日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅷ〔103〕

 北北東の遥か空──“虚穴(うろあな)”の一つに、突如として異変が起こった。
 周囲の空気をも震わせる激しい地鳴り。魂魄楼の人々は、身分の上下を問わず不安に駆ら
れていた。誰からともなくざわつき、じっと黒灰の空を見上げている。
「な、何だ!?」
「地震……? そんな馬鹿な……」
 特にその中枢部──北棟の一角に詰める閻魔達は、突然の事に大わらわになっていた。
「ここは世界の底部ですよ? 一体何が……?」
「た、棚を押さえろお! 資料を守れっ!」
 単調で変化に乏しいとはいえ、これまで冥界(せかい)そのものを揺るがすような事件な
ど皆無だったのだ。
 ある者はビクッと反射的に怯え、ある者はこのような揺れがあること自体を信じられず、
またある者は室内をぐるりと取り囲む、大量の書物に押し潰されはしないかと慌てる。
「落ち着きなさい。……そもそも、棚は全部固定してあるでしょう?」
 だがそんな面々の中にあって、特に冷静だった人物がいた。部下達と同じく黒の法衣に身
を包み、振り向く際に首元の襟飾りへふわりと、そのハーフアップの黒髪を擦れさせる。
 ──閻魔総長ヒミコ。
 死者の国・魂魄楼を取り仕切る二大総長の片割れにして、魂達の裁定を担う閻魔衆の頂点
に立つ妙齢の女性である。
 そ、そうでした……。
 彼女の一声で、サアッと静かになる部下の閻魔達。黒の法衣に身を包んだ彼らは、一旦息
を呑んだものの、次の瞬間には通常業務に戻っていた。室内にぐるりと収められた膨大な資
料は、これまで歴代の閻魔衆が裁定してきた魂達の記録であり、これから裁定するべき新た
な死者個々人の情報も加えられてゆく。
 基本的に閻魔達は、その任務の性質上デスクワーカーだ。故に理論には強いが、突発的な
事態には弱く、往々にして“秩序”というものに対して保守的である者が多い。
「……それにしても、一体何だったのでしょう?」
「揺れの感じからして、北東の辺り……まさか、鬼ヶ領の“虚穴(うろあな)”?」
「現世で、何か起こったのでしょうか?」
 改めて先の出来事を振り返り、今度は冷静に推測を立ててみる。
 楼内でも中枢域に在るため、直接外を覗ける窓はなかったものの、ヒミコ達は行き着いた
その可能性に身を固くしていた。
 場に居合わせた閻魔達が、また少しざわつき始めていた。戸惑いを多分に含んでお互いの
顔を見返し、そのまさかに蒼褪める。
 一体何が起きたのか? 少なくとも一大事ではないか。
 こんな時に、死神衆は一体何をしている──?
「失礼する」
 ちょうど、そんな時だったのである。ヒミコ達が詰める部屋の扉を、そう淡々とした声色
と共にノックする者がいた。閻魔達も聞き覚えがあるその声に、半ば弾かれたように駆けて
行って、迎え入れる。
「閻魔長殿。ご報告申し上げる」
 そこに立っていたのは、一人の死神だった。
 されどその身に纏う黒装束も、風格も、只者ではない。背後に何人か死神の部下達を引き
連れ、彼は至って冷静に第一声を口にし始めた。
 ──死神総長アララギ。
 ヒミコと同じく、魂魄楼を取り仕切る二大総長の片割れにして、魂達の先導を担う死神衆
の頂点に君臨する人物だ。何処か柔らかく物静かな印象のヒミコとは対照的に、くすりとも
笑わない、強面をそのまま人型にしたような男だ。
 死神達が着る、揃いの黒衣の上から、隊長格であることを示す白い羽織を引っ掛けた姿。
 その背中には上側だけが黒く塗られた四方の文様、それらに囲まれた『壱』の文字。肩に
は、他隊士らのそれよりも一回り大きくて豪華な、羽織と同じ文字・文様を刻んだ隊章──
即ち彼が、北棟一番隊隊長、死神達全てを統べる者だとの情報が読み取れる。
 思いもよらず、よりにもよって死神総長自らが。
 一行を迎えた閻魔達は、思わず緊張して身構えていた。その中でも名指しされたヒミコだ
けは、逸早くその意味と事態の深刻さを理解して、ぎゅっと唇を結んでいる。
「緊急事態が起きた。魔界(パンデモニム)北西部──鬼ヶ領内の“虚穴(うろあな)”を
通り、冥界(こちら)側に侵入者が現れた」
『──?!』
 故にアララギが放ったその内容に、一同は数拍、頭が理解を拒んで真っ白になった。
 ヒミコを含めて、場に居合わせた閻魔達がおずおずと、互いに顔を見合わせている。この
冥界(アビス)に“侵入者”? にわかには信じられないが、本当だとしたら前代未聞だ。
 現世の人間がこの死者の国を行き来することは、暗黙の了解──世界のタブーなのに。
 そもそも大半の人間は“虚穴(うろあな)”の存在はおろか、正確な位置さえ知らない筈
だが……。
「本当、なのですか? その者達とは一体……?」
「目下調査中だ。現在楼内の出入口を封鎖、部隊を派遣して確保に向かわせている。先刻の
地鳴りは、彼らが“虚穴(うろあな)”に干渉した影響と思われる。まだそう遠くへは行っ
ていない筈だ。この魂魄楼には、決して近付けさせはしない」
 心配は要らない。
 背丈の差からくいっと見上げる格好のヒミコに、アララギはやはり淡々と事務的な声色で
答えた。既に死神総長として、部下らに魂魄楼全域に厳戒態勢を敷かせ、且つ件の侵入者が
こちらに辿り着く前に捕らえるよう、指示も送ったらしい。
「さ、流石はアララギ総長! 仕事が早い!」
「な……ならば、もう安心ですね」
「ええ。ただ封鎖の措置を取るということで、当面魂の回収が遅れるでしょう」
「その点は事前に、把握しておいて貰いたい」
「う、うむ。分かった」
「仕方がないだろうな……。なるべく早く、通常の体制に戻れればいいのだが……」
 それを聞いて、閻魔達は酷く安堵していた。ホッと胸を撫で下ろし、アララギ以下死神衆
の迅速な対応を讃えつつ、彼らから半ば事後報告的になされる先導の遅延にも大きな苦言を
呈することはなかった。
 理由は単純だ。あくまでそれらは死神衆の仕事であり、自分達の領分ではないからだ。
 寧ろ楼内に送られてくる魂達が、一時的とはいえ抑えられれば、裁定の為の忙しさもその
間は多少なりともマシになる。いつも通りではないが、積極的な意味で自分達の“秩序”を
乱すものではない。
 そんな目まぐるしい打算に自覚的なのか無自覚なのか、閻魔達はようやく落ち着きを取り
戻していた。襲われていた不安から逃れることができた。わざわざ報せに来てくれたアララ
ギ以下死神衆の面々に礼を言い、楼内にいる他の関係者達にも伝えるべく動き始める。
「……」
 しかしそんな中で、唯一ヒミコだけは尚も神妙な面持ちを崩さなかった。部下達にご苦労
と労われ、部屋を辞してゆくアララギらの横顔を眺めつつ、自身の中に芽生えた一抹の違和
感に期せずして戸惑っていたからだ。
(確かに昔から、彼は有能だけど……それにしたって対応が早過ぎる)
 考え過ぎ、かしらね?
 尤もこの時の彼女には、その理由など皆目見当もつかなかったのだが。


 Tale-103.魂魄楼厳戒(前編)

 死神の黒衣に身を包み、変装したジークは魂魄楼の市中にいた。同東棟の一隊長を務めて
いたマーロウと、その副官たるクチナシ姉弟と共に、四人はこれを横断。魂の回収に出掛け
るふりをして脱出を図る算段だったのだが──。
「すまんな。本部からの命令で、出入りを制限させて貰っている」
「悪いが引き返してくれ。今は魂魄楼全体に関わる緊急事態だからな」
 何と東西南北、外に通じる全ての門が封鎖されてしまっていたのだ。北棟の死神──楼内
の守護を担う彼らによって、出入口たる場は一転、厳重な警備が敷かれていた。同じく事態
に困惑し、説明を求める市中の人々に交じりながら、ジーク達はそう言葉とは裏腹に険しい
目付きを向けてくる彼らに説き伏せられる。
「緊急事態……?」
「? 何だ、知らないのか?」
「少し前、北北東──黄泉路方面の“虚穴(うろあな)”から侵入者が現れたんだ。安全の
為に、その賊が確保されるまでの間、各門を封鎖するとの決定が下った」
「お前達も見ただろう? あの、空の異変を」
「そちらの隊舎にも、通達が行っている筈だが……」
 思わずジーク達は顔を見合わせる。周りでは同じように、急に楼内に閉じ込められたこと
への不満や不安を市民らが口々に叫んでいたが、この北棟の死神達は動じなかった。寧ろ彼
らのそれに呑まれることは、自らの精神状態の崩れにも繋がるからなのだろう。
(やはり、あの揺れは只事ではなかったみたいだな……)
(でもどうするんです? これじゃあ外には出られないッスよ?)
(だからと言って、無理矢理にでも押し通るだなんてのは、悪手も悪手ですしねえ)
(……通達が出ているというのなら、一旦隊舎に戻った方が良いでしょう。このような事態
に、長く隊長が不在だと知れたら、それこそ怪しまれる切欠になります)
 結局四人は、一度元いた隊舎へ引き返す他なかった。尚も歪に渦巻く黒灰の空に、人々が
不安げな視線を仰いでいる中を通り過ぎながら、やや駆け足で来た道を戻る。道すがら北棟
の隊士と思しき面々が、武器を携行して走ってゆく姿も目撃した。門番達の言っていた侵入
者──賊の討伐部隊が結成されつつあるのだろう。
「さて、どうしたものかな……。正面突破は無理とはいえ、このまま何の策もなく隊舎に戻
ってしまうのは拙い」
 隊舎へ戻る途中、マーロウは言った。その点についてはジーク達も同感だ。具体的にどう
という訳ではなかったが、何となくこのままずるずると長居しては拙いような気がする。
「“虚穴(うろあな)”の異変は勿論だが、それに対して本部の対応が早過ぎる。少なくと
も侵入者への対応という話で、お前のことを言っている感じではなかったが……」
「ええ……」
 一言でいえば、マーロウが抱いていたのはある種の怪訝であった。“虚穴(うろあな)”
に見られた異変が仮に侵入者のそれと連動しているにせよ、上層部の動きが迅速に過ぎるき
らいがある。つまり不自然なのだ。まるで予め、このような事態が起きると把握し、準備を
してあったかのような……。
「本来ならば、優れた危機管理能力と呼ぶべきなのでしょうけどね」
「ただ、今回ばかりはねえ。流石にタイミングが悪過ぎるというか、何というか……」
「門を守ってた連中──末端の死神達は、俺の顔は分かってなかったっぽいがな。最悪あの
場で詰んでた可能性もあった訳だし。まぁそもそも俺は“正規に死んで”ここに来てるんだ
がよ」
 その言い方も何か変だがな……。自分で言っておいてそう自嘲(わらい)つつ、ジークは
ハナとヨウ、並んで歩く二人の嘆きめいた言葉に応じている。話さずにはいられなかった。
再び無言のまま隊舎に戻ってしまえば、振り出しどころか、それこそどん詰まりになってし
まうような気がして。
「……もしかすると、お前の仲間達かもしれないな」
 すると、マーロウが不意に口を開く。「えっ?」半ば反射的に、キョトンとして振り向い
たジークをじっと見つめて、彼は続ける。それは何も事態に対する失望ではなく、まだ望み
はあると言わんばかりの強い意志の瞳だった。
「考えてもみろ。何につけても、タイミングが良過ぎる。お前が死んだ、そこから一連のあ
れこれが始まってる。前にも話したように、司祭みたいな経歴の仲間がいれば、お前の魂を
冥界(アビス)から連れ戻そうっていう案が出ててもおかしくはない。だとすれば、これは
またとないチャンスだ。何とか乗り込んできたそいつらと、お前を合流させられれば……」
「……」
 ぶつぶつ。ジーク本人に告げるように、だがややあってその視線はあさっての方向に逸ら
されて、マーロウは頭の中の作戦を捏ね直していた。ハロルドさん、レナ、クロム……。そ
んな心当たりがありそうな仲間の顔を、ジークは思い浮かべたが、この時彼が後ろのヨウと
ハナに目配せをしていたことには──終ぞ気付くことはなく。
「とにかく、一旦作戦を立て直そう。あくまで平然と、怪しまれないように」
 だがそうして隊舎に戻ってきたジーク達を待っていたのは、何もマーロウ率いる十六番隊
の死神達だけではなかったのだ。明らかに見覚えのない、そしてこちらに向けて横柄で剣呑
な雰囲気を放つ一団が、腕を組み仁王立ちする一人の男を中心に立ち塞がっている。
「──東棟十六番隊隊長、デビット・マーロウだな?」
 通常よりも大きく豪華な隊章、黒衣の上から纏う『七』を背にした羽織。
 周りの部下達よりも随分と太っちょ──ずんぐりとした体格のこの隊長格の死神が、そう
こちらを確認するように問い掛けながら嗤った。


「何故黙ってたんですの!? 私達が心配していることも、知っていたのに……!!」
 時を前後して、顕界(ミドガルド)北方・打金の街(エイルヴァロ)。
 学友・アルス休学の真相──その兄・ジークの戦死を知ったシンシアは、ゲドとキースの
お付きコンビが止めるのも構わず、学院のある梟響の街(アウルベルツ)から実家へと飛ん
で帰っていた。そして帰省を果たして早々、父・セドを見つけ出すと、ぐいっと男顔負けの
形相でもって襟元を掴み、問い詰める。
「お、お嬢。あんまり乱暴は……」
「無駄よ。諦めなさい。こうなったらあの子は、私達でも止められないもの」
「ですなあ。申し訳ない、奥方様。我々も止めはしたのですが……」
 彼女に従って付いて来たゲドとキース、母親であるシルビア、場に居合わせた屋敷のメイ
ド達もおろおろと動揺、或いは諦めの境地で苦笑(わら)いながら。
 上等な調度品に彩られたエイルフィード家のリビングでは、丁度激しい父娘(おやこ)喧
嘩が繰り広げられている最中だった。尤も状況は、娘・シンシアによる一方的な怒声で占め
られてはいたのだが。
「……」
 しかし対するセドは反論はおろか、胸倉を掴んでくる彼女に抵抗すらしない。背丈や腕力
といった面でも、娘を振り払うことは用意な筈なのに、敢えて彼は自分の娘に為すがままに
されているようにも見えた。妻・シルビアも、その点に気付いていたからこそ、この二人の
諍いに手を出そうとしなかったのだが──次の瞬間、他ならぬ彼からようやく紡がれた一言
が、この状況をひっくり返すことになる。
「言えなかったんだよ。彼女達に、イセルナ君に口止めされていたからな」
「えっ──?」
 刹那、少しだけ掴まれていた襟元が緩む。その隙を、娘の動揺を突いて、セドはぽつぽつ
と話し始めた。導信網(マギネット)上にも情報が出始めた以上、もう完全に隠し通すのは
無理だろう。流石に限界のようだ。彼女達には悪いが、伝えるだけは伝えてしまおうと。
「ジークが、トナン皇国第一皇子にして“特務軍”の主力、対“結社”戦力の旗印が死んだ
という事実が世間に知られることが、どういう意味を持つか……お前だって解らない訳じゃ
ないだろう? 十中八九、その報せは“結社”の連中に有利に働く。反統務院、反開拓勢力
にも利用されるし、調子付かせちまう。少なくともこっちが次の策を固められてない以上、
外部に漏れるべきじゃないんだ」
「っ……。それはお父様達の、政治の話でしょう!? 私は心の話をしてるの! お兄さん
を失って、アルスや皇国(トナン)の両陛下が、どれだけ辛い思いでいるか──」
「知ってる。ダチの、息子だぞ」
 あくまで今回の一件を“手札(カード)”として捉えるかのような発言。そんな態度にシ
ンシアは再び感情を爆発させそうになったが、それをすんでの所で押し留めたのは、他でも
ないセド自身だった。
 ぽつり。あまりにも短く、そして地獄の底から絞り出すような威圧感に、当のシンシアや
ゲド・キース、そしてシルビアやメイド達も驚き怯え、或いは痛いほど解っているかのよう
にそっと目を伏せた。小さく震える娘に、セドはじっと諭すように言う。
「解ってないのはどっちだ? それでも俺達に迷惑を掛けたくはないと、自ら“休学”した
アルス(あいつ)の気持ちを汲んでやれ。……まぁ確かに、親子共々色々背負い込み過ぎで
はあるんだがな」
「……」
 それは迂遠に、彼の為ではなく自身の激情の為だったのでないのか? という指摘。
 シンシアは思わずゆっくりと、父の胸倉を掴んでいた手を放して一歩また一歩と後退って
いた。哀しくない訳などなかったのだ。
 レノヴィン兄弟は親友の息子達であり、いわば自身にとっても息子のような存在。それで
もあくまでクラン・ブルートバードを始めとした直接の関係者達の意向を汲み、政治家とし
ての態度に徹してきたのは、彼らを守る為だ。自らの心を引き裂きつつ、茨の道であること
を知りながらも、彼らを陰日向に支える権力(ちから)を持つ為だ。……二年前から、自分
が生まれるずっと前から、そうだったじゃないか。皇国(トナン)の内乱時も、そんな長年
の布石があったからこそ、あの一家を祖国に戻せたのではないか。背負い込み過ぎだとその
親友の一族を評しはするものの、お父様も大概じゃない……と。
(……私は、まだアルスや、お兄さんみたいには……)
 そうしてすっかりしょんぼりと意気消沈、立ち尽くしてしまったシンシアに、ややあって
セドはポンとその肩を叩く。おずおずとこちらを見上げてきた娘の顔に、彼は不器用ながら
も励ましの苦笑(え)みを向けた。解ってくれればいい──そう言外に伝えるようにしてか
ら、たっぷりと深く息をついて呟く。
「アルス達は今、冥界(アビス)にいる」
「……? どういうこと? まさかお兄さんだけじゃなく、アルス達も皆……?!」
「いやいや。違う違う」
 にわかに慌て始める娘に、今度はもっと綻んだ苦笑(え)みを。
 セドは片手をぶんぶんと横に振りながら、更にジーク以下クラン・ブルートバードのその
後の消息について話し始めた。
 曰く、クロムの云う“死の定義”に賭けた、彼の復活作戦。“虚穴(うろあな)”と呼ば
れる世界の壁に空く穴を通って冥界(アビス)に侵入し、その魂を取り戻す──およそ四十
九日間の勝負のこと。まだルフグラン号の内部に、ジークの遺体(からだ)は氷漬けにして
保管してあること……。
「だから俺達は今、サポートに回ってる。世間に対する隠蔽工作っつーか、時間稼ぎだな。
まぁお前らが見つけちまった通り、結社(れんちゅう)が導信網(マギネット)に犯行声明
を出しちまった以上、ぼちぼち潮時だが」
 ははは。半分脱力、半分参ったといった様子で、セドは苦笑(わら)う。
「本当に死んだってのに、会いに行けるとなりゃあ、世の中大騒ぎだからなあ……」

『──おいおい。マジかよ?』
『にわかには信じ難いけど……。でも助けられるのであれば、何処へだろうとも往くという
のは、彼ららしいね』
 そして父・セドから全ての真相を聞かされたシンシアは、その足である人物達へと導話を
掛けた。ルイスとフィデロ──同じく梟響の街(アウルベルツ)の学院で、アルスと共に学
んできた友人であり、彼の今回の休学についてもずっと心配してくれていた仲間だ。
 ルームシェアをして住む下宿先で、二人は導話口でそう驚きと一抹の安堵を隠し切れない
といった様子だった。親友(アルス)の失意の原因がはっきりとした、何より兄・ジークが
まだ“生き返る”ことができると知り、多少なりとも心の重荷が取れたらしい。
「ええ。でもまだ油断は出来ませんわ。二人のニュースは既に出回り始めてしまっています
し、何より冥界(アビス)に着いたからからといって、お兄さんの魂を取り返して戻って来
れる保証なんてありませんもの」
 それでも、彼女らの会話には尚も緊張感が残っている。ひとえにそれは、あくまで現状が
可能性を繋げただけという点に他ならない。彼らの力を信じていない訳ではないが……こと
これからやろうとしている事は、今まで以上に前代未聞なのだから。
『そうだね……。どちらにしても、現世(こっち)は大騒ぎになりそうだ』
『今度は冥界(アビス)かあ。本当、あいつら何処へでも行っちまうよなあ……』
 導話の向こうからは、少々の未来への懸念と、面を食らった余韻。
 だが対する当のシンシアは、そんな二人に直後問うのだった。
「でも私は、このままただ待っているだけなんて嫌ですわ。お父様達も陰日向に頑張ってい
るんですもの。私達も、改めて手助けを致しません?」
 ……うん? ルイスと、そしてフィデロの若干目を丸くするような戸惑いが返ってきた。
共に何だかんだと、かの兄弟絡みで修羅場(ひにちじょう)を潜ってきた身とはいえ、その
言葉の意図する所はつまり──。
「私はもう一度、ルフグラン号へ向かいますわ」
「ヴェルホークさん、フィスターさん。貴方達はどうしますの?」

 “結社”による犯行声明と、拡がる世間の動揺を受け、セイオン以下ディノグライード家
の面々は同家として公式な記者会見を開かざるを得なくなった。事実クラン・ブルートバー
ドは竜王峰における戦いの後、公的には表舞台から姿を消し、必然的に人々の関心と批判の
矛先はこちらに向くようになってしまっている。
『──』
 はたして一体、どのような発言があるのだろうか?
 会場となった古界(パンゲア)・白咆の街(グラーダ=マハル)某所では、集まった記者
達がその時を固唾を呑みながら待っていた。暫くして喪服を思わせる、黒い正装に身を包ん
だセイオン達が、部屋の袖から壇上へと歩いて来る。
「……」
 そうしてセイオン以下同家の代表達は、一旦横一列に並び直すと、彼を中心としてゆっく
りとこちらに向けて深く頭を下げた。会見が始まる──記者達が映像器を構え、司会進行役
と思しき竜族(ドラグネス)の執事らがそっと、セイオンに一本のマイクを手渡す。
「本日は皆さま、お寒い所ご足労いただき、誠に有難うございます。今回このような場を設
けさせていただいたのは他でもありません──私の高祖父にして、我らがディノグラード家
の祖、ヨーハンの身に起きました出来事についてです」
 いよいよ来たか……。再び、場に集まった記者達がにわかにざわめきをみせる。
 彼らも彼らで、何となく予想はして来たのだ。導信網(マギネット)上における“結社”
の犯行声明も然り、当のディノグラード公やクラン・ブルートバードの動静が途絶えている
こと然り。
 ここ暫く沈黙を破っていた、セイオン以下同家の関係者がこうして一堂に会して発言の場
を設けたということは……それ自体がもう、半ば答えているに等しい。
「……結論から申し上げます。先日同公爵領内、竜王峰宝物殿前において、特務軍ことクラ
ン・ブルートバードと“勇者”ヨーハン、及びディノグラード竜騎士団が“結社”の精鋭部
隊と衝突。戦闘の末、大爺様が戦死なされました」
『──』
 しんと。会見の行われた場に、あたかも凍て付くかのような沈黙が降り注いだ。……解っ
てはいたのだ。判ってはいたものの、誰もがその事実を認めたくなくて、様々な憶測記事を
書いては飛ばしていた。地上の人間はともかく、こと彼ら古界(パンゲア)の住人達にとっ
てかの人物は、文字通り“生ける伝説”として深く愛されていたのだから。
 そんなディノグラード大公、志士十二聖“勇者”ヨーハンは死んだ。
 予想はして来ていたとはいえ、改めてその血縁者達から告げられた事実に、真実を伝える
べき役目の記者達さえも凍り付いている。映像器や映像機を構えたまま、たっぷりと数拍の
間、誰もが微動だにできず硬直してしまっていた。
「クラン・ブルートバードの面々も、同じく“敗北”を喫しました。ジーク皇子を始めとし
た主要戦力の被害も著しく、予断を許さない状況が続いています」
 にも拘らずセイオンは、事前に頭へと叩き込んでおいた本文を一字一句漏らすことなく、
淡々と語り続けていた。ゆっくりと、記者ら集まった面々が衝撃を受けて固まっているさま
を壇上から眺めながら、それでも今回の要旨だけは早々に伝えてしまおうという魂胆だ。
「先の戦いは、同宝物殿に収められていた大爺様の聖浄器、絶晶剣カレドボルフと絶晶楯カ
レドマルフを“結社”の襲撃から守る為のものでした。その際大爺様は、我々だけに責任を
負わせるのは忍びないと、自らこれを手に取り、その魔力を……」
「……っ!? ヨ、ヨーハン様は、自ら戦われたというのですか!?」
「大公はかなりの高齢であった筈です。魔力──聖浄器の力というのは、老いすら超越する
ものだというのですか!?」
 今度は別の意味で、酷くざわめく記者達。
 尤も対するセイオン達は、そんな問いに明確には答えなかった。ただ真っ直ぐ彼らとその
質問を見据えるだけで、直前発せられた言葉がさも真実であるかのように錯覚させようとし
たのだ。
 ヨーハンは死んだ。だがジーク達が“死んだ”とは言っていない。
 ヨーハンは自身の聖浄器を振るって戦った。それはかつて、十二聖の一人として解放戦争
を戦った時のように。
 それは事の真相を一から十まで話す訳にはいかない、セイオン達苦肉の策でもあった。
 先の戦いでジークが死亡し、尚且つ残された仲間達が、今現在その魂を取り戻すべくかの
死者の国・冥界(アビス)へ向かっていることを知られる訳にはいかない。同じ魔力は魔力
でも、ヨーハンが刻の操球(クロノ・グラス)──禁制の魔導具に手を出してまで全盛期の
身体を手に入れようとしたことを知られてはならない。
「しかし“結社”の攻勢は凄まじく、激戦の末に大爺様は敵の大幹部の一人と刺し違える形
で事切られてしまいました。そして己が聖浄器を渡すまいと、最期の力を振り絞り、ご自身
ごと巨大な結晶の中に閉じ込めてしまわれたのです」
「結果、彼奴らは聖浄器を奪うことなく退散していきましたが……我々の側も、失ったもの
はあまりにも多く……」
「我々ディノグラード竜騎士団がついていながら、結局大爺様をお守りすることができなか
った……。この不肖セイオン、痛恨の極みです。誠に、誠に、申し訳ない……!!」
 それははたして、予め織り込み済みだったシナリオも越えて、セイオン自身の本心だった
のだろう。彼を中心として、壇上のディノグラード家の面々はそう再び深々と頭を下げた。
今度は集まった記者達も、弾かれたように我先にと映像器のストロボを焚いてゆく。
 無心という奴だったのか、それとも謝罪会見という場面における様式美か。暫くの間、両
者はほぼ無言のまま頭を下げ続け、或いはその光景を撮り続けた。ようやくその忙しないス
トロボの光と、動揺する空気が落ち着きを見せ始めたのは……ゆっくりとセイオンらがその
垂れていた頭を上げ直してからのことだった。
「──セイオン様。ということは、ヨーハン様は未だその結晶の中に?」
「クラン・ブルートバードの面々は今どうしているのです? “結社”の犯行声明では、件
の戦いにおいて皇国(トナン)のジーク皇子も亡くなられたとのこと。この領内に戦いを持
ち込んで来た上に、自分達は雲隠れなど……」
 眩暈にも似た衝撃を引き摺りながら、それでも記者達は再びセイオン達に次々と質問を浴
びせ掛けた。
 セイオン達の発言から、ヨーハンの亡骸はどうしたのか気になったのだろう。実際戦いが
あったとされる日から、既に十日近くが経っている。この竜王峰周辺は、冬を控えて寒さが
厳しさを増しているとはいえ、通常の安置方法では遺体が腐ってしまう筈だ。ジーク以下、
クラン・ブルートバードの消息についても質問が飛んだ。但し天上層の住人達が持つそれに
準じているのか、こと敬愛するヨーハンの死に関わったからなのか、彼らの言外には一行の
方が生き残ったことへの不満が端々に表れている。
「……彼らは今、大きな痛手を負っています」
「何より“結社”からの更なる追撃を逃れる為にも、ここで詳細を答えることは差し控えさ
せていただきたい」
 尤もそれらは、セイオン達の想定の内だ。
 故にあくまで彼を始めとしたディノグラード家の代表者達は、予めこのような直球が来た
場合を踏まえ、その返答を用意していた。あくまでその生死の程は明言を避け、更なる戦い
を招かない為にも新たな開示については留保する──勿論、イセルナ達の冥界(アビス)行
きを隠す為の方便だ。
「それと大爺様についてですが……ご質問の通り、そのお身体は今も尚、戦いのあったかの
場所において結晶に閉ざされています。ですので、こちらとしても聖浄器を含め、回収でき
ない状態なのです」
 加えて間髪をいれず、他の代表者がヨーハンの現状について言及を始める。それとなく、
話題を切り替えさせる為だ。事実今後彼らディノグラード家において、その後始末をどうす
るのかが目下の懸案だった。なまじ聖浄器の──他ならぬヨーハン自身が命を削りながら張
った大結晶だ。心情的にも物理的にも、並大抵の力では壊せないことは、実は既に内々で確
認済みである。
「で、では……。このままではヨーハン様は……?」
「かの場所、宝物殿前に眠り続けることになるでしょう。我々としても、何とか搬出しよう
と試みてはいますが……こればかりは中々」
「それ故、皆さんには誠に申し訳ありませんが、取り急ぎ大爺様の葬儀は現地で執り行う他
ないというのが現状です。時間を掛ければ、結晶の解体も行うことができるかもしれません
が、そうなると肝心の……」
「ご、ご遺体が」
「大変なことに、なられますよね……?」
 至って真面目に、そうどちらにすると問い掛けてくるディノグラード家の面々。
 勿論記者達は、そんな一大事について即答できるような権利も度胸も持っていなかった。
ただ彼らの言わんとすることをややあって理解し、お互いにばつが悪いといった様子で視線
を逸らしながら、追及の弁を緩めざるを得ない。
「では、これより取り急ぎの日程表を皆さまにお配りします」
「ただこれはあくまで案、予定の段階ですので、関係各所との調整次第では前後変更される
可能性があります。予めご了承くださるよう──」

「おい……本当か? 本当に、ヨーハン様が死んだって……!?」
「嘘よ、嘘よ! あの方がそんな簡単に亡くなられる筈ないわ! ブルートバードよ! 全
部あの地上の荒くれ達と、あいつらが連れてきた“結社”の所為なんだわ!」
「どうしてなんだよ……。噂じゃあ、ヨーハン様と一緒に、セイオン様達も一緒にいたんだ
ろう? 七星の一角が出張ってて、何で守れなかったんだよ……!?」
「しーっ! ご本人達に聞こえたらどうするんだ。相手は“結社”だぜ? 悔しいのはセイ
オン様だって同じさ。身内な分、俺達よりもずっと、本当は哀しんでる筈だしよ……」
 かくして会見が進んでいる前後、白咆の街(グラーダ=マハル)市街とその周辺には、同
大公の死を知った他の記者や古界(パンゲア)各地のファン達が詰めかけていた。
 人ごみに飛び交う号外と、人伝から人伝への噂。或いは天上層では珍しい携行端末を手に
した若者などが、めいめいにその報せに哀しみを寄せている。
 ヨーハンを死に至らしめた“結社”と、その遠因を持ち込んだと目されているジーク以下
クラン・ブルートバードに対しても、彼ら市民の嘆きと哀しみ──怒りの矛先は少なからず
向けられていた。街の大通りを埋め尽くす人の波から、一つまた一つと怨嗟を多分に含んだ
ざわめきがこだまする。
『──』
 故にこの時は、誰一人として気付いていなかった。
 そんなざわめく人ごみの中に、若干切り取られたように紛れて歩く、怪しげな三つの人影
の存在を。

「やっと戻って来たか。こんな時に呑気なこった」
 再び隊舎へとんぼ返りしたジーク達を待ち構えていたのは、妙に横柄な感じの、別の隊長
格の死神が率いる一団だった。
 周囲の屈強そうな部下達と比べると、どうしても見劣りする太っちょな身体。黒衣を内側
から押し上げる丸い体格。それでも重ねて羽織るその衣に、マーロウは密かに目を凝らして
思案を始めている。
(北棟七番隊……ヤマダ隊長か。アララギ総長傘下の一人だな)
 相手が何処に所属している死神であるかは、その隊章を見れば大よそ判別がつくようにな
っている。四方の文様の内、黒く塗られている方角が所属棟、中央に書かれている数字が所
属隊を示す。こと隊長や副隊長、上位五席までの者ならば、専用の上衣や装飾付きの隊章が
支給されている。見分けること自体は容易い。
 ただ……それはこちらも同じだ。自分達を待ち構えていた一団──ヤマダ隊は、既に隊舎
内に陣取って我が物顔をしていたらしい。残っていた部下達が、戻って来たこちらの姿を認
め、ホッとした表情を浮かべているのが分かる。今の今まで押し留めてくれていたようだ。
「これは北棟の……。一体何事ですか? 一時待機の件ならば、先程出先で聞きました。そ
れともわざわざ、通達の為にご足労を?」
「いや。それとはちょいと別件だ。例の侵入者の一人が、楼内に潜入したとの情報が上がっ
てきてな……」
 故に直接相対するマーロウは勿論、ジークやハナ、ヨウ、周りに居合わせた隊士達が思わ
ず、内心身構えていた警戒心を固くした。
 もうバレたのか!? ジークは目を丸くして息を呑んだが、すんでの所でぐぐっと言葉を
喉の奥に引っ込め直す。傍らのハナとヨウも、同じく驚きで互いに顔を見合わせている。戸
惑う面々をちらっと見渡してから、ヤマダは続けて用件を掻い摘み始めた。
「侵入者の名は、ジーク・レノヴィン。検問を通った際のリストから、この隊の預かりにな
っていることは判っている。留置所内にいる筈だ、検めさせて貰おう」
『……』
 これは拙い事になった。当のジークは勿論ながら、マーロウらは逡巡する。やはりと言う
べきか、既に本部からの手が回っていたようだ。
 しかし……件の侵入者とは、ジーク本人ではなくその仲間達ではなかったのか? どちら
も含めての動きであれば、身元も割れてしまっていることになる。だがそうだとしても、こ
の隊長格は、当のジークが今この場に居ることに気付いていないように見える。生身である
こと、或いは同じ死神を装っているとは想定していないのか? どうにも不明瞭だ。上と下
で、把握の度合いが違うのだろうか?
(た、隊長~……)
(自分達はどうすれば……??)
 そうしている間も、隊士達がマーロウらに向かって、必死にSOSのサインを送っている
のが分かった。全員の内一部ではあるが、彼らにもジークを逃す旨は予め話してある。何よ
り生前、故郷に残してきた友の息子らのことは、冥界(こちら)に来てからもしばしば皆に
話して聞かせた思い出話だった。
「……そうでしたか」
 そこでマーロウは、困惑する部下達を見かねて、一つ芝居を打つことにした。あくまで先
方には従順、粛々とした仕事人を装い、ある目的の為にこのヤマダ隊を動かすことにしたの
である。
「それは一大事だ、すぐに確認しましょう。どうぞ。案内します」
 するとどうだろう。マーロウは言って自らヤマダ達を促し、一人留置所のある方へと歩き
出したではないか。「うむ」対するヤマダとその部下らも、これに続いて踵を返してゆく。
若干わたわたと、周りの十六番隊士達がこれをフォローすべく追いかけ始める。
「そういう訳だ。他の者は一旦、隊舎にて各自待機するように」
 そして去り際、マーロウは言った。肩越しにこちらを──ジークと彼に取り残されたハナ
とヨウ、クチナシ姉弟に目配せをしながら、ヤマダ達に気付かれないよう極々小さく頷きつ
つ、敷地の奥へと消えてゆく。

「ここが、我々の隊の留置所です」
 敢えてジーク達と別行動を取ったマーロウの目的は言わずもがな、時間稼ぎである。彼ら
とヤマダ隊を分断し、ジークを逃がす為である。
 そんな企みをつゆ知らず、ヤマダ達は十六番隊の留置所へと足を踏み入れた。明かり取り
も殆どない室内は薄暗く、封印術式の刻まれた鉄格子で幾つもの房(こべや)に区切られた
その中には、蒼褪めた人魂やおぼろげな白装束──ここ暫く同隊によって保護・回収された
魂達が収められている。
 うむ、ご苦労。案内の礼もそこそこに、ヤマダは自身の部下達を引き連れ鉄格子の前を歩
いていった。緊張気味に立つ同隊の係員から管理表をぶんどり、一から順に確かめようと視
線を落とす。
「──」
 その直後だった。こちらに背を向けたその数拍の隙を狙って、マーロウがゆらりと気配を
殺して近付く。迫る影、自身に振るわれようとしたそれを気取って弾かれたように振り返ろ
うとしたものの……一歩遅かった。そんな反応とほぼ同時、ヤマダは自身の身体をざっくり
と袈裟懸けに斬り付けられる。
「ぐっ!? き、貴様、何を──」
 だが彼の放とうとした言葉は、次の瞬間急にぶつ切れになって途絶えた。ズズンッと、そ
の太っちょな身体が強制的に石畳の床へと叩き付けられ、身動きが取れなくなってしまった
からだ。
「た、隊長!」
「貴様ァ! これは──」
 次いで、咄嗟に反応し、抜刀しようとする部下達。
 しかしマーロウの放った斬撃の第二波は、そんな虚を突かれた彼らよりも速い。ヤマダを
斬った剣先を返して暗闇に軌跡を描き、一人また一人と次々にこれを同様に斬り付ける。斬
り付けて──同じく身動きを取れなくさせる。
「ぐっ、ぬう……! これは……お前の……!?」
「ああ。そうさ」
 何か見えない力で、床に叩き付けられたままのヤマダ達。ろくに身動きが出来ないながら
もギリッと頭上を見上げ、激しい怒気を孕んだ言葉を漏らす彼に、マーロウはカツンと一歩
前に出ながら答える。
「これが俺の能力。現出型《荷》の色装──斬った相手の重量を増やしたり、減らしたりす
ることが出来る」
 いつの間にかマーロウは、両手に黒と白、一対の小太刀を手にしていた。その刃先や握り
には、静かに濃密なオーラが宿り、彼のこの得物がただの武器ではないことを示している。
「どうだ? 自分の体重に押し潰される感覚は? 満足に動けないだろう? 君達も……そ
んな有り様じゃあ大事な隊長を守れないだろうね」
 ヤマダと一部の部下らは、黒い小太刀で斬り付けられていた。即ち自身を重くされ、石畳
の床に押し付けられている。
 残った他の部下達は、白い小太刀で斬り付けられていた。即ち自身を軽くされ、天井まで
浮かび上がったまま、じたばたともがいている。
「お前……! 自分が何をしているか……解って……?!」
「ああ、解っているさ。これが組織への裏切りであることも、お前達の中で、何か良からぬ
動きがあることも」
 こと自重の大きなヤマダにとって、この能力は非常に厄介なものだった。このように一旦
不意打ちを食らってしまえば、重くされた自身の体重でろくに見動きが取れない。仮に効力
が切れるまで持ち堪えたとしても、即座に次の一発が待っているだろう。
 それでも怒りを、殺気を滾らせるヤマダの言葉に、マーロウは努めて淡々とした声色で応
じていた。まさかここまで上層部の対応が早いとは思わなかったが……ジークと再会したあ
の時点で自分の腹は決まっていた。まだあいつには、やるべき事がある。待ってくれる仲間
達がいる……。
 思えばあの時死んだのも、こちらに来て死神となり、色装の修行に取り組んだのも、全部
あの子達を想ってのことだった。二人には、村の皆には、自分の所為で色んなしこりを遺し
て逝ってしまった。あの時もっと自分に力があれば──ずっと在った後悔と、彼らへの償い
という意味合いがあったのかもしれない。
「……悪いが、暫く大人しくしていて貰うぞ?」
 事情を知らされた一部の部下、十六番隊の隊士らと共に、マーロウはそう足元や天上に転
がるヤマダ達を見下ろすようにしながら言う。

「──こっちです。ジークさん、急いで!」
 咄嗟のマーロウの機転によって、ジーク達は辛くも北棟の追撃から逃れることができた。
彼の目配せ、その意図を汲んだハナとヨウのクチナシ姉弟に案内されて、ジークは再び東棟
の城壁沿いを北上。上部連絡橋にある見張り台へと辿り着いていた。
 通常の出入り口、四方の門は、上層部の指示によって既に閉鎖されている。ならばと二人
の進言により、ジーク達は一旦この高台を目指していたのだ。楼外に出るにせよ、件の侵入
者とやらがどの辺りに居るのかを確かめておきたいという思惑があった。
「マーロウさん……大丈夫かな」
「きっと大丈夫ですよお。隊長はお強いですし~」
「心配なさってくれるのなら、一刻も早くお仲間の皆さんと合流を。情報によれば、侵入が
あったという方角は──あちらですね」
 自らが身体を張り、マーロウが折角作ってくれた時間だ。一細(セー)たりとも無駄には
できない。尤も二人の動き、掛けてくる言葉には、その外からやって来ているという面々が
ブルートバードの仲間達であるという前提がくっ付いてしまってはいるが。
「……うーん。やっぱり結界が強化されていますねえ。予定通りにぶち破るというのも難し
そうです」
 片手で庇を作り、ハナがそう見氣を使いながら楼内の空を見上げていた。ジークも彼女に
倣って両目にオーラを凝らすと、確かに防壁のように集められた魔力(マナ)が何枚も重な
っているように視える。城壁の向こう、ヨウが指し示した北北西のずっと遠くでは、何やら
煙が上がっていた。戦いの煙だろうか? 流石に誰かまでは判らないが……。
「最初隊長と練っていた計画では、私の色装(のうりょく)を使って、ジークさんを結界ご
とぶち破って外に放り投げる予定だったんですよお。人工魄や隊章さえあれば、少なくとも
三存が蒸発することは防げますからねえ」
「能力……? そういや、お前の色装って一体……」
 ニコッ。するとハナは、訊ねてくるジークを見返しておもむろに歩き出した。何だ? と
ジークが頭に疑問符を浮かべていると、彼女は石畳の一角から少し大きめの破片を拾ってこ
ちらに持ってくる。その途中でコォォッと、これを自身のオーラで包んでから。
「はい。どうぞ」
「おわっ!? いきなりぶん投げて来ん──えっ? めちゃくちゃ軽い」
 そこそこ大きめの石の塊だ。普通にぶつけられれば、血の出る怪我もしかねないだろう。
 だが思わず反射的に受け止めたその破片は……まるで重みを感じなかったのだ。ジークは
一瞬驚き、ポンポンと右手左手と投げ渡して確かめ、この感覚が気のせいではなかったこと
を理解する。
「これが私の《軽》の色装です。オーラで包んだ物の質量をゼロにする──いわゆる操作型
の一種ですね~」
「当初の予定では、この姉さんの能力で、ジークさんを砲弾のように射出するつもりだった
んですよ。結界にぶち当たる瞬間に解除すれば、理論上最大加速で突破できますからね」
「……嗚呼」
 案外、無茶苦茶な作戦だったんだな。まぁそれだけマーロウさんも、直前まで怪しまれな
いよう色々と考えてくれてたんだろうけど……。
 実演されたハナの色装(のうりょく)、そしてヨウからの補足を聞いて、ジークはようや
く本来ここで行われる筈だった脱出作戦の全容を理解した。確かに真正面から楼外に出よう
とすれば、他隊の死神に見つかるリスクは高くなる。
「ただまあ、結界に干渉した時点でどのみち気付かれはしますけどね。要は気付いた本部が
動き出すよりも前に、なるべく遠くへ逃げて“虚穴(うろあな)”なりこっちが用意した舟
で魔流(ストリーム)を越えられればいいだろうって話で……。それも、随分と狂ってしま
いましたが」
「だけど隊長の為にも、何とかしてジークさんを逃がさないと……」
 さて、どうしたものか。
 故にハナとヨウ、当のジークは考え込んでしまった。二人がいれば“人間砲弾”作戦自体
は実行できる。ただ最初の想定より──楼内の厳戒態勢が敷かれたことにより強化された結
界の突破や、その後の現世への到達手段をどう楼外に持ってくるのかが問題だ。まだ厳戒前
ならばこっそり舟の一艘くらいは普段の巡回を理由に持ち出し、合流することも出来たかも
しれないが、今のような状況となってしまえばそれも難しい。そもそも例の侵入者がクラン
の仲間達だという可能性も、未だはっきりと確認が取れていないというのに……。
「ほう。その青年がジーク・レノヴィンか」
『──っ!?』
 だが、ちょうどその時だったのである。
 次の瞬間、ジーク達三人の向こう、連絡路の行く手を遮るように、隊長格と思しき二人の
死神がその部下達を率いて現れたのだった。
 一人は如何にも厳しそうな、険しい表情をしたスレンダーな女性の死神。
 もう一人は対照的に紳士然とした、お洒落な口髭と腰の細剣が目を引く男性の死神。
(ちっ! 追っ手か……!)
 ジークとハナ、ヨウの三人は咄嗟にこれに振り向いて身構えていた。腰に差していた仮の
二刀や仕込み杖、或いは中指に嵌めていた指輪型の魔導具にそっと手を掛け、力を込める。


『では、行って来る』
『こっちはどーんと任せておいて、イセルナさん達はジークの方を』
『必ず連れて戻って来る。この、命に代えても』『……待ってて』
『マスターノコト、クレグレモ宜シクオ願イシマス』
 レジーナ以下技師組による、転送リングの再調整(チューニング)が終わり、ハロルドら
アルス救出班は急ぎ船内の転移設備を使って神界(アスガルド)へと旅立って行った。現世
へ戻る“虚穴(うろあな)”を経由し、更に分厚い世界の壁を通り抜ける為にも、転移網の
システム改変作業は不可欠だったからだ。
 先に出発したイセルナらジーク救出班に続いて仲間達を見送り、レジーナやエリウッドら
技師組、イヨ以下侍従衆、アスレイ・テンシン・ガラドルフを中心とした留守を預かる団員
達は、ようやく大きな安堵の息をつくことが出来たのだった。
「……やれやれ。冥界(こっち)に突入して早々トラブル続きだったけど、何とかここまで
持ってこれたねえ。皆もお疲れ様~」
『うい~ッス!』
「本当、ぶっ通しの突貫作業でしたからねえ」
「色々想定して本体(ふね)の調整もしてたってのに、分からないもんッスよ……」
 飛行艇ルフグラン号の船内では、立て続けに起こったトラブルへの対応を終えた技師組の
面々がぐったりとあちこちに寝転んでいる。元より不規則な納期等と戦ってきた職人達とは
いえ、精神的にも肉体的にもしんどかったには変わりない。首に濡れタオルを引っ掛けた格
好のレジーナから、そう労いの言葉を掛けられると、部下の技師達も流石に乾いた笑いを隠
し切れなかったようだ。
「ああ。ある程度予想はしていたが、前途多難だな。はたして本当に、ジーク君を取り戻せ
るのかどうか……」
「それに加えて、今はアルス皇子も神界(アスガルド)に飛ばされちゃいましたからねえ」
「ええ……。本当に、重ね重ねご迷惑をお掛けします……」
 尤もそんなすり減った余裕の少なさは、何も疲労によるそれだけではない。本来探し出す
べき仲間が、もう一人増えてしまったからだ。エリウッドが誰にともなくごちるその声に、
何か慰みを掛けずにいられないのは無理からぬ心情でもあった。平謝りするイヨを皮切りと
して、船内の面々──イセルナ達が不在の間、留守を預かることになった団員達は、否が応
でもその不安を隠せない。
「いやいや、そこはイヨさんが謝る所じゃあないでしょう?」
「気にせんでください。俺達はただ、仲間を取り戻そうとしてるだけです」
「まぁ本音を言えば、俺達も全員、ジークとアルスを捜しに行きたいんだがなあ」
「無茶言うなよ。ただでさえ冥界(こっち)はアウェーなんだぜ? 大人数でわらわら歩い
てたら、すぐに見つかっちまうよ」
「ああ。だから少数精鋭でってのは分かるんだけど……どのみち俺達がやろうとしてること
は、魂魄楼の連中にしてみりゃあ“掟破り”な訳じゃん?」
「そりゃな。死人を生き返らせようってんだから」
「大丈夫かねえ? 最悪“結社”以外にこの先、向こうさんも敵に回しかねないんだろ?」
 ……はあ。誰からともなく、盛大な嘆息が場へ静かに横たわる。
 自分達の目的ははっきりしている。これ以外にもう、ジークを取り戻す方法は無いのだと
も分かっていた。それでも──抱えるであろうリスクが大き過ぎる。ディノグラード公爵家
やセドらレノヴィンの盟友達に当面の根回し・時間稼ぎを頼んではあるが、それもいつまで
もつか。仮に団長が、ハロルドさん達が二人を連れて帰って来れても、はたして現世に戻っ
た自分達を人々はどう受け止めるのか? 先のことを考えれば考えるほど、次から次に問題
が立ち塞がる……。
「はは。なーにうじうじしてんのさあ? 俺達はもう、その舟に乗っかってるんだぜ?」
「立ち向かうべきは今目の前にある問題だ。二人を取り戻せるかどうか、その為にも僕達全
員の“帰路”であるこの船は、何としても守らなくてはいけない」
「“狼軍”や史の騎士団だった者達とは違い、儂らは元から初期幹部達に縁故があった訳で
はない。にも拘わらず、この拠点の守備を任せられておる……それだけでも光栄と思うこと
じゃな」
 しかしそんな面々を、留守を預かる責任者、アスレイ以下残る三隊長がめいめいに注意し
てきた。彼らと同じく新団員選考後から加わった者、それ以前からクランに属していた者、
双方の団員達がハッとなって顔を上げる。少々ばつが悪いようにお互いを見遣る。
 ……そうだ。嘆いて足を止めている暇よりも、抗い続けて前に進むのが、自分達クラン・
ブルートバードじゃないか。ガラドルフ隊長の言う通り、団長達も戻って来るこの船が無事
だと信じているから、今回も厳しい作戦に赴いて行った。その信頼を裏切る訳にはいかない
じゃないか。
 それにこの船には、まだクロムがいる。当のジークが身の危険を顧みずにギルニロックか
ら救い出し、以来様々な有力情報・真実を自分達にもたらしてくれた元“結社”の使徒だ。
今回も彼には、冥界(アビス)道中の案内役を頼む予定だった。そもそも彼がいなければ、
ジークの復活という、常識破りの手段も思いつかなかっただろう。
 彼は今船内の医務棟で、セキエイとの戦いで受けた傷を癒すべく眠っている。この船を諦
めるということは、彼と彼を信じて救い出したジークの思いすら投げ棄てるということだ。
そんな真似……自分達には出来ない……。
『──ッ!?』
 ちょうど、そんな時だった。留守を預かる団員達が、そう決意を新たにして唇を結んだ次
の瞬間、ルフグラン号全体を激しい揺れが襲った。
「な、何だ!? 何が起きた?!」
「こっ、今度は何ですかー!?」
 咄嗟に周りの壁や取っ手などに掴まってバランスを取りつつ、面々が動き出す。レジーナ
以下技師組も弾かれたように操縦席に戻り、船外を映す映像機達をぐるぐると動かし、確認
を始める。
「こ、攻撃です! 船が攻撃を受けてます!」
「さっきのは、直撃こそ障壁装置(シールド)で防いだようですが……。これは……」
 操縦席の機器越しに、レジーナやエリウッド達が覗いたのは、それこそ最も憂慮すべき事
態だった。アスレイやテンシン、ガラドルフ以下団員達も、急いでこの映し出された船外の
映像を覗き込み、絶句する。最悪の事態が──迫っていたのだった。

「ちいっ! これは……障壁か?」
「攻撃を緩めるなー! 相手は馬鹿デカい的だ! 叩いていれば必ず落ちる!」
 イセルナ達が旅立った後、石樹の森に身を隠していたルフグラン号を襲撃した者達。
 彼らは揃いの黒装束──死神服を纏っていた。いつの間にかこの軍勢は、船体をぐるりと
取り囲み、忙しなく攻撃を加えている。
「この鉄の塊を落とせ! そうすれば、侵入者どもの足は止められる!」

「──くそっ! 何処に行った!?」
「相手は十人程度の少数だ。そう遠くへは逃げていない筈……。総員、横列を組んで周囲を
潰せ! 絶対に逃がすなよ!」
 これとほぼ同時刻。先んじてルフグラン号から魂魄楼へと向けて出発していたイセルナ達
は、突如として黒い和圏の衣装に身を包んだ軍勢に襲われていた。
 すんでの所でこれを察知し、慌てて近くの石樹地帯に逃げ込んだものの、相手の方はそう
簡単に諦めてはくれなさそうだった。それぞれに刀や槍、大槌などを抜き放って殺気を振り
撒きつつ、指揮官と思われる男の指示で必死の捜索を始めている。
「……拙いな。楼に着く前にバレちまった」
「できれば、直接戦うことは避けたかったのだけどね……」
「だが、こうなってしまっては仕方ないだろう。応戦するしかあるまい。目を盗んで戦域を
抜けられれば、話は別だが」
「難しいだろうね……。こんなだだっ広い空間じゃあ」
 石樹の陰に隠れながら、ダンやイセルナ、シフォンといった同救出班の面々はひそひそ声
で相談していた。断氣も使いながら気配を殺し、同時に向こうの動きに注意を配ることを忘
れない。グノーシュやサフレ、リュカにレナ、クレア・マルタといった残りの面子も、そう
呟くブルートに応えるようにサッと、幅広剣や魔導具の槍、属性針(ピン)などの得物を取
り出して臨戦態勢に入っている。
「……仕方ないわね。シフォン、リュカさん、お願い」
 本当なら、ギリギリまで対立するような構図は避けたかった。
 そこには“結社”ではない彼らに剣を向けることへの躊躇いもあったが、それ以上に彼ら
冥界(アビス)の住人──クロムのメモによると魂魄楼の“死神”ないし“閻魔”達──と
敵対してしまえば、今後の自分達の身の振り方にも大きく影響するからだ。たとえジークの
魂を救い出し、現世に戻れたとしても、彼と自分達の“生”は続く。相手側がより積極的に
その“死”を狙ってくるような事態にでもなれば、おちおち従来の戦いにも戻れない。
(まぁそもそも、冥界(こちら)に潜入しようとした時点で、友好なんて無理筋だったのか
もしれないけど……)
 未だ心の中に迷いは残る。だがそれとは別に、イセルナは団長として今連れている皆の安
全確保を最優先する責任があった。シフォンとリュカ、二人の色装(のうりょく)の援けを
借りて、先ずはこの場を切り抜けなければ。
 了解! ええ! 指示を受け、シフォンは全身から右腕へ、そのオーラを集中させながら
物陰を飛び出した。リュカもこれを目で追いながら詠唱を始め、彼に気付いて寄ってゆく相
手の兵力、その密度を見極める。
「君達に恨みはないけど……倒れて貰うよ!」
「盟約の下、我に示せ──荒神の旋風(サイクロン)!」
 最初シフォンが手に集めたオーラを地面に叩き込み、周囲に《虹》の靄を広げた。次いで
リュカが風を引き込む竜巻を起こし、こちら側の反撃に相対した死神達へと狙いを定める。
「な、何だ? これは……?」
「気を付けろ! こいつはただの靄じゃない! 何か仕掛けが──」
「ぐっ!?」「ぎゃあっ!?」
「何!? 背後から攻撃が……?」
「いや、違う! 左右からもだ!」
「一体どうなってる? さっき飛び出してきた、妖精族(エルフ)の男が何人も……」
「っ! しまった、こいつは幻術だ! おい、お前達、無暗に攻撃するな!」
「で、ですが……」
「って。た、竜巻ィィィ?!」
「こっちに来るぞー!!」
 とにかくこちらと相手の数には差があり過ぎる。だからこそ、イセルナは先ずこの数の利
を崩す作戦に出た。シフォンの《虹》の色装で相手方をすっぽり包んでしまい、後はリュカ
の範囲攻撃に優れた天魔導で一掃する。おそらく討ち漏れは出るが、後は混乱した相手の兵
達を、靄に紛れて一人一人確実に無力化すればいい。
「よっしゃ、行くぜっ! くれぐれもやり過ぎるなよ?」
「分かってるよ。お前こそ、ハッスルし過ぎるんじゃねえぞ?」
 ダンとグノーシュ、血の気の多い二人が逸早くこの追撃に先行した。イセルナやサフレ、
レナにクレア、マルタといった残りの面々もやや遅れてこの靄の中へと駆け出す。
 それからは……ほぼこちら側の一方的な反撃だった。最初に撃ち込まれたのが幻術だと解
って向き直り、これを迎撃しようと襲い掛かる死神達も少なくなかったものの、何処か意識
の端でシフォンの幻影に“恐れ”を感じていれば、無視しようとした矢によるダメージも実
体となってその者に刻まれる。
 何より大きかったのは、相手側の全員が必ずしも“色持ち”ではなかったことだ。
 勿論、不必要なまでに痛めつけるようなことはしなかったが、そのお陰でダン達はかなり
有利に戦いを進められた。軽くオーラの炎や電撃、或いは氷の剣や刺突などで、面々は次々
に死神達を撃破、ダウンさせてゆく。
「~♪ ~♪(昇天させま~す、ごめんなさ~い!)」
「……っ。盟約の下、我に示せ──光明の散弾(ファル・シャイン)!」
 更にマルタの響かせる鎮魂歌(レクイエム)やレナの聖魔導は、幽冥種(ホロゥ)である
死神達には特効の威力を発揮する。そして彼らに引き連れられていたゾンビ兵──戦闘用に
調整されたと思しき再駆種(キンシー)達も、同じくその力場に巻き込まれて“浄化”され
ていった。
「──ぜぇ、ぜぇ」
「何とか……片付いたみたいね」
「ええ。マルタやレナさんが一緒で助かりました」
 そんな激しい戦い、迎撃戦を経て、イセルナ達はようやく大きな一息をついた。辺りには
まだ少し晴れ切っていない《虹》の靄が漂い、今回襲ってきた死神やキンシー兵達が白目を
剥いて伸びている。
「マスターにそう言って貰えると嬉しいですけど……。嬉しくないような……」
「結局思いっきり、冥界(こっち)の人達と敵対しちゃいましたもんねえ」
 あははは。サフレの微笑にマルタが苦笑(わら)い、同じく複雑な表情をしているレナの
横へ、腰のポーチに針(ピン)をしまいながらクレアが歩いてくる。
 ダンやイセルナ、グノーシュ達も、あまりいい表情(かお)はしていない。仕方なかった
とはいえ、当初の想定以上にあちら側の動きが早いようだ。
『──』
 しかしである。次の瞬間、自分達の背後から差した巨大な影と地鳴りに気付き、イセルナ
達は再び絶望させられることになる。
 新手が現れたのだ。更なる援軍──いや、本体と思しきより多くの死神達の軍勢が、数体
の巨大キンシーと共に大地を踏み締めて現れた。「……マジかよ」思わずゾッとしたように
顔を引き攣らせたダン達を見下ろして、この感情に乏しい巨兵達は佇んでいる。
「そこまでだ」
「これ以上、お前達の好き勝手にはさせない」
「……です」
 苦虫を噛み潰すように、再び構え出す一同。
 そんな彼女らの前に、この増援兵を率いて現れたのは、三人の隊長格──撫で付けた黒髪
が印象的な中年男性と神経質そうな青紺髪の青年、一見する限りクールで凛とした感じの女
死神達だった。


 その名は天上層が一つ、神界(アスガルド)。太古の昔、この世界群を生み出した神々こ
と創世の民・神格種(ヘヴンズ)が住まう世界である。始源、深淵、天上、地上、地底──
現在九つある世界の内、その序列自体は第二位であるが、彼らの存在という性質を照らし合
わせれば、実質この世界の“中枢”と呼んで差し支えないだろう。
『……』
 そんな世界、豊かで浮世離れした緑が辺り一面に広がるなだらかな丘を、アルスとエトナ
は二人してのんびりと歩いていた。
 地底から延びた“虚穴(うろあな)”の中で無数の魂達に引き摺り込まれ、目を覚ました
時には放り出されていたこの地。
 最初こそ仲間達とはぐれ、頼れる者も一向に見つからずに焦っていたアルスだったが、こ
うして暫く見渡す限り一面の緑を歩いていると、不思議と心は落ち着いていた。いや、目に
見えない何かにじわりじわりと宥められ続けたと表現した方が正しいだろうか? とにかく
胸元に兄の六華を抱えたまま、アルスはこのやや頭上を鼻歌交じりに浮かんでいる相棒と共
に、何かしら連絡手段の取れる場所はないかと彷徨っていた。
 転移装置──そこまでは言わなくとも、せめて導話の置いてある町の一つくらいは見つか
らないものか。本当に此処には、何も無いのだろうか……?
 清らかな環境故か、妙に上機嫌になったエトナとは対照的に、アルスは再び段々と不安に
なり始めている。
「はあ。町どころか、家の一軒も見えないね……。ねえ、エトナ。そっちは何か見える?」
「? うーん……。こっちもそれっぽいのは見当たらないねえ。ずーっと向こうまで原っぱ
やら丘が続いてるみたい、だけど……」
 そう不安な声を投げ掛けられ、お気楽そうにしていた彼女も、改めて辺りを見渡し始めて
いた。ふよふよと高度を上げながら、片手で庇を作って目を凝らしているが、すぐに都合の
良い返事はなさそうだ。
(……やっぱり、何も無いのかな? 自然が豊かというか、どちらかと言うと単に人の手が
入っていないって感じだし……)
 樹木の精霊たる彼女にとっては心地良いのかもしれないが、あくまでヒトの子たるアルス
が抱く不安は、徐々に膨らむ一方だった。
 エトナの感じ取った内容からすれば、此処は天上層の何処かで間違いはないらしい。過去
何度か赴いた古界(パンゲア)の街並みもそうだったが、あそこには貪欲に自然を開発して
ゆこうという気概が感じられなかった。何より一帯に漂う空気感も、普段過ごしている地上
のそれよりはずっと希薄で──そう、妙に白ばんで現実味に乏しかった。
 だが此処は……そんな古界(パンゲア)の集落とは、明らかに次元が違っている。もっと
あの感じが輪に掛けて強く、浮世離れしているのだ。まるで今自分達が立っているこの場所
が、存在しているようでしていないような。清らかな空気が漂っていても、どうにも不安が
拭えないのはそのためだ。つまり此処、この場所は──“嘘臭い”。
「……ス! ねえ、アルス!」
「えっ?」
「見つけたよ。こっちの丘のずーっと向こうに、大きな塔みたいなのが。ポンポンポンって
幾つも建ってる」
 ちょうどその時だった。一人じっと物思いに耽っていたアルスに、エトナが傍まで飛び戻
って来てそう伝える。弾かれたようにアルスは顔を上げ、彼女が「こっちこっち!」と引っ
張ってくるのをそのままに、さも延々と続いているかのような緑の丘を駆けた。
 するとどうだろう。確かに彼女の言う通り、ずっと眼下の原っぱと緩やかな丘陵地帯を抜
けた先に、これまでの風景とは正反対の真っ黒な塔らしき建造物群が、にわかに二人の視界
の向こうに映ったのだった。
「……何だろう、あれ?」
「さあ? 私に訊かれても」
「明らかに人工物みたいけど……街って感じじゃないなあ。それともこの世界は、ああいう
のが一般的なんだろうか」
 ぶつぶつと、遠巻きに広がっている“異質”に眉根を寄せているアルス。
 だがその一方でエトナは、もう既にそこへ向かいたくてうずうずしているようだった。折
角探していた町っぽい何かなんだからと、再び彼の手を引っ張って飛び出す。わわわっ!?
エ、エトナ、待って──! 兄の六華だけは落とさないようにと、アルスは思わず抱えたそ
の手を強く締め直して、この相棒の気紛れのままに最寄りの丘を下り落ちる。
「あいたたた……」
「だ、大丈夫? アルス? ご、ごめんね……?」
「いいよ。探そうって言ったのは僕だし。それにしても……まだ結構遠いなあ。ここからで
も、かなり大きいのは分かるんだけど……」
 幾つかの丘を登っては滑り、原っぱを抜けて。
 しかし如何せん、あまり変わり映えのしない景色が続いているためか、目的の建造物群に
辿り着くにはまだまだ掛かりそうだった。見上げるアルスとエトナの目には、尚も物音一つ
出さずに佇む、天を突くほど巨大な黒い塔らの姿がある。
「うーん……。だったらさ? 精霊伝令を使ったら(みんなにたのんだら)どう? あんな
建物があるってことは、誰かいるんでしょ? その人を見つけて、私達がここにいるよーっ
て教えた方が、迎えにだって──」
 だが、エトナがそうアルスに知恵を出そうとした、次の瞬間だった。
 それもそうだねえ……。振り向き、苦笑いと共に言おうとしたアルスの視界に、フッと突
如として数体の宙を浮く鎧騎士が現れたのだ。
 ちょうどエトナの背後、自分を挟んだ視線の先。
 何だこいつ──!? いや、アルスにはこれらに見覚えがあった。高濃度に圧縮・展開さ
れた、魔力(マナ)の翼を携えし生体兵器。過去・現在・未来、己の全てを捧げて絶大な力
を得た、神々の尖兵・天使(エンゼル)……。
「エトナ!! 危ない!!」
 故にアルスは、咄嗟に叫んで駆け出していた。相手が光を纏う剣を振り下ろしてくるより
も一瞬早く、彼の短縮詠唱による渾身の大樹の腕(ガイアブランチ)が、その横っ腹にめり
込んでいた。
「っ──?! ななっ、何!? いきなり襲って──ってええ、天使(エンゼル)ぅ!?」
「来るよ、エトナ! 準備して! よく分からないけど……あっちは殺る気満々みたいだ」
 その隙に慌てて飛び退き、隣に並んだエトナ。アルスはその間も、動揺の色を一切見せな
いこの天使(エンゼル)達を睨み、猛烈に思考を回転させていた。
 ついさっきまで、此処が何処か全然分からなかったけれど、こいつらがいるって事はおそ
らく。エトナが言っていた“天上層(うえ)”とも矛盾しないし、何よりこの異様な空気感
の理由も説明がつく。
 問題は──イセルナさんやミアさんでさえ苦しめられたこいつらを、自分達がどうやって
倒すかということ。
 いや、正面から戦おうと思ってはいけないか。可能であるなら、こいつらの行動範囲から
逃げる。地底武闘会(あのとき)とは勝手が違うかもしれないけれど、あくまでこいつらは
主である神格種(ヘヴンズ)達の命令で動いている。一旦そのパターンから漏れれば、まだ
逃げられる可能性はゼロじゃない……。
「侵入者、ヲ……発見」
「排……除。排、除……!」
 再び天使(エンゼル)達が、剣と丸盾を引っ提げて突撃してくる。
 エトナっ! アルスの合図に、彼女の魄魔導が発動した。幸い周りには植物や土の類が溢
れている。媒体には事欠かない。彼らの行く手を遮るように、且つアルスの持っていた六華
を一旦預かって守るように、瞬く間に伸びた図太い木々が二人を隠して初手を援ける。
「っ! やっぱり樹くらいじゃあもたない……!」
「いや、構わない。盟約の下、我に示せ──時の大輪(クロックライズ)!」
 元よりこの樹木のバリケードは囮だ。あくまでアルスの目的は、先ずエトナを含めた自分
達の機動力を底上げすること。戦士的な身体能力に劣る自分達が、この強敵相手に立ち回る
には、とにかくその動きについてゆけなければ話にならない。
 高速移動の術式を受け、二人は左右に分かれて走り出した。尚且つ個々の動きは直線的で
はなく蛇行を意識し、相手を常に挟撃できる位置取りを維持する。
「武器を止めるよ!」
「盟約の下、我に示せ──岩砲の台(ロックカノン)! 連撃強化(プラス)!」
「攻撃するよ!」
「盟約の下、我に示せ──過重の領(グラヴィフィールド)! 範囲強化(ラージ)!」
 エトナが樹木の触手で天使(エンゼル)達の剣を絡め取れば、アルスはそのがら空きにな
った身体に攻撃魔導を撃ち込む。彼女が直接攻撃を加えれば、束縛系の補助魔導でその動き
をアシストする。
 出し惜しんでいる余裕はない。アルスは自身の《華》の色装──魔導力場を伸張すること
ができる能力を最大限に活用して、攻撃に防御に、この神々の尖兵をねじ伏せる術を次々に
唱えていった。攻撃と攻撃の間、高速移動の効果が続いている間に、大・中・小の役割分担
を持つ使い魔・隣人たち(スピリッツ)も投入し、数の力でも劣るこちら側の増強を図る。
「後ろを取った! エトナ!」
「うん!」
「盟約の下、我に示せ──噛撃する大地(グランドバイト)!」
「強化(コーティング)!」
 正直消耗の激しい、ジリ貧の戦いだ。だがとにかくある程度頭数を減らさなければ、逃走
することもままならない。
 繰り返し魔導によってダメージを与え、体勢を崩す。ようやく天使(エンゼル)達の背後
に回り込めたアルスは、直後彼女に合図を送り、植物の被膜で強化された一撃をその形而上
の翼へと叩き込んだ。高濃度の魔力(マナ)が圧縮・展開されたこの翼は、彼らにとって力
の源そのもの。それさえ引き剥がすことができれば、大幅に相手の戦力を削げる筈だと、過
去の経験からアルスは考えたのだが──。
「くっ……! 駄目、三体かわされた!」
 それでもやはり、魔導という事前行動込みの戦いでは不利なのか、結局この一撃で全ての
天使(エンゼル)を捉えることはできなかった。トラバサミ状に足元からせり上がった双子
岩に、翼を噛み千切られた個体はぐらりと力を失って崩れ落ちたが、残る者達は尚も、仮面
の下の目を光らせて攻撃の意思を取り消そうとはしない。
「流石に欲張り過ぎか……。ならもう一度……!」
 しかし相手も、どうやら学習したらしい。こちらの戦略、意図する所を踏まえてか、今度
は互いに円陣を組みながら飛翔。まるで一個の回転する弾丸のように加速しながら突っ込ん
でくる。
「っ!? 背中を守って……!?」
「拙い。エトナ、僕の後ろに隠れて!」
 危険を感じ、直後咄嗟に硬石の盾(ストーンウォール)を重ねた防御壁を出すアルス。
 だがそんな守りも虚しく、天使(エンゼル)達はこれを物ともせず破壊──二人をそのま
ま激しく吹き飛ばしたのだった。
「がっ……。ぐうっ……!」
「あ、アルス! 大丈夫……!?」
 背丈の短い草むらの上に転がり、アルスは大きく肺の空気を押し出される。あちこちが傷
付き、頭から血が垂れ始めもした彼に、エトナは思わず狼狽している。
 天使(エンゼル)達が近付いて来ていた。ゆっくりと、各々に剣を片手にぶら下げ、尚も
彼を守ろうと纏わりつく隣人たち(スピリット)らをぺいぺいっと剥がしては進む。消え入
るオーラと共に「きゃー!」「ぐわ~!」と、この小人達が、一人また一人と減ってゆく。
(……ここまでか)
 アルス自身、天使(エンゼル)達を倒し切れるとは到底思っていなかった。
 ただでさえ個々の戦闘能力が極めて高く、自分達の基本補助向きの魔導では、力を削ぐこ
とは出来ても継戦能力を維持するのは難しいと考えていた。事実こちらの攻撃も、束縛系の
足止めも、彼らはことごとく自力で破ってしまっていた。多少のダメージならものともせず
に、予め組み込まれた命令のまま、こちらを攻撃し続けるだろう。
「侵入者、ヲ……発見」
「排除、排除、排除……」
 だからせめて、自分達に向かってきたこの個体達だけでも、動けなくさえすれば時間は稼
げると思った。おそらくは他にも、同じような天使(へいし)達が何処かで巡回している筈
だからだ。もしそんな彼らにまで勘付かれてしまえば、生存は絶望的だ。
(どうする? どうする!? 直接戦うのはやっぱり無理だ。ここはもっと、奴らの目を欺
く方向で逃走を──)
 だが次の瞬間だったのである。焦燥の中、必死に打開策を探ろうとしていたアルスの背後
から、突如として何か収束した衝撃波のようなものが、その首筋に叩き込まれたのである。
 ア、アルス!? 半ば反射的に叫び、彼を起こそうとしたエトナも、直後同じくこの一撃
を受け、白目を剥いて意識を失う。
「……やれやれ。天使(エンゼル)達が妙に騒いでいると思えば……」
「人間の子供と……精霊か。誰だ? 一体何故、こんな所に……?」
 先程までの、執拗な追撃が嘘のように治まって、その場に立ち並ぶ天使(エンゼル)達。
 はたしてそこに現れたのは、数人の男達だった。身体に巻き付けるように纏った白地の衣
装の上に、更に引っ掛けた同じく白や赤、金などを基調とした上衣──トーガのような服装
に身を包んだ一団が、気を失ったアルスとエトナを見下ろしている。
「私に訊くな。知る訳がないだろう?」
「はあ……仕方ない。一度連れ帰って、上の指示を仰ぐか……」
 何処となく困惑しているような、冷たく呆れ返ったような表情と声色。
 神格種(ヘヴンズ)だった。
 そうしてこの第二世界、神界(アスガルド)に住まう創世の民の一員らは、倒れたままの
二人を抱きかかえると──。

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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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