日暮創庵

-当庵は長岡壱月によるごった煮創作ページ(主に小説)です-

(長編)ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-Ⅳ〔45〕

 自身の拳を胸元に当て、そうジークは叫んでいた。
 唖然とする面々、彼の後ろにずらりと並ぶ四人の仲間達、そして更に後方で着陸しようと
している一機の戦闘艇。
 大都(バベルロート)第三隔壁外周・北城門(ゲート)前。
 きんと響いて四散したこの一言は、ややあって多くの人々を揺るがし動かすことになる。
「……はっ!? ちょ、ちょっと何ぼうっとしてるの。映像機、映像機早く!」
「おいおい。こりゃあまたスクープだぞ……」
「か、確認できるでしょうか? 皇子です、ジーク皇子達が姿を見せました!」
 最初に反応し、慌てふためいたのは、守備隊らの遥か後方に張り付いていた取材クルー達
だった。映像機のレンズが、集音マイクの竿が一斉に向けられる。リポーター達がこぞって
この生還(さま)を報じ始めている。
「……粘ってくれてたんだな。ありがとよ」
「い、いえ。皇子こそよくご無事で……」
 そんな後方の彼らを肩越しに一瞥しながら、ジークは数歩進み出て言った。
 ぶっきらぼうに、だけど優しく。思わず面々を指揮していた将校らが恐縮する。中には安
堵の念に緊張の糸が解れ、目に涙を浮かべてしまう者もいる。
 ジーク達は彼らの腐心を労い、前方を睨んだ。
 城門(ゲート)に立ち塞がるのは“結社”の軍勢と頭目らしき戦士が三人。既に移動中に
確かめた通り、既に大都の街並みは奇麗さっぱり掻き消え、隔壁の向こうに寒々しい空き地
を形成しているらしいことが分かる。
「あいつらが門番か。よっぽどあの先を通したくねぇみたいだが」
「……ところで将校殿。他の城門(ゲート)はどうしているのですか? 確かこの街は東西
南北それぞれに城門(ゲート)が設けられている筈ですが」
 もう一本、蒼桜を抜いてくるりと順手に持ち替えるジークの横で、そうサフレが訊ねた。
 反応は明らかだった。すぐにこの将校以下、指揮を執る各隊長らが渋面をこぼす。
「ええ。最初は我々も四方から突き崩すつもりでいたんです」
「ですが、南門と西・東門にはとんでもなく強い黒騎士達が邪魔をしていて……」
『えっ』
 ジーク達は互いに顔を見合わせた。
 とんでもなく強い、黒騎士。それはまさか……。
「戦鬼(ヴェルセーク)、か……?」
「で、でもおかしいですよ。それだとコーダスさんが何人もいることになります」
「……既に量産化が始まっているのかもしれないわね。或いは運用試験といった所かしら。
フォーザリアでも彼は“開発中の兵器”と言っていたし……」
「……」
 マルタが当然の疑問を、リュカが冷静にその回答を口にする。
 ジークも黙りこそしていたが首肯していた。あの竜族(ドラグネス)──ヴァハロも確か
新しい人形、などと言っていた記憶がある。トナン王宮での一戦でもそうだ。連中も確実に
その戦力を磨き続けているということか。
「それで、その黒騎士達は今?」
「幸か不幸か、追っては来てません。こっちが退却するのを見ていたのに城門の前に戻って
行きましたから、多分……」
「……あくまで命令されているのは城門の守り、か」
 サフレが呟く。ジーク達は改めて“結社”の軍勢が身構え──その一番奥の三人が部下に
何やら指示を出し、走らせているのをみた。
「まぁ、要は先ずあいつらをぶった斬りゃいいんだな?」
「そうだな。とにかく隔壁内に辿り着けなければ話にならない」
 ジークが二刀を構えた。サフレも槍を取り出し、後ろでマルタにリュカ、オズもそれぞれ
戦闘体勢に入る。
「──おい、お前ら!」
 だがその前に、とでも言わんばかりに、ジークが肩越しに叫ぶ。
 向けられた視線の先は取材クルー達だった。彼らのレンズが真っ直ぐにその勇姿を視界の
中に収め続けようとしている。
「その回線、世界中に飛んでるんだよな?」
 彼らは最初、その意図するところが分からなかった。
 目を瞬きぱちくりと。だが世界中にリアルタイムで実況していることは事実なので、すぐ
に誰からともなく彼らはコクコクと頷きを返す。
「ん……ならいいんだ。今どうなってるか、俺達も端末で見た。今あちこちの国が“結社”
に襲われてることも知ってる」
 一度、ジークは深く深呼吸をしていた。
 メッセージだ──取材クルー(かれ)らは確信する。これは彼が、世界中の人々に向けて
語りかけようとしている、その一呼吸前なのだと。
「負けるな、こんな奴らの好きなようになるんじゃねえ! ……踏ん張ってくれ。閉じ込め
られた母さん達は──お偉いさんも大都の人達も皆、俺達が助ける!」
 びりりっ。ジークの宣言が響いた。
 守備隊プラスアルファの連合軍が目を見開く。三人の信徒以下“結社”の軍勢が無表情、
或いは不快に顔を顰めてそのさまを見ている。
「……お、おぉっ!」
「やってやる……やってやるぜっ!」
 だがそれも数拍のこと。
 次の瞬間、ジーク達を取り巻く連合軍の面々が一斉に鬨の声を上げた。

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  1. 2013/12/07(土) 21:00:00|
  2. ユーヴァンス叙事詩録-Renovin's Chronicle-
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自己紹介

長岡壱月

Author:長岡壱月
(ながおか いつき)

創作もとい妄想を嗜む物書きもどき。書いたり描いたり考えたりφ(・_・)
しかしながら心身共々力量不足な感は否めず。人生是日々アップデート。
今日も雑多な思考の海に漂いながらも何とか生きてます。
【小説/思索/落書き/ツクール/漫画アニメ/特撮/幻想系/小説家になろう/pixiv】
(※上記はPN。物書き以外では概ね、HN「長月」を使用しています)

【注】当庵内の文章や画像等の無断転載・再加工ないし配布を禁止します。

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