日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅵ〔73〕

「……今、何て」
「本気(マジ)かよ。あの教団を敵に回すって事だぞ……?」
 導信網(マギネット)を通じて、ブルートバートとクリシェンヌ教団の対立は現在進行形
で人々の知る所となった。
 据え置き或いは携行型の端末、画面の前。世界のあちこちで期せずしてこの前代未聞の瞬
間を目の当たりにした人々は思わず手を止め、目を疑い、ジークがエイテルに向かって言い
放ったその姿を何度も確認するように見つめている。
『き、貴様……! 今自分が何を言ったのか分かっておるのか!?』
『ミュゼ、ダーレン、ヴェスタ! そやつを捕えよ! 我らが信仰の敵ぞ!』
 当然ながら、画面の向こうの枢機卿達は怒り狂った。絶対優位であった筈の、優位でなけ
ればならない自分達の思惑が導信網(マギネット)に曝され、何よりも出自は皇族とて今は
一介の冒険者でしかないこの青年からの宣戦布告──プライドが傷付かない訳がなかった。
『止しなさい!』
 しかし叫んだ枢機卿と、弾かれたように駆けようとしたミュゼら現地ホームの神官騎士達
を止めたのは、他ならぬエイテル教皇であった。
 一触即発。イセルナ、ミア、リオを始めとしたクランの面々が来るなら来いと得物に手を
掛けて構えたままの格好だった。ぴしゃりと大きな声で窘められ、両者は寸前で睨み合った
まま硬直している。
『……人々が見ているのですよ? 激情のまま傷付け合ってどうするのです』
「教皇様……」
「で、ですが……!」
『武器を収めなさい。先ず祈るべき我々神官が、力に頼ってしまってどうするのです』
『……っ』
 ぐうの音も出ないようだった。画面の向こうで枢機卿達が苦虫を噛み潰したような表情で
めいめいに視線を逸らし、ミュゼ達も武器をしまい直して一歩二歩とその場から退く。こう
なるとイセルナ達とて攻撃できない。同じく、いやようやくその臨戦を緩めることができ、
武器をしまって初めて二・三、安堵の息が漏れる。
「……」
 それでも、当のジークはじっとエイテル達を睨んだままだった。指差した手はもう下ろし
ていたが、その眼は敵意──レナを幾度となく苦しめた咎を許してはいない。
『ジーク皇子。発言を撤回するのなら今ですよ。お互い、感情的になり過ぎたのでしょう』
 たっぷりと間を置き、見つめ、エイテルが言った。
 つまりは彼女がそれだけ冷静であり続けていたということだ。誰がどうやってまでは分か
らないが、ブルートバードの側でこの非公開の会談が漏れてしまったのだ。教団という威光
を借りて水面下で取ろうとしていたマウントを、強硬策を、人々は知ってしまった。今この
まま当初の作戦をごり押せば、自分達に対する心証は最悪に近い失墜を招くだろう。
 だがジークは、そんな相手方の内心・思惑を解っていたのかいなかったのか、結局首を縦
には振ろうとしなかったのである。
「そっちこそ、もうレナにちょっかい出さねぇって約束しろよ。大体、何で俺が謝るような
真似しなきゃいけねぇんだよ。先にこんな面倒事持ち込んできたのはてめぇらじゃねぇか」
『っ、貴様……!』
『お止しなさい。……あくまで、我々と敵対するのですね?』
「ああ。そうやってこっちの質問をはぐらかし続けるってんなら、な」
 周りの枢機卿達を抑え、エイテルは少々淡々としている程に落ち着き払って訊ねていた。
ジークもジークで、腰の剣唾をそっと親指で持ち上げながら、当て付ける。
 暫くの間、両者はじっと睨み合っていた。枢機卿や神官騎士達、クランの面々やディノグ
ラード邸の仲間達、セイオン・ヨーハンらもその様子をそわそわと、或いは一言一句見逃さ
ないように視線を微動だにせず注ぎ続けていた。
『……。覚悟はできている、という事ですか……』
 そして先に沈黙を破ったのは、エイテルだった。枢機卿や画面の向こう、ホーム現地の神
官騎士達を見遣り、呟く。
『神官騎士ミュゼ、ダーレン、ヴェスタ。一旦聖都(こちら)へ帰還しなさい。宣戦布告さ
れたからには備えなければ。我々とて、信徒の皆さんを守護する義務があります』
 いいですね? 彼女はミュゼ達に念を押し、そしてずっとそれまで控えていたリザにも小
さく訊ねて了解を得る。
 ざわざわ。ホーム現場の神官騎士達は動揺していた。こちらが退いてしまうのはプライド
が許さないのではないか?
 しかし、さりとて組織のトップからの命令だ。リザも頷いて促すので従わない訳にはいか
ない。ミュゼやダーレン、ヴェスタ達はやがて部下達に命じて撤収を始めた。落ち着いて考
えれば今ここで“蒼鳥”や、下手すれば巻き込んでしまった形でディノグーラド家──七星
の一角とやり合い、敵に回すのは得策ではない。
『……』
 尤も三人の隊長格の中でも血の気の多いダーレン、そして気高いヴェスタなどは、この撤
退命令にも正直不服だったようだ。去り際、あからさまに怨念や敵意の籠もった瞳でこちら
を睨んでは、ガチャガチャと防具の音を鳴らして踵を返していく。
 そうして、史の騎士団は一人残らずいなくなった。本山と繋がる通信・映像もぷっつりと
消えてなくなり、ただ場に残ったのはホームとディノグラード邸、双方の半ば呆然とした仲
間達の後ろ姿だったのである。
「……やれやれ。とんでもない事になったわい」
 ジークが尚も、こちらに背を向けたまま先頭で立ち尽くしている。
 たっぷりと間を置いて嘆息をつき、やがてそうガラドルフが、誰にともなくごちた。

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  1. 2016/05/11(水) 18:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
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(企画)週刊三題「山羊の旅」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:空気、伝説、主人公】

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  1. 2016/05/08(日) 00:00:00|
  2. 週刊三題
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(雑記)正しいけれど、正しくない

sageなきゃ(使命感)

あっという間に五月になりました。ぼうっとしているor根詰めているに関わらず時間は淡々
と過ぎ往き、世間でいう所の大型連休もこれまたあっという間に終了──自分も今日からお
仕事の通常運転が再開した所です。
皆さんはどのような連休だったでしょうか?そもそも無かった人すらいかねないこんにちは、
前回から一週間ぶりです。長月です。

最新記事(案内用を含め5件)がどわっと埋まっている時点でお察しかとは思いますが、先日
拙作『サハラ・セレクタブル』の設定資料集を新たにUP致しました。7記事分です。ちょうど
前回の更新でシーズン1が終了したのを区切りに、この連休の間にせっせこせっせこ書き起
こした次第であります。ユー録のそれと同じく、本編の進捗に合わせて適宜加筆・修正を行
っていきたいと考えています。宜しければご参照ください。また、同様の内容はなろうさん
にもUPしましたので、もしかしなくてもあちらの方が整頓されて見易くはあるかもですね。
まぁ誰得である点には変わりないのですけど……φ(=_=;)

今後の予定としてましては一旦サハラ~をプロット作成のため暫く休載とし、三題とユー録、
週1と月1のペースで執筆・更新を続けていこうかなと。カレンダー的な余裕が暫しできる
ので、後者は今より一週ほど後──キツキツ月頭の更新に拘らない感じになると思われます。
(実際、当稿現在の時点で終わりかけてますからね。今月の一週目)なので来週末くらいに
はUPできるようにしようと思います。暫しお待ちをm(_ _)m

……しかし何ですね。お仕事が始まる前、最初の頃は執筆の暇が取れるのかと(そも優先度
的に間違った)懸念があった筈なのですが、いざ蓋を開けてみると何だかんだできちっと時
間を作ってスケジューリングをしてってのが出来てますよね……もしかしなくても、なまじ
日がな毎日が日曜日(もとい療養生活)だった頃より能率は上がってるんじゃないか……?
(まぁそれでも、推敲などには纏まった時間が欲しいなぁというのは続いてるんですけども)
分からんものです。限界ってものは。これからもいい意味で、その自身のリミッターという
か稼動域を都度身体と相談しながらレベルアップさせていきたいものです。

ただ一つ思うのが、スケジューリングと言えば聞こえはいいものの、要するに自分の創作が
「こなす」ことに力点がいき、本来の「生み出す」ことにエネルギーを注ぎ切れていないん
ではないか? 求道としては違う──上滑りな形にやってやしないか? というような。
まぁ基本中の人の四苦八苦ってのは世の受け手にとってはどうでもよくて、とにかく面白い
ものを書き楽しませてくれるか否かしかない、という自嘲(わら)い方・割り切り方はさも
当然の如く存在するのですが……。

難しいなぁ。でもあんまり(意味なく)考え過ぎても心身に毒なだけですし。

何がベストかなんてのは勿論人によりけりな筈なのだけど、どうも自分の場合、こうやって
思考を捏ね繰り回していると「一つの正答」があると前提を置きがちで、そこへ何とか自分
をもっていかなければ、という自縛自傷になりがちに思います。

まぁその辺りの囚われが、結局凡人の凡人たる所以なのか。

或いはそうした性こそが、人間の人間たる所以なのか。

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  1. 2016/05/06(金) 18:30:00|
  2. 【雑記帳】
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(資料)サハラ・セレクタブル-Data Note-

※本稿は拙作「サハラ・セレクタブル」の所謂設定資料集です。
 記載内容は本編の進捗に併せて随時加筆・修正をしてゆく予定です。
 尚その性質上、ネタバレ要素を含んでいます。閲覧の際はご注意下さい。
 (本文は追記内に記載しています↓)


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  1. 2016/05/04(水) 18:00:00|
  2. 【資料庫】
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(企画)週刊三題「レトログレス」

──これから毎週、小説を書こうぜ?

毎週一回、ツイッタの「診断メーカー」で出たお題で小説を書いてみるという
自己鍛錬、 それがこの『週刊三題』であります。
さてさて。紡がれる文章は良分か悪文か、或いは怪文か?
とある物書きの拙文晒し、此処に在り。

【今週のお題:歌い手、ロボット、主従】

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  1. 2016/05/01(日) 18:00:00|
  2. 週刊三題
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自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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