日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)サハラ・セレクタブルⅢ〔38〕

「……ッ?! 由良!」
 目覚めた廃屋の広間で、筧はようやく行方を眩ませていた相棒の姿を目の当たりにした。
逆光の日差しの中、窓際の位置に倒れている──血に汚れ、仰向けになっているのを見つけ
て、咄嗟に駆け寄ろうとする。
 ──やっと見つけた。
 ──すぐに助けなければ。
 だがしかし、そんな身体の衝動的な反応とは裏腹に、その思考は辛うじて冷静だった。
 切欠は、彼の周りに広がる血だまりを、ぐちゅっと踏み締めたその直後だ。
(これは……血糊?)
 逆流するように溢れてきたのは、違和感。筧は思わず足を止め、そのすぐ真下に転がる由
良の姿を見つめ直す。
 ……そもそも、この状況はおかしい。
 こいつは何日も行方知れずになっていたのに、これじゃあまるで「今し方」殺されたかの
ようじゃないか。それも自分が連中に捕まって、また知らない場所まで移された──目を覚
ましたのと、ぴったりタイミングを合わせるように。
 いくら何でも、出来過ぎている。
 筧はそう直感していた。しかし実際目の前で眠っている、死んだように倒れたまま微動だ
にしない由良の顔は、やはり当の本人にしか見えなくて……。
「──!?」
 ちょうど、そんな時だった。思考の中の違和感と、目の前に映っているものとの齟齬にじ
っと眉間に皺を寄せていた筧の背後から、パシャリとある意味で場違いな音が聞こえてきた
のである。
 筧は半ば反射的に振り向く。だが時既に遅かった。いつの間にかこの広間の出入口の壁際
に、自分以外の第三者の姿があり、こちらにデバイスのカメラレンズを向けて静かに嗤って
いたのだった。
「……」
 にいっと、憎悪とねちっこい嗤いを浮かべてしたり顔をしている杉浦、もといライアー。
 故に筧は次の瞬間、自らの身に起きた状況の拙さを悟る。青褪める。
 由良の死体。血だまり。その前で古びてはいても、ナイフを片手に突っ立っていた自分。
その三つのさまが、今奴に撮られた……。
「っ、てめえ!」
 嵌められた。そう理解して思わず叫んだ直後、背後で更にあり得ないことが起きた。
 由良がむくりと立ち上がったのだ。まるでゾンビ映画のワンシーンにでも遭遇したかのよ
うに、杉浦に向き直った筧の背後を、この血に汚れた由良の姿をした何か──偽物が、逆再
生を掛けられたかの如く取ったのだった。
「!? そうか、やっぱりお前は──」
 完全に前後を挟まれた、退路を塞がれた格好。
 肩越しに全てが仕組まれたものだったのだと理解し、この由良の皮を被ったアウターらし
き化け物を睨もうとしたその時、ふと杉浦は何かをこちらに投げて寄越してきた。筧は反射
的に顔にぶち当たる寸前に掴み取ると、怪訝な眼でそっと確かめてみる。
「……これは」
 それは短銃型をした独特なツール。いわゆるリアナイザだった。
 不快──今までの経緯から蓄積してきた悪感情と、目の前に次々と投入される出来事に未
だ頭がついて来れないが故の混乱。
 ニヤリと、杉浦はそんな戸惑う筧の表情を見て哂っていた。先程よりも、彼に向ける憎し
みの類は、一層顕著になっているようにもみえる。
「もう逃げられねえぜ? 此処でお前を殺っちまうのは簡単だが、そうはしねえ。たっぷり
と……“利用”してやるよ」
 限界まで張り詰めるように緊迫する、見知らぬ廃屋の中。
 罠に嵌められ為す術なく身構える筧に、ライアーはその姿を撮ったデバイスをひらひら片
手にちらつかせたまま、言う。

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  1. 2018/09/25(火) 18:00:00|
  2. サハラ・セレクタブル
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自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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