日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅶ〔90〕

 それは、ジーク達の出立直前に起きた。
 歓迎から動揺へ、動揺から警戒へ。森の中の霧の妖精國(ニブルヘイム)は、今は一見落
ち着き直したかのようにも見える。
「た、大変です!」
 突然、ミハエルら数人のエルフ達がジーク達のいる部屋へ駆け込んできた。何事かとめい
めいが振り返る。彼らは肩で息をし、酷く慌てているようだ。只事ではない。
「? 一体、どうしたんだ?」
「それが……」
「里の周りに、変な煙が……」
 荷物もそこそこに、ジーク達は部屋を飛び出し、里の中に出た。見れば遠く森のあちこち
から、赤い煙が何本も立ち上っている。
「……これって、まさか」
「狼煙、だろうね」
 それらは、ぐるりと里を取り囲むように確認できた。数拍ジーク達は唖然とこれを見上げ
ていたが、程なくしてその意味と──迫るであろう危機を悟る。
「ま、拙いぞ」
「おい、人を集めろ! 急いで消すんだ!」
 ミハエルら里のエルフ達にも、既に気付き始めていた者がいたのだろう。周りでは赤い狼
煙に向かって森の中へと駆け込んで行く面々の姿があった。一つ、また一つとゆっくり煙が
揉み消されて霧散してゆく。
 だが一方で、ジーク達も彼らも、既に遅いのではないかという予感に苛まれ始めていた。
 少なくとも自然発生するようなものではない。つまりこれは、明らかにアルヴ側の……。
『──っ!?』
 ちょうどそんな時だった。息を呑み、赤い狼煙を見上げたまま固まっていた一行の耳に、
突如として轟音が響く。今度は大きな土煙が上がっていた。あれは……広場の方か。
 即座に目配せをし合って、ジーク達は駆け出した。狼煙の処理は既に散っている里の者達
に任せておけばよいだろう。
 嫌な予感がする。同時に、自分達の判断は“遅かった”のかと悔やむ。
 腰に差した刀を鳴らし、土と石畳を踏む込む靴音が重なる。
「くっ……!」
 広場には、ハルトやカイト、里の戦士達が集まっていた。
 相対しているのは巨大な岩人形の使い魔──ゴーレム。加えてその周りで、武器を抜いて
立ち塞がるように布陣しているのは……口元に覆面をしたエルフ達。
「ハルトさん。あれって……」
「! ジーク君。ああ、そうだよ。どうやら僕らはまんまと嵌められたらしい」
「お前らは下がってな……って言いたい所だが、すまん。手を貸してくれ。このままあいつ
らを進ませちまったら、避難させてる皆を守り切れねえ」
 当然。ジークらは頷いてめいめいに得物を抜いた。今更関わり合いになってはいないと繕
った所で、向こう側にはもうバラされている可能性が高い。ならば、少しでも早く──この
“守人”達を捕らえて無力化すべきだろう。
「マギリっ!!」
 そして、この場にもう一団駆けつける者達がいた。ミシェルだ。テオや他の“守人”達を
引き連れて、まるで鬼のような形相で仲間だった筈の者を睨み、叫ぶ。
 互いに顔を見合わせるでもなく、一同は横一列に並んだ。目の前、里の出入口を塞ぐよう
に展開しているのは、岩のゴーレムを操る、同じ“守人”の戦士が一人だ。彼は彼女の声に
応えるでもなく、じっと暗い熱に浮かされたかのようにこちらを睨んでいる。
『……』
 テオと共に彼女を補佐していた術師のエルフ、マギリ。
 どうやらこの騒動は、他ならぬ彼と、彼に従う一部の“守人”達によって引き起こされた
ものらしかった。

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  1. 2017/12/05(火) 18:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
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自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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