日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅶ〔97〕

 これまでの旅がことごとく波乱含みだっただけに、こうもあっさりと着いてしまうと逆に
不安になる。

 霧の妖精國(ニブルヘイム)を発ってから十五日──およそ一週間と三日。
 古都ケルン・アークに到着したイセルナ以下北回りチームは、市中の一角に宿を取り、先
だって面会を要請したディノグラード家からの返答を待っていた。
 天上層特有のゆったりとした時間の流れと、古く染み付いた匂い。
 だが、そんな時にノスタルジックなこの地の空気も、今のジーク達にはじわじわと焦りを
促す材料にしかならなかった。立ったり座ったり、窓から眼下の風景をぼんやり眺めたり。
スライド式の間仕切りで男女別に分けられる大部屋で、一行は思い思いに過ごしていた。寡
黙が、気鬱が部屋一面に横たわっている。
『……』
 その理由は、単純なことだ。解りきっている。
 先のニブルとアルヴ、新旧妖精族(エルフ)達の争いに翻弄されつつも、何とか聖浄器・
深緑弓(エバーグリス)を手に入れたジーク達だったが、事件が終わって一段落……とはい
かなかったからだ。心中、決して穏やかではなかったからだ。
 体力的にというよりも、精神的に。
 ぐったりとめいめいに沈黙しているのは、その後の人々の評価故だ。保守的で平穏を望む
古界(パンゲア)の者達にとり、先の一件で「どちらが正しかったか?」はさして重要では
なかったのだ。開明派が、ブルートバードが掻き乱した──ただその事実一点をもって不快
なのであり、この市中でも散々その不満や悪評を耳にしてきたのだ。用心のため、外出時に
は変装やほっかむりを被っておいて正解だったと思う。目の前に当の本人達がいると分かっ
たら、はたしてどんな罵声を浴びせられたことか。
 ……自分達は、一体何の為に戦ったのだろう?
 聖浄器を手に入れる為、そして“結社”の脅威と戦う為には違いない。ニブルとアルヴの
対立に関わる形になってしまったのは、ひとえに成り行きだとも言える。
 だが結局、あの戦いで自分達は何を得られたのだろう? 何を守れたのだろう?
 どれだけ特務軍としての大義名分を抱えても、ミシェルら“守人”達を守れなかったのは
紛れもない事実だ。長老達の暗殺という形で一先ずの終止符が打たれたとはいえ、アルヴと
ニブルの対立は解消できなかった──寧ろ溝は深まったままで、その実単に振り上げられた
拳を下ろさざるを得なくなった、というだけに過ぎない。
 その意味では、市民(かれ)らの言う通りなのかもしれなかった。
 こちらがどれだけ“結社”の脅威を説こうとも、結果が伴わねば、ただ“掻き乱された”
という事実・感慨ばかりが残るのである。正直、もやもやした気持ちは否めないが、それが
現実だ。
(……ま、本を正せば俺達の個人的な戦いだったからな。誰かの為ってのは、結局後付けだ
ったのかもしれねえが……)
 そう、ぼんやりとジークが窓際で古都(ケルン・アーク)の静かな街並みを眺めていた時
のことだった。トントンと、部屋の入口が何者かにノックされる。
 一同が誰からともなく顔を見合わせて、ハロルドとレナがこれに応じた。開けた扉の向こ
うに立っていたのは、黒い正装に身を包んだ竜族(ドラグネス)の男性。
「クラン・ブルートバードの皆さんですね? ディノグラード公ヨーハン様より、皆様のお
迎えを仰せつかりました」
 ようやく来たか……。この慇懃な使者の到着に、ジーク達はおもむろに立ち上がった。皆
にイセルナが、纏めてある荷物を運ぶように指示する。それまで物静かだった時間が、にわ
かに緊張し、慌しくなる。
「表に鋼車を停めてあります。どうぞ」
 サッと無駄のない所作で、廊下の先を促す使者。ジーク達は彼の案内のままに、ぞろぞろ
と出発の準備をし始めた。
 僅かに唇を結んで、神妙な面持ち。ようやく彼に、最後の聖浄器に会える。
 リカルドやシフォン、オズなどが荷物をぶら下げ、先ず外に出て行った。その後ろをハロ
ルドやレナ、クレアにジークといった残りの面々が続く。この部屋の主達が減ってゆく。
 そこに、一通の開封済みの封筒が残されていた。備え付けの花瓶を文鎮代わりに、小振り
な丸テーブルの上に置かれている。
 最後にイセルナが、これをサッと花瓶の下から引き抜いて部屋の中を見渡した。忘れ物や
戸締りを確認してから、自身も肩に引っ掛けた荷物を揺らし、踵を返す。
『──』
 アルスからの手紙だった。
 彼が滞在中のジーク達に宛てた、件の解読結果だった。


 Tale-97.続く戦い、末路の始まり

 無数に増殖した自在鑓(ブリュンナク)の刃が雨霰と降り注ぎ、大量の土埃が舞う。
 ワーテル島結界内、中枢部。追い詰められたヘイトが放ったのは、十二聖の一人“千面”
イグリットがかつて用いていた聖浄器だった。
 魔獣や魔人(メア)、あらゆる魔性に多大な効果を発揮する武具。
 その集中砲火を浴びた重鎧の男、“武帝”オディウス以下使徒達は、無事で済む筈などな
かったのだが──。
「……」
 何とこれを防いだのはアヴリルだったのだ。己の全身から大量の蟲型魔獣達を発生させる
と、半ば自身と一体化しながら大きく左右にこれを広げ、文字通り自らが盾になって仲間達
を守り抜いたのだった。
「アヴ、リル……?」
 つうっと、ボロボロになった彼女の口元から流れた血。
 その全身に、蟲型の魔獣達に、おびただしい数の投剣が突き刺さっている。
 オディウスら残る“結社”側の面々は、次の瞬間彼女が身を挺したこの行動に、暫く目を
見開いたまま硬直していた。ヒュウガやウル、討伐軍側の面々も、彼の血の《雨》で作った
ドームや大盾型の具現装(アームズ)で間一髪守られ、同じく驚愕している。
「……何故」
 そしてその動揺・困惑は、当のヘイトもまた同じだった。
 半分引き剥がされた黒瘴気の異形が、ジュウジュウと現在進行形で焼けるように少しずつ
浄化されている。肉壁代わりにしたその瘴気の外皮が溶け切る前の、時間との戦いだったの
だが、目の前で起こった予想外の犠牲に、彼自身すぐには動けなかったのだ。
「……本当、あんたは変わらなかったわよねえ。昔から危なっかしかった」
 ボタ、ボタッとやや粘っこい血を垂らしながら、アヴリルはその呟きに応え始めた。まだ
他の使徒達は固まっている。ゆっくりと時間を引き延ばされたように、彼女の最期の言葉だ
けが一つまた一つ、場に遺されてゆく。
「ねえ、ヘイト。確かに私達が魔人(メア)になった理由は人それぞれだけど、一つ確かな
ことがあるわ。……その“憎しみ”は世界を壊すことはあっても、好転させることはできや
しない」
 フッと、満身創痍にも拘らず、そう微笑(わら)ってみせるアヴリル。
 だが対するヘイトは、それを自分への挑発と受け取ったようだ。彼女に突き刺さった無数
の自在鑓(ブリュンナク)を再操作・回収しようとするが、それを他ならぬアヴリル自身が
残る力を全身にぐぐっと込めて押し留める。
「あんたも解っていた筈よ。あんたがそのつもりで、全部壊して作り直すんだと叫んでも」
 アヴリル……。バトナスが、フェイアンが、他の使徒達がそれぞれ彼女の名を口にしよう
としていた。仲間の犠牲に激情し始める端緒、決して美しいとは言えない献身──。だが当
の彼女は彼らに背を向けたまま、ぐんっと大きくその自在鑓(ブリュンナク)が突き刺さっ
たままの蟲達の両腕を振りかぶる。本来ならば不自然な形にぎゅるんと捻って、刃先側をヘ
イトの方へと向ける。
「だからお子ちゃまだって言われるんだよ。組織に切り捨てられる」
 この世界を救う、同志に値しないってね……。
 最後のその一言は、彼女の消えかかる呟きと意識と共に発し切れずに終わった。代わりに
勢いよく振り抜かれた蟲達の両腕は、ヘイトを左右から挟み潰すように衝突する。
「ぐっ……がああああああァァァーッ!!」
 即ち、自身が放った無数の自在鑓(ブリュンナク)による串刺しだ。
 サンドイッチすると同時に緩められた蟲型魔獣だった物達の身体は、緩んで刺さっていた
これら聖なる投剣を手放し、今度は彼の身体へと移し替える。再び次々と噴き出た聖気に、
ヘイトが断末魔の声を上げながら絶叫した。バチバチバチッ! と、彼を纏っていた黒瘴気
の皮は瞬く間に吹き飛び、突き破られ、その身体を大きく宙に弾き飛ばす。同時、振り抜い
て左右に交差したアヴリルの蟲達の両腕は空を掻き、そのままどうっと彼女を前のめりに倒
れさせたのだった。
「っ、アヴリル!!」
「くそっ、何て無茶を……!」
 そこでようやく、他の使徒達が駆け出し始めていた。バトナスやセシルを始め、面々がう
つ伏せに倒れた彼女を抱き起こし、呼び掛ける。だが傍目から見てももう、ボロボロになっ
た彼女は最早虫の息だった。
「……皆、無事?」
「ああ。お前のお陰で、何とかな」
「そう……。よかっ、た──」
 最期の最期まで、同志達の無事を気に掛けて、彼女は力尽きた。腕の中で眠るように動か
なくなった長年の仲間の一人を、バトナスは瞳を揺るがせて見つめている。
「アヴリル! アヴリル!」
「どうして……。あんな奴の為に、死ぬことなんて……」
 魔人(メア)は半ば不死の存在だ。だから彼女のように、自ら膨大な聖気や霊海の中へ飛
び込むような自殺行為さえしなければ、滅びはしない。
 ……まさか、こんな所で同胞を喪うことになるとは。
 哀しみというより驚き、悔しさだった。オディウス達が彼女を囲み、看取る中、その身体
は少しずつ聖浄器のダメージによって塵に還り始めている。
「ふむ……。よもや、こやつが持っていようとはな」
 だがそんな時である。カツ、カツンと使徒達の向かいで足音がしたかと思うと、そうウル
が地面に転がっていた自在鑓(ブリュンナク)を拾い上げた。ヘイトが倒れ、術者を失った
ことで、本来の装飾短剣一本に戻ったそれを彼が回収したのだ。
「ですがまあ、これでこの戦いにも意味はあったのだと主張できますよ。本来言っていたそ
れとは違ってしまいますが」
 討伐軍側の面々だった。自在鑓(ブリュンナク)を横取りしたウルと、その傍に立ってこ
ちらを眺めるヒュウガ。更にその背後で、改めて攻撃態勢を向けてくる配下の兵士達。
「てめぇら……」
「漁夫の利って訳かい? 随分と舐められたものだ」
「返して! それはアヴちゃんが、命がけで守ったものなの!」
「それは無理な相談だねえ。こんなラッキーな戦利品、わざわざ手放すとでも?」
 まだ幼いエクリレーヌの叫びにも、ヒュウガ達は非情だった。元より両者は互いに“敵”
であり、その規模で言えば、彼女ら“結社”側の方がよっぽど多大な被害をこの世に撒き散
らしているのだから。
「あとついでに、そこに転がっているヘイトの首も貰っていくよ? というか、元々の目的
はそっちなんだけど。死んでるけどね」
 更にヒュウガがちらっと、同じくジュウジュウと塵に還っている、白目を剥いて倒れたま
まのヘイトの亡骸を見遣って言った。彼らにとってしてみれば、元々の狙いであった首を横
取りされたのだ。何かしら“手土産”なり“証拠”がなければ、示しがつかないのだろう。
「……交換とはいかないか?」
 事切れたアヴリルの前で、ついた片膝を起こしながら、オディウスが言った。じっと油断
ならぬ目力をもってこの相手を睨みつけてはいたが、当のヒュウガは首を縦には振らない。
代わりに小さくため息をついて、寧ろ静かに哂ってさえいる。
「無理だね。テロリストとは交渉しない。それに、もしヘイトのさっきの言葉が本当なら、
お前を逃がす訳にはいかないしね?」
 “一度は自分を追い詰めた連中の武具”。
 自在鑓(ブリュンナク)を放つ直前、彼が叫んでいた言葉が自分達の予想通りならば、目
の前にいるこの男の正体は──。
「……そうか」
 すると小さく呟き、重鎧の男こと最後の皇帝・オディウスは立ち上がった。周りの他の使
徒達も、その横顔を緊張した面持ちで見遣り、同じく一人また一人と立ち上がる。
 アヴリルはまだ、彼らの足元で静かに眠っていた。チリチリと、自在鑓(ブリュンナク)
の影響で浄化され、いずれはヘイト共々浄化されて消えて無くなってしまうだろう。
 大剣と長剣、或いは大砲型の具現装(アームズ)。双方が再び武器を構え、睨み合った。
静かに火花を散らした。「リュウゼン」ぼそっとオディウスが前を向いたまま呼びかけ、合
図する。天地創造を維持し続けている彼を始め、残る使徒達も、いつでも戦える状態だ。
 ヒュウガら討伐軍は、本来の目的であったヘイトの遺体を持ち帰りたいし、オディウスら
“結社”側は、アヴリルがその命を賭してまで無力化した自在鑓(ブリュンナク)を、みす
みすこのまま盗られる訳にはいかない。
『……』
 互いに睨み合い、じりじりと。
 そして次の瞬間、張り詰めた空気が限界を迎えた刹那、両者は激しく地面を蹴って──。


 器界(マルクトゥム)東方、今は寂れてしまった元鉱山町・硬色の町(ボナロ)。
 その外れにある、現在は閉鎖された坑道を見上げて、ルークや話を聞いて集まって来た町
の人々は、不安そうにこの真っ暗に空いた出入口の前に立っていた。
「大丈夫かなあ? 例の兄(あん)ちゃん達」
「ああ。いくら地上(うえ)で有名な冒険者連中と言ってもなあ」
「こっちの思惑通り、中の化け物を始末してくれてりゃあいいが……」
 半ば嘆くように、放り出すように、ぼそぼそと呟いている住人達。
 実は彼らは、ルークからダン達があのクラン・ブルートバードの面々だと聞いた時、この
機会に坑道内に巣食う魔獣達を倒して貰おうと画策していたのだ。それまで何となくタブー
として、地元の人間も滅多に近付かなくなった此処も、忌避地(ダンジョン)でさえなくな
れば、少しは町にも活気が戻ってくるかもしれない……そう考えたのだ。
「でも俺、昔まだ、爺ちゃんが生きてた頃に聞いたことがあるんだよ。何でもあの中には、
魔獣よりもおっかねえ化け物が棲んでるって……」
「あー……。それなら俺も、何かで聞いたことあるなあ」
「ただの噂だろう? 向こう見ずな馬鹿が入り込まないように、昔の人間が触れ回ったって
オチじゃないのかよ?」
 しかし、坑道が閉鎖されたのはもう百年以上も前の事だ。仮にまた採掘が出来るようにな
ったとしても、今更全盛期の頃には戻れない。それは他ならぬ彼ら住人達が、一番よく解っ
ている筈だった。それでももしかしてと、にわかに湧いた話に期待してしまった──ただそ
れだけのことなのかもしれない。
 そもそも彼らは、ブルートバードは戻って来るのだろうか? もう既に、坑道の何処かで
力尽きているのではないだろうか?
「……もし、そうなったらどうするよ? 誰が責任を取るんだ?」
 故に段々と不安ばかりが募ってきて、互いにちらちらと顔を見合わせて。
 あーでもない、こーでもない。そもそも坑道閉鎖の理由となった昔話の真偽如何から、今
回もまた命知らずの冒険者が一団、帰らぬ人となった場合の事後処理について。
 早くも諦めモードになった青年の一人が、そう皆におずおずと問いかけた。その言い口に
は言外に、自分は被りたくないという意図がありありと感じられる。
「取らんさ。誰も」
 集まった面々の内の、古老が言った。青年や他の皆に向き直ることもなく、ただじっと坑
道が口を開ける、暗がりの奥を見つめている。
「どうもせんよ。島が落ちてきたのだって、そもそも“結社”とやり合ってきた所為じゃ。
その急先鋒が連中だろうに。儂らは巻き添えを食ろうておるだけじゃ。勝手に地上の問題を
持ち込んできて、掻き乱しておるだけじゃ」
 忌々しく眉間に皺を寄せて、この古老はぶつぶつと呟いていた。そこには天上層の住人達
とはまた別のベクトル──己のペースを最優先する、独立独歩の気風が窺える。
 加えて彼は「それに、奴らは自己責任だと認めて中に入って行ったんじゃろう?」と、こ
の閉鎖区域の管理人へ確認するように言った。「え、ええ……」この男、最初ダン達が坑道
内に入る時、柵の鍵を開けてくれた管理人は思わずコクコクッと頷いていた。彼の言わんと
する所を理解し、それならば自分に非が向けられることはないと、若干苦笑いのまま、何処
か安堵した表情さえ浮かべている。
 もし連中がいなかったら、こんなややこしい事にはなっていなかった──。
「……でも、私は信じたいのですよ」
 だがそんな面々の中にあって、唯一ルークだけは真逆の思いでこの廃坑道を見上げていた
のだった。皆が口々に彼らを使い捨てようとする中で、唯一その帰りを待っていた。
「彼らはただの冒険者とは違います。それはこれまでの活躍が、証明しているでしょう?」
 そんな若い館長の言葉に、それまである意味で団結しつつあった面々が渋面を作った。彼
の言うように、クラン・ブルートバードが挙げてきた成果の数々は、既に各種メディアが拡
散して久しい。こと大都の一件では、彼らがいなければ四魔長達も無事には帰って来れなか
っただろう。
「けっ、結果論だろう?」
「そうかもしれませんね。でも、その結果が現実です」
 他の若い面子がちらほらと、たじろぎながら反論しようとする。しかし当のルークは、殊
更彼らと喧嘩腰になることも、語気を荒げることもなかった。ついっと、静かに向けた先は
自身の管理する史料館で、そっとかつて事故で痛めてしまった左足の腿を撫でる。
「この世の中に、変わらないものなんて無いんですよ。そしてそれらは、きっと誰かがやら
なければならない」
 当てこすったつもりはない。だが彼が何となく撫でたその左足を見て、場の住人達がばつ
が悪そうに視線を逸らしていた。何処かで彼らも解っていた筈だ。でも、それらが暴力的な
までに、自分達を蔑ろにするのが怖かったのだ。
(……ダンさん、リュカさん、グノーシュさん。どうかご無事で……)
 視線を坑道を見上げる形に戻す。ルークはそう心の中で、彼らの無事を祈った。
 もしかしなくても、自分は楽観的なのかもしれない。だが、祖父が彼らと隠居先で出会っ
たことは、何もただの偶然ではないような気がする──。
「おーい!」
 ちょうど、そんな時だったのだ。それまで音一つなかった坑道の中から、聞き覚えのある
声が聞こえてきた。
 ダン達だった。皆程度差はあれどボロボロになっていたが、一見して五体満足のまま、こ
ちらに手を振って歩いて来たのである。
「なっ──?!」
『で、出て来たあ!?』
 驚いたのは住人達だ。ざわざわと目に見えて動揺し、帰って来たダン達を思わず囲むとや
れ大丈夫だったか、化け物はいたのかと口々に質問を浴びせる。「あー……」一同を代表し
てダンが、ポリポリと頬を掻いて苦笑していたが、次の瞬間ついっと後ろにいる相棒を親指
で指し示すと言う。
「大丈夫。多少ごたごたはあったがピンピンしてるよ」
「聖浄器も取って来たぜ? ほら、轟雷鎚(ミョーニル)だ」
 そうチリンとグノーシュが手に鎖を巻きつけ、見せてきたのは、首飾り型の魔導具。他な
らぬテュバルの聖浄器・轟雷鎚ミョーニルの待機形態だ。
 リュカやステラ、マルタらがざっと閉鎖の真実を話し、もう脅威は去ったと説明する。
 するとそれまで動揺し、じっと不安げに話を聞いていた面々が、次の瞬間わぁっと歓声を
上げてダン達の手を取ってきたのだ。
「すっ……すげえ!」
「マジかよ!? 本当に坑道の化け物達を倒してくれたってのか!?」
「“巨侠”デュバルの武器……? そんな物が、この坑道に……?」
「すげえよ、すげえよ! ありがとう! ありがとう、ブルートバード!」
 戸惑いこそあったが、それでも状況が、結果が好転したのだと知るや否や、彼らが掌を返
すのは早かった。皆でダン達を「万歳ー! 万歳ー!」と持ち上げ、この町の憂いが一つ消
えたことを素直に喜ぶ。その一方で、当のダンが他の仲間達を──あからさまに膨れっ面に
なっているマルタやステラを横目にしながら、わざとらしく咳払いをする。
「……あー、礼を言うにはまだ早ぇんじゃねえかな? まだ百パーセント安全って訳でもな
かろうよ。化身は倒したが、それとは別に、魔獣達がまだあちこちで巣を作っているみたい
だからな」
「ああ。もう何度か大規模な討伐──駆除を行わなければ、坑道としては機能しない筈だ」
 そうダンの言葉を引き継ぎ、クロムは至って真面目な表情(かお)で言う。
 ……そうですか。住民達の反応が、途端にしょぼんと尻切れになっていくのが分かった。
 それも含めてダンは黙らせたかったのだろう。サフレやリュカ、そしてグノーシュが、や
れやれといった様子で密かに嘆息をつき、或いは苦笑いを零していた。ミアはじっと、そん
な住民達の百面相を見つめている。
「見つかったんですね。それにしても、無事で本当によかった……」
「まあ、何とかな。というか、ほぼグノのお手柄だが」
「で、館長さんよ? この聖浄器、貰って行っていいんだよな?」
「え? ええ。そもそも、私達の物という訳でもありませんし……」
 そうして声を掛けたルークが、逆にダンやグノーシュ達に訊ねられる。思わずきょとんと
して、苦笑いを零し、その申し出を快諾する。
「まぁ、うちの史料館の目玉にはなったかもですが……。それは、貴方達のものです」
 言ってはみたが、難しいのは重々理解している。何せ他の展示物とは比較にならないほど
貴重な代物なのだ。うちのような小さな施設では扱い切れない。万魔連合(グリモワール)
や統務院が放ってはおかないだろうし、何より警備上の問題が大き過ぎる。
 そうそう……。他の住人達も苦笑いで頷いていた。というよりも、そんな物騒な物を町に
置いておくなどとんでもない! というのが専らの本心だったのだが。
「……ありがとよ。あんたと会えて良かった」
 じゃあな。
 故に、別れはなるべく湿っぽくないように。ニッと笑って、ダン達は歩き出した。

 突然現れては、落ち着く間もなく去って行った冒険者達。
 そんな頼もしい彼らの後ろ姿を、ルーク達は暫くの間ただじっと見送り続けるのだった。

 時を前後して、ルフグラン号内。
 レジーナやエリウッド、留守を守っている団員達及び技師組の面々は、皆一様に意気消沈
としていた。ずぅぅん……といった効果音さえ聞こえてくるような、暗澹とした空気が場に
横たわっている。
「……はあ」
 理由は他でもない。先日アルス以下文献解読班が、やっとの思いで解き明かした“賢者”
リュノーの隠しメッセージだ。
 内容はすぐさま別途書き起こされ、自分達団員にも伝えられた。だがそこに書かれていた
のは、にわかには信じられない事実とスケールの大きさだった。
 ……予想を遥かに越えた、斜め上の内容と言っていい。
 既に地底・天上両方面に旅立っていったダン達、イセルナ達を待ちながら、レジーナらは
めいめいにぐったりとブリッジに集まっていた。どうしたものかと迷っていた。
「“閉界(エンドロォル)”、ねえ」
「正直そう言われても、スケールがデカ過ぎてピンとは来ないがなあ」
「でもあの十二聖の頭脳が、単なる世迷言の為にこんなメッセージを遺す訳ないだろうし、
翠風の町(セレナス)の大書庫なんて造りはしないだろう?」
「まあなあ。アルノーさん達が報われないもんな……」
「奴らが“大盟約(コード)”を消そうとしているのは、あくまで手段。それだけでも、今
の俺達にゃあ衝撃がデカ過ぎるよ……」
 はあ。もう何度目かも分からない、盛大なため息をつく。
 団員達は半ば気持ちが折れかけていた。心の整理がつかなかった。もし解読結果が、遺さ
れたリュノーの推測が正しければ、“結社”の目的は長期的には「正しい」ことになってし
まうからだ。
 ……世界を救う為、戦う。
 そもそもその戦うべき対象が、彼らと自分達とでは根本的に違っていたのだ。自分達が目
の前のテロ組織に対してであったのに対し、連中はもっと大きな、この世界が何千年何万年
と蓄え続けてきた歪み。その元凶たる魔流(ストリーム)を正せば、理論上彼らが一番危惧
していると思しき世界の終焉・閉界(エンドロォル)を、未然に防ぐことができる……。
「妙だとは思ってたんだよ。時々連中は、俺達を歯牙にも掛けなかったからな」
「もしそうだとすりゃあ、一応これまでの辻褄は合う。奴らは本当に、この世界を……?」
 だがそんな団員達の迷いに、敵の正当性を認めてしまいそうな弱音に、キッと活を入れる
者がいた。同クラン部隊長の一人、アスレイだ。相変わらずの真っ直ぐで正義感に溢れる眼
差しで、同じく部隊長のテンシン、ガラドルフと共にガンッと自身の剣の鞘を床に叩き付け
て言う。
「しっかりしないか。たとえ僕達より高次の目標を持っているとしても、その為にヒトを滅
ぼしても構わないなんて間違ってる」
「そうそう。世界(ガワ)だけ守っても、中身がねぇんじゃ意味ないさね」
「どのみち、狂気の沙汰であるには違いないからのう……。本末転倒じゃて」
 得物の長刀を布に包んで近くの壁に立てかけ、昼間っから酒を引っ掛けているテンシン。
そもそも馬鹿らしいと、まともに相手の“正義”を取り合おうとしないガラドルフ。
 団員や技師組達はハッとなって、思わず居住まいを正した。そんな皆の気鬱、そこからの
やり取りを横目に聞いてこれに向き直りながら、エリウッドが眼鏡のブリッジを押さえつつ
静かに瞳の奥を光らせている。
「……そうだね。方法論としては無茶苦茶だ」
 アルス君達が解読した内容は、先日クランの全員に伝えられた。自分達を大書庫へと誘っ
たディノグラート公にも、同様の手紙として送り、現在イセルナさん以下北回りチームが彼
との再面会に向かっている。全てを知った上で、どうなるか? あくまで自分達は、特務軍
の一員として聖浄器回収の任務を全うするのか?
 統務院には、まだ伝わっていない。まだ例の討伐作戦が続いているようだ。“結社”絡み
の当事者であるし、話さない訳にはいかないだろうが、正直こんな話、どれだけ共有すれば
いいのだろう? 或いはすべきではないのだろう?

『こんな事が判ったからこそ、急がないと』
『ダン達にも戻ったら伝えて? きっと同じような答えを出すと思うけど……』

 そう言い残して、彼女達は古都(ケルン・アーク)に向かった。今頃は市中に宿を取り、
ディノグラード家からの返事を待っている筈だ。
(……強いな。僕らの団長は)
 真実、スケールの大き過ぎる話だ。大義の定義が揺らぐ。
 それでも彼女らは、自身のやるべきことは同じだとまた歩き出した。聖浄器という力を少
しでも多く集め、結社(かれら)を止める。人々を救う。これ以上、意味のない滅ぼし合い
など許してなるものか。“閉界(エンドロォル)”など世界そのものについては……統務院
他もっと沢山の人達と、共に話し合えばいい。
 だがエリウッドは一方で、そこまで前向きになれない自分も自覚していた。腑に落ちない
点が、不安がまだ多いというべきか。実はそこは解読に携わったアルス自身も自分達に零し
ていた所で、エリウッドはそれを直接やり取りしたものだから、余計に他の面々よりも考え
込んでしまっていたのだ。
(目的としては正しい。だが、その方法が明らかにラディカル過ぎる。何かもっと別の意図
があるのか? だとしたら、一体何を……?)
 一人内心怪訝を深めるエリウッド。だが、ちょうどそんな時だった。
 ダン達が帰って来たのだ。転送リングで硬色の町(ボナロ)から帰還し、仲間達の多くが
控えているこのブリッジへと。
「よう。今帰ったぜ」
「あ、おかえりなさーい。聖浄器、見つかっ──って、ボロボロー!?」
「あはは……。ちょっと向こうで色々ありまして」
「でも心配すんな。デュバルの聖浄器はほら、この通り」
「戦闘ですか? 戦闘があったんですね!?」
「それならそうと、予め言ってくださいよー! 手こずるんなら加勢しましたのにー!」
「つーか、暇なんです。俺達だって出番欲しいッス!」
「……ここの守備を空けたら、色々と拙いだろう?」
「それは、まあ。バランスよくやりますよ。全員が全員って訳にもいかないでしょうし」
「というか、あの中を大人数で進むのは無理あるかなあ……」
「うん。それに、最後はデュバルとミョーニルの一騎打ちだったし」
「ミョーニル?」
「ああ。こいつの名前だ。轟雷鎚ミョーニル。色々面倒臭い事になっててな。俺が“結社”
の代表と一緒に、その化身とタイマン張る羽目になってたんだ」
『……? ??』
 帰還早々、あーだこーだ、わちゃわちゃと騒がしくなるブリッジ内。坑道内と元封印廟で
のミョーニルとの戦いを経て、ダン達は少なからずボロボロになっていた。レジーナらが慌
てて心配し、すぐに医務要員が動き出す。或いは団員達が、グノーシュから戦利品たる首飾
り型の待機状態な轟雷鎚(ミョーニル)を見せて貰い、頭に大量の疑問符を浮かべている。
「あ、そうそう。エリ」
「……ああ。例の、アルス君達が解読していた文献なんですが──」
 そうして一段落するも束の間。レジーナやエリウッド、留守を守っていた団員達は、そう
ダン達にこれまでの経緯を話して聞かせた。アルスら解読班が書き起こした原本も取って来
て明らかになった“結社”の真の目的──“閉界(エンドロォル)”の存在を知らせる。
「……マジか。奴らが、世界を救う為に戦ってるって?」
「“閉界(エンドロォル)”……。にわかには信じられない話だけど……」
「でも、アルスの解いた暗号。間違いない」
 ガシガシと髪を掻き毟るダンを取り囲んで、リュカやミア、南回りチームの仲間達がこの
書き起こされた全文にざっと目を通して呟いた。突然のことで困惑しているようだったが、
存外に切り替えは早かった。寧ろ今までの“結社”に不可解な点が多過ぎた分、辻褄が合っ
てゆくこれら事実を吸収し易かったのかもしれない。
「ディノグラード公の下にも同じ物を送っているのだ。少なくとも出鱈目な解読ではないだ
ろう。そもそもアルスは、そんな雑な仕事はしない」
「ああ。びっくりはしたが……俺達のやるべきことっつーか、やれることは変わんねぇよ。
聖浄器を集めて、結社(やつら)を止める。閉界(エンドロォル)だろうが何ロールだろう
が、勝手な陶酔にヒトを丸々巻き込むなってんだ。滅ぼしたら元も子もねぇだろ。このまま
はいそうですかと、奴らの好きにさせるのか?」
『……』
 だからこそ、そうクロムの糞真面目な発言の横で、チッと舌打ちをしながら思いの丈を吐
き出したダンに、エリウッド達はくすりと苦笑(わら)った。「あ?」そんな彼ら仲間達の
反応に、当の本人は怪訝に眉根を寄せていたが。
「そりゃあ、そうですけどねえ……」
「そうやってパァンって直感で切り替えられるとこ、正直羨ましいッス」
「……?」
 嗚呼そうだ。自分達は一体何を悩んでいたのか。
 奴らと自分達、どちらが「正しい」かじゃない。何ができて、できないのか? その上で
何が最善手なのか? スケールだけ頭の中で膨らませて、気弱になっていても、目の前の現
実は何一つ進みやしない……。
『こちらワーテル島上空、変化です! 何か、変化があります!』
 その時だった。ふとブリッジ内に、受信していた各種メディアの報道音声がザザザッと響
き出し、弾かれるようにエリウッドと技師組の面々が制御卓を弄り始めた。ダン達が見上げ
た空間に、ホログラム映像としてこの中継の様子が映し出される。
『ご覧になられるでしょうか? そちらからお分かりになるでしょうか? あちら、消えた
ワーテル島辺りから、何か火花のような──』
 次の瞬間だった。自社の飛行艇から、結界内に消えたワーテル島近辺を空撮していたこの
女性レポーターを始めとした取材クルーが、突如として現れた眩い光に呑まれたのだ。
 画面越しにこれを見出したダン達にも、溢れる大量の光が画面全体を染め上げてゆくさま
が否が応でも見て取れる。膨大なエネルギーの奔流、その余波に巻かれたのだろう。
「……っ」
 空間結界が解けた瞬間だった。
 その実一度、ワーテル島本体を人々の前から掻き消した、リュウゼンの『天地創造』の操
作が解除された瞬間だった。


 結界によって分断された、ワーテル島外郭。
 本体たるヘイトの制御から離れ、暴走を続けていた瘴気の黒皮や異形の残党達を、シゼル
率いる“結社”の増援が焼き払い尽くした。辺りには焼け焦げ、灰となって還っていった黒
い煙が幾つも立ち上っている。
「う、ああ……」
「……きゅう」
 加えてそこには、一転して自分達を讃えてようとした、野次馬達の黒こげになった姿もそ
こかしこに転がっている。
『──』
 配下のオートマタ兵や狂化霊装(ヴェルセーク)、魔獣達と共に地面に降り立ったシゼル
は、そんな彼らをさして興味もないといった風に一瞥すると、ざっと事の済んだ周囲を見渡
していた。
 くっ……! 場に居合せた、ミザリーら北方部隊の面々がこれとやや距離を置いて対峙し
ている。状況からしてこちらとではなく、あくまでヘイトのやらかした“後始末”に来たの
だろうが、このまま何もせず彼女達を逃がす訳にもいかない。
 さりとて、相手は間違いなく強敵だ。聖都での一件で、その力はあのジーク達をも圧倒し
たという。《反》の色装──カウンター系の能力となれば、こちらも下手に攻撃することは
できない。
「──此処におられましたか」
 ちょうどそんな時である。にわかに緊迫していたこの場に、突如として第三者が現れた。
それまで何も無かった空間から、黒い迸りを伴って転移してきた者達がいた。
 サングラスをかけた虎獣人の男と、細目の女剣士、色白の人族(ヒューネス)少年。
 ガウルとイブキ、フォウ。三人の使徒達だった。彼らは突然ミザリーらが見つめる中で現
れるや否や、その場でシゼルに向かって恭しく片膝をつく。
「報告します。轟雷鎚(ミョーニル)の回収、失敗しました」
「先の調査の通り、戦闘狂の難物でして。途中、邪魔に入ったブルートバードに先を越され
てしまい、奴らの手に……」
「……そう。また、ですか」
 声音が恐れを含んでいる。だが対するシゼルは、そう淡々と振り向き、呟くだけだった。
(あいつらは確か……)
 ミザリーは内心、他の誰よりも警戒心を深めていた。現れた彼らは、自身の領地、その地
下礼拝堂に現れた使徒達だったからだ。あの時はダン・マーフィ達のお陰で退けられたが、
やはりまた別の場所で悪事を働いていたという訳か。
「申し訳ございません。悔しいですが、轟雷鎚(やつ)はブルートバード側の者を新たな主
として認めたようです。例の性質からして、我々に“協力”するかは怪しいかと……」
 そうですか。深く深く頭を垂れたガウル達を、シゼルはやはり淡々と、目立った感情をみ
せるでもなく見下ろしていた。一旦少し遠くを見て思案顔をし、ようやく一つため息をつく
と呟く。
「……こうなってくると、やはり“あちらの方向”に舵を切るしかありませんね……」
 自責の念だろうか。ガウルがフォウが、次の瞬間くしゃっとその表情を歪めた。どういう
意味だ? ミザリーや部下達、或いは通信の向こうのセキエイやリリザベートらも同様に、
彼女のそんな言葉に怪訝の顔を浮かべている。
「……ところで“武帝”は?」
「島の中心部よ。リュウゼンを呼んで、此処と中心部を空間結界で切り分けているの」
 そうして暫く一同が沈黙していた最中だった。イブキがおずっと、話題を切り替えるよう
に慎重な様子で問い、シゼルが言った。向けた視線の先を三人も倣って、今は綺麗に消えて
しまった旧ワーテル島の落ちていた方角を見つめる。
「……どうしますか、ミザリー様?」
「このまま敵が合流していけば、どんどんこちらが不利になってゆきます」
 そんな彼女らのやり取りを見つめながら、部下達がミザリーに向かってひそひそと。
 既に彼らは、いつでも対応できるように臨戦態勢に入っていた。数は五分五分、いやこち
らが少しだけ上か。それでも個々の戦闘能力を考えると、真正面からの戦いは厳しいと言わ
ざるを得ないだろう。
「うん? 何だお前ら。ヤるのか?」
「ヘイトの残した瘴気の始末に来た、ようだけど……」
「“学聖”。殺りますか?」
 もし必要とあらば。
 すると先の、廃坑道での戦いでの不完全燃焼からか、ガウル達はやや前のめりに好戦的だ
った。目障りだと言わんばかりに、既にボロボロになった姿で拳を握り、腰の太刀に手を掛
け、或いはズズズ……と、オーラを練る。
『──』
 ちょうど、そんな時だったのだ。
 刹那、空間が弾けた。寸前でシゼル達はハッと顔を上げて大きく跳び退き、ミザリーらも
五感の端でその微妙な魔流(ストリーム)の変化を感じ取る。
 はっきりと目には見えない。ただ何か空間を包んでいた膜のようなものが、大きく剥がれ
て飛ばされてきたようだった。次いで眩しい光と、強烈な風圧。
 どうやら震源は南──結界の中に消えたワーテル島の方向からのようだった。現場上空を
飛んでいた取材クルーの飛行艇らもこの余波に巻き込まれ、ミザリーら北方部隊とシゼルら
“結社”側、双方が手で庇を作りながら踏ん張る。
「あれは……?」
 はたして遥か遠くに現れたのは、解除された空間結界──ワーテル島の中枢部だった。
 大方が吹き飛んだ黒瘴気の迷宮と、損傷の傷跡激しい石廊群。
 そこで激しく、霞むような速さでぶつかっていたのは、重鎧の男ことオディウスとヒュウ
ガだった。更にそれら交戦の場に、他の使徒達とウル以下討伐軍の面々が文字通り濁流のよ
うになってぶつかり合っている。
『!? 映像出たよ!』
『おいおい。何なんだよ、ありゃあ……?』
 異変は各方面の部隊も察知していたようで、通信越しにセキエイやリリザベート、その他
門閥(ファミリー)の指揮官達が戸惑いの声を隠せずにいる。
「首領(ドン)!?」
「“武帝”殿!」
 どうやら、向こうでも激しい戦いが繰り広げられているようだ。空間結界が解けたのはそ
のせいなのか、或いは能動的に解いたのかは分からないが、これで残るはあの中枢部の戦い
のみになったと思われる。
『お、おい、サーディス!』
『一体何がどうなっている? 説明しろ!』
 そして現場を隔てる結界が解けたことで、戦いの一部始終をモニターしていた統務院側の
通信も回復し、王や議員達が一斉に声を荒げ始めた。猛烈な速さでぶつかる大剣と長剣、血
の《雨》を振るいながら、ヒュウガやグレン、ライナ達が邪魔臭そうに応える。
「詳しい話は後です。ともかく……討伐許可を」
「ヘイトの首は奴らに取られちまいましたが、まだまだ得られるモンはありそうっスよ?」
「この鎧の男……皇帝オディウスです!」
『なっ──!』
『何ぃ?!』
 驚愕する王や議員達。勿論、そこにはハウゼンら四盟主も含まれる。それぞれが画面越し
に目を見開いている中、その間にも両者の戦いは続いていた。《覇》を纏った一撃が《雨》
の無数の刃を弾き飛ばし、されどヒュウガはその爆風を隠れ蓑にしながら、尚も彼へと肉薄
してゆく。
「そいつを、返せッ!!」
「ふん。そっちこそな。ここで会ったが百年目、今度こそ取らせて貰う!」
 ヒュウガら元ヘイト討伐軍と、ウル率いる万魔連合(グリモワール)有志軍。
 両者は互いに協力し、或いは二手に分かれ、オディウス及び残る使徒達を倒すべく渾身の
戦いを繰り広げていた。
「うわあああッ!?」
「にっ……逃げろーッ!! 討伐連合と“結社”のガチンコだ!」
「ぼさっとしてたら巻き込まれるぞ! 一旦退け、退けーッ!」
 飛び交う斬撃と、砲撃や魔導、力の余波。
 それら様々な猛者達の放った火の粉から逃れるべく、結界の解けた場に居合せた連合軍の
兵達は、散り散りになって退き始めた。
 加勢するか? いや、文字通りあんな化け物じみた連中とのそれに加わったって、一体何
ができる? 少なくとも無事では済まない。
「くそっ、くそっ! 何で、何でだよ!?」
「黒い化け物達は、もういなくなったのに……!」
 轟々と次々に生じ続ける風圧。重く甲高い剣戟の音。
 まるで波紋がより遠くへ遠くへ広がるように、有志の戦士達や遠巻きの野次馬達が、その
災禍に怯え、逃げ惑う。

「誰かー! こっちにもう一箱、煉瓦をくれー!」
「木材も足りない。切りに行ってくれた連中はまだかー?」
「もうすぐ帰って来るだろ。あんまり遠くまでは行けないしなあ」
 先の一連の騒動から一段落した、霧の妖精國(ニブルヘイム)。この森の中に作られた、
開明派の妖精族(エルフ)達の隠れ里は、現在急ピッチで復興作業を進めていた。あちこち
で屋根に上がり、壁を組み、住民達が忙しなくも快活に動き回っている。
 予め、防御結界で里全体を覆っておいたのが幸いした。一度はアルヴからの遠征軍との戦
いで損傷したニブルの町並みだったが、思ったより被害が少なくて済んだ。
「おい、そこ。喋ってる暇があったら手を動かせ! やるべき仕事はごまんとあるぞー!」
 隠れ里を発見され、攻め込まれた。
 アルヴ側の長老達の死という、ある意味最悪の幕引き。そして“守人”の里の壊滅。
 本来なら気の滅入る出来事が立て続けに起こった筈なのに、作業を指揮するカイトを始め
とした面々は、総じて顔を上げて前を向いているようだった。
 項垂れている暇があったら、自分達が出来ることをする──良くも悪くもこれまでの拮抗
をジーク達が破ってくれたことで、皆の意識にも変化があったのかもしれない。本人達は直
接言われれば言われるほど、恐縮するのだろうが……本当に感謝しかない。
 これは終わりではなく、始まりなのだ。
 今回のようにアルヴ対ニブルだけの問題ではなく、広く天上の守旧派を説得するターニン
グポイントになってくれれば……。
「──」
 ハルトは、そんな汗を流して笑う弟達の様子を、部屋の窓際から眺めていた。こちらはこ
ちらで、各方面への書類仕事がごまんと残っている。皆には悪いが、里の長として、これら
もなるべく早い内に片付けてしまわなければならない。
「……行ってしまったわね」
 すると、そっと傍らに妻・サラがやって来た。手には二人分の紅茶と菓子を乗せた盆。彼
の木製のサイドテーブルに、カタンと静かに置いてくれる。
「ああ。本当に嵐のようだった」
 カップをそっと手に取って、ありがとうと。ハルトはフッと微笑(わら)いながらそう彼
女に応えた。一口二口を茶を喉に通し、一旦休憩する。サラもこの夫と同様に、義弟らの復
興作業を暫く窓越しに眺めていた。
 久しぶりの戦友(とも)らとの再会。その子供達とも、ようやく顔を合わせることができ
た。勿論、二年前名代にと送り出した我が娘・クレアとも。妻に似て何処かぽわぽわとした
所はそのままだが、暫く見ぬ間にすっかりたくましくなった。
 願わくば、もっとゆっくりとした時に会い、滞在して貰いたかったが……そう簡単にはい
かないのだろう。行く先々でトラブルを招く──正確には“結社”絡みの場所へとばかり旅
をしている。保守的な者達が彼ら一行を嫌う理屈も、同じ天上層の住人として分からなくは
ない。だがそれは、本来筋違いな逆恨みだ。こうして会ってみて改めて解る。本当に災いを
振り撒いているのは、他でもない“結社”なのだと。彼ら敵勢力に、ジーク君達が巻き込ま
れ続けてるだけなのだと。
「イセルナさん達……大丈夫かしら?」
「ああ。今度はヨーハン様の所に行くって言ってたね。あの方は唯一、存命されている十二
聖だから……」
 サラのふいっと心配そうに目を細めた横顔に、ハルトは一瞥を向けてから小さく頷いた。
 深緑弓(エバーグリス)回収後、彼らは竜王峰に向かったそうだ。再びヨーハン様に面会
し、今度こそ彼の聖浄器を預からせて貰う為に。
 何でも“賢者”リュノーの遺したメッセージとやらが、彼の没した元領地の書庫に隠され
ていたらしい。アルス君達が必死の努力でこれを解読したと聞いたが、はたして何と書いて
あったのだろう? 訊ねる前にジーク君達はここを出て行ったから、終ぞ分からずじまいに
なってしまったけれど。
(話じゃあ、他ならぬヨーハン様がその書庫へと促した。という事は、ヨーハン様はその遺
されたメッセージの内容を知っていた……?)
 分からない。穏便に済めばよいが。だが一方で、事はおそらくそんな自分の願いとは真逆
の方向に進むのだろうなと、ハルトはある種確信にも似た思いを抱えていた。
 こと地底──器界(マルクトゥム)では、統務院と万魔連合(グリモワール)の連合軍が
保守同盟(リストン)追討の戦火を広げているそうだ。尤もそれは事実上、元使徒ヘイトへ
のそれと聞き及んでいるが。
 自分達妖精族(エルフ)──アルヴとニブルがそうなってしまったからこそ、思う。潰し
合うことでしか解決しないというのは、哀し過ぎる。
「……大丈夫よ」
 するとサラが、そんなこちらの内心を察してくれていたのか、そっと掌を重ねてきた。お
互いの体温がゆっくりと混ざり、優しくて温かい。……心配させてしまったか。一々顔に出
しているようじゃあ、里長失格かもな。故にハルトは別の意味で、ふっとばつの悪い苦笑い
を浮かべてこの妻を見遣る。
「大丈夫。私達の娘と、カイト君とタニアさんの息子だもの。あの二人が選んだ仲間──私
達の盟友の子たちなんだから」
 何を伝えたでもない。明確に漏らした訳でもない。だがお互い考えることは、聞き及んで
見出した不安材料は一緒らしい。重ねられた手をそのままに、ハルトは小さく頷いた。直接
彼らを助けにいけない身である以上、自分達に出来るのは、ただこうして無事を信じ、祈る
ことだけだ。
「……そうだね」
 フォォと、一瞬窓が揺れた。冷たい一陣の風が、里の只中を過ぎ去って行った。
 まだ外では、カイト達が作業を続けている。しかし冬の足音は、此処古界(パンゲア)に
も、着実に迫っているようだった。

 使者の運転する鋼車に分乗し、ジーク達は一路、竜王峰中腹にある白咆の街(グラーダ=
マハル)を目指していた。その屋敷で待っている筈の、ヨーハンの下へと急いだ。
 同山のある北へ、ひたすら北へ。時折導きの塔や、大陸同士を結ぶ神竜王朝時代の橋を渡
って、冬の気配強まる北方へと入る。
 その道中は、相変わらず殺風景だった。延々と色素の薄い丘陵と、点々と建つ集落が視界
の向こうに映っている。
「……」
 車内の窓から、じっとジークはそんな景色を眺めていた。移動を始めてからというもの、
仲間達も、総じてすっかり口数が減ってしまっている。ヨーハンとの面会を控え、多少の緊
張もあるのだろうが、やはり宿に居た間の気鬱さが尾を引いているのか。
 古界(パンゲア)を始めとした天上層の世界を、人は時にノスタルジックだと云う。
 だが少なくとも、地上での暮らしに慣れ親しんだジークにとっては、そんな感慨はどうし
ても持ちえなかった。そんな印象よりも、先ず感じるのは“物寂しさ”だ。ゆっくりとした
時の流れと言えば聞こえはいいが、こちらの町や人々は、どうも全体的にじっと俯いて縮こ
まっているように見える。

 ──何が楽しくて、こんな黙々と耐え忍ぶような暮らしをしなきゃいけないんだろう?

 以前こちらを訪れた時、セイオンも言っていた。天上層(こちらがわ)の人間は基本的に
こんなものだと。自分達は歓迎されていないと。
 こうして今視界の向こうに映している中で、ジークは改めて思う。戸惑いはあの時に比べ
ると幾分変化していた。もどかしかった。強制はできないと、解ってはいても。
 向上心がない──そこまで言うべきではないのかもしれないが、そうやって己のセカイに
籠もるからこそ、余計に“掻き乱される”ことが多くなるのではないか? 守ろう守ろうと
そこに留まるが余り、意識すればするほどに、失われてゆくものへの痛みは増してゆく。
 アルヴの一件も然りだ。自分達は結局、彼ら保守・開明両派の溝を「解決」できた訳では
ない。それはどうしようもない事実だ。この古界(パンゲア)だけでも、そうして分かたれ
てしまった人々が数え切れないほどいる。
 改めて思う。
 自分達が聖浄器を求め、“結社”と戦うことは、一体どれだけの人々を「救え」て、どれ
だけの人々を「救えない」のだろう……?
 ジークの脳裏に、先日アルスが書き起こしてくれた解読の結果が蘇る。
 世界かヒトか。安定して止まらない、揺らぎ続ける天秤のイメージ。互いに相容れぬ者達
という、ままならぬ現実……。

「──っ」
 ちょうどそんな時だった。ガサッと車輪が何かに埋まり出す衝撃を感じ、ジークはハッと
我に返って外を見た。
 どうやら自分達の乗る鋼車が、いよいよ竜王峰を登り始めたらしい。ぐるぐると螺旋を描
きながら高度を上げてゆく基幹道。その上層、山頂は既に真っ白になっており、街のある中
層も、積もり始めた箇所が点々と視界の遠近に確認できる。
「……もう、こんなに白くなってるのか」
「ああ。タイミングとしてはギリギリだね」
 冬が迫っていた。山頂の宝物庫が閉ざされてしまう前に、交渉を急がなければ。
「ええ。本当に……ギリギリでした」
 しかしその直後である。ジークの呟きにシフォンが小さく苦笑をみせた次の瞬間、急に使
者が相槌を打ったかと思うと、それまで続けていた運転を止めたのだ。
 積もる雪があちこちに侵食し始めている、緩やかな中層の平地。街へ向かう途上。
 ジーク達が彼の応答に違和感を覚えたのと、鋼車が停まったのはほぼ同時のことだった。
運転席から、この使者が振り返ってカチリと、こちらに銃口を向けてくる。
「ふえっ!?」
「……おいおい。一体、何のつもりだよ?」
「待ちなさい、ジーク」
『下手に動くな。どうやら……囲まれたようだ』
「へっ?」
 反射的にビクついたクレアを庇おうと、ジークは腰の剣に手を掛けた。今にも銃口を向け
てきた、この使者兼運転手に斬り掛かろうとする。
 だがそれを、シートの反対側に座っていたイセルナが制した。いつの間にか彼女の肩に顕
現していたブルートも、そう言いいながら苦々しい様子で周囲の異変に注意を配っている。
 気が付けば、ジーク達一行を乗せた鋼車二台は、完全に雪積もりつつある道の途中で停止
し、包囲されていた。岩や丘陵の陰に隠れていたと思しき竜族(ドラグネス)の軍勢が四方
八方から、じりじりっとこちらに向かって距離を詰めて来ている。
「えっ、えっ? 何で? どうして私達に……?」
「一体全体、どういう了見だ? お前ら、ディノグラード家の使いじゃねえのかよ!?」
「多数ノ熱源ヲ感知! 数……オヨソ百五十! ドレモ非常ニ高イ練度ノオーラデス!」
「……参ったね。随分と手荒な歓迎だ」
 後ろの車両も同じだった。ハロルドとレナ、リカルド、オズの四人も、同様に別の運転手
から銃口を向けられ、四方八方からにじり寄る鎧姿の竜族(ドラグネス)達に、完全に包囲
されている。
(それに、あの揃いの装備。まさか……)
 窓越しにハロルドが、そうじっと既視感を覚えて観察している。自分達を襲撃してきたの
は、どうやらかなり統率された集団らしい。
『──』
 セイオンだった。
 はたして取り囲まれたジーク達の正面向かいから、ゆっくりと俯き加減に表情を隠しつつ
近付いて来たのは、現“七星”の一人にして、生ける伝説“勇者”ヨーハン直系の子孫に当
たる竜族(ドラグネス)の騎士団長。“青龍公”ことディノグラード・F(フランシェス)
・セイオン、その人だったのである。

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長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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