日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅷ〔106〕

 神都パルティノー。其処は街と呼ぶには違和感のある、創世の民・神格種(ヘヴンズ)達
の本拠地兼巨大研究施設だ。この世界の文明とは明らかに異質──無機質を突き詰めた塔状
建造物群の内外は、立ち入った人間(もの)に重暗い“畏れ”を抱かせるに充分ではあった
だろう。
「……ん?」
「あ、ルキさん」
 そんな継ぎ目も見えない研究棟(ラボ)の一角で、居合わせた神々(どうりょうたち)は
彼の姿を認めて振り返った。
 淡い金髪にトーガ風の衣装、引っ掛けた上衣。
 一見して端正な顔立ちと形容して差し支えない青年だった。ただ平常に張り付けたその表
情は、何処となくダウナーなそれを感じさせる。
「よう。見回りご苦労さん」
 遊戯と寓意の神・ルキ。こちらを向いてきた面々と同じく、創世の民の一人である。加え
て彼らからの眼差しと、手に何気なくぶら下げた高レベルのカードキー。それだけでこの人
物が、神都(パルティノー)内でも相当の地位に在ると分かる。
「話は聞いたぜ? 全く、所長(チーフ)はどういうつもりなんだか……」
 自分を一目置いて、若干緊張する神々(どうりょうたち)。
 されど当の彼──ルキ本人はごく気さくに、何時もの気だるげを引き摺りながら近付き、
話し掛けてくる。
「ああ、そっちも情報が行ったんだね?」
「何でも下界の人間が迷い込んで来たらしい。例の、レノヴィン兄弟の片割れだ」
「弟の方だそうだよ。それと、その持ち霊」
「ああ。二人をとっ捕まえた本人達から聞いた。所長(チーフ)に絞られた後で、随分ぐっ
たりしてたけどな」
 曰く、所長(チーフ)ことゼクセムが、件の迷い人らを箱庭(フラスコ)の下へと連れて
行ったとのこと。あそこは自分達にとって最重要のプロジェクトだ。いくら彼が施設内を自
由に行き来できる“権限”を持つからといって、安易に外部の者を入れてしまっては示しが
つかないではないか。せめて事前に、自分達にも知らせておくぐらいはしてくれてもいいだ
ろうに。
「そもそも何故彼が? 常人では、神界(ここ)には近付く事さえ出来ない筈だ。それに彼
の仲間──クラン・ブルートバードは、先日“結社”との戦いに敗北したんだろう? 悠長
に異界観光などしている場合ではないと思うんだが」
 そう言われても……。尤も居合わせた神々(どうりょうたち)もまた、その詳しい経緯に
ついては分からないことだらけのようだった。互いに顔を見合わせて、知らないと小さく首
を横に振る。
 王(ゼクセム)の手前、反抗も出来なかったのか。当人を含めた上層部の判断? それと
も彼らがアイリス転生体の友であり、例の暗号──自分達の正体を知っていること、下界で
はヒトの国のいち皇子である点からも、下手に扱えば後々面倒になると考えたからか?
「……仕方ないな」
 故にルキは大きく嘆息をつきつつ、されど追従するしかなかった。
 何せ自分達は“チーム”なのだから。もう後には戻れない身となって久しい以上、要らぬ
軋轢で神都(ここ)を追い出されては命に関わる。
 俺も様子を見に行って来るよ。ルキは言い、場の面々に深部へと続くゲートを開けて貰っ
た。自身の持つカードキーも使い、あくまで合法的に件の箱庭(フラスコ)へと向かう。
「そう言えば……。アルス・レノヴィンの所持品は、今何処に?」
「? ああ。えっと、確か……」
「B2隔離区だよ。例の凝縮品──兄貴の聖浄器を何故か持ってたらしくてな」
「へえ……。そっか、ありがとう」
 一人扉の向こうへと去って行くルキ。
 その間際、彼からそんな質問をされたが、場の神々(どうりょうたち)は特に疑問も持た
ずに答えた。既に己の持ち場に戻り、保守・点検作業を再開している者達さえいる。
『──』
 より深部へ。こちらに背を向け、通路奥へと消えてゆくその表情(かお)に、不穏な影が
差していたことにも気付かないまま。


 Tale-106.だから再び、叛逆を

 大法廷での判決後、ジーク達が投げ込まれた場所の名は“煉獄”──魂魄楼の西離れに広
がる、巨大な魂の浄化施設である。
 その役割は、裁定された死者の魂達を只管“再利用可能な状態”にもってゆくこと。
 篩(ふるい)と穢れの除去(さっきん)。交互のパターンでもって深く深く、全部で大き
く六層に分かれている。
 ──第一層は『白砂(はくさ)の間』。最も浅い階層だ。多くは生前非常に善良な、浄化
に要する度合いが低い魂達が収監されている。己が朽ちては再生され、また朽ちるという贖
いを延々と繰り返され、足元には広大な白い砂地──自他を含めた過去の朽ちた残骸達が、
サラサラと静かに積み重なっている。
 ──第二層は『紅蓮(ぐれん)の間』。白砂と並ぶ浅い部類の階層だ。多くは生前良くも
悪くも平凡、生きる為の殺生などに疑問さえなかった魂達が収監されている。全域が足元の
黒い石畳から浄化の炎を噴き出し、延々これに焼かれてはその穢れを解毒してゆく。
 ──第三層は『青柱(せいちゅう)の間』。魂魄楼では一般に、この階層以深が“罪人”
の領域とされている。天井と足元から無数の、一本一本が柱のような鋼杭が上下しており、
いわゆるプレス機の要領でその身を粉砕させられては再生をするを繰り返す。より直接的で
物理的なふるいであり、収監された魂達は日々断末魔の叫びを上げているという。
 ──第四層は『金輪(きんりん)の間』。浄化の力に焼かれるという意味では紅蓮と同じ
だが、最大の違いは炎熱ではなく光熱という点だ。より深刻な“罪人”の魂達を収監し、常
時遥か頭上より降り注ぐ黄金の陽射しでもって穢れを焼き払う。その光景はまさに辺り一面
の砂漠に放り出されるが如く、延々と続く酷暑そのものだ。
 ──第五層は『紫喰(ししょく)の間』。煉獄内でも深層に分類され、魂の根っこから邪
悪に染まった“罪人”達が収監されている。内部には無数の魔獣達が放たれており、その底
なしの食欲と凶暴性によって執拗に穢れを食い殺されては、再生されるという贖いを強制的
に繰り返させられる。獄吏の死神達でさえ、よほどの事が無い限り好き好んで近付きたがら
ないという血染めの領域だ。
 ──第六層は『黒界(こっかい)の間』。煉獄における最深部であり、一切の暗闇に覆わ
れている。主に上層・紫喰にて魔獣と一体化し、堕ちた者達で溢れ返っている。完全な浄化
が終わるまでの時間は、まさしく無限に近いほど途方もなく、事実上再利用すら後回し・放
棄された魂達の掃き溜めと言える。暗闇の中、延々と共食いや魔獣並みの自己再生を繰り返
し、文字通り精神・肉体共に最大級の苦しみを味わい続けている。
「ぐぎゃあああーッ!!」
「熱(あつ)……熱っ!?」
 ハナとヨウ、クチナシ姉弟はこの第二層に収監され、吹き荒ぶ紅蓮の炎に焼かれていた。
今回の脱出行に協力した十六番隊の隊士達も、同じくこの浄化の炎熱に揉まれて白目を剥い
ている。既に収監されていた他の囚人らと共に、やがて痛みを強く感じることさえ忘れて倒
れてしまうだろう。
「……っ!」
 片やマーロウは、第三層の洗礼を早速受けていた。上下から断続的に迫る、柱のように巨
大な鋼杭。最初は必死に跳び、避け、他の囚人達が押し潰されて粉微塵になってゆくさまを
目の当たりにしていたが、やがてこれが自らに課された“罰”なのだと知って宙を仰ぐ。
 死神になる以前──あの日魔獣になりかけた際に介錯された(しんだ)時から、自分には
もう肉体は存在しない。ただ今こうして感じる己というものは、精神の輪郭だ。未だいると
信じている認識の密度なのだ。
「がっ!?」
 鋼杭、階層全体を囲い込むプレス機に噛み千切られ、マーロウは片腕を失った。或いは避
けようとした足を押し潰され、激痛と粉微塵になってゆく自らの一部を知覚する。
 それでも他の者達と同様、此処ではまた自分という精神、魂の姿は復元されるようだ。事
前に聞き及んできた情報からしても、浄化プロセスが終わるまで、延々とこの状況が繰り返
されるのだろう。
(……ジーク、ハナ、ヨウ。どうなったんだ? 皆は無事なのか……?)
 何度も四肢を剥がれてはどうっと倒れ、自らが粉砕されては再生する中、マーロウの脳裏
にあったのは尚もジークや部下達の安否だった。

(暑ぢぃ……)
 そして当のジークは、第四層『金輪の間』に収監されていて。
 広大なフロアは、煉獄全体を貫く中央の監視塔──西棟死神衆こと獄吏達の詰める円柱型
の塔がそびえている以外は、基本的に刑区だった。足元の砂漠を弾いて白光よりも金色のよ
うに熱を放ち続ける頭上の陽射しは、たとえ魂だけの姿であっても囚人達を逃しはしない。
 此処に放り出されてからというもの、ジークは一人ふらふらと彷徨っていた。マーロウに
貰った人工魄も捕縛時に取り上げられたことで、魂が直に炙られているらしい。
 これが刑罰? 浄化プロセス……?
 表情からは、とうに余力は失われていた。天井も果てが見えず、此処を抜け出すか浄化の
太陽を破壊するといった解決策も不可能なように思える。マーロウさん達は……? 皆自分
よりも上層に送られたとはいえ、少なくとも楽な場所ではない筈だが。
「……」
 故に、ジークの全身を覆っていたのは激しい無力感。またマーロウさんに、皆に迷惑を掛
けてしまった。取り返しのつかない場所へと追い遣ってしまった。
 あまりの苦痛に一周回って、考えようにも考えられなくなっていた面もある。だがそれで
も彼が尚、脳裏で延々“悔い”ばかり繰り返していたのは、他ならぬ絶望によるものだ。竜
王峰での戦いにおいて、ジーヴァに敗れただけではなく、仲間達との距離も更に遠くなって
しまった。
 自身の死を聞けば、アルスはどれだけ悲しむだろう? 父さんは、母さんは? 団長や皆
は一体どうしたのだろうか? おそらく無事では済んでいまい。せめてそれだけでも確かめ
たかった、謝罪の一つでも遺したかったのに、それさえ叶わないなんて。
 ……逃げ出そうにも、問題が多過ぎる。
 この煉獄内の構造もそうだが、何よりも今は魂だけの存在──加えて収監される際に首輪
型の封印錠まで嵌められて、そもそも満足に戦うことさえ出来ない。六華だって現世に置い
て来たままだ。万一結社(やつら)の手に渡ってしまえば、あの時の皇国内乱(たたかい)
だって無になりかねない。今は母さんが玉座に就いているから、多少状況は違っている筈だ
と信じたいが……。
(……本当に、俺はもう死んじまったんだな)
 仲間達やマーロウらへの未練よりも、自らが死んだという現実に傾きかけている──弱気
になっているのは、浄化が現在進行形で進んでいるからか? 或いはもっと別の理由か?
 ジークは最早、まともに立っていることさえままならくなっていた。果ても見えず微妙な
起伏だけはある砂漠を往きながら、ふらふらとせめて陰のある場所を探し回る。
「はあっ、はあっ……!」
 正直この常時浄化の陽射しが降り注ぐフロアでは、気休め程度なものなのだろう。
 それでもジークは、ややあって物陰──方々に朽ちて倒れている柱を見つけ、縋り付こう
としたが、そこには既に先客の囚人達がいた。自分と同じ囚人服こそ纏っているものの、そ
の顔はもう誰が誰か判らないくらい白く剥げ落ち、やつれている。
「お……? 新入りか……?」
「へへっ、大丈夫だ。じき、お前も楽になる……」
「……」
 思わず後退りをするジーク。やがて自分も彼らのように変わってゆくのだろうか? 生前
の自分の姿さえ失って、文字通り“再利用”される魂の一つに成り下がってしまうのか?
 怖かった。じわじわと、自分という存在が熱と共に融けてゆく感覚。アルスに両親、かつ
て共に戦った仲間達と、クランの同胞達。レナとステラ。はにかみと少し悪戯っぽい、でも
本当はどちらも純朴だと知っている、二人の対照的な笑顔。
 このままゆっくりと、自分は“仲間達との全て”さえ失ってしまうのか──。
「あら……。誰かと思えば、随分と久しぶりな顔じゃない」
 う、ああああああああッ!! 思わず怯えて叫びそうになった、次の瞬間だった。俯き加
減で頭を抱え出すジークの背後から、ザッザッと複数人の足音が近付いて来たのだ。
 ハッと半ば弾かれるように振り向き、その姿に目を見張る。自分と同じ囚人服──より年
季が入って古く、首輪型の封印錠をしていたにも拘らず、その一団はこちらとは対照的に平
静としていた。堂々としていたのだ。彼ら数名の囚人達を率いる人物が、そうジークの姿を
認め、相変わらずの高慢さで見下ろしていたのである。
「おっ……お前ッ!?」
『──』
 アズサ・スメラギ。
 かつて祖国トナン皇国にて暴政を敷いた、今は亡き先代の女皇だったのだから。


 捕らわれの身となっていた元“結社”の使徒、グノアの公開処刑が発表された、その執行
当日。現場となる顕界(ミドガルド)某所の監獄島には、高倍率の抽選を通過した観覧希望
の人々が殺到していた。加えて刑場の四方には、同じく各種メディアの映像機もずらりレン
ズを構えており、世界中にその一部始終を配信し続けている。
『やっとか』
『いいや。これは……批判の矛先を逸らす為のショーだ!』
 ただ、執行の瞬間を今か今かと待つ人々の中でも、その意見・見方は分かれている。事実
批判する側のそれは間違ってはないのだろう。保守同盟(リストン)討伐に対するリターン
の少なさとレノヴィン達の敗北、以降の“結社”によるテロの活発化で、各地の人々の不満
は高まっていた。それでもやはり、多くは目論見通りの“ガス抜き”が為されるのだろう。
(……さて。これで世論がどう転ぶかの?)
(現状としては、次善のカードと言っても良いと思うが……)
(当の“結社”自身は、既に彼のことは見限っているでしょうしね……)
 ハウゼンにウォルター、ロゼ。四盟主を始めとする統務院各国の王や議員達も、中空のホ
ログラム通信越しに、この執行までの一部始終を観ていた。大方はあまり楽観的ではない、
慎重な姿勢。様子見。刑場中央の台には、封印錠で手足を縛られ、猿轡(さるぐつわ)を押
し込まれたグノアが、複数の刑吏達に両膝を突き座らされている姿が見える。
『──ようやくこの日が来たことを、我々は記憶にしかと刻み込まなくてはならない。知っ
ての通り、今此処にいる者は祖国を裏切り、あまつさえかの“結社”に魂を売った裏切り者
であるっ!』
 ファルケンの座る席の前で、執行前の声明を読み上げる家臣。場はしんと静まり返り、一
見すると皆が一様にその言葉に耳を傾けているように思えた。
 ただ……実際はおそらく半分もしっかりとは聞いていないだろう。どうせ数刻もすれば、
マスコミ各社が声明の全文と執行時の映像を紙面・導信網(マギネット)上に公開するだろ
うとはいえ。
 刑場を囲む鉄柵を前にして、人々は固唾を呑んでその瞬間(とき)を待っていた。それは
映像器越しにこれを観る、世界中の人々も同じであろう。
(……ファルケン王も、随分と強硬策に出たわね。尤も私達も、他に何か打開策があった訳
ではないのだけれど)
 通信越しに映るハウゼンやウォルター、他の王・議員達を横目に観察しつつ、ロゼは自身
の大統領府からこの執行ショーの中継に立ち会う。元々グノアの引き受け元はヴァルドー、
ファルケンの管轄とはいえ、元いち国軍将校の末路がこのようなものになるとは。
 事実保守同盟(リストン)討伐戦の失態と、レノヴィン達の敗走から後、統務院はこれと
言って明確な対抗策を採れていなかった。流動してゆく事態に対し、とにかくその攻勢を鎮
圧するばかりの日々だった。
 しかし弱気な素振りを見せてしまえば、更に“結社”達を増長させてしまう。
 そこで元使徒級──幹部処刑というショーを、たとえ形だけでも消化しておくことは、敵
も同じくアヴリルを含めて失っているのだと、人々にアピールする意図には叶う。牽制のよ
うなものだ。二国クーデター未遂の記憶が風化してしまう前に、何より“結社”には更に上
位の存在がいることを知られぬ内に、広く世の人々に訴え掛けておく必要があった。
『これは、ただ単にヴァルドー王国内のいち謀反として処理されるべき案件ではない。世界
中の国々が、人々が手を取り合い、排除してゆくべき不穏の一端なのである!』
 読み上げは続いている。執行自体が大よそ一瞬の出来事という面もあり、メインイベント
は念入り過ぎるほどに場を温めてから……ということらしい。
 中継(ライブ)を観ていた人々は、まさしく様々な反応を見せていた。
 焚き付けられた義憤(いかり)に身を任せ、ショーと解っていても、これをいち個人とし
て“消費”しようとする者。或いはこの処刑自体の意図に疑問を持つ者さえ混じっていた。
「……何でだろう」
「あん? 何がだ?」
「何って……捕まった“結社”の兵士達だよ。人数的にはグノアより、もっといっぱいいる
筈だろ? 大都(バベルロート)の時だけじゃなく、あれ以降も特務軍とぶつかる度に捕ま
ってる奴らはいるんだろうしさ」
 ふと、そんなことを言い出す傍らの連れ。人ごみの中で彼らは目を瞬き、或いは眉間に皺
を寄せて相手を見遣っていた。
「うーん。そりゃ下っ端何人よりも、幹部一人の方がインパクトがあるからじゃねえの?」
「そうなんだけど……。ならそいつらは一体、何処にいるんだろう──?」

『奴らに──“結社”に屈してはならない! 世界を蝕むこの危機に、皆で一丸となって立
ち向かおうではないか!』
 おおおおッ!! 一方で現場の昂りは、最高潮に達していた。予め練られたスピーチは王
達の連名ともなっており、レノヴィン敗走以降直接の言及のなかった統務院による、ようや
くの正式な“声”として人々に受け取られた。場の空気──鉄柵の向こうに憎き“敵”が膝
を突いているさまは、良くも悪くもその心理に影響を与え、彼らの直情的な攻撃意欲を底上
げする結果となった。
 かくして声明は結ぶ。度重なる“結社”のテロによる数多の犠牲への報い、その弔いの為
にも、今回の処刑は見せしめの一つとなる筈だと。グノア自身もオーキス公を始めとして多
くの命を奪ってきた。到底釣り合いはせずとも、これ以外に彼に償わせる道は無いと。
「……」
 そんな、ざんざめく人々の歓声。もとい個々の“結社”に対する恨み。
 実際、その集合体としての今回の処刑を引いて観ていた者達もいた一方で、当事者である
グノアは只々じっと台の上で項垂れていた。元より封印錠や度重なる暴行で念入りに無力化
され、今更自由になれるとは思えない。なったとしても……結社(そしき)はやはり、自分
をとうに切り捨てた後なのだろう。
 ゆっくりと、静かに目線を上げる。中空のホログラム映像にはファルケンら、自分を見下
ろしている王や議員達の姿があった。睨み付け、或いは事態を引いて観、大小様々な恨みと
目論みが場を包んでいることは解っていた。クーデター失敗後、捕まった時点で処刑される
であろうことはかねてより覚悟していた。昔からあの男は……そういう奴だ。
(……おのれ、おのれ!)
 しかし尚も彼の身を焦がすのは、現在のヒトの世に対する憎しみのみだった。自らが死ぬ
ことよりも、奴らがこれからものうのうと生き残ってゆくことに対し、憎悪と敵愾心は増し
てゆく一方だった。
 私達は、真実を知っている。
 私達こそが、真に正しい。
 “結社”の大命。“閉界(エンドロォル)”を未然に防ぐ為の、ヒトの世の粛清。
 だがそんな届けるべき言葉さえも、奴らは猿轡で封じ込めようとしている。「語る」こと
さえ出来ない。いや、元よりさせない気なのだ。
(おのれ! おのれ! おのれ! おのれッ!!)
 言葉は発せなくとも、内側から底なしに湧き上がる義憤(いかり)。グノアがその衝動に
身悶えし出すさまを、刑吏達は抵抗と捉えた。力を奪う封印術式入りの槍で次々にめった打
ちにし、起き上がらんとするその身体を柄で押さえ込む。
 おおおおおおおおッ!! 鉄柵の向こう、中継先の人々もヒートアップしているようだ。
少なくとも“ガス抜き”の目論見は、悔しいかな功を奏してしまうらしい。
 ……腹立たしかった。世界の真実を隠す王達への怒りと、結局結社(そしき)に捨て駒に
された自分。それらが綯い交ぜになって、グノアは最期の瞬間まで彼らを憎んだ。王達が牛
耳る世界が救われるとは、到底思えなかった。
(おのれ……おのれ、ファルケン!!)
(貴様も、貴様もきっと……地獄に落ちるぞッ!!)
 胸中の叫び、断末魔。
 はたして次の瞬間彼の首は、合図と共に刑吏らの槍によって刎ね飛ばされる。身体を無数
の穂先が刺し貫き、程なくしてただの肉塊と化す。
「──上等だ。おととい来やがれ」
 わぁっと沸く眼下の喝采。
 すると直後、聞こえていた筈もなく、ファルケンはそう人々に聞こえないほどの小さな呟
きと共に身を翻すと、観覧用の玉座を去る。

「翼だ! とにかく、奴らの翼を狙え!」
 時を前後して、神界(アスガルド)。
 ハロルド以下アルス救出班の面々は、突如襲撃を掛けてきた天使(エンゼル)達との交戦
状態に入っていた。おそらく巡回中の所を見つかったのだろう。此処は神格種(ヘヴンズ)
のお膝元。わんさかと居たとしても、何ら不思議ではない。
 兜の中から赤目を光らせ、次々に剣を振り下ろしてくる天使(エンゼル)達。
 仲間達がこれをめいめいに回避、防御しているさまを確認しながら、ハロルドは叫んだ。
手には懐から取り出した究理偽典(セオロノミコン)。神性を帯びる相手に聖魔導はあまり
通らないとは思うが、動きを止めるくらいは出来るだろう。
「分かってるよ! 皆、吸え!」
 らぁッ! そして直後、弟・リカルドが同じく叫んで合図を出しながら、自身の《滞》の
力場を展開する。彼を中心として、鈍く淀んだモノクロの世界が拡がってゆく。
 ……天使(エンゼル)達の弱点は、その翼だ。一見背中に付随したパーツのようにしか見
えないが、その正体は圧縮された超高密度の魔力(マナ)の塊。尋常ならざる戦闘能力を発
揮する力の源である。
 突然リカルドが叩き付けた光球──魔流(ストリーム)を遮断する力場に、あくまで機械
的に動いていた天使(エンゼル)達は軒並み動きが鈍くなった。魔流(ストリーム)から自
身の翼へと動力源を変えようとする、その一瞬の隙を待っていたのだ。
「ふっ──」
「らぁッ!!」
「切断。導力刃(エナジーブレード)!」
 刹那、剣閃ないし拳が、彼ら天使(エンゼル)達の翼をごっそりと引き千切った。霞むよ
うな居合でもって斬り裂いたのはリンファの太刀で、ミアは《盾》を纏わせた両拳で粉砕。
オズは両手を可変して対魔導用の大鉈型武装を繰り出し、翼を始め彼らの得物を握る手や背
面ごとを両断する。
 予め仲間(リカルド)の能力を把握していた側と、そうではなかった側の決定的な差がも
たらした結末だった。一旦体勢を崩させた有利をそのままごり押し、リンファ達は次々に彼
らの翼を破壊──無力化して処理してゆく。
「……ぜえ、ぜえ」
 やがて程なくして、敵の襲撃は落ち着いたようだ。周囲の視認できる限りの個体を仕留め
切り、一行はようやく安堵の息をつく。但し《滞》の能力を使ったリカルドだけは、大きく
肩で息をして疲労の色を見せていたが。
「何とか……なった?」
「そのようだね。一通り敵は片付いたようだ」
「イセルナには悪いが、以前地底武闘会(マスコリーダ)で戦ってくれたお陰だな」
「エエ。予メ知ッテイルダケデモ、随分違イマスカラ」
 天使(エンゼル)達の残骸を足元に、ハロルド達は集まり直す。
 リンファやオズの言う通り、ここまで上手く立ち回れたのも、相手が初見の敵ではなかっ
た部分が大きい。神界(アスガルド)に赴くという意識が頭にあったのも勿論ながら、当時
クロムから彼らの弱点ないし攻略法を教えて貰っていたことが功を奏した格好だ。
「はあ、はあ……。これで、ようやく──」
「む。また来た」
「戦いの気配を嗅ぎ付けてきたのか。それとも相互に連絡を取り合っていたのか……」
「リカルド、もう一度《滞》を!」
「わ、分かってる。けど……ぶっちゃけしんどい。そもそも俺の色装(のうりょく)は、連
発するようなモンじゃねえんだからさあ……」
 しかしそう一息ついていたのも束の間、何処からともなく新手の天使(エンゼル)達が飛
んで来た。差し詰め第二波、三波といった所だろう。ミアらがこれを見上げ、リカルドに次
弾を催促するが、当の本人はまだ魔力(マナ)の酸欠状態から回復し切っていない。
「……詰めが甘いな。やれとは言ったが、温存ぐらいしておくものだろう」
 ちらりと肩越しにそんな弟を手厳しく見遣り、自ら究理偽典(セオロノミコン)を開いて
詠唱しようとするハロルド。剣を拳を、両手の武装を再度可変して構える仲間達。
 ゆらゆらと、上空から降りて来る追加の天使(エンゼル)らを迎え撃とうとし──。
「制御(コントロール)は任せなさいな! とにかく撃ちまくりなさい!」
「弱点は翼だ! とにかく奴らの背後に回れ!」
 ちょうどその時だったのである。直後不意に後方から声がし、赤と銀と無数の魔導弾が飛
んで行った。加えてそこへ雷光を纏った何者かが目にも止まらぬ速さで宙を舞い、その手に
はもう一人の相棒を掴んで運んでいる。
 シンシア達だった。“戦姫態(ヴァルキリーモード)”──自身の持ち霊・カルヴィンと
精霊融合した彼女の姿や、迅雷手甲(ヴォティックス)の雷光射出と《迅》の合わせ技で縦
横無尽に飛び回る、フィデロ及びルイスの姿がそこには在った。
 突如として現れた、見知った顔。アルスの学友達。
 彼女らが放つ魔導弾は天使(エンゼル)達の翼を雨霰と撃ち抜き、或いは高速移動しなが
ら一体一体ルイスをその背後に回らせ、彼の《嵐》の色装で干渉──高濃度の魔力(マナ)
たるそれを暴走・自壊させることで次々に機能停止へと追い込んでゆく。
「あいつら……」
「何故、彼らがここに……?」
「シンシアの親父さんから、一通り話を聞いたんだよ」
「僕達も力になりたくて。ルフグラン号の皆さんには既に話を通してあります。後でそちら
からも連絡を取ってあげてください」
 一旦ストンと着地した、フィデロとルイスが言う。
 何でも現世では既に、ジーク達の敗走が表に出てしまったらしい。どのみち時間の問題と
は思われていたが、出所は“結社”による犯行声明──もとい勝利宣言。これを知ったシン
シアが打金の街(エイルヴァロ)の実家に飛んで帰り、父・セドが全てを白状。じっとして
はいられぬと転送リングで駆けつけて来たそうだ。そこで同船の、魂魄楼からの刺客達との
防衛戦に加勢。これを退けた後、イセルナ達の頼みでこちらの手伝いに来た──直接転送し
て貰って現在に至る。
「ルフグラン号ガ……!?」
「そう……。でも、無事で良かった」
「アルス様が知れば、また気を揉まれるだろうがな……。しかし助かった。礼を言う」
 何の。続いてシンシア及び融合状態のカルヴィンが、空中からこちらへ降りて来る。
 背後では天使(エンゼル)達が、文字通りその翼をもがれて次々に落下していた。力を失
い、或いは自身の暴走で身体が内側から爆ぜ、残骸になろうとしている。
 そんな中だった。まだ辛うじて動けた数体の天使(エンゼル)達が、同胞の残骸を押し退
けて飛び出し、シンシア目掛けて襲い掛かって来たのである。「!?」「危ねえッ!」オズ
やリカルドが叫んだが──当の本人は寧ろ、不敵に笑ってさえいる。
「ゲド、キース!」
 するとどうだろう。次の瞬間、彼女が叫ぶのを合図とするように、そのお付きコンビたる
二人、ゲドとキースが飛び出して行った。彼らは全身にオーラを滾らせると、一人は得物の
大鎚にその大半を込め、もう一人は短剣を握る両手に集中させる。
 キースの眼は、空中の残骸に混じるアクティブな天使(エンゼル)達を、寸分の狂いなく
見極めていた。流石は伯爵家に雇われている密偵といった所か。すると彼は、これを攻撃す
るでもなく、自身のオーラを纏わせた刃で次々に触れていったのである。……まるで線で繋
いだかのように、一括りにさせながら。
「ホーさん!」
「うむ、相分かった!」
 そして続く彼の合図により、ゲドがそのオーラを込めた渾身の一撃をお見舞いする。
 すると不思議なことに、放った攻撃は一体しか捉えていなかったにも拘らず、襲って来た
天使(エンゼル)達は軒並み一斉にダメージを受けて吹き飛ばされたのだ。しかも衝撃は本
来堅固である鎧さえ軽々とぶち抜き、今度こそバラバラに粉砕して。
「……何だあ!?」
「ふむ? もしやと思ったが、彼らもやはり……」
 大丈夫ですか、お嬢? そんな当のゲドとキース達は、次の瞬間にはシンシアらと合流し
ていた。ややつっけんどんに「平気よ。いつまでも子ども扱いしないで」と振り返ってくる
彼女の姿に、ゲドの呵々という豪快な笑いがこだまする。
「あー、その……。ありがとよ。ここに嬢ちゃんがいるってことは、あんたらもいるのも分
かってはいたが」
「もう一度礼を言わなければならないな。それに、貴方達のそれは……」
「ああ。察しの通り、色装だ」
「強化型《貫》の色装。オーラの消費は倍になるが、敵の防御を貫いて攻撃出来る」
「俺の方は、操作型《鎖》の色装。攻撃力は皆無だが、さっきみたいにオーラで複数の相手
を繋ぐことが出来る。誰が一人がダメージを受けたりすれば、他の繋がれている奴も同じよ
うにダメージを受けるっていう寸法さ」
 まだ少し呆気に取られている中で、リカルドやリンファ、仲間達が問う。
 ふいっとこちらを見て、二人は答えてくれた。シンシア達のそれも含めて隠す心算はない
らしい。当のキース本人は何処となく自嘲気味ではあったが、ゲドの能力を合わせればかな
り相性の良い能力ではないか? 消耗の大きさと攻撃範囲、そのどちらをも彼が上手くフォ
ローできるという意味で。
「何時ノ間ニ、貴方達モ……?」
「この二年の間にだよ。こっそり伯爵殿に頼み込んで稽古を付けて貰っていた」
「お嬢が覚醒できたってのに、俺らがその前段階のままじゃあ護衛失格だからな」
 まぁ、死ぬほどしごかれたけど……。そうゲドと共に語るキースの表情は、過去の修行時
を思い出してか、改めて浮かない顔だった。リンファやミア、ハロルド達が、苦笑や一見変
わらぬ眼差しでこれを見つめている。
 どうやら加勢の姿はない。今度こそ安堵して良さそうだった。
 結果的に助かった──先刻よりも増えた天使(エンゼル)達の残骸を放置して、シンシア
らを加えた一行は改めて情報を交換し合った。現在進行形の今の状況を、なるべく早く把握
しようと努める。
「ともあれ、加勢してくれるのなら心強い。エイルフィード伯には申し訳ないが、こちらと
してもなるべく戦力は確保しておきたかったのでね」
「それで? アルスとエトナの行方は分かったの? 貴女なら、精霊伝令で辺りを探らせる
ことも出来る筈だけど……」
「もう、こちらに送られた際にやっていますわ」
「ただハロルドさん達が、こうもあっさり見つかって襲われてたことを踏まえると、二人共
既に同じような目に遭ってる可能性は高いだろうなあ」
「虜囚の身、か。確かに道中、妙な建物が遠くに見えてはいたが……」
 バレてしまうのは時間の問題だったとはいえ、出来ればあまり周囲の者達を巻き込みたく
はなかった。押しかけて来てしまっては、イセルナからの要請では仕方がないと、一応ハロ
ルドは容認したが……内心楽観的な気持は半分も無かろう。ミアの淡々とした問いに、シン
シアらも苦々しい表情を見せた。やはりこの丘陵地帯を抜けた、例の黒い塔状の建造物群が
怪しい。調べてみるべきだろう。
『……む?』
「? カルヴィン、どうし──」
 だがちょうど、次の瞬間だったのである。この遥か遠い建造物群を誰からともなく眺めて
いた面々の中で、ふと精霊カルヴィンやハロルド、次いでシンシアやルイスが眉を顰めて目
を凝らしたのだった。未だ“戦姫態(ヴァルキリーモード)”を解いていなかった彼女が、
この相棒の呟きと共に、リカルドら純粋に魔導師ではない面々よりも逸早く、突如として辺
り一帯を漂い始めた“違和感”について言及する。
「? どうした? 皆して急に口籠っちまって」
「……お前は感じないんだな。まぁ鋭敏でなければ解りようもないか」
「むっ。何だよ? こんな時まで憎まれ口を──」
「ハロルド、一体どうしたんだ……? 顔色が悪いぞ?」
「お嬢?」「エネルギー反応自体ハ、アマリ変ワッテイナイヨウ二感ジラレマスガ……」
「また敵? 何処から?」
「……ルイス。俺にも視えてきた。こいつは、かなり異常だぜ」「ああ……」
「精霊達が怯えているのですわ。急に……騒がしくなっています」

「な、何で……お前が……??」
 目の前に現れた思いもよらぬ人物に、ジークは酷く動揺していた。容赦なく降り注ぎ続け
る浄化の陽に参っていたという面もあったろうが、それ以上にこの“再会”に対する衝撃の
程が勝っていた。
『……』
 囚人達を引き連れたその者の名は、アズサ・スメラギ。かつて簒奪の女皇としてトナン皇
国に君臨していたが、ジーク達との対立に加え“結社”にも利用された結果、最期は壮絶な
死を遂げた女傑──“剣聖”リオの実の姉である。
 だがおかしい。彼女はあの時、確かに死んだ筈……。いや、此処は冥界(アビス)なのだ
から、居てもおかしくはないのか?
 斬華に飲まれた時の後遺症なのだろうか。彼女の首元から右半身にかけての大部分は、紫
色のあざらしき痕が広がっていた。囚人服で胴体部分は隠してはいても、顔を合わせた正面
からはどうしようもなくこれらが見て取れる。
 尤も、高飛車で負けん気の強い性格は死んでも健在のようだ。
 或いは相手が怨敵(ジーク)だからか。戸惑うこちらの姿と変容ぶりを、まるで加減する
ことなく見下ろしている。
「……遂に、あんたも死んだようね。どう? いい人生だったかしら?」
 ざまみろ。さもそう言わんとするかのように、対面しての第一声は、そんなかつての敵意
を隠そうともしないものだった。即答も出来ぬジークを、ふんと嘲笑って見下ろしている。
「ねえ、どんな気持ち? あんた達とは皇国(トナン)で散々争った仲だけど……。でもま
さか、シノより早死にするとはねえ。それとも何? あの子達も一緒に来てたりするの?」
「……」
 だが妙だ。ややあってジークは思った。どうにも彼女が語り掛けてくる言葉──嫌味には
違和感がある。何というか、話が噛み合わない。内容自体が古い。
 もしかしてなくても……外の情報は入って来ていない?
「母さん達は生きてるよ。多分、死んだのは俺だけだ。今頃きっと、すげえ泣かせちまって
るとは思うが」
 だからこそ、ジークは確かめる為にも彼女らに、これまでの経緯を一通り話して聞かせる
ことにした。
 内乱後の祖国トナンで母が新しい女皇に就いたこと、大都(バベルロート)での戦いで父
を狂化霊装(ヴェルセーク)の呪縛から救い出し、今は夫婦揃って国皇をやっていること。
二年に及ぶ修行や、同国の共和制への移行、聖浄器回収の旅や“結社”との戦いの末に、自
分達は敗れたこと……。
「二年……? そう。随分と長い時間だと思っていたのに、まだその程度なのね……」
 シノが皇位に就いたことは予想していたのか、あまり驚いた様子はなかった。
 だが一方で、ジークが語る中で実際に出たその歳月の単位に、アズサは一瞬目を見開いた
ように見えた。尤もそんな揺らぎもすぐ表情(かお)から消え失せ、次の瞬間には淡々と、
一人勝手に理解し始める。
 どうやらこの煉獄内ないし冥界(アビス)では、現世との時間感覚に大きなズレがあるら
しい。少なくとも、当人があの時死に際に放った『冥界(アビス)で観ててあげる』という
言葉は、実際には不可能だったようだ。
「それにしても……。この第四層に来たってことは、あんたも私と同じぐらいの“罪人”っ
て訳ね。一体、どれだけやらかしてきたのかしら? 大抵の人間は、一層から二層止まりだ
っていうのに」
「……? そうなのか?」
 収監される前、一応ざっと説明はされていた筈なのだが、如何せんショックの方が大き過
ぎてあまり頭に入っていなかった。頭に疑問符を浮かべ、ジークは改めてアズサから取れる
だけの情報は取っておこうとする。
 曰く、この煉獄は全六層構造。地上に近いほど階層数は小さくなる。裁定を受けた魂達は
此処に放り込まれ、長い時間をかけて浄化プロセスを受ける。全ては魂達を再利用──世界
の魔流(ストリーム)に還し、生命の再生産機能を維持してゆく為。
「……じゃあやっぱり、此処に居たって俺は戻れやしないのか。こんな所にまで、皆は助け
に来てくれてたってのに……」
 しょんぼり。確たる証拠は無いが、ハナ・ヨウと魂魄楼の見張台から外を見た時、遠くで
何者かが死神衆の討伐隊と戦っているらしいことは判った。
 あれは、仲間達だったのだろうか?
 だとすれば、自分はそんな皆の必死の思いにさえも応えてやれなかった。手を伸ばす前に
再び絡め取られてしまった──。
「情けない。私を追い詰めたあんたが、この程度でへこたれるなんて」
 しかし、直後弱気になってゆくジークを叱責したのは、他らぬアズサだったのである。
 えっ……? 思わず当のジークが弾かれたように顔を上げる。立っていたのは、そう一層
見下すように静かに憤っているアズサと、その後ろで顔色一つ変えずに待機しているように
見える囚人達。
 意外な人物からの意外な一言に、ジークはもろに虚を衝かれていた。戸惑う弱り目の彼に
アズサは、ギリッと自身の感情をなるべく抑えるように、唇を噛み締めてから続ける。
「その体たらくは何? 生前の私に、泥を塗る気? 許さないわよ。ようやく地獄で会えた
と思ったら、こんな腑抜けなんかに成り下がって……」
「……」
「確かに、此処は魂達の行き止まり。だけど“終わり”じゃない。いえ、終わりなんて無い
のよ。ただ私達の云う死とは、次の生(はじまり)の為に準備時間に過ぎない」
 即ち転生。アズサもこの冥界(アビス)ないし煉獄に収監されてからというもの、自分達
生きとし生けるものの命の循環(サイクル)について知ったらしい。
 曰く、故に彼女は此処に放り込まれてからも、その手腕でもって他の囚人達を部下として
統率。自らの派閥を形成してきたらしい。全ては脱獄の為──いつか此処から出て蘇り、も
う一度やり直す。皇に返り咲く為に。
「まだ私は、諦めてはいないわ。あんたは……どうなの?」
 だからこそ、ジークはようやくハッと我に返っていた。俺は……。迷いつつも、自身の中
に“未練”があることを理解した。積極的に前向きに、受け容れていた。
「俺は……皆を助けたい。やるべきことは、まだ残ってる!」
 全身に力が戻ってくるような心地がした。ジークは叫び、パァンと両頬を叩いて、自らに
活を入れる。
「それでいいのよ」
 一瞬だけ、アズサが口元で笑ったような気がした。だが見返そうにも次の瞬間には、部下
達を連れて踵を返し始める。「ついて来なさい」そう肩越しに一言を残す彼女に、ジークも
半ば怪訝のまま、後を追って歩き始める。
 日照る砂漠を横断し、やがて辿り着いたのは一軒の半壊した家屋だった。……いや、よく
見渡してみれば辺りにも幾つか、砂に埋もれた残骸がちらほらと在る。どうやら元々この辺
り一帯は倉庫群か何かだったようだ。先ほどよりもずっと日陰が多い。
「此処よ。収監されて以降、私達がこっそりと集めてきた物資が隠してあるわ」
 そこは彼女らの──アズサ一派の隠れ家だった。階層中央の監視塔からも、ちょうど物陰
になって直接は見えないし、何より石畳を除けた床下には、彼女らが蓄えてきたという武器
や道具が所狭しと保管されている。
「こいつは……」
「いざという時の、決起への備えよ。ちょうどいいわ。あんたも手伝いなさい。まともに武
人をやっていた経験がある者は、私達としても貴重な戦力だもの」
 ニッコリ。気付けばそう、ジークもアズサの言う頭数に含まれていて。部下の囚人達もめ
いめいにこの隠し武器を取り出しては、不敵な笑みを零していた。
 決起──彼女が放ったその言葉に、ジークは片膝を突いて屈んだまま、ゆっくりと目を丸
くしてから顔を上げる。


(そうか……。彼は、僕を引き入れる為に……)
 新たな箱庭(フラスコ)を硝子越しに、アルスとエトナは動揺で固まっていた。同じ室内
には神格種(ヘヴンズ)の王・ゼクセムと、彼に従う他の神々が相対している。
「……何故、僕なんですか?」
 しかしアルスは思っていた内容はまるで逆の、尚も状況を理解していないといった体を装
っていた。ゼクセムらに向かって訊ねる。その実は返答を延ばすことで、少しでも時間稼ぎ
をしようという目論見だ。
「半分は偶然だよ。君が我々の領域に迷い込んだと聞いた時、これは良い機会だと思った」
「君は、世界の真実に近付いた“逸材”だからな」
「尤もそれを可能にしたのは、リュノーの手記ではあろうが……」
「かつてのアイリスと同様、その優れた頭脳と時代を切り拓いて来たこれまでの実績。ヒト
の子らの中でも抜きん出た素質を持つとの認識は、我々の中でも異論はない」
「……」
 なるほど。要は“不都合な真実”を知った自分達を、手元に飼い殺しておこうといった算
段か。期せずして懐に飛び込んで来たのを幸いに、このまま野に放つのではなく、直接支配
下に置くことを選んだ訳だ。
「君達だけではない。もし望むなら、君の仲間達──クラン・ブルートバード全員も同様に
迎えよう。その為には先ず、君に良い返事を貰わなければならないが……」
 続けて“妥協”にも聞こえる提案をしてくるゼクセム。だがこの間に、すっかり頭の中を
クールダウンしていたアルスは、それが実の所“脅迫”だと理解していた。彼らは元より話
し合いをしようなどとは思っておらず、場合によってはクランの仲間達を人質に要求を呑ま
せようと──封じ込めを強行しようとしていたのである。
「ゼクセム様。もう一つお伺いします。あの箱庭(フラスコ)はもしかして……新しい移住
先なのですか?」
「ああ、そうだ。尤もまだ準備が足りないがね。もっと多くの魂(エネルギー)を調達した
上で、出力を安定させなければならない。何、じきに必要なものは全て揃う」
 ただ一方のゼクセム達も、アルスの警戒の眼に全く気付いていない訳ではない筈だ。こち
らからの問い、確認に悠然として答えているが、明確な拒否一つですぐにでも本性を剥き出
しにするだろう。
「……知っての通り、この世界はいずれ限界を越えて崩壊するだろう。しかしその主な元凶
たる“大盟約(コード)”を手放せさせたとしても、ヒトの世の文明は衰退を免れん。それ
は我々としても本意ではないのだよ。折角我々が創り、彼らと共に育ててきたこの世界の針
を戻すなど……科学者の一人として出来る訳がないのだから」
 だからこそゼクセムらは、この“移り住んだ”世界が崩壊する前に新しく創り直した世界
に移れば、今ある文明もほぼ無傷で持ち込めると語った。
 さあ! どうやら時間稼ぎはここまでのようだった。一しきり話し終えたゼクセムは、改
めてアルスとエトナに返答を求める。
 最初じっと、アルスはとても渋い表情(かお)で押し黙っていた。傍らのエトナが戸惑い
とある種の悲しみを湛え、縋るようにこちらを見遣ってくる様子にも、彼は視線を合わせる
余裕すらなくギリギリまで言葉を選ぶ。静かに湧き上がってくる感情達を、何とか言語化し
ようと試みる。
「……お断りします」
「何?」
「自分だけ逃げるっていうのなら……僕は行きません。何よりあの箱庭(フラスコ)に流さ
れ続けている大量の魔流(ストリーム)は、この世界の命そのものだ。知識として以前から
知ってはいたけど、此処や“虚穴(うろあな)”を実際に見て確信しました。貴方達は……
心が痛まないんですか!? あれだけ悲鳴を上げている皆を、全部自分達の都合の為に利用
して!! 人の道を外れている! 自分達が生き延びる為だけに、この世界の人々を犠牲に
するっていうですか!? 僕達は結局、貴方達の延命の──創世の為の人柱に過ぎないって
いうんですか!? こんなの、絶対に間違ってる!!」
 クワッと、普段温厚なアルスさえもが義憤(いか)り狂う。
 確かに自分達は“神”の被造物なのかもしれない。しかしその“神”とて万能でないこと
は、当の本人らが認めている所だ。創世、避難所を作る為に必要なエネルギー、犠牲。少な
くとも自分達は、そんなことの為に生まれてきたんじゃない……。
「たとえ相手が“神”でも、元は僕らと同じようにヒトだった。より上位の、もっと外側の
誰かに創られた存在だった」
「貴方達は結局、自分の身が可愛いだけだ。やっている事は、貴方達を創った誰かと何ら変
わっちゃない! 何も進歩しちゃいない!」
 アルス! 快哉を叫ぶかのように、ぱあっと相棒(エトナ)の表情が明るんだ。彼の周り
を飛び回り、応援よろしくガッツポーズをする。
「……残念だよ。だが仕方ないか。我々の正体を知れば、権威も何もなかろう……」
 しかし対するゼクセム達は、はたしてその本性を露わにしたのである。アルスが自分達の
提案(めいれい)に異を唱えるや否や、スッとそれまでの友好的を努めていた表情・雰囲気
は消え去り、彼の合図で次々に部下の神格種(ヘヴンズ)や召喚された天使(エンゼル)ら
が得物を抜き、銃口或いは剣先を一斉に二人へと向けて包囲する。
「ひうっ!?」
「……やっぱりか。元から、迷い込んで来た僕達を帰すつもりなんて無かったんですね」
 ふん。この老王・ゼクセムは静かに鼻で哂い、今度は応えることさえしなかった。始めか
ら分かっていたろうに……。あくまで神々(かれら)はこの世界の人間を、都合の良いエネ
ルギー源としか捉えていなかった。
 ゆっくりと引き金に力が込められる、神格種(ヘヴンズ)達の電子銃。
 兜の下から赤目を光らせ、構えた剣と盾を大きく振り被らんとする天使(エンゼル)達。
 外でも殆ど歯が立たなかったのだ。絶体絶命のピンチの中、アルスとエトナはぎゅっと身
を硬くして目を瞑り──。
「ぬっ!?」
 ちょうど、そんな時だったのである。ゼクセム達がこの不都合な異分子らを始末しようと
した寸前、室内が大きく揺れた。……いや、此処だけではなく神都(パルティノー)全体が
激しい揺れに襲われたのだ。
 最初の激しい突き上げ。されどその後も、大小様々な揺れが断続的に起こり、辺りをにわ
かに混乱させ始める。
「な、何……??」
「おい、どうした! 何があった!?」
「揺れ……? 此処は地下最深階だぞ!」
「ま、まさか……。また敵襲か!?」
「制御フロアの者達に連絡を! 至急、状況を把握せよ!」

 あいつが死んだ。あたし達を置いて行ったまま、一人魔流(そら)に呑まれていった。
 今私達を所持しているのは、その弟君だけど……彼もまた“嵐”に呑まれた後、捕まって
しまった。何処かへ行ってしまった。
 寂しいの?
 全く、だから情に絆されるなとあれほど……。
 まぁいいじゃない。お陰で私達は、ちゃんと彼らに認識された。リュノー・マルセイユの
手記をひも解いたことで、いずれ他の皆についても、今の時代の人間達が知ることになるで
しょうし。
 ……正直、認めたくはないがな。果てしない時の中の一刹那でしかなかったとはいえ、あ
の者は確かに我々の所有者だった。少なくともそれは事実だ。尤も本人が先の戦いで死んだ
今、また皇国(くに)に戻る可能性もあるが。
 彼は……大丈夫でしょうか? お仲間さん達は、冥界(アビス)へ押しかけてまで彼の魂
を取り戻そうとしていましたけど。
 少なくとも、あと半月ほどで手遅れになるだろうね。あくまで魂魄楼における一般論にな
るけれど。まぁ彼も思い知っている頃じゃないか? 僕達と、ある意味同じ姿になっている
訳なんだから。
 柳ぃ~。あんま言ってやるなよ~。
 力を恐れ、力を求め、そして力を──私達と向き合い続けようとしてくれた人物。こうも
あっさりと死んでしまうというのは、確かに惜しくはありますねえ。儚いものです。
 ……いや。私は柳に賛成だな。結局あやつも、私達の魂を閉じ込め、幾度となく手前勝手
な都合で利用してきた者達と何ら変わらない。少しは、心が折れるくらいに痛い目に遭って
みればいい。
 藤さん……。
 紅、蒼。お前達もだ。努々(ゆめゆめ)我々の置かれた立場を──姿を忘れるな。
 それは……。
 うーん、でもよお……。
 まぁまぁ。少なくとも使い手がいない限り、私達は動けも何も出来ませんもの。また元に
戻るだけですわ。今の私達の長は、彼です。私はその意思を尊重しますわ。
 ……どうでもいい。眠い。
 その割には、白も地底武闘会(マスコリーダ)とかじゃあ、随分張り切ってたように思う
んけど?
 ……うるさい。
 まぁまぁ。蒼ちゃんも白ちゃんも落ち着いて。
 確かに、まぁ変わった奴ではあったかな? 僕達の正体を知っても尚、あんなことを言う
ようなお人好しなんだから。

『俺はさ……。出来ればお前達のことも、救いたいんだ』
『お前達だって、このままずっと剣の中に閉じ込められたままじゃあ嫌だろ?』

 ああ。全く、リオ・スメラギも余計な入れ知恵をしたものだ。
 そもそも“対話”っていう言い方が気に食わない。それって結局、ボク達を下に見ている
ってことだよね?
 憐れみを曲解すると……そうなるのかもねえ。
 無理もなかろう。始めは我々が聖浄器であること自体知らず、振るっていたのだからな。
自らの得物が我らを──人の魂を核として造られた物であると知れば、動揺しない人間の方
が珍しかろう。
 ですけど……。私達のことを知ってから、彼は随分と悩んでいました。“結社”達が狙っ
ていることもあって、捨てるに捨てられず、加えて奴らが目指す“閉界(エンドロォル)”
阻止の要であることも知ってしまえば……。
 ……正義なんてそんなもの。自分の方が正しいと思い込んでる奴が、高慢……。
 だけど、あいつも言ってたじゃんか。『ただ戦って勝つだけじゃ終わらない』って。弟と
も何回も話してたろ? 奴らの暴走を止めて且つ、囚われたあたし達を魔流(ストリーム)
の下に解き放つことが出来ればって……。
 綺麗事。言うだけなら誰でも出来る。
 然様。八千年前、それらを為せなかったからこそ、当時の魔導師どもは我々多くの人間を
生贄とした。自らの闘争に勝利する為に、当座敵と密約を交わす形でな。
 ……。
 で、でも! 彼は私達を道具としてではなく、一人の人間として見てくれました。その点
だけでも、今までの使い手達よりはずっと誠実だと思います!
 くどいぞ。それは単なる同情だ。体よく利用されてきた事には、変わりないではないか。
 おっちゃん……。
 うるさいな。どうせボク達に……帰る身体(ばしょ)なんて無い。
 ……。
 そうなのかも、しれないわね。たとえ全てが終わって、解放されたとしても……。
 ああ。それよか、あの時“虚穴(うろあな)”で会った、他の魂(なかま)達の方がイン
パクト凄かったしな……。それぞれの個性っつーか、自我と呼べるモンは殆ど視えなかった
しさ? 只々今生きてる人間達を恨んで、憎んで……。ありゃあ“嵐”と呼んでも差し支え
ないよ。今でもガンガン、あいつらの叫び声が耳に残ってやがる……。
 ……時の為政者達の都合によって武具の核にされ、体よく使い回され続けた挙句、最後は
魔流(ストリーム)に還る、か。はは。まるで無駄じゃないか……僕達の命は……!
 柳さん……。
 結局私達は、使い捨てられて「私」ではなくなってしまうのかもしれないわね。
 ああ。だったらいっそ、このままあいつの剣でいた方が──。
『なら、せめて一矢報いてやったらどうだい?』
 ──ッ!? 何奴?
 嘘でしょ。六華の中に眠ってる私達に、直接話し掛けられる奴なんて……。
 誰?
 ただの人間、じゃあねえな。お前、もしかして……?
『ご名答。だが俺の事はどうでもいい。とにかく聞いてくれ』
『今他の神格種(ヘヴンズ)達が、再び魂達(きみら)を──魔流(ストリーム)を、手前
勝手に利用しようとしている。新しい箱庭(せかい)を創り、そこへ君らを維持管理の為の
エネルギー源として注ぎ込もうとしている』
 何、だと……?
『嘘だと思うんなら、外に意識を集中してみな。俺も手伝ってやる。……聞こえるだろう?
魂(なかま)達の、断末魔の叫びが』
 っ──!? まっ、また、あの時みたいな……!
 泣いてる……。“嵐”の時の比じゃない。もっともっと、狭い中を無理やり通されている
ような……?
 あんたは、誰? どうしてボク達のことを知ってるの? ボク達にどうしろっていうの?
『俺の事はどうでもいいと言っただろう? 少なくとも、君達の味方だ。それは約束する。
奴らは今、此処ではない新しい箱庭(せかい)を創り、再び“閉界(エンドロォル)”から
逃れようとしている。その為にそいつを発達させ、より多くのエネルギーを注ぎ込もうとし
ている。だが現状、まだもう少し足りない』
『内側・外側の者達に、また踏み台にされたいか? 違うだろう? 今ならまだ間に合う。
君達の強い魂で、繋がれている魔流(ストリーム)内の彼らに呼び掛けて欲しいんだ。奴ら
の創ろうとしている箱庭(フラスコ)を──破壊する』
 ……。どうします、藤さん?
 私に一任してくれるのか? しかしいきなり言われてもな。先ず本当に貴公が、信用に足
る人物なのかどうか……。
 少なくとも、例の外側の連中とは敵対関係っぽいけどねえ。
 でも一体、それで貴方に何の利益が?
 さっき蒼ちゃんも嗅いでたけど、貴方も彼らとは“同じ”なんじゃなくて?
 ……ボクは、やる。
 白?
 白ちゃん?
 ボクはやるよ。一矢報いる、その響きはいい。またボク達を、好き勝手に弄り回す奴らが
いるって判ってて、大人しく従う気もないし。
 それでいいのか……??
 はは。まぁ、いいんじゃね? こいつが何でそんなこと望んでるかは知らねえが、もし奴
らが“移住”を終えちまったら、この世界は用済みになっちまうんだろう?
 そうね。あの兄弟(こ)達が生きるこの世界を、見捨てようというのなら──。

「一体、何があったんだ……?」
 突如として、弾かれたように駆け出して行った神格種(ヘヴンズ)達。
 どうやら絶体絶命のピンチからは逃れたようだ。呼び出された天使(エンゼル)らも、直
前で構えを戻して指示待ち状態になり、二人を囲んだまま突っ立っている。
「アルス、大丈夫!?」
 相棒(エトナ)が酷く心配そうに、アルスの前に回り込んで来た。頭や肩をポンポンと確
かめるように叩いてから、突然ひっくり返った周りの状況を見渡している。
「うん……僕は何とも。それより──」
「た、大変です!」
「魔流(ストリーム)が……魂達(エネルギー)が暴走しています!」
「何っ?!」
 そして異変の正体が明らかになったのは、そのすぐ後の事だった。
 自分も瞬間、怖がっていたろうに……。アルスがそんな彼女の振る舞いに、苦笑しつつ応
えていた中、室内の制御装置を検めていた神格種(ヘヴンズ)達の一部──技術者らが、血
相を変えてそうゼクセムに向かって叫んだ。室内はおろか神都(パルティノー)全域に警報
が鳴り響き、赤色に照らされた面々が突然の事態に慌てふためき始める。
 オォォォォォォォ……ッ!! ゼクセムや彼の配下達、アルスとエトナが転がるようにし
て壁硝子に張り付き、或いはハッと視線を遣ってその向こう側を見る。
 暴走していた。未定義空間の闇の上、新しく創られていた箱庭(せかい)へと繋げられて
いた無数の配管──そこを流れる魔流(ストリーム)が、異常なまでに活性化して膨張。周
囲の空間ごと軋ませ悲鳴を上げていたのだった。
『!?』
「天使(エンゼル)達が!」
 加えてその影響なのか、室内外に居た天使(エンゼル)達が突如として軒並みダウン──
力の源である形而上の翼がひとりでにグチャグチャに捩じ切れ、瞬く間に機能停止に追い込
まれてゆく。
「これは……魂達の暴走? いや、それにしては余りに不自然……」
 はたして、ゼクセムら神格種(ヘヴンズ)が企てていた二度目の創世は、その構築途中に
おける自壊によって泡と消え失せた。魂達のエネルギーの膨張は、やがて装置自体が持つ強
度の限界を越え、内側から粉々に砕け散ったのである。
「ああああッ?! 私の、私の箱庭(せかい)がーッ!!」
 壁硝子の前で、ゼクセムが凄まじいまでの形相で叫んでいる。激しいショックで、絶望に
突き落とされていた。配下の神格種(ヘヴンズ)達も、突然の出来事に只々呆然と立ち尽く
すしかない。
「……どうなってんの?」
「分からない。急に魔流(ストリーム)がおかしくなったみたいだけど……」
 だがアルスもエトナも、そんな彼らを可哀想だとは思わなかった。何処かで自業自得だと
いう印象が、先ずあったのかもしれない。状況からして少し離れた位置に──機能停止して
残骸となった天使(エンゼル)達に囲まれて、二人はそのまま各々にへたり込む、ゼクセム
らの姿をぼんやりと眺めていた。
「叛逆だよ。魂達のね」
 そうして次の瞬間、不意に響いて来た声。
 二人がハッと我に返り、振り向こうとすると、そこには既に新手の軍勢らしき一団が部屋
の出入口を封鎖。この室内へと侵入を始めている所だった。
 トーガ風の衣装と上衣、鎧姿の尖兵。
 一見すればゼクセムらと同じく、神格種(ヘヴンズ)達のようだったが……直後彼らが取
った行動は、明らかにこれと敵対するものだった。当のゼクセムを始めとした、面々の初動
の遅さを衝き、圧倒的に多い数の力でもって内部を制圧してゆく。
 反乱? アルスとエトナは思わず身構えたが、何故か自分達には攻撃の矛先は向けられな
かった。あくまでこの反ゼクセム派と思しき集団──淡い金髪の青年神をリーダー格とする
面々は、手にした電子銃の銃口を同胞らに向け、本来自分達の“王”であった彼をぐるりと
包囲して見下ろす。
「終わりです。もういい加減止めましょうよ。所長(チーフ)」

 天上の神域、世界の一角で起こった魔流(ストリーム)らの激震は、遠く冥界(アビス)
の煉獄内にも伝わっていた。中央の監視塔に詰めていた獄吏の死神達も、突然の事態に大わ
らわになって動き回る。
「な、何だ!? 何が起きた!?」
「上か!? 他の階層にも連絡を! 何かトラブルがあったに違いない!」
 それは文字通り、上へ下への大騒ぎで。
 普段外側からはよく窺えない、監視塔内の混乱も、浄化の陽射しを避けて隠れ家に潜んで
いたジーク達には自ずと気付かれることになった。物陰から怪訝に覗き込み、眩しい頭上を
手で庇を作りながら仰ぐ。
「何だか……騒がしくなったな」
「さっきのどデカい揺れの所為ですかね? 今までこんな事、俺達も経験ないですし……」
「そうね。確かによく分からないけど……これは絶好のチャンスと見ていいでしょうね」
 だがそんな状況下で、唯一アズサはにやりとほくそ笑んでいた。ジャキンと、これまでた
んまりと溜め込んだ物質の中から、護身用の折り畳みナイフを一本手に取る。

「お、おい……。何だったんだ? さっきの揺れ?」
「おっ、俺が知るかよ。本部から何かしら、連絡があるだろ……?」
 同じく魂魄楼外壁。見張りを行っていた死神達が、今し方突き上げるように襲ってきた揺
れに狼狽えている。……いや、上から落ちてきたのか? よく分からない。仲間同士の混乱
もそうだが、眼下壁内の楼民達もまた、徐々に騒ぎ始めている。
「と、とにかく、一旦隊長に指示を仰いで──」
「うん? どうした? さっきから、そんなあさっての方向ばかり睨んで」
「……いやな? 何か向こうから、こっちに近付いて来てるような気がして……」
 えっ。だがそんな時である。死神達の内の一人が、不意にそう同僚からの問いに答えて目
を窄(すぼ)め、じっと遠く楼外を見つめていたのだ。他の死神達が一様に妙な胸騒ぎを覚
えて、これに倣う。確かにズズズッと、何か大きな塊が近付いて来る。
「あれって……」
「で、でっかい船ぇぇぇーッ!?」
 ルフグラン号だった。防衛戦後、イセルナ以下ジーク救出班と合流したクラン・ブルート
バードの空飛ぶ本拠地が、丸ごと魂魄楼の外壁目掛けて突っ込んで来ていたのである。
「──おいおい。本当に大丈夫だろうな……?」
「ええ、この位置です。装置を破壊して且つ、西の煉獄へ向かうには、此処が一番地理的に
最短ルートですから」
 船内にはイセルナやダン、シフォンにグノーシュ。レジーナら技師組や、アスレイ以下留
守組の団員達、及びヒムロ以下三人の元討伐隊の隊長格。

『楼内は普段から、強力な結界で守られています。但し闇雲に破壊する事はお勧めしない。
結界には三存保護の為のものもある。ジーク・レノヴィンの居場所が分からないまま、それ
まで破壊してしまえば、楼民もろとも彼の記憶(せいしん)は蒸発してしまうでしょう』

 突入前、ヒムロはそうイセルナ達に様々なレクチャーをした。
 破壊するのはあくまで、侵入を阻む防御結界であること。それらの維持装置は、各外壁内
の設備室に置かれていること。直接船ごとぶつかったとしても、的確に破壊できる保証はな
いこと。
「……視えますか、ヒムロさん?」
「ええ。捉えました。まさかこんな魔導具を持ち合わせているとは……」
 そこで作戦の第一段階は、リュカの天瞳珠(ゼクスフィア)で該当箇所の外壁を透視し、
加えて発動中の使用者が触れた相手──土地鑑のあるヒムロにもこの視覚映像(ビジョン)
を共有できる特性を活用。突入口となる、最初の維持装置破壊を確かなものにすることであ
った。
「行きますよ! 俺の合図で一斉に飛び込んでください!」
 おそらく自分達の存在は、既に死神衆──その頂点に君臨する総長にして“結社”の大幹
部が一人、“死長(しちょう)”アララギに気取られている。
 ならばいっそ、強行突破と試みようという結論に落ち着いたのだ。どのみちジーク救出ま
でに許された時間はそう長くない。敵の裁量次第でそのタイムリミットさえ平時より減らさ
れてしまえる以上、最早慎重も何もなかろうというのが大方の意見だった。
 最初の外壁南東──右下の維持装置をリュカの透視を受けて捉え、ヒムロは自身の《凍》
の能力で装置を停止。周辺の防御結界が消えた所を一気に突入させる。
「うおおおおおおッ!? な、何だあ!?」
「けっ、結界が消えた……! どうなってんだ!?」
「喧しい! 騒いでる暇があったら戦え! あと他の隊にも連絡しろ!」
 相手からすれば、突然ルフグラン号の巨体が突っ込んで来ただけでなく、頼みの綱だった
防御結界も示し合わせたように消えたのだ。動揺もするだろう。
 何より冥界(アビス)にどっぷりと、日々の拠点を構えている北棟の死神達にとっては、
飛行艇のような機巧技術の大型船さえ見慣れていない筈だ。基本彼らにとって「舟」とは、
東棟の面々が現世の魂達を回収してくる際に用いる「小振りな乗り物」でしかない。
(……すまない。だがこれも、俺達死神の“大義”を確かめる為……!)

『“死長”アララギ……??』
『アララギ総長が、まさか“結社”の手先だというのか!?』
『いきなり信じろとは言わない。だが私は、かつて“結社”に属する人間だった』
 知っているとは思うが──。時は養生から起き上がってきた、クロムが彼らの頂点に立つ
人物を、その証言から特定した瞬間にまで遡る。
 ヒムロやアマギ、シズルといった隊長格が、それぞれに信じられないといった様子で立ち
尽くしていた。クロム直筆の似顔絵を受け取ったまま、何度も何度も見返しては戸惑う。
『どういうことだ……? アララギ総長は俺達を、裏切っていたのか……?』
 半ば縋るように問うてくる彼に、イセルナ以下団員側もすぐには返答を出せない。彼女ら
もまた、突如として告げられた事実に少なからず驚いていたからだ。
『お、おい、クロム。その話、本当なんだろうな?』
『ああ。“盟主”以下最高幹部とは一応、面識はある。全員が揃うことはほぼ無かったが』
『よりにもよって……。じゃあ僕達は、敵の縄張りにのこのこと足を踏み入れていた訳か』
『ま……拙いんじゃないですか? それだとジークさんの魂は、もしかすると……』
『ああ。既に何らかの妨害が行われている可能性が高い。実際イセルナ達への討伐部隊派遣
がここまで早かった。少なくとも、こちらの動きは察知されているだろう。ただ表立って正
体を現さない限り、もう一人の総長──閻魔衆の出方次第で情勢は流動するだろうが』
『……』
 ぐらぐらと、ヒムロ達の意識が足元から揺らぐ。
 おそらくは彼の、元“使徒”級の証言は間違ってはいないのだろう。今し方目の前で描か
れた似顔絵がその証拠だ。事前にこちら側の陣容を調べてでもいない限り、総長らの人相は
知り得ない。もしそうならば、当の折に何かしら事件になっていた筈だ。
『そんな訳……』
『ああ。あの方は、もう何千年も冥界(アビス)を守ってきた人物だ。死神としての経験は
勿論、その戦闘能力の高さもな』
『……だからこそだ。それほど長く組織の頂点に君臨してきたのなら、息の掛かった手下を
使って工作することぐらい容易いだろう?』
『っ!?』
『それは……。そうかもしれんが……』
 出来れば嘘であって欲しい。
 だがそんなこちらの必死の思いも、対する彼には響かなかったようだ。寧ろアマギさんの
発言さえ逆手に取り、より一層ぐうの音も出ない反論を浴びせてくる。侵入者達──現世の
冒険者クランの面々といったか──も、周りを囲んだまま渋い表情(かお)をして押し黙っ
ている。
『……っ』
 ギュッと唇を噛み締め、ヒムロ達三隊長は誰からともなく、隣で座り込むヒサメらもう片
方の三隊長──自分達が当初知らされていなかった“別働”の討伐隊を見遣る。
 こちらとは違い、完全に捕らわれの身となっている所為もあろうが……彼女達は一貫して
口を噤み、頑として語らなかった。易々と裏切るものかという決意、忠誠心にも見えるが、
実際はそんな沈黙こそ雄弁なる証拠であると思う。
(……本当に総長は、あの“結社”の……??)
 ずっと以前から、自分達を裏切ってきたというのか? これまで当たり前のように信じて
きた、死神衆の大義とは?
 ヒムロはアマギ、シズルと共に互いの顔を見合わせ、小さくも心苦しく頷いた。
 こうなったら、全ては直接本人に問い質すしかない──。

「どっ……せいッ!!」
「あまり長居はしちゃ駄目よ! 手分けして装置の破壊を!」
「え、えっと……。要らない戦いは避けてくださーい! 逃げる相手は追わないで、目的の
方に集中を!」
「今更、だとは思うけどねえ」
「あはは……。仕方ないじゃないですか」
「無闇に敵を増やさず済むならば、それに越した事はない。僕達が戦っているのは、楼内の
人々じゃないからな」
 停止した防御結界の穴を衝き、イセルナ以下クラン・ブルートバードの面々は船から外壁
通路へと飛び降りていた。ダンの《炎》を纏うオーラや精霊融合したイセルナの剣閃、レナ
のおっかなびっくりの呼び掛けに、ステラやマルタが苦笑している。ふっ──! そんな彼
女らの言葉にサフレは大真面目に応え、一繋ぎの槍(パイルドランス)の射ち出す刺突で、
向かって来た死神達数人をまとめて吹き飛ばす。
「ふ、船が突っ込んで来たー! デカい金属の船だー!」
「ま……本気(マジ)でやりやがった。頭おかしいぞ、こいつら」
「ってことはまさか。討伐隊を切り抜けて来たっていうのか……??」
「落ち着け! 相手の数は知れてる、退路だって無いようなモンだ! 此処で俺達が抑えれ
ば、じきに援軍が来る。楼内には絶対に入れさせるな!」
 おおおッ!! されど突然の襲撃にも、居合わせた死神達は必死の抵抗を見せた。予め相
手が外界からの侵入者だと聞き及び、且つ背後には自分達が普段暮らしている──思い入れ
の強い市街地がある。ある意味で純粋な使命感から、仲間を鼓舞して踏み止まる者も少なく
はなかった。
「──すまない。だがそこは通して貰うぞ!」
 しかしである。次の瞬間ヒムロとアマギ、シズルの三隊長が同じくルフグラン号から飛び
出して来たかと思うと、この死神達に向かって攻撃を仕掛けたのである。
 ヒムロの《凍》は視界に映った彼らの動きを封じ込め、アマギが《鋭》の無数のオーラ刃
で薙ぎ払う。或いはシズルが《災》の居合を打ち込み、出現させたピエロ型のマスコット達
が彼らを強制的に断氣状態にする。
「ヒ……ヒムロ隊長?!」
「う、裏切り者だぁぁぁーッ!!」
 まさか“身内”まで襲撃に加わっているとは思いもしなかったのだろう。怒涛の加勢、攻
撃ラッシュに現場末端の死神達は慌てふためき、或いは斬り伏せられて一人また一人とぐっ
たり石畳の上に倒れてゆく。
「イセルナ殿、マーフィ殿! ここは我々に任せて先へ!」
「足止めと装置の方は……引き受けた」
「おう! 分かった!」
「決して、無理だけはなさらないでくださいね……? 皆、行くわよ!」
 応ッ! イセルナの合図に、ダンやグノーシュを含めた他の団員達が一斉に叫んだ。最初
着地したままの混戦を演じていた一行は、イセルナ以下救出側と、アマギ以下アララギ捜索
側の二手に分かれ始める。
「に、逃がすな!」
「囲め、囲めーッ!!」
 その間にもわらわらと増えてゆく死神達。黒い揃いの装束に刀や槍、鈍器などを携え、次
から次へとイセルナ達を行かせまいと立ち塞がってくる。
「うーん……。結構団体さんになってきたなあ」
「まあ、予想は出来ていたけどね。ある程度押し通るしか……ないようだけど」
 属性針(ピン)を五指に挟んだクレア、或いは矢を番えて油断なく構えているシフォン。
 それでも根っこは皆冒険者であり、総じて血の気は多い部類なのである。
「突っ込めぇぇぇーッ!!」 
 これまで幾つもの修羅場を共に戦い抜いてきた団員達を率い、一行は怒涛の侵攻作戦──
前代未聞の、魂魄楼強襲を敢行する。

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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

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