日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(企画)週刊三題「オモンバカリ」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:現世、白、残り】


 それが何であれ、物事の中心に立つというのは難しいものです。
 こと目指そうとする先が、世界そのものであるならば。
『──こっちに来い! そんな○○で△△な奴らと関わっちゃあいけない!』
『騙されるな! そいつらこそ●●で××で、最低の下衆どもなんだ!』
 足場の両端から、そう他人びとの声が聞こえてきます。
 ただ彼らのそれは、どれも怒号ばかりのようでした。あなたを含めた“中立”に居る者達
は、塊のように寄り集まったまま戸惑っています。
『さあ、こっちへ!』
『一体何を迷ってる? さてはてめえ……“敵”だな”?』
 どうやら双方は、一人でも多くの人々を自分達の側に引き込もうとしているようでした。
曖昧な──白か黒かを付けない態度を許しません。ギシギシと、人一人によって、あなた達
の乗る足場はすぐでもどちらかに傾きうる状態です。
『……っ』
『そっちに行くのか、裏切者め!』
『!? ……??』
『何処を見てやがる! こっちを見ろ!!』
 あなたが、そして他の皆々が立つ其処は、とても不安定な場所でした。いわばシーソーの
ような足場です。片方に多くが乗れば、その端が下がり、もう片方の端がぐんと上へ上へと
持ち上げられます。唯一そういった浮き沈みを受けないとすれば……足場の“真ん中”付近
に他ならぬでしょう。
 急かされるように何度も問い詰められ、あなたの周りにいた他人びとが何人か、迷いなが
らも動こうとします。しかし一方へ向かおうとすれば反対側の者達に怒鳴られ、かと言って
逆へ戻ろうとすれば、最初の側の者達が罵声を浴びせます。
 どうやら──彼らは互いに、相手の側が憎くて憎くてしょうがないようです。
 一見してより多くを従え、固まっている筈の面々も、自分達の遥か頭上に居るもう片方の
彼らを“見下(みくだ)して”いると捉え、そう見られている当の面々も足元に蠢く彼らが
“鬱陶しい”ことこの上ないのです。
 だからこそ、双方はねじ伏せようとしていました。叩き落そうとしていました。
 距離を詰めることは殆どありません。その位置から寄って動こうという素振りは見られま
せん。……いえ、知っているのです。もし自分が一人そんな真似をしようものなら、途端に
“仲間”だった者達に袋叩きにされてしまうことを。
 故に牽制するしかありませんでした。牽制し合うことしか出来ませんでした。只々それば
かりを費やし、時だけが無遠慮に過ぎてゆくのです。
『……ど、どうしよう?』
『いや、俺に訊かれても……』
『わ、私は知らないわよ? 勝手にしなさいよ』
『嘘つけ。どうせどっちかに行ったら、後でグチグチ文句を言う癖に』
『何よ!?』
『ああ? やんのかよ!?』
『落ち着けって! ……ただでさえ狭いってのに』
『そうそう。此処で揉めたって、あっちの人達と変わらないじゃない』
『……自分は違うって言いたいのか。へえ、随分と自信のある方だ』
『むっ。そういう貴方こそ、どうするのよ?』
『答える義理は無いね。でもまあ……答えない義理も無いかなあ』
『要するにどっちでもない、と』
『少なくとも、動けば面倒なのは明らかだしなあ』
『そうそう。黙ってればその内潰し合って終わるだろう?』
『……どうだか。そんな都合よく行くかねえ?』
『余計に拗れた連中ばかりになりそうだけど……』
『って、おい! 何処行くんだよ!?』
『うるせえ! もうこっちは限界なんだよ!』
『勝手にしろって言ったのはあんた達でしょ!? こんな所で延々うじうじしてるなんて、
私は絶対嫌だからね!』
『おお! 我々を選んでくれたか!』
『実に賢明だ。歓迎しよう』
『ちっ……。また向こうに一人……』
『いや、こっちにも来たぞ。おーい、こっちだー!』
『他の固まってる皆も、来いよ! 一緒にあいつらを追い出そうぜ!』
『ふん……野蛮な』
『これだから数だけの連中は……』
『ああ!?』
『おお、怖い怖い……』
 さも有象無象の、雑多な他人びとの声が聞こえます。比較的あなたの近くにいた者達も、
両端に集まっていた者達も、切欠一つさえあれば皆好き勝手です。一人また一人と抜けては
片方へと走って行き、或いは決めないことを決めた者も少なからずいました。
 尤もその選択自体もまた、協調とイコールではありません。寧ろ多くの場合、酷く個人的
で露悪的で、保守的なのです。その意味においては、両端の面々とさほど大差があるとも言
い切れないのでしょう。
『──』
 ギシギシと、やはり軋み続けている足場の上で。
 あなたは未だ動いていませんでした。いえ、もう動いた後なのでしょうか? ともあれ、
此処では前者です。記憶はしばしば時系列を超越し、真実と現実を綯い交ぜにして回顧不能
に至らしめます。それらはリアルタイムに蠢く他の人々の動き、ざわめきと合わさり、あな
たの感覚を此処ではない何処かへ弾き飛ばすでしょう。
 あなたを──厳密にはあなた“のみ”ではない、あなたを呼ぶ声が相変わらず聞こえてき
ています。手招きは程なくして強制させしまんものへと変わり、怒号となります。従わない
第三者は即ち敵となります。そもそも敵であるのなら、言わずもがなです。
 ギシギシと、足場がたわんでいるような錯覚がありました。いえ……それは確かに起こっ
ているのです。密かに進行しているのです。
 皆が皆、双方のどちらかに動く訳ではありません。今この時のあなたのように、戸惑った
りへそを曲げたり、或いは決断したが故の不変だったり……。尚も“真ん中”に立ち続けよ
うとしている者達もまた、少なくはないのです。
 そうなると──必然のようにそれは生じ始めました。益々自らを集めようと圧を加える両
端の面々と、彼らの側へ流れそうになってゆく半端な位置の面々、そしてあなた達。足場に
掛かる他人びとの重みはどうしたって不均衡になり、両端を二個の支店として、本来の支点
である“真ん中”を追い出し始めるのです。要するに……崩壊でした。あちら側かそちら側
か? 二極にたわみ続けた足場は、遂に柔軟さを失って圧し折れるのです。
『──!? ッ!!』
 あなたと、残っていた他の者達の悲鳴。
 それぞれの判断がどうであったかは分かりません。おそらく、これからも振り返って確か
める余裕など無いのでしょう。“真ん中”がにわかに大きく持ち上げられ、真っ二つに割れ
てしまうすんでの所で、あなたは飛び出しました。付ける足場も見当たらないまま、遥か高
い空中へと半ば投げ出されるような恰好で、あなたは暫し浮遊します。
 ──底なしのセカイが在りました。その全景ははたしておぼろげで、こんなに高く跳んで
もはっきりと理解することすらままなりません。
 足場(シーソー)が在りました。無数の、双方どちらにも偏り得る不安定な足場が数え切
れないほど点在し、その一つ一つに他人が集まっているように見えました。互いに──争っ
ているように見えました。
『おっ? 誰か来たぞ』
『新入りか?』『新入りだな』
『ようこそ、新しい仲間よ!』
『歓迎するよ。盛大にな!』
 どうっと、あなたは何とか別の──数多ある足場の一つに着地することが出来ました。他
の面々はどうなったか分かりません。もう少し落ち着ければ、同じ所へ落ちてきた顔も多少
記憶に引っ掛かりはするのかもしれませんが……。
『さあ、こっちに来またえ。あの汚らわしいゴミ蟲どもを叩き潰そう!』
『騙されるな! そいつらこそ、ガワだけ綺麗に纏った外道連中なんだ!』
『……』
 ただそのような暇は、少なくともなさそうです。
 あなたの前には、そう足場の両端から熱心に声を張り上げる、他人びとの姿があります。
                                      (了)

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  1. 2019/06/23(日) 00:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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