日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅶ〔98〕

 白咆の街(グラーダ=マハル)郊外、その道中。
 ディノグラード家からの使者が運転する鋼車に分乗し、その館を目指していたジーク達北
回りチームは、突如して彼らからの裏切りに遭っていた。中からは銃を突き付けられ、外か
らは竜族(ドグラネス)の戦士達に包囲され、為す術もなく一行は両手を上げた状態で鋼車
の外へと──積雪点々とする山道の只中に連れ出される。
「何で。何でだよ……?」
「……」
 そんな面々の中心に立つのは、七星の一人であり、ディノグラード家の嫡子でもあるセイ
オン。冬間近の竜王峰を背後遠巻きに臨み、ジークらが困惑と共に問い詰める中、その顔色
は明らかに浮かないものだった。
「ここから先は……行かせられない。悪いが君達には、このまま留まって貰う」
「えっ……? ど、どういうことですか?」
「おいおい。案内に応じておいてそれはないだろう……」
「そうね。いきなり過ぎるわ。理由を……教えてはくれないかしら?」
 レナやリカルド、そして団長イセルナも口々に問う。だがそれにセイオンは答えようとは
しなかった。代わりに深く眉間に皺を寄せ、静かに大きなため息をつく。
「……思えば、君達とは不思議な縁があるな。皇国(トナン)内乱から始まり、大都消失、
聖都(クロスティア)の一件、そして大爺様の聖浄器──あの頃は、こんな形で君達と相対
することになるとは思ってもいなかった」
 少なくとも、彼の眼差しと纏う雰囲気には、多分に“哀しみ”が含まれているように思え
た。配下の戦士達も同様だ。
 なのに彼らは何故、今こうして自分達に刃を向けようとするのか? それが分からない。
「できれば手荒な真似はしたくない。大人しく、言う通りにしてくれないか?」
『……』
 故にギリッと、しかしはいそうですかと折れる理由も見出せず、ジーク達は寧ろ警戒の気
色を強めていた。ゆっくりと腰の剣や銃に手を伸ばし、物音をも抑えつつオーラを練る。
「断る。俺達は爺さんに“会いに行かなきゃならない”んだ」
 互いに目配せをする隙さえ惜しかった。誰かに言われるでもなく、次の瞬間ジークは困惑
を無理にでも振り切るようにして、そうキッと険しい表情で言い放った。
 どんな理由──事情があるのかは分からない。
 だがもし彼らが、あくまで自分達の行く手を阻もうとするのなら……。
「……そうか」
 残念だ。そしてセイオンも、言外にそう漏らすようにまた嘆息をつくと、自身も腰の剣を
揺らしながら一歩前に出た。周りの部下達も、それを合図とするようにザリザリッと、一行
を包囲する距離を縮め始める。
「ま、待ってください! 私達は、皆さんと戦いたくは……!」
「そうです! 一体何があったというんですか? 何が理由でこんな──」
「シフォン。無駄だ。彼らに聞く耳はない」
「こんな所で消耗するなんて不本意だけど……やるしかないわね。突破するわよ」
 そんな彼らの動きに、レナは尚も必死に説得しようとする。ヨーハンとの面会を通じて、
同家の者達と事を構える気などそもそも持ち合わせていないのだ。シフォンやクレアも、納
得がいかないという風に首を横に振っているが、目の前の状況はそう悠長に構えていられる
ものではないらしい。
「……こんな歓迎は、御免被りたいんだけどね」
「足止め、だろうなあ。わざわざ使いをこっちに送って来ておいてまでだし……」
「うう……。何でこんなことに……」
 あくまでセイオン達は、こちらを阻止する構えのようだ。ハロルドやリカルド、クレアが
心を臨戦態勢に、銃を抜き、ピンを五指の間に構えてめいめいにごちている。ジーク達は仕
方なく応戦する他なかった。動機がいまいち分からないが、このままでは埒が明かない。と
もかくこの包囲網を、何とか突破しなければ。
「……。何でこうなっちまうんだよ」
 呟く舌打ち。それはジークに、仲間達にとって、言外に主語を大きくしたこれまでの旅路
に対する怨嗟のようでもあった。
 二刀を抜き放ち、同時にオーラを全身に巡らせる。同じく竜族(ドラグネス)の戦士達が
一斉に地面を蹴り、攻撃を仕掛けてくる動きがスローモーションのように五感に映る。オズ
がその機械の剛腕を、レナが指に嵌めた魔導具を、シフォンが靄状に変えたオーラを足元に
叩き付ける。イセルナが駆け出しながらブルートを纏い、周囲に冷気を吐き出す。
「──」
 そんなぶつかる寸前、両者の向こうでセイオンはじっとこちらを見ていた。
 同じくスローモーションの世界。その眼差しは、表情は、まるで思い詰めたように深刻な
それのまま、ざらりと腰に下がった長剣を大きく弧を描くように抜き放つ。

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  1. 2018/08/07(火) 18:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
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自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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