日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅶ〔84〕

 青年の胴を、炎槍の魔導が貫いた。
 身に纏った部分鎧と結晶のように鋭い剣、結晶のように均一に並んだ楯。それら全ての守
りを縫い、背後から突き刺された穂先が煌々と紅く燃えている。
 ……ごふっ! 腹の中からせり上がってきた大量の血が、彼の口元は勿論胸元までをも激
しく汚した。ゆっくりと後ろを振り返る。そこには肉薄する、今自分が止めを刺そうとした
相手──芥子色のフードの男の姿があった。
「爺さん!」
 風雪の中、ジークは叫ぶ。しかし直後、ジーヴァの繰り出す鋭い斬撃に打ち合わされ、彼
の下へと駆けつける隙もない。イセルナ以下仲間達も同様だった。仰々しく天を仰ぎ、呵々
と笑うヴァハロの《重》の力場に押し潰され、ろくに身動きが取れなかった。
「大爺様!! ……くっ!」
 加えてセイオンもまた、敵の背中越しに起こった惨劇を目の当たりにすれども、駆けつけ
ることが出来なかった。目の前には胴着羽織の──自分と同じ竜族(ドラグネス)の男が立
ち塞がっている。部下達もまた、彼の連れてきた他の使徒達の連携に遭い、少なからずが倒
れて苦戦を強いられていた。轟々と、巨大な龍型のオーラがこの男の手から伸び、さも一個
の生き物かのようにこちらを見下ろしている。
「何故だ……。何故貴方がこんな事を!」
 巨大なエネルギーの塊は、軽く掠っただけでも大きなダメージだ。叫ばれた応えの代わり
に三度この龍型のオーラが襲い掛かり、セイオン達を更に遠ざける。山頂に舞う風雪と彼ら
敵の妨害。それらが合わさって、すぐそこにある筈の命にさえ届かない。
 胴を刺し抜かれた青年は、そのまま手から剣を零し、どうっと崩れ落ちた。白く積もった
地面に赤の広がりがゆっくりと染みてゆく。
「……やれやれ。思いの外、手を掛けさせられたな」
 そんな彼をじっと見下ろし、フードの男は静かに嘆息する。
「それは貰って行くよ。黒星続きもこれまでだ」
 聞こえているかいないのか。しかし彼はそんなことも構わず、ゆっくりとこのかつての友
へと近付いてゆく。
「くそっ! くそぉッ!!」
 一部始終は見えていた。少し駆ければ追いつける筈だった。
 しかしジーク達は阻まれる。一見悠然と立つだけの、だが何処から剣撃を打とうとも即座
に的確に防いでみせるジーヴァの剣技と存在感に。重力の力場によって身体の自由を奪い続
けるヴァハロに。セイオンも鎧が抉れ、服が破け、荒く息をついていた。風雪の一陣二陣向
こうで、今まさに大切な人が奪われようとしている。
『──』
 倒れ伏したまま、青年がフードの男を目で追っていた。何か呟いている。しかし瞼は既に
出血し過ぎたことで重くなっていて、満足に動くことすらままならない。
 幾度目とかもしれぬ剣撃同士が、ジークとジーヴァの間で打ち鳴らされた。一旦大きく後
ろに飛び、瞳にその光景を映す。……出し惜しみなんてしてられない。ジークは再びぶんっ
と剣先で魔流(ストリーム)を自らの身体に挿し込み、右手の紅梅に力を込めた。刹那紅い
炎のような輝きが彼を包み、その姿を変質させる。髪に紅いメッシュと上衣を纏った、完全
開放の姿。加えてそこに自身の《爆》の力を加え、大量の燃え滾るオーラを身に纏う。
「だ、駄目だ、ジーク君!」
 ヴァハロの力場に押し潰されながら、ハロルドがハッとなって叫んでいた。
 しかし当のジークにはもう聞こえていない。目の前の敵に、ジーヴァを突き破って彼を助
けに行くことに、全神経が注がれてしまっている。
「おおおおおおおーッ!!」
 どけぇ! 咆哮し、白い地面を蹴るジーク。まるで紅く巨大な塊が突進してゆくかのよう
だった。それをギチッと剣を構えて見据え、ジーヴァは真正面から迎え撃つ。
 双方互いに滾るオーラ。
 そして振りかぶった、助走からトップスピードに乗って放たれるジークの一閃は、目の前
の光景をその輝きで染め上げて──。

続きを読む
スポンサーサイト
  1. 2017/06/13(火) 18:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止
します。

訪問者累計

最新記事

最新発言

検索窓

月別履歴

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

分類/索引

【案内板】 (2)
【小説:短編】 (20)
本の蟲 (1)
硝子野不動産店 (1)
夏の日の幻影 (1)
四番線の彼女 (1)
夢視の宿 (1)
線を曳く町 (1)
炬燵の神様 (1)
三者三盗噺 (1)
色眼鏡 (1)
奴らは攻城戦師 (1)
詰め替える (1)
同じ籠の狢 (1)
二十年後の遺言 (1)
轍の先 (1)
水に流せば (1)
真夜中の御二柱 (1)
いつか見た夢 (1)
神様達の初詣 (1)
白い花束 (1)
丸の代償 (1)
【小説:長編】 (144)
Amethyst League (6)
アンティーク・ノート (3)
ユウキのヒカリ (5)
NIGHT GUNNERS (5)
レディ・ルーン-Bonds of RU'MEL- (6)
ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle- (84)
死に損いのデッドレス (5)
Dear SORCERY (4)
サハラ・セレクタブル (26)
【企画処】 (325)
週刊三題 (315)
その他参加物 (10)
【資料庫】 (15)
【落書帳】 (6)
【詩歌帳】 (6)
【雑記帳】 (309)
【読書棚】 (30)
【遊戯倉】 (23)
path. (4)
decide: (3)
ユー録FW (15)

記事録

交友関係

このブログをリンクに追加する

(RSSリンク)

(QRコード)

QR

@long_month からのツイート