日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(企画)週刊三題「enemy」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:未来、機械、無敵】


 何で自分がこんな目に? という怒り、何でまだ自分は良い気があるんだろう? という
疑問が綯い交ぜになっている。
 翔太郎は、文字通り吹き飛んでしまった筈の自身のそれを自覚する。戸惑いながらも少し
ずつ瞼を開こうと、全身を動かそうと試みた。
 ……なのに妙だ。首から下が酷く重く感じられて動かない。
 命令は行っている筈なのに、まつで自分とは別物の違和感と繋がって──。
「やあ。お目覚めかね?」
 だからこそ、次の瞬間視界いっぱいに映り込んだ“変態”の顔に、翔太郎を思わず悲鳴を
上げた。ちょっと情けないぐらいに。これほど無防備なのは久しぶりかもしれない。
「ははは。それだけ大きな声が出るなら結構結構。一先ず感応プロセスは良好、と……」
 左右別々にあさっての方向を向いた眼と、細い銀縁の眼鏡。ニタッと嗤う口の中に垣間見
える金の差し歯。
 白衣を引っ掛けたこの初老の男は、彼のそんな反応に寧ろ笑い声を漏らすと、小脇に抱え
ていたクリップボードにペンを走らせている。
「貴方は一体……? それに、俺は確か……」
 困惑しながらも、翔太郎は呟く。一旦途切れていた記憶を手繰り寄せようとして、直後そ
の脳裏の映像(ビジョン)に戦慄した。青白くなって、震えが止まらなくなった。
 ……そうだよ。俺はあの時、自主練を終えてロッカールームに戻って来て。
 妙に開きっ放しになっている戸を見つけて、しょうがねえなあと閉じようとしたら……。
「儂は工学部で教鞭を執っている、大寺という。お前さんはうちの大学の陸上部の、一条君
じゃろう? 噂ぐらいは聞いとるよ。まだ二年生ながら幾つもの大会で成績を残し、レギュ
ラー常連となった期待のルーキーじゃと」
 この老教授・大寺は言った。今まで面識はなかったが、翔太郎も話くらいは話を聞いたこ
とがある。
 うちの応用機械科にいるという、“義体”開発の権威。
 且つ学会内でも、指折りの変人──。
「いやあ、それにしても酷い事故じゃったのう。儂が同じ大学におらねば、とっくに死んで
おったじゃろうて」
「……。っ!?」
 故に翔太郎は、次の瞬間ようやく自らの違和感の正体に気付いた。慌てて身体に被さって
いた布団を撥ね退けると、そこに変わり果てた自らの肉体を目の当たりにする。
 “義体”だった。首から下、胸元から下の大部分が、機械の身体に挿げ変わっていた。
 四肢は勿論、全身の主要なパーツは全て。加えてこれを見ている自分の片目も、実は包帯
の下は同じく“義体”で代用されていたのだった。
「……現場には、爆弾が仕掛けられておったのだそうな。半開きのロッカーの内側にピンの
ワイヤーを引っ掛け、うっかり閉めた者を──そんな几帳面な人間を、爆発に巻き込もうと
するかのようにな」
「──」
 あまりのショックで、翔太郎は暫くの間酷く脱力して言葉一つ出なかった。それこそ身体
に至っては、そもそも満足に動かすことさえ出来ない。
 どうやら事件を聞きつけ、彼がその技術をもって命を繋げてくれたらしいが……これでは
もう、陸上は……。
「すまないね。お前さんには申し訳ないが、部員達(かれら)の手前、見捨てる訳にもいか
なかったんじゃよ。此処に運ばれてきた時点で、全身の損傷率は六十八パーセント──こう
でもしなければ助からなかった」
 確かにこれが半世紀ほど前、“義体”の技術が確立していなかったら、自分は爆発に巻き
込まれた時点で死んでいただろう。今でこそ、事故や病気で“義体”を着けている人も珍し
くはなくなったが、これほどの規模のものは見たことも聞いたこともない。
 驚愕で固まったままだった。仮に日常生活に支障が出ないようにリハビリをしても、かな
りの時間と労力が掛かると聞く。腕の一本、片足だけならまだしも、それをほぼ全身となれ
ば尚更の筈だ。競技に戻れる可能性は絶望的だった。仮に戻れたとして、一体何年後になる
のだろう? そもそもその時は、身障者枠での復帰となる。もう二度と、今までのような競
技生活は戻って来ない。
(一体……。一体誰が、こんな……??)
 されど翔太郎は一方で、この状況を妙に冷静で俯瞰的に観ている自分を自覚していた。
 あまりにも突然の事で未だ心が付いて来れないのか、或いは絶望さえも振り切り、自身を
このような目に遭わせた犯人に対して怒り始めていたのか。
 一体誰が、何の為に?
 そもそも今朝──大寺に訊いた所、爆発当日から既に四日が経っているそうだ──の自主
練は、部の仲間達全員が知っていた訳ではない。名前からして当たり前だが。事前に今回の
ことを知っていたのは、グラウンドの使用許可を取って貰った監督と、一部のチームメイト
だけの筈である。そうでなければ、さも狙い澄ましたように自分を標的にした爆弾など仕掛
けられない。
 誰だ? 当日の自分の予定を知っていて、尚且つそんな物騒な物を自作ないし用意できる
知識や技術のある人間……。
(……中込さん?)
 故に彼は、酷く動揺した。独り頭の中で自問自答しながら、チームメイト達の顔を消去法
で残していった先に、一人だけそんな真似が出来、尚且つ動機があると思しき人物を想像で
きてしまったからだ。
 中込栄介。二つ上の先輩で、自分と似たタイプの寡黙でストイックなランナー。
 そして他ならぬ自身が、レギュラーの座を奪う格好となった当人である。
(動機なら、ある。それにあの人は、工学部の所属だ。危険物の取り扱い免許も取ってるっ
て聞いたことがあるから、作ろうと思えば作れる筈……)
 にわかには信じられなかった。少なくとも自分が知る彼は、確かにルーキーとして周囲か
ら持て囃される自分に度々苦言を呈してきたが、それはあくまで天狗にならないよう釘を刺
すという意味合いが強かった筈だ。只々単に嫉妬からなどとは……思いたくない。
 翔太郎は文字通り、叩き潰されていた。奇跡的に“義体”で一命を取り留めたとはいえ、
以前のような競技生活に戻れる可能性は限りなくゼロに等しい。将来有望とされていたその
才能を、理不尽にも奪われてしまったのだ。
 そんな事実と、犯人の可能性について項垂れる彼に、大寺が改めてゆっくりと近寄る。
「これも乗り掛かった船じゃ。儂に出来ることなら、可能な限り力を貸そう。これほど大き
な怪我では、他の技師(もの)には手に負えんじゃろうからのう」
「……」
「所で、一条君」
「? はい」
 だがちょうど、その時だった。
 そう深刻そうな、相手に応じた表情(かお)もそのままに、彼は次の瞬間翔太郎自身も思
いがけないある提案をしてくる。
「──お前さんは、“ヒーロー”に興味はあるかの?」

 この出会いが、はたして切欠だった。尤も世の中の大半の人間は、爆発事故から二年とい
う歳月の間に、かつて自分達が熱を上げていた若きアスリートに起こった悲劇など、とうに
忘れ去ってしまっていた筈だが。
 時系列は大よそ、この前後からである。科学技術が飽和したと嘯かれて久しいこの時代に
おいて、まことしやかに街に“怪人達”が蠢き始めたのは。
 ある者は突然変異によって生まれた凶悪な生物。ある者は棄てられた技術を纏いし狂気の
徒。またある者は主にさえ忘れられ、暴走を始めた殺戮機械──。
「ヲオォォォォォォ……!!」
「……お久しぶりですね。中込さん」
 誰もが下り坂を想起して諦め、各々の家に引き篭もりがちになったビル群。そのもう何度
目とも知れぬ夜闇、路地裏の一角で、彼らは久方ぶりの再会を果たしていた。一人は全身を
特別な“義体”に替えて立ち、対するもう一人は最早ヒトですらあることを辞めて。
 翔太郎だった。以前よりも傷痕だらけの顔になり、明らかに一般のそれとは異なる機械の
身体に古びた粗布のマフラーを巻いてこれを見上げている。中込──かつて同じ大学で同じ
スポーツを志した先輩は、今や見上げるほどの巨躯、異常なまでに筋骨隆々で全身が緑色に
染まった怪物へと成り果てていた。
「オ、オ……? イチ、ジョウ? ソウカ、オマエカ……。ミロヨ、オレハカワッタンダ。
モウダレニモマケナイ、ダレモオレニハカテナイ。オレハ、ツヨクナッタンダ」
「……」
 まだ辛うじて自我らしきものは残っている。だがそれは、厳密には妄執と呼ばれる類のも
のだろう。
 かつて中込だった緑色の怪物は、そう遠い記憶にある仇敵(ライバル)の姿を認めると、
ボコボコと見せつけるように自身の異様なまでに発達した四肢に力を込めた。翔太郎はじっ
と黙ったまま彼を見上げている。……憐れむような、贖罪の意識に苛まれているような。
「貴方は強かったんですよ。もう、あの時から。だから……そんな姿になる必要なんてなか
ったんです」
 彼は堕ちて(かわって)しまった。誰よりも速く、誰よりも強いアスリートになる為に怪
しい薬に手を出し、やがてアスリートでも人間すらでもない化け物に変貌してしまった。
 ぎゅっと粗布のマフラーの下で、翔太郎は静かに唇を噛んでいる。自業自得、自己責任だ
と言ってしまえばそれまでだが、改めて自身──当時アスリートだった自分への憎しみが彼
をここまで変えてしまったのだと思うと、悔しさと怒りが沸々と込み上げてきた。
「……終わらせましょう。此処で、全部」
 オオオオオオオオッ!! そして直後、巨大な緑の怪物と化した中込がその剛腕を振り上
げて襲い掛かってきた。加えてスピードも侮れない。同じく異常に発達した両脚の筋肉は、
その巨体からは想像できないほどの速さでの攻撃を可能にしたのだ。
「──」
 しかし翔太郎は、それ以上に速かった。
 まるで雷光。刹那視認すら出来ず、霞むように消えたかと思った彼は、次の瞬間古びたア
スファルトを粉砕した中込の、遥か頭上に跳んでいた。夜闇の路地裏がにわかにスローモー
ションに、されど確実に破壊の渦に呑まれてゆく。そんな光景をじっと眼下に映しながら、
翔太郎は真っ直ぐにその機械の掌を開き、かざしていた。胴体、胸奥の動力炉から供給され
る膨大なエネルギーが次々と掌に空いた穴に収束してゆき、この真下の中込に向かって解き
放たれる。
「焼却!」
 故に轟と、辺り一帯に弾ける猛火。膨大なエネルギーの塊を叩き付けられた中込だった化
け物は、そのまま赤い光の中で塵に還っていった。ストンと、まだ周囲が余波で高熱を持っ
ている中、翔太郎は着地する。
 全身を代替する金属質。放出を終えた、戦闘用の特別な“義体”。首に巻いた粗布のマフ
ラーが、そんな自身の攻撃の余波で揺れている。
「……」
 彼は暫くの間、独りでじっとその場に佇んでいた。眉間に深い皺を寄せて中々その場から
立ち去ろうとはしなかった。

 やがて彼という存在は、巷でたちまち噂となり始める。
 一体誰が最初に名付けたのか──人呼んで“撃滅者(ストライカー)”。全身を尋常では
ない出力の“義体”で覆い、世の蔓延る悪を、何処からともなく現れては叩き伏せる存在。
或いは街中で途方に暮れる無辜なる人々を、何の見返りもなく助けに現れる存在。
 しばしば各地に出没する、暴走した機械達を、彼はその身一つで破壊した。或いは歴史に
忘れ去られていた古種族達からの侵略に、敢然として立ち向かった。胸奥に嵌め込まれた輝
く球型の動力炉の力で、如何なる巨体も数も、まさしく神速の攻撃によって叩き伏せていっ
たのだった。人々の安寧を脅かす軍勢を、その掌から撃ち出すエネルギー砲によって、一瞬
にして焼き尽くしたのだった。
 或いは、道端で困っている市民に手を差し伸べる。
 荷物が重くて立ち往生している老婦人がいれば、代わりに持ってあげたし、道路に飛び出
して危うく車に轢かれかけた幼子を、その神速と跳躍で救って母親の下に届けたりもした。
ビルの外壁で作業をしていたゴンドラが崩れれば、その眼下に居合わせた人々を守るべく、
落ちてきた瓦礫を全て破壊──或いは片手で軽々と受け止め、これを救ったりもした。故に
人々は、彼を時代の救世主・平和の象徴として讃え、全幅の信頼を寄せるようになった。

『──そうですね。そんな力があるのなら、俺は、あらゆる悪意から皆を守りたい。その為
になら、この機械の身体も捨てたものじゃないのかもしれない』

 尤も“撃滅者(ストライカー)”こと一条翔太郎の動機は、もう少しエゴによるものだ。
あの日大寺に、開発中の戦闘用“義体”を着けてみないかと誘われた時、その力を振るう理
由をそう語ったのだった。
 もう二度と、誰かが悪意ある者によって涙を流さないように。
 それは他でもない、自分自身の経験から来る理由(もの)だったのだろう。中込の嫉妬、
強烈な害意によって選手生命──だけではなく命そのものまで奪われかけた人間として、な
らば拾われた残りの人生を他人びとの為に使おうと誓ったのだ。即ち言い換えれば、贖罪の
為である。事実厳しいリハビリを乗り越え、第二の人生を歩み始めた最中、当の中込の変わ
り果てた姿を目の当たりにした彼は、これを自らの手で葬り去っている。
「ありがとう、撃滅者(ストライカー)!」
「俺達のヒーロー!」
 将来有望な若きアスリート。機械仕掛けの平和の象徴。
 状況は全く違うが、期せずして翔太郎に向けられるようになった声は、結局黄色いそれへ
と変わっていった。尤も当の本人は戸惑いというか、正直苦笑(わら)いを隠せずにいたの
だが、概ね広く市民達からの評価は好意的なものだった。
 その……筈だった。

 ***

「博士。ただいま戻りました~」
 しかしヒトの世は、何時だってままならない。古来より繰り返し、出る杭は叩かれてきた
というのが歴史の常だ。
 事件はそんな、彼がすっかり世の中に“ヒーロー”として認知されるようになって暫くし
たある日に起きた。この日も街をパトロールし、拠点兼住処である博士──大寺教授の研究
室に戻ってきた時、翔太郎は若干の違和感を覚えた。……返事が無いのだ。いつもならあの
妙にひょうきんで憎めない声色が、そのいでたちと共に迎えてくれる筈なのだが、今夜ばか
りは研究所内全体がしんとして物音一つしない。
「……」
 嫌な予感がした。もう身体の大部分はあの事故以来、すっかり機械の“義体”に取り換え
られてしまっているものの、こと生き残った自分自身たる脳とそこに刻まれてきた経験は、
彼に事の異変を直感させるには充分だった。
「博士? どちらにいらっしゃるんですか?」
 やや控えめに声を出しながら、その実用心しながら暗がりの研究所内を。
 胸のエネルギー炉は、いつでも出力出来るようにスタイバイさせておいた。下手をすれば
此処自体が吹き飛んでしまいかねないが、自分の留守を狙って何者かが侵入してきたならば
用心しない訳にはいかない。場合によっては、この力を生身の人間にさえ使わなければいけ
ないかもしれない。
「──っ!? 博士!」
 すると翔太郎は、やがて所内の一角で変わり果てた大寺の遺体を発見する。いつもの白衣
を引っ掛けた格好のまま、デスクの椅子を百八十度こちらに回転させた状態でぐったりとし
ている。赤黒い痕が複数床の絨毯に向かって垂れている。状況からして、おそらく一人机に
向かっていた所を襲撃され、振り向きざまに射殺されたといった所か。
「……誰が、こんなことを」
 ギリッと翔太郎は強く強く唇を噛んだ。また──身近な人を死なせてしまった。
 ここ十数年の自分達の活動上、恨みを買う相手には事足りている。だが博士もそうした点
は重々承知な筈で、事実この研究所内には自分以外にも多くの警備用ロボが巡回している。
(ということは、此処の警備体制も把握した上で攻めてきた? 軒並み電源が落ちているの
もその一環か……?)
 とにかくじっとなどしていられない。翔太郎は再び動き出した。あの日以来、十数年にも
渡る主治医でありパートナーを、理不尽にも殺されたのだ。怒りと憎しみはこの機械の体、
心にも沸々と湧き上がって来ている。

「──撃滅者(ストライカー)が帰って来たようだな」
「はい。現在二階、博士の執務室から移動。廊下に出ています。動か……ない? いや、こ
れは索敵機能!」
「っ……、やはりな。あれには広範囲の探査機能も備わっているという。用心を重ねて一旦
所外に出ておいて正解だった」
 犯人は、夜闇に紛れてじっとこれの動きを待っていた。部下の一人が探査装置の画面を覗
き込んで緊迫している中、この隊長格らしき男以下完全装備の兵士達は、そう各々にごくり
と唾を呑んで会敵するその時を待っている。
「奴はおそらく、このまま所内を網羅して侵入者の存在を確認する筈だ。叩くべきはその動
作が終了した直後、次の行動に移るまでの僅かな時間だ。……主なフロアへの最短ルートは
頭に叩き込んでいるな? 私の合図で、一気に奴を撃つ」
『了解(ラジャ)!』
 暗がりと草むらに隠れたまま、彼らは応答を投げ合った。緊張しながらその胸元に抱えら
れているのは、本来戦車などを破壊する為の携行型ランチャーである。
 ──確かに市民達は、彼という存在を歓迎している。
 だがそんな人々とは裏腹に、この過剰な戦闘能力を備える彼という存在それ自体を憂う者
達もまた存在していた。こと軍事・政治の側に立つ勢力である。基本医療目的で活用される
“義体”だが、一方でその技術は使い方次第で軍事方面にも転用できる。
 同技術の権威、大寺博士によるものというだけで、関係者はかねてより震え上がっていた
のだ。まだ装着者自身が善良で、専ら人々を守る為に使われているとしても、万が一現状の
技術体系でさえ規格外なあの力が他の勢力に渡り、悪用されたら……?
(全く……。博士も要らぬものを作ってくれたものよ)
 隊長格の男はそう、内心今日何度目とも知れぬ嘆息をつく。
 あくまで自分達は軍人で、上の人間達のパワーゲームにどうこう言える立場ではないが、
流石にあれをなるべく壊さず捕まえてくる──無理ならばいっそ完全に破壊してしまえとい
うのは、いくら何でも滅茶苦茶な命令だ。各種補正機や専用の武器を装備して来ているとは
言っても、生身の人間数隊であんな“化け物”を止められるものか。
(やはり博士を人質に──いや、あれの速さを前に、そんな作戦は通じない)
 だからこそ、なるべく真正面から戦う道を避けて避けて通ってきた。少なくとも博士を始
末できたことで、今後あれの維持・管理は不可能になる。戦略の上では……既にこちら側の
勝ちだ。
「シグナルに変化あり! 広範囲のエネルギー反応収束! 探査機能を切ったようです!」
「よし……今がチャンスだ。総員、一気に奴を叩くぞ!」
 了解(ラジャ)! やがて敵が虱潰しでの捜索に切り替えたとの報告を受け、この隊長格
以下、研究所の外縁に隠れていた面々は一斉に動き出した。ガチャガチャと大型の銃身を揺
らしながら、決死の覚悟でこの“強敵”の討伐へと向かう。
                                      (了)

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  1. 2019/02/01(金) 00:00:00|
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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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