結託するレジスタンスへの掃討作戦を開始
する。ただ長く地下での不穏分子で在ることに飽き足らず、世界を騒がす“結社”とも結託
した彼らの罪は最早看過できない所まで来てしまった。犠牲になった人々の鎮魂の為にも、
我々は決して彼らを野放しにしてはならない」
 語られたのは、宣戦布告──先の爆破テロに対する報復作戦の発表だった。
 目を見開きざわつき、驚く記者達。同時にメモを取るペン音が、写姿器のスイッチが押さ
れストロボが焚かれる発光が次々に重なってゆく。
 レジスタンスと“結社”が手を結んでいるという皇の、即ちトナン政府の発表。
 初めこそ記者達は戸惑いの中で驚いていたが、気付けばそこに疑いを持つことを皆が皆忘
れてしまっていた。
 それは間違いなく“逮捕されたんだから犯人だろう”といった、限りなく黒に近い疑惑と
いう名の心理に人々が一斉に靡いたからで。
「……これは、我々にとって非常に大きな戦いとなるでしょう。でも決して我々は負けては
ならない。長らくこの国を、世界中を恐怖に陥れて来た“結社”とその共犯的勢力を掃討す
る大きな転機であるのだから」
 ごくりと、記者達は息を呑んでいた。
 数秒ばかり沈黙する場。
 アズサ皇は一度そんな面々をぐるりと見渡してから、
「世界を乱すから罰? 冗談は井戸端でやっていなさい。高みを──強さを豊かさを求めず
して何が皇か、何が国か。人々を豊かさに導かない政こそ権力の愚。今こそ我々は彼らに示
さなければならない。怯えてしまった世界に先立って、我々が長らくこの国で培ってきた武
芸の力を、結束の力を。……世界を乱しているのは、進むことを放棄した怠け者達の怨嗟で
しかないことを、彼は知ることになる」
 あくまで大義を宣言し、映像画面の向こうにいるであろう無数の人々に訴え掛ける。
「……へ、陛下!」
「りょ、両者の繋がりとは本当ですか!?」
「い、一体どのようにして政府はその情報を……」
「静粛に静粛に! これより質疑応答を始める。質問がある者は順に挙手するように!」
 そして凛と響いた彼女の声色の後に、たっぷりと呆気に取られた後。
 彼女から「一先ず演説は終わり」と目配せを受けた官吏の怒号に似た声を皮切りに、記者
達の怒涛の質問ラッシュが始まる。

「追加伝令! サノマとニエ、ルリザのアジトにも皇国軍の襲撃あり!」
 アズサ皇の発表と期をほぼ等しくして、掃討作戦は実行に移されていた。
 それはジーク達が身を寄せる森の中のアジトも例外ではなく、外からは断続的な銃撃、及
び魔導による障壁と攻撃術とが互いにぶつかるけたたましい交戦の轟音が響いている。
「くっ……! ここからでも分かる。数が、違い過ぎる……。急いで退路を確保するんだ!
今まともにぶつかったら間違いなく潰されるぞ!」
 入れ替わり立ち替わりに入って来ては、仲間達から報告される各地の同志らの危機。
 サジは得物の槍を片手に、周囲──アジトの外で応戦防戦に出ている仲間達を心配しなが
ら叫んでいた。
「退路っつっても……。逃げ場なんてあるのかよ? さっきからおっさん達のアジト、あち
こちで落とされてるみたいじゃねぇか」
 ジーク達一行もまた、彼らに混じって一箇所に集まり、何時でも応戦できるように臨戦態
勢を取っている。ただでさえ古い建物が、外の衝撃の度に細かい石煙を伴って揺れている。
「そもそもよく今まで軍隊に攻められてもってたもんだぜ。初めてじゃないだろうによ?」
 腰に下げた刀に手を添えたまま、ジークがぽつりとこんな状況になった要因を問う。
「確かに攻勢を掛ける・掛けられるは今に始まった事ではありません。それでも私達は各地
にアジトを分散し、秘匿しておく事で柔軟な退路網を作ってきたのです」
「それなのに、今回はそこほぼ全部を一気に攻められてる……と」
「どうやらその様です。今まではこんなケースはありませんでしたし、そもそも国軍に勘付
かれれば、すぐに破棄して別な立地を探す体勢も取ってあるというのに……」
 どうにも妙だ。
 サジの返答はそんなニュアンスを多分に含んでいた。
 実際、彼の言う通りなのだろう。
 臨機応変に拠点を立ち回る実に地下組織的なフットワークの軽さ。故に二十年近くアズサ
皇の攻勢から逃れることができたこれまで。
 しかし今回の掃討行動は、その仕込みすら凌駕するものだった。……だとすれば。
「事前に、隊長達の拠点の一つ一つを把握していたと考えざるを得ないな。でなければこの
状況を恣意的に作り出す事など不可能だ」
「ああ。だがしかし、アズサ皇はどうやって……? まさかずっと気付かぬ振りを?」
「……いえ。間違いなく“結社”の仕業、でしょうね」
 そんな混乱の中にあって、そうした疑問点はリュカが展開した分析にって解消をみた。
 サジらレジスタンスの面々は眼前の事態の対応に追われていたが、かねてより“結社”と
の衝突を繰り返してきたジーク達にとって、今回アズサ皇の発動させた軍事作戦はどうにも
“出来過ぎている”感が否めないのだ。
「具体的に誰の入れ知恵かまでは知りようもないけれど、アズサ皇と“結社”はものの見事
に今の状況を利用してきたと考えるべきね。向こうは既に自分達が手を組んでいることを勘
付かれたと把握した上で、敢えてそれを大っぴらにする作戦に──先手を打ったのよ。さっ
きの会見で語っていたように、爆破犯の“結社”と繋がっているのは自分ではなく、レジス
タンス──ひいては私達なのだと記者達の前で大芝居を打ってみせた……」
「何でだよ!? 大嘘じゃねぇか、そんなもん誰が信じ」
「落ち着け、ジーク。確かに実際は逆だ。だが君が以前話していたように、世間的にみれば
トナンは“開拓派”な国で、結社は“保守派”──その中でも相当の過激派だ。この前提で
第三者が今の状況を俯瞰すればどちらがより説得力がある?」
「……」
 サフレが挟んできた補足に、ジークは思わず眉を顰めていた。
 つまりアズサ皇らが企んでいるのは、世の人々に対する壮大なミスリードなのだ。
 自国への飛行艇を“結社”が爆破した。
 その弾劾を彼らに──いや本当の目的であるレジスタンスに被せる事で自分達を一気に始
末しようとしているのである。
 サフレが語るように、対外的には多くの人々にとって敵対や畏怖の対象である“結社”へ
の報復──率先した反撃攻勢であるとのアピールであり、諸外国もその大義名分には容易に
(否定的な)介入はできない。
 加えて、今の皇国(トナン)をアズサ皇のクーデター政権を黙認したのは、他でもない各
主要勢力圏の国々なのだ。もしここで下手な介入を行えば、二十年前の件も併せて蒸し返さ
れてしまう。そんなリスクを負ってまで他国が積極的に動くとは思えない。
「──状況は、はっきり言って最悪よ。実際にあれだけの大軍に囲まれているし、ここを抜
け出せたとしても暫くは追撃の手は止まない筈だから」
 場の面々は一様に押し黙っていた。
 リュカが苦渋の表情で語るに違わず、状況は圧倒的に不利だった。
「大変です! 防衛ライン突破されましたッ!」
 ちょうどそんな時、応戦していたメンバー達からの通信が耳に飛び込んでくる。
 刹那、一際大きな爆発が聞こえた。思わずジーク達はその場から飛び上がり、窓の陰から
遂にアジト内へと突入を始める皇国軍の様子を確認する。
(……どうして)
 不意にスローモーションになるかの如き世界の中で。
(どうして、こうなっちまうんだよ……?)
 ジークは唇を噛み締め、拳を握り締め、言葉なくこの状況を呪った。
 ひび割れる窓から覗く眼下、森のアジトの外には点々と赤々と血を流し、或いは魔導や砲
撃で大きな穴ぼこ共々消し炭になったレジスタンス達の無残な姿。
 此処だけではない。他の場所のアジトでも同じような惨状が作られている筈……。
 ドクンと。身体中の血液が沸き立つ気分だった。
 広く言えば興奮。しかしそこに「快」など微塵もありはしない。
 只々、自身の心を打ち始めるのは、重苦しい「不快」と映写機フィルムの如く脳裏にちら
ついてくる、かつて辛酸の日の惨状で。
 ──俺がいるから、駄目なのか?
 だったら……。この状況を切り抜けるには。
「何処に行く気だ、ジーク!?」
 ふと仲間達が気付くと、ジークはゆらりと一人部屋の出口で向かおうとしていた。
 逸早くその足音を耳にしたダンを筆頭に、皆が彼の背中へ呼び止める声を叫ぼうとする。
「……投降する。残りの六華(こいつら)と俺自身で、この馬鹿げた芝居を止める」
「い、いけませんジーク様! 貴方にそんな危険な真似をさせる訳には……!」
「滅多なこと言うもんじゃねぇぞ。奴らがそんな交渉に乗る性質だと思ってんのか!?」
「分かってますよ、そんな事ッ! だけど……。だけど、このまま俺がいるってだけで皆を
死なせるなんてこと、できねぇんだよ……!」
「……。お前」
「ジーク、さん……」
 それでも、仲間達の説得にジークはそんな吐露じみた叫び声をぶつけていた。
 仲間達もそこでようやく彼の心中に気付き、それぞれに苦渋の表情を浮かべて引き止める
声を、駆け寄ろうとする足を止めさせてしまう。
「──それでいい」
 何処からともなく抑揚のない声が響いてきたのは、まさにその時だった。
 ジークが歩いていこうとして仲間達から取った、距離。
 その両者の間に割って入るかのように、突如としてどす黒い靄が発生したかと思うと、そ
こから彼らは姿を現したのである。
「……てめぇらは。そうか、新手の“結社”の連中か」
 現れたのは、一度サンフェルノで交戦した荒々しい大男・バトナス。
 そして白髪の剣士・ジーヴァと、緋色ローブの女・フェニリアの三人。
 ジークが一瞬怪訝に眉根を寄せたが、バトナスの姿や現れ方に見覚えがありすぐに向こう
から“迎え”に来たのだと悟る。
「ジーク様!?」
「止せっ! ……迂闊に手を出したら、冗談抜きで死ぬぞ」
 咄嗟にサジら場にいたレジスタンスの面々が得物を放とうとした。
 しかし一度彼ら“使徒”の実力を味わった──そして何より新たな面子が二人もいる事も
踏まえ──ダンがすぐにそんな彼らを片手で制する。
 だがそれでも、諦めた訳ではない。
 その証拠に仲間達の表情はすぐに飛び込んで助けに行けない自身の力不足、悔しさといっ
た感情で歪んでいたのだから。
「……いいのかよ? ここでまとめて潰しちまった方が楽だろうが」
 バトナスは残り二人に言いながら、横目でダン達一同の様子を窺っていた。
 力を込めた五指がビキビキと魔獣人(キメラ)のそれへと変化しかかっている。
 少なくとも彼自身は、合図さえあればいつでもこの場の者達を抹殺することを厭わない気
でいるようだった。
「……ジーク・レノヴィン」
「何だよ?」
 だが、対するジーヴァは。
「お前は残りの六華を対価にこの内紛(ちゃばん)を終わらせたい、そう言ったな?」
 そんなバトナスの質問には答えず、代わりに間合いの内にあるジークにそう問い掛ける。
「ああ。……約束しろ、兵を退かせて皆をちゃんと逃がせ」
 ジークが答え、ジーヴァが場の面々がしんと黙り込んだ。
 こうしている間にも、トナン軍はアジト内の攻略を進めている筈だ。
 すぐに返って来ない応答にジークは徐々に表情の険しさを深めていったのだが、
「……分かった。約束しよう」
 ややあって、ジーヴァはそう顔色一つ変えずに答えたのである。
「おぃ!? 乗るのかよ? 後でまた小言を言われるぞ……?」
「聞き捨てて置けばいい。ああいう女だ」
 バトナスがそんな仲間の返答に弾かれたように詰め寄ろうとしたが、それでもジーヴァの
淡々とした様子は変わらなかった。
 ばさっと羽織る黒革のコートを翻し、彼は傍らで様子を傍観していたフェニリアに何やら
合図を送る。
 すると……どうだろう。
 ぶつぶつと何かを呟いた彼女の動作がスイッチとでもなったかのように、フッと兵士達の
姿が気配が遠退き始めたのだ。
 特に動揺していたのは、サジ達レジスタンスの面々だった。
 ジーヴァらが特に邪魔をしてくる様子がないことを用心深く確認すると、内何人かが仲間
達に促されるように窓際から外を覗いたり、状況確認の為の通信を取り始める。
「……間違いありません。軍勢が退いていっています。他のアジトからも全く同じ報告が」
「まさか。本当に……?」
 サジらが、ダン達が驚きで目を見開いてジーヴァらを見返していた。
 本当に彼ら“結社”がアズサ皇と繋がっていたと、目の前で実証されたも同然な状況にで
はない。むしろこの瞬間は、それ以上にすんなりとジークからの取引に彼らが応じたのがよ
り驚愕に値したのである。
「約束(ちかい)は守る。相手が“シキ”の子孫ならば、尚の事……」
「あ? 何を──」
「シキ? それは“剣帝シキ”の事? ジークと同じ女傑族(アマゾネス)の──」
 ダンが怪訝を、リュカが問いを投げていた。
 しかし既に当のジーヴァらは、取引は果たしたと言わんばかりに動き出していた。
 眉間に皺を寄せたままのジークを囲んで三角形を作るように彼らは立ち位置を改め、そっ
と場の面々へと向き直る。
「命拾いしたな? よく分からんが、こいつの変な真面目さに感謝しとけ?」
「そうね。思う存分逃げ惑いなさい? もう逃げられないわ。貴方達は、いつでも殺れる」
「……。行くぞ」
 そしてそんな捨て台詞を残して、ジーヴァが翻したコートの動きに呼応するかのように再
びどす黒い靄が彼ら──ジークを含んだ四人を包み込んだ。
 ものの数秒も経たない内に、その姿は跡形もなく掻き消える。今日の技術では実質上不可
能な筈の、単独無詠唱の空間転移。
『…………』
 空寒いほど、辺りが静かになっていた。
 残されたのはより一層破壊されたアジトの骨格と、その内外で累々となった犠牲者達。
「……。くそっ!」
 ガツンと、ダンがじわっと沸き上がった憤りに任せて傍らの壁に拳を叩き付けていた。
 円形状に奔る壁のヒビ、握った拳からつぅっと滲む赤。
「馬鹿野郎が……」
 自分を犠牲にしたジークに、彼を連れ去っていったジーヴァ達に。
 そして何よりも、その様を目の当たりにして何一つ手を打てなかった己自身に。
 残響し虚しく消える拳と悔恨の音の中、誰一人として仲間達は続く言葉を口にできずに。

「──これは、大変な事になったわね……」
 一方で、勿論というべきか、アズサ皇の会見をイセルナ達もまた視ていた。
 酒場『蒼染の鳥』の壁の一角に掛けられたスクリーン型の端末画面、その向こう側で語る
彼女の姿に、イセルナは団員らや酒場の客達に交じって不安げな表情を漏らしていた。
 ジーク達は一体どうなったのだろう? ちゃんと合流できているのだろうか?
 最後にダン達からあった導話は「ジーク達の居所が分かった」という、一旦皇都の宿を出
るといった旨のものだった。
 その後の経過の連絡は、まだない。
 話ではアズサ皇がジークの身を狙っているとも聞いているので、何か事件に巻き込まれて
いて一段落がつかないのかもしれない。クランの団長として残った皆を、アルスを預かる立
場にあるとはいえ、正直不安は拭えないのが本音だった。
「だ、団長~ッ!!」
 ちょうど、そんな時だった。
 酒場の奥の方、ホームの宿舎側から何やら慌てた様子で数人の団員らが駆け込んでくる。
「どうしたの? そんなに慌てて」
 端末画面の向こうでは、アズサ皇が記者達からの質疑応答を凛として捌いている。
 イセルナを始め、シフォンやカウンター席のハロルドらが何事かとこの団員らの方を怪訝
気味に見遣ってくる。彼女はこの団員らに小さな怪訝で以って訊ねていた。
 すると彼らは、ぜぇぜぇと少々息切れした呼吸を整えてから、
「た、大変なんです! アルスとエトナの姿が何処にないんです!」
「代わりに、部屋にこんなものが……」
 パサッと。皆の集まるテーブルの上に一枚のメモ紙を置いて訴えてくる。
「……。えっ!?」
 イセルナ達は、それを読んで驚きに目を丸くした。
 何故なら。
『やっぱり兄さん達がどうしても心配なので、僕らもトナンに行って来ます。皆さんには迷
惑を掛けてしまいます。ごめんなさい。──アルス&エトナ』
 そのメモはアルス直筆の、そんな書き置きが記されたものだからだった。

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  1. 2012/02/25(土) 21:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

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