日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅷ〔109〕

 ルキ達が目の当たりにしたのは、アルスの身に起きた明らかな異変だった。辺りに吹き荒
ぶ魂(ストリーム)達の叫びよりも、只々その豹変ぶりに目を奪われている。
『──』
 見開かれたアルスの瞳は、何時もとは違う碧い輝きを宿していた。
 全身から溢れる膨大なオーラと、これに引き寄せられて蠢く周囲の魔流(ストリーム)。
クーデター派の神々や天使(エンゼル)達が慌てふためき、気圧される中、他ならぬ彼に庇
われる形で膝を突いていたゼクセムも、呆然としてその背中を仰いでいた。
「ぐっ……?!」
「ぎゃっ!?」
 すると直後、アルスが動いた。見開き覚醒した眼のまま掌をかざすと、まるで彼の意思に
呼応するかのように魔流(ストリーム)達が牙を剥いたのだ。クーデター派の面々から、兄
・ジークの六華を回収する(うばいかえす)。
(魔流(ストリーム)を手足のように……。いや、触手か)
 左右傍らで吹き飛ばされた部下達を横目に、ルキは密かに舌打ちをする。
 おそらくはこれが、彼の撰ばれし者としての特性なのだろう。或いは魄の先天属性と、同
じく樹木の精霊を持ち霊としていること。それらが相乗効果を生んだのかもしれない。事実
当の彼女も、彼と同様の光に包まれながら「おおおおおっ!? 力が、力が漲るぅ~!」と
ハイテンションになっている。
(今此処で……潰すしかない!)
 文字通り、光の速度で霞みながら、次の瞬間ルキはこの少年に襲い掛かった。ゼクセムや
配下のクーデター派達が到底追い切れない中、他ならぬアルス自身はちらっとこの動線を目
の端で捉えていたのだ。手刀に集めたルキの光線(レーザー)を、彼は魔流(ストリーム)
達を駆使して防ぎ返す。
 そこからは──まさしく目にも留まらぬ攻防。
 アルスも足元に沿った魔流(ストリーム)に乗り、射出されて滑り出すように空中を舞い
始めた。光速で繰り返し襲ってくるルキに対し、同じく無数の魔力(マナ)の糸を得物のよ
うに編んでぶつかる。エトナもゼクセムを守りながら、地面に手を当てて樹木の触手達を生
み出して援護する。
「ぎゃあッ!?」「ぐわあああーッ!!」
「ル、ルキ様!」
「おっ、お待ちください! 我々にまで攻撃が──ぐぶっ?!」
 中空・頭上で突如始まった両者のやり取りに、クーデター派の神々や天使(エンゼル)達
も少なからず巻き込まれていた。ゼクセムら主流派の面々とごちゃ混ぜになって逃げ惑い、
ルキの独走に制止と助けを求めたが、当の本人は聞き届けている暇さえない。
「くぅっ……!!」
 まさかこの俺が、苦戦させられるなんて。
 思わぬ事態だった。だが奴が“虚穴(うろあな)”──魔流(ストリーム)の渦からこち
らに流れ着いたことを考えれば、この豹変ぶりには納得がいく。
 決して偶然などではない。こいつは来るべくしてやって来たのだ。招かれるべくして招か
れ、自分達の目の前に立ち塞がってきたのだ。
(間違いない……選ばれやがった。俺達と同じ領域まで、登って来やがった……!!)


 Tale-109.絶望への抑止力(後編)

「先ずはそこに隠れているネズミどもを、始末しておかなければな」
 神都(パルティノー)を形成する、無数の人工塔群。
 その出入口の一つから進入しようとする、ティラウド・オディウス両名率いる“結社”の
軍勢を、ハロルド以下アルス救出班の面々は少し離れた物陰から目撃して(みて)いた。
(バレてた──!?)
 しかし当の二人は、始めからこちらの存在に気付いていたらしい。自分達を出迎えたクー
デター派の神々の案内を軽く遮り、そうこちらの位置を正確に見据えて呟いている。
『なっ……!?』
「皆、逃げろ!!」
「今の俺達じゃあ、どうしたって分が悪い!」
 神格種(ヘヴンズ)達の反応よりも早く、双方が動き出す。ハロルドとリカルドは自他の
戦力差を考え、真正面から戦うことはなるべく避けなければと考えた。兵の数然り。何より
相手は“結社”最高幹部の二人だ。無策で挑めば、竜王峰での二の舞になりかねない……。
「させんよ」
 しかしティラウドは、素早くこの動きに対応してきた。自身の右拳に《龍》のオーラを練
り込むと、物陰となっていた障害物ごと、逃げようとする一行を粉砕する。
「ぐっ?!」
「きゃあっ……!!」
「ハザンの報告通りだな。奴らもこっちに来てたか。戦力の大半は向こうっぽいが……」
 やれ。牙を剥きながら直進、一旦空中へ上昇する《龍》と入れ替わるようにして、オディ
ウスが配下の兵達に指示した。黒衣のオートマタ兵と狂化霊装(ヴェルセーク)。多勢に無
勢ながらも、退却の出鼻を挫かれたハロルド達は迎え撃つ他ない。
「ちっ……!」
「とにかく数を減らす! 散開しろ! 囲まれる前に、少しでも遠くへ!」
 苦悶の表情。物陰ごと吹き飛ばされたダメージもそこそこに、一行はすぐさま起き上がる
と駆け出していた。ハロルドは究理偽典(セオロノミコン)を開き、リカルドは背中の入れ
墨に刻んだ調刻霊装(アクセリオ)を発動──兄の傍らで地面を蹴り、猛烈に加速して敵の
軍勢へと切り込んでゆく。ゲドとキースのお付きコンビはシンシアを庇うように立って得物
を構え、ルイスとフィデロも黒衣のオートマタ兵らに肉薄すべきか、数拍躊躇いをみせて小
さく後退りをする。
 先ずは、この迫る雑兵らの波を止めなければどうにもならない。一体一体を確実に撃破し
てゆく為にも、ハロルド達は咄嗟に前後衛、或いは中衛に分かれて左右正面に向き合った。
 敵の前線を出来る限り押し返す。究理偽典(セオロノミコン)から最適化された聖魔導が
次々に放たれ、四重速(フォルスクロック)のリカルドが大立ち回りを演じる。《盾》で包
んだ拳でミアが狂化霊装(ヴェルセーク)を殴り倒し、オズもその機械の剛腕でもって援護
する。ゲドやキース、ルイスにフィデロが守る中、シンシアはルフグラン号に居る筈の団員
達に事の急を報せようとした。
 携行端末を持っていない以上、報せるには一旦転送リングで船内に戻る必要がある。
 だが今ここで、皆が必死になって敵を食い止めている中で、自分だけが逃げるような真似
をして良いものだろうか……?
「相変わらずしぶといな。だが──」
 そんなハロルド達の奮闘を、ティラウドは淡々と観察していた。くいっと、軽めに握った
拳の指先を、方向を示すように動かしてやると、自身から伸びる《龍》のオーラ塊が再度牙
を剥く。頭上中空から、これを一気に食い破ろうと降下する。
「おおおッ!!」
 されど彼の操るこの一撃を、直後飛び出してきたリンファが決死の形相で受け流した。両
手で太刀を薙ぎ、自らの《真》の能力で彼への最短ルートを見出していたのだ。
 女傑族(アマゾネス)の一人、トナン皇家の家臣である彼女からすれば、ティラウドは主
君の息子を殺した仇でもあった。「リンファ!?」ハロルド達がその突出に驚き、止めよう
としたのも間に合わず、一気にこの男の懐へと迫ろうとする。
「──ぬんッ!!」
 しかしこれを防いだのは、横から割って入ってきたオディウスだった。お互いそう易々と
やられはしないと踏んでこそいたが、油断は禁物だ。それは今回の目的が物語っている。彼
女の振り抜かれようとする刃を、彼の《覇》を纏った大剣が弾き返し、大きく仰け反らせて
いた。
 数拍のスローモーション。互いの睨み付ける痛手と警戒の眼が交錯し、数度の剣戟を挟ん
でリンファが退けられた。明らかにパワー負けして下がらざるを得ない。仲間達が慌ててこ
れを気遣っていたが、当の戦意までは削がれてはいないようだ。憎き仇と向けられた眼を真
っ直ぐに見つめ返したまま、オディウスはその得物をズンッと重鎧姿の肩に担ぐ。
「リンファ、あまり前に出るな! 相手は最高幹部(しといじょう)だぞ!」
 ハロルドは一応言ってはみたが、案の定彼女の耳にはあまり届いていないらしい。さっき
駆け抜けて行った時の眼を見れば解る。奴がジークの仇だというのは、自分達も皆同じだ。
だがそれと奴らに敵うかどうかは、また別問題なのに。
(……やはり劣勢は否めないな。ここは一旦、全員転送リングで船に戻るか? いや、奴ら
の暗躍を知った以上、時間を与えてしまう訳には……)
 だがちょうど、そんな時である。内心ハロルドらが判断に迷っていた最中、周囲を流れる
魔流(ストリーム)達に再び異変が起きたのだった。
 ハッとなり、双方が思わず空を見上げる。またしても魔流(ストリーム)が弾けたのだ。
 しかし今度は様子がおかしい。弾け散ったかと思えば、次の瞬間には触手のように一挙に
寄り集まって、塔の内部へと流れ込んでゆく……。
「……まさか」
「くそっ、遅かったか!」
 するとどうだろう。次の瞬間、ティラウドとオディウスまでもが態度を変えた。何故か妙
に激しく焦り出し、こちらを倒すことも投げ出して転移して(さって)しまう。空間に霧散
した黒い靄。彼らとその軍勢が瞬く間に消え失せたのを目の当たりにして、クーデター派の
神格種(ヘヴンズ)達も狼狽。慌てて後を追うように塔内へと走り出す。
「……。一体、何だったんだ?」
「助かった、みたいですけど……」
「ああ。だがあの慌てよう、何かあったらしいな」
「トラブル……。アルス様ノ身ニ何ガ……?」
 一先ず全滅の憂き目は免れた。いや、状況それ自体は好転していない。寧ろアルスとエト
ナが内部にいると思われる以上、更に拙い事になっているのではないだろうか?
「……急いで追おう。二人が心配だ」

 煉獄第三層・青柱の間。
 交戦と救出作戦の末、ジーク達はようやく恩人(マーロウ)と合流する事が出来た。半壊
した無数の鋼杭の合間を縫い、一行は彼の《荷》の能力によって無力化されたフーゴを見下
ろしている。ちょうど得物である長刀を振り上げた直後だったため、増大したそれ自体の重
量によって、柄と床に挟まれた格好となってしまっている。
『……』
 封印錠から解放されたマーロウと、ハイタッチするジークやアズサ、脱獄囚達。
 そんな様子を、周りを囲む西棟の死神達は唖然として見つめていた。
「な、何なんだ? さっきの……?」
「奴の能力か?」
「やはり腐っても隊長格ってことか……」
 部下達の動揺、正体を知らぬ相手の色装(のうりょく)。
 しかし、直接その力をもろに受けたフーゴは、この時既に《荷》の能力を理解していた。
白と黒の小太刀二刀流。この獄内にそんな得物を扱う者は記憶にないし、何よりよく目を凝
らして視てみれば、それがオーラの塊であると判る。
 あの黒い小太刀を当てられて、長刀が“重く”なった。となると、反対に白い小太刀を当
てられれば“軽く”なるのか? 厄介な能力だ。一発受けるだけで封殺される……。
「現出型だ! 奴の得物に気を付けろ! 防ぐんじゃなくて、かわすんだ!」
 故にフーゴの出した指示に、部下達は一層の警戒感を露わにした。状況は数で包囲しつつ
あるものの、下手に飛び込めば彼の二の舞になる。ざわっ……と、良くも悪くも彼らは慎重
にならざるを得なかった。言い換えれば、及び腰になっていた。
「うおおーッ!! 外れたー!!」
「俺達は自由だー!!」
 ただその間も、同層に収監されていた囚人達が、アズサや他の脱獄仲間達によって解放さ
れてゆく。彼らを率いるように彼女が、更に増えた脱獄囚の一団が、ジークとマーロウを軸
として再び攻勢に出ようとした。交換条件と利害の一致により、手駒に加えられてゆく。
「ジーク、マーロウ隊長。昇降機へ。次の目的地に向かうわよ」
 応ッ!! あ、ああ……。半ば怒号にも似た歓喜の声と、ジーク・マーロウのハッと我に
返る言葉が重なる。
 一見すればいつもの仏頂面。アズサは内心じわじわと焦っていた。
 いくら戦力が増えているからといって、あまり悠長にしてはいられない。敵の包囲網が完
成に近付けば近付くほど、再び地上へ向かうチャンスは皆無になる。
『──』
 はたして、彼女のそんな不安は的中していたのだった。ジーク達が及び腰の隊士らを無視
し、再び来た道を戻ろうとした時、昇降機の扉が開いて更なる援軍が姿を見せたのだった。
西棟死神隊の長・ドモンのもう一人の側近、サヤ率いる部隊である。
「げぇっ!? またぁ!?」
「拙いぞ。退路が塞がれた……」
「いいから構えろ! 突破するんだ!」
「……何やってるんですか」
「ぬう。視れば解るだろ。マーロウの色装だ。お前の能力なら掻き消せるんじゃねえか?」
 早くしてくれ。身構えるジーク達の視線もそこそこに、この女死神・サヤは床に転がった
ままの同僚を見下ろしていた。淡々と辛辣ながら、すぐに彼の言わんとする所を把握したよ
うだ。ザラリと腰の太刀を抜き、刀身に自らのオーラを込めて一閃を振るう。
『──!?』
 するとどうだろう。フーゴに掛けられていた《荷》の効果が、彼女の斬撃を浴びた瞬間に
消し飛んだように視えたのだ。事実彼は、そのままダメージを負った様子がないまま、再び
元の重量に戻った長刀を握って立ち上がる。彼女と共に、ずらり左右に部下達を率いて、改
めて一行の前に立ち塞がったのである。
「煉獄長が、下層を押さえつつこちらに向かっています。私達はそれまでの加勢を命じられ
ました」
「お? 獄長がか? そりゃあ心強い。なら此処から、逃がす訳にはいかねえよなあ?」
 ニヤリと嗤うフーゴ。何を話しているかはよく分からなかったが、少なくとも状況は刻々
と不利になっているようだった。
 対峙し、睨み合う両者。自身の能力を解除されたのを目の当たりにし、マーロウやジーク
らがその正体を把握しようと努めていたが、双方の衝突が再開されるのにそう時間は掛から
なかった。
「どのみち、向こうに戻らなきゃいけないんだ……押し通る!」
「足を止めるな! 突っ切れ! 必ずしも倒し切る必要はないんだ!」
 だが……マーロウの嫌な予感は的中していた。皆をアシストするようにフーゴ・サヤへ投
げた黒剣を、他ならぬ彼女のオーラを纏わせた剣閃が叩き落したのだった。弾かれ、中空に
飛ばされた自身の得物を、スローモーションの中で視る。
 間違いない。彼女の刃によって相殺されているさまが確認出来ていた。彼女の刃、伝った
オーラは現出させたマーロウの黒剣を分解し、道連れのように霧散してゆく。
(反魔導(アンチスペル)の一種か……!)
 操作型《散》の色装。直接的な攻撃力自体は他の能力に劣るが、その分相手のオーラその
ものを叩く事が出来る。自分の意思とは無関係に消滅してゆく黒剣・白剣を見て、マーロウ
は確信をしていた。
 これは……拙い事になった。よりにもよって、一番相性の悪いタイプの色持ちと当たって
しまうとは。
 ぐんと踏み込んで間合いを詰めてきたサヤに、マーロウとジークは慌てて身をかがめて回
避した。剣閃が二人の際々を過ぎる。やや引き攣った表情から放った白剣、二刀の薙ぎ払い
を、彼女は大きく身体を反り返らせることで避けた。二人の得物がすぐ目の前でガチンとぶ
つかり合う。彼女がタンッと、軽く後ろに跳ぬ。
「おらおらァ! 戻れ戻れぇ! てめぇらの居場所は……牢屋の中だろうが!!」
 加えて復活したフーゴも《振》の色装で長刀ごと回転し、どんどんその破壊力を底上げし
ていた。脱獄囚達を次々と吹き飛ばし、ジークとマーロウに向かって反撃を叩き込む。
「ぐうっ……!?」
「お前らも、素人に負けてんじゃねえ! それでも西棟死神隊の一員かあ!?」
 お、おう……。そんなフーゴの叱咤(ことば)に、部下達も急かされたり窮したり。
 負けるも何も、貴方さっきまでやられてましたよね……? 実際、流石に突っ込みを入れ
るような余裕も勇気もなく、彼らは防衛線を突っ切ろうとする脱獄囚達と刃を交えていた。
少なくとも防御を崩さなければ、奴らはジリ貧になる。ジークもマーロウも、逆に突出して
攻め立てて来るフーゴとサヤのコンビに、後ろへ後ろへと押し返されつつあった。
(……拙いな。俺やマーロウさんの色装(のうりょく)を、この女が徹底して殺しに掛かっ
てきてやがる)
 辛うじて刃で受け止め、いなして間合いを維持して。
 事実ジークは、自分達が不利であるさまをありありと見せつけられていた。自身の《爆》
もマーロウの《荷》も、オーラを直接力そのものに変換して戦うタイプの能力だ。だがサヤ
のそれは、これらを直接削り取ってしまう。ただでさえフーゴのパワーに対しても、こちら
は強化してようやく拮抗といった具合なのだ。力を出す傍から斬り飛ばされていては、どだ
い勝ち目は無い。
(せめて、六華さえあれば……)
 入れ替わり立ち代わりで攻守・援護を繰り返し、同じくフーゴ・サヤのコンビと剣戟を放
ち合う。現状、二人を他の面々に向かわせずに留めておくのが精一杯だった。《爆》の肉体
強化も《荷》の小太刀もサヤが散らし、その隙を縫ってフーゴの《振》を溜め込んだ一撃が
振り下ろされる。その度に受け切るのを避けて、大きく後ろや左右に跳ぶしかない……。
「ジーク、何やってるの! こっちに来ちゃうでしょう!?」
「無茶言うなよ。こっちはこっちで、手数を減らされちまってるんだぞ……!?」
 後ろに下がって下がって、アズサが発破を掛けるように叫んでいた。ジークとマーロウは
これを耳だけで聞いては反論しつつ、されど彼女に攻撃が及ばないように立ち回っている。
下がり過ぎては元も子もないと、彼女もぐるっと迂回して先に進み始めたようだ。
「──しゃーねえな」
 ならばと、ちらっとジークは同じく間合いを取り直したマーロウを見た。コクッと小さく
頷き、二人は確認するよう目配せをする。
「どっ……せいッ!!」
 直後大きく跳んだフーゴが、長刀を振り下ろして二人に襲い掛かってきた。轟と鋼杭ごと
破壊されて土煙が上がり、視界が悪くなる。だがジークとマーロウは敢えてこれに突っ込ん
でいき、先ずは彼を素通りした。目を凝らして太刀を構える、サヤに向かってマーロウが奇
襲を仕掛けようとする。
「奴の黒い剣に気を付けろ! 動けなくなるぞ!」
 尤も、当の彼女は落ち着き払っていた。最初にフーゴの過重を解除したのもあり、相手の
能力は大よそ理解していた。目ばかりに頼らず、気配でマーロウの迫るタイミングを計り、
突き出された右手の黒剣を打撃。消滅させる。
(よし! これで……!)
 奴の左手は白剣の筈。最悪長刀を犠牲にすれば、反撃を押さえ込まれる事はない。フーゴ
はニヤリと嗤い、土煙の合間でふらつくマーロウの背後を突こうとする。
「なっ!?」
 だが予想に反して、実際は“左手も黒剣”だったのだ。どのみち受けてしまった瞬間、武
器を手放せば良かったのだが、その驚きが動作をワンテンポ遅らせた。「ぐえっ!?」結果
ズンッと再び重くさせられた長刀と共に、彼はまたしても強制的に床を舐めさせられる羽目
になる。
「な、何で……??」
「俺は一言も、白黒一本ずつだなんて言ってないぞ? この能力は現出型だから、こういっ
た使い方も出来るんだ」
 だから──。直後マーロウの返答を合図とするかのように、今度はジークが土煙の中から
飛び出していた。狙うはサヤ、自分達の色装(のうりょく)を封じてしまう相手。
「その程度の策……」
 故に彼女は迎え撃っていた。能力の性質上、先ず自分を何とかしなければ彼らに勝機は無
いだろうと想定していたからだ。肩越しにフーゴを見遣ったマーロウよりも先に、先ずはこ
の元凶たる少年の方を叩く。
『──』
「っ!?」
 だが違ったのだ。予想に反して、ジークもまた“黒剣の二刀流”だったのである。
 二重に三重。こちらが本命か! 理解はせども、彼女は咄嗟の対応を間違ってしまったの
だった。共に相手を重くして動けなくする剣、それが一対。直前のマーロウへの一撃で十分
にオーラを練るのが間に合わず、結果連続で叩き込まれたこの攻撃を、彼女は「防御」して
しまった。「ぐぅっ……!?」即ち《荷》の効果を受けて、彼女もまたフーゴと同様に地面
へと叩き付けられる。
「……言ったろう? この能力は貸し借りも出来る(げんしゅつがた)だって」
 フーゴはもう一度、サヤは念入りに全身を過重で動けなくして、ジークとマーロウはよう
やく大将戦を制した。これで暫くは大丈夫だろう。自分達のリーダーが敗れたのを見て、前
方で戦っていた他の死神達が目を見開いていた。「よっしゃあ!」数の増した脱獄囚達が勝
ち鬨を上げている。ジークは黒剣をマーロウに返して消却。アズサや取り巻き共々に死神達
を見遣り、彼らを「ひいっ!?」と怖気付かせる。
 要は脱獄までの猶予を稼げばいいんだ。
 白剣や黒剣。マーロウが両手から現出させるそれを手に、残る彼らも無力化してしまおう
と歩き出し──。
『?!』
 ちょうど、そんな時だったのだ。次の瞬間床下が轟音と共に吹き飛び、敵味方が関係なく
この崩壊に巻き込まれた。おわっ……!? 咄嗟に大きく跳び、着地もそこそこに振り向い
てみると、そこには巨大な穴が空いてしまっていた。深さはおろか、底も見えぬ、煉獄の更
に深層へと繋がっているであろう乱暴な吹き抜けである。
「……な、何だあ!?」
「やべえぞ。結構な人数がもって行かれちまった」
「穴? そんな筈は……。この煉獄は、一種の空間結界になっているんだぞ……?」
 ようやく追っ手を撃退出来たと思ったのに、またしても新手が? 疲弊し、困惑する一行
の中にあって、マーロウが誰にともなく呟いていた。ジークや幾人かの囚人達も、武器を手
に待ち構える。
『……。オォッ』
『ヴォオオオオオオオーッ!!』
 魔獣だった。そして足元に空いた大穴から、我先にと這い出して来たのは、殺気に目を血
走らせた、巨大な魔獣達の群れだったのである。


 とある雑誌による、冥界(アビス)の実在とクラン・ブルートバードの消息に関するリー
ク記事。その発表後の混乱は尚も続いていた。
「……拙い事になったな」
 顕界(ミドガルド)東方・トナン皇国王宮内。
 突如として世に出た、不都合なニュースの広まりに、女皇代行を務めるコーダスは難しい
表情(かお)をしていた。サジやユイ、リオを加えた一部の家臣達は酷く困惑している。関
係者以外を人払いした一室に集まって、面々は今後の対応を協議していた。
「何時かはバレるだろうとは思っていましたが、こうも早くとは……」
「一体誰が、何処から漏れたというのでしょう?」
「予想ならついている。おそらくは──“結社”だろう」
 臣下達のそうした不安、疑問の声に、上座のコーダスの斜め隣に座るリオが答えた。両手
を組んでテーブルの上に肘をつけ、努めて“現実”を噛み締めているようにも見える。
「ハウゼン王ら、統務院の王や議員達が口を割ったとは考え難い。先の約束もあるし、語っ
た所でメリットは無い。自分達が不利になるだけだ。或いはもっと、末端の臣下が口を滑ら
せてしまったかのかもしれない」
 だが……。暗い表情のままではあれど、当のコーダスが黙認してくれているのを受けて、
リオは続けた。
 自分で言ったものの、後者の線は薄いだろう。そもそも各国の統制がその程度であるなら
ば、もっと以前の事件において情報流出が起きていた筈だ。最善の為に理想を殺す──それ
が出来ないような国は、遅かれ早かれ亡びる。
「何より私達を信じてくれていた、領民達に申し訳が立たない。こちらの意図を事後的に打
ち明けた所で、彼らの心証を回復するのは難しいだろう」
「ええ。既に市中でも、関連の騒ぎが幾つか起こっています」
「混乱が深まるのは必至……ですか。参りましたな。結社(れんちゅう)も余計な事をして
くれたものです」
 ちょうど、その最中だったのだ。では具体的にどのような対応策を打てばいいか? 頭を
悩ませる一同の下へ、他でもないシノが心労を押して現れたのだ。ギシッと軋むように開い
た扉の外から、彼女の思い詰めた表情と声色が漏れ聞こえる。
「じゃあやっぱり……私が直接、話さないと」
「シノ!?」
「へ、陛下!?」「お休みになられていた筈では……!?」
「いけません、いけませんぞ、シノ様。ささ、寝所にお戻りくださいませ。貴女様の御息災
こそが、領民達(みな)の何よりの吉報なのですぞ……??」
 到底本調子とは呼べない様子だった。今も尚息子を失ったショックでやつれ気味であり、
慌てて後を追って来たナダ以下医務官達も、何とか彼女を宥めてベッドに戻そうと苦心して
いる。
「でも……」
「ナダさんの言う通りだよ。政務の事は僕達に任せて、君はゆっくり休んでくれ。大丈夫だ
から。君にまで何か起こってしまったら、僕は……」
「コーダス……」
 ふらつく妻を誰よりも早く抱き支えて、コーダスは言った。息子を失った哀しみは自身と
て同じだろうに、今度は自分が恩返しをする番だと気張っている。
 仲睦まじい夫婦愛。或いは互いに譲らぬ、自己犠牲の精神だろうか。
 酷く心配しておろおろする臣下達に交じって、リオは密かに眉間の皺を深くしていた。ふ
と横目を遣れば、視界の端に同じく言葉なく苦悩しているサジの横顔が見える。……やはり
慣れないな。思いながら、それでも一つ一つ立ち向かって捌いてゆくしかないと、リオ自身
もまた痛いほどに知っている。
「……皆にも迷惑を掛けてしまっているな。ジークが“復活”した時に、ちゃんと話そうと
思っていたけれど、そう上手くはいってくれないか」
「いっ、いえ」
「そんなことは……」
「じゃあコーダス。イセルナさん達は……まだ?」
「ああ……。何せ特殊な世界(ばしょ)だしね」
 いずれバレるとは踏んでいたものの、こちらの都合通りに回ってくれないのが現実という
ものだ。市中に広まった告発(リーク)と拡散、狂った予定が否応なくそれを痛感させる。
シノのぱちくりと瞬いた質問に、コーダスやリオを含めた一同が歯切れ悪く口籠った。
 もう一人の皇子・アルスと共に冥界(アビス)へ乗り込んだ、イセルナ以下ブルートバー
ドの面々からは、その後連絡は来ていない。場所が場所だけに繋がらないというのもあるの
だろう。分かってはいるが、待つだけでは正直やきもきする部分も少なくない……。
「……決めた」
「? な、何を──」
 しかしシノは、ごり押して気丈だった。コーダスが嫌な予感、心配の気色を露わにして問
い掛けるも、次の瞬間には彼に支えられながら臣下達に指示を出していた。
「皆さん、大都(バベルロート)の統務院本部に連絡をお願いします。ハウゼン様や他の王
と議員さん達にも、相談を」

 かくして、王宮内にも動きが起こる。されどコーダス達が不安視していた通り、トナン市
中の人々も件の暴露記事を受けて混乱していた。その内容に少しずつ“信頼”が揺らぎ始め
ていた。
「冥界(アビス)が実在する? にわかには信じられんが……」
「まぁ出元がゴシップ誌だしなあ。話半分くらいで取っておいた方がいいんだろう」
 他国のマスコミ、醜聞ということもある。民族衣装(ヤクラン)姿の人々は、大よそ怪訝
に眉を顰めるといった反応が多かった。それでも火の無い所に煙は立たぬと云う。或いはこ
の記者達が、無理矢理火を熾して煙を上げ始めたとでも言うのだろうか?
 仮に記事が事実だとしても──ジーク皇子は一度“死んで”いた?
 ならばアルス皇子の休学や、クラン・ブルートバードの雲隠れ、先日から各国の王達が沈
黙を守っている状況にも辻褄は合う。要するに、彼の“復活”までバレなければ万々歳とい
った思惑なのだろう。という事は、もしかしたら本当に……? 皇子が戻って来ると知って
安堵する者達がいた一方、そんなデタラメが通る訳がないと、否定的な者達もまた少なくは
なかった。
「だってさあ……。不公平じゃないか」
 当然の反応と言えば当然の反応だろう。常識ならば、死者蘇生など御伽噺の概念だ。そん
なものが突然、マスコミによって実現可能らしいと聞き及んでも、ことかつて内乱に呑まれ
ていた皇国(トナン)の領民達が良い感情を持つ筈もない。
 自分達はあの混乱の中で、大切な物を、人を失った。
 では同じように、復活させて貰えるのか? 皇子と同じように蘇る事が出来るのか?
 違うだろう。あの方は仲間に恵まれていたからその可能性があるだけで、自分達下々の者
にはそのチャンスすら無い。出来ないのなら、それでいて見せつけてくるのなら、不公平で
しかないじゃないか……。
「……何故だ? 陛下達は知っていたのに、何故言ってくださらなかった!?」
 不満や怒り。人々の中に、これまで静かに蓄積してきたものらが噴き出す。突然烈火の如
く暴れ出した同胞を、他の領民達が慌てて押さえる。「お、落ち着け!」しかし両極の反応
を示す双方は、ややあって一つまた一つ、殴り合いの喧嘩にまで発展してゆく。
「そうだぞ。まだ可能性の話だろう?」
「ジーク皇子が亡くなられた時、一番辛かったのは両陛下だ。お二人の気持ちも考えろ!」
「五月蠅い! 俺だって一人の親だ! 家族が犠牲になって、辛いに優劣があるか!」
 じたばたと叫び、抵抗するこの領民の拳が、半ば不可抗力的に取り押さえに掛かっていた
者達の顔面に当たった。もろにめり込んで頭に血が上り、カッとなって喧嘩が始まった。場
に居合わせた周囲の面々も、やいのやいのとこれに加わろうとする。「おいおい……。何や
ってんだ?」「お、落ち着いて……!」連日警戒に当たっていた守備隊らも、この収拾のつ
かなさを嘆き戸惑い、何とか彼らを宥めようとする。
「──そうですよ。そもそも皇子を殺したり、この国をメチャクチャに掻き回したのは、他
でもない“結社”じゃないですか」
 ちょうどそんな時だった。混乱の中、人ごみに紛れていた誰かが、そう朗々と響く調子で
主張するのが聞こえる。ハッと面々が我に返り、声のした方を見遣る。続けて別の者達が、
このような内輪揉めは結社(やつら)が喜ぶだけ──思う壺ではないか? そう諭した。
「そ、それは……」
「そうだよ! そうだよ! 元を辿れば、全部あいつらがやらかした事じゃないか!」
 変節する領民達の感情、世論。
 しかしこれらを扇動していたのは、実は“結社”に属する者達だった。人ごみの中に潜ん
だ幾名もの工作員。彼らを率いるとある信徒級の男が、今回一連の騒ぎを起こした張本人だ
ったのである。
(──任務、完了)
 市中の人々と同じくヤクランに身を包んだ、一見微笑を絶やさない男だった。他でもない
件の記事の執筆者、先日この国を訪れていた記者コンビに情報を提供した(ながした)張本
人である。
 一転して舵を取り直した領民らを遠巻きに、彼とその部下達は密かに物陰へと姿を隠して
いった。ニッコリと陰のある笑みを含み、掌で転がされた彼らを見遣る。
 同じ結社(そしき)の者達は、自らの鬱憤を晴らす為にテロに加担しているが……自分は
そうではない。かの大命が意図する所を真に理解しているからこそ、武力に劣る身でありな
がら、信徒に昇格する事が出来た。上層部からの信用を勝ち取るに至った。
(……我々こそが担うのです。真の意味での“救済”を、ね……)
 まるで影のように、始めからそこに居なかったかの如く。
 次の瞬間、この諜報の信徒は、人々の波間から姿を消していて──。

 時を前後して、冥界(アビス)。魂魄楼南西外壁上通路。
 イセルナ以下ジーク救出班の行く手を遮るように、その死神達の一団は姿を見せた。ボサ
ボサ髪と眼鏡の隊長格──技局長・ヒロシゲを筆頭にして、配下の隊士らや全く同じ顔形を
した少女達がずらりと並んでいる。
「何だ……あれ?」
「どうやら再躯種(キンシー)のようだな。量産された兵らしい」
「あいつの趣味か……。感心はしないな」
「イセルナさん、どうするよ? ここままじゃあ轢いちまうぜ?」
 進行方向の遠くに見えたこの一団を、ダンやブルート、サフレといった仲間達は目を凝ら
して確認しようとする。ジヴォルフ達の戦車(チャリオット)を駆るグノーシュが、ちらっ
と肩越しにイセルナを見遣って訊ねた。
「……構わないわ。少なくとも私達を邪魔しようとしているのは、間違いなさそうだし」
 向こうもこちらの接近に気付いていない筈はなかろう。キュッと唇を結んで答えた彼女の
覚悟に、グノーシュも「了解!」と手綱を握り直す。自分達は一刻も早く“煉獄”内へ──
ジークを救い出さなければならないのだ。「……ごめんよ」ややあって突撃してくる少女型
のキンシー達を、シフォンが罪悪感を覚えながらも掃射してゆく。文字通り、雷光を纏った
戦車(チャリオット)が、ぐんぐんとヒロシゲ達の間近へと迫った。
「~♪」
 その直後だった。彼(彼女?)がおもむろに自身の指先へオーラを集中させると、それら
はあっという間に大量の“蝋”のような物質に変化した。一直線に迫ってくる面々、手綱を
握るグノーシュに向けて、ヒロシゲは慣れた手付きでこれを放つ。
「ぐぶっ?!」
「!? グノっ!」
「グノーシュさん!!」
 当然ながら、猛スピードで走る戦車(チャリオット)を急に止められる筈もなかった。顔
面にこの蝋状のオーラを浴び、或いは首から下の全身も瞬く間に呑み込まれ、グノーシュは
完全に動きを封じられてしまった。戦車(チャリオット)を引くジヴォルフ達も、同じくこ
の粘質のオーラに絡め取られて次々にバランスを失う。
「逃げろ! 横転するぞ!」
 咄嗟の判断で、イセルナ達は戦車(チャリオット)から飛び降りた。なまじ加速がつき過
ぎていたものだから、受け身を取ってもその衝撃は生半可では済まない。ゴロゴロと激しく
外壁上を転がり、痛む身体を鞭打ちながら起こす。
 案の定、グノーシュやジヴォルフ達はそのまま盛大に激突してしまったようだ。先程まで
例の一団が立ち塞がっていた位置から少し外れた見張り台を、その衝撃で破壊して、大量の
土煙で覆い隠している。
「グノーシュさん……」
「おい、グノ! 狼ども(ジヴォルフ)! 無事か!?」
「さ、さっきの何だったの? 急にオーラがぐわんって広がって……」
「十中八九、あの死神の色装(のうりょく)でしょうね。始めから、私達を捕らえる為に待
ち構えていたんだわ……」
 直前にダンやブルートが、皆を引っこ抜いたり、地面を凍らせて摩擦を軽減してくれたお
陰で致命傷は免れた。呼吸を整えつつ煙の向こうを見つめたり、ふるふると頭を振ったり。
 イセルナ達は何よりも先ず、状況を把握しようとする。レナやリュカ、クレアが、聖魔導
や手持ちの薬でもって皆の傷を手当し始めていた。
「──あらあら? あの加速状態で脱出しちゃうなんて……。伊達に魂魄楼(ここ)へ攻め
込んで来るような輩ではないってことかしら」
 だが土煙の向こうから現れたのは、イセルナ達も想定さえしていなかった事態だったので
ある。先程のリーダー格らしき死神が、何故かそうオネエ口調で喋りながら近付いて来、ぽ
んぽんと軽く拍手をして一行の踏ん張りを讃える。
『……』
 そこには新たに、増えていたのだ。
 彼(彼女?)配下の死神達と、少女型のキンシー達。加えて明らかに輪郭がグノーシュと
ジヴォルフらと思しき、先程の“蝋”に包まれて蠢く影達。
「グノ!?」
「何あれ。操られて……る?」
 思わず目を見開いたダンやステラ、仲間達は、慌てて彼らに呼び掛けていた。しかしこち
らの声が届いているのかいないのか、それらしい反応も返事もなく、只々グノーシュ達は静
かに揺らめている。ふふふ……。そして当の張本人であるヒロシゲは、妙に不敵に艶めかし
く語り始めた。
「とりあえず、自己紹介をしておきましょうか? あたしはヒロシゲ・ウカタ。魂魄楼死神
衆、南棟一番隊隊長よ。皆には局長とか、技局長とか呼ばれてるけど……。見ての通り、そ
この赤毛君と狼ちゃん達は、あたしの“お人形”さんになったわ。変化型《形》の色装──
あたしのオーラに包まれた者は、誰であろうと逆らえない。自慢じゃないけど、人工魄の元
になった能力なのよ?」
 にゅるりと、先程の蝋状オーラを指先から出してみせ、この隊長格・ヒロシゲは言った。
 わざわざ名前も能力も明かしてくるほどだ。よほど自信があるのだろう。イセルナやダン
以下、残された面々は得物に手を掛けて臨戦態勢を取っていた。「拙いな……」旧知の相棒
を奪われ、ダンの呟きがしんと響く。目指すべき“煉獄”がやっと視界の向こうに入ってき
たというのに、またしても足止めを食らってしまう……。
「貴方達は冥界(ここ)じゃあ珍しい、生者のサンプルよ。是非とも捕まえさせて貰うわ。
アララギちゃんからの指令でもあるけれど、それとこれとは話が別♪」
 何──? 問い返しかけたが、勿論相手は聞いてくれる筈もなかった。彼(彼女?)の一
声を合図とし、配下の死神やキンシー兵達が襲い掛かる。なし崩し的に、一行はこれを迎え
撃たざるを得なかった。
「くっ……!」
 迫る敵の兵力に、得物を差し込んで防戦。南棟と言えば、確かアマギ達が語っていた死神
衆の一つ。基本的には技術屋だと聞き及んでいるが、それでも死神には変わりない。事実彼
らが振るう得物の中には、これまでとは随分毛色の違う武器──何かしらの機構で強化され
た刀剣や、銃槍らしきものも多く含まれている。個々の武力というより、その技術力でもっ
て底上げが為されている感じだ。
 何よりキンシー達は、おそらく器(いれもの)自体が奴に操られている。中身は無辜の魂
だろう。加えて仲間、グノーシュやジヴォルフ達が敵に落ちたことで、こちらとしては非常
にやり辛い。彼らまで斬り捨てる訳にはいかない。
「盟約の下、我に示せ──光明の散撃(ファル・シャイン)!」
「援護します! 先ずはグノーシュさん達を!」
 尤も相手はアンデッドだ。例の如くレナが聖魔導を、マルタが鎮魂歌(レクイエム)を歌
い始め、大半の雑兵は捌ける。おう! ダンやイセルナ、サフレにシフォンといった前衛組
は、早々に勝負をつけるべく地面を蹴る。
 とにかく、グノーシュとジヴォルフ達を蝋の中から引っ張り出さなければ……。
 ただ目の前でその厄介さを目撃してしまっている以上、迂闊に飛び込めないのもまた事実
だった。左右から次々に、立ち塞がってヒロシゲを守ろうとする少女型のキンシーや配下の
隊士達を、イセルナらは斬り伏せ或いは避けながら、彼(彼女?)に向かって訴える。
「聞いてください! 貴方はさっき、アララギと言いましたよね? 彼は“結社”を束ねる
幹部なのです! こんな戦い本来不要なんです! 先を通してください!」
「……関係ないわねえ。“結社”とか貴女達の事情とか、あたしは別にどうもでいいもの」
『えっ』
 にも拘らず、当のヒロシゲは何処吹く風といった様子で聞く耳を持たなかった。というよ
りも、話半分でこちらを観ているようだった。
「あたしはあくまで、興味・研究対象として出て来たまでだもの。知っているかもしれない
けれど、あたし達南棟は基本技術者で、研究者だから」
 それに……。対話が通じないと失望するイセルナらの表情(かお)を観つつ、ヒロシゲは
続けた。牽制も兼ねて《形》のオーラを放ち、或いは部下達をけしかけ、冷気と炎熱の刃を
振るうイセルナ・ダンの両名と鍔迫り合いを演じる。
「楼内に攻め込んで大暴れしている連中の言うことを、そう易々と信じると思う?」
 ちっ! 彼(彼女?)の剣閃と弾き合い、ダンが大きく飛び退きながら舌打ちした。イセ
ルナも《形》のオーラをステップで避けつつ、サフレやシフォンに隊士達の対処を援護して
貰いながら、どうやら説得に応じてはくれそうにないと結論付ける。
 確かに一理あるが……動機そのものはぶっ飛んでいる。いや、学者というのは元来そうい
う生き物なのだろうか?
 ちらっと肩越しにリュカの姿が見え、彼女が苦笑いを浮かべているのが分かる。得意の天
魔導で敵を吹き飛ばし、次の詠唱を始めている。
「やっぱ通じねえか……。戦うしかないのか」
「ですがグノーシュさんは? あのオーラに閉じ込められている以上、彼に操られたままで
すよ?」
「分かってる。自力で破ってくりゃあ、さっさと“煉獄”にも向かえるんだがな……」
「……」
 するとその直後であった。攻めあぐねてごちたダンの呟きに、ステラが静かに目を見開い
て足を止める。仲間達が必死になって敵の攻勢を防いでいるさまをざっと見遣り、次の瞬間
意を決するように叫んだ。
「だったら私に任せて! こいつらを足止めさえしてくれれば、或いは……」
 今度はイセルナ以下、他の面々が彼女を見遣る番だった。何か考えがあるらしい。正直賭
けではあったが、かと言って別の策がある訳でもない。
「分かった! 奴から部下ども引き剥がす!」
「了解!」「うん!」「サポートします!」
「どのみち悠長にはしていられないんだ……。頼むぞ、ステラ!」
 《炎》のオーラと精霊融合の冷気、シフォンが作る《虹》の幻影達とクレアが放つ援護の
属性針(ピン)。レナの征天使(ジャスティス)やマルタの鎮魂歌(レクイエム)、リュカ
が召喚した騎士団(シュヴァリエル)の頭数、サフレが一繋ぎの槍(パイルドランス)を鞭
の要領で薙ぎ払い、敵の群れを散らしてくれる。
 ヒロシゲがスッと目を細めて、こちらを見ていた。自身の兵達が除かれて一直線になった
空間。尚も操られたままのグノーシュやジヴォルフ達がこれを埋めようと動くが、それより
先にステラの色装が発動した。「ルナっち!」たっぷりとオーラを練り込み、右手を高く掲
げる。デフォルメされた顔面を持つ満月が、周囲の魔力(マナ)を吸い始めた。
『──!? ……!!』
「な、何だ?」
「力が、抜けてゆく……?!」
「へえ……。面白い色装(のうりょく)ねえ。魔力(マナ)を吸収するお月様だなんて。良
いセンスしてるじゃない」
 故に当然ながら、辺りにいた少女型キンシーや、配下の死神達が脱力して次々に膝をつい
てゆく。それでも当のヒロシゲは、余裕たっぷりにこれを見上げ、笑ってさえいた。
 良いか? 変な顔なのに……。
 ダン以下仲間達は、巻き込まれぬよう一旦下がりながらも、この彼(彼女?)の発言に軽
く引いていた。頭上の《月》は尚もぐんぐんと、敵の魔力(マナ)を吸い上げ続けている。
「でも、変化したあたしのオーラを吸えば、貴女も無事では済まないんじゃないかしら?」
 一見すると状況は、肝心のヒロシゲを捉えていないようにも見える。
 事実彼(彼女?)の発言と共に、ステラが少しずつ苦しそうな表情浮かべていた。レナや
クレア、仲間達ないし友人らがハッとなって彼女を見る。確かに彼(彼女?)の部下達を弱
らせることは出来たものの、これでは先にこちらが倒れてしまうのではないか……?
「……何言ってんの。私は別に、あんたを弱らせるつもりじゃないわよ」
「えっ?」
 しかし決着は刹那だった。まだ余力があると誇らしげに笑うヒロシゲに、対するステラは
実に淡々とした調子で言ったのである。
 彼(彼女?)の笑みが止まり、ゆっくりと世界がスローモーション。すると次の瞬間、目
にも止まらぬ電光石火の拳がその頭上から降り注ぎ、彼(彼女?)は勿論、周りの部下達も
盛大に巻き込まれていた。先程まで立っていた足元、外壁上の石畳に、激しい黒焦げと陥没
を作りながら捻じ伏せられる。
「ごばあっ……?!」
 狙いは始めから、敵の兵力を削ぐ事ではなかったのだ。ステラは自身の《月》の能力を使
って魔力(マナ)を吸い取り、グノーシュらを覆っていた《形》のオーラを剥ぎ取るつもり
だったのだ。
「──そうだな。確かにあんたは学者肌らしい」
「ぶっちゃけ、油断し過ぎだぜ?」
 《形》の中に捕らわれていたとしても、こちらの声自体はちゃんと聞こえている。生体電
流からの高速移動で、彼はジヴォルフ達と共に反撃の雷撃を叩き込んでいた。
「グノ!」
「グノーシュさん!」
 数拍してようやく状況を理解し、ダンやイセルナ以下仲間達が快哉の声を上げる。
 ステラはフッと苦笑(わら)いながら、その場に膝をついた。同時に《月》は現出を解か
れて消え、場には黒焦げになって白目を剥いている、ヒロシゲら南棟死神隊の姿だけが転が
っていたのだった。

「──やれやれ。よりにもよって、お前達も裏切る心算か? 滅茶苦茶だな。この魂魄楼の
秩序を、何だと思っている?」
 同じく魂魄楼、南東外壁上通路。
 先に行ったイセルナ達の為、突入口たる現場で足止め役を担っていたクロムらの前に現れ
たのは、金色の斬撃を放つ初老の死神だった。
 その第一波から、自らの《耐》で仲間達を守ったものの、瞬く間に吸収限界を超えてダウ
ンし、慌ててテンシンやガラドルフに肩を貸されるアスレイ。金色のオーラ──炎が未だあ
ちこちに残り火として燻り、吹き飛ばされた残党達がよろよろと立ち上がっている。クロム
も一瞬の出来事に警戒感を露わにし、他の団員らと臨戦態勢に入っていた。
(次から次へと……。またしても敵襲か)
 再三の危機。だがそんな中で誰よりも驚いていたのは、ヒムロやアマギ、シズル、死神側
の隊長格達である。
「あ……貴方は……!」
「オシヒト、機動長……」
「? 何だい? やっぱ顔見知りなのかい?」
「ああ。東棟一番隊隊長、通称“金剣”のオシヒト。私達東棟の──魂の回収を任務とする
死神達の、頂点に立つ人物だ」
「彼の《金》の炎には気を付けてください。あの炎には浄化の力が備わっています。俺達の
ような幽冥種(ホロゥ)は勿論、クロム殿のような魔人(メア)にも、大きな効果を発揮す
る筈です」
 一先ずアスレイを皆の前衛から下げて、テンシンがガラドルフと共に訊ねていた。あくま
で視線は当の本人、機動長・オシヒトから逸らさずに、アマギが言う。次いでヒムロも自身
の太刀を構えようとしていたが、まだ手元には迷いがあるようだった。団員達に交じり、ク
ロムはそれをちらっと見遣る。「分かった」先程の一撃でも十二分だったが、やはり相当の
使い手であるらしい。
「はひっ! はひっ……!」
「た、助かったあ!!」
 一方でオシヒトの下へは、ヒサメにニシオ、サヘイの三隊長が命辛々逃げ出していた。ど
うやら先程の攻撃で、彼女らを捕らえていた封印錠が焼け溶けたらしい。
「……どうしてお前達が此処にいる? 何故私が、アララギの部下の尻拭いをしなければな
らないんだ」
 されど当のオシヒト自身は、実にぶすっと不機嫌な顔色を崩さなかった。
 そんなあ! 主に縋り付くように寄って来るニシオを、ぺいっと引き剥がして。
 彼は改めて剣を片手にしたままこちらへ距離を詰めようとしてきた。それでもヒサメ達が
助けを請うものだから、ややあって肩越しに振り向くと彼は言った。忠節はあくまで、任務
の中で見せろと言わんばかりに。
「ならばお前達は、あの飛行艇を追え。船を出し、魔流(ストリーム)を泳げば未だ追い付
くだろう。私はアララギに、あれを落として来いと頼まれた。お前達はあれが去った方向を
見ているのだろう?」
「は、はい!」
『たっ、直ちに!!』
 有無を言わせない指示・命令であった。文字通り弾かれるように、外壁の向こうへ走って
ゆく三人を見て、団員達は慌てて後を追おうとする。「させるか──!」しかしこちらの動
きを妨害するよう、オシヒトは軽く《金》の斬撃を放って足止めした。目の前で上る熱量と
金色の向こうで、ヒサメ達の姿が見えなくなるのが分かる。
「……侵入者どもよ。解っているだろうな? お前達が犯した罪は、生半可な贖いでは帳消
しには出来んぞ?」
「っ──!」
 またさっきのような、大規模な火炎を放たれれば、自分達はひとたまりもない。防御面の
頼みの綱であるアスレイは、先程の一撃でダウンしてしまった。場の誰よりも逸早く、テン
シンが長刀を引っ下げて突撃してゆく。
「待て、テンシン! 早まるな!」
「いくら貴方達でも適う相手じゃない! ここは退くんだ!」
 尤もガラドルフやヒムロ、後方の仲間達の叫びは間に合わない。状況を改善する手助けに
はならない。飛び込んで来たテンシンに、オシヒトは腰を据えて迎え撃った。金色の余韻を
纏うオーラと共に、トリッキーに撃ち込まれる刃を次々に受け返してゆく。
「拙いぞ。テンシン隊長、きっとまた俺達に炎を撃ち込ませまいとしたんだろうが……」
「無茶だよ! さっきのあれが全力とも限らないのに!」
「……私達も加勢するぞ。彼がアララギに並ぶ地位にいるのなら、或いは──」
 テンシンの色装は《滑》。相手の攻撃をアトランダムな方向に受け流す能力だ。しかしそ
れも決して万能ではない。自由に方向を決められない、半ば賭けのような部分が強みにも弱
みにもなるのは勿論の事ながら、彼のような広範囲への一斉攻撃を放てる相手にはその全て
を捌き切れないという弱点がある。
「ぐっ……!?」
 実際、オシヒトから放たれる《金》の小刻みな炎撃に、テンシンは苦戦していた。長刀の
刃に《滑》のオーラを纏わせ続けていても、物理的に反応できる手数には限度がある。
「テンシン、下がれ!」
「一人じゃ無理だ! 撃たせないのなら、数で囲んだ方がいい!」
(場所は広いが、味方が多過ぎる。やはり儂の《陽》は使い勝手が悪いのう……)

 ──オシヒト・クニツは生前、現閻魔総長・ヒミコの夫だった。
 しかし当の彼女は、何十年も前に病で逝ってしまっている。先に“煉獄”内で浄化プロセ
スを受け終わったその精神には、彼の記憶は残っていない。オシヒトは自らが死に、ようや
くかつての妻と再会した際、その現実を思い知った。無理もないだろう。仮に憶えていたと
しても、すっかり年老いた自分の顔とは一致しないだろうから。
 だからこそ……彼は彼女を支えようと心に誓った。たとえ在りし日々のことを忘れられて
いたとしても、密かに見守ろうと思った。陰から守ろうと決めた。
 今の彼女は閻魔総長。この魂魄楼を司る双璧の一人。
 ならば、彼女が護るこの世界の秩序を、自分は護ろう──。

「オシヒト機動長! 聞いてください!」
 実際は一対多数だというのに、それでもクロム達は彼を押し留めるので精一杯だった。剣
一本で、彼はこちらからの四方八方からの攻撃をいなしてしまうし、巧みに小規模な《金》
の発火を挟み、その包囲される密度を撥ね返してしまう。
 防戦一方というよりも……元上司を本気で斬る事が出来なかった。皆と揉みくちゃになり
ながら押さえ込もうとし、ヒムロ達が何とか説得しようと試みる。
「アララギ総長は、あの“結社”の最高幹部の一人かもしれないんです! このクロム殿、
元使徒級の彼が証言してくれました!」
「もしかしたら、我々は騙されているのかもしれないのです! とにかく真偽を確かめない
ことには、私達も戦うに戦えない!」
「お願いです。どうかこのような戦い──止めてはくれませんか?」
「……」
 しかし対するオシヒトは、彼らの包囲網の中で相変わらず耐えつつ黙していた。無数の剣
戟も何処か遠くの出来事のように、難なくいなして弾き返しながら、尚も押し留めてこよう
とするヒムロら元部下達を見つめる。
「信用できんな。すっかり懐柔されおって」
 ぶんっと《金》の炎を伴った一閃。ヒムロら三隊長や、クロム以下団員達、期せずして仲
間に加わってくれた元十六番隊の隊士達をもまとめて撥ね返す。断続的に攻め立てて、手数
を封じる包囲網から逃れ、彼は眉間にじっと皺を寄せていた。慌てて両脚を踏ん張って着地
し、構え直す一同を見渡しながら、彼はゆっくりと刀身を持ち上げる。
「……こんなものが、あいつの護りたかった平穏なのか」
 何を? 勿論クロム達に、そのごちた言葉の意味は分からない。幾度となく死神衆との攻
防を繰り返した外壁上に、痛々しい損壊の痕跡が目立っている。
 オシヒトは何も答えなかった。持ち上げた刀身から、急激に黄金色の炎が渦を巻くように
して膨れ上がる。しまっ──! 侵入者達(かれら)の驚愕、突かれた不意のさまを彼は冷
静に観ていた。遅いな。どうしてこうにも、差が開いてしまったのだろう。
(彼女の……ヒミコの愛する、この秩序を護る……)
 直後クロムらを巻き込む、特大の《金》の炎が、彼の斬撃から放たれた。


(よりにもよってこんな時に、こんな所で目覚めやがるとは……!)
 “破神”こと叛逆の神・ルキ。これに相対するのは、魂達(ストリーム)の加護を受けて
“覚醒”を果たした、レノヴィン兄弟の片割れ・アルス。
 神都(パルティノー)深部。クーデター派の神々を率いて襲ってきた彼に、アルスとエト
ナは敢然と立ち向かっていた。“創世”を目論むんでいた地下空間を光速で飛び回り、激し
い攻防を繰り広げている。
(……いや、こんな時だからこそ、奴は魔流(ストリーム)に引き摺り込まれたんだろう。
“今”こうして、撰ばれたんだろう……)
 自身のオーラを光の速さと重さに変える、変化型《光》の色装。
 そんなルキの、常人では到底追い付けない筈の立ち回りに、アルスは間違いなく付いて来
ていた。加護を得、味方とした周囲の魔流(ストリーム)を自在な足場とし、更に自らの持
つ《花》の能力をフル活用する。魔力(マナ)の糸で編んだ左右の手術刀を、追随するよう
に生えてくる植物達で強化(コーティング)し、ルキの光線(レーザー)を幾度となく凌ぎ
続けていた。
「次、左ッ!」「後ろッ!」
 エトナも、持ち霊として加護の影響を存分に受けた上で、先行する彼をサポートする。
 単純に強化された得物というだけでなく、樹木部分に《花》の特性を付与──効果範囲を
延長する“範囲強化(ラージ)”や、複数を束ねて火力を上げる“連撃強化(プラス)”を
組み合わせて、ルキに迫ろうとしていた。
(厄介な能力だな……。だが……)
 されど《光》のオーラを全身に纏いながら、的確に二人の攻撃をかわしてゆくルキ。最初
こそアルスが“選ばれた”ことに驚きと焦りを禁じ得なかったが、それでも同じ力を持つ者
としての力量は、尚もこちらに一日の長がある。
 相手はまだ、覚醒後間もないのだ。
 時間が経てば経つほど、いずれボロが出てくる──。
「ぐぅっ?!」
 すると案の定、二人の動きが徐々に落ち始めるのが視えた。力の蓄積量がジリ貧になって
きたのだ。ルキはすかさずその隙を狙い、指先から一条の《光》を放つ。
 直撃こそしなかったが、はたしてその一撃はアルスの左肩を掠めたのである。
「アルス!」
 途端に集中していた意識が途切れ、地上に落下してゆくアルス。エトナや加護状態の植物
達が、これをクッションのように受け止めたが、勝負はついたようだった。ルキは密かにほ
くそ笑む。
 どれだけ“摂理”の加護があろうと、元々の能力がそう急に変わる訳ではない。要は勝負
を焦ったのだ。気装・色装の運用戦略然り。突き詰めてゆけば、その組み合わせの吟味が戦
いの結末を左右する。
「……ようやく捉えたか」
 自身もスゥッと地面に着地し、傷口を押さえたアルスの姿を見下ろす。
 力を一気に使った反動が来ているのだろう。彼は激しく息をつきながら、駆け寄ったエト
ナや魂(ストリーム)達に囲まれて心配されていた。
 伊達に“同等”ではなかったか──ルキは改めて右手に《光》のオーラを練り、尚も覚醒
した瞳の色のままの“撰者(かれ)”を始末しようとする。
「──ふむ。やはり目覚めてしまったか……」
「おい、無事か!? ユヴァンに頼まれて、加勢に来たぞ!」
 加えて次の瞬間だった。突如として、何もなかった空間に黒い靄と青白い雷光が迸り、見
覚えのある顔が現れる。
「!?」
「なっ……?!」
 ティラウドとオディウスだった。ルキと同じく“結社”を束ねる最高幹部であり、こと前
者は竜王峰にて、アルスの兄・ジークを死に至らしめた人物の一人でもある。
「問題ない。ちょうどけりが付いた所だ。今から殺る」
 場に居合わせた面々の中で唯一面識があり、ある意味仇とも言える彼らに目を見開いて怒
るエトナ。「表にブルートバードの一部? そうか……」その間もルキは、二人と彼らが引
き連れて来たオートマタ兵達を横目に見遣りながら呟き、拳に集めた《光》を刀剣状に握り
直していた。
「──」
 するとどうだろう。そんな中、この一部始終を見ていたゼクセムがおもむろに立ち上がる
と、手負いのまま膝をついているアルスとエトナの前に歩み出たのである。
 先刻、ルキに撃ち抜かれた器(からだ)からは尚も、大量の光子(エネルギー)を漏出さ
せたままで。絶え絶えの息を肩でついたままで。
『??』
「ゼクセム……様?」
「……一体何の心算だ? もう、死に体の爺でしかないお前に」
 あからさまにルキが、面白くないといった風の表情(かお)をした。傍らのティラウドと
オディウスも、この元最高神の行動に怪訝な眼差しを向けている。
「──」
 先程とは正反対の、今度は自らが彼に庇われるような光景(シーン)。
 同じく困惑した様子でこれを見上げるアルス・エトナを背後に隠しながら、この老齢の神
は両手をゆっくりと大きく横に広げた。決死の表情でもって、ルキ達の前に立ち塞がる。

「どっ……せいッ!!」
 時を前後して、煉獄内第五層及び第六層。
 およそ一般の死神達が立ち入らない深層域にて、煉獄長ドモンとその部下達は“処理”に
当たっていた。暗闇に蠢き、次々と襲い掛かってくる元囚人の魔獣達を、彼の巨体と剛腕は
いとも容易く叩き伏せているように見えた。
「ひっ、ひいッ!?」
「やっぱ無理ですぅー! 俺達も、サヤ隊長の所に行けば良かったぁーッ!!」
 対して彼に率いられた末端の死神達は、既にこの過酷な環境に音を上げている。自分達よ
りも遥かに巨大で異様な風貌をした“化け物”達に、只々逃げ回っては泣き叫び、手にした
刀や槍といった得物すらろくに振るえていない。
「……お前ら、今月の給料マイナスな。西棟(ここ)に配属された時点で、覚悟ぐらい決め
とけっつーの」
 そ、そんなあ! 無茶言わんでくださいよー!
 部下達の泣き言もとい反論は、それでもきっちりと返ってくる。それだけ思考も逃げ足も
働いてるんなら、もう少しまともに戦えるだろうに……。
 ドモンは改めて嘆息をつきつつ、拳を魔獣達の骸から抜く。巨人族(トロル)の血を引い
ていても尚、身の丈の二倍・三倍はあるであろうこれらを相手に、彼は粛々と慣れた様子で
“処理”をしていた。積み上がった無数の肉塊に隠れて、一瞬彼の片腕がこれらと同じく歪
んで──見えたような気がした。
「しっかし……。どうも妙だな。こうも綺麗に繰り抜くなんて芸当、こいつらには出来そう
にもないんだが」
 気になるのは、現状刑罰魔獣達が脱走するに至った、その切欠となった天井部分の大穴で
ある。現在ドモン達がいるのは第五層──“煉獄”の最深部一個手前だ。そこから見上げた
ずっと頭上の果てが、まるで刃物を入れたかのように丸く切り抜かれている。要するに最深
第六層とこの五層、及び四層へと続く空間が、現在吹き抜けのような構造になってしまって
いる訳だ。
(煉獄内(このなか)は、一種の結界みたいなモンだ。生半可な力じゃあ、普通こんな真似
なんぞ出来っこない筈なんだがなあ……)
 粗方周囲に残っていた魔獣達を締め直し、階下に放り投げてからぼんやりと天井を見上げ
るドモン。結界の修復は流石に専門外だ。ヒロシゲ達南棟の仕事だろう。
 それにしても一体誰が、このような真似をしたのか? 自分の知っている中でこんな芸当
が出来るとすれば、総長アララギ辺りが先ず挙がるが……。
(まさか、な)
 仮にそうだとしても、何故奴がそんな真似をする必要がある? 壊した所でメリットなど
ありはしない。厳重に蓋をした深層域の囚人達を、わざわざ解き放つようなものだ。
 そもそもサヤ達の報告では、当人とは未だ連絡すらついていないという。どうやら外でも
襲撃騒ぎがあったらしく、その対応に追われているのだろう。奴が手一杯になるなど、何時
ぶりの事だろう?
(ったく。こんなクソ忙しい時に何やってんだよ……)
 考えいても埒が明かない。ドモンは一旦思考を打ち切り、尚もおろおろとしている部下達
に呼び掛けて先を急ぐ事にした。「おい、お前ら! ちゃっちゃと行くぞ!」ともかく今は
上層へ。先にサヤ達を向かわせたし、何より自分達が着くまでに取り零した魔獣達が、現在
進行形で上へ上へ逃げようとしている。放っておく訳にはいかない。
「ひーん……」
「人使いが荒いッスよお。獄長~……」
 相変わらず泣き言の多い部下達を引っ張って、ドモンは一個上の階層へと向かってゆく。
彼に殴り倒されて気絶した、魔獣達の肉塊が、時折ぐしゃりと踏まれて高反発する。
「泣き言いってる暇はねえぞ? 役に立てないんだったら、置いて行ってもいいんだぜ?」
「いっ、いえッ!!」
「行きます、行きますッ!!」
 何だ。やっぱり元気あるじゃねえか。
 ……もっと自信を持てよ。お前達は俺の部下なんだ。こんな場所でも何だかんだ、五体満
足で帰れてるって時点で、相当のモンだと思うんだがねえ。

 辺りに響き渡ったのは──爆音の咆哮。
 突如足元をぶち破った大穴から出て来たのは、明らかに尋常ではない巨体と異形さを宿す
魔獣達だった。マーロウやアズサ、フーゴにサヤ達。場に居合わせた面々は、敵味方も関係
なくこの非常事態に逃げ惑う。
『ひぃッ?!』「ま、魔獣ぅ!?」「何で此処に……!?」
「天井が破られた? そんな馬鹿な……」
「おい、何をやってる?! 止まるんじゃねえ! 走れ!」
「逃げろォォォーッ!!」
 つい先刻まで戦っていたことが嘘だったように、両陣営は一目散に走り出していた。フロ
ア内の四方八方に面々の姿があり、その後ろを狂気に呑まれた魔獣達が追い立てている。
「ぎゃあッ!?」
「しまっ──」
 だがそんな混乱の中にあっても尚、マーロウは自らの信念を貫こうとした。魔獣達が追撃
して来る衝撃で、次々と崩壊する床に足を取られそうになる隊士や囚人達へ、彼は《荷》の
白剣を投げつけ、これを重力から解放して救出。周りの脱獄囚らに託し始めたのだ。
「負傷者に使え! 軽くなれば、まとめて運べる!」
「えっ? でも……」
「こいつらは敵なんだぜ!?」
「……こんな状況で、敵も味方もあるか。同じ魂(いのち)に変わりはない」
 戸惑いながらも、量産された彼の白剣を受け取る脱獄仲間達。
 逃げ遅れそうになる同胞を助け出すのはまだしも、マーロウは西棟の死神達にも同じくこ
の能力を使わせた。怪我をして満足に動けなくなった大の大人も、白剣の「軽く」する効果
を使えば、一度に何人も引っ張って逃走出来る。
 訊ねる囚人達に、マーロウは言い切った。切迫した状況下で笑顔一つなく、その言葉は彼
自身の本心から出たものだと解る。
「……やれやれ。とんだお人好しね。一体誰に似たのかしら……?」
 そう一方で肩を竦めつつも、アズサは脱獄仲間達に交ざり、救出の指揮を執り始めた。地
上へ着くにはまだまだ時間が掛かる。こちらとしても、兵力はなるべく失わずに済むに越し
た事はないといった所か。
 マーロウ自身は、白剣の二刀流で、尚も過重で動けないフーゴとサヤの下に駆け付けてい
る所だった。手早く何度かの剣閃を放ち、二人に掛かった効果を自ら相殺する。
「!? 身体が……」
「……随分と、舐めた真似をしてくれますね。ただまあ、部下達を助けてくれたことは感謝
しいておきます」
「それだけ口が動けば十分だ。一旦ここを出るぞ。奴らを、外に出す訳にはいかない」
 憎まれ口と、柳に風。自由を取り戻したフーゴとサヤから向けられた言葉に、マーロウは
そのまま上層への昇降機に向かおうとした。めいめいに逃走中の死神達が、この一部始終を
驚いた様子で見つめている。
「何やってんだ!? 兄(あん)ちゃん、逃げろ!!」
 だが……マーロウ達はそこでようやく気付いたのだった。肝心の仲間、他ならぬジークが
崩壊した大穴の傍で、まるで硬直したかのように動かなくなっていたのだ。
「ジーク?!」
 ちょうどこちらからは、背を向けた格好。マーロウやアズサ、フーゴ・サヤ以下死神隊を
含めた面々が蒼褪めていた。彼の目の前には、もうすぐそこまで魔獣達が迫っている。所狭
しと咆哮を上げ、我先にと進撃して来るその姿を呆然と見上げている。
「拙い……!」
「あいつ、あのままじゃあ喰われちまうぞ!?」
「何をしているの!? ジーク、逃げなさい!!」
 逃げるのに必死で失念していた。囚人やアズサ達が叫ぶが、当の本人にはまるで届いてい
ないらしい。マーロウが、半ば反射的に駆け戻ろうとしていた。

『──』
 何だか世界が、妙にゆっくりに視える。
 圧縮される時間の中、ジークはそうぼんやりと感じ、思っていた。
 事実目の前では魔獣達が、随分とコマ送りの動きをしているのが解る。嗚呼、このまま俺
は食い殺されるのかな……? 他でもない我が事の筈なのに、何故かそう現実ではない別の
場所に放り出されたかのような心地がした。
 心なしか、辺りが少し白ばんでいるようにも見える。
 ジークはそうしている内に、この不思議な違和感──既視感(デジャヴ)の正体に気付い
ていた。狂気に呑まれて暴れる魔獣達の姿。そこにかつて、自分達兄弟が幼い頃犯してしま
った、過去の過ちを重ねていたからだ。
 ……皆を守る為には、仕方なかった。
 そう後になって大人達から言われ、自分に言い聞かせて、あれが村を救った正しい行為だ
と必死に弁明し続けてきた。魔獣化してしまった者は、二度と元には戻らない。戻る方法が
無いからこそ、殺すしかない。
 でも俺達は──命を奪ったんだ。マーロウさんの、昔から自分達兄弟にも良くしてくれた
村のおじさんを、瘴気に呑まれたからというただそれだけの理由で、殺したんだ。
 本人は褒めてくれた。良くやったって。だけどもおじさんはそのまま息絶えて、父さんを
始めとした何人もの村の人達が犠牲になって。まさか冥界(こちら)で再会するなんて、夢
にも思わなかったけれど。
 ……もう二度と、同じ過ちを繰り返さない。
 その為に、アルスと二人で頑張ってきた。力を求めて、強くなろうとした。きっとあいつ
も同じ思いだった筈だ。お互い得意なものは違ったけれど、がむしゃらに戦ってきた。それ
は魔獣が全て、元ヒトだったかもしれないと知った後も、変わることなく。自分達の責務と
して依頼に当たってきた。向き合い続けてきた。
 だけどそれだけでは──「全て」を救えない。特に“結社”との戦いでは、それが顕著に
現れてばかりだった。寧ろ自分の所為で、色んな人を苦しめてばかりきたんじゃないか? 
そう思う。

「……ごめんな。助けて、やれなくて」
 はたして次の瞬間、場の誰もが予想だにしなかった事態が起こる。あろうことかジークは
逃げるでもなく、そっとこの魔獣達へと一歩進み出ていたのだ。紡がれたのは、恐れでも怨
嗟でもなく、只々慈悲──後悔の念。
「ジーク……?」
 慌てて助けに入ろうとしたマーロウを始め、居合わせた面々が皆一様に驚愕していた。傍
から見れば、彼のそれは自殺行為そのものだったからだ。そっと手を伸ばし、まるでペット
と触れ合うかのように撫でようとする。
 なのに、魔獣達は一匹とて襲い掛かろうとしなかったのだ。寧ろ同じくそっと近付き頭を
垂れ、その眼差しと手に寄り添わんとさえしている。ジークの掌が、彼らのゴツゴツした肌
を優しく撫でた。
「……そっか。お前ら、もっと下の階に居たのか……」
 何となくそんな風に聞こえた気がした。ゆっくりと深呼吸をしつつ、ジークはそう誰にと
もなく呟き出す。
 この“煉獄”内に居たということは、彼らもまた囚人なのだろうか? そう言えば裁定の
前後、魔獣に変えられてしまうフロアもあると聞いたような……?
 アズサと再会した時の例もある。必ずしも自分に故ある者だったとは、そもそもヒトだっ
た如何かすら定かではないし、限らないが、彼らからはとても哀しい声が聞こえる。そんな
気がした。
(俺達は今、奇跡を見ているのか……??)
 マーロウ達は愕然とする。それまでの凶暴さが嘘のように、目の前の魔獣達が一斉に大人
しくなっていたのだから。
 まさか、言葉が解っている? いや、そんな馬鹿な。一旦完全に魔獣化してしまえば、も
う常人に戻る事は不可能な筈。
 特に此処は“煉獄”だ。足元の床──より深層の天井をぶち破って現れたということは、
間違いなく第五層の『紫喰の間』か、第六層の『黒界の間』だ。膨大な時間を狂気の中で過
ごしてきた彼らに、人並みの理性や感情など残っている筈がない……。
「──」
 そっと手を差し伸べ、ジークは寄り添う。魔獣達も静かに身を寄せたまま、何処か酷く安
堵するように目を瞑っていた。つうっと、彼の頬に涙が伝う。
 ごめんな。
 もう言葉はなく、ただ態度で。スローモーションだった世界がゆっくりと解けてゆく。今
までの「全て」を傾けるように。溢れる哀しみで歯を噛み締めたジークは、じっと彼らに手
を伸ばし続けていた。
 澄んだ紅(あか)色に輝く瞳。
 刹那、ジークの全身を包むオーラが、大きく変質して──。

スポンサーサイト



  1. 2019/10/09(水) 18:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<(雑記)上滑りする僕の言葉を | ホーム | (企画)週刊三題「想烈」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://higurasisouann.blog27.fc2.com/tb.php/1159-c6650097
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

訪問者累計

最新記事

最新発言

検索窓

月別履歴

10 | 2019/11 | 12
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

分類/索引

【案内板】 (2)
【小説:短編】 (20)
本の蟲 (1)
硝子野不動産店 (1)
夏の日の幻影 (1)
四番線の彼女 (1)
夢視の宿 (1)
線を曳く町 (1)
炬燵の神様 (1)
三者三盗噺 (1)
色眼鏡 (1)
奴らは攻城戦師 (1)
詰め替える (1)
同じ籠の狢 (1)
二十年後の遺言 (1)
轍の先 (1)
水に流せば (1)
真夜中の御二柱 (1)
いつか見た夢 (1)
神様達の初詣 (1)
白い花束 (1)
丸の代償 (1)
【小説:長編】 (192)
Amethyst League (6)
アンティーク・ノート (3)
ユウキのヒカリ (5)
NIGHT GUNNERS (5)
レディ・ルーン-Bonds of RU'MEL- (6)
ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle- (110)
死に損いのデッドレス (5)
Dear SORCERY (4)
サハラ・セレクタブル (48)
【企画処】 (469)
週刊三題 (459)
その他参加物 (10)
【資料庫】 (2)
【落書帳】 (2)
【詩歌帳】 (8)
【雑記帳】 (400)
【読書棚】 (32)
【遊戯倉】 (25)
path. (4)
decide: (3)
ユー録FW(凍結中) (17)

記事録

交友関係

このブログをリンクに追加する

(RSSリンク)

(QRコード)

QR

Tweets by long_month