日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(企画)週刊三題「エコー×エゴー」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:部屋、炎、人間】


『嗚呼、やっぱり○○は最高だな!』
 好きなこと、関心のあること、大切なもの。
 どうせ“語る”のなら、そんな方がいい。僕達の人生は有限で、何かをするには足りない
けれど、かと言って何もしないでいるには長過ぎる。

『おっ? もしかしてあんたものか?』
『いいよね~? 面白いよね~?』
 まぁムズカシイことはよく分からんがよ。仲間がいるってのは嬉しいモンだ。楽しむのだ
って、独りで回る奴ばかりとは限らねえしな。
 今の時代、本当に便利になりましたよねえ……。それこそ一昔前は、こうして自分の趣味
を曝け出すことも難しい世の中でしたから。それでも引く人は引きますし、時と場所を選ば
なきゃ駄目だっていうのは、今も変わりませんけど……。

 技術が発達して、同じ思いを持つ誰かと、容易に繋がることができるようになった。物理
的な距離すらも越えて、出会うことができるようになった。
『──何ですの? あの気持ち悪い××は?』
『嗚呼、汚らわしい。あんなものを愛でるだなんて、一体どんな神経をしてるのかしら?』
 だけど……。そうして色々なものが視えるようになったのは、はたして良いことだったの
だろうか? 今までならお互い、知る由も無かった別の世界観(なにか)が存在している。
その事実に、僕達はそもそも耐える心積もりをしていたろうか? と問うと……正直怪しい
と思う。
『? 何だあ?』
『外が騒がしいような気がするけど……』
 多分だけど、表裏一体って奴なんだろう。自分が何かを見ているということは、何かを見
ていないということでもある。
 自分達の興味関心によって区分けされたセカイ、ある種のコミュニティ。少なくともただ
そこだけで完結している内は良いが、そこから一歩進み、区分けされた外側へと向かい始め
る時、人は容易に壊し始めてしまうのだろう。
 それがとりわけ、相手への憎しみ──自身の“嫌い”を理由としていたのなら。

『おい、誰か! 知らない奴がこっちを覗いてきてるぞ! 扉に顔を突っ込んで、抉じ開け
ようとしてやがる!』
『はあ!? 何でわざわざ……』
『ヤバい、壊される! お前ら、こっち来て手伝え!』
 先ずはこの際、どちらが良いとか悪いとか、不毛な話は避けたい。大抵の場合、気付いた
時にはもう遅かった……というパターンが多い。
 セカイの外側にどれだけの、どんな考えを持っている奴らがいるか分からないという点と
同じぐらいに、内側に暮らしてきた僕達もまた、いざ“外敵”が攻め込んで来た時どう対処
すれば良いのかを知らない。そもそも考えることすら無かった筈だ。
 あるとすれば、それこそノウハウ──かつてそういった“外敵”に晒されて、烙印の憂き
目に遭った経験を持つ場合に限るのだろう。過去に学び、恐怖を共有してきた歴史があるか
否かだ。
『何でまた……いきなり?』
『知るかよ! とにかく押し返せ! 入って来られたら全部持って行かれちまうぞ!』
 訳が分からない。ふと気付いたら、ブチ切れている知らない人達が押しかけて来た。頼ん
でもいないのに私達の推しに噛み付いてきて、いきなり上から目線で説教してくる。
 話自体はちらっと聞いてたんだがな……。まさか自分が当事者っつーか、関わり合いのあ
る一人になっちまうとは。とにかく目を付けられちまったら運の尽き。ズカズカと土足で入
り込まれるのを許しちまえば、もう此処は俺達の場所なんかじゃなくなっちまう。

『そこを退きなさい! 貴方達のそれで、傷付く人がいるのよ!?』
『これは社会全体の為なの! 貴方達のそれが身勝手なものだと──時代の流れに逆行した
価値観だと、どうして気付かないの!?』
 嗚呼、醜い。汚らわしいし、見るに堪えない。
 滅びるべきなのよ。あんなものが在るから、世の中はいつまで経っても進歩しない。自分
さえ良ければいいんだという身勝手さで、私達全体を後れさせたままでいるのよ。
 ……ええ、その通りだ。そうかもしれない。いつだって我々は旧い因習に囚われ、望まぬ
不利益を被ってきた。だからもう、そんな歴史は正しましょう。我々の代で、大きく転換さ
せるのです。これは正義の戦いなのです。
 せめて視界に入らなきゃいいのかなあ? 流石に目立ち過ぎるというか何というか……。
好きなんだろうな、そういう別世界が在るんだなと知れたけど、俺的にはねーわ。内々で固
まってる姿ってのは、やっぱり見てて気持ちの良いモンじゃないしな……。

『ならわざわざ、こっちに来なくていいだろう!?』
『いいから放っておいてよ! 今までだって、お互いそうやって一応でも上手くやってきた
じゃない! 私達が何をしたっていうのよ!?』
『……さっきから聞いてりゃあ、好き放題に言いやがって。身勝手なのは、他でもないお前
らの方じゃねえのか? 一体お前らに、何の権利があるっていうんだよ?』
 扉が軋む。壁にひび割れが奔る。今まで平和だった筈のこの場所が、俺達のコミュニティ
が、こんな理不尽にぶち壊されて堪るか。単なるヒステリーじゃねえか。お前らの方がよっ
ぽど、被害者ぶってる癖してよお……。
 何で? 何で? 何で? いきなり何でそんな、一方的に言われなきゃいけない訳? 私
達の趣味に、親でもないあんた達が口出しする権利なんてある訳? というか親でも、そん
なのは御免よ。実際に迷惑を掛けている筈は無いんだけど……。
 向こうにも話題というか、事情の十や二十は在るんだろうけどさ……。それなら先ず喧嘩
腰で話してくるのは拙いだろ。仮に相手を説得しようってんなら、明らかにヘソ曲げさせる
態度は悪手だぜ? あれこれ理屈を捏ね回した所で、要するに“俺はお前が気に入らない”
で済んじゃえばなあ……。世話ねえよ。どうしろって言うんだよ?

『今この時こそ、○○を守らなくっちゃいけない!』
『皆、力を貸してくれ! あいつらを、俺達のテリトリーから追い出す!』
『……嗚呼、性懲りもなく反論してきましたわ。何て浅ましい奴ら……』
『思い知らせてやりましょう! 今こそ、我々の正義と団結力を見せる時です!』
 扉の外に出なければ、長らくは皆幸せだった。扉の外が在ると知らなければ、より多くの
人々は幸せだった。自分達の知っているセカイだけで充分で、少なからずは仏であれた。
 本来知ること自体は、快感を伴う営みであったのに──それ以上に不愉快なものが多過ぎ
たんだろう。理解の追い付かないものが多過ぎたんだろう。
 大雑把に言えば、上書きされてしまうからだ。そうなれば人の取り得る選択肢は、自ずと
二つに絞られる。これ以上塗り潰されないように逃げるか、戦って剥がし直すかだ。そして
大体、後者になだれ込んだ者が多ければ多いほど、結末は悲惨なものとなる。
『おい見ろよ。向こうの方が“燃えてる”ぜ?』
『今度はあっちか……。最近多いな……』
『どどっ、どうしよう? 私達も今の内に逃げた方がいいかなあ?』
『……無駄だよ。何処に隠れたって、奴らはいつか絶対見つけてくる……』
 閉じ籠もろうにも、全員が全員、完全にその中で完結出来る訳じゃあない。どうしても気
になる瞬間瞬間ってのはあって、ふいっとした時に誰かが俺達に報せてきちまう。止しとけ
ばいいのに、それが自分でわざわざ調べに出向いちまう。
 これも自衛の為──とは聞こえはいいが、要するにビクついて暮らしてることには変わり
ないからなあ。そもそも論で言やあ、理不尽な話以外の何物でもないんだが……。
 同じコミュニティの中でも、そんな余所の連中と戦おうっていう人はいる。だけど私は正
直気が進まないかな? 性分じゃないってのもそうだけど、何か怖いんだもん。大義名分っ
て奴かな? 自分達は正しいんだって、自分達の方こそ正しいんだって、お互いにガンガン
叫び合って洗脳してるみたいで……。

『あいつよ! あいつの首を取りなさい! 頭さえ潰せば、後は烏合の衆なんだから!』
『○○はこの世から駆逐するべきよ。妥協なんかしちゃ駄目。時代の流れも、大義も、私達
の側にこそある!』
『小物は放っておけ。叫べば叫ぶほど自滅する。こっちが引っ張られては詮無いからな』
『……よし、取ったわ! これでまた一つ、私達の勝利よ!』
『やべえな……。▼▼さんが狙われてる……』
『目ぇ付けられちまったらなあ……。俺はこっそり隠れ住むことにするぜ。地雷を踏まない
のが一番一番』
『あ、おい! お前、何余計な事してるんだよ!? お前みたいなのが普通だと思われちま
ったら、巻き添えを食うのは俺達全員になるんだぞ!?』
『いいや。私は諦めない。議論を尽くせば、解ってくれる人はいる筈だ』
『議論ねえ……。それって単に、あんたが理屈で相手をぶん殴りたいだけじゃねえの?』
『間違っているのは貴方よ! 自分を正当化しようと、屁理屈ばかり……。もっと加害者で
あるという自覚を持ちなさい!』
『裏切り者が出たぞ、追えーッ! 絶対に生きて逃がすなーッ!!』
『……もうヤだ。何で俺達がこんな目に……』
『もう駄目だ、逃げよう。遠くに行こう。もう二度と、他の奴らとは関わっちゃあ……』
 区分けたセカイ自体はきっと、ずっとずっと昔から在った。それでも僕らは、その存在に
は気付くべきではなかった。簡単に乗り越えられるということは、簡単に踏み込んで来られ
るということ。自分は此処にいる──そんなメッセージを発してしまったら、何処かの誰か
が得物を片手にやって来るかもしれない。
 乗り越えられると知られてしまった塀は、最早塀ではなくなって。ただ時々の気紛れによ
って壊される、心許ない一時の間仕切りに過ぎなくて。

 反響する、信仰する、侵攻する。
 ある者はそこで更に勝鬨を上げて進み続けるかもしれないし、またある者は一層頑なに扉
を閉ざすかもしれない。天秤に掛けた上で、声を殺しながら生きてゆくと決めるのかもしれ
ない。
                                      (了)

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  1. 2020/03/29(日) 00:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

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